タグ:コンサート ( 140 ) タグの人気記事

米元響子と地元LSO Meet & Greet

LSOというのは、非常に誤解を招きそうな名称であるが、地元の交響楽団Limburgs
Symphonie Orkestの略称がそうなので、いたしかたない。ロンドンのと区別するため地元LSOと呼んでいる。

米元響子さんは、2006年モスクワの国際パガニーニ・コンクールで優勝しているほか、各地のコンクールに入賞している若手ヴァイオリニストである。現在ベルギーにお住まいで、マーストリヒト音大のボリス・ベルキンに師事している。彼女の演奏は、2008年にやはり LSOとのコンサートでプロコフィエフのヴァイオリン・コンチェルト第一番その他を聴いた。昨年、ロシア人実業家が手に入れた3.5億円のグアリネッリを演奏したとかで、日本のメディアを騒がせたらしい。

c0188818_3115056.jpg
2010年 1月 30日 @Theater Kerkrade  LSO o.l.v.Dmitry Yablonsky
Sjostakovitsj Feestelijke Ouverture
Glazoenov Vioolconcert
Sjostakovitsj Symfonie nr.8

ショスタコーヴィッチの「祝典序曲」は、金管楽器が大活躍する、伸びやかで聞きやすいメロディーの短い序曲である。軽い疾走感が心地よく、明るい幕開けだ。
今回のプログラムは、ロシア人作曲家による「祝典と悲劇」がテーマだから、この後は、どんなに暗くなるかわからない。まずは、軽く景気付け。

グラズノフのヴァイオリン・コンチェルトは、初めて聴く曲だ。
プロコフィエフみたいな、難解なものではないかと、戦々恐々として待ち受けていたが、肩透かしというか、意外にも叙情的で聴きやすいものであった。シロフォンとのユニゾンの部分など、心が軽やかになる。
米元さんは、このマイナーなロシアもので、とにかく、聴衆の耳をそば立たせ、目を見開かせてくれた。
まだ若い女性ヴァイオリニストであるから、一人でオケをリードするわけにもいかず、オケとの絡みに少々歯がゆいものを感じていたかもしれない。自我を抑えつつ、クールでありながら叙情性を表現する演奏であった。外見にも音にも、めくるめくような華やかさはないが、深い滋味を感じさせる演奏スタイルが彼女の持ち味であろう。派手でポピュラーな曲とは正反対のこの曲に、あえて挑戦する姿勢にも好感が持てた。技術的には、余裕すら感じさせた。

休憩の後は、いわゆる「タコ8」。戦争がテーマの曲だから、重量級デスマッチともいうべき迫力が予想される。その重い曲の指揮には、やはり重量級のロシア人指揮者が適任というわけだろう。客員指揮者は、この人。

c0188818_3432218.jpg

              自称「相撲レスラー」のデミトリ・ヤブロンスキー。
              ヒールらしい面構えで、百貫目級。

しかし、見かけよりも指揮ぶりは繊細であった。
爆音で押せ押せになるかと思ったら、そうでもなかった。咆哮炸裂する音を期待していた人には、肩透かしであったかもしれない。
しかし、それは、指揮者のせいではない。LSOというのが、もともとそういうオケなのだ。普段から、管楽器にも弦のアンサンブルにも、あまり個性が感じられない楽団である。中庸主義とでもいおうか。全員一丸になって燃えたりすることは、めったにないのだ。
だから、普段より増強した団員で、これでもかと攻めてくるが、パフォーマンスに迫力が乏しい。これが、LSOの実力の限界である。オランダで一流とされるあの楽団とか、かの楽団が、あの指揮者とかで演奏したなら、こうなったかも、などという幻想を抱く方が間違いなのだ。
戦争のヴァイオレンスを激昂して訴えるよりも、その影にある静謐な悲劇性を強調するアプローチだったので、それなりに満足した。爆音だけの下品な演奏にはならなかったのだから、よしとしなければ。

今回のコンサートは、Meet & Greetといって、音楽学校の受講生は、アーチストにお目にかかり、解説やインタビューなど聴くことができる、というのが売り物だった。
米元さんに会って、お話を聞けたり、感想を述べたりできるのかと思って、楽しみにしていた。
ところが、ソリストは早々とお帰りになったのか、終演後の特別イヴェント・ゲストは、指揮者とクラリネット奏者であった。
指揮者の名前などノーマークだった。後半の始まる直前に、「おお、ロシア人か」と思った程度である。全く知らない人に、質問などできるわけがない。

それでも、着物を着ていたので、こちらより先に指揮者のほうから、「こんにちは」と日本語で挨拶してきた。
見よ、着物の威力の絶大さ。そして、わたし達の着物姿を褒めてから、自分は「相撲レスラーみたいでしょう」と言ったのである。
それで、いっしょにお写真など撮らせていただいた。ロシア人にしては、人当たりがフランクで英語が非常に上手い。その後の、経歴説明で、ロシア生まれではあるが、ジュリアード音楽院とエール大学と教育はアメリカで受け、その後西ヨーロッパで活動しているということで、なるほどと思った。
知らない人だから、お話を拝聴するだけで、曲目にも詳しくないから、コメントもできない。残念であった。

クラリネットや、トランペットや、フルートが活躍する場面の多い曲であったから、クラリネット奏者も呼ばれた。
彼は、普段は第二奏者なのだが、本番直前に第一奏者が病気になり、ソロ・パートを1日で勉強して演奏したそうだ。(まあ、1年くらい前からプログラムは分かっていたのだから、クラリネット・パートが重要だとは認識して張り切って練習してはいたはずだ)
ロシア人指揮者とは、月曜日に顔合わせして、3日間のリハーサルの後、木・金・土とコンサート。その日は土曜日で最終だったから、5回のリハーサルを終えて、やはり一番いいできばえで満足したそうだ。

c0188818_4173775.jpg

          泥藍大島に、スカーフのようなモダン柄の塩瀬帯。

c0188818_419121.jpg

          泥大島に、橙色の羽織のバービーさん。
          羽織のポイント柄が、九谷焼の花瓶の写しで華やか。
[PR]
by didoregina | 2010-01-31 20:23 | コンサート | Comments(6)

カーティス指揮オランダ・バッハ協会のコンティ「ダビデ」

このところ着物関連記事ばかりなので、ブログ名は偽りか、との疑念を抱かれても仕方がない。
しかし、ようやく、今年初めてのコンサートに昨晩行ってきた。
コンティのオラトリオ「ダビデ」という出し物は、新春にふさわしいのかどうか分からないが、期待は大きかった。
なにしろ、今シーズンは極める!とマークしたヨハネット・ゾマーが出て歌ってくれるのだ。
コンティの音楽も、実演にめぐり会える機会は少ない。それが、今シーズン終わりごろには、DNOもコンティのオペラを取り上げる。ちょっとしたリバイバルというより、このように日の目を見るのは初めてかもしれない。

c0188818_19231447.jpgFrancesco Bartolomeo Conti
(1682-1732)
- David
Azione sacra per musica
De Nederlandse Bach-
vereniging koor en orkest
Alan Curtis  dirigent
Yuri Minenko  countertenor
(David)
Matthew Brook  bariton (Saul)
Anna Maria Panzarella  
sopraan (Micol)
Johannette Zomer  sopraan
(Gionata)
Cécile van de Sant  alt (Abner)
Marc Pantus  bas (Falti)

