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『インドの女王』クレンツィス指揮ムジカエテルナ@ケルン

実は怒涛のロンドン遠征前日に、ルール・トリエンナーレのDie Fremdenを鑑賞して
いる。昨年からトリエンナーレの芸術監督になっているヨハン・シモンズの脚本・演出
作品である。マールという町の元炭鉱の石炭加工工場が会場で、なかなか面白い体験が
できたのだが、その感想は滞っているCT関連記事全てを書き終わってからにしたい。
ロンドン2日間遠征(ロッシーニの『セラミラーデ』とイエスティン君コンサート)の
翌日、ケルンのフィルハーモニーに『インドの女王』を聴きに行った。

『インドの女王』クレンツィス指揮ムジカエテルナ@ケルン_c0188818_22352583.jpg

2016年9月7日@Kölner Philharmonie

Johanna Winkel Sopran (Doña Isabel)
Paula Murrihy Sopran (Teculihuatzin)
Ray Chenez Countertenor (Hunahpú)
Jarrett Ott Tenor (Don Pedro de Alvarado)
Thomas Cooley Tenor (Don Pedrarias Dávila)
Christophe Dumaux Countertenor (Ixbalanqué)
Willard White Bariton (Sacerdote Maya)
Maritxell Carrero Schauspielerin
MusicAeterna Choir
MusicAeterna Orchestra
Teodor Currentzis Dirigent

Henry Purcell
The Indian Queen Z 630 (1695)
Semi-Opera in einem Prolog und fünf Akten. Akt 5 (Masque) von Daniel Purcell.
Libretto von John Dryden und Robert Howard
In einer neuen Fassung von Peter Sellars mit vertonten Texten von John Dryden,
Katherine Philips, George Herbert u.a. und Sprechtexten von Rosario Aguilar

パーセルのセミオペラにオリジナルの台詞を加えてピーター・セラーズが翻案・演出した
舞台は、マドリッドで数年前に初演された時ストリーミングを鑑賞した。
インドとは新大陸アメリカのことであり、スペインによって征服された「インド」の女王
の一代記が台詞で語られる。スペイン訛りの英語の語りが最初から最後までメインで
それに音楽が付随しているという感じで、セミオペラの伝統に倣ってか歌はもうほとんど
添物程度であるのと、台詞・オーケストラによる音楽・歌・踊りのような演技のそれぞれが
有機的に結合しているとは言いがたく、パーセル・ファンとしてはストリーミングを見て
かなり不満が残った。

それをまた、なんでケルンまで聴きに行ったのはなぜかというと、クリストフ・デュモーが
出演することと、フィルハーモニーが会場だからあの妙な演技や踊りはないだろうから、
クレさん指揮のムジカエテルナによる音楽が楽しめるだろうという理由である。

しかし、やはり、あのセリフはうざかった。マイクロフォンを通してずっと生で語られる
ため、音楽の流れがぶちぶちとちぎれてしまい、台詞の存在価値が全く見受けられない。
ムジカエテルナにしか出せない、あの極上ピアニッシモにため息をつき、古楽オケにして
は人数編成がやたらと多いのに、クレさん指揮でびしっと統制が取れて、強弱の幅が極端に
広い独特の音楽世界にもっともっと浸りたかった。
オーケストラによる音楽は甘美で、典雅で、クレさんとムジカエテルナの白眉と言える。

クレさんの好みであろう配置でソロ歌手は主にオケの後ろに立って歌う。時たま前面に出て
歌うこともあったが、数えるほどである。
そして、デュモー選手のソロ部分がとにかく少なすぎたのにがっかり。CTパートはもう一人
のCTレイ君が歌う部分が多く、それがまた難がありすぎて隔靴掻痒。

『インドの女王』クレンツィス指揮ムジカエテルナ@ケルン_c0188818_2322234.jpg

この晩のハイライトは、デュモー選手の歌ったMusic for a whileである。
最前列中央に座った私の目の前で、選手が奇妙な踊りをしながら、しかし力強く芯がしっか
りした発声と、びしっと締まってよく通る声で歌われると、歓喜の頂点に達する。
この歌にはもともと思い入れがあるのだが、彼の男性的な歌唱によるドロップ、ドロップ、
ドロップで涙がこぼれそうになるのだった。これが、そして選手の声で聴きたかったのだ。

