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Miele  現代イタリアの「死の天使」

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Directed by   Valeria Golino
Produced by   Valeria Golino
Written by   Angela Del Fabbro  Valeria Golino
Cinematography   Gergely Pohárnok
Cast
Jasmine Trinca as Irene/Miele
Carlo Cecchi as Carlo Grimaldi
Libero De Rienzo as Rocco
Vinicio Marchioni as Stefano
Iaia Forte as Clelia
Roberto De Francesco as Filippo
Barbara Ronchi as Sandra
Massimiliano Iacolucci as Irene's father
Claudio Guain as Ennio
Valeria Bilello as Irene's mother

2013   Italy




3月からのオランダ劇場公開に先駆けて、Movies that matterという団体主催の上映会で
先週、この映画を観た。
安楽死(尊厳死)をテーマにした作品であるし、英語字幕(原語はイタリア語)での一回限りの
先行上映だから、医学部学生をはじめとする若い観客が集まるかと思ったら、会場はガラガラ
だった。上映会後にディスカッションとかあるのかと思ったらそれもなかった。

ミエルというコードネームの30歳くらいの女の子イレーネが「死の天使」の役割で、イタリアでは
非合法の安楽死(尊厳死)を行う。顧客は大学病院に勤める友人から紹介され、イタリア各地に
赴いて、死だけを望んで生きながらえている末期患者に手を下す。
メキシコに遠征して手に入れた、犬の安楽死用経口薬を与えるという方法なのだが、彼女なりの
倫理観原則に基づいて儀式的かつクールな仕方で死への道案内をするのだ。

Miele  現代イタリアの「死の天使」_c0188818_1626293.jpg


一見ビジネスライクに冷静に処理しているように見えながら、安楽死に手を貸したあと、ミエルは
必ず肉体的・精神的に塗炭の苦しみに襲われる。まるで死神との取引によって、彼女の寿命が
その都度、削り取られていくかのように。
そんな辛い思いをして、しかもかなりやばい橋を渡ってまで他人の安楽死に協力するという彼女の
使命感や原動力はどこから来ているのだろう。大金の報酬という金銭的理由が第一とは思えない。
父親や友人やBFにも本心を絶対に見せない彼女の心の闇。それは、ほとんど最小限にほんの少し
しか示唆されないので、映像から想像するほかない。
10年前に亡くなったという母親の若いころのイメージが時たま映像に挿入されるから、何かそこに
関係があるのだろうと。


オランダではEU内では真っ先に医師による安楽死(尊厳死)が合法化されたが、様々な条件と
手順が必要で、簡便に日常的に実現できるというものではもちろんない。外国人や部外者には
合法ドラッグを手に入れるのと同じようなノリでオランダならば安楽死も楽に行うことができるん
じゃないか、と想像する人も多いようだが、単に死にたいとか死なせて楽にしてやりたいとかの
理由ではだめだ。
病気などの末期症状で耐え難い痛みのため人間らしい生活が送ることが不可能とか、植物状態
になったきり改善の見込みが今後ありえないとかの理由で、本人や家族が強く望み承諾することが
最低限必要である。

逆にいうと、イタリアではそういう切羽詰まった場合でも安楽死は法的には認められないから、
闇の死の商人や死の天使が暗躍しているのだろう、と想像させる。

Miele  現代イタリアの「死の天使」_c0188818_16485560.jpg

        

そんなミエルに、末期患者ではないカルロという老人からの依頼が来る。彼は身体は健康その
もので年よりずっと若々しく見えるが、厭世的というか少々鬱気味で人生に倦んでいるのである。
しかし、そういう人に安楽死をさせる、ということはミエルの職業(?)倫理観からは外れるので、
断固拒否をするのだが。。。。
カルロとの出会いから、彼女は自分を見つめ直すことになり、カルロのことを心配するあまりに、
何度も会っているうちに人生の先輩カルロを通じて、迷路に入り込んで失っていた自分自身や
人生の明部を取り戻していく。

そして、これがイタリア映画らしいなあ、と思った点なのだが、この映画はオープンエンドにはなって
いず、しっかりとしたまとめみたいな結末があるのであった。
このところフランス映画ばかり見ていて、どれもが曖昧なオープンのエンディングばかりなので、
この映画はその点でも新鮮であった。
by didoregina | 2014-02-24 09:59 | 映画


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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