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リスボン、プチ旅行

なるべくお金をかけずに遠征することを旨として実践しているのは、オランダ暮らしが30年近くなった
わたしの思考がかなりオランダ人化したせいだと思う。
節約は国民的スポーツとして、貧富・階層を問わず推奨されている国なのだ。

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なにも一泊で帰ってこなくてもよかったのだが、スポーツ競技に参加する気分になって、とにかく
ストイックに、どれだけお金を使わずにすむのか試してみたくなった。
詳細はこの前の投稿に記したが、リスボン遠征費用はごくごく少なくて済んだ。
それなのに、貧乏旅行という気分には全くならなかった。EUの中でもポルトガルは物価が異常に
安いからだ。
用意したおこずかいが余ってしまって、前日に町中で一足買ったばかりなのに、帰路空港でまた
同じメーカーのを見つけ、色違いの靴をもう一足買ってしまったくらいだ。

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食事に関しては、南欧だからまずいものに当たるのは難しい。
リスボンの水辺では潮風が感じられるので、当然、焼き魚が食べたくなった。
観光客よりも地元の人が多そうで、外のテラスも店の中も盛況のレストランのテラスに座った。

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               坂道の階段をどんどん登って行くと見晴らしがよくなる。

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座ったテラス席からの町の眺め。

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               3種の焼き魚。しっかりと焼いてあって美味しい。


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ハーフボトルのワインも頼んだら、ランチのあと眠くなってしまった。ゆっくりと食事をとってから、
ホテルに戻って、夜のコンサートまで仮眠した。


イングランドの旗が各所に翻り、サッカーのイギリス人サポーターがやたらと目につき、
聴こえてくるのは、町中でもホテルでもレストランでもイギリス英語ばかりだ。
ロンドンのサッカー・チームと地元チームとの試合が一週間ほど続いたそうだ。その応援の
ためにリスボンに遠征して来ているイギリス人が町中にあふれていたのだ。

それを教えてくれた、空港への往復送迎キャブのドライバーもイギリス人だった。行きも帰りも
同じ、おしゃべり好きの運転手だった。
コンサート前後にイエスティン君に会うことができておしゃべりしたので、リスボンに来たというのに
話した相手はイギリス人ばっかりだった。

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リスボンへの一人旅というと、サウダーデというか旅の重さとか苦さを感じるのではないかと
予想していたのだが、さわやかな春風といい陽気のリスボンはさっぱりと明るく、正味ほとんど
24時間のプチ遠征は充実して、旅情にも寂しさにも浸る時間はなかった。
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by didoregina | 2014-03-27 14:46 | 旅行 | Comments(2)

イエスティン・デイヴィスの『ソロモン』を聴きにリスボン遠征

リスボンへ一泊の弾丸遠征をした。それも1人で。
今年おっかけターゲットに定めたイギリス人カウンターテナーのイエスティン・デイヴィスが
タイトルロールを歌うヘンデルのオラトリオ『ソロモン』をどうしても聴きたかったからだ。

c0188818_4252940.jpgThursday, 20 Mar 2014, 19:00 - Grande Auditório

GULBENKIAN ORCHESTRA
GULBENKIAN CHOIR
PAUL MCCREESH (conductor)
IESTYN DAVIES (countertenor) (Salomão)
INÊS SIMÕES (soprano) (Rainha de Salomão)
GILLIAN WEBSTER (soprano) (Rainha de Sabá)
MHAIRI LAWSON (soprano) (Primeira Prostituta)
CÁTIA MORESO (mezzo-soprano) (Segunda Prostituta)
THOMAS WALKER (tenor) (Zadok)
HUGO OLIVEIRA (baritone) (Um Levita)

Georg Friedrich Händel
Solomon, HWV 67


イエスティン君が出演した(主演といってもいい)ヘンデルのオペラ『ロデリンダ』鑑賞の
ために行ったロンドン遠征から2週間ほどしか経っていないから、現在、彼にどれだけ入れ
込んでいるのかお分かりいただけるかと思う。