その日は9月だというのに猛暑で30度近くなり、そのためか会場は冷房が効きすぎ、寒くて
寒くていたたまれなくなり、頭の中ではずっと、コールド・ソングが鳴り響いていた。
冷房装置でそういう効果を出すとは意外である。脳内だけでなく、デュモー選手が実際に
歌ってくれたらよかったのに、と不満が残った。

しかし、終演後の出待ちで選手に会え、知りたかったことを質問して、それに選手は全部
答えてくれるというメイン・イヴェントがあった。ケルンまで行った甲斐があるというもの
である。
# by didoregina | 2016-09-23 23:13 | カウンターテナー

 プロムス・コンサートでイエスティン君のレパートリー拡大

9月5日のカドガン・ホールでのプロムス・コンサートにイエスティン・デイヴィスが
出演すると知ったのは、3月頃だったと思う。プロムスに参戦したことはないのでチケッ
トの取り方等を、事情に詳しい方から教えていただいていたのだが、一般チケット売り
出し当日に参戦し忘れるという失策を演じた。そして、ほぼ発売開始と同時に売り切れ
となった。
当日券が必ず出るから並べばいい、それとも当日が近づけばリターンが出てくるに違い
ないと思いおっとり構えていた。
 プロムス・コンサートでイエスティン君のレパートリー拡大_c0188818_1820249.jpg

ところが有難いことに1か月前にザルツブルクで会ったイエスティン君から、家族用の
招待券を一枚貰えることになった。奥様(その時はまだ婚約者)はお仕事のためコンサ
ートには行けないから余ってる、という理由で。もう一枚はお父様の分で、だから彼の
お父様の隣の席で聴くという光栄を担うことになったのだった。

しかし、当日チケットの受け取りに少々行き違いが生じ、ハラハラさせられた。
イエスティン君の名前でお取り置き、ということだったのが、多分エージェントが気を
利かせてお父様の名前でチケット2枚入りの封筒を取り置いていたため、うろ覚えのお父
様のお顔を開演前でごった返すホールで探すことに。お父様は封筒を開けて、あ、2枚
入ってるとさぞびっくりされたことだろう。双方で会場をウロウロすることになった。
しかし、やはり日本人を見つける方が楽なようで、向こうから探しに来てくださり、
目出度く座席に着くことができた。

 プロムス・コンサートでイエスティン君のレパートリー拡大_c0188818_18301242.jpg


このコンサートは、BBCプロムスのランチコンサートの一環で、ラジオ放送された。
オンデマンドでまだ聴くことが可能なので、ぜひ。
http://www.bbc.co.uk/programmes/b07sxdfp

Purcell (arr. Britten): Sound the trumpet; Lost is my quiet; Music for a while;
If music be the food of love; No, resistance is but vain; Celemene, pray tell me
Mendelssohn: Ich wollt' meine Lieb' ergösse sich; Scheidend; Neue Liebe; Sonntagsmorgen; Das Ährenfeld; Lied aus 'Ruy Blas'
Quilter: It was a lover and his lass; Music, when soft voices die; Drink to me
only with thine eyes; Love's philosophy; Love calls through the summer night

Carolyn Sampson (soprano)
Iestyn Davies (countertenor)
Joseph Middleton (piano)

2016年9月5日@Cadogan Hall

当初、作曲家以外の情報がなかったので、どういう曲目構成のコンサートになるのか当日
まで分からなかった。
ブリテンのアレンジしたパーセルの曲は、イエスティン君のリサイタルでは定番であるか
ら、Music for a whileなどは何度も生で聴いている。しかし、今回は、カロリン・サンプ
ソンとの共演なので、曲目は彼女とのデュエットやそれぞれのソロになっている。
最初の2曲はデュエットで、その後交互にソロを歌い、またデュエットそして掛け合いと
いう構成だった。
歌唱スタイルが似ている二人の歌うパーセルの曲のデュエットは悪くない。しかし、毎曲
ごとに聴衆から拍手が出て、コンサートの流れが滞るのが少々難であった。

