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ホセ・クーラの「サムソンとデリラ」

王立ワロン歌劇場によるホセ・クーラ主演の「サムソンとデリラ」に行ってきた。
観てきたとか聴いてきたとか鑑賞してきたとは言えない。その理由を説明したい。
ホセ・クーラの「サムソンとデリラ」_c0188818_0323959.jpg

2009年9月27日@Country Hall Ethias
Direction musicale   Patrick DAVIN
Mise en scène   Michal ZNANIECKI
Chorégraphie   Aline NARI
Décors   Tiziano SANTI
Costumes   Isabelle COMTE
Lumières   Daniele NALDI
Chef des Choeurs   Marcel SEMINARA


Samson   José CURA
Dalila   Julia GERTSEVA
Le Grand Prêtre de Dagon   Mark RUCKER
Abimélechi   Luciano MONTANARO
Un vieil hébreu   Patrick BOLLEIRE
Un messagern.d.
Deuxième philistin   Arnaud ROUILLON
Premier philistin   Xavier ROUILLON
Balleten cours de distribution
Orchestre et ChoeursOpéra Royal de Wallonie / Choeur d'opéra de Namur

ホセ・クーラは、さほど男声に興味を覚えないわたしの、現役のうちにナマで聴きたいテノール・ランキング上位に位置する。それは、ミレニアム記念豪華ロケTVオペラ「椿姫」を観たとき以来の悲願なのだった。しかし、遠征してまで観たい、という気にもならなかった。
その彼が、今シーズン開幕公演に主演するため、リエージュに来てくださると知り、ぜひ行こうと思っていた。
ところが、里帰り時期と微妙にぶつかったため、チケットを買わないでいた。帰国後には1週間近く時差ぼけがあるのが通例で、夜8時以降になると目を開けていられなくなるという症状を呈すからである。

そうこうするうち、ORWから、例のごとく常連向けお知らせメールが届いた。
「1枚チケット買えば、2枚目はタダでっせ。ここにTELして、合言葉はこれこれ」というヤツである。去年も2回ほどその恩恵に与った。
それで、日曜のマチネ公演にK子さんご夫妻を誘って出かけた。2番目のランクの席で、一人当たり20ユーロしない勘定であった。

リエージュの歌劇場は今年6月から2年の予定で、改築工事のため使えない。それで、今年は毎回会場が変わるのだ。
エティアスのカントリー・ホールとは何処なのか?ゴルフ場付属の結婚式場か?
行ってみると、カーナビがないとたどり着けないような、リエージュから10キロほど離れた村の小高い丘の上にある大きな体育館のような建物だった。
実は、これがバスケットボールのアレーナなのだった。普段は、マジック・ジョンソン(バスケット選手はこれしか知らない)なんかが飛び跳ねてる場所である。

2階正面2列目といったら、普通の歌劇場ではかなりいい場所のはずだ。しかし、ここは違った。2階席は普段はスポーツ観戦のための座席だから、細長いコートである平土間には被らないのだ。だから、はるかかなたにステージを造ってある。それが、もう字幕が読めないほど遠いのだ。
一番高いランクの平土間だって、安心できない。傾斜がないから、前のほうの座席しか、視覚的にベストではない。
音響も、いいとか悪いとかのレヴェルではない。これには、ホセ・クーラも驚いたことだろう。
最高47ユーロという、妙に安い値段設定のわけがわかった。

ホセ・クーラの「サムソンとデリラ」_c0188818_145193.jpg

         シャビーな会場に唖然とするクーラ。

そして、ひどいのは会場だけではなかった。
今回、右隣に座ったのは、爆睡少年ではなく、ポテトチップとコーラ持込少女であった。ここには、注意する係員もいないので、演奏中にしっかり、それらは飲食されたのだった。
そして、後に控えたのは、歌がない器楽演奏中はおしゃべりタイム、と心得る人たちであった。
こういう輩に対処するためのうまいフランス語を知らないのが、癪であるが、しーーーっと言うのも芸がない。それで、持っていた扇子でビシバシとやると、さすがに回りも少しは静かになった。

こんな場所とは知らずに、着物で出かけた。9月最後の単衣は、6月にも着た若草色と抹茶色の中間のような、竹の地紋の色無地だ。俳句で竹の春というのは、秋を指す季語というから、6月と9月の両方着られる。帯と小物は変えた。川島織物のメルヘン調の風景を織り込んだ洒落袋帯だ。前柄はパステルの織縞で、あまり秋らしくはないが、明るい雰囲気で、マチネには向いていると思う。
結構着飾っている人たちも沢山いたから、別に浮いていたわけではないと思う。
それでもやはり、日本からホセ・クーラを追っかけで来ていらっしゃる方のお目には留まったようだ。

ホセ・クーラの「サムソンとデリラ」_c0188818_1202312.jpg


サン=サーンスの音楽は、R.シュトラウスのように官能的な響きだ。
ストーリーは聖書の士師記に基づくもので(去年お勉強のため、ラテン語で一部読んでみた)、オペラというよりオラトリオに近い内容で、歌よりも器楽演奏のほうが多いくらいだ。歌がない部分には、やたらとバレエが入る。そうすると、後ろの人はおしゃべりに熱中し、わたしは扇子で対抗する。
第3幕の前奏なんてとっても美しい音楽なのに、それに浸れるどころではないのだった。

ホセ・クーラの表情など見えない距離だが、さすがにスターの貫禄というかオーラがあり、彼のいる場所は光ってるからすぐわかる。それに、あのつややかな声は紛れもないクーラである。
かなり大男のはずだが、デリラ役のユリア・ゲルツェワも大柄なので、遠目でも豆粒ほどにはならずにすんだ。このメゾ・ソプラノはドラマチックな声がでるから、悪女役には最適だ。来月このコンビがミュンヘンで「カルメン」をやるらしい。ルックスも写真でみるかぎり華やかである。

2幕目が、ストーリー上はクライマックスで、クーラの歌が堪能できる。
髪を切られ目をつぶされたサムソンは、3幕では文字通り囚われの身である。それが、最後にはなぜか、力を振り絞って、異教徒の神殿をつぶしてしまうことができた。髪が伸びて怪力を取り戻したからだという。
今回の舞台では、子役の男の子がサムソンの分身で、怪力の象徴のように使われていた。
カーテンコールでは、その子もクーラに抱かれて拍手をいっしょに受けていた。
by didoregina | 2009-10-01 18:42 | オペラ実演


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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