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ポルトガルに行くのは、ヨーロッパ在住30年近くになるが今回が初めて。ヨーロッパ大陸の
西南の果てに位置するポルトガルは、なんと、CETとは一時間の時差があるGMTを採用している。
ブリュッセル空港からリスボンまでは3時間のフライトであるから、同じヨーロッパ内とはいえ、
かなり距離的には遠い。
しかし、ライアン・エアの今月から出来たてほやほやのこのルートのフライトは安い。
往復で60ユーロである。
それに空港からトランスファー(ホテルへのキャブ送迎)が往復で14ユーロ。
ホテルは、ホール至近で朝食付き50ユーロ。
そしてなんと、グルベンキアン音楽堂のコンサート・チケットは最前列かぶりつきの一番高い
席で27ユーロ!
全部合計しても、近場の歌劇場の一番高い席より安いし、1月のドルトムント遠征費用よりも
100ユーロ近く安くあがる勘定である。
(こんなにくどくどと細かくお金の話をするのは、それだけ「リスボン遠征」が心理的・距離
的に引っかかるものがあり、1人で行くことに罪悪感さえ覚えたためである)

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グルベンキアン音楽堂の舞台後方はガラス張りで、外の公園が借景。


コンサートは2夜連続公演だが、初日を一回だけ聴きに行った。
通常、遠征するときには2泊して別の演目も組み合わせるのだが、リスボンの歌劇場は月に2,
3日しか稼働していず、コンサートとオペラを組み合わせるのはまず不可能だ。
それならば追っかけの王道として、同じコンサートを二晩続けて聴くという選択肢もある。
当日の歌手の出来不出来、コンディションの違いが分かり、音楽的にもより楽しめるというのと、
ドタキャンがあるかもしれないから、保険代わりに2回は同じ演目を鑑賞するのが、一般的遠征
の鉄則であるらしい。
しかし、私は一期一会を大切にしたいと思う。一回のコンサートやオペラ鑑賞に全力投球したい。
それに私の場合、おっかけ歌手がキャンセルしたことはほとんど皆無である。(1月のドルト
ムントでのデュモーのキャンセルは本人も言っているが10年以上のキャリアで初めて。今後
10年はないだろうとのこと)
だがしかし、一回だけコンサートを聴きにいくというのは果たして正しい選択なのか、直前に
なって悩んだ。

結果はどうだったかというと、一回のコンサートが十二分に満足いくものだったため、もう一回
聴くべきだったのに!という後悔はなかった。

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                   女性ソリストたち

数あるバロックオペラの中でも、ヘンデルのオペラの数々は上演機会がダントツに多い。
音楽的に美しく万人向けであるから集客がしやすいのと、歌手やオケのレパートリーに入って
いる作品が多いこと、そして、内容的にもギリシャ神話を題材に採ったものが多く、ユニヴァー
サルかつ時代を超越したテーマを扱っているため舞台にかけやすいという理由であると思う。
それに対して、聖書の物語を題材にとったオラトリオの方は、構成上オペラに近いにもかかわ
らず、舞台形式で上演されるものではないし、コンサートにしても演奏される機会はあまり
多くない。
そしてまた、ヘンデルのオラトリオの歌詞はほとんど英語で書かれているから、英語のネイ
ティブ歌手によって歌われるのが自然であるように思われる。
手持ちのCDは、ダニエル・ロイス指揮、ベルリン古楽アカデミー演奏、RIAS室内合唱団と
オール英国人ソロ歌手によるものである。(ソロモンは、メゾのサラ・コノリー)

また、今回の実演の指揮者と同じポール・マクリーシュの指揮、イエスティン君がソロモンを
歌う動画もYoutubenに全編アップされているので、↓に貼る。



上の動画も、上記CDも古楽オケによるきびきびしたテンポの溌剌たる演奏である。

今回鑑賞したコンサートでは、指揮者はマクリーシュだが、手勢のガブリエリ・コンソート
ではなく、ホール専属のモダンオケおよび専属合唱団による演奏だった。
どうも、なんだか水で薄まったような、ちょっと頼りない演奏である。
ソロ歌手は、半分くらいが英語ネイティブであろうかと思われる。
バリトンとテノールはちょっとオペラチックな歌唱だなあ、と思った程度でそれ以上、印象に
残らない。
女性歌手は、遊女その一とシバの女王の清らかな声と美しく惚れ惚れするような英語の発音とで
好感度が高かった。特に、遊女その一が、我が子を思う母親らしい心情を切々歌い、やはりこの
オラトリオの一番の聞かせどころだなあと、ぐっと胸を掴まれた。

