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クリスのフォルテピアノ・リサイタル

チェンバロ・リサイタルから約一ヶ月後、今度はクリスのフォルテピアノ演奏会に行った。
場所は、ベルギーのハッセルト・カルチャー・センターのコンサート・ホールである。
曲目は、オール・モーツアルト。
ホールのサイトとレコード会社サイトのクリスのスケジュールの発表とでは、その日の曲目は全く
異なっていたので、一体どちらが正しいのか当日までわからない。どきどき。
いずれにせよ、モーツアルトのピアノ・ソナタを中心にした構成だ。
マーストリヒトの聖ヤン教会でのリサイタルにも来ていた友人のTとHを誘った。

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Kristian Bezuidenhout 2013年4月7日@Concertzaal CCHA

Mozart
Sonate in Es grote terts, KV 282
Adagio
Menuetto
Allegro

Praludium (Fantasie) und Fuge C-Dur KV 383a

Sonate in F grote terts, KV 332
Allegro
Adagio
Allegro assai

pauze

12 Variations in Ed grote terts, KV 354 Je Suis Lindor Theme
Allegretto
Variation I t.e.m. Variation XII
Allegretto

Sonate in c kleine terts, KV 457
Molto allegro
Adagio
Allegro assai


楽器は、エドウィン・ブウンク氏所有の1800年ローゼンベルガーだ。(今回はプログラム・ブック
に明記してある!)
2年前に2回聴いたクリスのモーツアルト演奏も同じ楽器だった。(そのときは、どこにも書いて
なかったので本人に直接訊いて確かめた)
ハッセルトで聴いた1回目のときの印象は、特に前半はこちらの耳が楽器に慣れないせいか、
音に硬さというか冷たさがあるようで耳にしっくり来ない感じだったのだが、今回はどうだろうか。

最初のソナタから、クリスの演奏はロマンチシズム溢れ、きらびやかさのある音が紡ぎ出されて
ゴージャスである。
耳に違和感を感じたのはほんの数秒だけで、前回とは打って変わって柔らかく温かみのある音が
心地よく響いてくる。楽器もよく鳴っている。
前回同様やはり最前列に座ったのだが、今回は舞台に向かって右寄り、フォルテピアノの蓋の正面
の位置であるので、デリケートな楽器の響きが直接届く。ステージの奥行きを二分する真ん中辺りに
設置された大掛かりな木製パネルの反響板のおかげで、とても好ましい音響だ。
このパネルは、前回にはなかったのだろうか。(2年前に撮ったステージの写真で確かめると、
全く同じパネルが設置されている)
このホールのステージは、膝ほどの高さで異常に低い。だから、平土間かぶりつき席に座っても、
音が頭上を通りすぎる感じにはならない。(それは、前回も同様のはず)

なぜ、このようにしつこく2年前と比べるのかというと、ソナタのうち一曲は、前回と同じなのに、
印象がまるで違っているからだ。
同じ楽器、同じ奏者、同じホール、同じ曲なのに、2年の歳月を間に挟んで、演奏がここまで
進化したのか、それとも、楽器がよく弾きこまれているのか、とにかく驚くばかり。
先月はチェンバロの音色のパレットのヴァリエーションに驚いたのだが、今回はじっくりと心に沁みる
とか癒されるとかいうのとは別の次元の、心が天空に飛翔するかのような快感を覚えるのだった。
長調の曲目が主なせいだろうか、降り注ぐ清冽な空気を胸いっぱいに吸い込んむような気持ちよさ
を演奏を聴きながらずっと味わった。

しかし、これはもしかしたら、クリスの演奏が異常に進化したせいではないだろうか。
軽々と飄々と、しかし手堅い演奏なのだが、全身がリラックスしているような自然な動きで、ちまちま
したところが全くなく音楽の懐がとても広くなっている。
顔芸にも苦悩のポーズとかシリアスを装う必要がなくなったようだ。
モーツアルトと一体化したような天真爛漫さで、自然に気持ちのいい音を作り出している。

曲目が進むにつれて、テンポも速まりドラマ性も増し、まさに疾風怒濤の趣である。
同行のHは、こういう速いテンポのモーツアルトはありか、とびっくりしていたので、ブリュッヘンの
モーツアルトだって疾風怒涛なんだからこれは古楽演奏の王道だよ、とわたしは応えたのだが。

爽快かつダイナミックなクリスの演奏で、一陣の風のごとく心の塵を吹き飛ばしてくれ、身も
天の高みにまで舞い上がるかのような気分の午後だった。

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コンサート後、ロビーに飾られたアートをじっくり見て回り出口に向かうと、楽屋からクリスが出てくるの
にぶち当たった。(ここのホールの楽屋口は一般出入り口の手前にあるので、以前、楽屋のドアを
開けて出てきたダミアン・ギヨンとぶつかりそうになったことがある)
チャンスを逃さず、クリスに近づいて握手。そしておしゃべり。
なによりも、2年前、震災後2ヶ月も経ずに日本公演を行ってくれたことに感謝の意を表したかったの
である。
今日はこのままロンドンに帰るのかとか、耳に絆創膏を張ってるのが舞台でも見えたのでそのことを
訊ねたり、反響パネルは2年前もあったかしらとか、日本では(というかわたしのブログでは)古楽界の
貴公子と呼ばれていることなど、なんだか延々と井戸端会議っぽく親しく会話していたので、同行の
TとHからは「以前からの知り合いみたい」とびっくりされた。
そうではなくて、折り目正しくて育ちのよさを感じさせるクリスには話しかけやすいし、ファンの話に
誠心誠意応えるという態度をとるのである。彼のしゃべり方には、ほとんどやんごとない雰囲気さえ
漂う。
しかし、「古楽界の貴公子」にはとてもウケて、高々と笑っていたのは喜んでる証拠だと思う。
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by didoregina | 2013-04-09 22:08 | コンサート | Comments(6)

ユロフスキ指揮コンセルトヘボウ管の公開リハーサル

ウラディミール・ユロフスキ(別名 ユロ兄)がコンセルトヘボウ・オーケストラを指揮する
コンサートの公開リハーサルに行ってきた。
曲目は、ツェムリンスキーの『人魚姫』とラフマニノフの『ピアノ協奏曲第3番』(ソリストは
アレクサンダー・ガブリリュク)という、マイナーな曲と超有名曲の組み合わせだ。
好きな作曲家だし、指揮者にもソリストにもそそられるし、コンセルトヘボウの演奏を本家本元
ホールのコンセルトヘボウで聴いたことがなかったし、オーケストラのリハーサルというのにも
興味津々だった。

『オーケストラ・リハーサル』といえば、フェリーニ


       フェリーニの映画としては退屈で諧謔もわかりづらく好きになれなかった。


今回の公開リハには2ヶ月前から目を付けていたのだが、友の会会員のみ入場可という但し
書きがあったので一旦は諦めた。
しかし、色んなところで騒いでいたら思わぬ助っ人が現れて、本人も忘れていたが友人が会員で
あったことが判明。一緒にアムステルダムまで行くことになった。
朝9時半開始・途中入場不可なので、自宅を朝6時に出て6時半の電車に乗ってアムステルダム
まで行き、トラムに乗り換えてコンセルトヘボウに着いたのは開演5,6分前だった。
会場は、ほぼ満席に近い。売り出されたのは平土間のみで、バルコンとポディウム席はなし。
わたしがチケットを買おうと思った1ヶ月前には後ろの方の席しか残っていなかったのだが、コネの
威力か10列目の席が取れた。7列目までは立ち入り禁止になっていて、オケ・メンバーのコートや
楽器ケースなどが置かれている。
ポディウム席にはTVカメラマンが入っていて、こちらもリハーサルに余念がない。

