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サヴァールは古楽界のリューか?!

エイントホーフェンのミュージックヘボーから、サヴァール指揮ル・コンセール・デ・ナションの
コンサートに招待された。2010年12月17日。
昨年のコンチェルト・コペンハーゲンのコンサート招待に続いて二年連続当選である。
単にくじ運がよかったのだろうか、それとも。。。

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       雪が積もると着たくなる蝋たたきの紬。
       厚地でほっこりと暖かく着易い。
       あられ模様の羽織を合わせて。
       吹き抜けのシャンデリアは、この手のものでは
       (どの手のものなのか不明だが)最大だそうだ。

このところの雪と寒さは尋常ではない。
だから、金曜日の晩、時間に余裕を見て出発した。エイントホーフェンへは車で1時間の距離だ。
その日、北部および西部は大雪で、電車のダイヤは乱れに乱れ、高速もひどい渋滞だったようだ。
4時半にデルフト駅を出た長男が、マーストリヒト駅に着いたのは9時15分だったそうだ。
南部は、たいした雪ではなく、高速もスイスイと、エイントホーフェンに7時45分ごろ到着した。
しかし、毎週金曜日、エイントホーフェンの商店は午後9時まで営業するということを忘れていた。
(普段は、6時には店が閉まる)
クリスマス前だから、人出は普段よりも多い。エイントホーフェンに着いてから悪い予感がした。
フィリップス・ミュージックヘボーは、目抜き通りの大きなショッピング・モール内にあるのだ。
案の定、駐車場に入るまでが、大変な渋滞である。車の列は遅々として進まない。
そして、フィリップスは開始時間に厳しいのである。これは、アンスネスのリサイタルでも経験済み。
果たして、8時15分の開演に間に合わなかった。

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           誰もいない2階のフォアイエは、
           ブルーの照明とパステルカラーの
           椅子が妙におしゃれだ。

間に合わなかった人が各階に10人くらいいた。
「23分後に最初の曲が終わりますから、それまでお待ちください」と、フォアイエの係員は
手馴れたものである。

一階も二階も、フォアイエが様変わりしている。夏に改装工事に入って10月に新装オープンした。
最後に来たのは3月のユンディのコンサートだから、この変化にはびっくり。
エキストリーム・メイクオヴァーと言っても過言ではない。いかにも80年代風だったインテリアはまるで
原型を留めていない。
絨毯も壁も天井もバーのカウンターも椅子も照明も全て新規一新で、大掛かりなイメチェンだ。
暇だから写真を撮りつつ見て歩いた。

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         階段踊り場コーナーは、ちょっと渋めの色。
         壁にはプロジェクション・ライティングを多用。

そうこうするうちに、「10分前ですから入り口で待機してください」と係員の声。
フォアイエとホールの間にある仕切られた空間に入れられる。ここにはホールからの音が漏れてくる。


Le Concert des Nations o.l.v. Jordi Savall@Muziekgebouw Eindhoven

Rameau - Orkestsuite uit Naïs (1748)
Rameau - Orkestsuite uit Les Indes Galantes (1735)
Rameau - Orkestsuite uit Zoroastre (1749)
Rameau - Orkestsuite uit Les Boréades (1764)

最初の「『ナイス』管弦組曲」は、だから、半分だけドアから漏れてくる音を聴いた。
『優雅なインドの国々』管弦組曲の始まる前に、ホールに入れてもらえた。

サヴァールは、もちろん指揮だけ。古楽系のオケ演奏家には、普通のオケ団員と比べて、通常
なんとも形容しがたいイナセな雰囲気が漂うのだが、このル・コンセール・デ・ナションは、また少し
異なる印象。古式床しいというか、ヴィジュアルの印象が音楽にぴったりなのだ。いや、別に18世紀
の服装をしているわけではない。しかし、なんとも雅なのである。

なぜだろう、と考えるに、まず、指揮者のサヴァールおよび団員の性別および年齢によるのが第一
の理由ではないかと思えた。
男性対女性の割合は、数えると7対1である。平均年齢は不明だが、あまり若くなさそうだ。
オケ団員の国籍はわからないが、ラテン系が多いような気がする。(調べたら、その通りだった)
それら全てが、北方の古楽アンサンブルとはヴィジュアル的に異なる印象を与えるのだ。

それでは、音のほうはどうだろう。
これが、耳にとろけるような感触で、とんがったところが全くない。ラモーのギャラントな雰囲気を
表現するには最上の音だと思えた。
このホールは、内装に木材を多用しているせいか、かなりデッドでモダンな音響である。古楽には
不向きだ。ここでこんなに優雅な音を聴いたのは初めてだ。その心地よさに浸ると、ポンパドール夫人か
マリー・アントワネットになったような気分である。ここはヴェルサイユか。


サヴァールは古楽界のリューか?!_c0188818_6552662.jpg

        休憩のドリンクはチケット代金込み。
        精神安定上にも混雑緩和にもいい。
        天井は、パネルを隠すように別のパネルを
        重ね、ブルーの照明がアトランダムに点滅。

トレンディなインテリアが美しく、ゆったりした椅子のコーナーも沢山あり、ドリンクはフリー。
こんなに優雅な気分に浸れる休憩はなかなかあるものではない。さすが、フィリップスだ。
コンサートに出かけるのは、非日常の空間、音楽と共に身をゆだねるという楽しみも大きい。
そうでなかったら、家でCD聴いてればいいんだから。そういう意味で、ここはプログラムもホールも
フォアイエも至れり尽くせり。

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        ラブ・チェアみたいなのもいくつかある。
        音楽専門ホールだが、クラシックだけに限らない
        せいなのか、トレンディなインテリア。


夢見心地のうちに後半のプログラムも進んだ。
全く無理や衒いのない指揮と演奏で、ナマの音楽の愉しさが満喫できた。
そして、主人が周りを見渡しながら言った。
「何でここに2年連続で招待されたかわかった」
「なんで?」
「年齢を正直に書いたんだろう」
すなわち、会場を見渡すに、もしかしたらわたしたちが一番若いかも、と思えるのだった。
ほとんど会場全部が白髪で光っている。主人は年齢の割りに白髪がないので若く見える。
サヴァールと同年輩か、平均年齢60歳以上であることは確かな聴衆は、雅な音楽にノリに乗った。
ブラヴォーの声が飛ぶ。
そこでアンコールは2曲。最初はテンペストの効果音が入る曲。
老年のアイドル、サヴァールの面目躍如というべきか、2曲目では聴衆に手拍子の参加を要請した。
それに応えて、手拍子し熱狂しまくる人々。これで立ち上がって踊りだす人も出たら、まるでアンドレ・
リューのコンサートのノリではないか。
これが、サヴァールは古楽界のリューなのか、と思ってしまった所以である(<ーごめんなさい)


           昨年ロッテルダムでのコンサート。
           同じアンコールと手拍子。
by didoregina | 2010-12-19 23:32 | コンサート


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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