『アンナ・ボレーナ』@ウィーン国立歌劇場ライブのコスチュームに陶然
4月5日にウィーン国立歌劇場から『アンナ・ボレーナ』がテレビ中継された。
arteがライブ放映してくれて、自宅茶の間で見られたからありがたい。
ANNA BOLENA|Gaetano Donizetti
Evelino Pidò | Dirigent
Eric Génovèse | Inszenierung
Jacques Gabel | Bühnenbild
Claire Sternberg | und
Luisa Spinatelli | Kostüme
Bertrand Couderc | Licht
Johannes Haider | Choreographie
Valérie Nègre | Regieassistenz
Ildebrando D`Arcangelo | Enrico VIII.
Anna Netrebko | Anna Bolena
Elina Garanca | Giovanna Seymour
Francesco Meli | Lord Riccardo Percy
Elisabeth Kulman | Smeton
Peter Jelosits | Sir Hervey
Dan Paul Dumitrescu | Lord Rochefort
主役のネトレプコはじめ、エンリーコ(ヘンリー8世)役のダルカンジェロ、ジョバンナ(ジェーン・
シーモア)役のガランチャと、歌唱もルックスも素晴らしい歌手が揃って、目に絢爛、耳に心地よく、
TVの前に座ったまま陶然となり、春の宵にふさわしい夢のようなオペラ世界に酔いしれたのだった。
登場人物のさまざまなコスチュームのゴージャスさと的確な時代考証はうれしいサプライズで、
これを追うだけでも楽しめた。
アンナ役のネトコちゃんは、いったい一晩に何回着替えたんだろうと思えるほど、各場・各シーンで
異なる衣装だった。そしてそれが、波乱万丈の人生を送り、毀誉褒貶の激しかったアンナの境遇を
視覚的に物語っているのに感心した。
ジョヴァンナ(ガランチャ)のノーブルで非の打ち所のない美しさ。
女官という立場をわきまえてか、ドレスの色は押さえ気味。 質のよさそうなシルクの光沢が、后となる華やかな未来を暗示。
デン・ハーグのマウリッツハウス美術館のガラスケースに入っていた
ジェーン・シーモアの肖像。ハンス・ホルバイン(子) 1537年。
彼女の肖像画はいくつかあるが、これは馥郁たる気品を放っていて、
小品ながらゴージャス。
ダルカンジェロのエンリーコは、よくあるヘンリー8世の肖像画に
忠実ななりだが、かっこよさではTVシリーズ『テューダーズ』に
近い。もしくは、映画『ブーリン家の姉妹』でのエリック・バナに
通じるような現代人に受ける王様像。
宝石や毛皮などのアクセサリーもよく出来てて、時代考証が的確。
ローマ国立古代美術館蔵。ハンス・ホルバイン(子) 1540年。
こんな顔と体格の歌手ならけっこういるが、ダルカンジェロでよかった。
クライマックスでの狂乱のアンナ。後ろにいるのは愛娘エリザベス。
ネトレプコは、役柄のイメージをおそろしいほどの説得力で体現化
できる稀有な歌手だ。歌唱でもヴィジュアル面でも。この舞台と
彼女のアンナはわたしの中で伝説化するだろう。
作者不詳のアン・ブーリンの肖像。
映画『ブーリン家の姉妹』でのアン・ブーリン(右)は、野心家。
スカーレット・ヨハンセン(メアリー)とナタリー・ポートマン(アン)。
史実とは異なるので首を傾げたり突っ込みたくなるところの多い映画
だったが、コスチュームものとして楽しむならまあまあ。
女官たちに囲まれ、監禁されたアンナ。
女官たちの衣装のグレイ・トーンがバーン・ジョーンズの絵を
思い起こさせた。一つ一つが凝ったデザインでグレイの度合が
グラデーションになって、張りのあるタフタ・シルクのドレープも
美しくて、うっとり。
テイト・ギャラリーにあるバーン・ジョンーンズの『黄金の階段』
(1880)の、乙女たちの衣装のペール・トーンの感じが似てる。
ただし、質感はオーガンジーのようでずっと柔らかい。
とっかえひっかえの衣装のいずれも似合っていたネトレプコだったが、特に気に入ったのは
1幕目で被っていたフランス風の洒落た帽子だ。フランス(とオランダ)で教育を受けたアン・
ブーリンのエスプリをその帽子で匂わせていた。
ロンドン塔に幽閉されてからは、衣装にもアクセサリーにも豪奢さは少なくなったが、その分、
ネトレプコの地の美しさが出てきたから、それも悪くない。
悲劇のクライマックスに向かってひた走るパワーをどの歌手も存分に発揮し、音楽と舞台美術に
圧倒され、目が離せない舞台だった。
arteがライブ放映してくれて、自宅茶の間で見られたからありがたい。
ANNA BOLENA|Gaetano Donizetti
Evelino Pidò | Dirigent
Eric Génovèse | Inszenierung
Jacques Gabel | Bühnenbild
Claire Sternberg | und
Luisa Spinatelli | Kostüme
Bertrand Couderc | Licht
Johannes Haider | Choreographie
Valérie Nègre | Regieassistenz
Ildebrando D`Arcangelo | Enrico VIII.
