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サラ様の『アリオダンテ』は、盛り上がり度最高

『アリオダンテ』はサラ様で持つ。これは、わたしの独りよがりの感想ではない。
ミュージックヘボウ・エントホーフェンのサイトおよびパンフレットには、Sarah Connollyの文字が
一番上に踊っていた。他の出演者や指揮者・オケ、ヘンデルそして演目の名前よりもずっと大きな
太字で書かれていることからも明らかだ。

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    ホールに沢山ある入り口ドアの投射表示。右上には休憩の残り時間が。
    ドア3の下に書かれているのは、演目『アリオダンテ』ではなくサラ・コノリー!

パンフレットに表記された出演者などの文字フォントは、ほぼ以下のとおりである。

Sarah Connolly mezzosoporaan
Il complesso Barocco
Alan Curtis dirigent

Karina Gauvin sopraan (Genevra)
Sabina Puertolas sopraan (Dalinda)
Marie-Nicole Lemieux alt (Polinesso)
Nicholas Phan tenor (Lurcanio)
Matthew Brook basbariton (Re di Scozia)

Georg Friedrich Handel (1685 - 1759)
Ariodante (1735) opera seria in dire bedrijven

2012年3月12日@Muziekgebouw Eindhoven

通常よりも45分も早い19時30分の開演時間に間に合うよう十分余裕を見て出発したので、
ホールにはその30分以上前に到着した。
CD売り場を覗くと、予想通り「公演終了後、出演者のサイン会があります」との表示が。
しかし、あわてていたため、家からCDを持ってくるのを忘れた!
しかたがない、「今晩に限り3ユーロ引きですよ。2枚組みなら6ユーロお得」との誘いに乗って
『ヘンデル・デュエット』CDを買った。サラ様とローズマリー・ジョシュアのデュエット集だ。

会場に入り平土間5列目中央右よりの席に着いて辺りを見回すと、案の定、平土間にはかなり
空席が目立つ。8列目以降は傾斜のある階段になっていて、そこからは結構埋まっている。
公演前に支配人が舞台に出てきた。「皆様、まただれか病気になったとかの悪い知らせか、と
身構える必要はありません。当初2回の予定だった休憩が1回になりましたので、それをお伝え
したいだけです」
プログラム・ブックを見ると、三幕のオペラなのに、二幕目の中間に休憩を入れている。

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          サイン会での、プエルトラス(左)とサラ様。
          サラ様の衣装は、紺の立ち襟で長めのジャケットに
          紺のスリム・フィットのパンツ、その下に紺のブーツ。
          襟から胸と袖口にフリルのあるブラウスで、今回は
          フェルゼン伯風(?)

古楽オケのイル・コンプレッソ・バロッコの演奏を聴くのは初めてだ。
アラン・カーティスの指揮は、二年前にオランダ・バッハ協会によるコンティの『ダビデ』で
体験済み。その時は、当初予想していたほどノリが悪いとは感じなかったが、今回は、まるで
人間メトロノームみたいな動作でテンポを四角四面になぞるだけで、メリハリがほとんどない。
そういう指揮に合わせたオケの演奏にも、覇気とか生気とかやる気というものが全く感じられない。
ここまで気力に乏しい古楽オケもなかなか珍しいのではないか。
これには、休憩中にテーブルを同席したご夫婦連れ(全然知らない人たち)も同意見だった。
最大限に好意的に見れば、歌手の邪魔をしない黒子のような伴奏に徹している、という程度の
バック・グラウンド・ミュージックのような具合である。

それに対して、歌手は皆、活力がみなぎった歌唱でぐいぐいと迫ってくる。
ジネブラ役のゴーヴァンも、ポリネッソ役のルミューも古楽系の歌手にしては、かなりの重量級だ。
若さも相まって、最初からパワー全開で押していくのだった。

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          笑顔が素敵なルミュー。ステージでは白のジャケットだった。

特に、ルミューは貫禄と余裕の歌唱で、声量豊富かつ安定した上手さで光っていた。
暗譜で歌えることと悪役であることを強調するためか、いつも歌う前に譜面台をぐっと押さえつけて
下ろす。そういう自信満々の動作にも好感が持てるのだった。明るくて姐御肌で人に好かれる得な
タイプだ。

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          笑顔の素敵さでは、サラ様も負けてはいない。
          横分けのボブを後ろにきれいにブローしたヘアスタイル。
          ステージでは、口紅もほとんど色が無いものを使用。

サラ様だけ、最初のアリアは、ちょっと声量抑え気味であった。そして、高音になるとまたぐっと
弱音になるのは彼女の癖(?)であることをこちらは了解しているのだが、隣や前の席に座った
夫婦連れなどは高音があやふやになったりすると、大げさにお互い顔を見合わせていたりした。
ピアニストのミスタッチとか歌手の音程の乱れなどにいちいちそういう風に反応する人が多いのが
このホールの聴衆の特徴である。「あ~あ」という声にならない微妙な振動が感じられる。

主役だから長丁場になる。後半のクライマックスに備えて喉の調子を抑えて最初はセーブしていた
サラ様も、曲が進むにつれ次第に封印を解くように自由闊達になり、表情にもこわばりが消えて
いった。
休憩前の最後の曲は、サラ様十八番の『不実な女よ』である。これに照準を定めたかのような
迫真の歌唱であった。もちろん狙いは決まって大成功だった。
他のアリアやレチタティーボでは譜面を見ながらだったが、この曲ではもちろん、役柄になりきって
歌う。時に鬼面のような表情で自分を裏切った恋人への呪詛のアリアを切々と歌い上げる。その
張り詰めた心情がこちらに迫って、涙がこぼれそうになる。会場は彼女の世界に包みこまれた。

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         サラ様とのツーショット。右手にゴーヴァン。

このアリアの前に、ジネブラに扮装したダリンダがポリネッソといちゃつくシーンがある。
ダリンダ役の歌手は細身で、ジネブラ役のゴーヴァンの豊満を通り越したような体型とは対照的で
ある。二人とも黒のロングドレス姿で、ゴーヴァンはオペラピンクと黒の張りのあるシルクの肩掛け
みたいなものを巻いている。(上掲写真参照のこと)
その肩掛けをダリンダ役が纏うことで、ジネブラに化けたことにしているのだが、いくらなんだって
あの二人を見間違えるなんてありえない、と突っ込みをいれたくなるのだった。

ダリンダ役のソプラノ、プエルトラスの声は、わたしには苦手なタイプだ。キンキンとしてまろやかさに
欠け、歌唱も張り上げるだけの一本調子である。ルックスは可愛いのに声には特別な魅力が乏しい。
ルルカニオ役のテノール、ニコラス・ファンの声も好みではない。特に中音部の声の出し方がわたし
の耳には不快に響くので、多分東南アジア系らしい顔と体型とから、例のダニエルちゃんを思い出す。
この二人の姉弟役なんて、もしも実現したら、絶対に聴きに行きたいとは思わないだろう。

感心したのは、ゴーヴァンのサラ様を立てるかのような態度だ。
彼女は声量が豊富で、生真面目かつ優等生風清純な声が優勢の古楽系ソプラノの中では、ビロード
の肌触りのような質感が際立つ歌手である。ビジュアル的にもその成熟した声質からもお姫様という
イメージではないが、とにかく上手いし、堂々と聴かせるタイプだ。
それが、サラ様とのデュエットになると、声量をぐっと落として楚々とした風情でアンサンブルに勤しむ
のである。
予想したよりもずっと骨太な声なので、サラ様よりはディドナートの声との相性の方がよさそうだが、
サラ様がアリオダンテの代役に立つステージでは、自我を多少抑えてでも完璧なアンサンブルを
作り上げようとしているようだった。

