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籠染めの綿紬浴衣と手作りサブバッグ

綿紬の浴衣の仕立ておろしを着て、洞窟でのコンサートに出かけた。
節のある細い糸で織ってあるから薄くても張りがあり、綿なのにきれいな光沢もあるので、
浴衣でもお出かけ着になる。
地は薄い青で、そこに表裏異なる模様が藍で染めてある。男もののような地味な模様だ。

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籠染めという技術は、去年最後の職人さんが廃業したそうで、竺仙にある在庫分しか、もう
手に入らない。長いこと箪笥にしまったままだった反物を去年仕立てに出して初めて知った。

白っぽい紗献上かなんかの帯ですっきり装いたいところだが、紗献上は持っていないし、白だと
浴衣の青い色が移りそうでこわい。
結局、オレンジ色に生成りの筋を織り出した葛布の帯を組み合わせた。紺にオレンジというのが、
どうも昭和の民芸っぽいレトロな色あわせだが、いたしかたない。

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       着物の柄が小つきだから、本当は白の帯でもっと粋にしたい。
       ちょっと泥臭いコーディネートになった。


別布のハギレで、着物用の大きめサブバッグも作ってみた。
紺地に水色と生成りと臙脂の縞模様が織り出してある、これも木綿の紬だ。
(遠州紬の縞紬のハギレであることが、偶然判明した。)

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赤を利かせるために、クロコ型押しのレザーの手提げ紐と同じ色合いのブランドタグを
アップリケで留め付け、ファスナーには韓国土産の狐チャームを下げた。
裏地は桜色の絹の胴裏で、帯芯を中に入れた。
ファスナーと縫い糸以外は、全て残り物で作ったので、材料費は果てしなく0に近い。
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by didoregina | 2010-09-01 16:50 | 着物 | Comments(5)

洞窟で聴くCanto Ostinato

8月に入ってから暑気は去り、9月も近くなると秋の気配が忍び寄る今日この頃である。
日本から入るニュースで連日見かける、熱帯夜とか熱中症という言葉の意味を体感することは
不可能だ。

夏の間は日が暮れるのが遅い北ヨーロッパでは、野外コンサートが盛んに開かれる。
雲と雨に閉ざされる長い秋冬の到来がそう遠くないことを肌で感じながら、夏の陽光の名残を
惜しむ。

8月最後の日曜日、ファルケンブルクの野外劇場で開かれたピアノ・リサイタルに出かけた。
オランダ人ピアニスト、イーヴォ・ヤンセンによる「カント・オスティナート」の独奏会である。

シメオン・テン・ホルトというオランダ人によるこの鍵盤楽器のためのミニマル・ミュージックは
70年代に数年かけて作曲されたもので、通常2台または4台のピアノで演奏される。

ミニマル・ミュージックは嫌いではないので、このコンサートのことを知り喜んだが、一緒に
行ってくれる物好きはあまりいそうにない。
ところが意外にも、誘った相手Tは大乗り気で、「行く、行く!」と二つ返事ではないか。
この曲は、彼女の夫ともども好きな曲であり、以前コンサートに行こうとしたがキャンセルに
なったので、一度生で聴いてみたいと思っていたと言う。

天気ははなはだすぐれない。
しかし、意地でも着物で行きたい。浴衣なら雨に濡れても大丈夫だ。
気温は昼間でも15度以上には上がらない。雨コートにウールのショールを重ねた。
Tは、私の分のクッションと毛布も持参し万全の構えだ。

雨天決行、しかし、ピアノが濡れたら困るので、その場合は屋内で演奏ということだった。
野外劇場は、斜面を利用したひな壇の観客席とくぼ地のステージでできている。
その奥が、この地方に多いマール石の洞窟になっていて、雨天にはそこが会場になる。

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       竺仙の綿紬、裏表異なる模様の籠染め
       表は石畳のような模様で、裏はもっと細かい幾何学模様。
       長く箪笥の中にあった反物を、去年仕立てに出し、
       この日が初おろし。
       なんと、最後の籠染め職人さんが去年廃業したので、
       現在この技術は途絶えてしまったという。
       綿紬は、竺仙HPによると、5月から初秋まで着用可。


「カント・オスティナート」は、瞑想的というよりは機械的に聞こえる、シンプルなメロディーに
反復が異常に多用された音楽で、その反復の長さやタイミングは奏者が決定する。
だから、長い場合には演奏時間は4時間にも及ぶという。
今回は、ピアノ1台のソロ演奏なので、複雑に絡み合うメロディーをいったいどうやって
表現するのかと思ったら、鋼のように強靭な集中力で、きっかり1時間15分、休憩なしで
2台のピアノによる演奏に近いものを聞かせてくれた。


2台のピアノ・ヴァージョンの出だし部分。

歯を食いしばり、時にはカウントしているのか、自らを励ましているのか、口を動かしながら、
モティーフとなるメロディーの微妙なヴァリエーションを辛抱強く演奏し続ける。
聴くほうも、だから、その集中力に圧倒され、ミニマル・ミュージックといえども気が抜けず、
リラックスするどころではなかった。どちらも真剣勝負なのである。
コンピューターやシンセサイザーなどの機器を使って、テンポに揺らぎも見せずに反復しつつ
音を重ねていく音楽の録音ならいくらでもあるが、生身の人間が演奏するのは大変だ。

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          楽譜の最後のページ。

ピアニストのイーヴォ・ヤンセンは、オランダ人らしい長身と体格のよさで、音楽家というより、
まるで柔道家かなにかアスリートのように見える。演奏し終わると、いかにも消耗し尽くしたという
感じで、しかし満足な表情を見せた。
演奏に対峙した聴衆も同様に、1時間15分にわたり強いられた緊張を解かれ、思わず安堵の
吐息が漏れた。

