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Trishna   トリシュナがテスなら、ジェイは?

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Directed by Michael Winterbottom
Screenplay by Michael Winterbottom
Based on Tess of the d'Urbervilles by
Thomas Hardy
Starring
Freida Pinto (Trishna)
Riz Ahmed (Jay)
Music by Amit Trivedi, Shigeru Umebayashi
2011
United Kingdom


ウィンターボトムの新作であるが、なぜかあまり評判が芳しくない。トマス・ハーディの『テス』の
翻案・映画化とはっきり銘打って、舞台を現代のインドに置き換えたものだ。
こういう読み替えには、非常に興味を覚える性質であるから、早速、観に行った。
(日本では、昨年の東京映画祭で一足先に上映されているが、ヨーロッパでもイギリスでも今)

『テス』といえば、ナスターシャ・キンスキ主演のポランスキー監督作品が、誰の脳裏にも鮮明に
焼きついているだろうから、あえて新作を作るならば、魅力的な新人女優を起用しての、新鮮な
映像でイングランドの美しい自然を映し出すオーソドックスなアプローチか、この作品のように時代と
舞台を置き換えるという手法を取らざるをえないだろう。

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田園と都会、自然美と退廃、貧乏人と金持ちという対比は、ハーディの原作でも映画化された2作
でも、主要人物によってはっきりと体現されている。
トリシュナ(=テス)は田舎の下層階級の見目美しく心もピュアな女の子、ジェイ(=アレック)は
金持ちの道楽息子という図式はそのまま当てはまるが、はてエンジェル・クレアは?
ウィンターボトムの映画には、テスが心から愛する無垢な魂の象徴であるエンジェル・クレアが登場
しないのだ。

受身と服従の生き方に慣れて自我を主張しないトリシュナは、テスそのままである。
しかし、ジェイはアレックのように単純にいやなヤツではない。少なくとも最後の方になって金持ち男の
エゴと退廃の極みを象徴するようになるまでは。
トリシュナだって、スマートなジェイの魅力にハマリ、都会での同棲生活も楽しんでいた。
イギリス育ちのジェイは好青年ですらあり、アレックとエンジェル・クレアの両方のパーソナリティを兼ね
備えている。そこがこの映画のなかなか新鮮な点であるが、観客には分かりずらい点でもあろう。
性格的に一筋縄でいかない人物像は現代的なのだが、善悪が一緒くたになっているので、トリシュナ
の理解をも超えてしまい、憎しみへと変化し悲劇にいたるのだ。

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オックスフォードで英文学を学んだウィンターボトムであるから、ハーディの原作にも単なる思い付き
アイデアで臨むなどという訳はなく、説得力のある仕上がりになっている。
なによりも、インドの自然や都会やマハラジャの宮殿ホテルなど舞台背景が、いかにもイギリス人から
見たエキゾチックな絵柄になっていず、まるで、本格的ボリウッド映画を思わせるほど土や草やお茶
やスパイスの匂いが感じられていい。
そして、役者の演技もとても自然で、好感を持たせるものだ。トリシュナ役は、『スラムドッグ・ミリオ
ネア』のあの可憐なヒロイン役だったフリーダ・ピントで、さりげない演技が光る。まるで、演技して
いないかのように自然な振る舞いだ。しかし、逆に言うと、トリシュナの内面の葛藤描写があまりにも
そっけなさすぎ、言葉も少なすぎて(西洋人には多分)分かりにくいという弱点がある。
だから、ラスト・シーンが突飛に思えて、多くの人の感動を呼ばないのだろう、と察せられる。
わたしも観終わってすぐは、あれ、うう~ん、というどっちつかずの感慨しか覚えなかったが、日を
追うごとに色々と考えさせるものが湧き出して夜も寝られないというか、じわじわと効いてきたのである。

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      ジェイは、アレックとエンジェル・クレアを兼ねるオム・ファタール


