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この夏はパンダ・バッグが大活躍

5月に完成して、それ以降あまりにヘビ・ロテだったため、写真を撮るのをすっかり忘れていた
この夏の手作り新作バッグ、その名もパンダ。

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      白のクロコ型押しの牛革を半円にして、底から付けた黒い凹凸のある
      ゴムのような合皮のマチがそのままショルダーになるデザイン。

白黒のはっきりした色のコントラストが、ちょっとお茶目なパンダのイメージだからだ。

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      デザイン、色ともインパクト大だが、夏の日差しの下では丁度いい。

色使いと形がとても使いやすいので、外出するときには、つい手が伸びる。ウィーンへの遠征にも
お供をしてくれた、頼もしい旅の友である。マチが十分あるからカメラもすっぽり収まる。ファスナー
付きでセキュリティーも万全。

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        口にはファスターを付け、裏地には立わく模様の羽裏もしくは
        襦袢地(染見本らしい)を使用。艶のある甘いパステル・カラーの
        シルクが、表側のパンキッシュな色と質感と好対照。


残暑が厳しかった先週のある午後、避暑のため、聖ピーター山の中腹にあるカフェの、マース川を
眼下に臨むテラスにお茶しに行った。

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             丘の斜面には、オランダでは珍しい葡萄畑


元もとは修道院の別荘だったという、カフェ・スラバンテは、涼を求める人々で賑わっていた。

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      わたし達もそうだったが、二人連れは向かい合わせに座らずに、
      川が見えるように二人並んで座るのだった。背後は木陰で涼しい。


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      手作りの麦わら帽子の手前は、地元産有機栽培のヴァイツェンと
      リンブルフ銘菓さくらんぼのフラーイ(パイ)。
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by didoregina | 2012-08-30 16:53 | バッグ | Comments(8)

A Royal Affair  一味違うコスチューム映画

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A Royal Affair (En kongelig affære)
2012
directed by Nikolaj Arcel
Mads Mikkelsen as Johann Friedrich Struensee
Alicia Vikander as Caroline Mathilde
Mikkel Følsgaard as Christian VII
David Dencik as Ove Høegh-Guldberg
Søren Malling as Hartmann
Trine Dyrholm as Juliane Marie







9月からは次男も家を出て、夫婦二人だけになる。いや、すでに大学のイントロダクション・ウィーク
その他が8月中旬から始まっていて、子供達はそれぞれデルフトとユトレヒトにいる。マーストリヒト
の家の中は静かなものである。
夫婦二人の共通の話題を作るためにも、いっしょにお出かけしよう、毎週月曜夜は他にアポが無い
限り、リュミエールで映画を見よう、と決めた。そして、早速実行に移した。

わたしが候補に上げた映画はA Royal Affair とTo Rome with loveだった。
主人は「ウッディ・アレンの映画がいい」と言うのだが、一応、NRC紙の水曜特別版映画紙面を
見せた。そこには前者映画の詳細および考察やインタビューなどと共に4つ星が輝いていた。
アレンの映画の方は、ヨーロッパご当地シリーズというマンネリが祟ったか、小さな扱いで評価は
3つ星。(最高が5つ星)
星の威力か、主人は即、鞍替えしたのだった。
確かに、NRC紙の評は説得力があった。それは、オランダとデンマークはどちらも小国で色んな
面で共通点が多いのに、デンマークでは国際的にも評価の高い映画が続々と作られるのに対して、
オランダでは歴史的および王室を題材にしてここまで踏み込んだ作品が作れないのはなぜか、という
点にまで及んでいたからだ。

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古今東西、王室にはスキャンダルは付き物である。歴史とは強者の記録である限り、国王その他の
権力者が表舞台に登場し、彼らの政治面での権力闘争だけでなく愛や欲も暴きだされる。
王家の者だからといって、つんとお高く澄ましているだけでもあるまい。何をしても許される絶対王政
時代の王様の行状は破天荒である。また、エキセントリックだったりちょっと頭がおかしい王様だって
確率上生まれてもおかしくない。

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18世紀デンマークの王クリスチャン7世はかなりの変人で幼稚で、政治には興味がない。
王にイギリスから嫁したカロリーネ妃とは性生活も性格も不一致である。
王の侍医としてドイツから迎えられたストルーエンセは、王の性格を見抜いて好きなことをさせるように
みせかけつつ、実は自分の信条を巧みに吹きかけ政治に深く関わっていく。
そして、王に飽き足らない王妃は侍医と愛人関係に陥る、というよくありがちの図式である。

それなのに、この映画はなぜかとてもフレッシュに映る。彼らの3人の関係はどちらかというとクールに
描かれて、愛や欲といった面があまり強調されていないからだ。
王と王妃役を演じるのが若くてフレッシュな俳優であるから、というのも大きい。
また、北欧ならではの冷たい空気の感覚が画面に充満しているからでもある。もしも、フランスやスペ
インやイタリアが舞台だったら、もっとどろどろしたものになったろう。