司会者に促されて、指揮者がポディウム後方の階段から下りてくるのではなく平土間上手側から
ステージに上った。リハーサルだから、皆私服である。ユロフスキは、黒のタートルネックの薄手
ニットにダークなカラーのジーンズにベルト。肩にクリーム・カーキ色のジャケットを羽織っていたが、
指揮台まで来るとそれを脱いで、落下防止用柵にかけた。

舞台に向かって右側前方の席だったため、舞台後ろの方の編成はよく見えないが、対向配置で
第一第二ヴァイオリンとも10人の構成。ハープ2台と打楽器が場所をとるためか、舞台は手狭な
印象。

ツェムリンスキーの『人魚姫』の出だしから始めるのではなく、いきなり楽譜の小節を指定し細かく
区切ってのリハーサルに入る。まず、打楽器やホルン、トランペット、チューバなどの音の大きさ
や強弱のニュアンスの付け方にとても細かい指示を与えている。ユロフスキは、金管が爆音を
出すのは好みでないらしく(これはわたしにとっても喜ばしい)、よくありがちな箇所で金管が
ここぞと音を張り上げると「とてもドラマチックでイクサイティングな盛り上がりですがやりすぎです。」
などと抑止していた。
トランペットにも消音器を入れさせて音を聞き比べ、「そのくらいが丁度いいです」と。

↓は、ツェムリンスキー『人魚姫』の一部




映画『オーケストラ・リハーサル』のように、指揮者を無視して暴走するオケというのとは
正反対で、コンセルトヘボウの皆さんは指揮者の注意をよく聞いて、楽譜に書き込んだり、
書いてあったのを消しゴムで消したり、楽譜チェックにもかなり忙しい。
あまりに細々とストップしては注意を与えるのは、この曲がマイナーなためオケとして今まで演奏
経験があまりないためだろうと思われた。その朝のリハーサル中に全体を通しで演奏することはな
かった。その晩が、コンサート本番である。

休憩中に、友人の友人である団員に訊くと「わたしはこの曲は今回が初めて。他の人が言うには、
2,3回演奏したことがあるというけど」とのこと。

ツェムリンスキーは、19世紀と20世紀初頭の狭間の作曲家であり、いかにもウィーン世紀末の
匂いが紛々と漂う曲を作っている。
「『人魚姫』には後期ロマン派らしさもあるし耽美的な音楽なのですが、20世紀の音楽、プロコ
フィエフやストラヴィンスキーに見られるようなモダンな要素の先駆けも感じられます。その味わいは、
スタッカートの使い方で顕著に表現すべきです。変化のあるリズムに突き刺すようなアタックで」と
いうことをユロフスキは言っていたと思う。(客席には背を向けてオケ団員に向かってしゃべるので、
よく聴こえないから不確か)

ユロフスキの立ち姿は、非常に美しい。脚をほとんど開かずに真っ直ぐに立ち、背筋もすっと伸び、
動きも自然かつ力みが感じられずスマート。

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休憩20分を挟んで、後半はラフマニノフのピアノ協奏曲3番のリハーサルだ。

『ラック3』といえば、ガブリリュクの十八番でお手の物である。ベタといえばベタな曲だから、
リハーサルもさらりとオーケストラと合わせる程度ですんなりと行くだろうと予想した。時間は丁度
1時間。

まず、ピアノとオケとの掛け合いでもつれそうになるかもしれない部分とカデンツァ部分を練習。
しかし、それにしても、ガブリリュクは見かけは神経質そうな図書館司書みたいだが、演奏はとても
男性的で、豪腕を生かしてのダイナミックな音を作る。しかし、それは若さにまかせての荒っぽさとは
全く別物で、非常に立体的で明確な音楽観が聴き取れて心地よい。

その後は、最初からの通し演奏。とにかくピアノの音がクリアかつ大きくて、オーケストラの特に弦
パートは伴奏に徹しているように音量をかなり抑えている印象であまり耳に入ってこないほどで、
まるでピアノリサイタルを聴いているような感じ。
しつこいくらい繰り返されるテーマも、ピアニストの叙情溢れるニュアンスの付け方が洗練されていて
飽きさせないし、あの何とも言いがたく胸を締め付けるような、郷愁を覚えさせるロシア的メロディーが
全く陳腐にも泥臭くもならず軽い味わいになっているオーケストラ演奏に唸らされる。うねるような情感
には乏しいが、都会的・現代な解釈・演奏の『ラック3』である。

全曲通しになるか、と思いきや、フィナーレに入る前の意外なところで指揮者の手が止まった。
ピアニストとロシア語で話してなにやら確認したりしている。残り時間15分。またもや、細かい部分
ごとの手直し詰めの作業である。
フィナーレが終わると、ガブリリュクに対して盛大な拍手がわいて、周りに座った人たちは、皆一様に
「なんてすごいピアニスト!」と興奮している。

そして、きっかりと午後1時にリハーサルは終了した。

友人の友人の団員に「せっかくだから、今夜の本番のコンサートも聴いていけば?」と言われた。
「本当に全部きちんと聴きたいのはやまやまですが、終電に間に合わないので泊まるしかないから」
と暇乞いした。
その後、ゆっくりとランチをとって、4時の電車に乗ってマーストリヒト駅に着いたのは午後6時半。
12時間のプチ遠征である。もっと近くに住んでたら友の会会員になってコンサートにもリハーサルにも
通えるのに、と夢見たことである。

3月28日の同プロ・ライブ録音が、3月31日(日)14時CETからオランダラジオ4から放送される。
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by didoregina | 2013-03-28 10:25 | コンサート | Comments(4)

マースメヘレンの教会で復活祭オラトリオ

フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラとダニエル・ロイス指揮カペラ・アムステル
ダムにソリストとしてマイケル・チャンスが参加する『復活祭オラトリオ』が、比較的近場の
ベルギーの教会で演奏されると知って、心待ちにしていた。復活祭の1週間前とちと早く、
オランダだったら受難曲シーズンである。

c0188818_16301894.jpg2013年3月24日@St.Barbarakerk Maasmechelen
Orkest van de Achttiende Eeuw
o.l.v. Kenneth Montgomery
Cappella Amsterdam o.l.v. Daniel Reuss
Ilse Eerens (sopraan)
Michael Chance (alto)
Thomas Walker (tenor)
David Wilson-Johnson (bas)


Johann Sebastian Bach (1685 - 1750)
Missa in F BWV 233 (1738)
pauze
Oster-Oratorium BWV 249 (1725)

当日の朝、目を覚ますと外の風景は一変していた。またしても15センチの積雪で、一面の銀世界
である。ああ、晩までに少しは融けてくれるだろうか。
極々局地的な降雪だったようで、マーストリヒト以外はほとんど降らなかったのが救い。
日曜なのに道路の除雪はすぐにされた。雪が積もったままなのは、自宅の敷地だけである。
第一の関門はなんとかクリアできそうだ。

教会でのコンサートの場合、座席は自由で早い者勝ち!という場合が多い。開場と同時に入場
するため、コンサート開始45分前には会場に着いていようと思って、余裕を見て家を出た。
通常、車で30分の距離である。20時15分からのコンサートに行くのに19時少し前に出発した。

