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来週のグラインドボーンの天候が気になる!

グラインドボーンにオペラを見に行く!と言うと、反応はほとんど判に押したように一様で
「セレブ~」とか「スノッブ!」とか「すごいね」とか、返ってくる言葉はオランダ語でも
日本語でも英語でも似たような語感の単語である。
たしかにグラインドボーンでオペラ鑑賞というのは、ブラックタイというドレスコードや
幕間の芝生上でのピクニックなど、庶民感覚とは隔絶してなんとなくエリート・上流趣味っ
ぽいイメージがある。しかし、チケットの値段は非常にリーズナブルだし、現地に泊まらずに
ロンドンから電車で日帰りで行くのだから、普通の歌劇場へ行くのとは遠征費用的にさほど
変わらない。音楽祭のチケット価格だけ比べても、ザルツブルクやエクサンプロヴァンス、
はたまたバイロイトの方がよっぽど高い。

グラインドボーンは、わたしにとって長年の憧れだった。三年前に観たくて行きたくてたま
らなかった『リナルド』の再演、しかも、今度の主役は今一番贔屓にしている歌手のイエス
ティン・デイヴィスである。このチャンスを逃したら一生行くことはあるまい、と遠征を
決意したのは今年の初め頃だった。
また、ドレスコード的にも、着物でオペラを楽しむというわたしの趣味にドンピシャである。
何を着ていくか、コーデに悩むのも楽しみの一つなのだ。


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夏だから、やはり夏着物で行きたい、と思ってまず考えたのは、上の写真、白の夏大島で
ある。
ここぞというときには、白大島を着たくなるわたしにとって、順当な選択だ。
夏らしくふんわりと薄手で羽のように軽く、しかもシャッキリした肌触りは、まるで羽衣。
エレガントだし、本来の夏の気候であったなら、夏大島はぴったりだろう。

しかし、夏大島をベースにしたコーディネートを決めてから、日々、天気予報を見ている
のだが、どうやら、来週もかなり涼しそうで、降水確率も高い。そうなると、体感温度は
もっともっと低くなる。夏大島の上と下に重ね着するという方向で考えていたのだが、最高
気温が20度を切り、下手すると夜には10度位という予報なので、やせ我慢の限界を超える。

ということで、結局、六月中旬のロンドン遠征に着ようと思っていたが案に反して予想以
上に暑くなったので諦めた、ピンクの地に紫と白の芍薬が描かれた袷の訪問着を今回ようやく
着ることができそうだ。
十代後半にお茶会で着るために誂え、結局着たのは大学の卒業式一回のみだったというその
着物は、今現在手持ちの中で一番派手なものだ。グラインドボーンだからいくらゴージャスに
しすぎても浮くということはないだろうだから、この機会を逃したら今後一生袖を通すこと
はないかもしれない着物も、縁を得て喜んでくれるだろう。

一応、ロンドンには両方の着物とそれぞれのコーデ一式を持って行って、当日の天候次第で
最終的に着る物を決めるつもりである。念には念を入れて、手抜かりのないようにしたい。


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by didoregina | 2014-08-16 23:06 | 着物 | Comments(4)

イエスティン・デイヴィスの『ソロモン』を聴きにリスボン遠征

リスボンへ一泊の弾丸遠征をした。それも1人で。
今年おっかけターゲットに定めたイギリス人カウンターテナーのイエスティン・デイヴィスが
タイトルロールを歌うヘンデルのオラトリオ『ソロモン』をどうしても聴きたかったからだ。

c0188818_4252940.jpgThursday, 20 Mar 2014, 19:00 - Grande Auditório

GULBENKIAN ORCHESTRA
GULBENKIAN CHOIR
PAUL MCCREESH (conductor)
IESTYN DAVIES (countertenor) (Salomão)
INÊS SIMÕES (soprano) (Rainha de Salomão)
GILLIAN WEBSTER (soprano) (Rainha de Sabá)
MHAIRI LAWSON (soprano) (Primeira Prostituta)
CÁTIA MORESO (mezzo-soprano) (Segunda Prostituta)
THOMAS WALKER (tenor) (Zadok)
HUGO OLIVEIRA (baritone) (Um Levita)

Georg Friedrich Händel
Solomon, HWV 67


イエスティン君が出演した(主演といってもいい)ヘンデルのオペラ『ロデリンダ』鑑賞の
ために行ったロンドン遠征から2週間ほどしか経っていないから、現在、彼にどれだけ入れ
込んでいるのかお分かりいただけるかと思う。

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ポルトガルに行くのは、ヨーロッパ在住30年近くになるが今回が初めて。ヨーロッパ大陸の
西南の果てに位置するポルトガルは、なんと、CETとは一時間の時差があるGMTを採用している。
ブリュッセル空港からリスボンまでは3時間のフライトであるから、同じヨーロッパ内とはいえ、
かなり距離的には遠い。
しかし、ライアン・エアの今月から出来たてほやほやのこのルートのフライトは安い。
往復で60ユーロである。
それに空港からトランスファー(ホテルへのキャブ送迎)が往復で14ユーロ。
ホテルは、ホール至近で朝食付き50ユーロ。
そしてなんと、グルベンキアン音楽堂のコンサート・チケットは最前列かぶりつきの一番高い
席で27ユーロ!
全部合計しても、近場の歌劇場の一番高い席より安いし、1月のドルトムント遠征費用よりも
100ユーロ近く安くあがる勘定である。
(こんなにくどくどと細かくお金の話をするのは、それだけ「リスボン遠征」が心理的・距離
的に引っかかるものがあり、1人で行くことに罪悪感さえ覚えたためである)

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グルベンキアン音楽堂の舞台後方はガラス張りで、外の公園が借景。


コンサートは2夜連続公演だが、初日を一回だけ聴きに行った。
通常、遠征するときには2泊して別の演目も組み合わせるのだが、リスボンの歌劇場は月に2,
3日しか稼働していず、コンサートとオペラを組み合わせるのはまず不可能だ。
それならば追っかけの王道として、同じコンサートを二晩続けて聴くという選択肢もある。
当日の歌手の出来不出来、コンディションの違いが分かり、音楽的にもより楽しめるというのと、
ドタキャンがあるかもしれないから、保険代わりに2回は同じ演目を鑑賞するのが、一般的遠征
の鉄則であるらしい。
しかし、私は一期一会を大切にしたいと思う。一回のコンサートやオペラ鑑賞に全力投球したい。
それに私の場合、おっかけ歌手がキャンセルしたことはほとんど皆無である。(1月のドルト
ムントでのデュモーのキャンセルは本人も言っているが10年以上のキャリアで初めて。今後
10年はないだろうとのこと)
だがしかし、一回だけコンサートを聴きにいくというのは果たして正しい選択なのか、直前に
なって悩んだ。