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王は、頭が変というより、奇人を演じているようなところがある。メンタル面で成長し切れていないのは
強く暖かい父親像への憧憬が強いせいであると見抜いた侍医は、家庭教師のような立場で接する。
そして、王の得意とする芝居を政治の道具として持込んだ。
すなわち、シェイクスピア劇の台詞などはそらで覚えている王であるから、用意した台詞を覚えても
らって王室でも王を演じてもらうというわけである。
しかし、侍医が脚本を書く王の台詞は、啓蒙思想に基づいたものである。絶対王政と啓蒙思想とは
水と油の関係であるから、非常に危ない橋を渡っているのだが、法律を次々と改定して、デンマーク
を理想の国に変革させようとする。

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しかし、貴族や僧正や継母の太后などの権力闘争が彼ら3人の周りに渦巻いていて、王および侍医に
よる政治改革の実は結ばない。
なかなかにスリリングな展開である。
画面のセンスもいいから胃にもたれない。得られるのは、満腹感よりは充実感なのである。
この映画がもたらす充実感は、愛・欲・権力というお定まりのこってりした材料だけに頼らず、理想・
思想というスパイスをミックスしているおかげで、全体の味付けがきりりとさわやかになってるためだ。

そして、役者が皆、べらぼうに上手い。
侍医役のマッツ・ミケルセンはもちろん、変人王を演じる新人の俳優がめちゃウマ。
若き王妃役のアリシアちゃんもめちゃくちゃ美人ではないところがまたいい。ちょっとハスキーな声が、
年よりも思慮深さと落ち着きがある王妃の存在感にリアリティーを加えている。

NRC紙では、これはよくあるコスチューム映画ではない、なぜ、オランダではこういう映画が作れ
ないのか、と問題提起されていた。答は、簡単には見つからないだろう。

封切後すぐの月曜日のリュミエールだから、この映画は盛況だった。しかし、いつもと客層がちょっと
異なるようで、クレジット・タイトルを最後まで見てる人はわたし以外ほとんどいなかった。
ヘンデルの音楽その他のタイトル以外に、ラース・フォン・トリアーがエグゼクティブ・プロデューサーの
筆頭として名を連ねているのを発見した。
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by didoregina | 2012-08-29 09:47 | 映画 | Comments(4)

モネ劇場の新企画 3 Films / 1 Artist

ブリュッセルの王立歌劇場モネが進む路線は、注目に値する。
強い意志の感じられる演目選定で、気鋭の演出家と指揮者の手になる公演が続々登場し、スター
歌手出演で集客を図ることは最初から諦めているが、見逃すと後悔するプロダクションばかりだ。
しかも、実演を見逃しても、全公演が終了後3週間はオンライン・ストリーミングで見られるという
お膳立てのよさ。オンデマンドでタダだし、一挙に視聴できなくても次に見るときにはストップした
その続きからという配慮も素晴らしい。オランダ語フランス語に加えて英語字幕も選べるようになった。
歌劇場がイニシアティブを取るオンライン・ストリーミングに関しては、他の劇場の数歩先を進む
モネ劇場だが、新シーズンから新たな企画を開始して、顧客サーヴィスに余念が無い。

それは、3 Films / 1 Artist と名付けられた企画だ。
各プロダクションを担当する作曲家もしくは演出家に映画を3本選んでもらって、公演期間中に
その映画を上映するというものである。最初の映画上映の前には、作曲家もしくは演出家による
45分のトークがあり、その映画を選んだ理由やその映画が及ぼした影響などを語ってもらう。

これは、オペラの作曲や演出に対しての映画芸術の影響力の大きさを十分に物語るものだと思う。
映画監督がオペラ演出も手がける例は昔から多々あったし、近年では映画の様々な手法を用いた
オペラ演出をよく見かけることからも、演出家にとっての映画というメディアおよび芸術の重要性は計り
知れない。

まず、9月公演はパスカル・デュサパン作曲の『パッション』(サシャ・ヴァルツ演出・振付)で
現代ものだから、若手作曲家自身が次の映画3本を選んだ。
9月3日  パゾリーニの『王女メディア』 (上映前にデュサパンによるトーク付き)
9月7日  フェリーニの『魂のジュリエッタ』
9月24日  エレム・クリモフの『炎628』

10月公演はベルクの『ルル』で、演出家のクリストフ・ワルリコフスキが選んだ映画は以下のとおり。
10月15日 パゾリーニの『テオレマ』(上映前にワルリコフスキによるトーク付き)
10月22日 ヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者ども』
10月29日 ファスビンダーの『ケレル』

両者ともパゾリーニを第一に選んだというのが興味深い。パゾリーニの映画はいまだに汲めども
尽きぬインスピレーションの泉というわけか。
フェリーニにしろヴィスコンティにしろ、イタリア映画最盛期の監督作品は、やはりオペラとの接点も
太く大きいのは、よくわかる気がする。