しかし高速に乗ってしばらくすると、いきなりの急停車でそのまま車の列は動かなくなってし
まった。
どうやら事故が起こったらしい。完全な渋滞で全く進まない。ああ~、よりによってこのタイ
ミングで事故って。しかし、ここで諦めてはいけないのだ。とにかく、ネヴァー・ギブアップを
念仏のように唱えてポジティブな運気を誘い込む。その願いは通じて、7,8分後には車の列が
動き出した。
高速道路の右側ガードレイルにナンバープレートがついたバンパーが張り付いている。左車線
には前がもがれてエンジン・ルームむき出しの車が180度回転してこっちを向いている。大方、
スリップでもしたのだろう。でも、高速道路上には雪は一片も見られないのだが。警察も来て
いないので、皆そろそろと事故車を避けつつ運転している。
ああ、ここもなんとかクリアした。

ベルギーに入ってマースメヘレンで高速を降りたら次の村に行くだけだ。しかし、なんと、
その村への道が道路工事のため閉鎖されている。
通行止めになってても、迂回路の表示などないのがいかにもベルギーである。引き返すしかない。
ほぼ一直線の道のりだし近いので、地図もナビも持たずに家を出てしまった。もう、あとは適当に
目星をつけた方向に進むしかない。
教会のある辺りは村と森に挟まれて、ヴィラという感じの高級住宅が多い。家々は鉄の柵と門扉の
奥深くに鎮座している。道を聞こうにも寒い晩だから人はほとんど外を歩いていない。
たまたま歩いている人を見かけたので、教会への道を尋ねた。かなりわかりにくい道であるが、
彼女は以前その近くに住んでいたそうなので、詳しく説明してくれたおかげで、ようやく辿りついた。

わたしの心境はまさに、Against All Odds



コンサート開始25分前くらいに着いたのだが、前の方のいい席は埋まってしまっている。かなり
後ろの方のしかし中央通路側の席をなんとか確保した。
プログラム・ブックは空いてる椅子の上に置いてある。それを読むと、なんと、指揮者が変更に
なっているではないか。
フランス・ブリュッヘンの代わりにケネス・モンゴメリーとな。

もうこうなると、ブリュッヘンの代わりがコープマンになってもヘレヴェッヘになっても驚かない。
ご高齢のブリュッヘンを見逃したくないと思って、ここまで困難も厭わずにやってきたというのに。
大体、このコンサートがこういう田舎の教会で開かれるというのが不思議である。
ツアーの(当初の)メンツは上掲写真のCD録音とほぼ同じで、ベルギーではここのみだし、
他はヨーロッパのもっと大きな都市である。
理由が分かった。ソプラノのイルゼ・エーレンスは、ここマースメヘレンの出身だったのだ。
彼女のコネで、このコンサートが実現されたと言ってもいい。

↓の動画は、ヘレヴェッヘ指揮、テノールはマーク・パドモア!


   最初見た時、とてもパドモアとは思えなかった。最近のワイルドでかっこいい彼とは
   同一人物とは信じられないほどナードっぽい、昔のパドモア。最後の方に出てくる
   ショル兄にも注目のこと。一体何年前?


さて、会場になっている教会は、別名「炭鉱のカテドラル」で、炭鉱地帯として19世紀から20
世紀初めに栄えたこの地にふさわしいインダストリアルなデザインである。すなわち、ガタイは
でかいが無骨で寒々しく、装飾もほとんどない。内壁はコンクリに漆喰を塗ってるのではないかと
思われるほど、つるりとした感じ。カテドラルという別名の通り、身廊の天井はゴシックを真似た
穹窿が高く、嫌~な予感がする。

器楽演奏が始まって、その予感がだんだんと実感に変わっていった。残響が長すぎ、エコーが
かかりすぎ、音が時間差で重なって団子状態になる。トランペットなんていつも1泊遅れて音が
届く感じになり、冴えないことおびただしい。悪いのは全てこの教会の音響のせいである。
合唱になると、もっといけない。カペラ・アムステルダムは一流の合唱団である。それなのに、
歌詞もパートもクリアに聞き取れないから、ほわんほわんしてるだけで、上手い下手の区別がつく
どころではない。
『受難曲』などは教会で聴くのに限る、と思っていたが、それは聖ヤンのようにコンサート会場と
して音響が理想的な教会に限られるのであって、多少有り難味は薄れても、ちゃんとしたホールで
聴く方が音楽としては楽しめるのだ。

『復活祭オラトリオ』は、華やかで明るい喜びを歌った曲だから、前半には、暗めのを持ってきて
対比させたらよかったのに。『ミサ曲ヘ長調』は、とても短くて初めて聴く曲であるが、どうも
印象に残る部分がないのであった。ホワンホワンとした音響に包まれて、何度かうとうとして
しまった。

『復活祭オラトリオ』も比較的短い曲だが、合唱部分が少なくて、ソリストの配分がなかなか
上手くて聴き応えのあるアリアがちりばめられている。ソプラノのアリアとバロック・フルートの
オブリガート、テノールのアリアとブロックフレーテ、アルトのアリアとオーボエとの絡みが
いずれも楽しい。

↓は、ショル兄の歌うアルトのアリア



当日の花、ソプラノのイルゼ・エーレンスの声にも歌唱にもどうも好みのツボにハマるものが
なかった。いかにも教会系の声だがピュアに澄んでるだけでなく暗さもある声質なので陰影を
感じさせるかと思いきや、歌唱がどうもあまり感心できないのだった。

期待していたのは、CTのマイケル・チャンスである。彼は現在では大御所なので隠居の身かと
思ってたら、今だに結構バッハなんかには出演しているのである。(2、3年前、デン・ハーグで
マイナーなスカルラッティの『ユディット』に乳母役で出演したのを実演で聴いた。)
こういうほのぼのした宗教曲ではオペラほどのテクニックは必要なさそうなので、まだまだ
マイケル・チャンスにもチャンスがあるのだ。期待を裏切らないオーラと声量とで、他の歌手を
圧していた。

『受難曲』ほど肩肘はった感じがしなくて、ひたすら明るい『復活祭オラトリア』は、いかにも
春の訪れを寿ぐのにふさわしい。もっと有名になってコンサートで聴く機会が増えるといい曲だ。
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by didoregina | 2013-03-26 10:28 | コンサート | Comments(4)

クリスのチェンバロ・リサイタル@聖ヤン教会

クリスティアン・ベザイデンホウト(日本語の表記は色々あるので略してクリス)によるチェンバロ
リサイタルを聴きにいった。

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         チェンバロの制作年代その他由来は説明がなかったので不明。

クリスのリサイタルに行くのは二年振りである。今回はフォルテ・ピアノでモーツアルトを弾くのでは
なくて、チェンバロで弾くバッハとその同時代かそれ以前のバロック音楽なのだった。

CLAVECIMBEL  Kristian Bezuidenhout 2013年2月28日@Sint Janskerk

Johann Kasper Kerll (1627 - 1693)
Toccata in g klein en Passacaglia in d klein

Louis Couperin (1626 - 1661)
Allemande - Courante - Sarabande in e klein (Bauyn MS)

G. F. Handel (1685 - 1759)
Allemande, from Suite Nr. 3 in d klein, HWV 428 - Courante,
from Suite Nr. 11 in d klein, HWV 437 - Aria & Variaties, uit HWV 428

Johann Jakob Froberger (1616 - 1667)
Partita in C groot, FbWV 612a

J.S. Bach (1685 - 1750)
Toccata in d klein, BWV 913

PAUZE

J.S. Bach
Prelude & Fuga in D groot, uit Das Woltemperierte klavier, boek I, BWV 850
Prelude & Fuga in D klein, uit Das Woltemperierte klavier boek II, BWV 875
Prelude & Fuga in es klein, uit Das Woltemperierte klavier boek II, BWV 876
Ricercar à 3 uit het Musikalisches Opfer, BWV 1079

