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ワディム・レーピン@フリッツ・フィリップス・ミュージック・センター

去年6月から数えてレーピン様にお目にかかるのは3度目である。丁度4ヶ月に1度の勘定だ。あと、5月にケルンに行けば、レーピン様とともに巡る四季が完結する。しかし、あまりに会う回数が多いとありがたみが薄れるのも事実である。

しかし、着て行った着物は、久しぶりの柔らかモノ、手持ちで一番華美な模様のもので、帯も金糸銀糸を織り込んだ2重太鼓と渾身の力を込めた。いわばモネの貴賓席にふさわしいようなキンキラ着物であるので、さすがにコンサート・ホールでは人目を引いた。感嘆の声が降りかかった。それもこれもレーピン様のお目に留まることが目的なのだから、目立つという意味での作戦は成功した。

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プログラムははヤープ・ファン・ズウェーデン指揮オランダ放送フィル(RFO)とのブラームス・ヴァイオリン・コンチェルトとマーラーの交響曲1番である。
長い曲2曲なので、序曲などはなしで、いきなりレーピン様が登場した。
こういうのが苦手である。やはり最初は序曲かなんかでもって、オーケストラの音色とホールの音響に耳を慣らしつつこちらの緊張をほぐしてもらいたいものである。日常から非日常への移行はそう簡単にはいかないのだから、メインの前には前菜が欲しい。

しかも、レーピン様は最初から飛ばしていく。出だしの音から豪快にごりごりさせ、技巧を見せ、聴かせていく。
そして、最初から最後までその調子であった。カデンツァにも甘さはなく、テクニックのご披露である。
なんという変わりようだろう。6月のベートーベン・ヴァイオリン・コンチェルトの時は、技巧を見せつけるときは見せたが、甘く聴かせるときは聴かせた。そして出てくる音楽全体に情熱がほとばしっていた。そのときはヴァイオリンのコンサートなどアンドレ・リュー以外では初めてという人たちを4人連れて行ったが、みんながレーピン様の演奏に感動・熱中した。10月のリサイタルに同行した友人は、レーピン様のクロイツェル・ソナタを聴いて涙が止まらなくなっていた。

レーピンのブラームスVコンには、どうしても20年前の思い出が付きまとう。エリザベト王妃コンクール優勝記念凱旋コンサートでの、みずみずしくて清澄で、どこかほのぼのとした田園的な風景が心に浮かぶような演奏だった。それから、レーピンはどんどん進化していったが、それでも、優勝したコンクールのライブCDを聴けば、現在の彼に通じる音楽性ははっきりと感じられる。テクニックに裏づけされた、きっぱりとした男らしさと芯の図太さである。力強く男性的だが、野卑ではないのがレーピンのレーピンらしいところである、はずであった。
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レーピンの変化を目のあたりにして、思い浮かんだのはベルギー・チョコの味の移り変わりである。
ベルギー・チョコの進化には目を見張るものがある。時代の嗜好にあわせてテイストも変わった。昔は大きくて甘いフィリングが主流であったが、最近はビターなカカオ本来の味を強調し、形もシンプルに押さえスタイリッシュになっている。高級な素材を売り物にしたり、ペッパーやマスタード、緑茶など意表を突く味付けにしたり、甘いものが苦手の人をもターゲットにしている。

ビターな味わいは、もともとレーピンの音楽に存在していたものだ。それを強調し推し進めるとどうなるか。枯れた方向に行くにはまだ年齢が若すぎる。37歳、男盛りである。甘さを捨てた男らしさとテクニックを前面に押し出して行くのが、1つの選択である。特に現在のヴァイオリン界を見渡すと、そういうヴァイオリニストが欠如しているから、明快・妥当なチョイスとも言える。
でも、行き過ぎるとどうなるか。
感動が薄まってしまうのだ。
最近ツアーでよくいっしょに活動しているゲルギエフの影響を受けたんじゃないかと勘ぐってしまうほどの、ごりごりテクニックのてんこ盛りであった。やりすぎて下品に聴こえそうなほどであった。もう少し音楽的にメリハリを付けて欲しかった。
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それでも、ここ一番の着物で張り切って出かけたので、コンサート終了後のサイン会には出た。しかし、売っているCDは最新のブラームスのみである。サインはもういらないや、と思って写真だけ撮っていたが、あまりCDを買う人もいなくてサインの列がすぐに終わってしまった。それで、写真付きのパンフレットにサインをお願いした。言うべき言葉が見つからなかったので、挨拶だけにした。ブリュッセルでは、20年前の出会いの感動から述べたのに、今回は我ながら、あっさりしたものである。なお、間近で撮影したレーピン様の写真がことごとくピンボケだったのも、このコンサートに対するどうにも収まりの悪い私の心境を象徴するかのようであった。

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by didoregina | 2009-03-02 12:07 | コンサート | Comments(8)

