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テイト・モダンとセント・キャット

泊まったホテルはストイックで (別の言葉で言うと、ボロくて最低限の設備しかない)、朝食時間は7時から9時までとスパルタ式である。
これには、朝早くから1日目いっぱい観光ができるというメリットもある。

本日も、お金を使わないですむ場所、美術館で過ごすことにする。
テイト・モダンに開館前から並んで(早く着きすぎたのだ)、10時に入館。
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         ミレニアム・ブリッジを歩いてテムズを渡り、テイト・モダンへ。

イギリスのものだけでなく、一応西洋の現代美術を一通り俯瞰できるようなコレクションになっている。別の言い方をすると、満遍なく集めてあるけれど、これといった特徴がない。
その中で、光るものはやはり輝いているので、1,2点でもお気に入りが見つかれば、それでいいのだ。

昨日の大英博物館は写真撮影OKだったので、ここもそうかと思って知らずに撮ってしまったのは、イギリス人アーチスト、コーネリア・パーカー(1956年生まれ)の作品。
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これは、文字通り光っていた。持ち主が亡くなって引き取り手もなく手放された銀メッキのカトラリーやキャンドル・スタンドなどをジャンク・ショップで大量に買い込み、それをローラー車でひき潰しぺしゃんこにしたものを、テーブル・セッティングしてあるかのように丸く並べて上から吊るしたインスタレーションで、壮観である。
35卓ほどの、光り輝いてはいるが、使い途のない、誰も欲しがらないものが、部屋いっぱいに吊り下がっているのは、諸行無常を感じさせる。

その他のインスタレーションでは、ヨーゼフ・ボイスによる、そりにフェルトと獣脂を乗せたものが30くらいならんでいるのが気に入った。戦時中、飛行機事故で九死に一生を得た彼の体験を具体的に表現したものである。タタール人たちに助けられ、獣脂とフェルトで全身を包まれたおかげで生き延びたのだという。
この写真を撮ろうとしたら、係員から注意された。

アーチスト別の部屋では、アンディ・ウォホールの部屋が気に入った。壁一面に牛のポップ・アートがプリントしてあるのがまず、いい。そして、冷戦中の作品で、ソヴィエトの核基地を地図にしたちょっとプロパガンダっぽいものが彼のイメージから離れていて、その意外性がいい。

ジェフ・クーンズの部屋は、どうも彼らしい毒のあるものが少なくて、拍子抜けであった。この美術館の趣味で、キュートなものだけ集めたようだ。

一番よかったのは、マルレーネ・デュマスの部屋である。彼女は、女性であるからというだけでなく、とっても好きな現代アーチストなのだ。ひとつ、手に入れてみたいが、作品の値段が最近高騰しているのが気にかかる。
アパルトヘイト時代の南アフリカで生まれ育った白人女性で、80年代からオランダ在住である。
黒人、白人、女性、をモチーフにした絵が多いが、墨絵のような淡いモノトーンの色合いにピンクを混ぜてあるので、どうしてもエロティックな印象になる。具体的に性器を描いたりしたエロティックな題材の絵が多いのでもあるが。フェミニスティックな画家でもある。
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そのあと、タワー・ブリッジのすぐ近くにある、セント・キャサリン・ドックに出かけ、ロースト・ビーフ・サンドイッチのランチをとった。
ここは、ロンドン塔のすぐ近くなのに、観光客はあまり来ない。なんでここに来たのかというと、2年前のリベンジのためである。
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丁度2年前の4月に、ヨットでベルギーのゼーブリュッフから海峡を渡り、ロンドンに行こうとしたことがある。ぽかぽかと暖かくて絶好の日和だったのは、陸の上だけであった。ゼーブリュッフからラムズゲイトに渡るには12時間かかる。しかも、4月は満干の差が激しいためハーバーを出る時間やテームズをヨットで遡れる時間は限られているから、朝4時に出発したが、海上は波が高くヨットは揺れに揺れる。スキッパー以外は皆船酔いで、暑さ寒さも分からない、判断能力がなくなってしまったので危険だと判断し、引き返してきたのだった。ヨットでロンドンに行き、町のど真ん中のヨット・ハーバーで都会生活という夢はあえなく消えた。
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大都会のど真ん中に、こんな水辺の憩える場所があるなんて、とってもいい。いつか、ヨットで来たいものだ。

本日は、Oysterという地下鉄プリペイド・カードを買ったおかげで、とても安く上がった。キングズ・クロスからコヴェント・ガーデンまで駅3つの距離なのに一回4ポンドは高い!とこぼしたら、このカードなら1回1.5ポンドで済むはずだと、椿姫さまに教わったのだ。10ポンド分のクレジットを入れて(カードのデポジット代3ポンドも別途必要だが、有効期限は無期)残り2日間使いまくった。残った分は又来た時に使える。いいことを教わり、得した。
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by didoregina | 2009-04-06 16:53 | 旅行 | Comments(2)

London Calling!

