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Love Is All You Need (Den skaldede frisør)

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監督 Susanne Bier
出演 Pierce Brosnan,
   Trine Dyrholm,
   Kim Bodnia,
   Sebastien Jessen,
   Molly Blixt Egelind,
   Paprika Steen,
   Christiane Schaumburg-Muller

デンマーク 2012年







恒例月曜夜のリュミエールでの映画は、日本里帰り前に観たものだ。
英語のタイトルも、色合いや背景がなんだか『マンマ・ミーア』みたいなポスターも、
鉄面皮なまでにフィール・グッド映画という印象を与えるものなので、当初は観に行く気が
しなかったのだが、デンマーク映画であるということと、フォン・トリアー直系ドグマ95
に属する女性監督作品ということ、NRC紙の評やインタビューが興味を惹いたので宗旨替え
した。

デンマーク語の原題は『スキンヘッド(というかハゲ)の美容師』という意味らしいのだが、
オランダ公開では英語タイトルが使用されていた。これは、あまりにベタでやはり引けて
しまうから、デンマーク語タイトルを上手く訳したものにしてほしかった。

そして、元007のピアース・ブロスナンが初老のビジネスマンを演じるというのも、引けて
しまう要素なのだが、この映画での彼は老醜を隠さずなかなかにいい味を出しているのだった。
脱007イメージというのは難しいものだが、成功したといえるだろう。

なんといっても、主演のトリーネ・ディアホルムの存在感で持つ映画である。

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           イタリアでの結婚式にデンマークから集まった人々。

乳癌の術後、放射線療法で髪の毛がなくなってしまい、再発の不安にも怯える美容師の主人公。
その夫は、どうしようもない男である。自分勝手で、妻の気持ちも考えず、最初から最後まで
デリカシーのかけらも見せない行動を取り、子供達にも呆れられてしまう。

その夫とは対照的なのが、娘の結婚相手の父親であるピアース・ブロスナンだ。ハンサムで
金持ち、人間関係にクールな距離を保ち、他人に心を覗かれたくないというスタンスで、陰が
ある。
イタリアの美しい海と風景に囲まれた別荘での結婚式に呼ばれた熟年のこの二人は、いつの間
にか惹かれあうようになる。

という展開と風景から、Shirley Valentine(邦題『旅する女 シャーリー・バレンタイン』)
を思いだした。
単調もしくは息苦しい北国での日常から、光溢れる地中海という別天地で舞い上がってしまう
中年女という設定は同じでも、この二人の心には逃げたくても逃げられない暗い陰が存在して
いる、という点で深みがあり、さすが女性監督作品だと感心した。


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          娘の結婚式に、浮気相手の秘書を連れてきたバカ親父。


それぞれの夫と元妻の妹はどうしようもなく身勝手で自己本位だし、娘も息子も一筋縄では
いかないという人物設定は笑えたが、単なるフィールグッド映画ではないのは、主人公の
明るさと生への執着が自然で心地よいからだ。つまり、中年以上の女性にとって、主人公への
感情移入がしやすいのだ。

アマルフィの風景があまりにも美しいのがかえってしゃくというか、人間関係をシビアに描き
出すには甘みが強すぎるようにも感じられるが、主人公の心象風景と思えば合点がいく。
太陽の下、海や果樹園で自然のままの姿をさらし、新たな生を感じ生きたいと願う場にふさわ
しい。

舞台は主にアマルフィなのに、全体からは北欧映画らしさが発散している。
ストレートに言いたい放題の人間関係や、ドグマならではの不安定なカメラ・ワークや、一族が
集まる式で真実が暴き出されめちゃくちゃになって散会というパターンが踏襲されているからだ。

しかし、最後はやはりフィールグッドになれる仕組みだ。
デンマーク映画であるが、救いのないような暗さとは無縁の女性監督作品である。
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by didoregina | 2012-10-29 15:39 | 映画 | Comments(2)