フィリップス・ミュージック・センターのピアノ・シリーズ

そろそろ、劇場およびコンサートホールの来シーズンのプログラムが発表される時候である。楽しみでもあり怖くもあり、とにかく鵜の目鷹の目になってしまう。

先週のネーデルランド・オペラに続き、今週末はコンセルトヘボウのプログラムが発表になる。20年以上オランダに住んでいながら、遠すぎる!という理由だけで先週まで1度も詣でたことのなかった音楽の神殿コンセルトヘボウの魅力にハマってしまったわたしは、来シーズンは週末のマチネ狙いで行こう!と心に誓ったのである。土曜日の発表を心待ちにしている。
(家からだとベルギーのブリュッセルやドイツのケルンなら車で1時間強の距離だから、ポリーニだってアムスに行かずともケルンで聴いたし、内田光子さんもブリュッセルでお目にかかった。)

今日、発表になったのは、もう少し家から近いエイントホーフェン(車で1時間)にあるフリッツ・フィリップス・ミュージック・センターの来シーズンのピアニスト・シリーズである。

エイントホーフェンは日本でいうと豊田市みたいなもので、ある企業の城下町である。すなわち家電メーカーのフィリップスを中核としている。フィリップスは日本でのシェアが小さいため、コーヒーメーカーとか髭剃りシェーバーくらいしか思い浮かばないかもしれないが、老舗音楽レーベルでもあるので、その創業者(多分)の名を冠したコンサート・ホールがあるのだ。
このホールは音響的にはヨーロッパでも有数だとHPには書いてある。フランス・ブリュッヘンが絶賛したとも。たしかにそうだろうが、立地が変で外観が非常にシャビーである。街中のショッピング・モールの中にあるのだ。日本だったら別に不思議でもなんでもないが、ここヨーロッパではそうとうな変わりものである。

しかし、プログラムはいつも非常に意欲的で、有名どころがよく来る。フィリップス・レーベルの実力であろう。しかも、めちゃくちゃ料金設定が安いのである。フィリップスからの補助金がたんまり入るのだろう。
もう、フィリップスさまさまである。

Pour le Pianoと銘打ったシリーズは4つのリサイタルからなるのだが、驚くことなかれ、1番いい席でも4回のコンサート・チケット、プラス幕間の飲み物込みで合計104ユーロだ。
それで、誰のリサイタルかというと
11月7日 内田光子
2月23日 レイフ・オヴェ・アンスネス
3月12日 ユンディ・リ
5月7日  ゼフェリン・フォン・エッカルトシュタイン

皆さん、これは飛行機代を払ってでも来る価値がある値段だと思うのだが、いかがだろう?

4人ともわたし好みのピアニストであるという偶然も怖いが、プログラムも悪くない。もしかしたら、コンサートやオペラに関して、今年はとってもついてる年かもしれない。
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by didoregina | 2009-02-25 21:15 | コンサート | Comments(8)

サラ・コノリーとFBOのコンサート@コンセルトヘボウ   私を泣かさないでください

憧れのコンセルトヘボウ・デビューである。いや、出演するのではなくアムステルダムのコンセルトヘボウでのコンサートに行くのが、はじめてなのだ。その記念すべきデビュー・コンサートがサラ様のであるというのは、運命的なものを感じる。気が高ぶり、表現が大げさになってしまうことに、ご容赦のほどを願いたい。

サラ様は、先週までバルセロナのリセウで「ポッペアの戴冠」でネローネ役を歌い演じていた。
長丁場のオペラであり、体力・気力ともに消耗したはずだ。その1週間後にアムステルダムでリサイタルを行うというのが心配の種だった。
2年前、あのマレーナ様も「ポッペア」のすぐ後に予定されていたリサイタルをキャンセルしてしまった、という苦しい経験を持っている。サラ様にはその轍を踏まないでほしいと毎日祈っていた。
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アムステルダムのコンセルトヘボウは中央駅から遠い。家から片道3時間かかるので日帰りは無理である。前半だけ聴いて帰るか、泊まるところを確保しなければならない。この件は、バロック好きのオランダ人の知人と同行しホテルの部屋をシェアすることで解決したが、これは大正解だった。コンセルトヘボウに程近い閑静な通りに面したホテルは、アムステルダムには非常に珍しくコスト・パフォーマンスが高かった。
そして、もし前半だけで帰っていたら、大変後悔したであろうことが当日になってわかったのである。

もう一つの心配の種は、着ていく着物である。
サラ様にはどちらかというと衣装の趣味がよろしくない、という定評がある。
あまり豪華な着物を着ていって釣り合いが取れなかったら、サラ様に恥をかかせることになる。
考えた末、白いホールの美しさに似合って、重ね着のできる着物を選んだ。黒の泥染め縞大島と白黒の弁慶格子の羽織の組み合わせに決めた。
これも正解であった。