演奏会後、CDは飛ぶように売れていた。
でも、この音楽、CDを聴いても、今日のような緊張感に浸れるのだろうか。
耳に心地よい、仕事の邪魔をしない単なるバック・グラウンド・ミュージックになるのではないか。
しかし、Tの意見は異なる。生演奏でなくともこの音楽は、集中して聴かざるを得ないはずだと。

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       CD販売兼サイン会でのイーヴォ・ヤンセン(左)
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by didoregina | 2010-08-31 22:22 | コンサート | Comments(4)

6月は学年末

6月は学年末なので試験シーズン、そして年末と同じくパーティ・シーズンでもある。

主人が通うイタリア料理教室の、学年末試験を兼ねた食事会があった。
合否を賭けるという真剣なものではないので、生徒達の料理の腕前は、まあ、去年とほぼ同じで、特筆すべきものはない。というより、料理のセンスのない人は、何年習おうと進歩しないんだ、ということを改めて知らされた、というべきか。
毎レッスン後の週末に、主人が復習を兼ねて作ってくれる料理のほうが、ずっと美味い。
料理に期待するより、着物を着るチャンスだ!と思って出かけた。

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     カジュアルな食事会に高価な着物は場違い。
     いいお天気でもあったので、浴衣で。
     半襟なし。しかし、名古屋帯と足袋。

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     生成りの生紬の帯は、しゃっきりと
     夏らしい締め心地。素描で筍の絵。
     濃い色の浴衣に白っぽい帯で爽快感を。

5月には、とうとう一度も着物を着てお出かけの機会が作れなかった。反省している。
6月は、パーティーが多いので、とにかく着物を着ようと思う。

本日は、ピアノの発表会だった。毎年6月にライクホルト城で行うのだ。
今年は、奏者の人数は少ないが、一人当たりの曲は多かったり長い曲だったりして、時間的には例年と同じくらい。超初心者はもう生徒にいないので、幼稚園に入ったか入らないかの子が練習曲を弾いて聴衆の微笑を誘う、というシーンが見られなかったのが残念。

Angelica
Duvernoy Edude nr.1 en 3
W. Carroll The wood fairies

Jill
Y. Tiersen Comptine d'un sutre ete

Rosalie
Beethoven Fur Elise

Shayan
J. Strauss Persische Mars

Caio
J. S. Bach Prelude
C. Ph. E. Bach Solfegietto
C. Debussy Le petit negre

Tim
J. Brahms 3 Walsen op. 39
F. Chopin Mazurka op. 67 nr. 2
Mazurka op. 7 nr. 2
Mazurka op. 7 nr. 1

F. Heller Etude op. 46 nr.1

David
J. Haydn Deel 1 uit Pianoconcert in D hob. XVIII.11
F. Liszt Liebestraum nr. 1
G. Gershwin Prelude nr. 1

Pauze

Reine
C. Debussy Prelude uit 'Suite Bergamasque'
La plus que lente

Carine
F. Chopin Polonaise in cis op. 26 nr. 1

Chris
J. S. Bach/Busoni Chaconne in d

前半が子供の部で、後半が大人の部である。
多い年には30人くらい参加するのだが、今年は異常に少ない。初心者が淘汰されたのと、大人は別の用事で都合が付かない人が多かったからだ。
初心者は発表会用の曲の準備などできないから、弾く曲から教則本の傾向がわかる。Duvernoyというのが、今回唯一聴けた初心者向け教則本の作曲家だ。
Hellerも練習曲としては、こちらでは有名。ハノンとチェルニーを合わせたような感じだが、ずっとロマン派的な音楽になっているので、弾くのも聴くのもさほど苦痛ではない。

ティルセンの曲は、映画「アメリ」のサウンドトラックで有名だ。ミニマル音楽に属するのだが、センチメンタルでキャッチーなメロディなので、中学生に人気。技術的には易しい曲だが、聴く人の心に迫る度合いが高く、効果的だと思う。

それに対して、今時の発表会で「エリーゼのために」を弾くというセンスがわからない。わたしの子供時代、60年代なら許せる。まだまだ、発表会向けの曲が開拓できていない時代だったからだ。「エリーゼのために」は、ピアノ練習者ならバイエルが終わった頃必ず弾くから、手垢・耳垢にまみれ、誰でも知ってる曲だから皆聞き耳を立てていて、間違えたらすぐにわかるし、上手く弾いてあっと言わせるという成功率はごくごく低いのだ。案の定、ひどい演奏だった。

以前、次男の音楽学校の発表会で、高校生の女の子が「渚のアデリーヌ」(!)を弾いて、わたしをうんざりさせた。今ではその名を覚えている人も少ないだろうリチャード・クレーダーマンが、80年代初めに弾いて有名になった曲である。こんな懐メロでしかも当時からダサかった曲を21世紀になっても弾く人がいる、というのに耳を疑い、こういう曲を生徒が自分で選ぶわけがないから、教師または親の良識を疑った。

シュトラウスの「ペルシャ風マーチ」を弾いたシャイアンという男の子は、フル・ネームがえらく長いので、貴族かなんかの由緒ある家柄なんだろうなと思ったら、師匠のペーターが面白い裏話をしてくれた。
シュトラウスJr.が当時のペルシャのシャーのために作った曲で、シャイアンはそのシャーの末裔だというのだ。だから、この曲は彼のためのものでもある、と。

カイオもティムも小学生なのに、上手く弾く。上がらないというのも羨ましい。

前半のトリは、ダーフィッド。ハイドンの「ピアノ協奏曲」は、ペーターがデジタル・ピアノでオーケストラ・パートを演奏した。デジタルだといろいろな音が出せるから、こういうときは便利だ。
リストもガーシュウィンも、パーフェクトだった。ピアノを習い始めて3年ぐらいしか経っていないというのに、恐るべき子供(中1)である。しかも、この選曲の妙には感心した。古典派のピアノ協奏曲、ロマン派のリスト、そしてジャズの要素の入ったガーシュウィンである。選曲のセンスも才能のうちだと、わたしは確信している。