この映画でのジェイは、ハンサムだし物腰もスマートだし超金持ちだし、トリシュナに接する態度も
それほど非情というわけでもないから、なぜにトリシュナは、彼を憎むようになるのか。
トリシュナを高給で優遇してくれ、学校に行かせてくれたり家族を養ってくれるという、援助交際相手
としては文句つけようがなく最高であるのに。
その彼に付いていけなくなるトリシュナは、そういう点を割り切って利益を享受できない、結局、山出し
の清純な乙女というわけだろうか。
オム・ファタールに対抗するには、自身も悪女でなければならず、そうでなかったトリシュナは、相手の
身も自身の心も滅ぼしてしまうのだ。


ハーディの原作をざっと読み返してみて、新たな発見の箇所があった。
テスは、アレックにもエンジェル・クレアにも同じことを言うのだ。「生まれてこなければよかったと
思うことがあるんです」と。寡黙なトリシュナはそんな台詞を言ったりしなかったが、その言葉は
クイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』の歌詞とほぼ同じ。



I sometimes wish I'd never been born at all 
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by didoregina | 2012-09-07 12:18 | 映画 | Comments(2)

Brighton Rock 『ブライトン・ロック』各種

BBCで映画『ブライトン・ロック』が放映されたのは、かれこれ1週間以上前になる。
新聞のTV欄には、1947年ジョン・ボルディング監督作品とあったから、「おお、古いのを
やるな」と思ってスイッチを入れたらカラーである。なんと2010年のリメイク版のほうだった。
うれしい驚き!

『ブライトン・ロック』という題名に始めて接したのは中2の時で、ラジオから流れる『キラー・
クイーン』にショックを受けて買ったクイーンのアルバム『シア・ハート・アタック』の一番
初めに収められている曲だった。
フレディーの七色の声が堪能できるが、途中で入るブライアンの長いギター・ソロには飽きる。
当時はLPだったので、その辺はプレイヤーの針を飛ばすなどして対処した。
クイーンのアルバムでは一番好きなので、その後もよく聴いていたから、『ブライトン・ロック』
といえば、クイーンなのだった。



大学に入って、夏休みに友人と二人でイギリス旅行の計画を立てた。ブライトンには、もちろん
出かけるつもりだった。旅行について相談に乗ってもらった教授に「ブライトンに行ったら、
名物のブライトン・ロックが目に付くよ」と言われ、「ええっ、『ブライトン・ロック』が名
物?」と、びっくりした。「岩の名所のことではなくて、キャンディーが名物なんだ」と教えて
くれた。

実際に出かけた夏の終わりのブライトンは妙に寂れていて、その前に行ったイタリアのリミニと
比べるとリゾート地としての明るさに欠けていて、クイーンの『ブライトン・ロック』から想像
していた遊園地のようなお祭りのような賑わいもなく、落胆した。

帰ってから、グレアム・グリーンの『ブライトン・ロック』を読んだ。先にブライトン・ロック
のことを教えてくれた教授による20世紀初頭の英文学史の授業で取り上げられ、レポートを書く
必要があった。その際、力を入れて英語と日本語の両方を読み比べたはずだ。しかし、それから
30年経ってみると、どうでもいいような細部は切れ切れに憶えているが、全体のストーリーは
すっかり忘れてしまっていた。

c0188818_16415078.jpgDirected byRowan Joffe
Produced byPaul Webster
Screenplay byRowan Joffe
Based onBrighton Rock by Graham Greene
Starring
Sam Riley (Pinky Brown)
Andrea Riseborough (Rose)
Andy Serkis (Colleoni)
John Hurt (Phil Corkery)
Helen Mirren (Ida)
Music byMartin Phipps
CinematographyJohn Mathieson
2010年 イギリス