ディープな東京で食べたレアなエスニック料理

この夏のクロアチアでのセイリング・ヴァカンスに、我が家のチャーター・ヨットにケータリング・クルー
(?)として参加したHとMは、麻布十番にある某大使館前の素敵なマンションに引っ越したばかり。
そこに3泊させてもらって東京見物をした。そうすると、夜は六本木ヒルズ辺りで食事したり、昼間は
恵比寿にある彼らのスタジオから代官山ヒルテラスへお茶しに行ったりと、とてもスタイリッシュな
展開となる。

そういうわけで、わたしの東京土産も、ブランド・ヴィンテージの店で見つけたUnited Nudeの
メビウス・パンプスというファッショナブルぶりである。
オランダの靴デザイナー(レム・コールハースの甥でやはり建築専攻の)レム・D・コースハースと
イギリスの老舗靴メーカー、クラークスの7代目、ガラハド・クラークスによるブランドで、構築的で
幾何学的な美しさのヒールに注目していたのだ。運命的な出会いを感じて(なんと大げさな)、
ほとんど履いた形跡がないその靴を安くゲット!

トレンディでヒップな東京とは別に、ディープな東京も体験した。

東京駅は、丸の内側の古い駅舎が改修され美しくリニューアルしたばかりで、観光客も多かった。
しかし、八重洲側は、まだ色々と工事中で混沌としている。
その八重洲という地名の元となった、ヤン・ヨーステンの記念碑を八重洲通りに見つけた。

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         彼の業績が日本語とオランダ語で書かれている。


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       リーフデ号で日本に漂着後、徳川家康に重用され、八重洲に屋敷を拝領した。


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         朱印船貿易を行ったVOC(オランダ東インド会社)の紋章

なにがディープかというと、この八重洲通りにある中央分離帯ベンチには、ホームレスがいたり
して、新聞や紙くずが散乱。ちょっと、記念碑のイメージとは合わないのだった。

そして、その後で向かったのは巣鴨。
モンゴル料理専門店で、オフ会を行ったのだ。
なぜモンゴル料理か、というと、わたしが「ヨーロッパで食べることができないエスニック料理を
希望」と注文したら、アルチーナさんが「モンゴル料理なんてどうかしら」と提案したのを受けて
bonnjourさんが即見つけてくれて、誰も食べたことがないので参加者全員の賛同を得たからだ。
見事な連携プレーである。さすが、長年のブログ付き合いの賜物か。
参加者は、総勢7名。アルチーナさん、bonnjourさん、straycatさん、 REIKOさんとヘンデル
協会のお友達I子さん、わたしとPである。

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着席すると、まずいきなりミルク・ティーと揚げ菓子が突き出しとして運ばれてきて、度肝を抜かれる。
ミルク・ティーには、岩塩をすりおろして混ぜる。塩味のティーなのだ。
料理はア・ラ・カルトで、羊肉入り小包籠、羊肉のペキン・ダック風など頼んだ。

また、クーポン・サービスで付く飲み物がウォトカというのも凄い。

そして、当店お勧めの料理はこれ ↓

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        羊のぶつ切りとリブの塩茹で。客が自分達で捌くためのナイフ付き。

馬頭琴(馬の尻尾で出来た2本の弦を弓で弾く)のライブ演奏も合間にあったりする、本格的
蒙古料理店であるが、料理の味付けその他には妥協がなく、常人の想像力を超えたもの。


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           モンゴル・チーズ

最後に出てきたチーズが、チーズ・フェチの私でも目を瞠る形状と、前代未聞の味と舌触りの
不思議なシロモノ。
ハード・タイプのチーズをおろして固めて揚げたような感じ。そして、塩味と乳酸の酸味が強い。
比類のないチーズである。デザートよりは、ビールのつまみにしたらよかった、と思えた。