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後半は、わたしのドビュッシーから。2週間後に控えたコンサート(!)のためのリハーサルにしようと、着物で演奏した。草履だと、ペダルの感覚が違う。袖は全然邪魔にならなかった。
前日のレッスンでは、2回弾いて2回とも問題なしだったのに、当日はアガってしまって、ひどい出来だった。しかし、あまり有名な曲でないのが幸いした。この曲を聴きつくしている家族とペーターには「あがりまくって、酷いね」といわれたのに、何人かの人は、「いい演奏でしたね」と言ってくれた。聴いたことがない曲だと、間違えてもわからない。だから、選曲は重要なのだ。

カリンとクリスは、音大出てるし、コンクールや人前で演奏するのにも慣れてるし、安心して聴くことが出来る。この二人には、わたしのコンサートでもゲスト演奏してもらうつもりだ。特にカリンは、あがるということが全くないと、ペーターが太鼓判を押す生徒だ。クリスは、超難曲を選んだから、いくらミスタッチがあっても、一般聴衆にはわからないだろう。

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     有松絞りの浴衣は、黒に近い濃紺地に
     白の七宝つなぎ。その中に藤色がところどころに。
     帽子絞りの蝶のような大きな花がアクセント。
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by didoregina | 2010-06-13 22:13 | 着物 | Comments(8)

卯月は花見月

日本は寒かった。
2週間強の滞在中は、強風、連日の雨、真冬並みの寒さと所によっては雪に見舞われ、しかも後半はアイスランドの火山噴火の影響で、ヨーロッパに無事帰ることができるのだろうかという不安に苛まれた。
しかし、人生万事塞翁が馬。悪いことばかりが起こるわけではない。思わぬメッケモノにも遭遇した。寒さのせいで、桜満開の期間が例年になく長かったのだ。
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          期待してなかったから、うれしさもひときわの満開の桜。


今回、絶対に見たかった花がある。牡丹である。
高校の古典の授業では、花といえば桜、と習った。しかし、わたしにとって、花といえば、牡丹、芍薬、チューリップである。どうも、肉感的な花が好きなのだ。
牡丹園のある可睡斎という寺に出かけた。しかし、屋外の牡丹はまだ一割の半分の5分咲きだった。あまりに開花が遅れているため、入場料を取られなかったのはラッキーというべきか。そうこうするうち、牡丹にとっては酷な雨も降り出した。
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             雨にぬれる牡丹

だが、この寺院には屋内牡丹園というものもあるのだ。精進料理を予約しておいたら、寺院内部拝観および屋内牡丹園入場はタダだった。一つ悪いことがあると、何か別のもので帳消しになる、というのは、やはり仏の功徳か。
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      旬の筍と蕗がたっぷり。胡麻豆腐は白とピンクの層で桜を表現。
      手抜きしていない料理を個室で頂くから、リッチ感抜群。

この寺には、日本一と自慢する東司、すなわちトイレがある。何が凄いかというと、トイレの真ん中にこういう立派な木像が立っているのだ。しかも、寺院のトイレにしては珍しく、戦前から水洗だったという。
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          烏蒭沙摩明王(うすさまみょうおう)

拝観を終え、土産物など物色していると、見知らぬ人から声をかけられた。
地元の新聞のカメラマン兼記者であるという。牡丹園の写真を撮りに来たが、雨天のため見物客がいない。花だけで人物なしの写真では新聞に載せられないから、わたし達にモデル(というかサクラ)になって欲しいという頼みである。
そこで、数少ない開花している牡丹の後に立っての写真撮影となった。さすがにプロである、位置を変え、モデルのポーズに注文をつけながら数十枚は撮った。そのうちのベスト写真が、翌日の朝刊のなんと一面ド真ん中に載った。休刊日の翌日でよほど特ダネがなかったと見える。撮影の後、おしゃべりが弾み、ついでに撮ったスナップ写真ともども引き伸ばして送ってくれるとの約束もしてくれた。
驚くことなかれ、新聞に載った写真は大きく引き伸ばされ、それ以外の5,6枚の写真も実際に送られてきたのだった。

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       これは後日、天気のいい日に再訪し、わたしが撮った写真。


それから、熊野(ゆや)の長藤というものも一度見てみたいと、願っていた。能「熊野」で有名な熊野御前が植えたと伝わる樹齢400年の藤の花で、房は1メートル以上になるというものだ。
開花予定は4月下旬から。わたしが行った日は、正式オープンの翌日で、まだ2分咲き位。

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       確かに房は長いが、まだあまり花が開いていない。

東海道は池田の庄の娘、熊野は、平宗盛の寵愛を受け京に住む。母危篤の知らせが届き、暇を請いたい熊野だが、馬鹿殿宗盛は、熊野といっしょに清水寺に花見に行きたいと無理強いする。母の死に目を看取りたいという望みを歌に託し、その思いがようやく伝わるというストーリーで、能では人気絶大の演目だ。
ところが、わたしは10代の頃、三島由紀夫の「近代能楽集」に収められている「熊野」を最初に読んだおかげで、熊野というと、本歌とは違ってコケットで小悪魔的なファム・ファタールのイメージが植えつけられてしまった。

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        藤の庭園には、能舞台も設えられている。
        母お気に入りのグリーンの結城紬に葛布の帯。

いずれにしろ、熊野は実在の人物なので、熊野とその母の墓も、寺の境内にはある。
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寺から程近いところに、天竜川の池田の渡しがあった。
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by didoregina | 2010-04-25 23:43 | 旅行 | Comments(12)

ユンディは、キムタクか、香港映画スターか

ユンディ・リ改めユンディ(イチローのごとく、ファースト・ネームだけの芸名に改名)のコンサートに行ってきた。(2010年3月12日)