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          ルミューに「アリガト」と言われた。

後半に入ると、オケの演奏は、休憩中のわたし達のぼやきが耳に入って俄然やる気を出したか、と
思えるほど、躍動感に満ちて、生き生きしたものになった。
つまらなそうに演奏していた人たちも、乗ってきたコンマスに刺激されてギア・チェンジをしたようで
エンジンがフル稼働の様相を呈した。
それなのに指揮は相変わらずの調子なので、歌手はもちろん指揮者を見てないし、奏者もコンマスに
合わせているように思えた。

歌手は、前半にも増しての熱演・熱唱である。めったにないほど盛り上がったステージであった。
後半のハイライトはサラ様のもう一つの十八番『ドポ・ノッテ』だ。
あくまでもさわやかに歌い上げながらフィナーレにふさわしい華やかさも加えたダ・カーポを聴かせる。
コロラチューラも軽やかに決まって一気呵成。

やんやの拍手とスタンディング・オヴェーションで、大団円の最後の合唱をアンコールに歌ってくれた。
歌に合わせて右手に立ったルミューがスイングを始め、プエルトラス、ファンも踊りだした。


ロッテルダムでのアンコールは、エイントホーフェンでも同様。


終了後のサイン会は盛況で、客は口々に、ディドナートが降板したことがデメリットにはなっていない
素晴らしいコンサートだった、サラ・コノリーが予想以上によかったと言い合い、興奮気味であった。

そのサイン会にわたしは一番乗りで、歌手が来る前から待機していた。
会議用のテーブルがLの字に並べてあり、その外側に椅子がある。どういう具合になるのかと思った
ら、歌手は、来た順番に右端から座っていった。すなわち、ファン、ブルック、ゴーヴァン、サラ様、
プエルトラス、ルミュー、指揮者のカーティスである。
ブルックは、「お待たせして申し訳ありません」と言ってから着席した。
わたしは全員のサインが欲しいわけではないし、『アリオダンテ』のCDは持ってないし、当日
買った『ヘンデル・デュエット集』に、サラ様以外の人のサインを頼むのは変だ。だから、サラ様を
目指して他の歌手はスルーした。

CDのケースを開けると、CD本体もブックレットも黒地で、サラ様のサインペンも黒である。
「あら~、でも大丈夫、わかってるから」と言いつつ、サラ様はブックレットをケースから取り出し
ページをめくる。見返しページは白地なので、ヘンデルの肖像画の脇にサインしてくれた。
R「このデュエット・コンサートは、幻に終わったんですよね、去年」
S「え?」
R「アムステルダムでのコンサートのことです。ローズマリー・ジョシュアがキャンセルしたので」
S「ああ、そうだったわね。彼女は同時期にオペラに出演してたのよね」
R「残念でした。でも、今年は、こうしてお会いすることが出来ました。奇遇です」
S「たまたまスケジュールが空いてたので、ツアーに参加できたのよ」
R「うれしいことです。素晴らしいコンサートをありがとうございました」

どうも、マレーナ様とは勝手が違って、フツーの女同士の会話みたいな具合にはいかなかった。

ルミューやゴーヴァンのCDは持ってこなかったので、サインはなし。しかし、ルミューはみかけ
通り気さくな人で、ツーショットのために立ち上がって「アリガト」と日本語で言ってくれたのだった。

家に着いたのは12時を過ぎていたが、最後までテンションの高い盛り上がり度最高の一夜だった。
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by didoregina | 2012-03-14 12:53 | コンサート | Comments(11)

念力でサラ様飛来!『アリオダンテ』ディドナート降板

おおおおお~~~(<-雄叫び。ロバート・プラントの声で)

コンサート形式のヘンデルのオペラ『アリオダンテ』ヨーロッパ・ツアーで主役を歌う予定だった
ジョイス・ディドナートが病気のため降板し、なんと、サラ・コノリーが全てのコンサートで代役を
務めることになりました!

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         フェミニンな髪型でマスキュリンな目付きのサラ様


ああああ~っ(<-狂喜乱舞の雄叫び。再びロバート・プラントです)

先週、突然、アムス在住のMevさんのところにコンセルトヘボウからディドナート降板サラ様が代役
とのお知らせメールが来たそうで、コンヘボのサイトでも、即、キャスト変更発表になってました。
コンヘボでのコンサートは今晩3月6日です。

わたしが行くのは3月13日のエイントホーフェン公演です。先週から、毎日毎日、お祈りして
おりました。(お祈りの内容はプライヴェートなものなので公表しませんが、想像はつくはず)

そして、毎日毎日、エイントホーフェンのミュージックヘボウのサイトをチェックしておりました。
昨日までは、「グラミー賞受賞歌手、ジョイス・ディドナートが主役!」の文字が躍っていたので、
「アムスだけか、キャスト変更は。アムス公演から1週間あるから、それまでにディドナートは
回復して出演するつもりなんだろうな」と、僻んでいたのです。

ところが、今日になって「ディドナートはヨーロッパ全公演をキャンセル。サラ・コノリーが代役」と
ミュージックヘボウのサイトに出ているではありませんか!

おおおおおお~~(<-もちろん、ロバート・プラントの声です)

ジョイス・ディドナート・ファンの方々には、大変申し訳ないのですが、わたしの念力の方が勝って
いたんですね、多分。

さて、サラ様は、先週までロンドンのENOで『ばらの騎士』にオクタヴィアン役(マクヴィカー
演出)で出演していました。
それが今週から『アリオダンテ』のヨーロッパ・ツアーですからね。強靭な体力の持ち主なんだわ、
サラ様は、きっと。

サラ様といえば、昨年の今頃、コンヘボでのヘンデルのデュエット・コンサートを聴きに行くはず
でした。
サラ・コノリー・ファンクラブ会長のミュンヘン在住sarahoctacianさんと、会員第一号のわたしとで。
ところが、デュエット相手のはずだったローズマリー・ジョシュアが、同じ時期にアムステルダム歌
劇場で、ヤナーチェクの『利口な女狐』の主役を歌うというダブル・ブッキングのため、コンヘボの
方をキャンセルしたのです。そして、コンヘボは、別の歌手を調達する代わりに、プログラムを大胆
にも変更して、ヘンデルのオペラ・アリア・コンサートから、パーセルのオペラ『ダイドー』コンサート
形式にするとのお知らせが。。。。
サラ様『ダイドー』なら、会長も会員第一号のわたしもロンドンに遠征して既に観賞しています。
もう一度コンサート形式で聴くのは、、、、というわけで、ファンクラブの二人はコンヘボのチケットを
手放すことしにしました。
辛い決断でした。会長も断腸の思いだったことでしょう。

それから一年経って、こんなところで運のツキが巡ってきました!