初めて聴くコンティのオラトリオだというのに、全く予習をせずに出かけてしまった。
これは、大失敗。舞台上に字幕が出ていないのだ。何を歌っているのか内容意味不明である。
また、コンサート形式だから、各自私物の衣装を着ているため、役柄がどうもよく分からない。
しかし、プログラム・ブックには歌詞対訳が出ているから、それを読みながら聴いている人が多い。彼らは、オランダ・バッハ協会のやり方に慣れている通に違いない。
近くに座っていた知り合いもこれにはあせって、休憩中に急遽プログラムを買い、必死になってあらすじを読み、わたしたちに内容を説明してくれた。そのせいで、彼女はせっかくの飲み物を飲む暇がなく、大半を残したまま、後半開始のベルに急き立てられ座席に戻る羽目になった。

休憩中の泥縄式学習で知った驚異の事実は、こうだった。なんと、ヨハネット・ゾマーはソプラノなのに男役なのだった。道理で、黒のパンタロンに黒白太縞のブラウスという、きりっとボーイッシュな衣装だったのだ。このストライプは、ヴァチカンのスイス衛兵が着ている制服を連想させたので、イメージ的には当らずともいえども、遠からず。

男性歌手は、特に、バスの二人が上手い。特に、サウル王役の人は、顔だけでも感情表現が出来るほど表情豊かで、嫉妬心から疑心暗鬼のサウルとしての説得力がある。
しかし、主役のダビデは、特に前半は弱かった。可愛いとか、女っぽい感じの声質ではなく、かといって男性的でもないから、少年イメージのつきまとうダビデ役には向いていそうなのだが、際立つものがなく、聴衆を唸らせるにはいたらなかった。声も歌唱も個性に乏しく、印象に残らないのだ。
女性歌手では、ソプラノ二人が上手かった。金髪ショートカットで歌い方にも少年ぽさを出しているヨハネット・ゾマーと、赤毛でおばさんっぽい声とルックスのアンナ・マリア・パンザネッラとは、好対照でキャラクター的にいい組み合わせである。
アルトは、全く低音の魅力を感じさせず、この人一人のレベルが低く、足を引っ張る感じだった。

指揮のアラン・カーティスは、マリヤーナ・ミヤノヴィッチ(!)とシモーネ・ケルメス(!!)を歌手に迎えて、「ダビデ」CDを出している。
「この作品を選んだのは、傑作であることに疑いの余地がないからだ。」と豪語しているカーティスだから、作品への惚れ込みようには念が入っているはずだ。もう、コンティの「ダビデ」といったら、彼以外取り上げる人もいないから、一人勝ちのエキスパートだ。
しかし、その指揮ぶりは、淡々としたものだった。白髪のかなりの長身で、堂々とした姿勢も立派で、崩れない。淡々としたシンプルな指揮ぶりでオーバー・アクションとは無縁である。
全体的になぜか(似非)貴族的な雰囲気が漂う。昨晩はその理由がわからなかったが、今、それがなぜかに思い当たった。ヴィスコンティの映画「山猫」のバート・ランカスターそっくりなのだ。口ひげの感じが似てるし、どちらも、貴族っぽさを演じてる様子がどうも胡散臭さを感じさせる。

オランダ・バッハ協会のオケの面々は、きりっと引き締まった音を出す。それが、カーティスの指揮によって引き出されているとは感じられず、彼ら本来のやり方で、いつもどおりに演奏している感じだ。好感が持てた。
アンサンブルはしっかりしているし、全体的に気負いがなく、それでいて、びしっと決まるところは決まっている。先鋭的ではないが、そうかといって濃厚でもなく、だれてもいない。

コンティの「ダビデ」では、トロンボーンとテオルボが効果的に使われる。コンティ自身がテオルボ奏者出身だから、竪琴の代わりに、テオルボを爪弾くのが、ダビデのかきくどくアリアの伴奏になる。サウル王の心を和ませるというクライマックスにこれを持ってくるところが、コンティの作曲家としての面目躍如である。
全体的に曲調がさわやかで、飽きない内容のオラトリオだったし、ヘンデルの「サウル」と対になる名曲と言えるかも知れないと思った。予習しなかった代わりに復習として、CDを買おうと思う。

c0188818_20304543.jpg

[PR]
by didoregina | 2010-01-21 12:33 | バロック | Comments(14)

クリスマス・ガラは仮面舞踏会?

12月はパーティ・シーズンなので、恒例行事があまたある。

5日の晩は、セント・ニコラスの夕べだった。子供たちは皆大きくなってセント・ニコラスの存在を信じなくなったので、特にプレゼントを用意する必要はない。そのかわり、ドイツに住む義弟の家で、チャリティ・(コンサート)パーティをするようになった。
彼らは毎年、クリスマスの時期に、南アフリカとナミビアにヴァカンスに行くのだが、その前にチャリティ・パーティを自宅で催して、現地で孤児に渡す寄付金を集める。
パーティ自体での食べ物は簡素にして、子供達がフルート、ピアノ、キーボードなどを演奏して、招待客から寄付金を募るのである。次男は、映画「アメリー」(および「グッバイ・レーニン」)のサウンド・トラックに使われたヤン・ティーアセンの曲を数曲弾いた。


次男の音楽学校では、ピアノ・クラスの発表会が12月に行われるのだが、今年は、ピアノと弦楽器、管弦楽器、バレエのクラスと合同の「くるみ割り人形」発表会が12日にあった。
c0188818_20201459.jpg

        校長先生自らが編曲・指揮した12曲。
        チェレスタやハープもちゃんと入っていた。


そして、昨晩は、息子達が通う高校のクリスマス・ガラ・パーティだった。
よく、アメリカ映画に出てくる、高校卒業のプロム・パーティみたいなのが、オランダの高校でも最近は盛んだ。スモーキングにロング・ドレスでびしっと決め、お城などのムードある会場を借り切って行う。
彼らの高校では、卒業パーティのほか、同様のドレス・コードのパーティが毎年クリスマスの頃にあるのだ。
c0188818_2151953.jpg