Music for a whileは、拙ブログの名前にしているほど好きな曲である。しかし、モダン・
ピアノ伴奏のブリテンによるアレンジはそれほど好きではない、というのが本音である。
しかるに、今回のジョゼフ・ミドルトンによるピアノ伴奏は、今までの誰の伴奏よりも
色彩感とリズム感が卓越していて、情熱と洒脱さに溢れ、いつも聴きなれた曲があっと
驚くほど新鮮に響くのだった。ブリテンのアレンジで内に籠った暗さのはけ口が見えない
ようなイメージが今までは付き纏ったのが、曇りがなく軽快で若々しく明るい曲になって
いて、特に「ドロップ、ドロップ、ドロップ」のピアノと歌唱の掛け合い部分では、まさに
目から鱗がぽろぽろと落ちていくような気分になった。
このピアニストの音には天性の澄んだ明るさがあり、歌手へ寄り添う部分と自分の音楽性
を自由奔放に発揮するバランス感覚にも優れ、こういう伴奏者はなかなか得難い。

 プロムス・コンサートでイエスティン君のレパートリー拡大_c0188818_1925481.jpg


メンデルスゾーンの歌曲をイエスティン君が歌うのを聴くのは初めてである。
バッハやシューマンなどで彼のドイツ語のディクションがなかなかいいことは知っていた。
しかし、カウンターテナーがドイツ語のリートを歌うというコンサートはなかなか珍しい。
そこはかとない憂いをしみじみと聴かせるという点で、メンデルスゾーンの歌曲もパーセル
やダウランドとも比肩しうるということを知ったのはこのコンサートのおかげである。
デュエットも、サンプソンとイエスティン君の声がきれいに溶け合い、新境地の発見だ。
さすがに元合唱団出身だけあって、アンサンブルでの声を合わせることの加減をよくよく
耳で熟知している彼の面目躍如とも言えよう。

また、ロジャー・クィルターという作曲家の名前も曲も聴くのも今回が初めてだった。
今回の5曲は、シェイクスピア、シェリー、ベン・ジョンソン、ベネットの詩に1905年
から1940年の間に曲を付けたもの。エリザベス朝時代のメランコリーとは少々異なるが
やはりどことなく陰影の濃さが感じられるのは、2つの大戦の影に脅かされた時代のせい
だろうか。ノスタルジックな曲調と、真摯な歌唱スタイルが上手く融合して胸に迫る。

1時間のランチ・コンサートでありながら、ソロとデュエットを交え、英語とドイツ語の
しかもレアな曲を集めて、中身の濃さは他になかなかないほどの充実度であった。
こうして、イエスティン君のレパートリーとCTの声の可能性が広がったと実感できたの
だった。
このコンサートで歌った曲を今週レコーディングしているようで、新譜発売が楽しみだ。
# by didoregina | 2016-09-20 19:30 | イエスティン・デイヴィス

ユトレヒト古楽祭での目玉CTと初登場CT

毎年8月下旬から9月初旬にかけての10日間に渡ってユトレヒト市中の教会やコンサート・
ホールで繰り広げられる古楽祭の2016年のテーマはズバリ、ヴェネツィアだった。
(余談だが数年前のローマに続き、3年後のテーマはナポリであるから、今から期待大!)

連日朝から真夜中過ぎまで行われる、全部で100以上のコンサートの中から今年私が選んだ
のは、フィリップ・ジャルスキーのコンサート、ステファン・テミングのリコーダー・コン
サート、そしてラルペジャータのカヴァッリ・コンサートだ。

ユトレヒト古楽祭での目玉CTと初登場CT_c0188818_17183851.jpg

ジャルスキーは、今年前半、ご家族に不幸があったり喉の故障が比較的長引き、各地での
コンサートがキャンセルもしくは延期になった。今回のユトレヒトでのコンサートは、
復帰後2度目に当たるはずだ。
プログラムは、チェスティ、カヴァッリ、ロッシ、モンテヴェルディ、ステッファーニ等の
ヴェネツィアのオペラ黎明期に活躍した作曲家による曲が並び、なんとも今年の古楽祭テー
マにバッチリ合う選曲となっている。
(曲目およびラジオ録音は以下のリンクから見・聴くことができる)
http://www.radio4.nl/zomeravondconcert/uitzending/409670/zomeravondconcert