もう、今晩からはお祈りの内容を変えます。なんとしてでも、来週13日まではサラ様の体調が崩れ
ませんよう。。。

サラ様の歌う『アリオダンテ』のアリア2曲は、3年目にコンセルトヘボウでのコンサートで聴いて
います。その素晴らしさは今でも耳に残り、思い出すだけで目には涙が浮かんでくるほどです。


     
           わたしの今の心境そのままのDopo notte


ああ、彼女はどんな衣装で登場してくれるのでしょうか。凛々しいズボン姿だといいのですが。。。
そして、わたしはどんな着物を準備しようかしら。。。。

まずは、明日(多分)のコンヘボでのコンサート速報を楽しみに待ち、わたし自身、来週に向けて
体調を万全に整えようと思います。


↓は、2009年のプロムスでのサラ様。でも『アリオダンテ』では、このネルソンのコスプレじゃない
ほうがいいわ。3年前のオスカル風衣装ならばっちりなんだけど。


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by didoregina | 2012-03-06 21:47 | コンサート | Comments(8)

Johannette Zomer, Bart Schneemann & Musica Amphion

久しぶりのヨハネット・ゾマーである。12月にオランダ・バッハ協会のロ短調ミサ曲を聴いてるが
今回は、オーボエのバート・シュニーマンとのコラボCDLove & Madnessとほぼ同じ内容の
オール・ヘンデル・コンサートで、彼女の歌をメインに聴きに行った。

c0188818_1811217.jpgLove & Madness
2012年2月26日@ Muziekgebouw Einthoven
Johannette Zomer, Bart Schneemann & Musica Amphion

Georg Friedrich Handel (1685 - 1759)

Intoroduzione (Delirio amoroso)
Che intendo? (Berenice)
Moriro! (Teseo)
Orgelconcert in Bes opus 4 nr. 2
- A tempo rodinario, e staccato
- Allegro
- Adagio e staccato
- Allegro ma non presto
Scherza infida (Ariodante)
Lascia ch'io pianga (Rinaldo)
Hoboconcert in g
- Grave - Allegro - Sarabande - Allegro
Ah spietato (Silete venti)
Alleluia

エイントホーフェンのミュージックヘボウ小ホールでの日曜正午からのコンサート。休憩なしの
コンパクトだが変化に富んだ内容のプログラムで、料金は17ユーロ50セント(飲み物付き)。
相変わらず、このホールでのコンサートはコスト・パフォーマンスが非常によろしい。

座席は二列目左寄りだったので、歌手が目の前。
オケは、弦楽器がそれぞれ1人ずつに、ファゴット、オーボエ、オルガンおよびチェンバロ。
オルガン兼チェンバロ奏者が合図程度の指揮をしているが、コンマスもかなり采配を振るう。
古楽アンサンブルのムジカ・アンフィオンは、18世紀オケやオランダ・バッハ協会のメンバーで構成
されているので、ヴァイオリンの山縣さんなど、なんだかしょっちゅうお目にかかっている気がする。

残念だったのは、テオルボのフレッド・ヤーコブスが病気のためキャンセルしたことだ。
急なことだったらしく、代理のテオルボなしの演奏になった。
先週のPJコンサートでは、テオルボの色がよく響いて、PJの歌との絡みが印象に残っている。
今回はバロック・オーボエが活躍するコンサートであり、チェロとコントラバスとチェンバロもいるが
いかにも古楽というイメージそのもののテオルボの渋い響きで通奏低音を〆てもらいたかった。

そして、第一ヴァイオリンの演奏が控え気味すぎるように感じられ、ちょっと物足りなかった。
オーボエを立てようというつもりでもなかろうに、アリアの前奏部で特にそう感じられたので、不思議だ。
全体的には、こういう小編成のオケにもかかわらず、小ホールだと響きすぎるきらいがあるほどだった。
特に歌手の声がびんびんに響く。ショル兄も大ホールでマイク使用するよりも、こちらの小ホール
で生の声で歌ったらよかったのに、と今でも恨めしい。

ヨハネット・ゾマーの声は、わたしにはもうかなりおなじみであるが、このコンサートでの印象は、
CDそのままという感じだった。高音をかなり張り上げ気味なのである。場面によっては、もっと
ささやくような声で歌ってもいいのではないかと思えた。特に『ベレニーチェ』よりChe intendeが
CDでは高音張り上げの歌唱なので、生ではもっとニュアンスが聴き取れるかとと期待していたら、
ステージでも同様なのだった。ソロ歌手1人だけなんだから他の歌手と張り合う必要はないし、
オケも小編成であり、ホールはよく響くんだから、弱音の美しさも大切にしてもらいたかった。
このCDは、だから、音量を絞って聴いているが、実演ではそれが不可能なのが辛い。
好きな声のご贔屓歌手だけに、その辺が非常に残念である。

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            オーボエのバート・シュニーマンとツーショット。
            「日本人?芸者さん?日本も芸者も好き」と
            とんでもないノリのシュニーマンであった。。。

それに対して、CDと音のイメージが全く異なるのがバート・シュニーマンによるバロック・オーボエ
であった。
まあ、音色も音の出し方によってこうも色彩鮮やかに変化するものかと、びっくりするほど。
生き生き溌剌としてトランペットのように響いたり、ちょっと暗い深みのあるホルンのごとく聴こえたり
するのだった。
地味な楽器というイメージが覆され、素晴らしく多彩な音色を引き出すことのできる楽器なのだと
知った。

 ↓ は、コンサートと同じメンバーによる、ヘンデルの『オーボエ協奏曲 ト短調』



シュニーマンは、ロッテルダム・フィルやオランダ管楽アンサンブル(コンヘボでのニューイヤー・
コンサートでおなじみ)ではモダン・オーボエ担当だが、古楽ではバロック・オーボエの奏者である。
曲間にバロック・オーボエの説明をしてくれた。
使っている楽器は17世紀のバロック・オーボエのレプリカであること。ムジカ・アンフィオンの弦楽器
奏者は皆オリジナルの古楽器(弓も)を用いて演奏しているが、木管楽器であるオーボエの場合は
弦楽器と異なり、古いものは木が乾燥しすぎたり逆に湿気のため腐食したりして現在でも使える状態
で残っているものはほとんどない、という。そして、17世紀のオーボエの構造はモダン楽器と比べると
シンプルで、キーも3つしかない。キーは小指が届かない穴を補助するためのもので、モダン・オー
ボエには16個あるが当時は2つもしくは3つ。一つは左側に付いていて、左利きの人用のキーである、等々。

オール・ヘンデル・プログラムなのは、ヘンデルの時代のコンサートやオペラの雰囲気を再現したい
ため、とのこと。当時は、夕方から夜更けまでずっとヘンデルの音楽演奏が行われ、器楽曲の時は、
おしゃべりしたりしてた聴衆も、途中から作曲自身が指揮に登場したりすると、身を乗り出したりした、
らしい。
今回のプログラムは、作曲家の出演こそないが、オペラ・アリア(最初の2曲はオーボエが活躍)
にオルガン協奏曲、オーボエ協奏曲などの器楽曲を交えてあり、変化がある。
隣に座っていた老婦人は「わたし、ヘンデル苦手なのよ。『水上の音楽』くらいしか知らないけど」
などと言っていたが、オペラ・アリアには感銘を受けた様子で、特に『わたしを泣かせてください』は
よかった~とヘンデル新発見の様子でご同慶。

Scherza infidaと続けて、ゾマーによって歌われる名作アリアを聴くのは、楽しかった。
来月は、ここの大ホールでディドナート他豪華キャストによる『アリオダンテ』コンサート形式が
行われるから、今から楽しみにしている。

アンコールは、「もうヘンデルは十分堪能されたでしょうから」ということで、スキャットが入った
ピアソラの曲。多分、多才で多ジャンルの演奏活動を行うシュニーマンの趣味だろう。

公演後のCD販売兼サイン会は盛況だった。PJのサイン会とは比べようもないが、丁度2年前の
閑古鳥が鳴くようなCD即売とは大違い。ニューイヤー・コンサートのおかげかシュニーマンの人気が
高かった。

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              優しくにこやかなゾマーとのツーショット。
              泥藍大島に、パステルカラーの綴れ帯。
              オレンジの帯揚げと珊瑚色の帯締めは
              着物に入っている模様の色に合わせた。
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by didoregina | 2012-02-28 12:03 | コンサート | Comments(2)

