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 プロムス・コンサートでイエスティン君のレパートリー拡大

9月5日のカドガン・ホールでのプロムス・コンサートにイエスティン・デイヴィスが
出演すると知ったのは、3月頃だったと思う。プロムスに参戦したことはないのでチケッ
トの取り方等を、事情に詳しい方から教えていただいていたのだが、一般チケット売り
出し当日に参戦し忘れるという失策を演じた。そして、ほぼ発売開始と同時に売り切れ
となった。
当日券が必ず出るから並べばいい、それとも当日が近づけばリターンが出てくるに違い
ないと思いおっとり構えていた。
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ところが有難いことに1か月前にザルツブルクで会ったイエスティン君から、家族用の
招待券を一枚貰えることになった。奥様(その時はまだ婚約者)はお仕事のためコンサ
ートには行けないから余ってる、という理由で。もう一枚はお父様の分で、だから彼の
お父様の隣の席で聴くという光栄を担うことになったのだった。

しかし、当日チケットの受け取りに少々行き違いが生じ、ハラハラさせられた。
イエスティン君の名前でお取り置き、ということだったのが、多分エージェントが気を
利かせてお父様の名前でチケット2枚入りの封筒を取り置いていたため、うろ覚えのお父
様のお顔を開演前でごった返すホールで探すことに。お父様は封筒を開けて、あ、2枚
入ってるとさぞびっくりされたことだろう。双方で会場をウロウロすることになった。
しかし、やはり日本人を見つける方が楽なようで、向こうから探しに来てくださり、
目出度く座席に着くことができた。

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このコンサートは、BBCプロムスのランチコンサートの一環で、ラジオ放送された。
オンデマンドでまだ聴くことが可能なので、ぜひ。
http://www.bbc.co.uk/programmes/b07sxdfp

Purcell (arr. Britten): Sound the trumpet; Lost is my quiet; Music for a while;
If music be the food of love; No, resistance is but vain; Celemene, pray tell me
Mendelssohn: Ich wollt' meine Lieb' ergösse sich; Scheidend; Neue Liebe; Sonntagsmorgen; Das Ährenfeld; Lied aus 'Ruy Blas'
Quilter: It was a lover and his lass; Music, when soft voices die; Drink to me
only with thine eyes; Love's philosophy; Love calls through the summer night

Carolyn Sampson (soprano)
Iestyn Davies (countertenor)
Joseph Middleton (piano)

2016年9月5日@Cadogan Hall

当初、作曲家以外の情報がなかったので、どういう曲目構成のコンサートになるのか当日
まで分からなかった。
ブリテンのアレンジしたパーセルの曲は、イエスティン君のリサイタルでは定番であるか
ら、Music for a whileなどは何度も生で聴いている。しかし、今回は、カロリン・サンプ
ソンとの共演なので、曲目は彼女とのデュエットやそれぞれのソロになっている。
最初の2曲はデュエットで、その後交互にソロを歌い、またデュエットそして掛け合いと
いう構成だった。
歌唱スタイルが似ている二人の歌うパーセルの曲のデュエットは悪くない。しかし、毎曲
ごとに聴衆から拍手が出て、コンサートの流れが滞るのが少々難であった。

Music for a whileは、拙ブログの名前にしているほど好きな曲である。しかし、モダン・
ピアノ伴奏のブリテンによるアレンジはそれほど好きではない、というのが本音である。
しかるに、今回のジョゼフ・ミドルトンによるピアノ伴奏は、今までの誰の伴奏よりも
色彩感とリズム感が卓越していて、情熱と洒脱さに溢れ、いつも聴きなれた曲があっと
驚くほど新鮮に響くのだった。ブリテンのアレンジで内に籠った暗さのはけ口が見えない
ようなイメージが今までは付き纏ったのが、曇りがなく軽快で若々しく明るい曲になって
いて、特に「ドロップ、ドロップ、ドロップ」のピアノと歌唱の掛け合い部分では、まさに
目から鱗がぽろぽろと落ちていくような気分になった。
このピアニストの音には天性の澄んだ明るさがあり、歌手へ寄り添う部分と自分の音楽性
を自由奔放に発揮するバランス感覚にも優れ、こういう伴奏者はなかなか得難い。

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メンデルスゾーンの歌曲をイエスティン君が歌うのを聴くのは初めてである。
バッハやシューマンなどで彼のドイツ語のディクションがなかなかいいことは知っていた。
しかし、カウンターテナーがドイツ語のリートを歌うというコンサートはなかなか珍しい。
そこはかとない憂いをしみじみと聴かせるという点で、メンデルスゾーンの歌曲もパーセル
やダウランドとも比肩しうるということを知ったのはこのコンサートのおかげである。
デュエットも、サンプソンとイエスティン君の声がきれいに溶け合い、新境地の発見だ。
さすがに元合唱団出身だけあって、アンサンブルでの声を合わせることの加減をよくよく
耳で熟知している彼の面目躍如とも言えよう。

また、ロジャー・クィルターという作曲家の名前も曲も聴くのも今回が初めてだった。
今回の5曲は、シェイクスピア、シェリー、ベン・ジョンソン、ベネットの詩に1905年
から1940年の間に曲を付けたもの。エリザベス朝時代のメランコリーとは少々異なるが
やはりどことなく陰影の濃さが感じられるのは、2つの大戦の影に脅かされた時代のせい
だろうか。ノスタルジックな曲調と、真摯な歌唱スタイルが上手く融合して胸に迫る。

1時間のランチ・コンサートでありながら、ソロとデュエットを交え、英語とドイツ語の
しかもレアな曲を集めて、中身の濃さは他になかなかないほどの充実度であった。
こうして、イエスティン君のレパートリーとCTの声の可能性が広がったと実感できたの
だった。
このコンサートで歌った曲を今週レコーディングしているようで、新譜発売が楽しみだ。
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by didoregina | 2016-09-20 19:30 | イエスティン・デイヴィス | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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