このリメーク版では、舞台を1964年のブライトンに移している。
その年の復活祭休日に、反目しあうスクーター派のモッズとモーターバイク派のロッカーズが、
ブライトンに奇しくも集結し大騒乱を引き起こした。また、イギリスでは死刑が廃止されたの
はその翌年からであるという。
そういう社会事情が映画には反映されているし、主人公にモッズの格好をさせて若者票を取り
入れたかったのだろう。映像としてはまあまあかっこいいが、ストーリーの鍵として生かされて
いない。
一見、卓越したアイデアなのだが、主人公のピンキーの生き方はモッズ的とはいえないし、
借り物の流行風俗を纏ってみたかっただけの浅薄さのみが浮き上がる。
外見をキメることに執着する単細胞のチンピラがピンキーだから、わかりやすく表現したかった
のかもしれないが。

観客は当然、俳優サム・ライリーのカリスマ性に期待する。しかし、『コントロール』で見せた
壊れやすい神経の持ち主を絶妙に演じた彼とは別人のように、短気で冷血漢であるピンキーを
強調するためにいつでも怒ったような表情だけ、というのは飽きるし、演技にメリハリが全く
感じられない。
ファンの贔屓目で見ても、この映画での彼は、俳優としてはコケてしまっている。
それは、しかし、仕方ないのかもしれない。なにしろ、このリメーク版では、ポスターを見れば
一目瞭然なのだが、アイダ役のヘレン・ミレンが美味しくかっこいい役どころを盗ってしまって
いるのだ。
しかも、脇役も海千山千のヴェテランばかりで、一本調子の演技しかできないライリーの実力を
露呈する結果になってしまった。

トレイラーを観るとわかるが、ヘレン・ミレンは『プライム・サスペクト』(彼女のはまり役で
大好き)での女刑事よろしく事件を嗅ぎまわる。ほとんど準主役。


ブライトンの町並みやロイヤル・パビリオン、ビーチやピア、はたまた白亜の崖が海から直立
するセブン・シスターズなどの名所オン・パレードで、それは美しいのだが、そこを舞台に
うごめく登場人物たちに魅力が乏しい。60年代だから、コスチュームものとしては中途半端な
時代だから、観光名所案内として撮るしかないのか。

ローズ役のアンドレア・ライズボロは、主人公から嫌われるブスな女の子役を憐れみを誘いつつ
力強く演じているのであるが、どうもやはりあまり好きになれないルックスだ。上目遣いの
表情が30年前の戸川純そっくりで、そこがブキミ可愛い、と思ったが。

このリメーク版にはかなり不満が残ったので、ついでに1947年版のほうも観て比べてみた。
そちらは、30年代を舞台にした原作に忠実な作りで、ローズ役も天使のような可憐さだ。
リメーク版でのローズは、自分の人生は自分の手で切り拓きたいと願う意思の強い女の子という
60年代の社会背景を強調した性格付けがされていた。それはそれで好ましく、原作を読んだ時に
感じた楽観主義の女の強さ、したたかさというものが、だからラストにも生きてくる。
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by didoregina | 2012-02-14 09:45 | 映画 | Comments(10)

Seven Seas 輝ける7つの海  エメラルド海岸セイリング記その4

アサヒ・コムの速報ニュースで、スティーヴン・スピルバーグがヴァカンス先のイタリアのビーチで
モーター・ボートを爆走し罰金を食らう、という記事を読んで笑ってしまった。

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Seven Seas

ネット上の様々な情報を総合すると、7月11日にスピルバーグは、ゲストのグウィニィス・パルトロウ
を乗せてメガ・クルーザー Seven Seas号からスピード・ボートでラ・マッダレーナ島の砂浜に近づき
轟音と共に暴走。浜辺の人からの通報で駆けつけた沿岸警備隊に罰金約2万円を課せられた。

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        エメラルド海岸南部にあるTavolora(テーブル島)の南岸。
        海から垂直に屹立し圧倒的なマッスで迫る島が北風を防いで
        くれる。フロティッラから離れてここに投錨して一夜を過ごした。
        