フィリップス・ミュージック・センターの例のピアノ・リサイタル・シリーズのひとつである。
だから、とにかくチケット料金が安い。ちょっと出遅れたので、一番高い席(28ユーロ+3ユーロのサービス料・フリードリンク付=31ユーロ)というのは、もうなかった。それで、電話で、どこが残ってますか?と問い合わせると、右手中二階後方(音響的にはベスト)か、平土間正面左寄り一列目(視覚的にはベスト)なら、4人並んで座れます、とのこと。悩んだ末、後者に決めた。ドリンク代込みで27ユーロの席だ。日本だったら、一体いくらだろう、と考えるとうれしくなる料金である。
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Frederic Chopin (1810-1849)

Nocturne in bes opus 9 nr 1
Nocturne in Es opus 9 nr 2
Nocturne in Fis opus 15 nr 2
Nocturne in Des opus 27 nr 2
Nocturne in c opus 48 nr 1

Andante spianato et Grande polonaise brillante opus 22

PAUSE

Mazurka in gis opus 33 nr 1
Mazurka in D opus 33 nr 2
Mazurka in C opus 33 nr 3
Mazurka in b opus 33 nr 4

Sonate nr 2 bes, opus 35

Polonaise in As opus 53 "Heroische"

演奏曲目は、上記のようにオール・ショパンである。
今年はショパン生誕200年だから、ショパンを聴く機会は一般的に多くなるはずだ。しかし、ユンディの場合、事情は少々複雑である。中国人で初のショパン・コンクール優勝!という勲章というかレッテルが付いてまわるから、ショパン以外のプログラムでは、世間が許さない。もう、ショパンを弾くパンダを見るような気分で演奏会に来ている人もいるのかもしれない。
そういう気持ちになったのは、演奏会の始まる前に、ロビーでサイン会のためのCD販売状況を検分した時である。売ってるCDが全部ショパンだった。彼には、ショパン演奏以外は、期待されていないのかもしれない、と一瞬思った。

とにかく、かぶりつき席で、ちょっと下から見上げる位置だから鍵盤と手の動きはよく見える。
それから、ピアノ界のキムタクと呼ばれているくらいの、キレイなお顔の表情も近くで見える。
そのキムタク・ユンディが登場したとたん、もう一つの悪い予感が単なる危惧ではなかったことを知らされた。

舞台を歩くユンディに向かって、コーラス席やその他の席からカメラのフラッシュが盛んに焚かれたのである。
その火の元は、言わずと知れたこと。押し寄せた地元中国人たちが、クラシック・コンサートのタブーというかエチケットおかまいなしに、写真を撮りまくる。
だから、短いノクターンの曲間も拍手、拍手で中断される。そのたびに、わたしの隣かぶりつき席に座った(セミ)プロ・ピアニストっぽいお姐さんが、ちっとか、うぐっとか、やめてくれとか、怨念のこもった声で唸るのだった。

まず、ノクターンでスタートというのが、ウォーミングアップというか手慣らしの意味はあるだろうが、わたしには不満である。ノクターンが悪いのではない。選曲のセンスの問題である。
若い頃は、ショパンが苦手だった。聴くだけで、こっぱずかしくてむずむずいたたまれなくなるのだから、弾こうとという気にもなれなかった。ロマンチック真骨頂、C調言葉のくどき文句、腺病質もしくは肺病、愛のためなら死んでもいい、そういうステレオタイプが頭に渦巻く、その集大成が、この晩選ばれたノクターンである。
数年前、ポリーニがノクターンCDを出したときのプロモーションを兼ねたリサイタルを聴いた。その時の曲目はもう覚えていないが、違和感を感じなかったから、ポリーニの選曲は悪くなかったと思う。彼らしいという意味で。

または、外見の問題もあるかもしれない。
若い男の子が公衆の面前でノクターンを弾いてはいけない。これは、もう、美学上の鉄則である。
いくらクールを装って弾いても、わたしには駄目だ。
休憩後のマズルカの洒落味のほうが健康的で、安心できる。結局、これはもうわたしとの相性の問題だ。

それ以外の曲目は、ラン・ランも選びそうなもので、いかにも中国人的な華麗さ・ハッタリを聞かせるのにもってこいの、盛り上げるにもテクニックを見せるにもよいチョイスであった。
ピアノ・リサイタルというより、ピアノ・アイドルのコンサートだったと思うと納得のいく、スカッとした演奏であった。
つまり、わたし好みの演奏とは、対極とはいかずとも、相当離れているスタイル・解釈であったが、それはそれでユンディの個性なのだから、否定はしない。
前回のアンスネスのリサイタルとは全く異なり、後に何も残らない、思索を誘うものがない。究極のエンタメ的リサイタルだったが、それなりに楽しめた。

終演後のサイン会、というのが凄かった。多分、エイントホーフェンにお住まいの中国人が大挙して家族揃って応援に駆けつけたようで、子供達は皆サインをねだる、オヤジたちは奥さんとユンディのツーショットを撮りまくる、というわけで、ユンディだけの写真撮影は不可能だった。
間近で見ると、キムタクというより、ジャッキー・チェンのご親戚ですか、と思わず突っ込みたくなるほど、目元の感じが似ている。
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ロビーには、ホール専属か、エージェントが契約してるのか、地元紙なのかわからないが、プロのカメラマンがいて、ユンディ・フィーヴァーぶりを撮影していたが、わたしの着物姿にも目をつけた。それで、何枚も色んなポーズで撮ってくれた。プロだから、モデルを褒めながらの撮影である。撮られるほうも乗せられる。エイントホーフェン新聞かなにかに、「中国人おっかけファンが民族衣装でユンディのコンサートに現る」とかいうキャプションつきで出るかもしれない。

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           春らしい翡翠色の地に桜やその他の花柄の小紋。
           帯は、遠山を織り出した綴れの洒落袋帯。
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by didoregina | 2010-03-19 09:54 | コンサート | Comments(8)

御伽噺とファミリー・コンサート

ピアノの師匠ペーターが、日曜の午後、老若男女誰でも楽しめるような、ファミリー・コンサートを企画した。

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            ライクハルト城の別館クッツハウスが会場