ジャルスキーのコンサート@コンセルトヘボウ その2

フィリップ・ジャルスキー(PJ)のコンサートは初体験である。アムステルダム、ブリュッセル、
ロンドンなど機会はあったのだが、なかなか決心がつかずに行けなかった。今回は日曜マチネ
しかもコンセルトヘボウでのコンサートということで、千載一遇のチャンスだ。
それでいて、ヘンデル・アリアの予習は怠っていた。というのは、彼のCDはかなり持っているが、
ヘンデルの曲の録音はほとんどないからだ。だから、ぶっつけ本番で聴くことになった。

座席は6列目中央よりやや左寄りで、かなり高さがあるコンヘボの舞台には近すぎるので、音が
頭の上を通過して行ってしまうかな、と思ったが、実際には視覚的にも音響的にも問題なかった。
オケは古楽だから小編成だし、歌手も1人だけだから、このくらい前の席でも問題があるどころか
丁度いいのかもしれない。生の声や音が直に耳に届く距離という点で申し分ない。(3列目中央で
頭上すぐ目の前にPJという位置に座っていたCさんは、生の声が頭の上に降り注ぐ感じで最高!
と言っていた。)

ヘンデルのオペラ・アリアのコンサートということで、全体の構成もバロック・オペラチックである。
すなわち、まず『リッカルド・プリモ』序曲のあと、PJが舞台下手後方上部にある階段から
さっそうと駆け下りて登場したのである。そして、そのまま流れるようにAgitato da diere
tempeste(オレステ)を歌いだす。コンセルトヘボウのステージを上手く利用した効果的な
登場の仕方であり、音楽的な流れもちょん切れずにスムーズに歌に繋がった。

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         皆、写真を撮りまくりなので、わたしもコンセルトヘボウでは
         初めて、写真を撮った。(アンコール終了後であるが)

ステージ衣装は、ジャケットがだぶつき気味でお世辞にもカットがいいとはいえないスモーキング
にタイなしのゆったりめのシャツ、そして黒のカマーバンド。いずれもあまり光沢がない素材だから、
昼間のコンサートにピッタリだ。しかしカウンターテナーのステージ衣装としては、ちょっと洒落っ気が
足りないというか、粋ではない。(ウィーンでイェスティン・デイヴィースが着ていた冴えない大学
教員みたいなコーデュロイの三つ揃いに比べたらマシだが)

しかし、その上半身がだぶっとした衣装は、見かけよりも機能重視のためだったのだ。
ピチピチのカットではないので、歌手の使う腹筋や肺や肩などの自由な動きが妨げられずに、ア
ジリタも自由自在に伸び伸びと、筋肉を伸縮させて歌うことが出来るのだった。
見ていて小気味がいいほどお腹の筋肉が動いているのがわかるし、連続するアジリタの超絶
技巧も聴衆をはらはらさせずに余裕で歌い上げる。若さと日々怠らない訓練の賜物で、息切れも
していない。

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        コンサート後のサイン会。ディズニーランド並みの
        長い列で待ち時間は1時間なり。


曲目の構成は、緩急が上手く按配されていて、ぱきぱきしたテンポで押しまくる曲としっとりと
歌い上げる曲とが交互に配分されている。メゾ・ソプラノもしくはカストラートのためのヘンデルの
様々なオペラから選ばれた曲だが、ばらばらの印象はなく統一感があるし、オペラで一人の歌手が
歌う分量くらいの曲数に限定したことで、コンサート全体がオペラらしい雰囲気になった。
名曲選とか名人芸披露の曲ばかり集めたようになっていないところがセンスの見せ所である。

PJの生の声は、思った以上に声量がしっかりあるし、アジリタも最後までパワーを失わずに
バリバリと出せるので、オペラ舞台でも問題なさそうだ。ただし、今ひとつ不満が残ったのは、
技術的に難しそうな曲だと若さのパワーで押しまくるようで、歌唱にメリハリが少なく装飾の変化も
乏しい。長いダ・カーポ・アリアの多いオペラなんかでは、聴いていて飽きが来るのではないか
という気がした。はっきり言うと、難曲を歌うときはかなり一本調子になるのだった。

彼の高音の美しさはCTの中でも比類がないと断言できる。そして、その高音には一般のCTが
出すファルセットのような曖昧さがなくて、かといって女声とも違って男性らしい芯が通っていながら
あくまでも澄んでいてまさに天使のような声としか言いようがない。そのユニークさがPJの強みで
ある。誰にも似ていない唯一無二の声質は、また誰の耳に心地よく感じられるはずだ。特に、スロー・
テンポの曲を歌うときににその真価が発揮される。

例えば、ピアニッシモから始めてだんだんとクレッシェンドして、細い絹糸を繭から紡ぎ出すように
細心のコントロールで伸ばしていき、最後にまた消え入るように歌うテクニックも安定していてとても
美しい。(だが、それは、わたしの好きな歌手には皆共通してて、PJの専売特許ではない。
サラ・コノリーしかり、マレーナ・エルンマンしかり、ジモーネ・ケルメスしかり。皆、特に高音での
嫋々たるピアニッシモの美しさが特徴的である。)

PJは、最初から声をセーブしなかったが、後半は特に若さとテクニックが爆発してしかもきちんと
融合していた。ここまで押していって大丈夫か、と心配になるくらいだったが、余裕すら感じられた。

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         ファンを大切にする彼のにこやかな笑顔。

最後の曲は、『アグリッピーナ』よりネローネのアリアCome nube che fugge dal ventoで、
マレーナ様の十八番でもあるから、聞き耳を立てた。
DVDになっているマルゴワール指揮の『アグリッピーナ』は、もっさりしたテンポで歯切れが悪い
ため、どうも聴いていてつまらない。ネローネのアリアに関しても、動画でのPJは一生懸命直球を
投げてるだけみたいでバロック・オペラ・アリアに不可欠の変化球がほとんどないから、ヤーコブス
指揮の『アグリッピーナ』でのマレーナ様のめくるめくアジリタと装飾のキラメキ、緩急自在の表現の
幅広さと比べると勝負の結果は明らかだ、と思っていた。
しかし、生のPJの歌声は、フライブルク・バロック・オーケストラのきびきびした演奏と相まって
びしっとキマッているではないか。あのイケテなさはマルゴワールのせいだ、とこれではっきりした。


 ↓ 問題のマルゴワール指揮『アグリッピーナ』でのネローネのアリア




 ↓ 比較のため、毎度おなじみ、マクヴィカー演出によるマレーナ様のネローネ




今回のコンサートで、PJがオペラ舞台で歌う際、歌唱上の問題はないとわかった。
しかし、問題は、オペラでは歌いながら演技もしなければならない点である。
Volkskrant紙でのインタビューでも語っているように、PJもオペラ舞台ではその点が気がかりで
あるようだ。特に、近年のオペラで演出家が歌手に求める演技力は相当なものだ。
上の動画でのPJネローネは、膝を突いたり立ったままで正面を向いて歌うだけで、演技などないに
等しい。
それに対して、マレーナ様は、あの超絶技巧アリアを体当たり演技しながら歌っているのである。


コンサートに話を戻そう。
観客は大満足で、アンコールも3曲あった。Aria"Venti Turbini"(Rinald, HWV 7),
Alto Giove(from Polifemo composed by Nicola Porpora)
Ombra Mai Fu (Serse, HWV 40)
(曲目情報は、Mevさんに教えていただいた)
最後のアンコール曲は、『オンブラ・マイ・フ』で、しっとりと〆て余韻も残すから、アンコールに
似つかわしい。ピアニッシモから引っ張っていってクレッシェンドして最後にディミヌエンドするテク
ニックの披露にもふさわしい曲だ。PJは、最後の数小節を何度か上げて、ちょっと通常とは異なる
クライマックスにして歌っていた。繰り返しを避けるためと、本当にこれが最後の曲だよ、と告げる
意味もあったろう。