モンゴル料理店でのオフ会では、めったに見つけられないディープな東京を味わえた。

雨の中、わざわざ巣鴨までお越しくださったオフ会参加の皆様には、心から感謝を申し上げたい。
そして、何が出てきても動じず、食べてくださる姿が心強かった。
話題は主にCTやバロック・オペラであったが、テノール談義も食い込んでの丁々発止のやり取り。
ディープな東京と同様に懐の深い皆様の態度に感じ入った次第である。
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by didoregina | 2012-10-25 17:31 | 料理 | Comments(10)

富嶽七景

富士はまことに日本一の山である。それは、高さのことだけを言うのではない。
四季や一日の天候や雲のかかり方や日の当たり具合で様々に変化するその姿。
思わず手を合わせてしまうほどの神々しさをたたえ、いくら見ても見飽きることがない。
今回の里帰り中は秋晴れの天候に恵まれて、美しい富士山の姿を目いっぱい愛でることができた。


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        箱根の早雲山から果てしなく続く急峻な上り坂を登りつめると
        峰の分岐点近くで富士山が拝める。疲れが癒される。


早雲山から大涌谷まで、普通なら登りのロープウェーで行くところを、山歩きした。
これが、もう、心臓破りの坂の連続で、傾斜が急なので休む場所もほとんどない。
このコースを選んだのを後悔したが、後戻りもできない。2時間、かなりのハイペースでひたすら
頂上を目指し、歩を進めた。
木が茂っていて、峰に出るまでは視界が利かない。しかし、そこから先に見え隠れする富士山は
絶景だ。


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        秋は夕暮れ。 夕日のさして山の端と近くなりたるに、、、


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        どんなへなちょこ写真家でもきれいに撮れるフォトジェニックな山。


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          大涌谷へと降りる山道の正面に富士山が現れた。


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          色調が、ほとんど東山魁夷の絵の世界。


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        大涌谷からロープウェーで早雲山に下る途中の、ほぼ赤富士。


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            東海道新幹線の車窓から。新富士駅付近。


富士山は、日本人の心の中のカミそのものだ。
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by didoregina | 2012-10-24 12:24 | 旅行 | Comments(9)

美しい日本の私

京都では、前回書いた理由で、神社・仏閣などに行く時間がほとんどなかった。
一日目は、かろうじて八坂神社だけ、暗くなる前に入ることができた。そして、夕闇迫る祇園に
二年坂・三年坂そしてねねの小道のそぞろ歩き。その頃には、清水寺はとっくに閉まっていた。
京都二日目は、泊まったホテルの前が二条城なので、朝食後に即見学。その後、嵯峨野・嵐山に
行ったのだが、商店街にある畳屋や提灯屋に時間を取られ、和紙の店でもじっくり腰を据えたりして
やはりお寺に入る時間は残らないのだった。

翌日、犬山ではダブル・デートの約束があった。
オランダでPから帽子作りを習っていたK子さんとY子さんにPは任せて、ブログ友のgさんVさんと
オフ会をしよう、という欲張りプランである。
まずは、犬山城見学の前に、城下町にある素敵な茶亭『有楽』(うらく)でお茶。

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        冷たい抹茶には、抹茶の氷ボールが浮かんでいる。
        お代わりにお湯を注してくれるので、二杯分楽しめる。

犬山は、磯辺邸や堀部邸など、豪商や武家の旧家の建物が別の用途に利用されているのが面白く、
わたしのディスカバー・ジャパンというテーマにピッタリの町だ。

犬山城は、靴を脱いで天守閣の中に入って木の急な階段を登ると、各階の意匠がオーセンティックで
窓からの木曽川も美しく、小さいながらとても雰囲気のいいお城である。

その後、名鉄犬山ホテルで待ち合わせたgさんVさんと共に、ホテル敷地内にある『有楽苑』(うらく
えん)を見学した。

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        織田有楽斎の茶室『如庵』が移設された庭園『有楽苑』