2010年3月7日        Peter Caelen & Ian Gaukroger (piano)
       Tim Schiepers & David Voncken (piano)
       Jacques Vriens (お話)

御伽噺がテーマの曲を、大人のピアニスト・コンビのペーターとイアン、それから生徒のティムとダーヴィッドが連弾演奏し、児童作家のジャック・フリンスが、合間にお話を語るという構成である。

D. Milhaud        Scaramouche

M. Ravel        Ma mere l'oye
                               Pavane de la Belle au bois dormant
  Petit Poucet
  Laideronnette, Imperatrice des pagodes
  Les entretiens de la Belle et de la Bete
  Le jardin feerique

F. Schubert        Kindermars D 928
       Vier Landler D 814
       March Militaire D 733 nr.1

W.A. Mozart        Sonate in D KV 381

P.I. Tschaikowski/N. Economou   Notenkrakersuite
                                  Miniatuur Overture
    Mars
    Dans van de Suikerboonfee
    Russische dans
    Arabische dans
    Chinese dans
    Dans van de Mirlitons
    Bloemenwals

シューベルトとモーツアルトの連弾を子供コンビが弾いて、その他は、大人コンビによる演奏だった。

ティムとダーヴィッドは10歳と12歳で、ピアノを習って3年目だが、かなりのレヴェルだ。すでに昨年末、ロッテルダムのデ・デゥルンで行われたアマチュア・ピアノ・コンテストでデビュー済みという、恐るべき子供達である。今日は、ティムがあがりまくって、ミスが多かったが、なんとか二人で乗り切った。
会場は、ちびっ子から、おじいちゃん、おばあちゃんまで年齢層の広い客で満席の盛況である。
児童作家が、曲の合間に、演奏曲目にふさわしいお話を語り聞かせるという構成もよかった。


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                      イアンとペーター

この二人は、1年に1,2度、2台のピアノでの演奏会をするのだが、イアンはアムステルダム在住のため、二人揃っての練習時間はなかなかとれない。
チャイコフスキーの「胡桃割り人形」を、2台のピアノでぴったり合うように演奏するのは、結構難しい。
一般に、バレエ音楽のピアノ曲版というのは、まずリズムが正確でないと聴くに耐えない。
それを二人で演奏するのは、練習風景を知っていると、聴いていて息がつまりそうになるものだ。しかし、二人は合同練習時間の物理的短さを、技術的にカバー、クリアして、安心して聴くことが出来た。

(「胡桃割り人形」は、次男が年末に音楽学校のコンサートでの、2台のピアノで各4手、計8手での演奏に参加した。各人別パートを何ヶ月間か個別練習してから、4人で1ヶ月みっちり合わせる練習をしたから、上手くいった。しかし、ピアノ・アレンジとしては、4手のほうが、ずっと聴き心地がよい。オーケストラ曲をピアノ・アレンジする場合、手の数が多い方が音に厚みが出て、オリジナルのオーケストレーションに近くなりそうなものだが、合わせるのが難しくなるだけで、効果はそれほどでもなかった。それよりも、普通に2手のソロ演奏アレンジのほうが好ましい。)

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                着物は、琉球絣柄の信州紬。
                帯は、薄い抹茶色のメルヘン調の染め帯。
                コンサートのテーマと雰囲気に合わせて。


終演後、イアンに話しかけてみた。

R「今年はアルベニス・イヤーだけど、演奏のご予定は?丁度7年前に、貴方の弾く『イベリア』を聴いたのが、ピアノ・レッスン再開のきっかけになったんです。いつかは弾けるようになりたいと」

I 「そうそう、アルベニス・イヤーだけど、アルベニスは『イベリア』に限らず超難曲ぞろいだね」

R 「でも、わたしでも弾ける曲もあるんですよ。サロン風の曲だけど」

I 「アルベニスの曲は、どれもサロン風といえる。ところで、7年後の今は何を弾いているの?」

R 「6月にオール・ドビュッシーのコンサートを開く予定で、練習してます」

そこへ、イアンの譜めくりをした、わたしの兄弟子クリスが割って入った。
C 「ええっ?ドビュッシーの全曲コンサートなんて、どうやってするの?」

R 「ドビュッシーの全曲ではなくて、コンサートの曲目が全てドビュッシーなの」

I 「とにかく、僕の7年前のコンサートが、契機になってるとは、うれしいね」
と、イアンは、とても喜んでくれた。
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by didoregina | 2010-03-07 22:01 | コンサート | Comments(10)

Leif Ove Andsnes @ Muziekcentrum

エイントホーフェンのフリッツ・フィリップス・ミュージック・センターでのレイフ・オヴェ・アンスネスのコンサートに行ってきた。
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Schumann: 3 Romances Op. 28
Schumann: Novellette, Op. 21 No. 5
Kurtag: Selection from Jatetok
Schumann: Kinderszenen Op. 15
Chopin: Ballade No. 3 in Ab Major Op. 47
Chopin: Waltz in Db Major, Op. 70, No.3
Chopin: Waltz in cb Minor, Op. 64, No.2
Chopin: Walts in Gb Major, Op.70, No.1
Chopin: Waltz Op. 42
Chopin: Nocturne Op. 62 No. 2
Chopin: Ballade No. 1 in G Minor Op. 23

平日の夜にエイントホーフェンまで行くのは、やはりちょっと無理があった。
なんだかんだで開演までに入場できず、最初のシューマン2曲は聴けなかった。(「ノヴェレッテ」はドアから漏れる音だけ聴いた)

クルタークの曲は、1973年作曲の現代曲のため、アンスネスも暗譜できないらしく、楽譜がセッティングされた。その合間に入場させてもらったのだ。
なんだかとても短い曲が8曲くらい続く。ヘンな不協和音だとか妙なテクニックを強いることがない、割と聴きやすい現代曲である。高踏的でもなく、諧謔的でもなく、風刺的なところもない。
興味を覚え、ちょっと弾いてみたくなった。