 ↓は、チェチリア・バルトリによる『オンブラ・マイ・フ』



       バックに虫の声などが入っていて、この曲の演出としてはいい感じ。


 ↓は、しつこいが、エイドリアン・ノーブル演出マレーナ様による『オンブラ・マイ・フ』




こういう風に、最近の演出家は歌手を立ったままで歌わせない。そして、この曲はオペラ『セルセ』
の冒頭に来るのだ。誰でも知ってて期待値が異常に高い曲をいきなり最初に、しかも難しい姿勢で
歌わなければならないのが、オペラ歌手である。
オペラ舞台でのPJは、12月に『アルタセルセ』で見ることができるはずである。どんな演出になる
のかわからないが、しっかりした歌唱でコンセルトヘボウを沸かせた彼のオペラ出演には期待している。
『アルタセルセ』は、若手CTが勢ぞろいする花形歌舞伎みたいなオペラ舞台になるはずだから、
他のCTとの絡みも重要だし、比較もされる。正念場になりそうだ。

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         お約束のツーショット。しかし、PJの目線は別のカメラを見ている。。。
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by didoregina | 2012-02-21 14:20 | コンサート | Comments(10)

『セルセ』@ウィーンの各種映像

マレーナ様のサイトをご覧になっている方はすでにご存知かと思いますが、アン・デア・ウィーン
劇場が動画「オンブラ・マイ・フ」をアップしています。公式動画だけあって、カメラ・ワークも
きちんとしていて、アンサンブル・マテウスを指揮するスピノジもしっかり映っています。


        冒頭からいきなり超有名曲を歌うので緊張気味のマレーナ様
       
そして、ファンサイトからも『セルセ』初日の隠し撮り動画が2種アップされています。
こちらはマレーナ様セルセのハイライトといった趣で、セルセの主要アリアと他の歌手との
絡みを繋げたもので、舞台の雰囲気が少し味わえます。客席から隠し撮りなのでピントが
合っていないところもありますが、なかなか貴重な動画といえましょう。



まず、part 1は、6つのシーンから構成されています。

こちらの"Ombra mai fu"は、オフィシャル動画のようなクローズアップではないのがかえって
舞台全体のイメージを伝えてくれ、イントロと言う意味ではよいでしょう。

セルセと弟のアルサメーネの絡みで、セルセが歌う"lo le dirò che l'amo"「私が彼女に愛している
と言おう」は、コミカルな演出で、マレーナ様の抜群の演技力が歌唱とぴったりマッチ。アルサメーネ
役のメータのずっこけぶりもキマっています。

セルセが弟の恋人ロミルダに迫る"Di tacere e di schemirmi"「黙って侮辱するのか」のシーンは、
ジョニー・デップ扮するジャック・スパロウ船長がキーラちゃんに迫る場面を思わせます。
ロミルダは嫌がって身をよじるのですが、迫って押してくる壁の間が狭まり逃げられません。
マレーナ様のような美しい人に迫られて嫌がるなんて、と合点がいかないのですが。

自己中心的なセルセの"Più che penso alle fiamme del core"「胸に燃える炎に気づくと」は
一人身悶えて歌うアリアで、セルセの興奮状態がよくわかります。

ダニエルちゃんのアタランタは狂言回しの役割で、きゃんきゃん騒ぐキャラが彼女そのもの。
"Dirà, che amor per me"「あの方は、私のことなど愛していないと言うでしょう」のしつこい
アリアと音程のズレで笑いを取っていました。

第一部終わりの"Se bramate d'amar"「お前を嫌う男の愛を望むなら」で、いらつきながら
セルセはロミルダにこじれた関係に発展がないことを諭します。短気でヒステリックなセルセの性格が
よく表れたアリアです。これを歌うときのマレーナ様の迫真の表情には鬼気迫るものがありましたが、
それは舞台近くで見ないとわかりにくいでしょう。


次に第二部のハイライト動画です。



自信たっぷりのアリア"Per rendermi beato"「幸せを得るため」と、最後の狂乱のアリア
と言ってもいい"Crude Furie degl'orridi abissi"「地獄の残酷な女神め」で、躁と狂の間を
大きく揺れ動くセルセです。特に最後のアリアは、超絶技巧全開で凄い迫力だったのですが、
動画ではその迫力は伝わってきません。

動画ではその前後に、ロミルダの父アリオダーテやセルセの元婚約者で男装のアマストレを登場させ
ることも忘れていません。また、ロミルダとセルセのダンス・シーンも挿入されて、マレーナ様の軽や
かなステップも観ることができます。

最後は、男装を脱ぎ捨てたアマストレによって、こんがらがった手紙による誤解も解かれ、大団円
になります。このアマストレは、いつでもナイフを振り回して自殺のそぶりを見せたり、刃物三昧の
ちょっと変なタイプです。エキセントリックな者同士ということで、セルセとは性格的にはお似合いの
カップルといえるかもしれません。
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by didoregina | 2011-11-09 10:46 | マレーナ・エルンマン | Comments(4)

『セルセ』は体当たりマレーナ様の当たり役!

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Serse (1738)     2011年10月23日@Theater an der Wien
Musik von Georg Friedrich Händel
Dichtung nach Nicolò Minato und Christian Postel

Musikalische Leitung: Jean-Christophe Spinosi
Inszenierung: Adrian Noble
Ausstattung: Tobias Hoheisel
Licht: Alan Burrett

Serse: Malena Ernman
Arsamene: Bejun Mehta
Amastre: Luciana Mancini
Romilda: Adriana Kucerova
Atalanta: Danielle de Niese
Ariodate: Anton Scharinger
Elviro: Andreas Wolf

Orchester: Ensemble Matheus
Chor: Arnold Schoenberg Chor (Ltg. Erwin Ortner)

一年前から胸をときめかせて待っていた、マレーナ様が男性役で主演のオペラ・プロダクションの
初日公演は、オーストリアの新聞評では大絶賛だった。
しかし、あえて眉唾で実演には臨んだ。信ずるのは自分の目と耳だ。

平土間2列目中央の席はスピノジの真後ろなので、指揮者の頭が視界の邪魔になるんじゃかいか、
と前日に心配になったが、実際には杞憂であった。
前日の『怒れるオルランド』同様、スピノジのしなやかな体型に似通った滑らかな指揮ぶりで、
アンサンブル・マテウスは若々しく溌剌とした音楽を奏でる。このオケの出す音は、低音弦楽器の
くっきりとした響きと、生き生きとした色彩感に溢れた高音弦楽器との対比が絶妙で、しかも上手く
融合している。
このバロック・アンサンブルとこの劇場とは、規模と音響の面で素晴らしくマッチしている。

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序曲の間、ステージ上の円形の壁は閉じられているが、そのすぐ後に「オンブラ・マイ・フ」の
前奏が始まると、引き戸が開くように中央から左右に壁が開いて、妖精が飛び回っていそうな
秘密の森が現れる。
森の神秘性を強調するために、ステージから霧のようなスモークがふわ~っと客席に流れて来る。
木々の緑と木洩れ日と清涼な空気の流れとを写実的に表現した舞台の視覚的効果は抜群で、
あまりに正攻法なのに、その清々しさにのっけから気分は高揚する。
プラタナスの木陰の美しさに感極まったセルセが歌う「オンブラ・マイ・フ」を聴きながら、舞台
効果と音楽の叙情的な美しさが相まって、観客は主人公とひと時の幸福を共有した。
蚕から絹糸を取り出すように、きらめく細い音を伸ばして緊張を高め、縒りをかけつつ糸を紡ぎ出す
慎重さでマレーナ様は清々しいアリアを歌うので、こちらは最初から涙がこぼれそうになった。