        コンサート後、出演者に一輪ずつ渡されたバラ。


今年は、長男と次男が高3と高1なので、同日にパーティに参加することになり、衣装の面で困った。
長男には、2年前にH&Mで買ったスモーキングがある。彼は中学時代からずっと背が高く、高校に入ったら190センチくらいになり、もう伸びないだろうと思い、スモーキングを買ったのだ。大学に入っても使えるはずだ。
次男にとっては、今年がガラ・パーティ・デビューである。彼は、まだ180センチに足らず、15歳だから、まだこれから身長は伸びるだろう。今買ってしまうと、来年はもう着られないかもしれない。いくら安くてもスーツとドレスシャツ、蝶ネクタイ、カフス・ボタンなどを揃えたら200ユーロは下らない。親にとって、大変な物入りである。また、来年以降は、長男のが着れるかもしれない。

そんな風に頭を悩ましていると、ピアノの師匠ペーターのママから耳寄り情報を得た。
「ヒューゴー・ボスのバーゲンで、ペーターがコンサート用のスーツを30%オフで買ったのよ。ペーターの体型には、ボスのカットがぴったりだから、いつもそこで買うの。」とのことである。
すかさず、「それでは、今までの衣装は?」と聞くと、
「商売着で、結構痛んでるから、コンサートにはもう着ない」と言うので、それでは、貸してもらえないかと頼んだ。
早速、次男と共にお宅に押しかけて、先月まではコンサートなどで着ていたヒューゴー・ボスのスーツ一式を試着させてもらった。思ったとおり、小柄なペーターのサイズは、次男にぴったりである。
靴以外は全て借りることが出来た。
次男は、「こんなブランド物のスーツを着てくるのは僕だけだろう」と、大層喜んだ。
わたしも、肩の荷が下り、ほっとした。

c0188818_2047379.jpg

   今年は、仮面を付けていないとパーティ会場入場不可。
   ヴェネチアの仮面デザインを元に、黒い繻子の帯地で
   仮面を手作りした。
   ブランド物スーツ、H&Mのと共に、しっくりキマッタ。
c0188818_2053177.jpg
ピエトロ・ロンギの描く「賭博場」
  1683年から1774年までヴェネチアのPalazzo Dandoloに開設されていた
  公営賭博場Il Ridottoには、仮面を付けていないと入場不可だった。
[PR]
by didoregina | 2009-12-17 13:03 | コンサート | Comments(9)

着物でペーターとハンスのコンサート@ライクホルト城

北ヨーロッパの冬は暗くて長い。
11月からは、冬時間だから夜明けは遅く日が暮れるのが早まり、雲が分厚いので太陽の顔を拝むことは少なくなる。それが、3月まで続くのだから、気分もどーんと暗くなる。
しかし、コンサート・シーズンは盛りに入るし、年末が近づくとパーティその他のお出かけの機会も増えるから、チャンスを逃さず参加して心を盛り立てるのだ。

冬の抗うつ対策として、一番効き目があるのは、着物でお出かけである。
あれこれ、コーディネートを考えるだけでも、心が華やぐし、絹の着物を纏うというその高揚感。
日本の女に生まれた幸せを噛み締める。
火曜日にはCoCo、木曜日にはアントワープでお寿司、土曜日にライクホルト城でのコンサート、日曜日にディナーと、この週は、4回も着物でお出かけが実現できた。


ピアノの師匠ペーターとヴァイオリニストのハンスのコンサートに出かけるのは、久しぶりだ。
しかも今回は、3曲も新レパートリーのプログラムであるから、聴きに行かずにはいられない。

W.A. Mozart Sonate in e KV 304
F. Busoni Sonate nr. 2 in e op. 36 A
F. Mendelssohn Sonate in f op. 4
J. Brahms Sonate nr. 2 in A op. 100

ブゾーニ以外は、この二人の演奏で聴くのは初めて。
ロマン派がメインのプログラムだが、わたしがやっぱり一番気に入ったのは、ブゾーニのヴァイオリン・ソナタだった。
後期ロマン派以降の、19世紀末から20世紀にかけて作曲されたヴァイオリン曲には、なんともいえない暗い観念が浮かび上がるような情感が漂って、妖しげな魅力がある。
ブゾーニのこの曲には、バッハからロマン派までの様々な要素が入り混じり、一筋縄でいかないから、聴いていて面白いのだ。ブゾーニのピアノ曲など、使われているモチーフが音楽史を俯瞰するかのようで、めくるめく世界に浮遊する心地がして、弾きながら気持ちがわくわくする。

お城の広間にコンサート用グランド・ピアノが置かれ、その前にヴァイオリニストが立つのだが、いわゆるステージはないから、奏者は客席と同じ高さで同じ空間にいる。
客側からすると、親密な音楽空間に身をゆだねることができ、贅沢この上ない気分になる。

ペーター主催のコンサートでは、ずいぶん昔から、休憩中にはコーヒー・紅茶とケーキ数種類が振舞われる。フリードリンク付きコンサートの先駆けである。
音楽会に出かけるというのは、日常生活とは隔離された世界でひと時遊ぶ、という要素も重要だ。休憩中もゆったりリッチな雰囲気に浸りたい。

コンサートの後は、ワインやソフトドリンクが振舞われ、演奏を終えてリラックスした奏者達とおしゃべりもできる。お得感があるだけでなく、社交の楽しさも味わえるのがいい。
知らない客同士も、パーティのようにおしゃべりに興じることになる。北ヨーロッパの冬を乗り切るためには、おしゃべりが精神安定剤の役割を果すほど重要なのだ。
その際、着物を着ていると、特に知らない人から話しかけられることが多い。ハナシの糸口に最適なのだ。(先日、お寿司を食べにアントワープまで出かけたが、着物だとお店の方も喜んでくれ、ちらし寿司の盛りも普段よりよかったようだ)

c0188818_22394073.jpg

     シンディーさんは、白地に臙脂の菊がびっしりと埋まった小紋。
     笛と紅葉が染められた、秋らしい古典的な柄の橙色の塩瀬帯。
     わたしは、黒地に赤の縞の泥大島。去年誂えたもので、自分サイズで
     自分好みの柄だから、着心地がいい。
     帯はネットでゲットしたヒゲ紬に牡丹の素描。季節的には外れてる。
     色半襟に初挑戦。といっても無難にクリーム色の無地。

二人で着物で出かけるときは、事前相談も重要だし、それも着物の楽しみのうちだ。
シンディーさんは着物キャリアが長く、沢山お持ちなので、大体わたしが先に決める。
そうして、色柄や素材が重ならず、お互いに引き立て合うようなものを選ぶのだ。
彼女は、コーディネートに季節感を出したり、演目に合ったものを盛り込むことが多い。

着物でお出かけをはじめてから、もうすぐ2年になる。大人の女の遊びとしては究極のものだし、今ではかけがえのない楽しみだ。
[PR]
by didoregina | 2009-12-01 15:03 | コンサート | Comments(6)

CoCo とバッハと着物 

クイズに当選し、コンサート・チケットが貰えた。
コンチェルト・コペンハーゲンとラトヴィア放送合唱団による、バッハとペルトの「マニフィカト」のコンサートだ。
場所は、エイントホーフェンのフィリップス・ミュージック・ホールだった。