J.S. Bach
Partita in a (naar BWV 1004 voor vioolsolo in d klein) transcriptie voor clavecimbel
door L.U. Mortensen


会場は聖ヤン教会で、コンサート会場としてはお気に入りの部類である。教会にしては残響が少なく、
しかし地元の市民会館ホールほどは音響がデッドでなく、雰囲気も悪くない。
聖母マリア教会よりは、ずっとずっと好みである。しかも、ここには暖房もしっかり入っている!
(このことは11月に行ったコンサートで実証済みだったが、寒さと戦いつつ音楽を聴くのは辛いし
ほとんど難行であるから、暖房が入る教会は快適である)

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        教会内部とパイプオルガン。両脇上層部に注目のこと。

聖ヤン教会について調べるため、サイトをコンサートの前日に見ると、あっと驚く発見があった。
教会建築は、13世紀に建てられた身廊の初期ゴシック部分と15世紀に増築・再建された後期
ゴシックの部分と塔からなり、外側の下層部分は硬いナミュール石、外部上層部分と内部は
柔らかい石灰岩のマール石で出来ている。
元はカトリックの教会だったのだが、1633年オランダ軍がカトリック・スペインからマーストリヒトを
奪回すると、聖ヤンはカルヴァン派のための教会にさせられた。ついでに内部インテリアも
プロテスタントらしく替えるためか、漆喰が剥がされ、内部の壁は石がむき出しになった。
むき出しになった壁のマール石は多孔質のため、湿気や温度と同じく音も吸収しやすい。それで、
残響というものがほとんどない。
いわゆる教会らしい音響が皆無という珍しい教会なのだ。(だから、コンサート会場として好き)
しかし、それではありがたみが薄れてちと困るというので、マイク24本とスピーカー24台を両壁の
上層部に設置し、PA装置で残響を作り出すようにしているのだという。
オフ(残響ゼロ)、説教用に2.5秒、コンサート用に4秒の3種類から選べるという、ハイテク音響
教会なのだ。人工的に作り出した残響で、硬い石造りの教会のような厳かさが出せるらしい。
う~む、なるほど。そのことは今まで知らなかったし、気が付かなかったが、よく見るとたしかに
スピカーが上層部左右に12個ずつ計24個設置されている。
しかし、今までのコンサートでは全く気にならないくらい残響は少なかったし、今回のリサイタルでも
気になるほどの残響はなかった。ほとんど、デッドといってもいいくらいだ。

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         チェンバロの真正面、かぶりつき席に座った。


二年ぶりに真近で見るクリスは、感心なことに全くリバウンドしていないようでスリムなことこの上ない。
椅子に腰掛けてもお腹回りや背中、ヒップや腿などに全く贅肉が見えない。脚なんてすごく細い感じ
である。髪は短めにカットしてすっきり、ステージまでの足取りやお辞儀の仕方その他の所作もすこ
ぶる上品である。古楽界の鍵盤貴公子の名に恥じない。
ただし、顔芸だけは昔どおりで、結構楽しめる。

しかし、肝心なのは外見ではなくチェンバロ演奏である。

チェンバロは、ごくごく微細な音の楽器だから、この聖ヤン教会でも広すぎるくらいだ。
かぶりつき席を陣取ったのは正解で、鍵盤は見えても奏者後方の席ではチェンバロの音は聴こえて
こないだろう。鍵盤後ろ側に座っていた人たちは、休憩後に開かれた蓋の方にほとんど皆移動した。
マイクは見える場所に設置されていなかったから、清々しい生のチェンバロの音が聞こえるのだが、
それはごく近くに座らないとよく聴きとれないのだ。
今までチェンバロ独演に接したことはあまりなく、伴奏だったり通奏だったりするのがほとんどだった。
おのずと膝を正して耳を澄まして聴く、という態度になる。典雅でデリケートなチェンバロの独演では
独特の小世界が形成される。その味わい深さ。機会があったらまた行きたいと思った。

古楽器による古楽演奏ではアルファ波が発生するという自説を持っているのだが、その晩のクリスの
弾くチェンバロからはまさにそよそよ・ひたひたとアルファ波が漂い、かぶりつき席に座っていると全身
でその鮮烈な空気の洗礼を受けることになる。
少し溜まっていたストレスやイライラが優しい音のマッサージで解きほぐされ、とげとげしていた心も
すっきりと癒された気分だ。

当初の予定ではバッハ三昧のプログラムだったが、前半は、バッハより少し前か同時代のバロック
作曲家による曲に変更になった。ドイツの作曲家による曲が多いのだが、どの曲の印象も柔らかで、
まるでおフランスっぽい雅な雰囲気が漂う。ゆったり、ふんわりした優しい空気に包まれる感じだ。
最初と最後のトッカータは緊張感がありちょっと過激なタッチなので他の曲目と比べると異色だが、
じっくりと噛締めると味わいのあるドイツ・パンでふんわりした中身のソフトな曲を挟んだサンドイッチの
ような構成である。

休憩後は、バッハの平均律とパルティータ。アンコールもパルティータからアルマンド(BWV828)。
これらの曲を聴くと、バッハが唯一無二・孤高の天才であることがよくわかる。
鍵盤楽器の可能性を追求し計算しつくした感がある。(だから、楽譜や鍵盤を追っていると、頭が
非常に疲れてくる)
聴いているだけだと、その複雑に織り成される曲の緻密さが美に変換されて耳に届くので、幸福感が
得られる。まるで数式のようなバッハの曲をそういう美に変換できる音楽家は素晴らしいと思う。
クリスのチェンバロ演奏はとても丁寧で、繊細にして奔放、オーソドックスにしてドラマチックだった。
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by didoregina | 2013-03-05 16:34 | コンサート | Comments(12)

2013/2014年、コンセルトヘボウにPJが2度登場!

<CT数名の追記あり>

アムステルダムのコンセルトヘボウは、今年創立125年を迎える。コンセルトヘボウとは
オランダ語で「コンサートの建物」と言う意味で、すなわちザ・コンサートホールというわけだ。
ホール専属オーケストラであるコンセルトヘボウ・オーケストラ創立も同じく125年になるので、
記念世界ツアーを行っている最中だ。

ホールの方のコンセルトヘボウのサイトで、何気なくアーティスト名および作曲家名を検索したら、
来シーズンのコンサート情報がぞろぞろと出てきた。
わたしが興味を持つカウンターテナーやバロック系だけに限っても、素晴らしいラインナップである。

まず、ユリア・レージネヴァの新譜プロモーションのメールが来たので、ユリアちゃんで検索したら、
なんとすごいコンサートがヒット。

2014年1月19日(月)にユリアちゃんとPJことフィリップ・ジャルスキーによるペルゴレージの
『スターバト・マーテル』、ヘンデルの『サルヴェ・レジーナ』、ヴィヴァルディのコンサートが!
ディエゴ・ファゾリス指揮でイル・バロッキスティの演奏。

PJは、昨年末の『アルタセルセ』公演を最後に、現在8ヶ月のサバティカル中であるが、
当然ながらすでに来シーズンの予定は決まっている。ユリアちゃんとの『スタバ』以外にも、
2013年10月20日(日)に「ファリネッリ」と題して、ポルポラ作曲のアリアのコンサート
アンドレア・マルコン指揮ヴェニス・バロック・オーケストラと共に行う。