伴奏を務めるのはフライブルク・バロック・オーケストラ(FBO)で、コンセルトヘボウのサイトに載っていたプログラムを見ると、ヘンデルの歌曲の合間に前奏曲などを入れて、後半にテレマンの「ターフェル・ミュージック」を演奏するかのような印象を与える。
しかし実際は、前半が「アグリッピーナ」と「ジュリオ・チェーザレ」、後半が「アリオダンテ」をメインとし、それらの合間に楽曲を入れているのだった。サイトを信じて、前半だけで帰ってしまっていたら、一生後悔してもしきれなかったであろう。
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「アグリッピーナ」を歌うサラ様の衣装には目を疑った。
胸のぐっと開いた黒のミニ・ワンピースの上に黒のミニ・トレンチ、その裾がバルーン状になっている。足元は黒のブーツである。
髪型は肩につかない程度で、軽やかに毛先を外向きにカールさせていて、全体的にシックなシティ・カジュアル・ルックでスタイリッシュと言ってもいいほどなのである。
L'alma fra le tempesteと Ogni ventoは、だから女性らしさのあふれる、しかし抑制の効いた身のこなしで歌ってくれた。熟女の貫禄・余裕である。ただ、高音になると弱音になりがちだった。

「アグリッピーナ」から2曲歌った後、サラ様だけ退場し、衣装を着替えて再登場。
宝塚のオスカル風に凛々しく変身したので、会場から思わず大きな拍手と歓声が出た。サラ様は胸に手を当てるしぐさの会釈で歓声に応えた。
ネービーブルーの胸もとまでぴっちりとダブルの金ボタンをかけた、膝丈のジャケットの下には、白とブルーのストライプのブラウス、ズボンに乗馬靴のようなブーツで、衣装から男性役になりきっているのだ。
髪型も、すこしサイドを後に流してフェミニンになるのを押さえ、真っ赤だった口紅はちょっとダークに落としてそのかわり、アイライナーできりりとした目を強調していた。
こんなディテールが分かる、かぶりつき真正面の席だったのだ。視覚的にはこれ以上は望めない位置である。表情の変化も全て見ることができる。
シーザーになりきってVa tacito e nascosto と Al lampo dell'armiを歌ってくれた。
最近の舞台や録音に多いスピードとは異なる、サラ様独特の緩やかなテンポである。力強さを女声で出すためにはテンポを速めたほうが手っ取り早いかもしれないが、威勢だけよくなってしまう。ゆったりと情感を込めるのがサラ流である。低音の魅力がほとばしる。

そして、休憩の後が、この晩のクライマックスであった。
「アリオダンテ」のScherza infidaは、イントロが長く、その間サラ様は役柄に入り込もうと表情を硬くして集中している。その蒼ざめたような表情を見ている私のほうもその世界に引き込まれそうなほどのすさまじい吸引力である。歌う前からこうなのであるから、歌を聴いたら、もう、彼女と私だけの世界に入っていた。
カサロヴァの歌う映像が英語訳の字幕つきなのでここで紹介したい。こういう内容をサラ様に歌われたらどのように感じるか、想像してもらいたい。
サラ様は歌う時に表情を崩さない。その端正な顔のままこの内容を歌い不実をなじるのだ。こちらは涙が出てきても仕方がない。



それから、Dopo natte, atra e funestaで速度を上げ一気にクライマックスであった。歌い終わったとたん「ブラーヴァ」の掛け声と心からの割れるような拍手に口笛で、聴衆は熱狂気味であった。

アンコールは、もしかしたらSe in fioritoじゃないかなあ、と期待していたのだが、このコンサート・レポをすでにアップされたMevrouwさんも書いている通り、「リナルド」から「私を泣かせてください」。
おなじみの曲なので、みんな大喜びである。しっとりとして余韻の残るアンコール向けのよい曲だ。

この晩のコンサートを一言でいうなら、サラ様「私を泣かさないでください」であった。
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by didoregina | 2009-02-22 11:05 | バロック | Comments(12)

フォルテピアノとモダンピアノのリサイタル

c0188818_591931.jpgロナルド・ブラウティガムのリサイタルに行ってきた。

彼はオランダ人ピアニストとしては間違いなくトップの一人だ。ベートーベン・ソナタのCDを持っているし、リサイタルもオケとのコンサートも何回か聴いているが、どうも小粒と言うか、見かけに比べて演奏の迫力に欠けるきらいがあって、もういいやと、今回のリサイタルはパスするつもりだった。

しかし、劇場サイトでプログラムを見て仰天し、気が変わった。
1回のリサイタルでフォルテ・ピアノとモダン・ピアノの両方を使用するというのだ。

photo by Marco Borggrave

前半がハイドンで後半はメンデルスゾーンである。ピアノを弾くわたしはどちらも敬して遠ざけている作曲家だが、フォルテ・ピアノで弾かれるハイドンのソナタには惹かれる。
同好の士、バービーさんも興味を持ってくれ、同行してくれることになった。

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今回使用のフォルテ・ピアノは、1800年頃Michael Rosenbergerが製作したもの。Edwin Beunkのコレクションを借りたという。
舞台上、スタインウェイの手前にセットされると、その小ささがよく分かる。ペダルはない。
photo by Marco Borggrave