とにかく、タダで行けるというので浮き足立った。平日の夜であるが、貰ったチケットは2枚だから主人も同行するから、車の運転もしないですむし、駐車場はホール地下にあり、外に出ないですむ。着物でお出かけしたいという欲求には、またとないくらいお誂え向きである。
c0188818_22365250.jpg


プログラムの前半は、バッハの管弦楽組曲第1番の合間に、ペルトのMagnificat Antiphonenが挿入されるというものだった。
器楽演奏は、Lars Ulrik Mortensen 指揮のConcerto Copenhagen(略称CoCo)で、モルテンセンはチェンパロを弾きつつ、バッハをかなりのオーバーアクションで指揮していた。
バッハの管弦楽組曲の序曲の後、ペルトのア・カペラ合唱曲の4楽章までを、Sigvards Klavaの指揮で、ラトヴィア放送合唱団が歌う。
それからまたバッハの組曲第1番から3曲が演奏された後、ペルトに交替し残り3楽章が歌われ、最後にバッハの組曲の残り4曲を演奏、という構成だった。

前半のプログラムでのバッハとペルトの曲には、全く共通点も何もなく、ハ長調の明るいバロックの雅な管弦楽曲の合間に、割と深刻っぽいペルトの現代ア・カペラ合唱曲が入る、というわけで、あまり釈然としない構成である。
器楽アンサンブルと合唱団が、それぞれ別の指揮者を伴いながら同じステージに乗ってはいるが、お互いに関連性のない曲目を演奏するから、一方が演奏しているとき、他方は全くの手持ち無沙汰状態である。
このプログラムは、一体どういう意図で企画されたんだろう、と思わず突っ込みを入れたくなるほど音楽的には水と油で、まるで瓶の中でくっきりと上下に分かれ、一体化していないドレッシングみたいだった。

ラトヴィアはバルト3国のひとつであり、ペルトはお隣のエストニア出身の作曲家である。
きっと、エストニア語なんて難しいから、多分言語学的にかなり近いラトヴィアの放送合唱団なら、歌いこなせるにちがいない、という観点で選ばれたんだろうと思った。
しかし、ペルトのこの「マニフィカト」の歌詞は、ドイツ語なのであった。
謎はますます深まるばかりだ。


最近オランダの大手コンサート・ホールで流行中で、いい傾向だと思うのは、休憩中の飲み物はタダ!というサーヴィスである。飲み物の注文に必死にならずに済むので、客同士和気藹々、鷹揚とした態度でいられて、実によろしい。
そうでないホールでは、好みの飲み物をなるべく早くゲットしたい、と誰もが思うので、列はあって無きが如し。ベルギーのおばちゃんたちは横入りが大得意だし、でかいオランダ人のオヤジなんかだと、人の頭越しに後ろからずうずうしく注文したりする。モネ劇場のフォアイエは阿鼻叫喚の巷と言っても大げさではなく、単に飲み物を注文するだけなのに闘争心を剥き出しにしなければならず、精神衛生上よくない。
フィリップスの場合、タダだというのに飲み物の種類が豊富であるのも驚いた。通常、赤・白ワイン、ジュースやソフト・ドリンク、ビール、紅茶・コーヒーといったところだが、季節限定スペシャル・ビールのボック・ビールなど、なかなかポイントが高いラインナップだ。
c0188818_231055100.jpg


休憩の後は、バッハの「マニフィカト」で、CoCoと合唱団とソリストたちが舞台に集まった。合唱の指揮者は、もう登場しなかったから、安堵した。前半同様、指揮者が2人だったらどうしようかと思ったのだ。

バッハの「マニフィカト」に関しては、まだ当方の心の準備および勉強不足なので、ほとんどコメントすべきことはない。
というか、指揮者のモルテンセン一人で盛り上げようと一生懸命だったが、ソリストにも印象的な声の持ち主がいないから、全体としてあまり心に残らない演奏だった。
ただ、やはり危惧していた通り、このホールの無機質的な音響(残響が少ない)は、全然バッハ向きではない、ということだ。
天井以外は全て多分ブナの木材を用いて、見た目はいかにも柔らかで暖かそうな音響という印象を与えるホール内装なのだが、実際は、つれなき乙女、といった感じで、とっても冷たいのだ。思いも音も、どこかに吸収され奪いつくされるようで、返ってくるものがない。

「受難曲」やカンタータなどは、やっぱり教会で聴くのが好きだ。
今シーズンは、「ヨハネ」と「マタイ」の両方とも、聴きたいソリストやアンサンブルや指揮者のがこのホールで予定されているが、はたしてどんなものになるのか。

c0188818_23132882.jpg

      着物は、オレンジがかった香色の万筋。
      江戸小紋は柄が極端に細かいので、
      かなり近寄らないと、無地にしか見えない。
      川島織物の綴れの洒落袋帯を合わせて
      江戸小紋をカジュアルに着てみた。
      パステル・カラーのグラデーションで
      メルヘン調の風景が織り出されている。
      前帯は、パステルカラーの縦縞。
      
[PR]
by didoregina | 2009-11-27 15:25 | コンサート | Comments(26)

トリスを飲んでハワイに行こう!

20世紀の夢をくすぐるコピーの傑作は、寿屋(現・サントリー)のトリス・ウィスキーに付けられた、これだ。後に作家になった山口瞳が、1961年に作ったものだ。さすがに、CMやコピーの実物は見たことがないが。

当時の庶民にはとても叶わぬ夢を誘う甘美な響きがあり、企業のマーケティング戦略としては先駆的で優れていると思う。
こういうコピーには、わたしは弱い。

今年は、日蘭修好400年だそうで、日本やオランダで地味なイベントがあったり、記念コインが発売されたりした程度の低調な盛り上がりをみせた。
また、ハドソンがニューヨーク(当時のニューアムステルダム)発見したのが400年前でもある。
その記念として、オールド・アムステルダムというチーズが、記念エプロンを作った。帆船の絵が描かれた黒いエプロンは男性的で、料理が趣味の我が家の男性たちにはぴったりだ。
チーズについているクーポン3枚を貯めると、もれなく当る、というもので、チーズ・フェチの我が家では、500グラムのチーズ3つ買うことくらい屁でもない。
それが、今日届いた。真っ黒のエプロンというのもなかなかによろしい。
もれなく当って、とってもうれしい。