楽譜をまた片付けてから、シューマンの「子供の情景」が、その後に続く。
アンスネスの弾き方、指使いを見ていると、なによりも目に付くのはその流麗さだ。余裕のある丁寧さで、アグレッシブだったり派手なハッタリとは正反対なのが、好印象を与える。
大きくて厚みのある手だから、何とも言われぬ温かみがある音が出せる。ビロードのタッチである。
また、重量のかけかたが安定して均整がとれているから、音は粒ぞろいで、聴くほうはゆったりと安心感に包まれる。
そして、グリッサンドのピアニッシモの嫋嫋たる余韻には、心がとろけそうになる。

彼の弾く「子供の情景」は、思い出を慈しみつつ辿るような内省的アプローチで、鮮やかな色彩感覚には欠けるが、こういう静謐な世界もいいなあ、と思った。
思いを内にこもらせて完結しているかのようで、モノトーンのグラデーションがかかった大人の目から見た子供の世界だが、枯淡ではなく、突き放してもいない。なんとも不思議な彼独特の解釈で、聴くほうも内省的にならざるを得ない。

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休憩後は、ショパン・プログラムだ。
まず、選曲からして、いかにも彼らしい。派手なポロネーズやソナタは入っていない。センチメンタルな曲も外されている。派手なテクニックの披露など児戯、名人芸を見せ付けるのも野暮、との確固たるセンスが感じられる。
演奏も、とにかく理知的で、感傷に溺れない。
しかし、それが、冷たく突き放した印象にはならないのは、真摯な態度と技術に裏付けされた余裕が上手くミックスされているからだ。
彼の演奏するショパンは、感情を溢れるままに流出させたり、またはいかにも高揚感を与えようという魂胆のかけらも見えない。
「思索の源泉としての音楽」という言葉が、頭に浮かんだ。

フィリップス・ミュージック・センターの音響には、今まであまり満足したことがない。木をふんだんに使った内装のせいなのか、ピアノのせいなのか、ピアニストのせいなのか、判然とはしないが、硬くて無機質かヒステリックに響く音に、不満が残ることが多かった。ピアノの音色にいちいちイラつかずに聴けたのは、今回が初めてだ。今までの不満の種は、どうやら、ピアニストのせいだったようだ。

拍手はかなり熱狂的に長く続いた。
アンコールは、結構長いバッハとショパンの2曲で、サービス心も旺盛のアンスネスだった。
終演後のCD販売とサイン会も盛況。

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          きっとサイン会があるだろうと思い、雨模様であったが、
          15分くらいで必死になって着物を着た。
          しかし、写真を撮る時間はなかった。
          泥藍大島には、いつも同じ帯を合わせがちなので、今回は
          薄い抹茶色の塩瀬の地に、埴輪のような不思議な絵が
          描かれた帯にしてみた。グリーン好きの母のもので、初おろし。

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          思ったとおり、サイン会があった。
          しかし、カメラを車の中に置いてきてしまった!残念。
          せっかく無理して着物を着て行ったのに、ツーショットが
          撮れなかった。。。
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by didoregina | 2010-02-24 11:29 | コンサート | Comments(6)

Trio Mediaeval の Folk Songs

アルチーナさんが、以前ブログで紹介していたノルウェーの女性3人組Trio Mediaevalの動画が、なぜかとっても印象に残り、名前が頭の片隅に引っかかった。彼女達のオランダ・ツアーのことを知ったのは、数ヶ月前である。しかも大都市の有名ホールだけでなく、なぜかヘーレンの市民劇場にも来るとわかり、心待ちにしていた。丁度日曜午後なので、お誂え向けである。また、ヘーレンだから学割が利くのもうれしい。(基本的に、コンサートだったら30ユーロ、オペラだったら80ユーロを上限としてチケットを買っているが、学割が利いたり、招待券を頂いたり、または補助金のおかげでもともと値段設定が低い場合が多いので、コンサートは平均20ユーロ未満で聴いている。オペラもマレーナ様が出演しないものだったら、50ユーロくらいまでしか出さない。)

コンサートには、音楽学校の仲間3人で出かけた。トースは、わたしが着物姿で来るだろうと踏んで、黒地に赤で印伝風の硬貨のような模様をプリントした小紋の羽織を裏返しにして着てきた。羽裏は黒地にオレンジと白で大きく花模様を絞ってあって、こちらのほうが派手だからである。洋服の上に羽織っていたが、似合っていた。写真を撮り忘れたのが悔やまれる。

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          この冬、着倒した感のある蝋たたきの紬に
          茶色に芥子色の細かい霰の羽織。

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          前帯は茶色、お太鼓部分で鉄(にび)がかった青磁色に
          分かれる染め帯。バッグと色をちょっと合わせてみた。

コンサートのプログラムは、フォーク・ソングというタイトル通り、ノルウェーやイギリスの古歌(13世紀や14世紀)がメインで、合間にここ10年のトリオのためのオリジナル曲が入る。いずれもタイトルを見ると、マリアを讃える内容の宗教的な古謡である。しかし、このくらい古くなると、抹香臭さよりも雅趣の方が強く感じられる。3人の澄んだ声で、現代的アレンジによる抜群のハーモニーで聞かせるから、瞑想的というより神秘的である。不協和音も美しく、あくまで印象は清清しい。
トースとマリアンに「女性版キングズ・シンガーズだから聴きに行こう」と銘打って誘ったのは、あながち見当ハズレではなかった。しかし、名人芸っぽくしないで、さらっとキレイに聞かせるのが女の心意気!という感じで、さりげない粋さでは、キングズ・シンガーズよりもずっと上で好感度抜群。

