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ランチコンサート@ドゥルン           水曜はタダよ、その1

今年最初に聴きに行ったコンサートは、ピアノの先生Peter Caelen (ペーター・カーレン)のリサイタルだ。
ロッテルダムのコンサートホールDe Doelen (デ・ドゥルン)では、毎週水曜日の12時45分からランチコンサートが開かれる。
アムステルダムのコンサルトヘボウでも水曜日のお昼は無料コンサートがあるが、だいたいコンセルトヘボウ・オーケストラのリハーサルみたいなものだ。
ドゥルンの場合、入場料は無料だが、アーチストにはギャラが出ると聞いて、弟子のわたしはほっとした。そして、このランチコンサートには、基本的にアーチスト人生で1回しか出演できない。(ソロの場合は1回。他の人と組んだり伴奏したりする場合はその限りではない)
そうと聞いては、応援に出かけなければなるまい。日本人奥様仲間のバービーさんとAmyちゃんもいっしょに行ってくれた。

12時30分ごろホール入り口付近に着いてびっくり。すごい人ごみで行列が外までできている。ええ、これは入場できるんだろうか、とわたしは不安になり、同行の方々は「ペーターってこんなに人気があるの?」と驚いている。
いや、人気があるのはペーターではなく、ランチコンサートのほうなんだが。

押し合いへしあいしながら中に入り、まあまあ音響のよさそうな場所を確保する。ランチコンサートが開かれるのは、大中小のホールではなく、ロビーだが、席は400ほどピアノをコの字に取り囲んでしつらえてある。テーブル席もある。なぜかというと、コンサートの前にタダでコーヒー紅茶が飲めるのだ。
これで、納得。ここに集まった人たちは毎週水曜日の飲み物付コンサートの常連なのである。
最近では、コンセルトヘボウでも、休憩時の飲み物はタダになったらしい。そうでもしないと、集客が難しくなっているのだ。オランダ人はけちで有名だから、タダなら人は集まる。

無料のコンサートのいい点は、聴衆・演奏家ともにその恩恵が受けられることだ。
聴衆にとってオイシイのは無論のこと、演奏家はギャラをもらいながら、普段のコンサートの聴衆とは異なる人を対象に演奏することで知名度を広めることができることのメリットは計り知れない。演奏家にとってとにかく名前を覚えてもらうことが重要なのである。世界のトップアーチストをのぞいて、チケットをさばくのはとても難しいことで、有料のコンサートでも自分で売らないといけない分(つまり買い取り分)のチケット代金を差し引くと、アーチストの持ち出しのほうが多くなる場合も往々にしてあることだ。

400の席は埋まった。紅茶を飲み終わらないうちに、リサイタルが始まった。
曲目は
ドビュッシーの前奏曲集より「沈める寺」と「亜麻色の髪の乙女」
バルトークの「組曲」作品14
ショパンの「バラード1番」作品23
であった。烏合の衆、といってはなんだが、どんな人が聴きに来るのか予測の付きにくい、このようなコンサートには適したプログラムだ。

誰でも聞いたことのある曲で始めて、中間には普通の人はあんまり聞いたことがない現代的な曲を入れて聴衆を教化し、最後はやはりなじみのある曲でクライマックスに持っていく。
この選曲には、不肖の弟子、わたしからも合格点が出た。弟子でありながら、プログラム選曲にはシビアな意見を述べるのだ。

まあ、弟子としては聞きなれた曲の演奏であるので、会場の音響ぐらいしか述べることはできない。

1曲目は、ホールのロビーには音響的にマッチしなかった。深い海の底から沸くような音が響いてこない。(この点に関しては、座った位置も考慮に入れるべきかもしれない。日本でピアノの先生だったバービーさんの意見では、わたしたちの位置では低音はあまり大きく聞こえてこないものだから)

2曲目は、Amyちゃんが買ったペーターのCDにも入っているので、Amyちゃんは喜んでくれた。

3曲目が、わたしにとってのメインである。9月のリサイタルでこの曲を演奏する前にも練習していたのを聴いていたし、そのリサイタルでもかっこよく弾いていたので、安心していた。案の定、この曲を初めて聞く人が多いようだが、結構みなさん「いい曲だね」と言い合っていたから、教化としては成功である。わたしにとっても、バルトークに対して目を開かされるきっかけになった曲なのだ。バルトークにはあまり好きな曲がなかったのに、9月以来好きになった。「この曲わたしも弾きたい」と言うと、「弾けるよ」との先生のお言葉なので、挑戦してみたい。

最後は、ショパンでしめて、クライマックスにもっていった。
演奏時間にしたら全部で30分くらいの短いものだったが、こんなにリラックスできるコンサートもいいのではないかと思った。
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by didoregina | 2009-01-14 22:17 | コンサート


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
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モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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