ユリアちゃんも、来シーズン、コンセルトヘボウには2回登場する。
9月21日(土)のヘンデル『アレッサンドロ』コンサート形式上演である。これは、マックス・
エマニュエル・チェンチッチ
が題名役の他、グザヴィエ・サバタ ワシリー・コロシェフも出演する。

チェンチッチ繋がりで、ヴィンチ『アルタセルセ』コンサート形式の日程とキャストも出てきた。
2014年5月10日(土) ファゾリス指揮コンチェルト・ケルンの演奏は昨年の公演およびCDと
同様だが、再演ではPJが出演しないと明言されていた。その代わりは誰か。コンセルトヘボウの
スケジュールによるとVince Yiのようである。(ロシア系とか韓国系CTと噂されていた、その彼)
チェンチッチファジョーリバルナ=サバドゥスミネンコ、ベーレは続投のようである。

チッチは、コンセルトヘボウでは毎回マチネに登場していたが、来シーズンもそうなのでうれしい。

ここまででも、ユリアちゃん、PJ、チッチがそれぞれ2回登場するのだが、その他気になるCT
は、どうなっているだろうか。

イェスティン・デイヴィスも、来シーズン、コンセルトヘボウに2回登場だ!
11月26日(火) ブリテン『カンティクルズ』、パーセル、シューベルトというすごい組み合わせ
のプログラムで、イェスティン君の他、歌手はマーク・パドモア、ピアノ伴奏にドレイク、そしてハープ
のラヴィニア・メイヤーという、これも面白い組み合わせだ。

2014年4月17日(土) 『ヨハネ受難曲』にもイェスティン君が出演する!

ヨハネとくれば、マタイも忘れてはならない。オランダでは、復活祭前後はもう連日連夜各地で受難曲
コンサートが行われる。コンセルトヘボウだけでも様々な団体によるコンサートが10回以上あるのでは
ないだろうか。その中で、これは絶対に外せないのは、ヘレヴェッヘ指揮コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
『マタイ受難曲』だ。
2014年4月11日(金) ソリストは、キャロリン・サンプソン、ダミアン・ギヨン、ペーター・コーイ他。

ヘレヴェッヘ、CVG、ギヨン君、コーイの組み合わせでは、別のバッハ・カンタータ・コンサートも
2014年6月7日(土)にある。こちらには、ドロテー・ミールズも出演。
同様のメンバーの組み合わせに、ハナちゃん、マクラウドも出演して面白そうなのは、
12月1日(日) シュッツの『ダビデ詩篇』だ。 

11月2日(土) マルク・ミンコフスキ指揮LMDLGによるバッハ『ロ短調ミサ』には
テリー・ウェイとデルフィーヌ・ガルーも出演する!

11月28日(木) ヘンデル『リナルド』コンサート形式には、カルロス・メナオリヴィア・ファームー
レン
ちゃん、オーウェン・ウィレッツが出演だ。リナルド役はCTのメナなのかそれともメゾのオリヴィア
ちゃんなのか。多分後者であるとほぼ確信しているが。

オリヴィアちゃんも来シーズン、コンセルトヘボウ2回登場組だ。
10月12日(土) デュリュフレ、リーム、マネケという20世紀および現代もののコンサートに出演。

12月16日(月) ヘンデル『メサイア』に、ヌリア・リアルちゃんが!その他、ポール・アグニュー、
ロビン・ブレイズも出演。

オランダの若手CTといえば、マールテン・エンゲルチュスも忘れてはならない。
12月29日(日) マイク・フェントロス指揮ラ・スフェラ・アルモニオーザによるヴィヴァルディおよび
カプスベルガーのコンサートに登場する。

それ以外に面白そうなのは、ソプラノのバーバラ・ハニガンが指揮もしちゃうというコンサート。
2014年4月5日(土) ハイドン、モーツァルト、ストラヴィヴィンスキーというハニガンらしからぬ
プログラムで、コンセルトヘボウにおける彼女の指揮正式デビュー。

チェチリア・バルトリやエリナ・ガランチャ、そしてジョイス・ディドナートも来シーズン、リサイタルを
行うので、近くに住んでいたら行きたいコンサート満載のコンセルトヘボウである。

11月11日(月) ディドナートのリサイタルはCD『ドラマ・クィーンズ』のツアーの一環で、
イル・コンプレッソ・バロッコはアラン・カーティス指揮ではなく、カウンターテナーでもあるコンマスの
ドミートリ・シンコフスキーの弾き振り。エイントホーフェンにも来るのでは、と期待している。

唯一寂しいのは、来シーズンのコンセルトヘボウのプログラムに今のところ、クリストフ・デュモー
名前が見当たらないことだ。
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by didoregina | 2013-02-25 21:21 | カウンターテナー | Comments(17)

内田光子さんのリサイタルに着物で

内田光子さんがオランダでいつもコンサートを行うのは、アムステルダムのコンセルトヘボウと
エイントホーフェンのフィリップス・ミュージックヘボウ(ミュージックセントルム)のみだと思う。
前者の場合は誰にも合点がいくだろうが、なぜ後者にも毎年来てくれるのか?
多分、昔からのフィリップス・レーベル繋がりではないかと思われる。

今回のプログラムは以下のとおりだった。

Mitsuko Uchida @Muziekgebouw Frits Philips Eindhoven 2013年2月13日

平均律クラヴィーア曲集第二巻より
Bach - Prelude and Fugue No1, BWV 870
Bach - Prelude and Fugue No14, BWV 883

Schoenberg - Sechs kleine Klavierstücke opus 19

Schumann - Waldszenen

(休憩)

Schumann - Sonate nr 2

Schumann - Gesänge der Frühe


当初のプログラムは、ベートーヴェンの『ディアベッリ変奏曲』とシューベルトのソナタの予定
だったのが変更された。
『ディアベッリ』は、特に聴きたい曲ではないが、内田さんの弾くシューベルトは魅力的だ。
対するに、バッハとシェーンベルクはぜひとも聴きたいが、シューマンはさほど好みではない。
というわけで、曲目変更されても、感情的には差し引きゼロの勘定である。

今回のコンサートには行こうかどうしようか迷っていた。というのは、その週には寒波が来る見込み
との予報だったからで、夜更けに1人で1時間も高速を飛ばすのはなんだかいやだなあ、と尻込み
していたのだ。あまりに荒天になった場合、市内の義妹の家に泊めてもらうという手もあるのだが、
その週はカーニヴァル休みのため家族揃ってスイスにスキーに行っていて留守だ。

そこへ助っ人登場。同行者が三人現れ、しかもわたしは車を運転する必要なし。
その3人とは来週のクリスによるバッハのチャンバロ・リサイタルに同行する人たちで、内田さんの
プログラムにもバッハの『プレリュードとフーガ』が加わったため、チェンバロとピアノとで聞き比べ
ようという訳だ。

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            母が結んだ糸で織ってもらった帯。

内田さんは、動きやすそうな黒のジャンプ・スーツみたいなのをお召しで、金色の幅広サッシュを
腰に巻いて左側でリボン結びにしている。ジャンプ・スーツは三宅一生か山本耀司のデザインの
ような感じで、機能的かつ内田さんのスレンダーな体型にマッチしている。金色のサッシュをしている
ところがいかにも彼女らしい。