コンサート・ホールや歌劇場、市民劇場なども、この不況の中、マーケティングには懸命に励んでいる。
チケット売れ行きのよろしくない出し物の場合、安売りオファーが来るのはよくあることだ。
また、毎週とか隔週に、クラシック系TV・ラジオ局からもメールで様々なお知らせが来る。
そこには大抵、クイズに当ててコンサートに行こう!とか、CDが当る!というのがあって、グーグルで簡単に答えが見つかるような質問なので、毎週応募している。
ちなみに今週は、サンドリーヌ・ピオーが音大で学んだ楽器は何かという質問で、正解を出して抽選に当たれば、彼女の最新ヘンデルCDが当るというものだ。
8月から毎週のように応募しているが、今日、初めて当選した。
エイントホーフェンのフィリップス・ミュージック・センターで来週火曜日に行われる、コンチェルト・コペンハーゲンとラトビア放送合唱団による、バッハとペルト(!)のコンサートだ。
もう、いつ応募したのかもクイズの質問内容も忘れたが、ユトレヒト古楽祭が提供してくれたものらしい。通常32ユーロプラス手数料1ユーロのチケットを2枚くれるんだから、有り難い。

それから、懸案だった来年のホランド・フェスティヴァル演目に関しても、ダイレクト・メールが届いた。例の、ウィリアム・クリスティー、レ・ザール・フロリサン、トリシャ・ブラウンのコラボによるラモーの「ピグマリオン」舞踏オペラ版世界初演!というもので、場所はアムステルダムのカレ劇場、日時は6月13、15、16日だ。ソリストに関しては情報がまだ出ていない。チケットの値段は、20から80ユーロまで。いい席を確保したいなら、なるべく早く申込書を送り返すようとの指示である。特に安くはしてくれないようだ。
いずれも夜の公演なので、ちょっと行くのが難しい。
c0188818_4584564.jpg

   ブラウン女史は、またしても歌手に難しい振りをつけるのか、
   それともダンス・カンパニーの団員だけが踊るのか。。。
   レ・ザール・フロリサンのCD「ピグマリオン」では、
   アモール役がピオーだから、彼女が舞台でも歌ったらいいなあ。
[PR]
by didoregina | 2009-11-20 21:06 | コンサート | Comments(14)

教会でのコンサートと芸術のお値段

聖セルファース教会で、なかなかに気骨のありそうなチャリティ・コンサートがあることを知り、興味を持ち、出かけた。
ローマにある、オランダ・ベルギーおよび北部ドイツからの巡礼のために400年ほど前に建てられた、通称フリース教会の修築費用供出のために、有志が結成した合唱団によるカトリック教会音楽のコンサートだ。
c0188818_5294188.gif

            ローマのフリース教会内部

この教会は、サン・ピエトロの筋向いの建物の奥、階段を登った場所にひっそりとあり、知っている人しか訪れそうもないが、オランダからの巡礼には親しまれてきているそうだ。

寄付金集めのために全国5箇所でコンサートを行い、その最後のがマーストリヒトだった。
プログラムは、グレゴリア聖歌から始まり、ジョスカン・デ・プレから現代に至るオランダ人作曲家によるカトリック音楽の流れを辿るものとなっている。

c0188818_681584.jpg

          会場となった聖セルファース教会の主祭壇

復活祭・昇天祭・精霊降臨祭のグレゴリア聖歌に続いて、ジョスカンとまた別の作曲家による16世紀のポリフォニーのあとは、ぐっと時代が現代に近づき、いきなり20世紀である。20世紀のオランダ人カトリック作曲家の名前なんて、誰も知らないだろうし興味もないだろうから、ここには書かない。それが10人も続いた。
それらは、主に合唱曲で、メゾとバスによる独唱曲も少しあった。そして、合間にオルガン独奏曲も入った。20世紀オランダのカトリック音楽は、いずれもラテン語の歌詞でくどくどとキリストやマリアを讃える内容で、音楽にもあきれ返るほどオリジナリティーが乏しく、16世紀からほとんど進歩していないように聞こえた。

c0188818_6272282.jpg


その中で異質だったのは、なぜか真ん中と最後に歌われたポーランドの現代作曲家グレツキのTutus tuusと O Domina nostraで、これはわたしの好きなミニマルな聖歌であるが、その独創性には、他の曲と比べると天と地ほどの差がある。さすがに、世界的に活躍しているのも故なしではない。
歌詞はたった一行で、音楽もミニマルなのに、そのインパクトの強さと美しさは秀でている。言わずもがなの賛美は無用、とばかり、「おお我らの神よ」と「マリア様、わたしは全てあなたのものです」というタイトルがほぼそのまま歌詞になっているだけだ。それが、劇的に高揚する音楽とぴったりとあって聞き手の胸に迫る。

最後から二番目に、1962年生まれのオランダ人作曲家Aart de Kort によるLaudate Dominumが、作曲家自身によるオルガン演奏で歌われた。この曲だけは、面白かった。わたしと同年代の作曲家によるこの曲は、エマーソン・レイク・アンド・パーマーの「タルカス」そっくりで、かっこいいのだった。現代オルガン曲は、不協和音やとんでもない効果音ばかりでがんがんと頭を殴られるような気分になるものも多いが、この曲はなかなか感じがよかった。

c0188818_651732.jpg

         聖セルファース教会のパイプオルガン

さて、寄付金としては、いくらが妥当であろうか。
払う額は、個人の思惑に委ねられる。わたしは、コンサート内容に妥当な額と踏んで3ユーロ払った。お札で払っている人も結構いた。

c0188818_628442.jpg

     教会の外に出たら、絶妙のタイミングでカリヨンが鳴り出した。
     バッハのマーチだった。

芸術作品やコンサートなどに払う金額には、相場と思えるものがある。しかし、安ければ安いに越したことはない。
その相場が、一般の常識と非常に隔たっているのが現代アートの世界だ。デミアン・ハーストなんて、今年も現代アート長者番付トップだろう。また、ゴッホやセザンヌ、モネなど印象派の絵も競売に出されるとあいも変わらず高値を呼ぶ。

おかしいのは、気に入って目をつけていたアーチストの作品が、その後ぐんと高値になった場合、買える訳もないが、「やはり、わたしの目は確かだった」などと思い、なんとなく満足・納得してしまう自分だ。
ピーター・ドイグの展覧会をボネファンテン美術館で観たのは7,8年前だと思う。冷たくしんとした空気が感じられて気持ちがよく、ブライアン・イーノの音楽が聞こえてきそうな素敵な絵の数々に引き込まれた。それが、2年前から、押しも押されぬ高値の付く画家になってしまった。先日も、彼の絵はまたまた予想以上の値で売れた。うれしいような、悲しいような気分である。
ナイジェラ・ローソンの旦那さんのチャールズ・サーチのギャラリーに、彼の絵がいくつか所蔵されている。

c0188818_6325350.jpg

       オランダ最初の司教、聖セルファース。
       4世紀に亡くなった彼の墓の上に建てられた
       聖セルファース教会は、オランダ最古。
[PR]
by didoregina | 2009-10-29 22:39 | コンサート | Comments(8)

聖母教会でのコンサート顛末記

c0188818_1832477.jpg

ヨハネット・ゾマーが、秘密の無料コンサートをわが町の聖母教会で行う、という情報を独自にキャッチして以来、本当に誰でも無料で聴けるのかとかいう不安が、ずっと付きまとった。