丁度、私達も10日から同じ海域でセイリングを開始していたから、Seven Seasとは、多分どこかで
すれ違っただろう。Seven Seasは時価280億円らしいが、その程度のクルーザーなら、エメラルド
海岸には履いて捨てるほどいた。

英語やオランダ語のネット記事によると、そのクルーザーは、昨年オランダのアルブラッサーダムに
ある造船所で完成し、スピルバーグ自らが取りにやってきたらしい。(ただし、ドックにいた技術者は
スピルバーグ本人が来たというのは作り話だとも証言している)
船籍が英領ケイマン島になっているのは税金逃れのためのお約束だ。

全長86メートルのクルーザーには、図書館完備のアン・スイート・マスター・ルームのほか、VIP
ルーム2部屋およびゲスト・ルーム4部屋に計12人のゲストを迎えられる。クルーは26人。
通常の映画室のほか、室内プールに投影して泳ぎながら映画が見られる設備もある。
デッキ上には屋外プールが2つあるが、ヘリ発着時には自動的に水が抜かれ底がせりあがり、ヘリ・
ポートになる。週100万ユーロでチャーター出来るという。


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        テーブル島の南端から細長い砂洲が伸びている。  
        レストランが一軒あるほかは無人島であるここまで、
        小さなモーターボートに乗った行楽客がやってくる。
        昼は賑わうが、ここで夜を明かしたヨットは私達だけだった。
        2週間のフロティッラの場合、1週間で参加メンバーが
        変わるので、週末は1隻で航海のベア・ボートになる。
        フロティッラから離れて、小さな湾に投錨した3泊は
        楽園のような所ばかりだった。

このメガ・ボートSeven Seasは、なかなか豪勢な仕様である。(リンク先ページの
Discover Oceancoをクリックして Yachts 2005 onwardsから Y706 Seven Seasを選ぶ)
オランダでは、豪華クルーザーやスーパー・ヨットなどの造船が結構盛んだ。
デルフト工科大学の海事技術学科は、卒業後に技術を生かせる就職率ほぼ100%で、
学んだことが即仕事に繋がりサラリーもいいというので、長男に進学を勧めたのだった。
オープン・キャンパスに出向いて説明を聞くと、船の設計は物理・力学がメインのため退屈そうだと、
長男は建築学科を選んだ。スーパー・ヨットの設計なんてすごく面白そうなのに。

海洋は傍から見ればロマンの宝庫だ。しかし、それに携わる仕事は結構地味なもの。それが
現実。


        クイーンの『輝ける7つの海』Seven Seas of Rhye
        1975年初来日の時の映像が被さって、ファンには感涙モノ。
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by didoregina | 2011-07-27 11:21 | セイリング | Comments(0)

Flick of the Wrist クイーンで英語のお勉強

アルチーナさんのブログ記事を読んで、すぐに頭に浮かんだ曲(歌詞)がある。
mesmerizeという単語が出てくるクイーンの歌といえば、Flick of the Wristである。
中学2年の時に、彼らの3枚目のアルバム「シア・ハート・アタック」がリリースされた。シングル「キラー・クイーン」に悩殺されたので、アルバムをすぐに買い、聴きまくり、いっしょに歌いまくり、歌詞を覚え、歌詞を自分で訳しては英語の先生に見てもらったりした。
こうして、中学・高校時代は、主にクイーンやELP、キング・クリムゾンなどの(ロックとしては)高踏的な歌詞から、英語をお勉強したのだった。
若い頃に覚えたものは、なかなか忘れないものだ。今でも、特定の単語や言い回しで思い出すことが多いのは、クイーンの歌からのものが多い。
しかし、この単語の語源がメスメルだということは、今まで知らなかった!かっこいい言葉だとは思っていたが、催眠術学の権威である人物名から派生した動詞だったとは。

この曲は、シングル「キラー・クイーン」のB面に収録されているということも、知らなかった。
アルバムでは、「テニメント・ファンスター」「フリック・オブ・ザ・リスト」「谷間の百合」と途切れなく続くのがかっこいいのだが、シングル版では、エンディングが唐突なのが、残念。



