プッチーニの『マノン・レスコー』初日@ROH

昼間はロイヤル・アスコット競馬のオープニング・デイを楽しみ、夕方からは、
ロイヤル・オペラ・ハウスでプッチーニの『マノン・レスコー』初日を観賞。
A day at the races とA Night at the Opera を一日に詰め込んだという
クイーンもかくやと思われる贅沢さである。

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2014年6月17日@ROHコヴェントガーデン

Conductor Antonio Pappano
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House
Director Jonathan Kent
Designs Paul Brown
Lighting design Mark Henderson
Choreographer Denni Sayers

Manon Lescaut Kristīne Opolais
Lescaut Christopher Maltman
Chevalier des Grieux Jonas Kaufmann
Geronte de Ravoir Maurizio Muraro
Edmondo Benjamin Hulett
Dancing Master Robert Burt
Singer Nadezhda Karyazina Lamplighter Luis Gomes Naval
Captain Jeremy White
Sergeant Jihoon Kim
Innkeeper Nigel Cliffe
Chorus Royal Opera Chorus

なんと、このオペラ、ROHでかかるのは30年ぶりで、新演出はジョナサン・ケントの手
になる。
出演歌手陣も豪華で、マノンにクリスティーヌ・オポライス、騎士デグリューにヨナス・
カウフマン、兄レスコーにクリストファー・マルトマンときた!
わたしにとっての初生カウフマンである。期待はいやましに盛り上がる。

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ドレス・リハーサルをご覧になった方からのまた聞きによると、時代設定は現代で、衣装・
デコールは「アナ・ニコール」風にチープでポップであるとのこと。
そして、舞台セットは2階構造で、階上での場面が多く、座席によっては非常に見ずらいと
いうことも聞いていた。

なるほど、第一幕、旅籠のシーンは安っぽいカジノとダイナースみたいだし、実際に
本物の車が舞台に上がったり、ハリウッド映画のようなリアリスティックな舞台装置や
衣装で、現代アメリカの拝金主義と消費社会という空虚なイメージが醸し出されている。

自らの美貌に自信のあるマノンは、都会での華やかな生活に目を瞠り、憧れを隠そうと
しない田舎娘だから、好色漢の格好の餌食である。
そして、騎士デグリューやエドモントは、いかにもアメリカ映画に出てきそうな学生だ。
デグリューは最初から最後まで白シャツに黒のぴっちりパンツ姿で、若々しさとナイーブ
さが強調されている。

カウフマンを生で聴くことが、今回の第一の目的であった。
その望みは、舞台至近のオケボックスの指揮者を真横から見る位置のサークル・ストール
席のおかげで、歌手の直接の声を聴くことができて叶った。
生の彼の歌声にはテノールらしからぬようなはっきりとした暗さがあるのが特徴で、それが
独特の魅力となっている。だから、テノールにはほとんど興味を覚えないわたしにもアピー
ルするものがある。明るい能天気さとは正反対のダークな陰影が魅力となっている。
今一番脂がのっていて最盛期かもしれない彼の歌唱には大満足した。

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実は、昨年モネ劇場で観賞した『マノン・レスコー』もほぼ同じく、オケの真横で舞台を
横から見る位置だったので、今回も一つ心配事があった。
舞台が見切れるのは仕方がない。それよりも、オーケストラの直の音が響きすぎて歌手の
声が座席にはよく届かず隔靴掻痒感が残るのではないかと。
しかし、その心配は不要であった。
パッパーノの元気いっぱい歌うような指揮から引き出されるオケの響きは、壮快であっても
爆音にはならなかった。そして、歌手の声も皆よく聴こえたのである。
主役のウェストブルックの歌声しか聴こえてこず、他の歌手は全く印象に残らなかった昨年
のモネとはえらい違いである。

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オポライスには、実はびっくり。
こんなに美人で若々しくプロポーション抜群だったのかと。そして、歌も悪くない。
どうしてもウェストブルックのマノン・レスコーと比較してしまうのだが、オポライスの
重さがあまりなく、ドスもほどほどに軽みさえ感じられる声がこの役にはぴったりだ。
特に第二幕でのアナ・ニコールばりのゴールド・ディガーぶりが、いかにも現代のマノン
らしく、オポライスは役になりきりだった。無邪気で馬鹿だけど憎めないかわいい女を演じ
歌い絶好調だった。
ただ、プッチーニのこの音楽には世紀末感とともに当時ではかなり新鮮なジャジーな
アンニュイが漂うはずなのに、オポライスの声質が少々あっさりしすぎて倦怠感や退廃の
色が足りなく感じられたのだけが残念だ。かわいらしさを前面に出しすぎていたためか、
パッパーノがその辺はあっさりと通り抜けてしまったためか。

兄レスコー役のマルトマンも、ジェロンテ役も、エドモンド役も警察官役も皆、舌を
巻くほどうまく、主役や準主役の誰か一人だけ突出してしまってほかの歌手が霞んでしまう
ということがなく、バランスよくまとまっているのだった。

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演出に関しては、カーテンコールでブーイングが出たが、わたしは非常に気に入った。
とにかく視覚的にわかりやすく、無意味にごちゃごちゃしたシーンや無駄もなく、センス
よく整理されているのだ。見ための軽いポップさが受けなかったのか、それとも舞台セット
がブーだったのかもしれない。しかし、新演出としては近年まれに見るほどのストレートさ
で勝負しているのがすがすがしいほどだ。
ファム・ファタールにはなれなかったが男を惹き付ける小悪魔のようなマノンという女の
愚かさと落ちぶれていく様が、現代社会を背景に浮き彫りにされて、ハリウッド映画の
ようなクリアさであっけらかんと見せる。何も考えずとも楽しめる。万人向けオペラ・
プロダクションとしてとてもうまく出来ているのである。
この点でも、昨年のモネのプロダクションとは正反対である。大陸と英米でのオペラの
違いがよくわかる。
by didoregina | 2014-06-25 19:15 | オペラ実演


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
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性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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