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エトルリアの金細工

彫金というのは、なかなか実益を兼ねたホビーである。
ホビーでやる場合、金は高価なので、銀、銅、錫、アルパカ等の安い金属を使うから、かかる材料費はタカが知れている。半貴石だって、ルースなら数ユーロから手に入る。
かかるのは手間と時間で、なるほど、貴金属店で売っているジュエリーが高価なのは、労力がかかっているからだと納得できる。
趣味なんだから、手間暇かけるほどよろしいので、その労働時間さえ考えなければ、材料費のみで世界に一つだけの自分でデザインしたジュエリーができるのだ。もう、お店で買うのがばかばかしくなるから、非常にお金の節約になる。

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        乾燥して鰹節みたいになったイカを2枚おろしの要領で縦割りにして、
        そこに型を掘り、溶かした銀を流し込んで作った三日月型のペンダント・
        ヘッド。
        米粒型の淡水パールと使わなくなった指輪から取ったルビーを付けた。

デザインを考えるのは楽しいし、自然や建物やインテリアや色んなところからモチーフを見つけ出そうとするので、物を見る目が変わる。出かけるときは、スケッチブックが手放せなくなる。
貴金属店や展覧会では、ジュエリーのデザインではなくテクニックに目を向けるようになる。ジュエリーの大半は、異素材を立体的に組み合わせたものなので、その構成・成り立ちがどうなっているのかを見極めるのが重要なのだ。

先日出かけたロンドンの大英博物館とヴィクトリア・アンド・アルバート美術館でも、ジュエリー部門を重点的に見た。そこではガラスケースに入った展示物が、正面や上からだけでなく、下や裏や横からも見られるようになっていて、あ、さすがわかってるな、とうれしかった。これでないと立体の構成は分からない。

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       繊細で裏が透ける驚異的技術のエナメル細工の髪飾り。V&Aで。


大英博物館でも、V&Aでも、特に感嘆したのはエトルリアの金細工であった。
「古代への情熱」のシュリーマンも驚嘆しているように、紀元前5,6世紀に、ロウ付けの継ぎ目が見えないような細工ができたことは驚異的である。また、粒金細工といって、金の粒を溶かさないで表面にロウ付けできたことも不思議である。

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エトルリア人は、現在のトルコにあったリキア王国から現在の中部イタリアに避難・移住した民族であったらしいが、その文化には謎が多い。高度な技術を持っていたが、碑文などが少ないため文字からの研究が進まないのが原因だ。

偶然ながら、わたしが作ったペンダント・ヘッドにエトルリア風のがある。
銅を叩いて丸っこいアサリのような形に打ち出し、2枚の貝を少しずらして間から真珠をのぞかせた。
チェーンを通す管も似たデザインだが、わたしのロウ付け技術はエトルリア人の全く足元にも及ばないので、銀のロウが銅の表面に少し広がったため、それを隠すためヘマタイトをくっつけた。

エトルリアの金細工_c0188818_6225029.jpg


ロウ付け練習のために作ったペンダント・ヘッドもなぜか古代風である。
アシンメトリーに切り込みをいれてから上下に広げ、立体感を出した。不定形の穴を開け、梨地に仕上げたが、左上部分だけは、立体感を強調するため鏡面仕上げにした。

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2005年の勘三郎襲名を記念して、糸鋸の練習のため、隅切り角に逆さ銀杏を切り出してみた。
帯留にはデカすぎ光りすぎる。ベルト・バックルほどの大きさである。
模様は上手く切り出せたので、残りのネガ部分も廃品利用して、コンチョにしてみた。

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主人用に作った帽子にあわせれば、カウボーイ・ハット風になる。

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by didoregina | 2009-04-16 00:18 | 彫金


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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