でも、スライド・ショーの写真は、当時のものを非常に上手く集めて構成してある。来日時の写真もあって、元祖クイーン・ファンなら感涙モノ。

Flick of the Wrist

Dislocate your spine if you don't sign he says
I'll have you seeing double
Mesmerize you when he's tongue-tied
Simply with those eyes
Synchronize your minds and see
The beast within him rise

Don't look back
Don't look bask
It's a rip-off
Flick of the wrist and you're dead baby
Blow him a kiss and you're mad
Flick of the wrist - he'll eat your heart out
A dig in the ribs and then a kick in the head
He's taken an arm and taken a leg
All this time honey
Baby you've been had

Intoxicate your brain with what I'm saying
If not you'll lie in knee-deep trouble
Prostitute yourself he says
Castrate your human pride
Sacrifice your leisure days
Let me squeeze you till you've dried

Don't look back
Don't look back
It's a rip-off

Work my fingers to my bones
I scream with pain
I still make no impression
Seduce you with his money-make machine
Cross-collateralize, (big-time money, money)
Reduce you to a muzak-fake machine
Then the last goodbye
It's a rip-off

Flick of the wrist and you're dead baby
Blow him a kiss and you're mad
Flick of the wrist - he'll eat your heart out
A dig in the ribs and then a kick in the head
He's taken an arm, and taken a leg
All this time honey
Baby you've been had

受験英語とはまったく別物の、フレディーらしく小難しくてかっこいいもしくは危ない単語の羅列にシビレタ。
castrateとか sacrificeなんて、バルトリ姐よりも35年先を行っている。
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by didoregina | 2010-05-09 01:26 | クイーン | Comments(24)

機内エンタメ定番、クイーン・ライブ

ヨーロッパから日本に飛ぶには、片道11時間から12時間かかるから、機内エンタメの充実度は航空会社を選ぶ際には重要なポイントとなる。(実際には、安さで選ぶが。。。)
そういう意味において、非常に高印象を与えたのが、某韓国系航空会社であった。ここのヨーロッパ・アジア線におけるエンタメのヴァラエティの豊富さ、その深さ・濃さには、他の追随を許さないものがある。最新のハリウッド映画は無論のこと、不朽の名画の数々に、中国・韓国・日本の映画も忘れず、しかもヨーロッパ映画の集め方が尋常ではない。アート・ハウス系映画館でしか見られないようなものがぼんぼこあるのだ。2年前にはこの航空会社を8回も利用したが、そのたびに選りすぐりの映画とビビンパという組み合わせにまったりとしたのだった。

今回は、昨年九月の里帰りと同様、某日本系航空会社を利用した。このところの経営悪化の影響なのか、どこの航空会社よりもダントツに安いフライトを提供してくれるからだ。しかし、機内エンタメはイマイチ、というイメージだった。
しかし、もうほぼ不休・不眠で映画を見まくった。食事のときは、檀ふみの解説付クラシックなどを聴いたが、それ以外は往復で映画計7本見た。

新作では、「ドクター・パルナッソスの鏡」
主演のヒース・レジャーが撮影中に急死したため、友人のジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人(!)が代役を演じたということで話題になった。ピアノを弾く者なら、ドビュッシーのDoctor Gradus ad Parnassum、もしくはクレメンティの練習曲を思い浮かべてしまうようなタイトルである。映画は、ファンタジーに富んだ、奇想天外な大人のための夢物語であった。

それから、「シャーロック・ホームズ」
どうも、凝りすぎていて、「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」みたいな感じになっている。子供のころ熱中して読んだシャーロック・ホームズ(およびワトソン)のイメージから離れすぎていて、退屈してしまった。