結果はどうだったかというと、一回のコンサートが十二分に満足いくものだったため、もう一回
聴くべきだったのに!という後悔はなかった。

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                   女性ソリストたち

数あるバロックオペラの中でも、ヘンデルのオペラの数々は上演機会がダントツに多い。
音楽的に美しく万人向けであるから集客がしやすいのと、歌手やオケのレパートリーに入って
いる作品が多いこと、そして、内容的にもギリシャ神話を題材に採ったものが多く、ユニヴァー
サルかつ時代を超越したテーマを扱っているため舞台にかけやすいという理由であると思う。
それに対して、聖書の物語を題材にとったオラトリオの方は、構成上オペラに近いにもかかわ
らず、舞台形式で上演されるものではないし、コンサートにしても演奏される機会はあまり
多くない。
そしてまた、ヘンデルのオラトリオの歌詞はほとんど英語で書かれているから、英語のネイ
ティブ歌手によって歌われるのが自然であるように思われる。
手持ちのCDは、ダニエル・ロイス指揮、ベルリン古楽アカデミー演奏、RIAS室内合唱団と
オール英国人ソロ歌手によるものである。(ソロモンは、メゾのサラ・コノリー)

また、今回の実演の指揮者と同じポール・マクリーシュの指揮、イエスティン君がソロモンを
歌う動画もYoutubenに全編アップされているので、↓に貼る。



上の動画も、上記CDも古楽オケによるきびきびしたテンポの溌剌たる演奏である。

今回鑑賞したコンサートでは、指揮者はマクリーシュだが、手勢のガブリエリ・コンソート
ではなく、ホール専属のモダンオケおよび専属合唱団による演奏だった。
どうも、なんだか水で薄まったような、ちょっと頼りない演奏である。
ソロ歌手は、半分くらいが英語ネイティブであろうかと思われる。
バリトンとテノールはちょっとオペラチックな歌唱だなあ、と思った程度でそれ以上、印象に
残らない。
女性歌手は、遊女その一とシバの女王の清らかな声と美しく惚れ惚れするような英語の発音とで
好感度が高かった。特に、遊女その一が、我が子を思う母親らしい心情を切々歌い、やはりこの
オラトリオの一番の聞かせどころだなあと、ぐっと胸を掴まれた。

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最前列中央より一つ右寄りの座席なので、イエスティン君は
            目の前。あまりに近すぎて、写真が上手く撮れなかったほど。


さて、肝心のイエスティン君の歌唱はどうだろう。
彼は、数日前までオペラ『ロデリンダ』に出演していた。そのオペラのマチネ公演の出待ちを
した時は疲れているようで、楽屋出口での彼は異常に言葉少なかった。
千秋楽の翌日にはリスボンに飛んだようで、すぐにリハーサルに入って、『ロデリンダ』の
千秋楽から5日後が『ソロモン』のコンサート初日だった。
本当にリスボンで歌うんだろうかと心配だったが、リスボンの天気を知らせるツイートを見て、
ああ、これでもうキャンセルはないだろう、と安堵した。
緊張気味の表情であるが、いつも通りどの音域でも安定してきっちりした歌唱としっかりした
声量で、安心して聴くことができた。

私自身びっくりしたのは、このところイエスティン君の実演やCDばかり聴いているため、あま
りに彼の声に耳が馴染んでしまって、舞台上の彼の歌唱を聴いてもトキメキを感じるよりも、
まるで生活の一部のようになっているというか、手の内がすっかりわかっている長年慣れ親し
んだ人に接するような気分になったことだ。
コンサートという非日常の時間と空間での体験の最中なのに、ごく日常的な幸福感に近いものを
感じ、自然に笑みが湧いてくるのだった。なんというか、ほっこりした羽毛に抱き包まれたかの
ような安心感に浸れるのだった。
こうなるともう、客観的になったり批評的に聴いたりすることは不可能である。

初めて見る詰襟のステージ衣装がストイックな雰囲気で、賢王のイメージにぴったりであった。

終演後、出待ちする人が他にはいなかったので、イエスティン君と少しおしゃべりができた。
今回の演奏は、モダンオケによる演奏で440Hzのモダンピッチなので、バロック時代のピッチ
に比べて高いため、特に高音が多いヘンデルのソロモンではCTである彼にはかなり辛かったそうだ。
翌日もう一回だけの実演で終了するからなんとかなるだろう、とのこと。
コンサート終了後の充実感と高揚感で饒舌になっている彼の態度からも、その晩のコンサートの
出来が満足いくものであったことが感じられるのだった。
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by didoregina | 2014-03-25 22:50 | コンサート | Comments(9)

『ロデリンダ』のカーテンコールと出待ち写真

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                               Courtesy of Tsubakihime (Peraperaopera)

イエスティン・デイヴィス・ファンの皆様、昨晩BBC3よりラジオ生放送されたENO公演
『ロデリンダ』はお聴きになりましたでしょうか?
まだの方は、下のリンクからあと6日間オンデマンドで聴くことができますから、ぜひ!
http://www.bbc.co.uk/programmes/b03x160z

ENO公演『ロデリンダ』でのイエスティン・デイヴィスのカーテンコール写真と楽屋出口で
撮った写真をアップします。
平土間2列目正面席だったにもかからわず、私の撮ったカーテンコール写真は、ぶれたり
タイミングが悪かったりして碌なのがないため、ご一緒したロンドンの椿姫さまの撮った
写真を何枚か譲っていただきました。全て3月2日に撮影されたものです。

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イギリスの各紙でも『ロデリンダ』公演、特にイエスティン君は絶賛されています。

中でも、オブザーバー紙のフィオナ・マドックス女史の評には、私自身かなり共感する部分が
多いので、リンクを張ります。ご一読ください。http://www.theguardian.com/music/2014/mar/09/rodelinda-eno-jones-curnyn-review?commentpage=1

その中から、イエスティン君のパフォーマンスに関する部分を抜粋します。

”Yet no single organisation has brought the composer's operas back to life more assiduously or persuasively than ENO, whose radical reinvention began with Nicholas Hytner's Xerxes in 1988. Jones and Curnyn, like others since, have continued that tradition. It helps when a production has a big star. The night belonged to Iestyn Davies. An ex-chorister of St John's College, Cambridge, Davies has suddenly accelerated from "promising British countertenor" to world-class artist. He can sing, whether full blast or hushed pianissimo, with a strength, steadiness of tone and musical confidence almost unknown in a voice type which has tended – shout me down – to prefer ethereal frailty as a calling card. He also has an understated sense of comic timing.”
(Fiona Maddocks, The Observer, Sunday 9 March 2014)


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              出演歌手では一番最初に楽屋口から出てきたイエスティン君。
              速攻で鬘と化粧を落として着替て出てくる早業に驚きましたが、
              それよりも先に来て待っていた私達に、彼の方もびっくりの様子。



"The supreme star of the show is Rodelinda, sung with ravishing tone and great intensity by Rebecca Evans; but Iestyn Davies as Bertarido is magnificent, too, and his acting is as concentrated as his singing."
(Michael Tanner, The Spectator, 8 March 2014)

上に抜粋を載せた、スペクテイター紙の『ロデリンダ』評、リンクはこちらです。http://www.spectator.co.uk/arts/opera/9152011/the-musical-side-of-rodelinda-was-close-to-perfect/


また、BBC Music Magagineのウェブサイト、クラシカル・ミュージック・ドットコムのヘレン・ウォレス
女史による評にも同感、おもわず頷く部分が多いので、リンクを張ります。
http://www.classical-music.com/blog/handels-rodelinda-eno

"Iestyn Davies stole the show with aria after aria of heavenly purity and ardour."