久しぶりに聴くPJの声は、いつも通り、会場を満たすほどの声量で、歌唱にぶれがなく安定
している。彼の歌唱は丁寧な発音と発声、正確な音程という基本中の基本がしっかりしてい
てるので、安心して聴くことができるのだ。
そして今回特に圧倒されたのは、表現力が増していること。昨シーズンは新作やヘンデルの
オペラ出演の機会が多かった彼だから、その経験から幅広い表現力を身に付けたのだろう。
ルネッサンスからバロックへの過渡期的なアルカイックな曲調や、イタリア古謡的な泥臭さ
が混じるこれらの曲を、ストレートに歌いながらどこかフランス的洗練を加えて、しかも
しみじみと味わい深く歌い、本当に上手いなあ、と唸らされた。
彼の声にこれらのイタリアの曲が意外なほど合い、芳醇そのもののコンサートだった。
CTとしての人気は多分オランダでは彼が一番だし、彼の声が現代CTの理想像として指標化
されていると思え、それにふさわしい実力を備えていることはその晩のコンサートで誰の耳
にも明らかであった。

ユトレヒト古楽祭での目玉CTと初登場CT_c0188818_17514060.jpg

左から、オルリンスキ君、ヌリアちゃん、カペツート、ブリデリ嬢。

さて、今年のユトレヒト古楽祭のもう一つの目玉はラルペジャータのコンサートである。
彼らの人気は凄まじく、例年チケットを取るのが難しいため諦めるのだが、今年は友の会
会員である友人に頼んでなんとか平土間正面後方の席をゲットした。

L’Arpeggiata o.l.v. Christina Pluhar @ TivoliVredenburg, Utrecht 2016年8月30日
Nuria Rial [sopraan]
Giuseppina Bridelli [mezzosopraan]
Vincenzo Capezzuto [contratenor]
Jakub Józef Orliński [contratenor]

カヴァッリの歌(異なるオペラのアリア)の数々を組み合わせて、ソプラノのヌリア・リ
アルを中心にメゾとCT2人がそれぞれソロやデュエットで歌うという形式である。
(こちらも曲目および音源は以下のリンクから)
http://www.radio4.nl/zomeravondconcert/uitzending/435027/zomeravondconcert

私的目玉はヌリアちゃんの生の声を聴くという悲願達成だったのだが、それと同時に割と
直前に得た意外な情報にも興味津々でコンサートに臨んだ。CTのオルリンスキ君が出演
するというのだ。

隔年9月にオランダのスヘルトヘン・ボス(デン・ボス)で国際声楽コンクールが開催され
る。今年がその年に当たり、春に本選出場歌手の名前と声種が発表された。その中にCTが
入っていたので注目していた。ポーランド人の若手CTでヤコブ・ヨゼフ・オルリンスキと
いう名前である。早速ググると、彼はディドナートのマスタークラスでの歌唱で伸びやか
で素直な声を聴かせているのが耳を惹いた。(そして、また彼はブレイクダンスのグループ
の一員としても活躍していることを知った。)
コンクール応援に行く気満々だったのだが、なんと夏前に始まったコンクール会場の改修
工事でホールにアスベストが見つかり、コンクール開催が不可となり来年に延びてしまっ
た。
残念に思っていた矢先であったが、オルリンスキ君は、ラルッペジャータの公演ソリストの
一人としてユトレヒトに来るということを知ったのだ。

私的注目度はより高まった。
生で聴くオルリンスキ君は、温かみのある素直なきれいな声の持ち主で、発声に無理が
感じられないのが耳に心地よい。オランダ・デビューとなった彼のパートは少なかったが、
将来有望と太鼓判を押すにふさわしいと感じられた。現在、彼はNYのジュリアード音楽院
で学ぶ学生である。来年の声楽コンクールでの再会が楽しみだ。
(アンコールで、彼は得意のブレークダンスを披露し会場を沸かせた。ラルペジャータの
コンサートではなんでもありだが、これは誰も予想外だったと思う。この日の聴衆の中で、
もしかして彼がブレークダンス踊るんじゃないかと密かに期待していたのは、多分私一人
ではなかったろうか。)