バッハをモダン・ピアノの生演奏で聴くのは、本当に久しぶりだ。
内田さんによるバッハ演奏は、ペダルも多用したレガートで、しかもかなりの弱音から始まって、
強弱の付け方もモダン・ピアノらしい音作りである。
すなわち、消え入りそうに儚いタッチで揺らしつつ弾かれる前奏曲と、ごつごつしたところがなく
滑らかに流麗に弾かれる3声のフーガとの対比もロマン派風アプローチなのである。
バッハをピアノで弾くからといって、ノン・ペダルでいかにもぽつぽつしたチェンバロっぽい音を出そうと
する必要はないし、生真面目一本やりみたいな弾き方ではなく、洒落っ気があって耳に心地よい。

シェーンベルクの演奏前に、一旦席を立って内田さんは楽屋に戻った。それが結構長い時間席を
外していたので会場がざわざわとなって、また内田さんが戻ってきてもなかなかしーんとはならない
のだった。これは困る。シェーンベルクの曲はとても短いが、弾く方も聴くほうも集中力を要する
真剣勝負の趣であるのだ。
隣のおばあちゃんはバッハが始まったら爆睡していたし、短い曲間や弱音になると傍若無人に咳を
する人が多くて非常に耳障りである。音が大きくなるのにタイミングを合わせて咳もすべきである。
そのくらいの覚悟がなかったら、家で寝るなりコンサートはお休みしてもらいたいものだ。
シェーンベルクもウィーンの人であるから、内田さんのレパートリーには適っている。奇をてらわず
全くエキセントリックにならずにロマンチックに聴こえる演奏だった。

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            内田さんのイメージで選んだ着物は結城紬。
            真綿紬なのでほっこりと暖かく、冬にぴったり。
            鶯色の地にグリーンの細かい格子と横縞。
            母が手で結んだ糸を横糸にして織ってもらった帯。      
            光沢のあるオレンジの地にクリーム色系のグラデーションの
            パステル・カラーの結び糸が、ひげのように出ている。
            帯揚は、紺にクリーム色の菊模様。
            帯締は、クリーム色のごろっとした変わり組。
            (多分、叔母が組んでくれたもの)


わたしはシューマンのピアノ曲にはあまりそそられない。つまり、弾いてみたいと思わせる曲が
少ない。
前半最後の『森の情景』は、ピアノ師匠Pのレパートリーでもあるのでまだ聴く機会があるが、
ピアノ・ソナタ第二番なんて、その晩聴くのが初めてであった。

『森の情景』には『子供の情景』のような無邪気な面が少なくて大人っぽく、複雑さと奥深さも
秘めつつ、鳥のささやきや狩の馬や犬の駆ける様子などがリアルな情景として目に浮かんでくる。
内田さんのデリケートな演奏でしっかり聴くと、その複雑さがミクロコスモスのように有機的に絡まって、
森の樹間から湧いてくる霧のように神秘的に響き、いい曲だなあと思わせる。

最後の『暁の歌』では、情景としての叙情性が少なくなり、怪奇な暗さが増している。ロマンチシズム
の真骨頂ともいえる彩りの所々に耳を引掻くような不安感を募らせる音が混じる。しかも、ベートーヴェン
のように昇華するところがなく、閉塞感のある曲である。
この小さな不安を煽るような曲も、内田さんは繊細に魂を込めるかのように弾き聞かせてくれた。

アンコールは、モーツアルトのソナタの一部。(特定できなかった)
前半は爆睡していた隣のおばあちゃんも、休憩中にスイッチが入ったようで、最後には一部分いきなり
ピアノに合わせて口ずさんだりしていた。晩年のホロヴィッツみたいなとろけそうな顔の白髪の彼女は、
しかしかなりオシャレであり、多分ピアノ教師ではないかと思われた。

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休憩中や、トイレや、帰りの出口などでもわざわざ寄ってきては着物を褒めてくれる人がいるので、
同行者たちは、着物の威力にびっくりしていた。
内田さんのリサイタルに、彼女のイメージに合わせた着物で行ったのは大正解であった。

         
  
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by didoregina | 2013-02-18 09:34 | コンサート | Comments(10)

2012年のMusica Sacraオープニング

毎年9月中旬の週末にマーストリヒトで開催されるMusica Sacraは、今年で30年目であるが
単に音楽祭という枠組みに収まらないプログラミングが素晴らしい。
残念なことに、里帰りだとか何か別の用事がいつも重なり、行きたいコンサートが目白押し
なのに逃がしてしまうことが多い。
今年も、週末はゼーランドでセイリングという予定とバッティングしてしまったが、オープ
ニング・コンサートだけなんとか駆けつけることができた。

「聖なる音楽」を名乗るフェスティヴァルだが、大小の教会が主な会場になっていることを
除けば、宗教音楽という狭義には当てはまらない。今年のテーマはRites & Ritualsで、日本の
真言宗僧侶たちによる声明コンサート(?)などもあった。

木曜日に、リュミエールで『今の修験道』というドキュメンタリー映画を観た。早い者勝ちで
あるが無料である。リュミエールはこのフェスティヴァルに参加しているので、The Dybbuk
(1937年のポーランド映画)、『ニーチェの馬』『切腹』『おくりびと』『聖杯伝説』と
ベルイマンの『魔笛』が週末には上映された。

そして、金曜日4時にフレイトホフ劇場で、オープニング・コンサートとして4台のピアノに
よるストラヴィンスキーの『春の祭典』演奏を聴いた。
オランダ人のマールテン・ボンが1981年に編曲したもので、↓の動画と同じメンバーによる
演奏だ。





Festival Opening@ Theater aan het Vrijthof 2012年 9月7日

Le Sacre du Printemps (Igor Stravinsky) arranged for 4 pianos by Maarten Bon

Amsterdam Piano Quartet (Sepp Grotenhuis, Ellen Corver, Gerard Bouwhuis,
Marja Bon)

今回使用されたファツィオリのコンサート・ピアノは、上の動画のよりもずっと大きい特大
コンサート・グランドだった。それが4台乗っかったフレイトホフ劇場は、文字通り舞台狭し
という印象で、まず、その視覚的重量感に圧倒された。
後ろに座っていた音大学生と思しき人の感嘆が聞こえてきた。
「舞台上のピアノ全部で400,000ユーロ以上になるわ。コーフンしてしまう」

ファツィオリの特大コンサート・グランドは、奥行きがが3メートル8センチもあるから、
その分、低音弦が長くなり、低音の迫力では他のピアノと一線を画す。『春の祭典』には、
ピッタリの選択と言えよう。
しかし、意外にも、4人のピアニスト達はパワーで押しまくるような荒業には走らず、
叙情的かつ瞑想的な音を作り出すのだった。
それで、わたしは、なんと、ついうとうとしてしまったほどである。

なるほど、4人でオーケストラ・ヴァージョンに近い音世界を作り上げるわけだから、各パー
トの音のバランスに気を配りつつ、お互いの複雑なリズムの交差にも注意を払いつつ演奏しな
いといけないので、いきおい理知的なアプローチが不可欠となろう。
情念が先走ったり感覚的な演奏では、4台がばらばらになり収集が付かなくなってしまうのだ。
だから、一糸乱れぬようにまとめるため機械的できっちりとした印象の演奏になった。

4台のピアノによる演奏は、それ自体がアクロバティックで見ものというか、ライブで聴く
機会はめったにないから貴重な体験ではあったが、ストラヴィンスキーらしさという点では、
作曲家自身が書いた一台もしくは二台のピアノ・ヴァージョンの方が、メロディアスであり
ながらスリリングな爽快感があり、優れているのではないかと思えた。


↓は、バーンシュタインとティルソン=トマスによる4手一台のピアノ・ヴァージョン


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by didoregina | 2012-09-11 17:44 | コンサート | Comments(2)