"At other times it works hand-in-glove, building up a terrific tension during Bertarido’s aria at the end of Act I, when he believes Rodelinda has betrayed him, as she and Grimoaldo whirl through the rooms in an intensely sexy tango (what a relief to find real choreography and singers who could compete in Strictly), or in the mercurial, chromatic aria in Act III as Grimoaldo dashes impotently about searching for the right weapon, furiously whipped up by Curnyn. Most memorable of all is the heart-stopping ‘Io t’abbraccio’ at the end of Act II, when Davies and Evans voices come together at last (a fabulous match) just as they are ruthlessly separated, each singing to the other as the rooms they stand in are dragged physically further and further apart. A witty production with a dark heart; don’t miss it."
(Helen Wallace, Classical-music.com, 4th March 2014)

長いこと待ち望んでいた『ロデリンダ』実演鑑賞にどきどきでしたが、イエスティン君の素晴らしい
歌唱と演技、楽しめるプロダクションに大満足。そして出待ちも上手くいき、最高のロンドン遠征
となりました。

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by didoregina | 2014-03-09 21:49 | イエスティン・デイヴィス | Comments(10)

ヘンデルの『ロデリンダ』@ENO

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2014年3月2日@ENO

Rodelinda Rebecca Evans
Bertarido Iestyn Davies
Grimoaldo John Mark Ainsley
Eduige Susan Bickley
Unulfo Christopher Ainslie
Gardibaldo Richard Burkhard

Conductor Christian Curnyn
Director Richard Jones
Set Designer Jeremy Herbert
Costume Designer Nicky Gillibrand
Lighting Designer Mimi Jordan Sherin
Video Design & Animation: Jeremy Herbert and Steven Williams
Movement Director Sarah Fahie
Translator Amanda Holden










English National Opera (ENO)で現在上演中のヘンデル『ロデリンダ』は、この歌劇場の通例
通り、原語ではなく英語上演である。
ヴェルディやロッシーニ、プッチーニはたまたドニゼッティなど、こてこてのイタリア・オペラを英語で
歌われると、かなり耳なじみが悪いだろう。。また、ヘンデルのよく知られたイタリア語歌詞の曲の
場合も英語で聴くのは辛い。しかし、ヘンデルのオラトリオにはもともと英語歌詞の作品が多いから
だろうか、今回のオペラも英語に訳して歌われるのを実際に聴いてみて、当初恐れていたほどの
違和感を感じなかった。
オペラ『ロデリンダ』には、私自身あまりなじみがないと言うこともあるが。

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ロンドン・コリシアムと呼ばれるこの歌劇場は、トラファルガー広場から程近い場所に1904年に
建てられ、外観も内装もなかなか重厚な世紀末趣味が感じられる。
円形に近いホール中心に沿うように客席が作られ、ホールに奥行きがあまりなく、大きさも程よく、
客席床は緩いスロープで少しずつ高くなっているから、平土間のどの位置に座っても舞台はよく
見えそうだし、音響にも大差なさそうだ。
私たちは、今回、平土間2列目中央に席を取った。

舞台前のオーケストラピットは深めで、1列目中央に座っても指揮者の頭が邪魔にならないだろう。
しかし、そのためもあるのか、小編成のオケの音は音量が控えめでよく聴こえてこない感じだ。
まあ、イギリスの古楽系指揮者およびオケにありがちなので驚かないが、とにかく歌手の邪魔を
しないことを旨としているとしか思えないような、耳にも胸にも響かない、印象に残らない演奏で
あった。彼らの演奏には、ワクワク感とかスリルとか主張のあるカッコよさとかを期待するのは
間違いである。火傷しそうなほど熱かったり、ピリッとしたスパイスの利いた演奏を聴かせる、個性
溢れるヨーロッパの古楽オケやアンサンブルの数々に慣れた耳には、さらりとした無色透明の白湯
みたいで、味とか熱が全く感じられないのだった。

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上の写真で舞台の全体的な造形がよくわかるだろう。
『ロデリンダ、ロンバルディアの女王』というタイトルから乖離しないよう、時代は50年代かと
思しく、ミラノの暗黒街が舞台である。
舞台手前に置いてある3基のホームランナーの上を登場人物が走ったり歩いたりして、ちょっと
レトロなフィルムノワールのカリカチュア的雰囲気、例えるならば『ディック・トレイシー』みたいな
イメージである。
ミラノを独裁で牛耳っていたと思われるベルタリドは、敵対するマフィアの親分グリモアルド に
よって失墜・追放させられた。その妻ロデリンダと息子は、敵方に捕えられ軟禁されている。
ヴァレンチノもどきの無声映画時代のハリウッド・スターのブロマイドみたいな甘い表情で写って
いるベルタリドの栄光時代の写真が、壁にべたべたと貼られているのには笑えてしまう。l

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             妻子が心配で、浮浪者に身をやつしてミラノに舞い戻ってきたベルタリド


ロデリンダとベルタリドの息子は、リチャード・ジョーンズによる今回の演出では、20代始めと
思しき年齢設定なので、ロデリンダもベルタリドの妹エドゥージも50歳くらいの年増の雰囲気で
違和感はない。しかし、ベルタリド役のイエスティン・デイヴィスは30代前半と若いし、もともと
ベビーフェイスで実際の年齢より普段でも若く見えるから、白髪交じりの鬘を付け老けメイクを
しても20歳くらいの息子がいる中年もしくは初老の男性に化けるには無理がある。
イエスティン君は目チカラがあるし、痛々しい表情で苦い境遇の薄幸の人物を上手く演じては
いるのだが。
彼の役どころは、最初から最後まで同情を買う、悲劇の主人公である。

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それに対する敵のグリモアルドは、憎々しげで太ったマフィアの親分風の嫌な奴で、まさしく
アメリカ映画の悪役そのものだ。
ジョン・マーク・エインズリが下種な悪役になりきりなのに唸らされた。
徹頭徹尾カリカチュアライズされた悪役だから、やることなすこと笑いを誘うのである。

ハリウッドのギャング映画のパロディー風演出なので、悲劇の主人公ベルタリドはいつでも
弱々しげな哀しい目つきで、ワルイやつににいたぶられがまま、という善悪・白黒がはっきり
した設定と展開だから、全体のトーンはコミカルにならざるをえない。オペラセリアであるはず
なのにドタバタコメディになっているのである。
それは今日、ヘンデルのオペラを現代演出で上演する場合、避けられないパラドックスなのだと
思う。もともと、喜劇的要素がある脚本だし、音楽にも悲劇のトーンは少ないからだ。

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このオペラでは、CTによって歌われるベルタリドのアリアに美しい曲が多いし、同情を誘う役柄
だし、今回のキャストでもイエスティン・デイヴィスの存在感(歌唱と演技両方)が贔屓目でなしに
一番光っていた。タイトルも『ロデリンダ』ではなく、『ベルタリド』にしたらよかったのではないかと
思えるほどだった。イエスティン君が真の主役であったことは誰の目にも明らかだった。