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叙情性溢れるこの音楽で、いきなり最初から感動の場を作ってしまうとは、ヘンデルもかなり変わった
構成の作曲をしたものだと思う。
この歌を歌っている時点でのセルセは、自然美に感動する真っ当な精神の持ち主だ。

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         セルセに口説かれ迫られて、身をくねらせるロミルダ。

木の上からするすると降りてくるロミルダは森の精か木の精さながらで、その清純な美しさには
セルセでなくても参ってしまうだろう。ロミルダ役のアドリアーナ・クセローヴァは、目がパッチリとして
舞台栄えがするルックスと素直で甘い声の持ち主で、役柄にぴったりである。
ストレートで癖のない歌い方も好感が持てる。

それに対して、姉のアタランタ役はダニエルちゃんで、全ての面で対照的だ。
いつもの通り、自信たっぷりに変な発声法で聴くに耐えないような濁った声を張り上げる。オーヴァー・
アクションの似合うド派手なルックスとコケットなシナも相変わらずだ。諦めの境地になって、また例の
ワンパターンか、と彼女には苦笑してしまうのだが、なぜか観客ウケがよいのが不思議だ。
コミカルな演技が上手いのは毎度だが、ダンスで鍛えた体の柔らかさの賜物か、様々な姿勢で歌える
のには感心した。

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         セルセも呆れて、かしましいロミルダの口を塞ぐ。

セルセの弟アルサメーネ役は、その晩は喉の調子が万全ではないが歌う、というアナウンスの入った
ベジュン・メータだ。高音になるととたんに声量を落としているものの、それ以外は押し出しがしっかり
したツヤのある声でテクニックにも問題はない。昨年から彼の声に魅力が増したので見直したのだが、
今回も期待を裏切らない。
コミカルな演技や表情もなかなか上手く、この役に嵌っている。

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         アルサメーネを空安心させるセルセ。


セルセの婚約者アマストレ役のルチアーナ・マンチーニが、小柄なのに迫力ある中低音をダダダダッと
機関銃のように発射して歌うたびに、拍手喝采であった。最初は迫力満点なので度肝を抜かれたが、
だんだんといつでも一本調子で押しまくるのが鼻についてきた。美しい声とか歌唱という範疇には全く
入らない。役を選ぶ声質だ。
しかし、男装のスパイのように登場する謎の女として、要所要所に登場して、ストーリー展開を変える
得な役割だし、声量は十分すぎるほどあるので、観客のウケがよかった。

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マレーナ様は、前半は特にパワー温存のため声量をかなりセーブしていた。それで、しみじみと聴か
せるアリアは弱音の美しさが堪能できていいのだが、クレージーな性格を反映したような曲になると、
声が小さいとちょっと説得力に欠ける。しかも、他の歌手は馬鹿でかい声を張り上げる人が多かったの
で、相対的に声量のみを比較されると損だ。
なぜかこの日の観客は、声量で勝負の歌手に大甘で拍手喝采するので、美声だが声量少なめだった
マレーナ様だけ不当に評価されているような気がした。もともと絶対的声量に乏しい人ではないことは、
ダイドー役やネローネ役やイノ役で聴いた限り、はっきりしている。今回は主役だから長丁場をほぼ出
ずっぱりで、しかもアクロバティックなテクニックが必要なアリアが多いので、大声を出しまくりパワーで
勝負の歌唱は、美意識の点からも避けたかったに違いない。
ただ、かぶりつき席だったせいか、発声のたびに直前に鼻から息を吸い込む音がずすーっとするのが、
ちょっとバルトリ姐の影響なのか、かなり耳に付いた。

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            第二幕になってからは、声量も出して
            アクロバティックなアリアを披露した。

しかし、マレーナ様の醍醐味は、何といっても演技を含めた全体の表現力とカリスマ性にある。
完全に男性になりきった迫真の演技で好色な馬鹿殿セルセを演じ、表情にも態度にも一瞬の隙も
ない。
体型も動きも、本当に男性としか見えないから、ズボン役のマレーナ様を初めて舞台で観る人は
驚いたことだろう。

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癇性で独善的でエキセントリックでコミカルな役であるから、セルセはマレーナ様の当たり役になるに
違いない、と思ったとおりの迫真の演技だった。
女性らしい胸のふくらみは消していて、薄いブラウスになっても、筋肉質の厚い胸板にしか見えない。
例えば、他のメゾがズボン役を演じる場合、体型や顔つきがなかなか男性には見えないし、動作も
男性になりきっていることは少ない。それが、マレーナ様の場合、声以外は身振りも男性そのものだ。
ロミルダを口説く時には、軽妙な足取りのダンスやタンゴのような踊りもするし、見ごたえ抜群だった。

エイドリアン・ノーブルの演出は、兄弟と姉妹の恋の鞘当に男装の女性も登場する舞台を森に設定
したので、シェイクスピアの『お気に召すまま』の雰囲気そのもの。
舞台装置は、写実的な森が回転し、それを囲む円形の壁が開いたり閉まったりするのみでシンプル。
それなのに、効果は抜群で、ファンタジー溢れる演劇的な空間になっていた。
相当高レベルの演技力が要求されたに違いなく、それに歌手は皆応えて、芝居の役者並みの演技を
しつつ歌うのだった。
昨年ウィーン国立歌劇場で上演されて好評を博した、同演出家による『アルチーナ』のようにDVD
化もしくはプロダクションとして定番化したらいいのにな、と思う。
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by didoregina | 2011-10-27 17:12 | オペラ実演 | Comments(14)

デュモーのチェーザレ公演中!

クリストフ・デュモーがタイトル・ロールの『ジュリオ・チェザーレ』、フランス北部各地を
公演中。

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5月6日8日がランス、5月11日12日がブレストでの公演は終わり、5月19日20日22日に
ヴェルサイユ、そしてマルゴワールの本拠地トゥルコワンで5月26日27日29日という予定に
なっている。

ヴェルサイユの劇場サイトの写真を見ると、ちょっとロココ調の衣装である。会場の雰囲気には
ぴったりかも。

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         デュモー=チェーザレの立ち姿の凛々しさ。


しかし、サイトを開くと最初に出てくる大きな写真はデュモー選手の『オルランド』で、チェーザレとは
関係ない。いったいどういう了見でこの写真を見出しに使ったのか。。。


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         ソニア・ヨンケヴァはなかなか美人のクレオパトラで
         デュモー=チェーザレとのヴィジュアル・バランスがいい。

ブレストの劇場サイトでは、ヴェルサイユのと同じようなプレス向け写真とともに、音源もアップ
されている。しかし、ここで聴けるEmpio diro tu seiは、あまりにも悠長なテンポで切れが
悪く緊張感に乏しく、デュモー選手の歌声も妙になよなよした感じで、耳を疑うほどだ。
暗雲垂れ込めた天空裂けよ、とばかりに呪詛の言葉を吐き出すチェーザレの怒りが表現されていない。
このもっさりした演奏は、指揮のマルゴワールのお年のせいではないかと思われる。

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同じくデュモー選手が、2009年にフライブルク・バロック・オーケストラの演奏と共に歌った
録音での、男っぽさと覇気溢れる歌唱と比べてもらいたい。


    
        器楽演奏にも、風雲急を告げる緊迫感が充満。


今週末も来週末も、丁度別の用事が入っていて、デュモー選手のチェーザレ実演鑑賞が
叶わないのが、無念である。でも、きっと今後youbutuに音源や動画がアップされていく
ことを期待し、他のアリアでのデュモーの男らしい歌唱を聴きたいと願うばかりだ。

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by didoregina | 2011-05-21 10:44 | オペラ実演 | Comments(8)

