野葡萄とバーン=ジョーンズ

女声3部合唱曲に「野葡萄」というのがある。大木惇夫作詞で、「サファイア色の野葡萄の、あまり明るいこの秋は、」という出だししか、覚えていない。

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野葡萄というよりは、マスカットくらいの大きさのアクアマリンで指輪を作った。
彫金を始めて最初に作った指輪だ。
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彫金の先生から、「次の課題は、ブリリアント・カットとカボションの石を使った指輪だから、石を探すこと」と言われたが、どうやってカボション(切り面とせず、頂部を丸く磨く宝石のカット方法)の石を見つけたらいいのか、皆目わからなかった。
たまたま彫金教室の先輩で、文字通り、石に目の利く人と知り合った。彼は、オーストリアやドイツの山で原石を見つけてきては、自分で磨いたりカットしたりして宝石や半貴石を作り出してしまうという特技の持ち主である。
コレクションを見せてもらうと、長さ2センチ巾1センチのカボションで、乳白の入ったとろりとした感じのごく淡いグリーンのアクアマリンが気に入ったので、お願いして譲ってもらった。しかし、拾ってきた石を自分で磨いたものだから、値段のつけようがないと言う。協議の結果、6ユーロでどうだろうか、と折り合いがついた。ありえない値段である。
石を生かしたデザインにしようと思い、かなり大振りな指輪ができた。

それからは、天然石を売っている所を探して、色々なカットの様々な石を買うようになった。
グリーン系の石に弱いので、手ごろな値段の裸石(ルース)を見つけるとつい買ってしまう。

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アヴェンチュリン3個とトルコ石1個を組み合わせて、ちょっとアールヌーヴォー風デザインのブローチを作った。ハイネックのセーターの首元に飾ると大きなチョーカーかペンダントみたいに見える。
最初、銀の板を切り出して曲線部分を作ろうとしたが、先生のご意見で、太い針金状の銀を叩き出して形作ることにした。当然、巾の広いところと狭い部分では厚みが異なるから平板でなく、アールヌーヴォーの植物のような有機的な味わいが表現できる。さすが、専門家は目の付け所が違う。
しかし、叩いているうちに形が変わるし、中に入れる石の大きさは決まっているので、実際に作るのは非常に難しかった。けれども、安易に板を切り出さなかったので、出来上がりは満足いくものになった。

彫金では、石以外のパーツは全て手作りする。
石の枠も、微妙に形と大きさが異なる石に合わせて作る。ブローチ裏の留め具部分も手作りで、針金状の銀線をループにして反発力で開閉ができるようにし、先端を尖らせて突き刺せるようにした。

曲線の感じと色石の取り合わせが、エドワード・バーン=ジョーンズのこの絵に似ていると思う。
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      「レバノンの花嫁」 リヴァプール ウォーカー美術展蔵


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バーン=ジョーンズの絵は、昔イギリス各地で見て回ったが、今年の夏、デン・ハーグの市立美術館で、プエルトリコのポンセ美術館からの「眠り姫」他の作品を集めた「眠れる美女」と題する展覧会が開かれた。
都合がつかず、とうとう行かないうちに展覧会は終わってしまった。
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by didoregina | 2009-10-14 19:42 | 彫金 | Comments(6)
Commented by sarahoctavian at 2009-10-15 01:57 x
レイネさん素敵。植物をモチーフにしたラファエル前派やアールヌーボーのデザインに憧れましたが(今でも好きですが)、実際に自分のイメージするものを自分で作れたら最高ですね。話は外れちゃうけど、今日ワンピースの材料を仕入れた際にタフタやレースにビロードに・・秋らしい綺麗な布地が沢山並んでて心が弾んでしまいました。帰路、アクセサリやクラッチバッグはどんなのがいいかしらんなどと思いが発展しちゃった次第。私にとっても久しぶりに創造の秋となりますかどうか・・。
あ、それからバーンジョーンズの展覧会の広告が新聞に載っててかぶりつき!でもよく見たらシュトゥッツガルトだった。ふむふむ、何か(オペラとか)と抱き合わせにして割安切符の汽車で行ってもいいかも?と夫と話してます。
Commented by レイネ at 2009-10-15 05:57 x
sarahoctavianさま、とうとう布地を仕入れたんですね。どんなのが出来上がるのか、楽しみに待ってます。黒いミニ・ドレス着て、オペラに出かけた写真を載せてください!
このバーン=ジョーンズの展覧会は、デン・ハーグの前はロンドンでもあったと聞いたので、きっとヨーロッパを巡業するのね。オペラと抱き合わせというのは、とってもいい考えですね。いいだしものがありそうなら、ぜひ。
Commented by アルチーナ at 2009-10-15 12:12 x
あ!この指輪は、付けてらしてたものですよね!
あんな暗い公園じゃなくてお店でじっくり見せてもらえば良かったです・・
ブローチも素敵です。曲線もキレイですし、トルコ石が1つ加わっているのも素敵です。
カボションとはどういう意味ですか?
日本だと机の小口などを丸く納めたものはボウズ面と言いますがカボションも何かやはり丸いものなのかしら?
Commented by レイネ at 2009-10-15 17:42 x
アルチーナさま、指輪の写真、何度撮ってもピンボケで、デヴィッド・ハミルトン調になってしまいました。
カボションは、フランス語で「切り子面ではなくドーム状に研磨した宝石」という意味です。中世フランス語の頭と言う意味の単語から派生したようです。
ダイヤモンドは、光の反射を楽しむものなので面を細かく取ったブリリアントにカットしますが、色を楽しむルビーやサファイヤ、それから半貴石は、カボション・カットのほうが好きです。つるっとして触った感じも気持ちいいので。
Commented by bonnjour at 2009-10-15 23:36
アクアマリンって山に落ちているんですか(唖然)。それに、値段のつけようがないからってたった6ユーロで譲ってくれるなんて、ますます唖然です。レイネさん、よい先輩をお持ちで!

作品は、曲線がきれいに出ていて素晴らしいですね。同じくグリーン色の石フェチの私には垂涎の作品です。
Commented by レイネ at 2009-10-15 23:55 x
bonnjourさま、家からそれほど遠くないドイツのアイフェル地方には採石場があり、イーダー・オバーシュタインは、宝石の研磨や取引で世界的に有名です。その辺りには、クズ石が沢山棄てられてるし、原石を見る目がある人にとっては、採石場のある山はまさに宝の山みたいです。
ただし、玉は磨かないと光らないので、素人目には分からず、通り過ぎてしまうだけなのです。

毎年ラップランドに行く友人や、定期的にインドに行く伯母などから、現地の石をタダまたは非常に安く分けて貰えて有難いのですが、石がたまる一方で作るのが追いつかない。こういうのをうれしい悲鳴というのでしょう。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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