とにかく丁寧かつ誠実に心を込めた歌を聴かせるのが彼の真髄である。歌唱に無理がないから、
音がぶれたりすることが全くなく、どの音域でもとても安定して安心して聴くことができる。
声質的には、CTの中ではかなり男っぽい声である。
装飾に凝ったり技巧に走るタイプではなくストレートな歌唱で勝負するから、ヘンデルのオペラに
ぴったりだ。
彼の歌を聴いていると、言葉の意味の重要さも大切にしていることがよくわかる。単語のひとつ
ひとつにしっかりを意味を込め、音符の一つ一つを大切にして色と陰影を付けるから、美しい英語の
発音も相まってとても分かり易く、聴く者の心にまっすぐに届く。
だから、ベルタリドの心情を切々と歌われるのに胸が痛んで、こちらの目からも思わず涙が
こぼれそうになった。

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さて、ベルタリドの腹心の部下であるウヌルフォ役もCTであるから、二人のCTを同じ舞台で聴き
比べることができるのも楽しみにしていた。
しかも、まだ生の歌声を聴いたことのない、期待のクリストファー・エインズリーだから、彼の歌唱に
は身を乗り出して聴く構えだった。
イエスティン君と比べると、クリスの歌唱はメリハリに乏しく一本調子だ。彼の声も比較的男性的で
ダークな色合いで少々重い。まだ若いから、これから経験を積んで変化していくだろうから、今回
の舞台のみで判定するのは早計ではあるが、ちょっとまだ歌唱では印象が弱い。

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                     左がクリス

しかし、クリスには、舞台映えするルックスと存在感という強みがある。このまま研鑽を積んでいけば
キャリアも自ずと開けるのではないかと思わせた。

ところで、今回の登場人物は皆、思い人の名前を自分の体に彫っていたり刺青を入れさせたりする
のだが、最後近くのシーンになって、血だらけのシャツを脱いだウヌルフォの背中に大きく彫られた
名前を見てにやりとしてしまった。そこには、ベルタリドと彫られていたのだ。


この『ロデリンダ』は、明日3月8日CETで18時50分から(GMTで17時50分から)BBC3より
生放送される。
一週間はオンデマンドで聴けるはずなので、ぜひともお聴きいただきたい。

http://www.bbc.co.uk/programmes/b03x160z
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by didoregina | 2014-03-07 17:01 | オペラ実演 | Comments(10)

イエスティン・デイヴィスが英語で歌うベルタリドのアリア

イングリッシュ・ナショナル・オペラのヘンデル『ロデリンダ』は、今晩2月28日が初日です。
これを機に、マレーナ様私設ファンクラブに倣って、イエスティン君応援のための私設ファンクラブを
ここに設立したいと思います。

ENOでは全てのオペラを英語で上演するので、英訳歌詞がこなれてない点や英語で歌われるという
不自然さに対しては、オペラファンおよび歌手の意見でも好き嫌い賛否の分かれるところですが、
ヘンデルのイタリア語のオペラを英語で上演するとどういう感じになるのでしょうか。

Dove sei, amato bene? ならぬ O, where are you, dearest beloved?




ENOプロモ・ヴィデオで聴くことができるイエスティン君の歌うベルタリドのアリア『お前はどこに、
愛おしい人よ」には、事前に恐れていた英語歌詞の不自然さが全く感じられないどころか、とても
こなれた印象です。まるで、ヘンデルがこの歌詞に曲を付けたかのように。
この好印象の理由としては、イエスティン君が歌っているから、ということも大きいでしょう。
彼の英語の発音と歌唱がぴったりと合って、美しいことこの上ありません。
切々と語る心情がひしと胸に迫り、うっとりと聞きほれてしまいます。

『ロデリンダ』には、このほかにも美しいオペラが散りばめられていて、ベルタリドの歌の比率も高い
ので、イエステイン君はどうベルタリドを演じ歌うのか、3月2日の実演鑑賞がとても楽しみです。
METで以前に原語のイタリア語で上演されたものと演出は同じですが、アンドレアス・ショルが
ベルタリド役のそのプロダクションは事前にはあえて見ないことにしました
。予習は、その他の
プロダクション動画と録音でしています。)

追記と訂正:ENOの演出はリチャード・ジョーンズが担当し、METのプロダクションとは全く別物
でした。当初ENOが使っていた写真がMETのものだったので、勘違いしていました。ENOでの
『ロデリンダ』鑑賞記もなるべく早くアップしたいと思います。


当イエスティン・デイヴィス・ファンクラブでは、会員募集を常時行っていますので、皆さまのご参加を
お待ちしております。
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by didoregina | 2014-02-28 12:30 | イエスティン・デイヴィス | Comments(8)

チューリッヒの『アルチーナ』から、マレーナ様ルッジェーロの動画!

マレーナ・エルンマン・ファンクラブの皆様、お変わりありませんか。

ヨーロッパは異常な暖冬なのに日本では豪雪と、予測の付きにくい天候のため、風邪をお召しの
方もいらっしゃるかと思います。
パワフルなマレーナ様の動画をご覧になって、目と耳からヴィタミンを吸収してください!





ますますパワーアップしたマレーナ様の演技と歌唱に、皆さま、身を瞠らされたことと思います。

現在チューリッヒでは、ヘンデルの『アルチーナ』(チェチリア・バルトリがタイトル・ロール)公演中で、
マレーナ様はルッジェーロ役で出演しています。
演出はクリストフ・ロイ。ロイ演出の『湖上の美人』も、チューリッヒ公演(ディドナートが主演)の
数年後、2012年夏にマレーナ様が主演、アブラミヤンが共演でウィーンで再演されました。
だから、今回の『アルチーナ』も、またアン・デア・ウィーン劇場で再演されるのではないかと思って
います。

動画からの印象では、このルッジェーロのキャラクターは、ノーブル演出の『セルセ』とマクヴィカー
演出の『アグリッピーナ』でのネローネを合体させたかのような感じです。まさに、マレーナ様が
ヘンデルのオペラで演じるコミカルなズボン役の集大成のような趣です。


もう一つアップされている、ルッジェーロのスローなアリアの動画もご覧ください。




ファンの皆さま、心を一つにして、この『アルチーナ』再演を念じ、願いましょう!
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by didoregina | 2014-02-11 10:25 | マレーナ・エルンマン | Comments(0)

マレーナ様ネローネの仰天演技と歌唱

マレーナ・エルンマン・ファンクラブの皆様、新年早々、素晴らしい動画がアップされている
のでご紹介したいと思います。

昨年11月のリセウ歌劇場での『アグリッピーナ』の第三幕、ネローネのアリアQuando invita
です。
マレーナ様直々のお墨付きですから、何はともあれ、ご覧になってください。




Qual bramato piacere mi s'offre del destino!
oggi spero baciar volto divino.

Quando invita la donna l'amante
è vicino d'amore il piacer,
il dir : "vieni ad un istante"
egli è un dir, "vieni a goder!"