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最前列中央より一つ右寄りの座席なので、イエスティン君は
            目の前。あまりに近すぎて、写真が上手く撮れなかったほど。


さて、肝心のイエスティン君の歌唱はどうだろう。
彼は、数日前までオペラ『ロデリンダ』に出演していた。そのオペラのマチネ公演の出待ちを
した時は疲れているようで、楽屋出口での彼は異常に言葉少なかった。
千秋楽の翌日にはリスボンに飛んだようで、すぐにリハーサルに入って、『ロデリンダ』の
千秋楽から5日後が『ソロモン』のコンサート初日だった。
本当にリスボンで歌うんだろうかと心配だったが、リスボンの天気を知らせるツイートを見て、
ああ、これでもうキャンセルはないだろう、と安堵した。
緊張気味の表情であるが、いつも通りどの音域でも安定してきっちりした歌唱としっかりした
声量で、安心して聴くことができた。

私自身びっくりしたのは、このところイエスティン君の実演やCDばかり聴いているため、あま
りに彼の声に耳が馴染んでしまって、舞台上の彼の歌唱を聴いてもトキメキを感じるよりも、
まるで生活の一部のようになっているというか、手の内がすっかりわかっている長年慣れ親し
んだ人に接するような気分になったことだ。
コンサートという非日常の時間と空間での体験の最中なのに、ごく日常的な幸福感に近いものを
感じ、自然に笑みが湧いてくるのだった。なんというか、ほっこりした羽毛に抱き包まれたかの
ような安心感に浸れるのだった。
こうなるともう、客観的になったり批評的に聴いたりすることは不可能である。

初めて見る詰襟のステージ衣装がストイックな雰囲気で、賢王のイメージにぴったりであった。

終演後、出待ちする人が他にはいなかったので、イエスティン君と少しおしゃべりができた。
今回の演奏は、モダンオケによる演奏で440Hzのモダンピッチなので、バロック時代のピッチ
に比べて高いため、特に高音が多いヘンデルのソロモンではCTである彼にはかなり辛かったそうだ。
翌日もう一回だけの実演で終了するからなんとかなるだろう、とのこと。
コンサート終了後の充実感と高揚感で饒舌になっている彼の態度からも、その晩のコンサートの
出来が満足いくものであったことが感じられるのだった。
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by didoregina | 2014-03-25 22:50 | コンサート | Comments(9)

イエスティン・デイヴィスのインタラクティブ・インタビュー

イエスティン・デイヴィス・ファンの皆様、先日の『ロデリンダ』ラジオ放送はお聴きいただけましたか。
お聴きになった皆様の忌憚のないご意見・ご感想をお待ちしております。

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ラジオ収録のあった8日に実演鑑賞した人から、2日にわたしが鑑賞した感想とほとんど正反対の
ご意見を伺い、歌手の声というのはナマモノ、日によってコンディションも相当異なるんだな、と
思ったことでした。
『ロデリンダ』は今晩、千秋楽を迎えます。一回しか実演鑑賞できなかったのが心残りですが、
8月にグラインドボーンで『リナルド』にイエスティン君が主演するのを心待ちにしています。

昨日イエスティン君は、デジタルシアターというDVDなどの有料視聴サイトと提携して、パーセルの
『ダイドーとエネアス』がそのサイトで視聴できることになったことを記念しての(?)、インタラクティブ・
インタビューを行いました(インタビュー視聴は無料)。
ツイッターであすくイエスティンというハッシュタグ付きの質問をすると、デジタルシアター経由でイエス
ティン君が質問に応答してくれるというもので、彼にとっても初の試みです。

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このDVDになっている『ダイドー』は5年前にROHで上演されたものです。サラ様がダイドー役であり、
そのために初めてのロンドン・オペラ遠征をしました。そして、わたしが実演鑑賞した日にカメラが
入って映像の収録が行われたのです。
その『ダイドー』にイエスティン君も精霊役で出演していたことは、昨年11月に彼に会うまで知りません
でした。舞台に姿を現さない、声だけの出演だったからです。

パーセルの『ダイドー』はもともと好きなオペラだし、このプロダクションには上記のような縁もあるし、
わたしもダイドーを名乗る女の端くれ、手を出すまいと思っていたツイッターですが、イエスティン君の
インタビューに参加するため、アカウントを急きょ作って質問を二件ツイートしました。
幸運にもブログのハンドル名であるdidoregina(女王ディドという意味のラテン語)は、まだツイッター
では誰も使っていないためその名前で登録できました。