だから、前日に教会まで下見に出かけた。すると、入り口正面、他の業務連絡・お知らせの張り紙に埋もれていたポスターが、立て看板に張り出されている。そして、手書きで20:00と書き加えられている。教会関係者が、わたしのブログを読んだとした思えないような、見事な対応である。
c0188818_18354689.jpg


会場となる聖母教会は、オランダで2番目に古いもので(1番古いのは、やはりマーストリヒトにある聖セルファァース教会)、ちょっと変わったロマネスク建築である。
c0188818_18392998.jpg

   後陣脇の塔上部に、菱形が組み合わさって乗っかってるのが、ラインランド風。
         近くから見上げると、アシンメトリーで不安定に見える。

c0188818_1846236.jpg

         正面は城砦のようで、厳つく、取り付く島がない印象。

c0188818_18502188.jpg

          正面左脇の、海の星チャペルが教会入り口。

c0188818_18522227.jpg

          赤子のキリストを抱いた可憐なマリア像の前には、
          お祈りの人とろうそくの炎が絶えない。
          お祈りの人の邪魔にならないように、外からそっと撮影。
          マリアとキリスト像は、小便小僧なみに衣装持ち。

マリアに捧げられたこの教会が、ローマ教皇によって以下の特権を付与されたバシリカになったのが75年前で、それを記念してのコンサートのために、ヨハネット・ゾマーが呼ばれたのだ。

ここでいうバシリカとは、建築様式のことではない。格上げされた教会のことである。
「一般の教会堂より上位の教会堂として扱われる権利」
「オンブレリーノ(主祭壇に向かって右手に通常置かれる教皇専用の傘)を備える権利」
「ティンタナバラム(教皇を象徴する鈴)を備える権利」 
「政務日課において、聖堂参事会が、特に格式の高いものとされている儀式用の衣装である大カッパを着用する権利」 
                   以上ウィキペデシアのバシリカの項より抜粋。 

そういう特別コンサートならば、なぜ大々的に宣伝しないのか、疑問は残ったままである。
町なかにポスターは見かけず、教会入り口に張り出されているのが1枚だけだし、コンサート詳細は、教会HPを見ない限りわからないのだ。

ともあれ、叔父叔母や日本人の方にも声をかけた。念を入れて、コンサート開始30分前に入り口で待ち合わせた。入場してみると、まだ中には数人しかいない。開始時間になってようやく100人くらい集まっただろうか、という程度である。
前から3列目、正面通路脇に陣取った。祭壇の下に敷かれた1畳くらいの絨毯がステージ代わりで、向かって右側に伴奏のテオルボ奏者のための椅子と譜面台が置かれている。

まず、祭壇上で主催者の教会参事が、コンサートの趣旨を説明した。以下、その概略。
バシリカ75周年記念と塔の修復費集めのため、地元の詩人でありマーストリヒト大学文学教授が詩を作り、朗読するから、コンサートの後で、彼のサイン入りの詩のポスターを寄付として買って欲しい。
コンサートで歌われるのは、マリアを讃える歌で、初期・中期・後期バロックの音楽の珠玉を集めた。ソプラノ歌手ゾマーとテオルボのフレッド・ヤーコブスは、コンビを組んで久しく、世俗曲のCDは数枚出しているが、この二人で宗教曲を演奏するのは実に始めてであるそうだ。

c0188818_19314427.gif












Johann Hieronymus Kapsberger (ca.1580 - 1651)
Ave Sanctissima Maria
Sancti Angeli
Passacaglia

Claudio Monteverdi (1567 - 1643)
Salve, Regina
Pianto della Madonna
Laudate Dominum

Heinrich Schutz (1585 - 1672)
O susse, o freundlicher
Ich wil den Herren loben allezeit

Nicolas Hotman (voor 1604 - 1663)
Passacaille

Marc-Antoine Charpentier (1643 - 1708)
Alma Dei Creatoris
Salve, Regina
Stabat Mater Dolorosa

Robert de Visee (ca. 1660 - na 1732)
Chaconne

Henry Purcell (ca. 1659 - 1695)
Evening Hymn

2,3曲モテットやカンタータを歌った後で、テオルボ独奏のパッサカリアやシャコンヌなどが入り、詩人自身による詩の朗読、という繰り返しだが、確かにバロックの長期・広範囲にわたる、マリアを讃える歌を集めた構成だ。
ゾマーは、黒と白の太縞ストライプのショート・ブラウスに引きずる長さの黒のロングスカートといういでたちで、教会でのコンサートにふさわしいシックでエレガントな姿。いつも変わらぬ、甘い味わいの耳に優しい歌声を聴かせてくれる。
テオルボのヤーコブスの独奏も聴かせる、というのは、非常によろしい。そうでないと単に伴奏者みたいになってしまって影が薄くなる。

かなり変化に富む曲目と内容で、普通のコンサートよりは短いが、これがタダでいいんだろうか、といぶかった。寄付金を集めるのが目的なら、もっと大々的に宣伝したらいいし、ライブ録音してCDとして売り出したらもっとよかろう。このコンビによる宗教曲演奏は初めてだというし、合間に詩の朗読も入り、特別色は濃いのだから。

ゾマーのサイトを見ると、カッチーニ他の曲目と書いてあるが、当日カッチーニの曲は歌われなかった。
カッチーニの「新しい音楽」は、彼女もCDを出しているからナマで聴きたかったが、コンサートのテーマはマリアだから、歌うとしたら「アヴェ・マリア」になっただろう。この、カッチーニ作と言われる「アヴェ・マリア」は、恐ろしくゲテモノ的で趣味が悪く、苦手である。彼女がこの歌を歌ってくれなかったことに感謝する。

最後の締めは、パーセルだ。世俗曲のリサイタルだったら「しばし楽の音に」を歌ったに違いないが、マリアがテーマとあって、やはり夕べの賛美歌が妥当だ。彼女の甘い声で歌われる英語の歌は、ぞくぞくする。

皆口々に「心が洗われたわね」と満足して教会を後にしたが、集まった面子に元祖バッコスの信女達3人がいたから、「精進落とし」と称して、夜の街に繰り出し、タパス・バーで夜更けまで盛り上がった。

       
[PR]
by didoregina | 2009-10-18 13:11 | バロック | Comments(4)

無伴奏リコーダーの饗宴       演奏中のXXX厳禁

c0188818_22363730.jpg2009年9月15日
フランドル楽派の曲集 (フォルムシュナイダー写本「3声曲集」より)
リチェルカータ (ジョヴァンニ・バッサーノ)
2つのファンタジア (ゲオルク・フィリップ・テレマン)
ソナタ 変ロ長調 (ゲオルク・フィリップ・テレマン)
無伴奏フルートのためのシランクス (クロード・ドビュッシー)
ソナタ5番 変ロ長調 (ジョセフ・ボダン・デ・ボワモルティ)
はやく座って (クリストファー・タイ)