草上の音楽と映画

夏の間に一度は体験したいのが、野外での音楽会や映画上映だ。
これがないと夏が終わった気がしない。

アムステルダムのプリンセン運河コンサートとか、ロッテルダムのフェアハーフェン港湾
コンサートとか、その他各地でもいろいろと無料のコンサートが開催されて、新シーズン
開始前の予告編の様相を呈するので、出演するアーティスト達も一流ぞろいだ。

ロッテルダム・フィル(ネゼ=セガン指揮)とアナ・カテリーナ・アントナッチの港湾コンサートへ
は、直前に行くのを止めてしまった。大雨・雷雨の予想だったからだ。ヨット用の防水ジャケット
を着たのに、どうも玄関で気が萎えてしまって。。。

野外での映画上演で、今年リュミエールが主催したのは『少年と自転車』だったが、既に観て
いるので、これもパス。
昨年は、『神々と男たち』『マムート』『エデン』をそれぞれ異なるロケーションで観たのだが、
開放感も雰囲気も抜群だった。

土曜日夜に出かけたのは、マーストリヒト市内、マルクト広場から程遠からぬ立地のスフィンクス
陶器工場の跡地で行われた野外映画およびコンサートだった。

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         映画上映の前にバロック・コンサート

このロケーションが、また信じられないほど自然が残って、町中のアルカディアの趣だ。
高いレンガ塀に囲まれた工場跡地には、窓ガラスの割れた工場やオフィス・ビルが残ったままだが、
世界的不況による建設業界の停滞を反映して、その中に抱かれるように6ヘクタールの空き地が
手付かずになっていつの間にか自然に帰っているのだ。
実際、何も手を加えないでおくと、自然はびっくりするほどの繁殖力を町の中心であろうとも見せる
ものである。

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     倒木や草の上に座っている会衆は、高校生、赤ちゃん連れの若い夫婦や
     退職後の熟年など、様々。犬もいる。

この秘密の場所を見つけた人は、犬の散歩で迷い込んだ都心のアルカディアに感嘆し、早速、市に
当面2年間の占拠を掛け合った。経済的に開発の見込みが立たない現在の状況下、その申し出は
許可された。そして、スフィンクス・パークとしてカルチャー発信の場になっているのだ。
空き家のスクウォッティングも、自治体から合法的に認められている場合がしばしばある。それは、
犯罪防止や家屋の荒廃・スラム化を防ぐ意味で、誰かに住んでもらうほうがいいからだ。

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               隣はワンちゃん連れの人


21時からの映画上映の前に、ポーランドとイタリアのバロック・アンサンブルIl Giardino d'Amore
によるヴィヴァルディ、コレッリ、スカルラッティの器楽曲およびマドリガーレの演奏があった。

Il Giardino d'Amore
Stefan Plewniak(viool), Marzena Matyaszek (viool), Katarzyna Kalinowska (viool), Monika Boroni (viool), Magdalena Chmielowiec (altviool), Wojciech Witek (altviool), Marta Semkiw (cello), Katarzyna Cichon (cello) en Maria Guzowska (luit)
Natalia Kawalek (sopraan) en Dawid Biwo (bas-bariton)

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水上の音楽ならぬ、草上で聴くバロック音楽もなかなかよろしい。
野外だから、各楽器の前にはマイクが立ち、歌手もマイクを持ってスピーカーで増幅した音響で
あるのはいたしかたない。それでも、ロケーションのアルカディア的雰囲気と素朴で明るいマドリ
ガーレが絶妙にマッチして効果抜群。

ソプラノ歌手は、名前から判断すると、先月、インスブルックの古楽音楽祭でのコンクールで3位に
なった人のようだ。このアンサンブルを率いてヴァイオリン・ソロも弾く人が旦那さんのようである。
PAで増幅されていたが、鄙びてはいるが生き生きした演奏の弦楽器の音と、アンサンブルの名前
(愛の庭)そのものの、生の愉悦を表現するような曲選定で、楽しめた。
古楽のソプラノにしてはちょっと変わった深みがあるというか、ドスの効いた声で歌われるマドリガーレ
は、野趣満点。

同じ歌手による、インスブルックの古楽コンクールの動画を下に貼っておく。



    勢い余ってちょっと音程がヘンだったり、荒削りではあるが、不思議な個性のある歌声だ。


音楽のあとは、昆虫の世界を描いた自然映画Microcosmos。マクロで映し出された昆虫の生態は
コミカルで笑いを誘う。しかし、ちょっと長くて、オチとかはどうするんだろう、と思わせ、途中で
ちょっと飽きてきた。
たぶん、ロケーションを基準に選んだ映画であった。
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by didoregina | 2012-09-03 18:07 | コンサート | Comments(4)

Bravaに感謝!招待コンサートでハナちゃん発掘!

またまた、Bravaからのコンサート招待に当選した。昨年はほとんど当選しなかったと
記憶するが、今年は、リンブルフス・シンフォニー・オーケストラ(地元LSO)とオランダ
期待の若手ピアニスト、ハネス・ミナーによるオール・Rシュトラウス・プログラムのコンサート
当選に続いて2度目である。

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          4月に行ったけど、忙しくて記事に出来なかったコンサートで
          ピアニストのハネス・ミナーとツーショット。

今回当たったのは、リンブルフ州の作曲家デイというかなりマイナーなテーマのコンサートで
あるが、そういうものこそ、タダ券でも貰わない限り聴きに行こうとはなかなか思わない
から、当選してうれしい。

土曜日の朝から晩まで、地元出身の作曲家による主に世界初演の曲を、地元の演奏家が
演奏するというものだが、特に興味を覚えた午後からのコンサートを三つ聴くことにする。

Limburgse Componistendag @ Theater Heerlen 2012年6月30日

Studium Chorale & Ensamble 88 dirigent Hans Leenders
Simons Three Shakespeare Sonnets
Leenders Hoc est praeceptum meum

Ensemble 88  & Hannah Morrison
Van den Booren Duende

Heerlense Oratorium Vereniging dirigent Emmanuel Pleijers
Lambrechts Impressions Maritimes, Carmen Laudationem

大体、コンサート当選のお知らせは、当日の2日前くらいに来る。
それから同行者を探すのは、なかなか大変だ。興味を持ちそうな友人を誘うが、「残念ながら
予定が詰まっていて」と4人から丁寧に断られた。それで、長男と行くことにした。

しかし、ヘーレンの市民会館窓口で「ブラーヴァの無料コンサート券に当選したんです」と
告げるも、わたしの名前のチケットはなぜか用意されていなかった。
当選を知らせるメールは、もちろんプリント・アウトしていかなかった。いつも、名前を言うだけで
さっとチケットが出てくるからだ。
今回は、どうやら、Bravaがわたしの名前を劇場に通達し忘れたようである。
顧客としてこの劇場にはわたしのデータが登録されているので、窓口の人の信用を得ることが
できたのは幸いであった。
そして、あまりにもいい天気だから、多分現れそうもないだろう、と窓口担当者は、アペルドー
ルン(ヘーレンから200キロほど北の町)在住の当選者のチケットを替わりにくれた。
(Bravaには、そのいきさつを書いて苦情メールを送ったが、返事はまだ来ない。)