インタビューの生放送はCET午後2時だったため視聴できませんでしたが、Youtubeにアップ
されたので、その日の夕方に見ることができました。




インタビューは、やはり『ダイドー』に関することがメインになっているので、わたしのした質問に
応える内容で始まって、しかもかなりそれに時間が割かれていました。作戦勝ちです!
それは「精霊役でこの『ダイドーに』出演していたけど、声だけで姿は見えませんでした。でも、
カーテンコールでは舞台に出てきたのかしら?」というもので、彼がいろいろ話した後でインタビュ
アーが、質問をしたわたしの名前を出しています。

そして、わたしの第二の質問は「パーセルの『アテネのティモン』録音に、ボーイソプラノのキュー
ピッド役でとても若い時に参加してますが、それが初めての録音ですか?」というもので、パーセルに
こだわった内容にしてみました。
これにも面白い逸話を交えて答えてくれました。

普段着で自宅からPC経由で答えるインタビューでの彼はリラックスした雰囲気で、一つの質問に
対して10倍以上の密度と長さで答えるのがいかにも彼らしく、おしゃべり好きという性格とファンに
接する真摯な態度が窺えます。
30分近くあるため内容も濃く、ファンにとってはお宝のインタビュー動画といえましょう。
(ライブ・インタビューの途中でイエスティン君が画面から消えてしまうというアクシデントは、やらせ
かしら。。。)
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by didoregina | 2014-03-15 11:59 | イエスティン・デイヴィス | Comments(2)

雨模様のロンドンでも着物でオペラ鑑賞

充実のロンドン遠征から戻ってそろそろ1週間になる。
行く前から大騒ぎで選んだ着物とコーデだが、雨という天気予報のため遠征直前に変更した。

3月2日のENOでの『ロデリンダ』鑑賞に着用した着物。

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訪問着に富士山を印象派風に織り出した綴れ袋帯という当初のコーデだと、まるで結婚式に
出席するような大げさな雰囲気になる。マチネ公演には似つかわしくないのではないかと
思い、雨にも比較的強い大島に変更。大好きなので個人的に思い入れがあり気合を入れた
場面に着用を限っている白大島にした。
前回着たのは、4年前のロンドン遠征でのサラ・コノリー主演の『ダイドー』鑑賞の時である。
去年イエスティン君に会うまで知らなかったのだが、DVDにもなっているROHの『ダイドー』
には、なんと彼も精霊役で声だけの出演をしていたから、この着物には縁もあるのである。
帯は、同色のトーンの相良刺繍の袋帯。白っぽい着物に白っぽい帯という組み合わせが好き。

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      ロンドン滞在中にもお世話になった、ロンドンの椿姫さんご自宅お庭で。


翌日は、ROHで『連隊の娘』を鑑賞。着物とコーデは当初の予定からほぼ変更なし。

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            パステルっぽいブルーグリーンに花びらの散る小紋に
             正倉院風の向かい鳥柄の袋帯。やはり同色系のコーデ。


しかし、思わぬ番狂わせはその晩にあった。
オペラ鑑賞前に、イタリア料理店でPrimroseさんと椿姫さんとディナーをご一緒する約束をした
のは、かれこれ3か月も前である。
アラーニャが通っていたというレストランだから、アラーニャに会えたらいいわね、と言いながら。

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レストランのオーナーがそっと耳打ちしてくれたのは 終演後、フローレスがここに来るから、
あなたたちもまたいらっしゃいという、信じられない内容であった。
お得意客であるPrimroseさんと椿姫さんのおかげである。


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                着物姿だと歌手も喜んでツーショットしてくれる。
                なんと、彼もアシスタントに頼んで自分のスマホで
                着物スリーショットを撮らせていた!