犬山には、機会があれば行きたくてたまらなかった。
なぜかというと、小・中・高と足かけ7年に渡って習っていたお茶が有楽流(うらくりゅう)であり、その
始祖・有楽斎(うらくさい)にちなんだ建物が残っているからだ。
しかし、茶室『如庵』は国宝なので、内部見学は月に一度の許可制である。滞在日程には合わな
かったのが残念だが、『有楽苑』にはガイドさんが付いてくれ、普通なら見逃すような細かい点まで
じっくり見ることができ、とても有益だった。

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         名カメラマンのgさんによる撮影

織田有楽斎(おだ・うらくさい)は織田信長の13歳年下の弟で長益といい、武芸にはあまり才能が
なかったようだが、茶人・数奇者としては波乱万丈の人生を送った面白い人物である。
禁制になる前にキリシタンになり、その洗礼名ジョアンから号および茶室を『如庵』と名付けたと
言われている。
武士としては臆病者だったおかげか、織田・豊臣の戦国時代を生き抜き、最後には徳川方に属し、
家康から数寄屋橋付近の土地と屋敷を拝領している。その辺りが有楽町(ゆうらくちょう)として
現在まで名前が残っている。(しかし、「うらく」という呼び方で残してもらいたかった)

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         国宝三名席の一つ、『如庵』は、竹を様々に使った
         意匠が美しい。暦貼りの腰貼りや有楽窓なども見逃せない。
         外から、中をじっくりと覗かせてくれた。

gさんもVさんも、なかなかの数寄者でいらっしゃるので、ガイドの説明に頷いたり、感嘆したりの
楽しい見学となった。このお二人という同好の士を同行に得たのは、まことに幸いであった。

庭園には、美濃の和紙で作られた「灯りアート」がそこここに置かれていて、秋の夕刻には灯りが
燈るようになっている。

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          庭に置かれた和紙の「灯りアート」のひとつ。

締めとして、旧正伝院書院(有楽斎の隠居所)で、お茶を頂いた。
清々しい竹や緑の多いお庭に点在する茶室や書院を見学したあとのお茶は格別で、豊かに心を
満たしてくれた。文字通り、美しい日本を満喫の午後であった。

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by didoregina | 2012-10-23 09:38 | 旅行 | Comments(8)

ディスカバー・ジャパン

元祖アンノン族(死語)だと自負している。
中学に入って読み始めた雑誌「anan」の旅のページにわたしの旅心は刺激され、小京都への
旅を夢見たものである。
実際に一人旅をしたことはほとんどないのだが、心はアンノン族である。
日本に里帰りして各地を旅行すると、ディスカバー・ジャパンというコピーを思い出しては郷愁を覚え、
山口百恵の歌う「いい日旅立ち」が頭の中をぐるぐる回るという具合である。

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     ディスカバー・ジャパン、しかも京都といえば、これ!
     嵯峨野 鳥居本の平野屋さんは、今でも旅行ポスターの定番。


今回の里帰りには、帽子の師匠Pという道連れがいた。彼女に、美しい日本を見せてあげなくては!
という使命感に燃え、色々と計画を立てた。
日本は初めてであるが、テキスタイル全般に興味があるPと一緒だと、例えば京都に行っても、
(外人)観光客の喜びそうな場所を訪問する時間がなかった。
なんと京都に二泊したのに、寺社を一つも見学できなかったほどである。
(ホテル正面にあった二条城だけはかろうじて見学)

その代わり、観光客があまり来ないような路地にある昔ながらの店や、普通のアーケード商店街に
ある小さなお店に入っては、色々なものを見せてもらっては遊んだ。

例えば、絹の白生地を扱うお店 ↓
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デッドストックの着物や反物を置いている小さな店や、畳屋さん、提灯屋さん、和紙の店などに
入り込み、説明を聞いたりするのは楽しく、しかもお安く珍しい買い物ができるのだった。