メッケモンは、「9」
フェリーニの「8 1/2」のリメイクというかミュージカル版みたいなものである。主演のダニエル・デイ=ルイスが、またまた好演!もう、イタリア人そのものの英語アクセントと顔になってるのに驚き、当時の映画業界特有の物憂さを体全体で表現していて、マストロヤンニよりずっとフェリーニっぽい!さすがに、天下のカメレオン役者である。何を演じても上手いなあ、といつもながら唸らされる。
女優陣(ソフィア・ローレン、ジュディ・デンチ、ニコール・キッドマン、ペネロペ・クルス、マリオン・コティアール、ケイト・ハドソン他)の揃え方も豪華なだけでなく、本家に似てる人を上手く選んであるから、フェリーニ映画ファンなら、にんまりしつつ、ほおっと感服できる。

インパクトが強かったのは、「ブラッド・ダイアモンド」
やはり演技派レオナルド・デカプリオ主演だから期待できた。レオ様は、実際可愛いだけではなく、役作りと演技はメリル・ストリープ並みに上手いのだ。
内容としてはヒューマン・ドラマで重く、見終わってから、後頭部にどよ~んと暗黒ができたような気持ちになる。しかし、ローデシアを追われた白人の傭兵上がりで、今はダイアモンドの密輸で稼ぐ、なんて荒っぽさ満点の男を演じて、惚れさせてしまうというのは、並みの役者にはできない。アフリカの白人っぽい英語のアクセントもよく勉強してるし、金儲けだけにしか興味がないように見えて、実は一筋縄ではいかないキャラクター造形の上手さには圧倒された。(なぜか、ローデシア、南アフリカ、コンゴなど、もともと白人が支配していた国出身の白人の知人たちには、どこか屈折して普通の白人には見られない複雑さがあり、独特のキャラクターを形成しているように見受けられる)

そして、「2012」は、機内エンタメやTV放映されない限り、絶対に自分から進んでは見ないタイプの映画だ。マヤの暦が終わる2012年、太陽系の惑星が直列して災いが起こる。。。よくあるパターンのディザスターものではらはらさせるが、「アルマゲドン」のようなユーモアや、「復活の日」みたいに魅力的な登場人物にも欠ける。主人公だけは絶対に助かることがミエミエの情けなさ、期待以下の出来だった。

さて、機内エンタメの定番といえば、クイーン・ライブである。これがなくては、一流の航空会社とはいえない。(と、わたしが勝手に思っている)
今回観たのは、モントリオールのライブだった。1981年だから、フレディーはマッチョ路線まっしぐらで、わたしはとっくに愛想を尽かした時期ではあるが、ファンとしては観ないわけにはいかない。メンバーは、皆まだ若くてスリムである。



しかし、長髪はもう流行らなくなっていたので、かろうじてブライアンのみがカーリーのロング・ヘア。このアコースティック・ギターの音色がリュート風でなかなかいい。
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by didoregina | 2010-05-03 09:34 | クイーン | Comments(4)

クイーン+ポール・ロジャース

クイーンの話題になると尽きることがない。
それで、新たなカテゴリーを設置することにした。

日本のクイーン・ファンは、最初にクイーンを認めたのは私たちだ、という誇りを持つ、70年代後半に女子中高生だった人たちがその中核をなすのではないだろうか。sarahさんやMevrouwさんや私がそれに該当する。
だから、フレディが髪を短くして口ひげをたくわえマッチョ路線を突き進むようになる6枚目のアルバムからは、興味が薄れていった。ヨーロッパでは逆にその頃から大ブレークして、主に男子大学生などのインテリに受けた。
(先日のコンサートでのレーピン様の変化についていけなかったのは、マッチョになったフレディーについていけなかったのと同様の違和感のためだったんだと、今思い当たった。魔術のようにめくるめく音がなくなった後期クイーンと現在のレーピン様は音楽的に似ている。)

それでも、80年代の記念碑的なハイド・パーク・ライブやライブ・エイドでの伝説的なフレディーのステージ姿には、感慨が沸いたものだ。
そして、91年にフレディーがエイズで亡くなったのはショックであった。