『連隊の娘』といえば、ドゥセがマリー役で、フローレスがトーニオ役のローラン・ペリ演出ROH
プロダクションが私の中でデフォルト化している。
その晩、初めて生で聴いたフローレスのコンディションは盤石で、揺るぎのない素晴らしい歌唱を
披露してくれた。
その彼と主要出演者たちが、初日の打ち上げを終えて、深夜近くになってレストランに現れた。
しかもフローレスはご機嫌で、歌を歌いながら入ってきたのだった。
遅くまで粘って待っていた甲斐があった。
信じられないほどラッキーな遭遇続きのロンドン遠征であった。
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by didoregina | 2014-03-11 14:23 | 着物 | Comments(8)

『ロデリンダ』のカーテンコールと出待ち写真

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                               Courtesy of Tsubakihime (Peraperaopera)

イエスティン・デイヴィス・ファンの皆様、昨晩BBC3よりラジオ生放送されたENO公演
『ロデリンダ』はお聴きになりましたでしょうか?
まだの方は、下のリンクからあと6日間オンデマンドで聴くことができますから、ぜひ!
http://www.bbc.co.uk/programmes/b03x160z

ENO公演『ロデリンダ』でのイエスティン・デイヴィスのカーテンコール写真と楽屋出口で
撮った写真をアップします。
平土間2列目正面席だったにもかからわず、私の撮ったカーテンコール写真は、ぶれたり
タイミングが悪かったりして碌なのがないため、ご一緒したロンドンの椿姫さまの撮った
写真を何枚か譲っていただきました。全て3月2日に撮影されたものです。

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イギリスの各紙でも『ロデリンダ』公演、特にイエスティン君は絶賛されています。

中でも、オブザーバー紙のフィオナ・マドックス女史の評には、私自身かなり共感する部分が
多いので、リンクを張ります。ご一読ください。http://www.theguardian.com/music/2014/mar/09/rodelinda-eno-jones-curnyn-review?commentpage=1

その中から、イエスティン君のパフォーマンスに関する部分を抜粋します。

”Yet no single organisation has brought the composer's operas back to life more assiduously or persuasively than ENO, whose radical reinvention began with Nicholas Hytner's Xerxes in 1988. Jones and Curnyn, like others since, have continued that tradition. It helps when a production has a big star. The night belonged to Iestyn Davies. An ex-chorister of St John's College, Cambridge, Davies has suddenly accelerated from "promising British countertenor" to world-class artist. He can sing, whether full blast or hushed pianissimo, with a strength, steadiness of tone and musical confidence almost unknown in a voice type which has tended – shout me down – to prefer ethereal frailty as a calling card. He also has an understated sense of comic timing.”
(Fiona Maddocks, The Observer, Sunday 9 March 2014)


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              出演歌手では一番最初に楽屋口から出てきたイエスティン君。
              速攻で鬘と化粧を落として着替て出てくる早業に驚きましたが、
              それよりも先に来て待っていた私達に、彼の方もびっくりの様子。



"The supreme star of the show is Rodelinda, sung with ravishing tone and great intensity by Rebecca Evans; but Iestyn Davies as Bertarido is magnificent, too, and his acting is as concentrated as his singing."
(Michael Tanner, The Spectator, 8 March 2014)

上に抜粋を載せた、スペクテイター紙の『ロデリンダ』評、リンクはこちらです。http://www.spectator.co.uk/arts/opera/9152011/the-musical-side-of-rodelinda-was-close-to-perfect/


また、BBC Music Magagineのウェブサイト、クラシカル・ミュージック・ドットコムのヘレン・ウォレス
女史による評にも同感、おもわず頷く部分が多いので、リンクを張ります。
http://www.classical-music.com/blog/handels-rodelinda-eno

"Iestyn Davies stole the show with aria after aria of heavenly purity and ardour."

"At other times it works hand-in-glove, building up a terrific tension during Bertarido’s aria at the end of Act I, when he believes Rodelinda has betrayed him, as she and Grimoaldo whirl through the rooms in an intensely sexy tango (what a relief to find real choreography and singers who could compete in Strictly), or in the mercurial, chromatic aria in Act III as Grimoaldo dashes impotently about searching for the right weapon, furiously whipped up by Curnyn. Most memorable of all is the heart-stopping ‘Io t’abbraccio’ at the end of Act II, when Davies and Evans voices come together at last (a fabulous match) just as they are ruthlessly separated, each singing to the other as the rooms they stand in are dragged physically further and further apart. A witty production with a dark heart; don’t miss it."
(Helen Wallace, Classical-music.com, 4th March 2014)