ブリリアントから出ている、フォルテ・ピアノによるハイドンのピアノ・ソナタ全集を持っているので、耳の練習用に1週間聴いた。耳を慣れさせるためである。
耳の慣れより、指の慣れにはもっと時間がかかる。フォルテ・ピアノを弾くテクニックとモダン・ピアノを弾くテクニックは全く異なるため、両刀使いのピアニストはいても、1度のコンサートにその両方を用いるということはめったにない。それはそうだ、タッチが違いすぎるから、移行にある程度の時間が必要なのだ。

演奏されたハイドンのピアノ・ソナタは、最後期の3つで通称ロンドン・ソナタ。ハイドンは、最後の4つのソナタにだけ、フォルテ・ピアノで弾くことを指定している。(それ以外はチェンバロもしくはフォルテ・ピアノのため、となっている)

「ハイドンの時代に、もしもスタインウェイがあったなら、作曲された曲は、今残るものとは全く異なったものになったはずだ。ハイドンは、フォルテ・ピアノの特徴を最大限に引き出すような曲を作った。だから、今回は特に、ハイドンの時代に製作されたフォルテ・ピアノを借りてきた」とブラウティガムは、演奏の前に説明した。

フォルテ・ピアノの響きは、ピアノの前身だけあって、特に高音部はちょっとチェンバロを思わせる。
フォルテ・ピアノで弾かれるハイドンは典雅で可愛らしいが、荘重な雰囲気にはならない。だから逆に、わたしはハイドンのソナタをモダン・ピアノで弾くのが苦手だ。異常に重苦しくなってしまうから。フォルテ・ピアノは弾いたことがない。

ヘーレン劇場のこじんまりさと音響が今回のフォルテ・ピアノにはよく合っている。
大きすぎる会場では困るし、一度小さなお城のホールで聴いたときには、オリジナルのフォルテ・ピアノ自体の音のせいなのか、低すぎる天井のためか、なんだか響きすぎるチェンバロ演奏を聴いているような気分になった。

休憩後は、フォルテ・ピアノは片付けられ、スタインウェイで、メンデルスゾーンの「無言歌集」より12曲の抜粋の演奏。
これも、弾くのが苦手な曲集である。手持ちのCDを聴いても好きな曲が見つからない。
しかし、ブラウティガムの演奏はよかった。特に後半の5曲は、ベートーベンみたいに勇壮である。この人、ベートーベンよりメンデルスゾーンの方が向いているんではないだろうか。以前に彼のリサイタルで聴いたベートーベンは、スタインウェイなのに、まるでフォルテ・ピアノのように頼りない音しかしないので、休憩中舞台に上がって自分で音を出して確かめたくなったほどだ。

今回は全曲、自分で譜めくりしながらの演奏であったが、手馴れたもので視覚的にもじゃまではなかった。

リサイタル後、ホールのカフェに入ると、ブラウティガムが座っていた。
写真を撮らせていただき、フォルテ・ピアノの行方を尋ねると、「借りものなので前半修了後、すぐに送り返した。」とのこと。
以前、ラジオのインタビューで「フォルテ・ピアノの演奏会を続けた後は、何日かモダン・ピアノに慣れる練習をしてから演奏会を行う。すぐには切り替えができないから」と言っていたので
その辺を確かめると、「そう、1度に両方のピアノで演奏するのはこれが2回目。1回目は4年前の東京。全くしないわけではないがレアだ。」と言う。
レアなリサイタルに遭遇し、ラッキーだった、楽しめた、と言って別れた。
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by didoregina | 2009-02-15 22:23 | コンサート | Comments(3)

パーセル・コンサート@聖マルティヌス教会

作曲家イヤーの威力や恐るべし。パーセルにちなんだコンサートがこのところ目白押しである。
聞いたことがないアマチュア古楽アンサンブルが教会でコンサートを行う、という情報がたまたま目に留まった。地区の教会が毎週発行しているニューズ・レターに載っていたのだ。

「メアリー女王のための葬送音楽」と題するコンサートで、歴史的楽器による演奏、そしてルネッサンスおよびバロック音楽を専門とするプロのソプラノがソロを歌うというふれこみである。
料金の記載はないから、教会と演奏者への気持ち程度の謝礼を寄付すればよいのだろう。
さすがに古楽のさかんなオランダだけあって、アマチュアでこういうコンサートを行うのも少なくない。家からそう遠くもない教会が会場だ。期待して出かけてみた。

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ところが、中で手渡されたプログラム・パンフレットを読むと、パーセルの曲も確かに入っているが、大部分はそれ以外の、わたしにとっては無名の16世紀および17世紀の作曲家の作品が演奏されるようである。

2009年2月8日   H. Martinuskerk
Arno Kerkhof 指揮  Vocaal Emsemble Arabesque 合唱
Bianca Lenssesn ソプラノ
Schutz-Monteverdi Concort 古楽器演奏

古楽演奏は、コルネット(近代のトランペットのようなコルネットとは異なる木管の楽器)2名、トロンボーン(アルト、テナー、バス各1名)3名、ヴィオラ・ダ・ガンバ1名(この人は太鼓も叩く)、オルガン1名のシンプルな構成で、弦楽器はヴィオラ・ダ・ガンバのみ。

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March    
by Henry Purcell (器楽演奏)