基本的にア・カペラの3声重唱だが、前半最後の2曲は、メロディック・ハンド・チャイムという楽器を手に伴奏(?)しながらだった。ミステリアスな雰囲気をより深めるため、舞台から降りて、客席の3方に分かれて演奏した。サラウンディング効果は抜群で、野鳥や動物の声を真似たような発声も入るので、まるでノルウェーの森の中にいるような気分になった。
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     一人2本ずつ手に持って振りながら歌う。高音のゴングみたいな音。
     残響が長く神秘的。(終演後、気になる楽器の名前をメンバーに訊いた)

もう1曲Fallingは、出来立てホヤホヤ、歌うのは今日が2回目というものだった。
ローリー・アンダーソン(!)の詩にアントニー・フィウマラという人が曲をつけたという。
歌詞は、I was looking for you, all day long. But I couldn't find youの繰り返しで、ゆっくりと即興的に歌われる。ゴングのようなチャイムに彩られたミニマルなメロディーは、心が締めつけられそうに美しい哀しみに満ちている。余韻と間が絶妙な秀曲で、思い出しただけで涙が出そうになる。
ローリー・アンダーソン作詞との説明を聞いて、びっくりした。というのは、このトリオの一人、赤毛の人がローリー・アンダーソンに似てるなあと思っていたからだ。
なにかローリー・アンダーソンと縁でもあるのかと気になり、終演後に訊いたら、何もないとのこと。作曲家が、アンダーソンと知り合いかもしれないとは言っていた。
「この曲が、とっても気に入りました」と感想を言ったら、メンバー全員、我が意を得たりとばかり「そうでしょう」と肯いていた。

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     終演後にサイン会。CDは買わずに、記念写真。ピンボケだが、
     気になることは質問でき、疑問も解けたので満足。


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ロビーには、オペラ・ザウドの昨年9月公演「ディドとアエネアス」の衣装が。ジャッキー・オナシス風のディドだったらしい。
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by didoregina | 2010-02-21 22:25 | コンサート | Comments(4)

不本意ながらカーニヴァル考

カーニヴァル期間中、マーストリヒトの人間は、人口統計上3つの区分に分類でき、その比率はほぼ同等で3分割できる。(地元の某旅行代理店の見解に基づく)

第一のグループは、カーニヴァルを毛嫌いして、オーストリアやスイスなどにスキー、もしくはカリブ海やカナリア諸島などに避寒に出かける。これらの人々は、金銭的に余裕があり、社会的地位および知的見地からも比較的上層部に属する。
第二のグループは、根っからのお祭好きの庶民階級である。年に一度の楽しみだと割り切り、この3日間のため貯めた金を衣装とお酒に湯水のようにつぎ込む。
第三のグループは、消極的にパレードなどを見物する側に回る。
第二、第三のグループには、観光客が大量に入り込み、空席になっている第一のグループの座を埋める形になるため、カーニヴァル期間中、マーストリヒトの総人口は普段と変わらない。

カーニヴァルというのは、日本人には基本的に理解できないものだと確信している。
パレードを見物しただけでは、阿波踊りを見物しただけみたいで、片手落ちもはなはだしいものだ。
参加したと豪語するには、仮装しただけでは弱すぎる。3日間、こちらのカフェからあちらのカフェに河岸を変えつつ、騒ぎ続ける気力がないといけない。カフェでは、ビールを飲み、カーニヴァルの歌にあわせて、知らない人とでも踊らなければいけない。この馬鹿騒ぎを3日間続け生き残った者のみ、カーニヴァルの正規参加者と認められるのである。

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            義弟の奥さんが作ったカーニヴァルのポスター。

人生の半分をオランダ南部、カーニヴァルの本拠地で過ごしてきたが、カーニヴァルに浮かれる人々の心理は未だ理解したとは言えない。
それで、本当ならカーニヴァルから逃げ出したかったのだが、不本意ながら、ドイツのラインランド地方の小さな町ケンペンのカーニヴァルに出かけた。義弟の奥さんの誕生パーティだったからだ。

ケンペンのカーニヴァルは、なんと3年に1度しか行われない。ドイツでは、ケルンなどライン川沿いの地方がカーニヴァルの本場だが、こういう小さな町では、毎年は祝われない、というのも不可思議である。
TVで見るラインランドのカーニヴァルは、山車も派手だが、度肝を抜かれるのは、ばら撒かれるお菓子の量だ。それを、今回、この小さな町でも実体験した。パレードに参加したグループは119で、それらが雨あられのごとく、駄菓子をばら撒くから、ダンボール一箱やショッピングバッグ一杯分は軽く集まる。ざっと見ても、消費するのに1年かかるんじゃないか、と思われるほどだ。

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         小さな町だから、パレード団体も規模がかなり小さい。
         見物人もパレード参加者も、体を内側から温めるため、
         外では、ジンやウィスキーなどの強い酒を飲みながらの我慢大会。
   
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         パレードのトリは、カーニヴァル・プリンス。
         この町には「プリンス・クッキー」で有名なLUの
         工場があるので、クッキーもどーんと一巻づつばら撒く。

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         マーストリヒトのように観光地でないのでカフェも少ないから、
         合間には、義弟の奥さん(アーチスト)のアトリエで飲み食い。

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         もちろん、着物で出かけた。
         雪がまた降って、零下2,3度だったが、
         重ね着したら、結構平気だった。
         ウールの紅型風着物に、黒地に漆で唐獅子牡丹の
         派手な絵の羽織。

着物の威力はまたしても絶大で、見物していたら、ギフト箱入りチョコレートをパレードの人から手渡された。これで、当分の間おやつには事欠かないだろう。

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         お約束のダンス。この人、かなりリードが上手だった。

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         ご当地のカーニヴァル菓子は、ベルリナーみたいな
         ジャム入り揚げパン。

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         オランダ南部のカーニヴァル菓子は、ノネフォッテン(尼さんのお尻)
         お土産代わりに手作りを持っていったら好評だった。
         
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         ノネフォッテンは、イースト入りの生地をリボン結びにした形が特徴。

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         二次発酵させてから、ラード入りの油で揚げるのがコツ。
         カラリとまわりはしっかり歯ごたえがあり、中はふんわり。
         狐色より濃い目にしっかり焼き色を付け、砂糖をまぶす。
      