長いこと待ち望んでいた『ロデリンダ』実演鑑賞にどきどきでしたが、イエスティン君の素晴らしい
歌唱と演技、楽しめるプロダクションに大満足。そして出待ちも上手くいき、最高のロンドン遠征
となりました。

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by didoregina | 2014-03-09 21:49 | イエスティン・デイヴィス | Comments(10)

ヘンデルの『ロデリンダ』@ENO

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2014年3月2日@ENO

Rodelinda Rebecca Evans
Bertarido Iestyn Davies
Grimoaldo John Mark Ainsley
Eduige Susan Bickley
Unulfo Christopher Ainslie
Gardibaldo Richard Burkhard

Conductor Christian Curnyn
Director Richard Jones
Set Designer Jeremy Herbert
Costume Designer Nicky Gillibrand
Lighting Designer Mimi Jordan Sherin
Video Design & Animation: Jeremy Herbert and Steven Williams
Movement Director Sarah Fahie
Translator Amanda Holden










English National Opera (ENO)で現在上演中のヘンデル『ロデリンダ』は、この歌劇場の通例
通り、原語ではなく英語上演である。
ヴェルディやロッシーニ、プッチーニはたまたドニゼッティなど、こてこてのイタリア・オペラを英語で
歌われると、かなり耳なじみが悪いだろう。。また、ヘンデルのよく知られたイタリア語歌詞の曲の
場合も英語で聴くのは辛い。しかし、ヘンデルのオラトリオにはもともと英語歌詞の作品が多いから
だろうか、今回のオペラも英語に訳して歌われるのを実際に聴いてみて、当初恐れていたほどの
違和感を感じなかった。
オペラ『ロデリンダ』には、私自身あまりなじみがないと言うこともあるが。

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ロンドン・コリシアムと呼ばれるこの歌劇場は、トラファルガー広場から程近い場所に1904年に
建てられ、外観も内装もなかなか重厚な世紀末趣味が感じられる。
円形に近いホール中心に沿うように客席が作られ、ホールに奥行きがあまりなく、大きさも程よく、
客席床は緩いスロープで少しずつ高くなっているから、平土間のどの位置に座っても舞台はよく
見えそうだし、音響にも大差なさそうだ。
私たちは、今回、平土間2列目中央に席を取った。

舞台前のオーケストラピットは深めで、1列目中央に座っても指揮者の頭が邪魔にならないだろう。
しかし、そのためもあるのか、小編成のオケの音は音量が控えめでよく聴こえてこない感じだ。
まあ、イギリスの古楽系指揮者およびオケにありがちなので驚かないが、とにかく歌手の邪魔を
しないことを旨としているとしか思えないような、耳にも胸にも響かない、印象に残らない演奏で
あった。彼らの演奏には、ワクワク感とかスリルとか主張のあるカッコよさとかを期待するのは
間違いである。火傷しそうなほど熱かったり、ピリッとしたスパイスの利いた演奏を聴かせる、個性
溢れるヨーロッパの古楽オケやアンサンブルの数々に慣れた耳には、さらりとした無色透明の白湯
みたいで、味とか熱が全く感じられないのだった。

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上の写真で舞台の全体的な造形がよくわかるだろう。
『ロデリンダ、ロンバルディアの女王』というタイトルから乖離しないよう、時代は50年代かと
思しく、ミラノの暗黒街が舞台である。
舞台手前に置いてある3基のホームランナーの上を登場人物が走ったり歩いたりして、ちょっと
レトロなフィルムノワールのカリカチュア的雰囲気、例えるならば『ディック・トレイシー』みたいな
イメージである。
ミラノを独裁で牛耳っていたと思われるベルタリドは、敵対するマフィアの親分グリモアルド に
よって失墜・追放させられた。その妻ロデリンダと息子は、敵方に捕えられ軟禁されている。
ヴァレンチノもどきの無声映画時代のハリウッド・スターのブロマイドみたいな甘い表情で写って
いるベルタリドの栄光時代の写真が、壁にべたべたと貼られているのには笑えてしまう。l

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             妻子が心配で、浮浪者に身をやつしてミラノに舞い戻ってきたベルタリド