I am the resurrection and the life
I know that my Redeemer liveth
We brought nothing into this world    
by Thomas Morley(合唱)

Quemadmodum desiderat cerbus
by Andre Campra(ソロ)

Last will and testament
by Anthony Hoborne(器楽演奏)

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Almighty God
by Thomas Tomkins(合唱)

Man that is born of a woman
In the midst of life
Thou knowest, Lord
by Henry Purcell  (合唱) 

Quemadmodum desiderat cervus
by Sebastien de Brossard(ソロ)
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The funerals
by Anthony Holborne(器楽演奏)

Man that is born of a woman
In the midst of life
Thou knowest, Lord (Henry Purcell)
I heard a voice from heaven
by Thomas Morley  (合唱) 

March by Henry Purcell (器楽演奏)


マーチでは太鼓が葬送の行進リズムを刻み、演奏は管楽器のみ。その出だしがいつも揃わない。ようやく最後のマーチで初めて揃った。
合唱団は男女合わせて14人ほどだろうか。まあ、よくある教会の聖歌隊みたいなものだった。
ソロを歌うソプラノだけプロの歌手である。中年のがっしりした女性なのだが、声質は見かけと異なり少女のような感じで、いかにもルネサッサンス・バロック専門のタイプだ。声量はあまりなく、もちろんノン・ヴィヴラートで歌うのだが、伸びが不足気味。ちょっと一本調子だが、くせがないので聴いていて嫌ではない。

歌の伴奏はオルガンとヴィオラ・ダ・ガンバのみでシンプルだ。一番よかったのは、太鼓とヴィオラ・ダ・ガンバを演奏していた人で、この人がいなかったら芯のないあやふやな印象の演奏会になったと思う。

会場を出るときに、寄付金の形で来場者が妥当だと思う金額を払う。パーセルで釣っておきながら、実際にはその演奏曲目が少なかったのが減点の対象となったから、3ユーロだけ払った。アマチュアのコンサートに支払う金額としては、まあ妥当なセンではないだろうか。
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by didoregina | 2009-02-09 14:44 | バロック | Comments(13)

「ジェイムズ2世の戴冠式」@聖母教会

マーストリヒトの聖母マリア協会で、オランダ・バッハ協会による「ジェイムズ2世の戴冠式」ライブを聴いてきた。
1685年ウェストミンスター寺院で挙行された戴冠式のための音楽をオランダ・バッハ協会が演奏し、当時の年代記記述者による詳細な式典の記録を、NOS夜8時のテレビニュース(NHKニュースみたいなもの)アナウンサーのフィリップ・フレーリクスが読み上げるという、かなり変わったコラボ上演である。
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2009年1月28日
Onze Lieve Vrouw Basiliek in Maastricht

Programma
John Blow (1649-1708)
– God spake sometime in visions
– Let thy hand be strengthened
– Behold, o God our defender
– Let my prayer come up

Thomas Tallis (ca. 1505-1585)
- Come, Holy Gost, our souls inspire

Henry Purcell (1659-1695)
– My heart is inditing
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Georg Frideric Handel (1685-1759)
Coronation Anthems:
- Zadok the Priest, HWV 258
- Let thy hand be strengthened, HWV 259
- The King shall rejoice, HWV 260
- My heart is intiding, HWV 261

Uitvoerenden
De Nederlandse Bachvereniging
(koor en orkest)
Richard Egarr dirigent
Philip Freriks verteller

  
      聖母教会内部(祭壇)と教会外観


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夜8時半からの公演で開場が8時なので8時10分ごろ入場すると、出遅れもいいところで会場はもうほぼ満席。今回はバービーさんとマリーさん(どちらも日本人の奥様)もごいっしょだったので3人並んで座れて柱の陰にもならない席は、もう後から2列目しか残っていない。教会内部は寒いだろうと思ってわたしはパンツにダウンジャケットだったのに、バービーさんは感心にもキモノで来てくれた。ものすごく重ね着して、毛布のようなひざ掛けも忘れずに。



前半は、ジョン・ブロー、トマス・タリス、ヘンリー・パーセルの全6曲。

これらの曲間全てに、微に入り細をうがつという形容がぴったりの実況中継が入る。実際の戴冠式に臨めなかった聴衆にその様子を見てきたように全て聞かせちゃいます、というコンセプトなのだ。
どのくらい詳しいかというと、参列者の名前から大司教や王様のほぼ一挙一動・式次第全部を読み上げるのだ。その詳細さに辟易してきて、また、そのつど音楽が断ち切られるのがうっとうくなってきた。
フィリップ・フレーリクスは好きなニュース・アナウンサーなのだが、ここまでやらせるのは、聴衆・話者どちらにとっても酷だ。

後半は、ジョージ2世の戴冠式のためにヘンデルが作曲した「戴冠式アンセムス」だけで、実況中継は入らなかったので、音楽に没頭できた。
これで、ヘンデルの株がずっと上がった。前半の曲の作曲家はえらい迷惑をうけたものだ。