比較的スローなテンポで、じっくり聞かせる曲です。超絶技巧のアジリタはありませんが、
その分、美しいメロディーが心に染み入り、名曲ばかり散りばめられたこのオペラの中でも
白眉の一つと言えましょう。

しかし、マクヴィカー演出によるネローネは、10代後半で性的な発情を隠さず、多動性でマザ
コンという設定です。だから、この美しいアリアも、マレーナ様ネローネは、なんと腕立て伏
せやピラティスなどの運動をしながら歌うのです。

これを実際に劇場で見たときのインパクトの強さには凄まじいものがありました。
そのあとのアリアCome nubeでは、マレーナ様ネローネはコカインを吸引しつつラリッて、
機関銃のようなハイテンポでアジリタの多い歌を歌うという曲芸を見せてくれるので有名です
が、このQuando invitaの演技と歌唱の方には、聴く者の耳目を一瞬たりとも外すことのない
ような密度の濃さが充満していました。
しっかりと聴かせる歌を、ピラティス運動をしながら息切れすることなくいかにも軽々と歌う
姿に感じ入り、観客は固唾を飲んでマレーナ様の一挙一動を見入り、その歌唱に魅入られたの
でした。
そのカリスマ的求心力。余人に真似できるものではありません。
マクヴィカー版アグリッピーナのネローネ役はマレーナ様以外には封印されてしまった、という
ことを確認したのでした。


新年初めのファンクラブ会報ということで、グラインドボーンの『こうもり』から、マレーナ
様オルロフスキーが歌うアリア「わたしはお客を呼ぶのが好き」の動画も貼り付けますので、
こちらではまた別のマレーナ様をご堪能してください。


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by didoregina | 2014-01-09 20:40 | マレーナ・エルンマン | Comments(4)

『アグリッピーナ』@リセウは、エンタメ・バロックオペラ決定版!  バルセロナ遠征記 その4

c0188818_20281651.jpgConductor Harry Bicket
Stage direction David McVicar
Scenography and Costumes John Macfarlane
Lighting Paule Constable
Choreography Andrew George
Co-production Théâtre Royal de la Monnaie (Brussels) / Théâtre des Champs Elysees (Paris)
Jory Vinikour, clave
Symphony Orchestra of the Gran Teatre del Liceu

Agrippina Sarah Connolly
Nerone Malena Ernman
Poppea Danielle De Niese
Claudio Franz-Josef Selig
Ottone David Daniels
Pallante Henry Waddington
Narciso Dominique Visse
Lesbo Enric Martínez-Castignani

2013年11月18日@Liceu

リセウ歌劇場の今シーズン、ほとんど全演目がよそからの借り物か共同プロなのだという。
新作、新演出などのオリジナリティ追及派、冒険推進派からしたら、節操のない態度と思えるかも
しれないが、財政緊縮を余儀なくされている歌劇場にとって、こういう開き直った態度をとることも
一理ある。
なにより、すでにどこかの劇場で上演済みの安全パイ、しかも一流のキャストを持ってくるのだから、
集客もしやすいだろうし、成功は約束されたも同然である。

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今年の新シーズン開幕演目は、10年前にモネ劇場とシャンゼリゼ劇場の共同プロとしてブリュッセル
とパリで上演されて以来、バロックオペラ・ファン、ヘンデルオペラ愛好家にとって伝説と化している
マクヴィカー演出による『アグリッピーナ』だった。

マクヴィカーのヘンデル・オペラ演出では、グラインドボーンで上演された『ジュリオ・チェーザレ』も
伝説化しているが、そちらは全幕映像化されているし、昨年METでも再演されたし、安定した人気を
誇っている。
マクヴィカー版『ジュリオ・チェーザレ』は、ミュージカルと見まごうばかりダンスシーンの多い、しかし、
無理な読み替えがないシンプルな舞台のため、純粋にヘンデルの美しい音楽が楽しめる優れた
エンタメになっていて、その点は『アグリッピーナ』も同様である。だから、この2プロダクションは、
まるで2部作として見ることができるほど、似ているのである。

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モネでの初演でネローネだったマレーナ様と、ENOでの英語版でタイトルロールだった
     サラ様が共演!まさに私のために夢を実現してくれたとしか思えない、いいとこどりキャスト!


マレーナ様とサラ様は、わたしが一番好きなメゾ・ソプラノの両雄(!)であり、追っかけの対象で
あるから、単独では何度か生に接している。しかし、その二人そがろって同じ舞台に立つことは
今までなかった。
今回の『アグリッピーナ』は、だから、それだけでも世紀のプロダクションなのだ。
その二人の親子役は、どうだったであろうか。
舞台上の二人は、全く齟齬を感じさせず、奸智に長けた母親と彼女に対して屈折した感情を持つ
息子という役柄を、本当に説得力を持って演じていた。
しかし実際は、もしかしたらライバル歌手同士の火花も散っていたのではなかろうか、とわたしは
推測するのである。特に、マレーナ様ネローネに対する拍手喝采は凄まじく、人気の軍配は彼女の
方に挙がったのではないかと思われるから、主役を張ったサラ様の心理やいかに、と心配になるの
であった。逆にいえば、主役でないマレーナ様の方がずっと精神的には楽だし、はまり役でもある
ネローネを思いっきりのびのびと演じられ、余裕で溢れ出るエネルギーを歌唱にも回すことができた
のだと思う。


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              カーテンコールで、サラ様とマレーナ様が手を取り合って。


リセウ歌劇場の専属オケの演奏はしょぼくてイマイチかも、という声も事前に聞いていた。
しかし、ビケット指揮によるオケは非常にバランスよくまとまった演奏を披露してくれた。
どのセクションも、ちょっとこれは、と思うような点が見当たらず、通奏低音がよく響いてリードしている
から、モダンオケなのに古楽らしさが香っていたし、なにより音楽としての全体をまとめるためにあえて
歌手の伴奏に徹する、という態度を前面に出しているのがよかったのである。
ビシバシと歯切れよく、小気味いいドライブ感とか、エッジが立ってかっこいいという演奏とは全く
言えないが、主張と言うものが感じられずまったりして生気に乏しくてなんだかつまらない、という英国の
古楽オケと指揮者によくありがちな演奏とも別物であった。
これは、指揮者のバランス感覚が優れているためだと思う。そして、リセウ歌劇場の音響が、意外にも
バロックオペラに適しているのだった。ドライではなく、響きすぎもせず、稀に見るほど気持ちいい音響
環境なのだ。

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                  舞台上の字幕は、な、なんとカタロニア語のみ!

前日のグルベ様リサイタルですでに驚いたのだが、リセウ歌劇場の舞台上字幕は、バルセロナの
公用語であるカタロニア語のみである。
スペインからの独立気運の盛んなこの地方は、スペイン全体の経済(工業)を背負って立つという
自負があるが、火の車であるスペイン経済の重みが肩にずっしりとのしかかっているという苛立ちも
隠せない。
そのことは、町に一歩足を踏み入れると建物からずらりと下がるカタロニアの旗で一目瞭然だし、
学校教育の場でもスペイン語を用いずにカタロニア語だけなのだ。
だから、町中では、スペイン語とカタロニア語の二か国語表示や放送になっている場合もあるが、
カタロニア語がなんといっても主流である。なんとも凄い郷土愛と誇り。
ただし、平土間の座席に付いている字幕は、数国語から選べるようだった。(舞台と手元の字幕を
同時に見ることは不可能なので、利用しなかったが)

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                      幕間に舞台とオケピットを背景に。


オペラ演出に話を戻そう。
マクヴィカーは、当然ながら設定を現代に移しているが、舞台となっている国などが特定・
推察ができるわけではない。どこか小国の元首のお家騒動でもいいし、オーナー一家が株主や
取締役を占める企業のお話としても観ることができる。
ワンマン社長もしくは元首であるクラウディオ、経営や権力の座世襲に口をはさむ辣腕の妻と、
色情狂のバカ息子、それにもう一組ポッペアとオットーネが絡むコメディーである。
権力闘争が軸にはなっているが、暗殺が絡んだりする暗いお話ではない。そういえば、バロック
オペラには珍しく、この作品中に死人は出ないのだ。
だから、一人突出して怨みを持った人物が登場する、ということがないため、全体のトーンが明るく、
楽しいのだ。エンタメとして料理しやすい理由であろう。