ジモーネ・ケルメスの『愛の色』

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オペラ『リナルド』の幕間(!)でのケルメス姐サイン会で購入したのは、2010年発売のCD
『愛の色』Colori D'Amoreである。

前作Lavaに続いてのクラウディオ・オゼーレ指揮レ・ムジケ・ノーヴェとのコラボだ。というより、学究
肌のオゼーレが主導して作られた、という気がする。いいブレインである。
アレッサンドロ・スカルラッティ作曲のアリアが5曲入っているのと、CDに収められた全14曲のうち
13曲までが世界初録音というのが気に入った。ボノンチーニ、カルダーラなど、ナポリ派の作曲家に
よるアリアを集めてある。
ボノンチーニ作曲の『オンブラ・マイ・フ』は、ヘンデルが後にこれを元にして似た曲を作ったという
いわくつきだが、ケルメス姐曰く、こちらのほうがよりシンプルで美しく心に響くので好きだ、と。


       レコーディングで感極まってしまったケルメス姐。


しかし、このCD全体としては、どうもケルメス姐らしいハチャメチャ感に乏しく、妙にしおらしく
大人しすぎるというか抑制のききすぎたような歌い方に終始している。だからこのCDだけ聴くと、
ケルメス姐、もうすこし羽目を外してもよろしいのでは、と言いたくなる。
しかしこれはLavaとの対比で、Colori D'Amoreのほうでは弱音を強調してしんみりと聴かせる
ことに徹した結果だと思う。弱音の美しさにそそられる人にはたまらないだろう。

つまり、以前アンドレア・マルコン指揮ヴェニス・バロック・オーケストラと組んで続けて出した2枚の
CDと同様、続き物としての陰陽コンセプトになっている。
すなわち、ヴィヴァルディの宗教モテット集のAmor Sacroでは、炎のような激しさで押しまくり、
宗教曲らしからぬぶっ飛び具合を売りにしているのに対して、同じヴィヴァルディのアリア集Amor
Profanoでは、世俗の愛を歌った曲を集めてあるのに、逆にしみじみ切々とした歌い口で意外性を
出しているのだ。
押しの一手というのは若い子にまかせておけばよろしい。中年以降は、あの手この手の手練手管で
騙すのである。

だがまた、やはり姐は舞台で見て聴いてみないとその本領がわかりにくい、ということもはっきりした。


舞台『リナルド』では、魔女アルミーダ登場の際歌われる「恐るべき鬼女たちよ」でのいかにも
ケルメス姐らしいパフォーマンスで観客の心をぐっとつかんだのだった。


        ヴェニス・バロック・オーケストラとの2010年ライブ

やっぱり、動画だとちょっと迫力不足だ。息を呑むような弱音の美しさが伝わらない。


聞き比べのため、カリーナ・ゴーヴァンの歌唱(オッタビオ・ダントーネ指揮2009年ライブ)↓


       迫力はあるが、単に重量に物言わせてるだけのような気もするゴーヴァン。
       ディドナート主演の『アリオダンテ』(カーティス指揮)には、
       ゴーヴァンとルミューの重量級歌手が2人登場するので楽しみ。


ついでに、ロベルタ・インヴェルニッツィ↓


       巻き舌と演歌的熱唱で押し出すのが、ロベルタお姉様さまの特徴。
       この人の場合、宗教曲では清楚に、魔女や愛の歌では恨み節
       と、割と正統的な歌い分けをしている。


最後に駄目押しで、チェチリア・バルトリ(2010年12月@コンセルトヘボウ)↓


       華麗な技巧と力強さはバルトリ姐そのもの。
       隠し撮りのため歌唱の音質はイマイチだが嵐の効果音が楽しい。
        
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by didoregina | 2011-05-12 20:56 | CD | Comments(2)

『リナルド』@ケルン歌劇場はケルメス姐の独壇場

Rinaldo @Opernhaus Koeln 2011年5月8日

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photo by Paul Leclaire

Musikalische Leitung  Alessandro De Marchi  
Inszenierung  Sabine Hartmannshenn
Bühne  Dieter Richter   Kostüme  Susana Mendoza
Dramaturgie  Tanja Fasching   Licht  Nicol Hungsberg

Goffredo  Hagen Matzeit
Almirena Krenare Gashi
Rinaldo Patricia Bardon
Eustazio Steve Wächter
Argante Wolf Matthias Friedrich
Armida Simone Kermes
Mago Yong Doo Park
Araldo Gustavo Quaresma Ramos
2 Sirenen Ji-Hyun An & Kathleen Parker
Ein Diener Harald Beutelstahl
Orchester Gürzenich-Orchester

ケルン歌劇場への初遠征だ。日曜でもマチネ公演がないのがガンで、なかなか行けなかった。
行ってみれば何ということはない、車で1時間弱である。それ以上かかりようがない。ドイツの高速
道路には速度制限がないので、皆飛ばす。夜の高速は真っ暗なので、前の車のテールランプを
頼りに走る。見失うまいとそれに速度を合わせると、時速150キロ位になってしまうのだ。

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        友達と総勢4人で出かけた。夜6時の開演前に、まずは腹ごしらえ。
        3幕のバロック・オペラだから終演は真夜中に近くなるかもしれない。
        K子さんお勧めの大聖堂正面のレストランで、旬のアスパラガス・メニュー。
        いいお天気の日曜日だったから、テラスはほぼ満席だったが、
        特等席テーブルが丁度空いた。座ったまま撮っても大聖堂が迫る。

ケルン歌劇場は、大聖堂にも程近く、歩行者天国の繁華街からすぐ。正面外観はたいしたことない
モダン建築だが、中に入るとフォアイエは全吹き抜けで広々といい感じだ。
平土間座席配置は緩やかな傾斜の扇型で、左右端以外では見切れることがほとんどない。
バルコン席は非常に変わった造り。
トイレだけはドイツなのにイマイチで、狭いし数が少ない。

前から4列目右端の席だった。
オケ・ピットを取り囲むような花道を造ってステージを延長した造りの舞台になっている。
緞帳式の薄いカーテンには、アイシャドーで隈取った目だけを出してブルカみたいなものを被った
女性の大写しの写真がプリントされている。
両壁面は、オケ・ピットの前までデコールがされている。弾丸の跡が穿かれた聖堂の内壁で、
崩れた石の質感や柱頭の飾りや彫り加減が絶妙のリアルさ。石で出来ているようにしか見えない。

カーテンが上がる。舞台は聖堂をそのまま総司令本部に使っているようだ。エルサレムに駐屯する
十字軍の本部である。西洋キリスト教国の象徴としての小道具は、ピンボールの台とコカコーラが
詰まった冷蔵庫だ。そして、大きな世界地図。
軍服姿のゴッフリードと聖職者の格好をしたエウスターツィオの二人のCTは、その服装で高位を表し
ているのに対して、歌声は非常に頼りなく、思わず聴いている方がこけそうになる。
(こけるといえば、アルガンテ登場時のトランペットも、大変なコケ具合だった。第三幕になって持ち直
したから、あれは演出上わざとやったのか、と疑ってしまうくらいヘタだった。)

第一幕は状況説明が長く、リナルド役のパトリシア・バードンも含めて、悪役登場までの歌手全員、
声量が乏しく迫力に欠けるから、盛り上がる部分がなく、少々退屈だ。
アラブ風の被り物をしたアルガンテの低音が堂々と響くのに比べて、それまでの登場人物は皆、
なよなよした弱弱しい声なのだった。
舞台がぱっと華やぎ盛り上がったのは、ケルメス姐扮する魔女アルミーダが、世界地図を破って
舞台正面奥から登場した瞬間だ。

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        アルガンテといちゃつくアルミーダ。陰に隠れているのが
        リナルドとアルミレーナのカップル。photo by Paul Leclaire


