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モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年

ザルツブルクでは2006年に、モーツアルト生誕250年を祝って、オペラ全22作が上演された。
22作ともなると、ごくごく若い頃(11才とか)の作品や、あまりにマイナーで今後50年間は
上演されることがまずないだろうと思えるような作品も含まれる。
それらが、全部DVDになってセット発売された。バーゲン価格で160ユーロほどだ。それなのに
わたしは買う気がなかった。TVでほとんど見ることができるからだ。
Bravaでは毎日のようにモーツアルトのオペラが放映されるので、ダ・ポンテ3部作ともなると、
DNOやROHやグラインドボーンやマドリッドなど世界各地で上演された話題作が登場する。
そして、マイナーものは、この2006年ザルツブルクの22作品から選ばれる。(多分全部
放映するんだろうと思うが)

というわけで、『牧人の王』(もしくは『羊飼いの王様』)を見た。
モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年_c0188818_3595374.jpgWolfgang Amadeus Mozart
Il re pastore
Serenata in zwei Akten KV 208
Text von Pietro Metastasio
Regie, Leitung Thomas Hengelbrock
Ausstattung Mirella Weingarten

Alessandro Kresimir Spicer
Aminta Annette Dasch
Elisa Marlis Petersen
Tamiri Arpiné Rahdjian
Agenore Andreas Karasiak
Geiger Sebastian Hamann

Michael Behringer, Hammerflügel
Balthasar-Neumann-Ensemble
Koproduktion der Salzburger Festspiele
mit dem Beethovenfest Bonn und dem Bremer Musikfest
Premiere: Salzburger Festspiele
Juli 2006, Alte Aula der Universität

このオペラは、ヨハネット・ゾマーが主役で、ジェド・ウェンツ指揮のCDを持っている。

モーツアルトらしい音楽は美しさに溢れているが、劇展開にはらはらどきどき要素がちょっと
足りなくて、エンディングは全く盛り上がりに欠けるので、完成度としては初期の作品にまま
見られる弱さが露呈しているような気がする。
そして、どうも全体にソプラノ・パートの音域を高く作曲してあるようで、CDでもDVDでも高音部が
やたらきんきんと響く。だから、タイトルほど牧歌的でのどかな感じはしない。
アミンタ役のアネッテ・ダッシュ(DVD)もゾマー(CD)も、どうもいつものようなまろやかな喉を
聴かせてくれないのが残念だ。
その代わり、エリーザ役にはコロラッチューラを聴かせるアリアもあり、DVDでもCDでも歌手が
なかなかいい味を出している。


エリーザのアリア Alla selva, al prato, al fonte

ザルツブルクの舞台は大学の講堂で、奥行きがないから、人形芝居のような平面的なハコの舞台を
設置した劇中劇仕立てである。
これが、なかなかシンプルでしゃれている。
アリアを歌う人物の動きも、単純化・様式化され、まるで『サウンド・オブ・ミュージック』の人形劇の
羊飼い人形のような動きになっているのが、キュート。
演出は、指揮者のヘンゲルブロックが担当。この人、相当にいいセンスの持ち主だ。モーツアルトの
音楽劇をどうトータルに上演すべきかのビジョンがしっかりしている。

モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年_c0188818_423788.jpg

        女性は白と黒の衣装。衣装についた風車をまわしたりする。

モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年_c0188818_4273241.jpg

        アレッサンドロの乗る戦車は、ヘレニズムの時代考証を上手く
        換骨奪胎、シンプルにアレンジしていると思う。
        そして、きっと能の作り物の乗り物をヒントにした動かし方だ。

しかし、アレッサンドロ役の歌手の歌唱が、どうも、あんまり、、、なのである。アジリタなんて、
聴くに堪えないほど。

モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年_c0188818_4365896.jpg

        ヴァイオリン・オブリガードは、薄いカーテンの奥からシルエットのみ。
        カーテンだけというシンプルな装置が利いている。

どうやら、ヘンゲルブロックの美意識はLess is more にあり、それが洗練されているので、
成功している。今後にも期待したい。


さて、2週間前の日曜日、マーストリヒトの街中に羊の群れが出現した。

モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年_c0188818_4512560.jpg

        アーバン・シェパードと牧羊犬

教会でのコンサートのあと、川沿いを歩いていると、ちょうど羊の移動にぶつかったのだ。

モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年_c0188818_4542890.jpg

        観光客も街の住人も皆、驚いて、喜び、カメラを構えた。

羊の群れは、川沿いにずっと我が家の近くまで行くから、わたしは、かなり速度の速い
羊の後をいやでも追いかけることになった。糞が沢山あって、歩くのに難儀した。

モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年_c0188818_4571671.jpg

        花壇の花なんか食べたりしてるヤツもいる。

いい空気、美しい自然の中が仕事場の羊飼いの境遇は最高だ、とアミンタがアリアで歌うが、
こんなにいい天気だったら、本当に最高。
by didoregina | 2010-10-20 22:00 | オペラ映像


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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