出演: ヴァルター・ファンハウヴェ
田中せい子
ダニエレ・ブラジェッティ

さわやか革命さんのマイナー・コンサートのお知らせに載っていたので、リコーダーのコンサートに行ってきた。ルネッサンス、バロックおよび20世紀のリコーダー曲ということで、興味を持ったのだ。
場所は、浜松の楽器博物館で、恒例のレクチャーコンサートの一環であった。

ヴァルター・ファンハウヴェは、フランス・ブリュッヘンよりは10歳以上若そうなオランダのリコーダー奏者だが、昔は、「サワークリーム」でブリュッヘンといっしょに活動していたそうだ。
田中せい子女史はファンハウヴェの弟子で、ブラジェッティ氏は、ミラノで田中女史とデュオを組んでいる。

前半の4曲は、ルネッサンスおよびバロックの曲(トリオとソロ)だったが、集中して演奏を聴くことができなかった。それは、以下の理由による。

地下の楽器展示室の一角にしつらえられたステージから2,3メートルほど離れた、最前列中央の席に座ったのだが、隣の小学校高学年もしくは中1くらいの男の子が、演奏が始まったとたん爆睡して、しかも、上半身を激しく前後左右に揺さぶるのだ。わたしの体にぶつかるし、もし、前に席があれば椅子の背に頭をひどくぶつけただろう。最初は、音楽にあわせて体が自然に動くのかと思ったが、平日の夜、オヤジに連れられて部活の後にやって来たコンサートで、日中の疲れが出たのだろう、演奏開始と同時に眠りこけたのだった。
演奏家の目の前だし、演奏してる人や、後に座った人たちはどう思っただろう。きっと、みんなわたしのことを非常識な母親だと思ったに違いない。というのは、その男の子は、清涼飲料水のペットボトルを持っているのを係員に見咎められ、かばんの中にしまわせられ、ついでに隣でガムをかんでいたわたしも、注意を受けたのだ。たしかに、「演奏中、会場での飲食は固く禁じております。」とアナウンスが入ったが、ペットボトルは持っていただけだし、ガムは演奏が始まる前に捨てるつもりだった。こんなに厳しいチェックの入るコンサート会場は、初めてだった。
それなら、「演奏中の睡眠はご遠慮願います」とでも、言ってもらいたかった。この男の子のおかげで、まったく演奏に集中できなかった。しかし、演奏が終わると同時に目が覚め、拍手をするとまた爆睡、という繰り返しは、お見事であった。

レクチャーコンサートだから、説明のトークが入る。今回が90回目という盛況のレクチャーシリーズで、反対側の隣に座った常連らしき人たちが、熱心にメモを取っているのにも、驚かせられた。
ファンハウヴェ先生の英語によるレクチャーを弟子の田中女史が日本語に訳す。楽器の種類や、どういう曲かとかを簡単に説明する程度で、まあ、レクチャーと言うほどの内容でもない気もしたが、とにかく、拝聴すべし、という雰囲気の横溢したコンサート会場だった。ガムなんか噛んでたら、国賊扱いだ。

休憩中は、暇なので、楽器博物館の展示物を見ていた。コンサートチケットを持っていると、当日は博物館もタダで入場できる。
レクチャーコンサートとはいえ、2時間びっしりと演奏とトークがあるのに、お値段は2000円と、とてもお得なお値段だ。定員100名限定で、当日は、丁度100席埋まったそうだ。リコーダーという楽器は、演奏人口は多いだろうが、この楽器だけのコンサートは、結構マイナーなものではないだろうか。

後半は、ドビュッシー作曲のモダンフルートのための曲でスタート。これが、なかなかいい。
ドビュッシーのピアノ曲、オーケストラ曲とオペラ以外のものには、ほとんどなじみがないが、あまり20世紀らしくない印象である。パンとシュリンクスの物語にちなむ曲だから、たしかに笛のソロにはぴったりだ。

ボワモルティエのフラウト・トラヴェルソのためのソナタも、リコーダー3本で演奏だ。3人の息が文字通り合って、目線を交換しアンサンブルを整えているのが見て取れ、楽しい3重奏である。

最後のタイの「はやく座って」は、ルネサンスの曲だが、複雑なポリリズムが20世紀的で、聴いていてこれが一番面白かった。
解説によると「ある声部が2拍子で動いている時に、もう一つの声部は3拍子で動くという作曲法で、極端な場合には、5拍子対4拍子、7拍子対6拍子といったような非常に複雑なポリリズムが発生します。このような箇所は聴いていても混沌として分かりづらいのですが、その後必ず各パートが同一の拍子に戻るセクションが置かれていて、そこに到達すると大きな安堵感と安定感を感じることができます」とのこと。

ファンハウヴェ氏はトークで、「ヤマハ製のあるリコーダーで、自分の持っているものと同タイプが製造中止になったのが惜しい。木材がメープルのため割れやすいという理由から、もっと堅いオークにモデルチェンジになったが、色や木肌の感触が異なり、音質もメープルのほうがいいから、ぜひ世界中の演奏家のために再製造して欲しい。ヤマハの品質は優れ、プロが使うシェアは非常に大きいのだから」と本音も語った。浜松は、楽器の町で、ヤマハの本拠地である。

コンサート終了後、演奏家に挨拶に行った。そこには、ヤマハ関係者の方たちもいらっしゃった。ファンハウヴェ氏はまたも、件の楽器の再発売のお願いをしていた。「自分が使った限り、割れやすいという問題はなかったのだから」と。

わたしは、「オランダから、聴きに来ました。リコーダーだけのコンサートは初めてですが、後半の3曲が特に素晴らしかった。ルネサンスの曲も20世紀の曲も、思いがけないほど複雑で美しく、目が開かれた思いです」などと、ファンハウヴェ氏に話した。氏は、そうですか、ありがとう、そう思いますか、と相槌を打ってくれたが、インタビューになりそうな、面白い話は聞けなかった。
レクチャーのトークを聴いた印象でも、あまり話すのは得意ではなさそうだったから、わたしは自分の感想を述べただけで、またお会いできますよう、と言って別れた。
[PR]
by didoregina | 2009-09-25 17:49 | コンサート | Comments(6)

吉原つなぎでパーティに

ピアノの師匠ペーターのご両親の結婚40周年パーティに招かれた。
一人っ子のペーターが全て密かに企画したもので、昼は親戚総勢20人ほどの昼食会、夜は80人招待してのコンサート兼パーティである。

昼食会は、サミットでよく使われるお城シャトー・シント・ゲルラッハで、ゴージャスなものだったようだ。夜の会場は、毎度おなじみ、ペーター主催のコンサート会場でわたしがピアノのレッスンも受けているライクハルト城だ。
c0188818_21122787.jpg