女同士、悪巧み知恵比べのアグリッピーナとポッペア

マクヴィカーの演出で感心したのは、舞台上の焦点の定まりである。
上掲の動画をよくご覧いただきたい。歌のないレチタティーヴォの場面なのに、いい意味での
緊張感が途切れなく続き、神経が万遍なく舞台上に行き届いていることがお分かりいただける
だろうか。
無駄に大勢の人物を舞台に乗せず、主要人物以外は最小限にして、話の筋と音楽に焦点を当てる。
その場面で焦点を当てるべき人物には、舞台上の他の人物の関心も集まっているから、焦点が
ぼけない。インパクトが強い。
映画映像の主役に焦点を当てるのと同様の仕方でオーソドックスな方法ながら、最近のオペラ演出
ではあまり見かけないパターンである。
こうすることによって、観客の視線も一か所に集中しそのまま耳も歌手の歌に集中するので、会場
全体に一体感が生まれるのである。どうして、こういう正攻法なアプローチが最近のオペラ演出では
避けられる傾向になっているのか合点がいかないほど、これは効果的なのだ。
あれもこれもと欲張って、なんでも詰め込んだ過剰演出が、観客にとっては有難迷惑なサーヴィスで
ある、と、はっきりわからせてくれた。
マクヴィカーによる『アグリッピーナ』は、観客にとって、音楽と舞台を同時に楽しめる気持ちのいい
演出である。
その代り、舞台上の歌手へのスポットの当たり具合が半端ではないから、一点集中に耐えられる
演技力と歌唱力の両方が必要であることは言うまでもない。

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結論。このマクヴィカー版『アグリッピーナ』は、究極のエンタメとして、近年まれにみるほど
優れたプロダクションになっていた。
シンプル・イズ・ベスト。シンプルなものほど素材で勝負しないといけないし、誤魔かしがきかない。
舞台造形もシンプルだから、このプロダクションは他の劇場へのレンタルに適している。しかし、
演技力と歌唱力の優れた素材である歌手が揃わないと、これほどまでの効果は生まれなかったに
違いないのだ。
空前絶後の今回のプロダクションを見逃した人たちのために、全編が正式に映像化されることを
切に望む。
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by didoregina | 2013-12-07 15:41 | オペラ実演 | Comments(2)

マレーナ様のネローネ@リセウ   バルセロナ遠征記その3

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  初演から10年後のマレーナ様ネローネ


マレーナ・エルンマン・ファンクラブの皆さま、長らくお待たせしました!
すでに『アグリッピーナ』千秋楽も終わった今、ようやくレポートを書く気分になってきました。
と、申しますのも、今回、リセウでの『アグリッピーナ』再演は、今年最大のメインイヴェント、
3年越しの念願、いや、マレーナ様を知った最初の日から今までずっと待ち続けていた、わたしに
とってほとんど人生のゴールの一つに近いほど重みのあるものだったのです。
そして、期待を予想以上に上回る素晴らしいプロダクションに圧倒され、また、マレーナ様渾身の
パフォーマンスは一世一代と言ってもよく、まさに伝説再生の現実離れしたパーフェクトな舞台に
立ち合って、こちらの身も心も彼岸に渡ってしまったような状態になっていたのです。
その興奮が一過性ではない証拠に、雲の上を歩いている感覚は2週間たっても続いているのです。
夢とうつつの境界線を彷徨う私に、レポを書くなど不可能なことだったのです。
(そのわりに、イエスティン・デイヴィスのコンサート・レポはすぐに書いたじゃないか、というツッコミ
もありますが、義理人情も絡んでいましたゆえ、お許しのほどを)

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まず、このヘンデルのオペラ作品自体の完成度の高さが、今回の大成功の礎であることに疑いの
余地はありません。
音楽は、聴きごたえのある歌唱部分とレチタティーヴォ、器楽演奏の分量配分がこの上なく
バランスよく、ダ・カーポが長すぎて聞き飽きるようなアリアは一つもなく、序曲から最後の大団円
のコーラスまで、一瞬ともダレだり飽きたりする瞬間がありません。
この作品で、ヘンデルの作曲家としての天才ぶりをまさに確認することになりました。
また、音楽だけでなく、この作品にはストーリー的にも荒唐無稽すぎる部分がなく、古代から変わ
らぬ人間の欲や愛憎、親子の情などが、誰にでも納得できるようなユニヴァーサルな要素が
散りばめられているのです。

しかし、素材がいくら極上でも、料理人の包丁さばきや味付けによって出来は全く異なるものになる
というのが、オペラと料理との共通項ともいえましょう
名人による美しく盛られた料理を舌に載せる瞬間のスリリングさ、そして、美味をじっくりと味わう
幸福の体験とオペラ舞台鑑賞とはかなり性質が近いもので、五感と体全体に興奮を与えてくれます。
多くの皆様と同様、団子より花ですから、オペラで味わう至福追及のためには遠征をも厭いません。
歌手の喉は旬の素材に近いもので、時期の一致を見れば聴くチャンスを逃してはなりませんが、
オペラ舞台の場合、演出家という料理人の任務が非常に重要だと思うので、つまらなそうな演出
だったら、最初から食指が動かないものです。
今回のマスターシェフは、デイヴィッド・マクヴィカーでした。

↓の序曲の動画は10年前の初演時のものですが、オケと指揮者とキャストが多少異なるものの、
今回も演出上、全く同じなので参考のために貼ります。



シンプルな舞台装置と現代衣装で、隅々まで神経の行き届いたスタイリッシュな演出ということがよく
わかるかと思います。10年経つまでもなく劣化が激しく見るに堪えないようになってしまう演出も
昨今は多いものですが、これは、今でも全く古びて見えません。

また、序曲部分のだんまり演技で状況設定の説明をしっかり行うという、ある種の演出にはお約束
になっている手法ですが、その方法がシンプルなのに明瞭なことこの上なく、ごちゃごちゃしていず、
説明しすぎでもなく、ほとんど理想的な序曲の演出だと思えます。
ロムルス・レムスが狼の乳を飲んでいる幕の前に座って、多分ローマ帝国歴代皇帝に関する本を
読んでいる人の後ろに、歴史上お馴染みの名前の彫られた石棺に座って登場する主要人物たち。
欲望と陰謀渦巻く、退廃のローマ皇帝一家の相関図が一目瞭然です。
まさに、見事に整理された冒頭場面演出のお手本と言えましょう。


10年前の初演以来すでに伝説化している演出とプロダクションですから、アクロバティックに
マレーナ様が歌い、踊り、演じる動画などは、すでに何度も見聞きされているかと思います。
たとえば、第一幕最初のネローネのアリア Col saggio tuo consiglio 