実際は、少年合唱団ではなかったが、曲目は同じ。Handel "My heart is inditing"
The Holland Boys Choir


聖母教会での音楽会に来たのは、パイプオルガン演奏会を除けば、初めてだ。
響きがよすぎて、合唱の声が溶け合ってしまうようで、歌がよく聞こえない。歌詞を聞き取るのは不可能だ。
合奏は、作曲家の技量に負うところか、耳が慣れてきたためか、終わりに近くなるほどよくなった。前半は、マイクを通した実況アナウンスで耳がおかしくなり、その合間の音楽はほとんど楽しむ余裕がなかったのが悲しい。

最後に、カッコよかったコントラ・バスの写真を撮らせてもらった。1750年ごろのオリジナルで、オランダ製。板がとても厚そう。でもそのせいでびんびん響きすぎというわけでもなかった。
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by didoregina | 2009-01-29 16:07 | バロック | Comments(0)

ペーターのリサイタル・ライブ録音

ピアノの先生、ペーターが2週間前にロッテルダムのデ・ドゥルンで演奏した際、誰かがひそかに録音したものをユーチューブで発見。隠し録音のためノイズが入り音も貧弱だが、記録の意味もあり、Rfrauさんのリクエストに応えてアップしてみる。動画ではないので、見栄えがトホホなのは、乞うご容赦。


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by didoregina | 2009-01-27 17:27 | コンサート | Comments(2)

(after) The Fairy Queen 妖精の女王

c0188818_23492863.jpg2009年1月21日
Theater aan het Vrijthof

Muziek- Henry Purcell

Muzikale leiding - Emmanuelle Haïm (12, 16, 17, 18 dec & 7, 10, 11, 13, 24, 25 jan & 4, 7 feb) & Jonathan Cohen (17, 19, 20, 21 & 30 jan)

Assistenten muzikale leiding – Jonathan Cohen, Philippe Grisvard
Regie – Wouter Van Looy
Dramaturgie – Ian Burton
Choreografie & video – Vivian Cruz
Sculpturen – Freija Van Esbroeck
Kostuums – Johanna Trudzinski
Decor – Sascha van Riel
Lichtontwerp – Peter Quasters
Dans - Erika Méndez Ureña, Sheila Rojas, Luis Villanueva, Alejandro Chávez

Solisten - sopranen: Susan Gilmour Bailey, Hanna Bayodi-Hirt, Elise Caluwaerts, Elodie Fonnard – contra-tenor: Owen Willetts – tenoren: Daniel Auchincloss, Ben Breakwell, Simon Wall – bassen: Neill Bellingham, John Mackenzie, Nicholas Warden

Muzikale uitvoering – Le Concert d'Astrée:
Viool – Agnieska Rychlik, Maud Giguet
Altviool – Delphine Millour
Cello – Claire Thirion
Blokfluit – François Lazarevitch, Yann Miriel
Hobo – Yann Miriel, Vincent Blanchard
Fagot – Emmanuel Vigneron
Luit – Laura Monica Pustilnik or Carola Grinberg
Clavecimbel – Philippe Grisvard

Coproduction – Opéra de Lille, La Clef des Chants, Opéra de Dijon, Muziektheater Transparant.

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パーセルの「妖精の女王」は、セミ・オペラ(歌わない台詞と歌と音楽が混在)で、全体にドラマとしての統一的な流れを欠くため、通常のオペラに比べ演出が非常に難しく、上演の機会も少ない。リサイタルで歌の部分だけ歌われたり、音楽部分だけ録音されたCDはあるが。
だから、今回の上演は、タイトルにわざわざ after と入れているように、シェークスピアの「真夏の夜の夢」に題材を採ったパーセルの歌劇をモトにした翻案もの音楽劇と見るほうがいい。
また、長々とクレジットを入れたのも、楽器演奏、歌、ダンス、舞台美術、マスクが渾然一体となり、どれ一つが欠けても不完全になってしまう一風変わったプロダクションだったからだ。今回のプロダクションでは、歌手が主役では全くなかったと言っていい。

主役は、2組の恋する男女(ダンサー)で、準主役は、古楽演奏のコンセルト・ダストレーだった。
歌手たちは、地味なワンピースとシャツにズボン姿で、主役級ダンサーの後方で結構難しい振り付けのダンスをしているので、最初、その他大勢の群舞ダンサーかと思ったくらいだ。それが、朗々と台詞を読みそのあと歌いだしたので、歌手とわかった次第だが、メインには最後までなれなかった。

楽器演奏のみの音楽部分が多い作品だと、どうしても、踊りや舞台装置で視覚を補わないとさびしい舞台になってしまうのでは、という危惧を抱いてしまうものだ。
だが、音楽だけでは、なんとなく水っぽいから、踊りを加えて実だくさんの汁にしてしまおうという発想は、どうにも安易で好きになれない。そのせいで、歌がどうしても添え物的になってしまうからだ。音楽だけで、こってりとしたスープを作り出して満足感を与えることは可能なはずなのに。

