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グルックの『タウリスのイフィゲニア』と『アウリスのイフィゲニア』を舞台裏側から

デ・ネーデルランド・オペラ(DNO)の『イフィゲニア2部作』を舞台上のコーラス席から鑑賞
した。コンセルトヘボウのコーラス席ならいざ知らず、歌劇場の舞台上に造られた客席に観客と
して座って裏側からオペラ鑑賞、という機会はめったにない。

DNOからのメルマガでそういうお知らせが来たので、即電話でチケット・ゲットした。
チケットはすぐに郵送されてきた。別便で集合場所や時間についての注意事項の手紙も来た。
(時間が間違っていたので、訂正メールもその後届いた。)
だから、実演体験を首を長くして待っていた。

13時30分開演の日曜マチネなので、13時15分に入り口付近のミィーテイング・ポイントに
集合。時間厳守。その前にコートなどはクロークに預けること。字幕が見えない位置なので、
簡単なプログラム・ブックの交換券もチケット代25ユーロに込みだ。

当日、集合場所には、老若男女が50~60人ほど集まった。老年の夫婦連れが大半なのは
普段の客席と同じだが、なぜか比較的若い男同士の二人組みが多いように思えた。

一行は、若い男性のアッシャー2人に従って、クロークのある一階の奥の方にぞろぞろと歩いて
行った。オフィス・ドアを抜けると、出演者および関係者専用のカンティーンだ。ロッテルダムの
コンサート・ホール『デ・ドゥルン』でも入ったことがあるが、カフェテリア形式の学食や社員食堂
の雰囲気で、料金はめちゃ安。

その先が楽屋で、そこから階段を上がると文字通り舞台裏に出る。暗い。足元には照明があるが、
迷わないように前の人に遅れずに付いて行く。オケ・メンバーも同じ通路を通って同じ舞台上に登る
ので、楽器を持った人たちも混じって歩いている。

グルックの『タウリスのイフィゲニア』と『アウリスのイフィゲニア』を舞台裏側から_c0188818_3261260.jpg

       舞台上の特設コーラス席からの眺め。正面が一般客席。
       普段のオケ・ピット上に格闘技リングほどの大きさのステージが
       造られ、オケは舞台上に登っている。

コーラス席は、注意書きから想像していたよりも座り心地がいい。半円状で傾斜が急な段5層に
席が作られていて、座面と背に造りつけのクッションがある。足元もゆったりスペースだし、前の
人も全く邪魔にならない。特設とはいえ、軋む音もしないし、しっかりした造りになっている。

こうしてステージ奥からステージおよび客席を眺めると、全体のフォルムがこの歌劇場にぴったり
と収まっていることがよくわかる。アムステルダムの歌劇場の客席は、ゆるい弧を描いた半円状に
配置されている。今回は、オケピットとステージの位置を逆転させ、舞台上にやはり半円のコーラ
ス席が設置されたので、歌劇場内部全体の造形は、ギリシャの古代劇場そっくりになった。舞台
面積のやたらと広い(自称世界で2番目に大きいという)アムステルダム歌劇場ならではの壮観さ
だ。モネ劇場では、さすがにこの効果は得られなかった。

私は、舞台下手側のコーラス席に座った。オケの位置はやはり半円状に設置されている。
今回の指揮者ミンコフスキーは、舞台および一般客席に背を向けず、下手に顔を向けて中央に
立っている。
指揮者の左側が舞台で、右側および後側にオケが陣取る形だ。歌手の後方舞台に指揮者が
立っているわけだから、一般客席に向かう歌手からは指揮姿は見えない。だから指揮者を映す
モニターが元々のオケ・ピットや客席など計10箇所くらいに設置してあった。

舞台上コーラス席の真ん中に、合唱団員が座っている。それに混じる形で、私達が座っているの
だった。注意書きに、舞台上ではおしゃべり厳禁、あまり身動きするな、とあった。でも、一般
客席からコーラス席ははたしてよく見えるんだろうか、と疑問が湧いた。こちらからは鏡映しのように
なっている一般客席は、上演中は暗いからそれほどよく見えない。逆もまた同様ではないだろうか。

グルックの『タウリスのイフィゲニア』と『アウリスのイフィゲニア』を舞台裏側から_c0188818_4124252.jpg

        オケと指揮者が下方目の前によく見える位置。

オケの音は当然ながらよく響いてくる。指揮者もほぼ正面でよく見える位置である。
歌手が乗った舞台は、というと、距離的に近いので、声も心配したほど聴きづらくはない。
古楽アンサンブルによる演奏なので器楽の音がそれほど大きくないから、大編成のモダン・オケが
ピットに入ったとき(R.シュトラウスなど)よりもずっと歌手の声はよく聴こえてくるほどだ。
それに、演技があるから様々な位置と向きで歌うので、後ろ姿ばかり見てる、という気にはさほど
ならなかった。

ただ、ミンコさんは、位置的にちょっと全体像がつかみにくくて、指揮しづらいのではないか、とは
思えた。左目でちらちら舞台の歌手を見ながらの指揮になるし、オケ・メンバーの3分の1は指揮者
の後側という変則的な配置なのだ。

こういう舞台演出を考えたオーディは、休憩中にカンティーンを通ったら、コーヒーとスナック菓子を
買っていた。このプロダクションの演出担当のみならず、DNOの芸術監督という高位の人なのに
自分でお金を出して普通に社員食堂でコーヒーを買っている姿は、私達の親愛の情を誘った。

2つのオペラを一挙に上演となると、40分ほどの休憩をはさんで全部で5時間近くの長丁場である。
演奏家達や舞台裏で実際に働いている人たちは大変だ。
座っているだけでいいのに、第二部が始まるときには、コーラス席の観客の数は少し減っていた。
by didoregina | 2011-09-19 21:28 | オペラ実演


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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