このコンサートの模様は全て録画されているので、ご覧になっていただきたい。
https://youtu.be/lI_OloqQ6CQ

そして、私がもうひとつ密かに心待ちにしているのは、当たり役のトロメオの封印宣言を
したデュモーの後釜として、あのマクヴィカー演出の『ジュリオ・チェーザレ』のトロメオ
役をオルリンスキ君に演じ歌ってもらうことである。あのプロでは、トロメオ役歌手の
運動神経・身体能力が抜群でないとこなせないからである。
# by didoregina | 2016-09-19 18:20 | カウンターテナー

The Castrato is dead, long live the Countertenor

本日9月16日は、18世紀の伝説のカストラート、ファリネッリの命日である。
そして、なぜか、カウンターテナーには乙女座(8月、9月)生まれが多い。
そして、はたまた、今年8月9月にはカウンターテナー出演のコンサートやオペラの
実演に接する機会が多く、数えてみると、延べ6演目延べ7人のカウンターテナーの
生の歌声を聴くことができた。
その僥倖を噛みしめ、往時のカストラートを偲びながらそれらを振り返ってみたい。

The Castrato is dead, long live the Countertenor_c0188818_1711887.jpg


9月16日は、イエスティン・デイヴィスの誕生日でもある。昨年のこの日、その事実を
知って驚愕。その時、イエスティン君はニューヨークのブロードウェイで出演する芝居
Farinelli and the Kingのリハーサル最中だったと思う。なんという偶然。
The Castrato is dead, long live the Countertenorと叫びたくなる気持ちもわかって
いただけよう。

そのイエスティン君が出演の新作オペラThe Extereminating Angel (皆殺しの天使)
を鑑賞するためにザルツブルクまで遠征し、初めてザルツブルク音楽祭というものを
体験した。モーツアルト劇場での8月8日千秋楽である。
作曲家トマス・アデスは遅筆で有名で、このオペラも果たして今年本当に上演されるの
だろうか、間に合うのだろうかと割と最後まで気を揉ませた。合宿のような長いリハー
サル期間と3回の実演を経ていよいよ楽日。
ルイス・ブニュエルの映画を翻案オペラ化したものなので、文字通り息詰まるような
室内劇のような具合である。
主要登場人物(歌手)がとても多く、それぞれに特異なキャラクターが設定されていて
特に主役と言える歌手はいない。そのため、各歌手に同じくらいの量の聴かせ所を設け
ている。皆が皆、極限のパニック状態に陥るその様を、ヒステリックな高音や不協和音
で表現しているのだが、イエスティン君の役柄は強迫観念に囚われて精神的にどこか
障害があり、かつ姉との近親相姦を暗示するような設定なので、キャラクターとしては
面白い。スプーンにこだわる彼のアリアには、バッハのマニフィカトからの引用が明白
とは本人の弁である。

The Castrato is dead, long live the Countertenor_c0188818_17474641.jpg

かように、現代作品ながらバロックから古典派ロマン派と連綿と繋がる様々な音楽要素
が盛り込まれ、音楽自体は耳に心地よくさらさらと流れて行く。
独白と対話、そして重唱・合唱部分もあり、60年代ブルジョワの屋敷の密室中で起こる
芝居仕立ての総合オペラ・アンサンブルと言える作品になっている。
ザルツブルク音楽祭の後は、来年のロンドン、ニューヨーク、そしてコペンハーゲンでの
上演が予定されている。(コペンハーゲン以外はほとんどオリジナルキャストが出演。)

The Castrato is dead, long live the Countertenor_c0188818_1759644.jpg

イエスティン君を追っかけているうちに興味を覚えたのは、現代作曲家のオペラ作品に
カウンターテナーが主要な役で登場するものがコンスタントに作られているということで
ある。
それらは大概、登場人物が極端に少なく、1人から3人、多くても5人程度である。
現代ものを歌える(練習時間が取れる)歌手の数が限られているという理由もあるかも
しれない。
しかし、現代の作曲家に、その声のために曲を作りたいと思わせる実力ある若手カウン
ターテナーが現在揃っているという事実も重要だと思う。イメージを膨らませ、作品の
制作意欲を掻き立てるミューズのような存在としてのカウンターテナーという声種は、
現代の作曲家にとってインスピレーションの恵の泉のような存在なのかもしれない。
そういう意味で、バロック物以外にも活躍できるカウンターテナーの雄としてのイエス
ティン君に心から拍手を送りたい。
# by didoregina | 2016-09-16 17:59 | カウンターテナー