この時期は、暑くなったり寒くなったりで、着ていくものに悩む。当日は、夕方から日が照りだして妙に暑くなったので、浴衣を着物風に着ていくことにした。お酒やおつまみが出る立食パーティだから、絹の着物は避けたいところなので、丁度よかった。
c0188818_2128742.jpg

        吉原つなぎの浴衣にパープル系の博多献上帯。
        パーティの終わる頃には、衿がはだけてしまった。 


こういうパーティ(結婚何周年記念とか50歳の誕生パーティとか)では、まず入り口付近に祝われる側が立ち、招待客は、キスして挨拶しプレゼント(もしくはお金)を渡す。
オランダらしいというのか、ちゃっかりしているというのか、この15年くらいは、結婚式やこの手のパーティ招待状には、大抵の場合、封筒マークが印刷されているのが興を殺ぐ。封筒にお金を入れたものをプレゼントしてくださいと、アピールしているのだ。
ペーターからの招待状には、そんなはしたないマークは印刷してなかった。そうするとまた、プレゼントに悩むのである。ご両親には事前に何も知らせないサプライズ・パーティなので、ペーターに問い合わせると、「お金よりは、心のこもった物のほうがいい」とのことなので、オペラのDVDにした。彼ら一家はオペラ好きで、リエージュのオペラ座で20年くらい定期会員になっていたのだ。
しかし、当日、目にした限りでは、皆ほとんど封筒を手渡していた。うーむ、やはり、難しい。どうでもいいようなものをもらっても困るから、お金のほうが誰だってうれしいだろう。

お客は、そのままお城の玄関ホールで、飲み物を飲んでおしゃべりしながら全員集まるのを待つ。
招待客が全員揃ってから、ピアノのあるサロンに移り、コンサートが始まった。
c0188818_2142945.jpg
Schubert   Landler D790
A. Dietrich/Brahms/Schumann
FAE-Sonate
Kreisler Liebesleid, Liebesfreud
Liszt Reminiscences de Norma

最初のシューベルトと最後のリストは、母親Eが大好きな曲で、ピアノによる独奏。
真ん中の3曲はヴァイオリン・ソナタである。
ペーターと長くコンビを組んでいるヴァイオリニストのハンスが、登場。
これもご両親には秘密にしていた。
クライスラーの曲は、結婚40周年にふさわしいタイトルだ。


いつもコンサートでは、入り口のドア付近の補助席みたいなところに座っているご両親だが、今晩は主役だから、ピアノを真正面に見るいい位置が用意された。
c0188818_21393451.jpg


ほとんど普通のリサイタルの半分くらいの量のコンサートの後、一旦玄関ホールに出てまた飲んでるうちに、サロンからはピアノと椅子がのけられ、シャンペンとケーキの用意ができた。
c0188818_21441912.jpg

      いつもは殺風景な鏡の前や窓際にもフラワーアレンジメント。
      ペーターが密かにフロリストに頼んだものだ。
      ウエディング・ケーキはラズベリーとアーモンドで美味。

ここでようやく、乾杯して、その後は夜が更けるまで招待客同士歓談する。お酒はふんだんに振舞われるし、つまみもどんどん運ばれて来るし、自分でとって来てもいい。久しぶりに会う古い友や遠くから来た知人とのおしゃべりで、居心地がよかったので、わたしは招待客全員が帰ってから、ようやく御輿を上げた。

c0188818_2149402.jpg

          桐草履を脱いで、見せているところ。

吉原つなぎは、江戸っぽくていかにも母好みの模様だ。ちく仙(ちくは竹冠にニ)のだと思う。
去年、わたしのために誂えてくれたのだが、この柄を見て、一瞬ぎょっとした。日本では素人女性には、ちょっと着にくい。
もともと、吉原の引き手茶屋の暖簾に使われたという柄だから、粋な歌舞伎役者なんかが好む。
この柄の由来をガイジンに説明する時には、少し汗をかく。
旅館の浴衣なんかによくある白地に細かい柄とは、色も雰囲気も異なるので、この浴衣は着物として着るのが好きだ。

ビートルズ来日時に、飛行機から降りたとき着ていた半纏の模様も、吉原つなぎだったと、いせ辰のHPに書いてあった。
[PR]
by didoregina | 2009-09-07 15:09 | 着物 | Comments(6)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28

プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


最新のコメント

Vermeerさま、多分..
by レイネ at 01:38
トマスのソロ・コンサート..
by Vemeer at 01:25
Vermeerさま、この..
by レイネ at 20:56
詳細なレポート、楽しく拝..
by Vermeer at 18:02
ロンドンの椿姫さま、それ..
by レイネ at 17:03
大満足のマスタークラスで..
by ロンドンの椿姫 at 23:41
鍵コメさま、ヴェロニカ・..
by didoregina at 18:57
Mevrouwさま、北海..
by レイネ at 18:46
レイネ様も怒涛の更新で、..
by Mevrouw at 23:33
Mevrouwさま、サー..
by レイネ at 22:10
Mevrouwさま、夏の..
by レイネ at 22:05
新作オペラに挑むのは本当..
by Mevrouw at 20:56
クロアチア~ベネチアを自..
by Mevrouw at 20:27
Mevrouwさま、ご高..
by レイネ at 20:19
ようやく一息つける日なの..
by Mevrouw at 19:57
Mevrouwさま、癒し..
by レイネ at 16:49
このところネットからも音..
by Mevrouw at 16:37
斑猫さま、もうすでにパリ..
by レイネ at 16:57
ロンドンの椿姫さま、まさ..
by レイネ at 16:54
こんにちは CT研究会..
by 斑猫 at 00:16

以前の記事

2017年 11月
2017年 10月
2017年 08月
2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月

タグ

最新のトラックバック

究極の愛を描いたワーグナ..
from dezire_photo &..
バッハが人類に残したメッ..
from dezire_photo &..
バッハが『ロ短調ミサ曲』..
from dezire_photo &..
ルター派のプロテスタント..
from dezire_photo &..
ダンテの『神曲』 ”地獄..
from dezire_photo &..
ポン=タヴァン派、総合主..
from dezire_photo &..
倉冨亮太さんの繊細な美し..
from dezire_photo &..
ダイナミックで刺激的な多..
from dezire_photo &..
贅沢と快楽に生きる娼婦な..
from dezire_photo &..
バッハとヘンデルの音楽性..
from dezire_photo &..

カテゴリ

全体
バロック
映画
オペラ実演
オペラ映像
オペラ コンサート形式
着物
セイリング
コンサート
美術
帽子
マレーナ・エルンマン
イエスティン・デイヴィス
クイーン
CD
20世紀の音楽
旅行
料理
彫金
ビール醸造所
ベルギー・ビール
ハイ・ティー
サイクリング
ダンス
ハイキング
バッグ
教会建築
カウンターテナー
演劇
未分類

検索

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

音楽
映画

画像一覧