               この胸キュン音楽にぴったりの可愛い男の子ネローネ役のマレーナ様

シンプルで美しく機能的な舞台装置と背景、現代的な衣装に、演技力ではぴか一のマレーナ様の
表情と身振り態度で、10代終わり頃の若い男の子の心の微細な揺れが歌唱にも表現されて、
観客の胸に迫るのです。
10年経っても、上の動画とほぼ同様の動きで、マレーナ様の美少年ぶりには衰えが見られません
でした。『セルセ』役以来トレードマーク化したちょっとエロチックな動作が今回は結構沢山の場面に
散りばめられているのが多少の変化もしくは進化ですが、思春期から抜け出せないままの色情狂の
ネローネ、しかもADHDが入っているという役どころを絶妙に演じているのでした。

今回の舞台でマレーナ様のズボン役を生で初めて観た人は、きっと一様に、彼女の男性役なりきり
ぶりに驚愕しただろうことは、想像に難くありません。マレーナ様セルセでびっくりした人は、今回また
数歩前進した役者ぶりに、思わず惚れ直したことでしょう。

マレーナ様は、特に主役を張る場合、前半は喉をセーブするためかなり声量を抑えることが
多いのですが、今回はタイトルロールではないということで気の張りが少なくて済んだのでしょうか、
最初からエンジンがかかって、しっかりと声を響かせてくれたのが、まずうれしい驚きでした。
出だしの歌からこうだと、他の歌手も乗せられるのか皆パワー全開になるものです。


また、今回の再演に当たって、マクヴィカー本人がバルセロナでビシバシと稽古をつけたことは、
全ての場面で、歌手や役者やダンサーの動きがびしっと決まっていることからもよくわかります。
誰一人緊張が解かれたり、ダレたりした場面が一瞬たりともないのです。
たとえば、今回ポッペア役だったダニエル・ド・ニースが最初に歌う場面をご覧ください。



ダニエルちゃんは、相変わらずダンスで鍛えた筋肉としなやかな体、派手な作りの顔の表情も豊か
で演技派なのですが、ポッペアのスタイリスト役のオネエタイプのダンサーの演技も光ってます。
ダニエルちゃんの歌唱が、このプロダクションのキャスト中では心配の種の一つだったのですが、
リセウの音響のためか、指揮者のバランス感覚がすぐれているせいか、1人だけ妙に力んだような
不快な声で歌ったりしていないのが、うれしいサプライズでした。ダニエルちゃんの生舞台には、
何度も接しているのですが、今回ほど不快指数が非常に低いのは初めてでした。


アグリッピーナのタイトルロールを歌ったサラ様の調子も絶好調だったと思います。
迫力ある年増の悪女役が最近多いサラ様ですが、アグリッピーナでもその真骨頂発揮です。



自分の息子ネロを次期皇帝の座に据えようと思った矢先、死んだはずのクラウディオ帝が生きて
もどってきたため、そして若く美しいポッペアとの確執もあり、様々な奸計を巡らすアグリッピーナ=
マキャベリズムの申し子のような存在にサラ様もなりきり、胸がすくような悪女ぶりを披露して
くれました。
女性役の歌手は皆、10センチはあろうかというピンヒールを履いて、階段を上り下りしたり、踊ったり
するので、見ていてハラハラするほど。

踊りと言えば、ダニエルちゃんよりももっと格が上なのは、やはりマレーナ様です。
ポッペアを追っかけまわす色情狂でADHDのネローネという役柄上、片時もじっとしている場面が
ないどころか、アリアでも様々なダンスや動きをしながら歌うという、マクヴィカーの演技要求に
応えられるオペラ歌手はマレーナ様以外ありえません。
ムーンウォークその他のダンスはもちろんのこと、アリア Quando invita la donna l'amante
では、腕立て伏せ、腹筋運動やピラティスのバランスポーズをとったままで歌うのです。これには、
もう観客はびっくりで、やんやの喝采と万雷の拍手でした。
よく出回っている、ネローネがコカインを吸引しながららりって歌うCome nube che fuggedalも
凄い迫力ですが、その前のアリアのでの動きはもっともっとすさまじいのでした。

長くなってきましたので、この辺でいったん中断して、カーテンコールやツーショットの写真は、
また別記事として投稿したいと思います。
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by didoregina | 2013-12-04 14:12 | マレーナ・エルンマン | Comments(8)

ヘンデルの『アレッサンドロ』@コンセルトヘボウ

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Händel - Alessandro
2013年9月21日@コンセルトヘボウ

Armonia Atenea
George Petrou (dirigent)
Max Emanuel Cencic (countertenor (Alessandro))
Julia Lezhneva (sopraan (Rossane))
Laura Aikin (sopraan (Lisaura))
Xavier Sabata (countertenor (Tassile))
Pavel Kudinov (bas (Clito))
Juan Sancho (tenor (Leonato))
Vasily Khoroshev (countertenor (Cleone))


この日のコンサートはオランダ・ラジオ4からライブ放送された。以下のリンクから、コンサート前(!)
の指揮者ペトロウのインタビュー、別のCDのディドナートによるリザウラのアリア、音楽評論家に
よる解説などの後、30分あたりからオペラ・コンサート全編を聴くことができる。
http://ntrzaterdagmatinee.radio4.nl/uitzending/201268/21-09-2013.html

新録音のこのCDは、昨冬に発売され、今年、アテネ、フランクフルト、ヴェルサイユ各地で舞台
形式で上演され、その後、アムステルダム、ウィーンなどでコンサート形式で公演が行われている。
CD録音メンバーと今回の出演歌手は、2役を除いて同じである。(CDではリザウラ役はカリーナ・
ゴーヴァン、クリト役はインスン・シム)

出演歌手では、マックス・エマヌエル・チェンチッチとシャヴィエ・サバタのCT両雄に加えて、新星
メゾ・ソプラノのユリア・レジネヴァに大きな期待を向けていた。
今年初めに買ったCDは私にしては聴きこんだ方だし、コンサート前日にはヴェルサイユ宮殿劇場
での舞台動画も見て泥縄式学習も行った。また、当日は、主役アレッサンドロ役のチェンチッチの
誕生日であることは、ファンには周知の事実であり、期待はいやがうえにも高まったのだった。

ただし、私の座席の位置は酷かった。サブスクリプションや土曜マチネ・チクルス発売はかなり前
から始まっていたので、一般チケットばら売り発売日には、全くろくな席が残っていなかったのだ。
3列目の右寄り座席4で、音響的には非常に不利であることは、最初から予測済みである。
コンセルトヘボウの舞台は異常に高く、しかも客席に張り出してるので、前5列までは下から見上げる
ことになり、音は頭上を通り過ぎていくのだ。7から9列目くらいが、視覚的にもかぶりつきに近くて
好きな位置なのだが。。。。

そして、今回の座席は視覚的にも隔靴掻痒であった。
主役級の3人(アレッサンドロ、ロッサーネ、リゾウラ)はほとんどいつも下手側に立って歌うので、
指揮者に隠れて姿が見えない。いきおい、左斜め上に首を曲げた姿勢で鑑賞せざるを得なくなり、
体が疲れる。
チェンチッチは、たまに上手側から登場することもあり、楽屋ドアから出てきて目の前の階段を駆け
上るので、ステージ衣装やヘアスタイルのディテールをガン見することはできた。
そしてまた、男性歌手3人はいつでもこちら側から登場して上手位置に立つので、サバタはよく観察
できた。