それにしても、観客に対して、イマジネーションを使うことを強いる舞台だった。それに慣れるまで結構時間がかかり、その世界に没入できた頃は、終わりに近かった。事前に勉強をした人でないと、楽しめないかもしれない。しかし、玄人が多かったとみえて、ブラーヴォーは、結構飛んだ。
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by didoregina | 2009-01-22 16:46 | バロック | Comments(6)

LSOとゼフェリン・フォン・エッカルトシュタイン

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2009年1月16日 フレイトホフ劇場

Ed Spanjaard  dirigent
Severin von Eckardstein   piano
Donij van Doorn  sopraan
Saskia Voorbach   sopraan
Vocaal Collectief Solist


Blaha  Vergänglichkeit  Wereldpremière 2008 (alleen in Maastricht)
Schumann  pianoconcert op. 54
Mendelssohn  selectie uit Midzomernachtsdroom

地元のLSO (Limburgs Symfonie Orkest)は今年で創立125周年だそうだ。アムステルダムのコンセルト・ヘボウ・オーケストラは100周年じゃなかった?いや、ロイヤルと形容詞がついてから100年になるんだって。
いや、LSOの話だった。LSOというのはロンドンのとまぎらわしいので、外国ツアーのときはマーストリヒト交響楽団と名称を変えるらしい。しかし、マーストリヒト・サロン・オーケストラというのがあって、アンドレ・リューのシュトラウス・オーケストラの以前の名前なので、それと間違えられたらもっと困る、と名前だけでも大変なハンディを背負ったオーケストラだ。

アンドレ・リューという名前を知っている人が何人このブログ読者の中にいるか不明であるが、一般的な知名度は抜群で、しかしクラシック愛好家からはかなり異端視(白眼視?)されているエンターテイナーである。そのアンドレ・リューは、マーストリヒトに生まれ育ち現在もお住まいだ。(家からそう遠くない、ご近所と言ってもいいくらいなので、ファンの人がいたらぜひ名乗りを上げてもらいたい。写真をパパラってアップしてもいい。)

なんだか全然LSOに話が進まないが、その定期演奏会に行ってきた。
わたしがLSOを聴きに行くのは、ソリストが魅力的な場合か、オペラ・ザウド(地元のオペラ団の演奏もする)を観にいく場合か、タダ券をもらった場合である。
今回行ったのは、ピアノ・コンチェルトが目当てで、しかも息子の音楽学校から割引券が買えたからだ。いや、ピアノ・コンチェルトが目当てというのは、正しくない。シューマンのPコンは、特に聴きたいと思う曲ではないから。ただ単にピアニストが目当てだった。

ゼフェリン・フォン・エッカルトシュタインというタイプするのが非常に面倒な名前のドイツ人ピアニストは、2003年のエリザベト王妃コンクールピアノ部門で優勝している優等生だ。実際、その演奏は優等生的で、とにかく丁寧に一音一音を弾く。まじめで融通が利かないくらいの几帳面さだ。そこに惹かれるのは、わたしの性格が正反対のせいだろう。
ルックスも優等生っぽく、こんな子がクラスにいたらペットにしたくなる。
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昨年9月に彼のリサイタルでヤナーチェクを聴いて、すごく感性が合うのにびっくりした。
まじめで神経質そうな性格は全くわたしとは相容れなさそうだが、ピアノに対峙する姿勢の真摯さの結果である驚異的に澄んでクリアな音にほれてしまった。しかも、ヤナーチェクのピアノソナタというのは大好きな曲なので、けっこうこだわりがあったのに、わたしが望む音とぴたりとマッチしたのだ。
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9月の彼はおりこうそう。

それで、期待して舞台かぶりつきの席で待つわたしの前に登場したのは、ほんの4ヶ月しかたっていないのにびっくりするほど様変わりした彼だった。
病み上がりのように目が落ち窪み、髪は寝癖がついたまま?みたいで、なんだか椅子から滑り落ちそうにみえる。息子と顔を見合わせて「夢遊病なのか?」と思わず口走ってしまった。
視点が定まらないみたいな表情で怪しげ。
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重要なのは、演奏だ。これが怪しげだったら、ファンの名前を返上する。
よかった、演奏スタイルは変わっていない。とにかく丁寧に弾くから、音の粒がグレープフルーツのようにつやつやとジューシーでフレッシュなのだ。3年前にブリュッセルのボザールで聴いた内田光子さんと本家本元のLSOによるとてもアグレッシブなシューマンPコンより、ずっと端正で好みにあう演奏だったのがうれしかった。(ただし、今回の演奏中の彼の表情は内田さんに負けないくらいの百面相になっていた。)この曲が好きになったくらいだ。

話が前後して恐縮だが、コンサートは、若いオランダ人作曲家クリスチャン・ブラハ(1972年生まれ)に依頼して今回が世界初演になる「うつろい」という曲から始まった。彼は、コンサートのテーマに合わせてヘッセの詩からインスピレーションを得たロマン派風のきれいな曲を作った。とかく現在曲は、不気味なのか、一発ぶちかましか、こけおどしか、ぶっ飛んでるのか、いずれかにしか当てはまらないものが多いのに、いまどき珍しいほどのさわやかさだ。