Anna Netrebko | Anna Bolena
Elina Garanca | Giovanna Seymour
Francesco Meli | Lord Riccardo Percy
Elisabeth Kulman | Smeton
Peter Jelosits | Sir Hervey
Dan Paul Dumitrescu | Lord Rochefort
主役のネトレプコはじめ、エンリーコ(ヘンリー8世)役のダルカンジェロ、ジョバンナ(ジェーン・
シーモア)役のガランチャと、歌唱もルックスも素晴らしい歌手が揃って、目に絢爛、耳に心地よく、
TVの前に座ったまま陶然となり、春の宵にふさわしい夢のようなオペラ世界に酔いしれたのだった。
登場人物のさまざまなコスチュームのゴージャスさと的確な時代考証はうれしいサプライズで、
これを追うだけでも楽しめた。
アンナ役のネトコちゃんは、いったい一晩に何回着替えたんだろうと思えるほど、各場・各シーンで
異なる衣装だった。そしてそれが、波乱万丈の人生を送り、毀誉褒貶の激しかったアンナの境遇を
視覚的に物語っているのに感心した。
ジョヴァンナ(ガランチャ)のノーブルで非の打ち所のない美しさ。
女官という立場をわきまえてか、ドレスの色は押さえ気味。 質のよさそうなシルクの光沢が、后となる華やかな未来を暗示。
デン・ハーグのマウリッツハウス美術館のガラスケースに入っていた
ジェーン・シーモアの肖像。ハンス・ホルバイン(子) 1537年。
彼女の肖像画はいくつかあるが、これは馥郁たる気品を放っていて、
小品ながらゴージャス。
ダルカンジェロのエンリーコは、よくあるヘンリー8世の肖像画に
忠実ななりだが、かっこよさではTVシリーズ『テューダーズ』に
近い。もしくは、映画『ブーリン家の姉妹』でのエリック・バナに
通じるような現代人に受ける王様像。
宝石や毛皮などのアクセサリーもよく出来てて、時代考証が的確。
ローマ国立古代美術館蔵。ハンス・ホルバイン(子) 1540年。
こんな顔と体格の歌手ならけっこういるが、ダルカンジェロでよかった。
クライマックスでの狂乱のアンナ。後ろにいるのは愛娘エリザベス。
ネトレプコは、役柄のイメージをおそろしいほどの説得力で体現化
できる稀有な歌手だ。歌唱でもヴィジュアル面でも。この舞台と
彼女のアンナはわたしの中で伝説化するだろう。
作者不詳のアン・ブーリンの肖像。
映画『ブーリン家の姉妹』でのアン・ブーリン(右)は、野心家。
スカーレット・ヨハンセン(メアリー)とナタリー・ポートマン(アン)。
史実とは異なるので首を傾げたり突っ込みたくなるところの多い映画
だったが、コスチュームものとして楽しむならまあまあ。
女官たちに囲まれ、監禁されたアンナ。
女官たちの衣装のグレイ・トーンがバーン・ジョーンズの絵を
思い起こさせた。一つ一つが凝ったデザインでグレイの度合が
グラデーションになって、張りのあるタフタ・シルクのドレープも
美しくて、うっとり。
テイト・ギャラリーにあるバーン・ジョンーンズの『黄金の階段』
(1880)の、乙女たちの衣装のペール・トーンの感じが似てる。
ただし、質感はオーガンジーのようでずっと柔らかい。
とっかえひっかえの衣装のいずれも似合っていたネトレプコだったが、特に気に入ったのは
1幕目で被っていたフランス風の洒落た帽子だ。フランス(とオランダ)で教育を受けたアン・
ブーリンのエスプリをその帽子で匂わせていた。
ロンドン塔に幽閉されてからは、衣装にもアクセサリーにも豪奢さは少なくなったが、その分、
ネトレプコの地の美しさが出てきたから、それも悪くない。
悲劇のクライマックスに向かってひた走るパワーをどの歌手も存分に発揮し、音楽と舞台美術に
圧倒され、目が離せない舞台だった。
by didoregina
| 2011-04-08 15:21
| オペラ映像
コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。
by didoregina
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |
プロフィール
名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem
オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem
オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。
以前の記事
2020年 09月2018年 04月
2018年 03月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 08月
2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
タグ
オペラ バロック コンサート アート 映画 着物 ヨット ヘンデル マレーナ・エルンマン バッコスの信女 帽子 ヨハネット・ゾマー パーセル バッグ カウンターテナー ヴィヴァルディ クイーン ルトガー・ハウアー マレーナ・エルンマン ラファエル前派最新のトラックバック
カテゴリ
全体バロック
映画
オペラ実演
オペラ映像
オペラ コンサート形式
着物
セイリング
コンサート
美術
帽子
マレーナ・エルンマン
イエスティン・デイヴィス
クイーン
CD
20世紀の音楽
旅行
料理
彫金
ビール醸造所
ベルギー・ビール
ハイ・ティー
サイクリング
ダンス
ハイキング
バッグ
教会建築
カウンターテナー
演劇
未分類