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by didoregina | 2010-02-15 22:05 | 着物 | Comments(14)

シュトラウスのオペレッタ 「ジプシー男爵」

c0188818_1824111.jpg2010年2月5日
@Stadsschouwburg Sittard

Muzikale leiding: Pieter Cox
Regie: Marc Krone
Choreografie: Thao Nguyen
Decor: Karel Spanhak
Kostuums: Marrit van der Burgt


Solisten:
Barinkay - Andreas Schagerl
Saffi - Christina Khosrowi / Maartje Rammeloo
Homonay - Dieter Goffing
Zsupan - Bert Simhoffer
Arsena - Svea Johnsen
Cszipra - Rita Lucia Schneider
Mirabella - Daniella Buijck
Ottokar - Rik van de Rijdt
Conte Canero – Stan Lambregts

招待券を頂いたので、オペレッタを観にいった。
カーニヴァル前の能天気な賑やかさにふさわしい演目である。
NRC新聞に載ったカスパー・ヤンセンの評も、非常に好意的だから期待が持てた。
会場の駐車場に入るのが、まず大変だった。車の列が尋常になく長い。
招待客が多いだろうし、チャーター・バスで来ているオペレッタ愛好家と思しき団体もいるせいか、会場は満員御礼の盛況だ。

東欧、ドイツ、オランダ、オーストリアからの歌手やダンサーを寄せ集めた団体、国際オペラ制作基金というのが数年前設立され、地方都市にオペラ巡業を行っている。演目は大概誰にでもウケがいい超有名オペラで、演出はヒネリがなくストレートで、舞台装置は冴えない、というのが、お決まりパターンであるから、見に行こうという気にはまずなれない。しかし、招待となれば話は別である。話の種にもなるかもしれないから、シュトラウスのオペレッタに出かけてみた。

ドサまわり団体の宿命であるから、舞台装置には大掛かりなものは持ってこれない。しかし、バルコニーのある塔のような建物を左右に配置し、背後に数段高くした台だけを置くという、これは、まあ、思った以上にチープでシンプルである。
コスチュームは、ジプシーはそれらしい普段着で、金持ちはまたそれらしく、軍隊はまたそのものの制服で、ファンタジーは微塵もみられない。とにかく、コストを極限まで抑えた結果だろうからグチっても仕方がない。

オケは、ウクライナから連れてきたようである。なかなかに、ウィーン風のワルツなど、地方の老人ウケのいいムードで演奏している。しょっぱなから、おなじみのメロディーが次々と流れるから、周りから鼻歌が聞こえてくる。立ち上がってワルツを踊りだす人が出るんじゃないかと期待したが、アンドレ・リューのコンサートのようなノリにはならなかったのが残念。

歌手は、予想通り、けっこう上手い。若手がこれだけ揃っているというのが、いかにも東欧系らしい。
自国ではチャンスがなく、なかなか芽の出ない人たちがいっぱいいそうだから、そういう人をかき集めたら安くいい人材が得られる。
特に、コーラスとダンサーに若手を揃えたところがいい。舞台が華やぐし、演技や踊りもバシッと決まり、舞台装置の安っぽさを帳消しにしてくれる。
振り付けも、難解なモダン・ダンスではなく、ブレーク・ダンスみたいなのが主体で、ヒップホップ風コサックの踊りなど、観ていて楽しい。

主役級も文句なく、自慢の喉を聞かせてくれた。
ストーリーは単純でたわいもないもので、ハッピーエンドはお約束だから、演出もストレートに行くしかないだろう。時事問題など、小難しいものを読み取るのは不可能である。それでいいのだ。
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しかし、何も考えさせるものがないから、レビューを書く材料が見つからない。
後に何も残らない、余韻も何もない、もちろん、また見たいという気にもならない。
一晩限りの楽しみに、ぱっといい気分になってお仕舞いである。

ここの市民劇場で、スポンサーのパーティに招待されたのは、これで3度目である。
一般フォアイエより、招待客用の特別室のほうが広い、というところが、まず問題だ。
幕間には、飲み物のほか、カルパッチオのつまみが出た。
終演後は、ビュッフェ式ではなく、小皿に乗せたコース料理が配られた。ティラピアのソテーの乗っかったギリシャ風リゾット(クリーミーで美味しかった)、オッソブッコにポテトと赤キャベツのピューレ添え、チーズ各種は自分で好きなだけ取れ、デザートはアイスクリームのパンケーキ包み、温かいチェリー・ソースかけであった。

この手の文化活動にスポンサーとして招待されるのは、これで最後だと主人が言うから、そうだろうな、このご時世に、と納得した。社交を兼ねた地方文化振興という名目ではあるが、お金が掛かり過ぎである。無駄遣いとは言うまいが。
職場から10人が招待された。当日17時近くになって2枚チケットが余っていることがわかったが、金曜の夜だから急にいける人が見つかるわけがない。義母を誘ったら、大喜びでついて来た。ストレートなオペレッタを堪能し、パーティでもおしゃべりに花を咲かせ、心から楽しんだようだ。

着ていく着物には迷ったが、柔らかものの訪問着にした。これが大正解。
演目のせいか、かなりドレッシーでシックな服装の人が多かった。
知らない人からも口々に賞賛を浴びた。
スタイリッシュな白の毛皮のジャケット姿で、全身ホワイトで決めた70才台のソニア・リキエルみたいなマダムが、わざわざ近づいてきて、「オランダ語話せます?素晴らしいお召し物だわ。褒めずにはいられません」などと、言うのだった。

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               白に近い薄い灰紫色に
               扇と草花の蘇州刺繍が
               レースのように刺してある。
               母のを直さずに着たので
               裄が短すぎる。
               帯はラメが煌びやかな紫の濃淡。
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by didoregina | 2010-02-07 11:22 | オペラ実演 | Comments(6)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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