近くにある有名店には若い子達や観光客がうじゃうじゃいるのに、私たちにとってヴァルハラである
そういう店にはほとんど客足がない。だから、お店のおばあちゃんやおじさん、おばさんなどが
とても愛想よくじっくりとお相手をしてくれるので、一旦入るとなかなか出られず、結果として寺社
見学の時間が全く取れなくなったのであった。

Pは、帽子やバッグやスカーフなどを作るためやインテリアに使用するための反物、帯地、畳表、
畳の縁、紙布などをかなり沢山、しかも信じられないほど安くゲットできて、大満足であった。
その後、デパートなどに行って値段を比較すると、とてもいい買い物ができたことを実感。
おもわず、二人でにんまりした。
もしも飛行機の荷物の重量制限がなかったら、もっともっと買い込んだことだろう。

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      食事の時さえ忘れるほど、飽きずに日本のいいモノを探し回った。
      気が付けば落日が近い時間になり、提灯に灯がともっている。
      次回は、こんなお店でゆっくりと美味しいものを味わいたいものだ。
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by didoregina | 2012-10-22 14:51 | 旅行 | Comments(15)

Sol LeWitt Colors @ M Museum Leuven

ルーヴァンの美術館Mで10月14日までソル・ルウィットの展覧会Colorsが開催中だ。
観に行きたいと思いつつ、ほとんど会期の終わり近くになった先週の日曜日に主人と出かけた。

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        Mに来るのは2009年のリニューアル・オープン以来。
        この日はTV収録カメラが入っていたため、入場料無料だった。

この展覧会は、メッツのポンピドー・センターで開催されていた「1968年から2007年までの
壁画」展(3月7日~7月29日)と対をなすもので、ルウィットの作品が好きな友人のTが
メッツまで観に行ったのはモノクロの作品ばかりだったのに対して、ルーヴァンの方も同じく壁画
が主であるが、主題を色として前面に押し出している。

わたしがソル・ルウィットに注目しだしたのは、今年始め頃からだ。(遅れてる!)
まず、地元のボネファンテン美術館での月岡耕漁展に1月に行ったら、同じ階の東側の壁に
鉛筆で描かれた壁画(ウォール・ドローイングと呼ぶ方がしっくり来る)が目を惹いた。
ソル・ルウィットの作品にしては比較的小さなもので、壁一面という大きさではなく、タテヨコで
1メートルそこそこだったように思う。

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        Wall drawing 1239 Scribbles   2007@Bonnefanten

その時同行の主人もTの旦那さんHも、鉛筆で引掻いてぐるぐると描いたシンプルだが集中力と
根気のいる作品の美しさに驚嘆し、家でも皆でやってみようかという話になった。

その後、ニューヨーク在住のアート・コレクター、ヴォーゲル夫妻(ドロシーとハーブ)の現代
アート・コレクションのドキュメンタリー Herb and Dorothy Vogel- You don't have to be
Rockfeller to collect artを見たら、彼らがNYのアパートの壁にソル・ルウィットのコンセプ
チュアル・アートを指示通りに描いて、アーティストのお墨付きをもらっている場面があった。
なるほど、コンセプチュアル・アートとは、こういう風に指示を与えて他人に作品を創らせるものなのか
とようやく合点がいったのだった。

そして、3月に再びボネファンテン美術館に行ったら、アルド・ロッシ設計の塔のキューポラ天井の
内側が、ソル・ルウィットのスパイラルという壁画で埋めつくされているのだった。
白地に黒の一本の線がドーム型の入り口の床から螺旋型に壁を巡り天井に至るもので、見ていると
目が眩んでくる。

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Spiral #801 @ Bonnefanten

また、このボネファンテンの螺旋が出来るまでは、今年オランダで制作されたソル・ルウィットに関
するドキュメンタリー映画に納められていて、映画は来週リュミエールで上映される。


