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Beloved and Beautiful オランダ・バッハ協会コンサート

ヨハネット・ゾマーがソプラノ・ソロ・パートを歌うので、オランダ・バッハ協会のコンサートに行ってきた。2010年4月27日。しかし、帰国間もないため、やはり夜のコンサートはきつかった。ついつい、こっくり、舟をこいでしまう。
Beloved and Beautiful オランダ・バッハ協会コンサート_c0188818_17234960.jpg

             今シーズンは、彼女のおっかけしてるのだ。

会場は、恒例、マーストリヒトの聖母教会。
日中はいいお天気で、暑いくらいだったが、夕刻からは涼しくなった。コンサートが始まるのは夜8時半で割と遅め。教会でのコンサートに着物は、あまりに浮きすぎるので、カシミア混のセーターにジャケット代わりのブラウス、膝丈スカートにタイツという服装で出かけたのだが、教会内部に入るとひんやりする。これは失敗した、と思って周りを見ると、やはり皆さん重装備である。こんな薄着の人は、他にはソリスト位しか見当たらない。

すなわち、ヨハネット・ゾマーの服装のことである。彼女は今回、デコルテが開いてはいるが長袖で襟にボリュームのあるカシュクールを太いサッシュ結びにした焦げ茶のシルク・タフタ・ブラウスに、鼠色のやはりシルクと思われるロングスカートという、教会でのコンサートにマッチした、控えめな姿。いつも同様、ブラウスの色に合わせた色石のネックレスだが、ゴージャスさはあまりない。まあ、茶会の着物、みたいな雰囲気と思っていただくとよろしい。

Beloved and Beautiful オランダ・バッハ協会コンサート_c0188818_1735094.jpgHeinrich Schütz (1585-1672)
- Stehe auf, meine Freundin
Georg Böhm (1661-1733)
- Mein Freund ist mein
Dietrich Buxtehude (1637-1707)
- Drei schöne Dinge sind (BuxWV 19)
Johann Christoph Bach (1642-1702)
- Meine Freundin, du bist schön
Johann Sebastian Bach (1685-1750)
- Der Herr denket an uns (BWV196)

Uitvoerenden
De Nederlandse Bachvereniging solistenensemble
Jos van Veldhoven dirigent
Johannette Zomer sopraan
Marcel Beekman tenor
Harry van der Kamp bas

曲目は、上記ジャケット写真のCDBeloved and Beautifulと同じ内容だが、コンサートのタイトルは Meine Freundin, du bist schonとなって、旧約聖書からの愛の歌、と副題がついている。
すなわち、「ソロモンの雅歌」に基づいたドイツ・バロックのカンタータやモテットを集めたものだ。
このジャケットに描かれた百合の絵から連想するのは、マタイ福音書の「野の百合はいかにして育つかを思へ。労せず、紡がざるなり。されど、われ汝らに告ぐ。ソロモンの栄華だにこの花に一つにも如かざりき」の言葉だ。ソロモン繋がりで順当と言えば、順当である。ベタとまでは言うまい。

ソロモンというのは、ダビデの息子で、サウルから数えて3代目のイスラエル王だ。
ソロモンの治世下、イスラエルは繁栄を極め、平和を謳歌した。ソロモンの叡智のおかげだ。彼は即位の際、神から、善悪を判断しイスラエルの民を治めるための知恵を授けられることを望んだので、神の御覚えめざましく、ずうずうしく口に出して望みはしなかったが、結果として栄華をも得た。
神に感謝して黄金の神殿を建てたことにはソロモンの敬虔さが窺えるのだが、それからどうも奢侈に走り、肉欲に耽ったり(后700人に側室300人とか)、異国の妻達に迎合して異教礼拝までもしてしまった。
奢れる者は久しからず、の法則どおり、彼の死後、王国は弱体化し分裂した。
だから、わたしは、野の百合の裏の象徴として、盛者必衰の理を思わざるを得ないのだ。

ソロモンは知恵の王なので、「雅歌」は彼が作ったもしくは編纂したと伝わる詩を集めたものだ。
2000年以上前に書かれたのだが、万葉集の相聞歌みたいに多分に土俗的で直接的な愛の歌がメインとなっている。だから、ストイックでプロテスタント的な世界とは対極にありそうな気がするのだが、ルターも詩の白眉と呼んだくらいだから、普遍的でもあり、ストレートな美しさで邪気がなくインパクトがある。

こういうマイナーな曲を集めて、教会でコンサートというセンスが、予想外によかった。
最後のバッハの曲だけは、神に感謝の言葉が出てくるが、これも結婚を寿ぐ歌である。
無邪気な愛の歌が多いから、抹香臭さが全くない。華やかなヴァイオリン・ソロもたっぷり入ったり、ソロも掛け合いもおおらかな男女の愛の賛歌で、艶やか。
特にヨハネット・ゾマーに注目して聴いていたのだが、いわゆる教会系の彼女の声にはぴったりだし、真面目一本やりでなく遊びがある内容の歌が多いから、楽しめる。
これは、CDもやっぱり買うべきだろうか。(CDと異なり、今回のコンサートでは、テオルボ演奏はフレッド・ヤーコブスだった)
by didoregina | 2010-04-28 11:12 | コンサート


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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