去年、飛行機の中で、クイーンのロジャーとブライアンが元バッド・カンパニーのリード・ボーカルだったポール・ロジャースと組んだライブを見る機会があった。
歌えない人ジョン・ディーコンはすでにクイーンを去って久しい。クイーンといっても残ったのは二人だけで、そこに70年代にはライバルとして売り出されていたポール・ロジャースを加えるというのは、いくらなんでも無茶じゃないか、金儲けのためか?と疑っていたが、なんと、このライブ・パフォーマンスは予想以上に素晴らしいものであったのだ・

観る前の予想では、例えて言えば、グラインドボーンの「ジュリオ・チェザーレ」のサラ様の代理にマリアーナ・ミヤノヴィッチを持ってきたような、しっくり来ないものがあるのではないかと思っていた。マリアーナだって歌は上手いしチェーザレは十八番だが、サラ様とは違いすぎる。マクヴィカー版に臓器移植されたら、拒否反応が起こるのではないかという危惧である。





ポール・ロジャースは、好みではないがなんと言っても歌唱力抜群で、彼独自のスタイルが確固としてあるので、トリビュート・バンドがフレディーの物まねをするような浅ましさがないため、見ていて、聴いていて気持ちがいいのであった。
血液型が違う臓器を移植してしまったのに手術後の拒否反応が出ない、という稀な成功例である。

それから、残りの二人も歌が上手いので、ポール・ロジャースだけでなくても間が持たせられるのだ。
飛行機の中で、クイーン・メドレーをいっしょに(小声で)歌いまくってしまった。

そして、圧巻は、ロジャーが歌ったThese are the days of my life。その歌の間中、背後の巨大スクリーンには、クイーンが75年に来日した時の芝生の上に緋もうせんを敷いて野点のお茶会をしたときの様子が映し出されたのである。胡坐をかいて、苦い抹茶に顔をしかめつつ、初夏の日本を満喫する面々。ブライアンの5色に指が分かれたソックス。剣玉あそび。。。
見ながら涙が滂沱と流れた。これぞ、まさしく私の青春の日々であった。
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by didoregina | 2009-03-05 11:23 | クイーン | Comments(8)

新年のご挨拶 Een gelukkig nieuwjaar!

新年が幕を開けた。昨年は、ほとんど大殺界としか思われなかったが、今年は本当に「幸せな年」になるんだろうか。
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大晦日恒例のトップ2000(ポップ史上過去から現在まで全ての曲の視聴者投票)では、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」が、毎年ずっとトップの座を守っている。元祖クイーン・ファンとしては、誇らしいが、やれやれまたか、と苦笑してしまう。
この曲の登場をリアルタイムに経験しているわたしには、35年経ってもポップ史上最高の曲だとオランダ人たちが毎年太鼓判を押してくれるのが、ちょっと不可解だ。
ある心理学者はこの現象を、この曲が喚起する感傷を世代を超えて共有していった積み重ねの結果だと見る。つまり、40代後半以上の世代のみならず、毎年繰り返して聴かされて育った世代もいつのまにか、この曲への共感・ノスタルジーを自分のなかにはぐくんでいったのだという。そして、そのように世代を超えた大衆が共有できる感動を与えるのは、音楽特有のものだと結論づけている。
本当にそうだろうか。音楽だけがそんな力を持っているんだろうか。
たしかに、ポップ音楽の accecibility は、他の音楽ジャンルとは比較できないほどだ。
でも、映画や絵画、彫刻、建築物などにも、かなり共有可能な感動を与える力はあると思う。
例えば、ドイツでは大晦日のカウントダウンはブランデンブルク門の前で1番盛大に行われる。人々が感動を共有できる場所としては、ドイツでここに勝る場所はないから。

1週間の慣らし運転期間を経たブログで、今年は「美と感動」を考え続けていきたい。
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by didoregina | 2009-01-01 21:31 | クイーン | Comments(3)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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