午後の部の会場(大ホール)の客席は、3分の1も埋まってはいなかった。
内容のマイナーさと、外の天気のよさの相乗効果であるから、いた仕方ない。

最初の曲を作曲したのは、まだ若いマレイン・シモンズ。子供の頃からヴァイオリンと作曲の
神童として名を馳せたが、20代後半になったであろう最近は作曲に的を絞っているようだ。
シェイクスピアのソネットを、ア・カペラの現代的混声合唱曲にしたものだ。
無調でしかも合唱の各人ばらばらで必然性のない不協和音で出来上がっていて、しかも伴奏
なしだから、音程を取るのが大変そうである。全員、それぞれ、出だしや主要各所で音叉を
耳に当てて音を取っていた。
面白いのは、ソネットが進むにつれて、だんだんとわかりやすい音楽の形に変化していって、
最後の方は、いかにもシェイクスピアらしい歌曲の趣になって終わるのだった。
聴き終えると、数世紀の音楽史を遡るような感じの大作だ。
このソネットを聴く限り、作曲家シモンズは、オペラ作曲への意欲満々のように思われる。
現代曲のオペラへの批判という意図も含まれているかもしれない。ただし、作曲家自身は、
ミュンヘンでのリハーサルのため、世界初演の機会に同席できなかった。

二番目の曲は、合唱指揮で活躍しているハンス・レーンダース作曲。
指揮者としての彼は、主にポリフォニーからバロックの宗教曲をレパートリーとしているから、
作曲作法も、バッハを思わせる。ラテン語の歌詞をカノン主体の混声で歌わせていく。現代的な
要素は、ビブラフォーンが活躍する器楽演奏部分以外には全くない。18世紀の曲だと言われたら、
信じてしまうだろう。
合唱団は、大分以前『ヨハネ』を聴いたときよりも、ずいぶん進歩しているのに驚かせられた。

その後、小ホールに移動。
アンサンブル88は、構成人員をフルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロの四人に縮小し、
真ん中に立った歌手が、まずオランダ語で詩の朗読をする。太陽や宇宙、気象など自然賛歌
から愛を歌うものまで様々だ。ベルギー訛のオランダ語の発音が美しい。
それから、おもむろに室内楽の演奏に合わせて、素直かつストレートで張りのある好感度抜群
声の、小柄で細身の外見からは意外なほど十分な声量で会場を満たすのだった。
わたしを含む会場は、彼女に魅入られてしまった。Who's that girl?

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         声にもルックスにも清楚な美しさが光る Hannah Morrison

オランダではほぼ絶対不可欠なスタンディング・オヴェーションは、その日のプログラムでは
それまで起きなかったが、ここにきてようやく歌手と作曲家に対するスタンディング・オヴェーション
になった。わたしも、真っ先に立ちたい気分だった。

プログラム・ブックには名前すら、歌手に関する記載がなかった。長男の隣に座った人の話に
よると、その歌手はスコットランド人とアイスランド人のハーフであるという。
帰宅してから、アンサンブル88のサイトで調べると、ハナ・モリソンというソプラノだとわかった。
それからは、ネット・サーフィンである。
両親はたしかにスコットランド人とアイスランド人らしいが、オランダ育ちで、マーストリヒト音大
出身である。
最近では、ハナちゃんは、ポール・アグニュー指揮およびテノールとして出演のレ・ザール・フロ
リッサンによるモンテヴェルディの『マドリガーレ』コンサートに参加している。


         この『マドリガーレ』コンサートも全編タダでMediciTVのサイトから視聴可能。

そして、なんと、ラルペッジャータの『聖母マリアの晩課』コンサートでもソリストだった!
その今年6月14日のサン・ドニ音楽祭でのコンサートがArte Live Webから、全編あと164日間
視聴できる。(下線部分にリンクを張ったので、ぜひ!)
ハナちゃんは、8月24日26日にインスブルック古楽祭にもラルペッジャータのソリストとして
Il Parideに出演する。

魅力的な若手ソプラノをこうして発見することができ、タダ券をくれたBravaには感謝に堪えない。
ハナちゃんからは、今後、目が離せない。
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by didoregina | 2012-07-02 17:25 | コンサート | Comments(2)

今年のヴェルサイユ・フェスティヴァルはヘンデル祭り!

6月8日から7月13日まで連日、ヴェルサイユ宮殿で繰り広げられる音楽祭の今年の
テーマは『ヘンデルの勝利』で、素晴らしい充実のプログラムだ。

ヘンデルのオペラやオラトリオのほか、『王宮の花火』や『水上の音楽』などの演奏会が、
宮殿内の王室礼拝堂や歌劇場、鏡の回廊および庭を会場として行われる。バロックの精華を
これ以上は望めないほど雰囲気がマッチした会場で鑑賞できるのだ。
プログラムのみならず、出演者のラインナップもすごい。

気になるものだけ挙げても以下のとおり。

6月11日 『オルランド』@王立歌劇場 カーティス指揮 主役がイェスティン・デイビスで、
     ロベルタ・マメリ、クリスティーナ・ハンマーシュトロム他の出演!

6月12日 『アルチーナ』@王立歌劇場 ルセ指揮レ・タラン・リリク、カリーナ・ゴーヴァン、
     アン・ハレンベリ、デルフィーヌ・ガルー他

6月13日 チェチリア・バルトリのリサイタル@鏡の回廊、題して『ヘンデルのヒロイン達』

6月14日 『ジュリオ・チェーザレ』@王立歌劇場 ダントーネ指揮アカデミア・ビザンチーナ
     ソニア・プリーナが主役で、パオロ・ロペスがセスト。

6月19日 4人のカウンター・テナー・ガラ チェンチッチ、サバタにTerry Wey とVince Yi

6月22,28,29日 『王宮の花火』もちろん外で。

6月24日 『サウル』@王室礼拝堂 

6月25日 『エジプトのイスラエル人』@王室礼拝堂 クリストファーズ指揮ザ・シックスティーン

6月26日 『ソロモン』@王室礼拝堂 マクリーシュ指揮ガブリエリ・コンソート、イェスティン
     君がまたもや主役!

6月27日 チェチリア・バルトリのリサイタル@王立歌劇場、Sacrificium!

6月28日 アレクサンドル・タローのピアノ・リサイタル@王立歌劇場 『ラモー賛歌』

7月1日 『セルセ』 スピノジ指揮、マレーナ・エルンマン主役!アドリアーナ・クチェロヴァ、
     デヴィッド・DQ・リーにヴェロニカ・カンヘミ!


7月5,6,7日 サヴァール指揮による『水上の音楽』@大運河

7月6日 アイム女史指揮ル・コンソール・ダストレーによる『水上の音楽』他@王立歌劇場、
     ソニア・ヨンケヴァ出演

7月6日 マックス・エマヌエル・チェンチッチのリサイタル@鏡の回廊 『ヘンデルのヒーロー達』

7月10,11日 『メサイア』@王室礼拝堂 ザ・キングズ・コンソート

7月11日 『タメルラーノ』@王立歌劇場 ミンコフスキー指揮MLG、 クリストフ・デュモー!
     ユリア・レジネーヴァ、ティム・ミード他の出演

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イェスティン君主演の『オルランド』は、なかなか期待できそうだし、脇を固める女性陣も手堅い。

『アルチーナ』と『ジュリオ・チェーザレ』には、バロック・オペラに欠かせない女性歌手たちが
勢ぞろいする。

『セルセ』は、昨年のウィーン公演での面子から、キャストは少々替わったが、興味津々だ。
会場が発表されてないが、どこだろうか。コンサート形式だろうが、マレーナ様の演技にも期待。

そして、〆の『タメルラーノ』がスゴイ。デュモー選手もとうとうミンコさん好みの仲間入り?
今後もご贔屓にしてもらいたいものである。デュモーとユリアちゃんとの若手パワフル・コンビが
早々に実現するのが聴きものだ。
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by didoregina | 2012-05-25 13:43 | バロック | Comments(27)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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