今回のロンドン遠征テーマは「3日間でオペラ3つ」、裏テーマを「節約の限界に挑戦」とした。

ブリュッセルから出ているユーロスターでロンドンへ入るのは、とっても楽だ。街中の駅から街中の駅まで座ったままで行ける。荷物チェックも入国審査も簡単だし、チェックインが出発時間の30分前までOKなので、時間の効率もいい。
朝9時過ぎにマーストリヒトを出て、時差の関係で12時半にはロンドンのセント・パンクロス駅に到着した。ブリュッセルからは2時間丁度である。(そこまでの電車がトラぶって遅れ、途中で止まってしまい乗り換えたので約2時間かかった。11時半発のユーロスターにぎりぎり間に合った。)
お値段は、ベルギー国内の国鉄駅ならどこからでもユーロスター特急代金込みでロンドン往復80ユーロである。マーストリヒトの次の駅がベルギーなので、そこまでの片道2ユーロ40セントを上乗せする。
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ホテルの選定も、安いことと駅から至近であることを最優先した。キングズ・クロスとセント・パンクロス駅はくっついていて地下鉄線も沢山乗り入れているため便利である。ユーロスターから降りて歩いて5分もかからないアーガイル・スクエアの安ホテル。朝食込みシングル・アン・スイートで2泊98ポンドは、かなり安いと思う。もちろん部屋の設備は値段相応である。シャワーから暖かいお湯が出ることを期待したらいけない。まあ、2泊までなら我慢できる。イングリッシュ・ブレックファストはまあまあのボリュームで、歩き回る前のエネルギー補給に最適であった。

初日は、まず歩いて大英博物館へ出かけた。ロンドンには何度か来ているが、ここは今まで訪れたことがなかったのである。国立なので入場料はタダ。ここでアフタヌーン・ティーを食べて昼食兼夕食にしてしまおうという魂胆もあった。

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            ゴールデン・ウィークにセーリングする辺り、
            トルコのクサントスから持ってきたネレイド廟。

上階レストランのアフタヌーン・ティーは18ポンド50ペンスで、よそに比べたらとってもお安いが、倹約を旨とする今回のロンドンでは常軌を逸した値段である。そこで、1階のギャラリー・カフェに行き、上階とほぼ同じ内容のものをセルフで選ぶと、10ポンド40ペンスですんだ。紅茶、ツナときゅうりと胡麻バゲット・サンド、スコーン2個、デーメルの(!)チーズケーキという内容で、普段なら食べきれない量であるが、がんばった。これで、夕飯はもういらない。上階レストランにも、デーメルのケーキ付きウィーン風アフタヌーン・ティーというのがあって15ポンドだが、スコーンはつかない。

展示物は、ギリシャとローマの部屋を選んで見た。
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トルコにはギリシャ、ローマの遺跡が沢山あるが、ここ大英博物館にもいろいろ持ってきてある。訪れたことのある現ボデュルム、昔のハリカルナッソスのモウソレアム(世界7不思議の一つで、霊廟という言葉の語源になった)は、今は廃墟になっているが、残ったものは全部こちらに持ってきたようである。廟の屋根上の馬の像がいい。


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                  ネレイド廟。海の神ネレウスの娘達ネレイドの像。
                  エーゲ海の風をはらんだ服や、足元の魚が
                  海の精らしい爽やかさを運んでくる。

ギリシャ時代の神殿などの遺跡は博物館で見るものではない、という気がする。やはり、現地の太陽の下で、エーゲ海を見下ろす丘の上に建っているのが本来の姿である。現地でいろいろ見ることのできた幸いを思う。

小物では、アクセサリー・デザインが優れているのに目を見張る。ほとんど現在使われている材料とテクニックであるので、ガラスの陳列ケースを下からのぞいたりしてじっくり研究した。(彫金もホビーの一つなのだ。)
中でも素晴らしいのは、エトルリアのアクセサリーである。V&Aのジュエリー部門にあったシュリーマンの説明によると、現在でもまれなロウ付け継ぎ目の見えない高度なテクニックが用いられているという。なによりも、動物モチーフのデザインなど、カルティエのパンサーもきっとインスピレーションをここから得ていると思えるほどの完成度である。エトルリア文化には、謎が多いが、惹かれるものも多い。
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ローマ時代の小物陳列では、眠りの神ヒュプノスのブロンズ像に目を奪われた。
ベルギーの象徴派画家、フェルナン・クノップフの絵 I lock my door upon myself (1891)
でおなじみのブロンズ像に逢えたのだ。

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彼は、自宅にヒュプノスにささげた祭壇をつくり、そこにこのヒュプノスの石膏像を置いていた。


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by didoregina | 2009-04-05 12:52 | 旅行 | Comments(6)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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