もう、それ以降はケルメス姐の扇情的歌唱に煽られ、客席は心地よい陶酔に浸るのであった。
とにかくコントロールがしっかりした歌と声なので高音のピアニッシモも美しく、コロラチューラを
張り上げることなく上品に効かせ、シアトリカルに盛り上げる。緩急自在で安定しているから、
安心して聴くことができるのだった。エキセントリックなのは外見だけで、歌は非常に正統的だし、
声を力んで張り上げたりせず、嫋々たる歌心満点で、楚々とした可愛げさえある。嫌味がない。


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        魔法(麻薬?)に酔って、皆コスプレを始めるのが愉快。
        鎧兜姿になってからのリナルドは、声も凛々しくなった。photo by Paul Leclaire
        
2幕以降は、リナルド役のパトリシア・バードンも声が出てくるようになった。だが、何といっても
オーラ不足の感は否めない。声だけ聴けば上手いCTのようなドラマチックな表現もできるアルト
なのだが、ヴィジュアル的に弱い。頼りない若造というイメージを創ってはいるが、主役としての
華が全く感じられない。コルネリア役だったこの人が出てくるととたんに退屈に感じられたグラインド
ボーンの『ジュリオ・チェーザレ』から進歩していないのだ。技量の限界かパーソナリティの問題か。


アルミレーナ役の歌手も若くてプロポーション抜群だというだけで、誰でも知っていて一番の聴かせ
どころアリア『わたしを泣かせてください』でさえも、盛り上がりに欠ける始末。

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       ベッドに繋がれたまま歌うアルミレーナ。photo by Paul Leclaire


オケは舌を巻くくらい上手い。暴走とは無縁だが、勘所を押さえている。
第一幕2場の小鳥のさえずりは、夢のようだし、『わたしを泣かせてください』の伴奏も劇的に
盛り上げ重厚。
第二幕最後のアルミーダのアリアでは、チェンバロのオブリガードがほとんど独走してとどまらず、
ケルメス姐のアルミーダを怒らせ、アジリダで対抗した。その二人のコミカルな掛け合いで舞台は
歌謡ショーの様相を呈した。もちろん、ケルメス姐のワンマン・ショーだ。観客を沸かす術なら
お手の物のケルメス姐の独壇場となった。

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       盛り上がった後の2度目の幕間に、フォアイエでケルメス姐のサイン会。
       ツーショットのため、立ち上がって抱きついてポーズをとってくれる大サーヴィス。
       上手いタイミングでのサイン会だったから、CD売り上げも好調だった。


第三幕では、歌手もほぼ全員絶好調になった。(エウスターツィオ役のCTだけは最後まで音程が
不安定だったが。)
しかし、アルガンテが捕らえられ拷問にかけられるのが、まるで某国の敵に対する暴虐そのまま。
十字架型の電気ショック装置とか、水攻めとか、爪を抜かれたりして大変だ。

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        似たものカップルのアルミーダとアルガンテ。
        最後に改宗した二人も結ばれる。photo by Paul Leclaire
        

リナルドもトランペットとの掛け合いで歌うアリアで、ようやく主役らしい華を見せ聴かせてくれた。
このトランペット・ソロは秀逸だった。
第一幕とは異なり、スピーディかつ変化に富む音楽と演出で一気呵成に盛り上がり幕。


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      サイン会でのケルメス姐。幕間でのサイン会後、またしっかり
      歌うというのが、いかにも姐御らしい。

ようやく念願かなったナマのケルメス姐だったが、期待以上だった。CDで聴くとちょっと頼りない
かな、と思われる部分のある歌唱が、舞台では説得力を持っていた。やっぱりナマで見て聴いて
ナンボの舞台人なのだ。彼女出演のオペラは、今後も見逃せない。
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by didoregina | 2011-05-09 10:29 | オペラ実演 | Comments(14)

モネ歌劇場の2011/2012年シーズンの演目

アムステルダムのミュージックテアターと並んでユニークな演目で勝負する先鋭の歌劇場といえば、
モネをおいては他にはあるまい。双方とも小国の首都の国立歌劇場である。お国の文化政策が
そこに反映していることは間違いない。
オペラを総合舞台芸術の最高峰と捉え、文化振興・強化・教化のために知力と財力を惜しみなく注ぎ
込む、という姿勢がよくわかる。頼もしいことである。21世紀のヨーロッパに住む醍醐味がここにある。

さて、そのモネの来シーズン演目だ。一言で言うと、素晴らしいトンガリ具合だ。アムスを頭ひとつ分引き離した感がある。

9月2日  ハイドンの『騎士オルランド』演奏会形式。ヤーコプス指揮フライブルク・バロック・オケ。
     タイトルロールにステファン・ドグー。この人、去年ホランド・フェスティヴァルでDNOプロの
     『モレナ山中のドン・キホーテ』主役だったが、とにかく上手い。役者としても端倪すべから
     ざる才能の持ち主である。

9月10月 ケルビーニの『メデア』ルセ指揮レ・タラン・リリク
     ナジャ・ミヒャエルが主役。クルト・シュトレイト、ストテインらが脇を固める。
     数年前のプロダクションの再演だ。しなやかな肢体と美しい顔にドスのきいた声のナジャは
     見逃せない。

9月9,10日 シマノフスキーの『ロジェ王』演奏会形式。ヘンヒェン指揮。
       なかなか実演の機会は少ないと思う。(今シーズンマドリッドでやってるけど)
       一度ナマで聴いてみたいと思っていた。

10月11月  エネスコの『オイディプス』
       主役にディートリッヒ・ヘンシェル、ルミュー姐、ヘンク・ネーフェンその他。
       結構好きな作曲家だが、オペラは初めて!

12月   マスネの『サンドリヨン』
      知ってる名前がキャストにないが、マスネでもこういうマイナーなのを上演という心意気を
      買いたい。

1月2月  シュトラウスの『サロメ』。リセウとの共同プロの新作。ギイ・ヨーステン演出。
      定番オペラだから、新演出で勝負だ。

3月    ドボルザークの『ルサルカ』。グラーツ歌劇場との共同プロ。
      実は、このオペラ、生舞台を見たことがない。よっぽどキャストに魅力がないと。。。

3月12日  ヘンデルの『テオドーラ』の演奏会形式。ニケ指揮コンセール・スピリチュアル。
      ピオーが主役、ザゾ、パトリシア・バルドン他。
      ヘンデルだが、これも相当マイナーだ。

4月    オスカー・ビアンキの Thanks to my eyes。エクサン・プロヴァンス・フェスティヴァル
      で今年上演、ベルギー初演の現代モノ。

4月5月  ヘンデルの『オルランド』ヤーコプス指揮ビーロック(!)演奏、オーディ演出。
      ベジュン・メータが主役、カルトホイザー、スンハエ・イム他。
      デュモー選手でないのが残念だが、バロック・オペラ・ファンなら見逃しは許されない。

4月25,29日、5月3日  ロッシーニ(!)の『オテロ』
      グレゴリー・クンデとアントナッチのコンビ。ヴェルディでなくロッシーニというひねり技。

6月    ヴェルディの『イル・トロヴァトーレ』ミンコフスキー指揮。
      シーズンのトリを飾るヴェルディの大作だが、ミンコフスキー指揮というのが意外で
      モネらしい。


こういうラインナップの国立歌劇場は、世界中見渡してもまずないだろう。モネの面目躍如である。
ついに、モネはDNO@アムステルダムを超えた。
あとは、マレーナ様が再来シーズンに戻ってきてくれたら万全だ。(多分実現するはず。)
    
       
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by didoregina | 2011-03-21 20:37 | オペラ実演 | Comments(4)


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