器楽演奏は、ピリオド楽器を用いた(とCDジャケットにわざわざ明記するのも今時珍しい)ギリシャの
古楽アンサンブルであるアルモニア・アテネで、指揮はCD同様ジョージ・ペトロウ。
CDと(そしてまたラジオ放送とも)大きく印象が異なるのは、その古楽アンサンブルの演奏であった。
CDのクレジットを見ると第一および第二ヴァイオリンは6人ずつで、ヴィオラは3人、チェロ4人、
コントラバス2人、チェンバロ2台、テオルボ、それにリコーダー2名、オーボエ2名、バスーン1名、
ホルン2名、トランペット2名、ティンパニ1名となっている。

しかし、今回のコンサートでは高音弦楽器の人数が大幅に削られているように思われた。(私の座席
側からだと人数がはっきりわからないが、半分くらいの印象)
上手側には(通奏)低音弦楽器奏者が座り、中央に置かれたチェンバロも含めて、通奏の音は
ビンビンとよく響いてくるのだが、ヴァイオリンの音が薄っすらとしか聞こえない。
座席の位置のせいもあろうが、弦楽器の人数不足のためか控えめすぎる演奏のせいか、オケ全体が
貧血気味みたいでエネルギーに非常に乏しい印象だ。元気もないし、自信もないような演奏だ。

古楽が盛んなオランダやベルギーでは、コンセルトヘボウをはじめとして各地のコンサートホール、
そして教会で、錚々たる演奏家による様々な古楽オケの演奏会がしょっちゅうあり、生演奏を聴く
機会が多い聴衆の耳は肥えている。
はっきり言ってしまうが、ギリシャは音楽後進国であることが、今回これほどあからさまに露呈される
とは思わなかった。古楽の演奏レベルとしては、アングロサクソン系のドライブ感や個性に乏しい、
ぬるま湯のようにまったりしているような古楽オケよりももっと初心者的な感じ。コンセルトヘボウの
舞台で演奏する水準とは思えない、というのが正直なところだ。
歌手のレヴェルとの落差が激しく、指揮者もリードが下手だし(出だしを間違えたり)、歌唱が盛り上
がって、アクロバティックなアジリタを滑らかに歌う歌手にオケが付いていけてないということもあった。
『アレッサンドロ』は古代ギリシャの大王とはいえ、なぜ、ギリシャの古楽オケがCD録音や演奏ツアー
に参加しているのか、大きな疑問であった。しかし、このレビューを書くためにCDジャケット裏をふと
見ると、名を連ねるスポンサーの欄に、オナシス基金というのを見つけた。「2011年から2013年の
オーケストラの大スポンサー」と明記されている。なるほど!

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         『アレッサンドロ』でコンセルトヘボウ・デビューのユリアちゃんの独擅場


しょぼいオケに対して、歌手は皆堂々としたもので、安定した歌唱を披露して、コンサート全体の
レヴェルをぐんと引き上げてくれた。
女性陣二人は、ヘンデルの時代の大歌手ファウスティーナ・ボルドーニ(ロッサーネ役)と
フランチェスカ・クッツォーニ(リザウラ)もかくや、と思わせる実力。もともと、この二人(特にロッ
サーネ)のアリアには、拍手喝采や大向こう受けを狙ったテクニックを見せつけることができる
美しい曲が多く、得な役回りではある。

特に、今回がコンセルトヘボウ・デビューになるユリアちゃんの歌唱は、いかにも清々しく気持ちよく、
安定したテクニックと声量も十分あり、聴衆は皆安心して身を任せることができる快感に浸った。
休憩前の第一部では、ロシアっぽい花の刺繍のある可愛いドレスで、(Mevさん目撃談によれば)
日によく焼けたデコルテの背中を見せて、若々しさ初々しさとキュートさをアピール。後半の衣装は
オペラ・ピンク。
年齢やルックスに似合わないほど落ち着きすら感じさせる歌唱とテクニックには誰がも唖然とするの
だった。アジリタはまるでコマドリかナイチンゲールのような滑らかさで、心地よい。
この日、一番拍手やブラーヴァの掛け声を受けたのは彼女だ。

CDでのリザウラ役はゴーヴァンで、彼女は来月からのDNOオペラ『アルミーデ』主演なので、アムスに
滞在しているはずだから、もしかして1日だけコンサートに出演しないかな、と淡い期待を抱いていた。
もしくは、舞台公演で同役だったアドリアーナ・クチェロヴァちゃん登場だったら可愛い子ちゃんコンビ
が実現したのだが、ローラ・エイキンもさすがの貫録と歌唱で文句のつけようがない。エイキンの方が
ちょっと年増っぽいから役に無理がないし、ユリアちゃんの可憐さが際立った。

二人のCTは、外見も声質上も対照的でよい組み合わせだ。
チェンチッチは、小柄でまろやかな少し暗めの声の持ち主である。声量はあまりない方だが、
スターとしての存在感と、感情を込めたしみじみした歌唱で座長らしい貫録を感じさせる。
最初は抑え気味な歌唱でパワー温存、コンサート進行とともに少しずつパワーアップしていき、
ここぞという場面では聴かせクライマックスに持っていくというコントロールの仕方と、実力を
心得たテクニックである。もちろん全部暗譜で、芝居も交えて歌う。
益荒男ではなく優男という設定のアレッサンドロに、チェンチッチのキャラクターは抜群にマッチ。
お洒落な彼は、スリム・フィットのスモーキングにブラック・タイ、エナメルの靴。ソックスは赤!

それに対するサバタは、最近シェイプアップしてスリムになったがいかつい外見の大男なので
ルックスに似つかない優しい声に聴衆はどよめいた。声量はしっかりあって明るく伸びも響きもいい
声の持ち主だ。特に生で聴くと、その実力に唸らされる。(譜面台をチラ見しながら歌っていたが。)
いかにもインドの王様らしい、ちょっとコミカルな役どころが似合う。
舞台衣装は、シングル・ブレストの黒のスーツにシルバーのシャツとタイで、他の男性歌手とは異なり
個性的なのが彼らしい。

この二人のCTがまた共演する『タメルラーノ』の録音はこの夏終了した。来年から各地でコンサート
が行われるので、非常に楽しみにしている。


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               鯖田さんのために作った帽子をプレゼント。

若さと清々しさ溢れる『アレッサンドロ』コンサート終了後には、パルナッソス・プロダクション恒例の
サイン会があった。
鯖田さんは先月、チッチは当日がバースデイだったので、プレゼントを持参してサイン会に臨んだ。

まず、ユリアちゃんに素晴らしい歌唱へのお礼。舞台を下りて真近で見る彼女は、あどけない笑顔で
本当にちっちゃくて、話しかけながら先ほどの歌唱を思い出して涙が出そうになった。

コンセルトヘボウでのマチネ・コンサートの後は、ロッテルダムに移動して夜はサラ・コノリーの
リサイタルに行くため電車の移動が長い日だし、プレゼントその他の持ち物も多かったので、着物は
無理だった。ドイツからの追っかけ友達と3人で写真を撮りあったりしてサイン会終了片付けの最後
まで粘った。私のカメラは壊れてしまったので写真はないが、特に鯖田さんには、手作りプレゼントを
とても喜んでもらえ、楽しかった。
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by didoregina | 2013-09-29 13:50 | オペラ コンサート形式 | Comments(4)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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