休憩後は、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」から抜粋。これもきれいな曲ばかりで、ソリストのソプラノ2人も若くて美人で、なんだか1晩のプログラム全てが夢のようにふわふわとはかなげで美しく、めったにないほどさわやかな後味だった。
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by didoregina | 2009-01-18 23:57 | コンサート | Comments(0)

ランチコンサート@ドゥルン           水曜はタダよ、その1

今年最初に聴きに行ったコンサートは、ピアノの先生Peter Caelen (ペーター・カーレン)のリサイタルだ。
ロッテルダムのコンサートホールDe Doelen (デ・ドゥルン)では、毎週水曜日の12時45分からランチコンサートが開かれる。
アムステルダムのコンサルトヘボウでも水曜日のお昼は無料コンサートがあるが、だいたいコンセルトヘボウ・オーケストラのリハーサルみたいなものだ。
ドゥルンの場合、入場料は無料だが、アーチストにはギャラが出ると聞いて、弟子のわたしはほっとした。そして、このランチコンサートには、基本的にアーチスト人生で1回しか出演できない。(ソロの場合は1回。他の人と組んだり伴奏したりする場合はその限りではない)
そうと聞いては、応援に出かけなければなるまい。日本人奥様仲間のバービーさんとAmyちゃんもいっしょに行ってくれた。

12時30分ごろホール入り口付近に着いてびっくり。すごい人ごみで行列が外までできている。ええ、これは入場できるんだろうか、とわたしは不安になり、同行の方々は「ペーターってこんなに人気があるの?」と驚いている。
いや、人気があるのはペーターではなく、ランチコンサートのほうなんだが。

押し合いへしあいしながら中に入り、まあまあ音響のよさそうな場所を確保する。ランチコンサートが開かれるのは、大中小のホールではなく、ロビーだが、席は400ほどピアノをコの字に取り囲んでしつらえてある。テーブル席もある。なぜかというと、コンサートの前にタダでコーヒー紅茶が飲めるのだ。
これで、納得。ここに集まった人たちは毎週水曜日の飲み物付コンサートの常連なのである。
最近では、コンセルトヘボウでも、休憩時の飲み物はタダになったらしい。そうでもしないと、集客が難しくなっているのだ。オランダ人はけちで有名だから、タダなら人は集まる。

無料のコンサートのいい点は、聴衆・演奏家ともにその恩恵が受けられることだ。
聴衆にとってオイシイのは無論のこと、演奏家はギャラをもらいながら、普段のコンサートの聴衆とは異なる人を対象に演奏することで知名度を広めることができることのメリットは計り知れない。演奏家にとってとにかく名前を覚えてもらうことが重要なのである。世界のトップアーチストをのぞいて、チケットをさばくのはとても難しいことで、有料のコンサートでも自分で売らないといけない分(つまり買い取り分)のチケット代金を差し引くと、アーチストの持ち出しのほうが多くなる場合も往々にしてあることだ。

400の席は埋まった。紅茶を飲み終わらないうちに、リサイタルが始まった。
曲目は
ドビュッシーの前奏曲集より「沈める寺」と「亜麻色の髪の乙女」
バルトークの「組曲」作品14
ショパンの「バラード1番」作品23
であった。烏合の衆、といってはなんだが、どんな人が聴きに来るのか予測の付きにくい、このようなコンサートには適したプログラムだ。

誰でも聞いたことのある曲で始めて、中間には普通の人はあんまり聞いたことがない現代的な曲を入れて聴衆を教化し、最後はやはりなじみのある曲でクライマックスに持っていく。
この選曲には、不肖の弟子、わたしからも合格点が出た。弟子でありながら、プログラム選曲にはシビアな意見を述べるのだ。

まあ、弟子としては聞きなれた曲の演奏であるので、会場の音響ぐらいしか述べることはできない。

1曲目は、ホールのロビーには音響的にマッチしなかった。深い海の底から沸くような音が響いてこない。(この点に関しては、座った位置も考慮に入れるべきかもしれない。日本でピアノの先生だったバービーさんの意見では、わたしたちの位置では低音はあまり大きく聞こえてこないものだから)

2曲目は、Amyちゃんが買ったペーターのCDにも入っているので、Amyちゃんは喜んでくれた。

3曲目が、わたしにとってのメインである。9月のリサイタルでこの曲を演奏する前にも練習していたのを聴いていたし、そのリサイタルでもかっこよく弾いていたので、安心していた。案の定、この曲を初めて聞く人が多いようだが、結構みなさん「いい曲だね」と言い合っていたから、教化としては成功である。わたしにとっても、バルトークに対して目を開かされるきっかけになった曲なのだ。バルトークにはあまり好きな曲がなかったのに、9月以来好きになった。「この曲わたしも弾きたい」と言うと、「弾けるよ」との先生のお言葉なので、挑戦してみたい。

最後は、ショパンでしめて、クライマックスにもっていった。
演奏時間にしたら全部で30分くらいの短いものだったが、こんなにリラックスできるコンサートもいいのではないかと思った。
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by didoregina | 2009-01-14 22:17 | コンサート | Comments(2)


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