           Chris Teerinkによる ソル・ルウィットのドキュメンタリー
           の一部で、ボネファンテンのSpiralができるまで

このように、興味を持ったものが、次々に連鎖して目の前に現れてくるという現象が今回も
起こったのだ。
だから、ルーヴァンに出かけたのも、心の奥に存在する何かに導かれてのことである。

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        ルーヴァンでのソル・ルウィット展の作品のひとつ。色鉛筆で描かれたもの。

まず、実物を観る前に、この展覧会のメーキング・ヴィデオを小部屋で見た。
壁一面どころか、展示室によっては3面や4面を使った巨大な作品群である。どのように、それらは
創られていったのか。それを見るのは楽しかった。

ソル・ルウィットは2007年に亡くなっているが、彼のスタジオ、スタッフやアシスタントは残っている。
彼らが指揮を取る形で、各地の美術展にはその地の画学生が大量に投入されて、作業を行う。
ペンキ塗りの要領で、壁にまずサンド・ペーパーをかけて平らにする。そして、プランおよびシステム
に従って正確に下準備。定規や様々な用具を用いて線を描く。ルウィットの書いた作品創作の指示
には厳しく従うが、各人の自由の発露という面も少なくはあるが残されている。

ソル・ルウィットの展覧会のために制作された壁画は、その会期が終了すると白く上塗りされて、
壁を元の白い状態に戻すのだという。潔いものだ。

ルーヴァンでは、鉛筆、色鉛筆、チョーク、アクリル絵の具という風に展示室ごとに素材が発展
していくような展示になっているのだが、初期の頃の、色鉛筆の細い線で壁が埋め尽くされた作品が
特に気に入った。
一つの壁を斜め十字に区切って、その枠内は一色のタテの線で埋め尽くされている。その細かさは
まるで、江戸小紋の万筋を思い起こさせる。その美しさも万筋と同様だ。
そして、枠が交差する面は線と色が繊細な格子を描く。織物のような微細な美が壁に鉛筆で描かれて
いるのだ。

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         大きな窓ガラスに切り取られたルーヴァンの町並み。 
         右の壁にはソル・ルウィットのアクリル壁画。対比の妙。      
 
ルーヴァンの美術館Mは、古い建物と新しく建て増しされた部分が有機的に上手く繋がり、建て増し
部分の展示室にはいずれも大きなガラス窓が入っている。
だから、ルーヴァンの町並みが展示室ごとに様々な角度から眺められ、風景が壁の中に切り取られ
取り込まれたような形になって、壁の作品と対比しつつ調和している!
まるで、ソル・ルウィットの作品のために設計されたかのような新築部分なのだった。

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           テラスのようになった屋上からの眺めも抜群。
           高い塔のある建物は、ルーヴァン大学図書館。

屋上から見えたルーヴァン大学図書館は、美術館からもすぐ近くなので、歩いて行ってみた。
この図書館前の広場には、見たいと思っていたモニュメントが立っているからだ。

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           ルーヴァン大学創立575年を記念して2001年に作られた
           ベルギーの鬼才ヤン・ファーブル作のアート・モニュメントは
           巨大な針に刺し留められた玉虫の像

ヤン・ファーブルの名も、今年の夏はよく目にした。アムステルダムの新教会では、夏中、彼の
展覧会が開かれていたし、アントワープ郊外でも、昨年のヴェネツィア・ビエンナーレで発表された
「ピエタ」他の作品が展示されていた。ベルギー各地の劇場でも彼の作品が上演されている。
いずれもショッキングで、鬼才と呼ぶにふさわしい彼の作風が現れている。

昨年、夏休みの間だけ一般公開されるブリュッセルの王宮を見学した。一番印象に残っているのは、
ヤン・ファーブルがインテリアを担当した部屋だ。
その部屋の天井やシャンデリアなどは、数え切れないほどのタイ産の玉虫で覆われて、エメラルド色
に怪しく光っているのである。その部屋は、パオラ王妃が特別にファーブルに依頼したものだという。
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by didoregina | 2012-10-04 09:47 | 美術 | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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