Against all odds (I made it to London)

Travelling to London is not a special event any more since I've been attending
quite some concerts and operas for years. It takes only 2 hours by Eurostar from
Brussels to the heart of London, so I've got used to it and the travel looks like a
kind of regular commuting.
But that nonchalant carelessness led me to a series of unexpected accidents last
Sunday.

It was raining dogs and cats in the morning. So I wasn't feeling like walking
to the nearst train station in the Netherlands. I decided to go by car to the nearst
Belgian station which is virtually the same distance, as I live in a border town.
Besides, the parking next to Vise station in Belgium is large and free of charge.

That was my first wrong decision.

Against all odds (I made it to London)_c0188818_511361.jpg


I took the highway suitablly called Autoroute du soleil, but the exit to Vise was
closed due to road surface maintenance.
Alright, no problem, I thought, as I could keep driving to Liege station.
But the usual interchange to TGV station of Liege Guillemins was unexpectedly
closed, too.
I drove to the city centre and put the destination into my car navigation system:
Gare.
My car navigation requiered the name of street, but I had no idea of the exact
address of the station and Place de la Gare seemed a safe and trustworthy name.

That was my second mistake.

My car navigation led me to a wrong station!
Desparately I looked around at a foreign station place and found a seemingly
Belgian local couple walking on the street.
I asked to a young guy how to get to the Guillemins station, and he explained me
in English using his google map. (I tried to speak in French, as Liege is situated in
the Fench speaking area of Belgium.)
Perhaps I didn't seem quite convinced by his explanation, he kindly offered to
guide me to the station with his car!

That was my fiirst right choice of the day, as I picked up a right person!
Against all odds (I made it to London)_c0188818_534514.jpg

He was extremely kind and drove slowly enough to avoid losing each other.
But the Belgian traffic sytem didn't do me any favour: every single traffic light
was red. I followd my Belgian Guardian Angel's car patiently and suspensefully,
as I was sure he might take me to the main entrance of the station where it is
extremely hard to find a parking space.....
We arrived at a temporary parking area of maximum parking duration of 15 min.
I thanked him politely, and he wished me a pleasant journey, but I missed my
train to Brussels after having looked for long-term parking. As it was Sunday,
the next train to Brussels would depart over an hour, which meant I could hardly
catch my Eurostar.

So I decided to drive further to Brussels, which turned out obviously to be another
wrong decision.

I drove along the Belgian highway of Belgian road quality surface with an average
speed of 135 km/h. So I theorecically would make it to catch my Eurostar.

But of course, there was another obstacle.

Brussels-midi station is known for its closeness to rather an infamous
area where some terrorists and terrorism suspects have been living safely.
But I didn't know anything about its famous Sunday afternoon market around
the station. The traffic situation there was chaotic and it was impossible to get
closer to the station by car.
I asked the police officers in French, Dutch and English, where I possibly could
find a parking. Their answer in French (oddly enough same as English) was
IMPOSSIBLE until 16:00.
Then one of the police men instructed me in Dutch how to reach the underground
parking underneath the station, and he even knew the address of the parking!
I put that into into my car navigation and I managed to get there finally, but too
late.
My Eurostar left on time, unfortunately.

I went to the ticket info desk and said that I missed my train.
The guy at the desk said, "Just try to check in, if the machine accept your ticket,
you can go, otherwise you have to buy a new ticket".
I went to the check-in desk instead of a check-in machine, and just showed the
deskperson my ticket without saying a word.
The guy scanned my ticket and issued a new ticket of the next Eurostar, without
speaking a single word. He didn't ask me anything and any charge at all.
At last Fortuna smiled on me.

I arrived at London St. Pancras one hour later than I originally had planned,
exhausted from troubles but blessed with the last resort.
# by didoregina | 2016-09-07 05:04 | 旅行


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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