ロデリンダとベルタリドの息子は、リチャード・ジョーンズによる今回の演出では、20代始めと
思しき年齢設定なので、ロデリンダもベルタリドの妹エドゥージも50歳くらいの年増の雰囲気で
違和感はない。しかし、ベルタリド役のイエスティン・デイヴィスは30代前半と若いし、もともと
ベビーフェイスで実際の年齢より普段でも若く見えるから、白髪交じりの鬘を付け老けメイクを
しても20歳くらいの息子がいる中年もしくは初老の男性に化けるには無理がある。
イエスティン君は目チカラがあるし、痛々しい表情で苦い境遇の薄幸の人物を上手く演じては
いるのだが。
彼の役どころは、最初から最後まで同情を買う、悲劇の主人公である。

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それに対する敵のグリモアルドは、憎々しげで太ったマフィアの親分風の嫌な奴で、まさしく
アメリカ映画の悪役そのものだ。
ジョン・マーク・エインズリが下種な悪役になりきりなのに唸らされた。
徹頭徹尾カリカチュアライズされた悪役だから、やることなすこと笑いを誘うのである。

ハリウッドのギャング映画のパロディー風演出なので、悲劇の主人公ベルタリドはいつでも
弱々しげな哀しい目つきで、ワルイやつににいたぶられがまま、という善悪・白黒がはっきり
した設定と展開だから、全体のトーンはコミカルにならざるをえない。オペラセリアであるはず
なのにドタバタコメディになっているのである。
それは今日、ヘンデルのオペラを現代演出で上演する場合、避けられないパラドックスなのだと
思う。もともと、喜劇的要素がある脚本だし、音楽にも悲劇のトーンは少ないからだ。

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このオペラでは、CTによって歌われるベルタリドのアリアに美しい曲が多いし、同情を誘う役柄
だし、今回のキャストでもイエスティン・デイヴィスの存在感(歌唱と演技両方)が贔屓目でなしに
一番光っていた。タイトルも『ロデリンダ』ではなく、『ベルタリド』にしたらよかったのではないかと
思えるほどだった。イエスティン君が真の主役であったことは誰の目にも明らかだった。

とにかく丁寧かつ誠実に心を込めた歌を聴かせるのが彼の真髄である。歌唱に無理がないから、
音がぶれたりすることが全くなく、どの音域でもとても安定して安心して聴くことができる。
声質的には、CTの中ではかなり男っぽい声である。
装飾に凝ったり技巧に走るタイプではなくストレートな歌唱で勝負するから、ヘンデルのオペラに
ぴったりだ。
彼の歌を聴いていると、言葉の意味の重要さも大切にしていることがよくわかる。単語のひとつ
ひとつにしっかりを意味を込め、音符の一つ一つを大切にして色と陰影を付けるから、美しい英語の
発音も相まってとても分かり易く、聴く者の心にまっすぐに届く。
だから、ベルタリドの心情を切々と歌われるのに胸が痛んで、こちらの目からも思わず涙が
こぼれそうになった。

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さて、ベルタリドの腹心の部下であるウヌルフォ役もCTであるから、二人のCTを同じ舞台で聴き
比べることができるのも楽しみにしていた。
しかも、まだ生の歌声を聴いたことのない、期待のクリストファー・エインズリーだから、彼の歌唱に
は身を乗り出して聴く構えだった。
イエスティン君と比べると、クリスの歌唱はメリハリに乏しく一本調子だ。彼の声も比較的男性的で
ダークな色合いで少々重い。まだ若いから、これから経験を積んで変化していくだろうから、今回
の舞台のみで判定するのは早計ではあるが、ちょっとまだ歌唱では印象が弱い。

c0188818_0444480.jpg

                     左がクリス

しかし、クリスには、舞台映えするルックスと存在感という強みがある。このまま研鑽を積んでいけば
キャリアも自ずと開けるのではないかと思わせた。

ところで、今回の登場人物は皆、思い人の名前を自分の体に彫っていたり刺青を入れさせたりする
のだが、最後近くのシーンになって、血だらけのシャツを脱いだウヌルフォの背中に大きく彫られた
名前を見てにやりとしてしまった。そこには、ベルタリドと彫られていたのだ。


この『ロデリンダ』は、明日3月8日CETで18時50分から(GMTで17時50分から)BBC3より
生放送される。
一週間はオンデマンドで聴けるはずなので、ぜひともお聴きいただきたい。

http://www.bbc.co.uk/programmes/b03x160z
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by didoregina | 2014-03-07 17:01 | オペラ実演 | Comments(10)


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