モネの企画はそれだけではない。
ベルクの『ルル』といえば、1979年にパリのオペラ・ガルニエで上演されたブーレーズ指揮、
パトリス・シェロー演出、テレサ・ストラータス主演のプロダクションが伝説的だ。そして、それは
TV用に収録されたのだがDVDとしては出回っていないのだという。そのお宝映像が10月4日に
モネ劇場で上映されるのだ。
しかも、シェローを招いてのインタビューも事前にあり、オペラ演出について、またベルクの『ルル』
について語ってもらうのだという!
この伝説的プロダクションの『ルル』は、ピアニストにして文筆家の青柳いづみこさんがフランスに
留学中、実演鑑賞されていて、著書『無邪気と悪魔は紙一重』に書かれているので、興味津々
だったものだ。それが、モネの企画で特別上映の運びになったとは、欣喜雀躍の心持である。

だから、今シーズンもモネ劇場からは目が離せないのだ。



  モネ劇場を賛美するにふさわしい動画は、ペット・ショップ・ボーイズ。
  I can't take my eyes off of you
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by didoregina | 2012-08-25 13:43 | 映画 | Comments(10)

ドゥブロブニクへのアプローチ  ヨットでスプリットからドゥブロブニクまで  その7

いよいよ、マリーナから市バスでドゥブロブニク旧市街へ向かう。
ここに来るのはなんと30年振りである。当時のクロアチアは、まだ瓦解する前のユーゴスラビアを
形成する共和国の一つだった。

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インターレイルという、ヨーロッパ在住で26歳未満の若者向けの一ヶ月鉄道パスは、ユーレイルパス
よりもカヴァー範囲が広く、ユーゴスラビアも含まれていたので選んだのだ。主に夜行列車とユース
ホステルを利用する、バックパックの旅だった。
人も町も風景も乾燥しきって潤いのない内陸部のセルビアから、明るいアドリア海に面して、海風も
さわやかなクロアチアに来るとほっとしたものだ。

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ザグレブから夜行列車でギリシア北部のテッサロニキまで南下してから、現マセドニアの国境の村を
経て湖畔のオフリッドで憩い、そこからモンテネグロの海辺の村に出てから、バスでドゥブロブニクに
向かったのだ。細長い海岸部をほぼ独占するようなクロアチアの町と町とを結ぶのは、鉄道ではなくて
長距離バスだった。現在でも、クロアチアのバスは安くて便数が多くて乗り心地も悪くない、いい交通
手段だ。

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今回乗った市バスも、途中の港のバス停で乗ってきたバックパッカーたちで満員になった。皆、アイ
ランド・ホッピングのフェリーで着いたばかりのようだ。
旧市街の城門手前にあるバス停も、城壁と海を外から見ることのできるテラスのような広場も驚くほど
賑わっている。

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そして、城門から旧市街に入ると、あまりの人の波の多さに頭がくらくらしてきた。
我ら一行皆がそんな眩暈を感じたのは、5日間ずっと、昼間は海でセイリングして、夕方着く所も
村ばかりで、人間臭い娑婆というものから離れて生活していたためだ。海原に出てしまうと、360度
全く帆影も島影も見えなくなったりするのだ。島が見えても人は見えない。

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久しぶりの町の毒気に当たり人込みに酔った気分になり、夕刻から夜にかけてということもあり、
路地にテーブルを出したレストランで食事をした以外は、あまり市内観光する気にもならなかった。
ヴェネツィア共和国の属領だった面影がほとんど完璧に保存されている町は、毒とか悪の匂いが
しなくて、清廉な観光地として調和が取れとても美しいのだが。

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30年前は、バスで南からドゥブロブニクに入ったのだが、長距離バスは感心にも、旧市街を
崖の上から眺める絶好のビュー・ポイントで休憩というか写真撮影のために停車してくれた。
よくあるドゥブロブニクの町全体の写真は、そこから撮ったものである。
それ以外では、町をぐるりと取り囲む城壁の上か、近年出来たらしいロープウェーで登った山の
上からの眺望が素晴らしい(らしい)。

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        城壁内の旧市街は、背景の海の青とテラコッタ色屋根との対比で
        ほとんど完璧な美しさ。


翌日、ヨットに乗ってドゥブロブニクをもう一度、海から眺めた。
港として発展した町へのアプローチは、海からが正攻法と言えよう。ヴェネツィアにもいつかヨットで
入港してみたいと願っている。

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            海から眺めたドゥブロブニク

しかし、海からだと物々しい城壁が取り囲んでるから、あのいかにも地中海的色合いで素朴かつ
優美な美しさの屋根瓦がほとんど見えない。観光ガイドブック的ドゥブロブニクとはまるで別物のように
感じられるのだった。海から攻めてくる外敵から身を守るのには、こ惑的な姿を見せてはまずい。
真珠の美しさを隠すべく、硬く閉じた貝のようないかめしさこそ、外に向かってアピールしなくてはなら
ないのだ。

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           ドゥブロブニク表玄関の旧港の入り口ぎりぎりまでヨットで近づく。


30年ぶりにドゥブロブニクを訪れ、しかもそれが7年越し計画だったヨットでのアプローチとなり感慨
深い。これで、ひとつの目標を達成したのだった。

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Mission Completed
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by didoregina | 2012-08-24 11:22 | セイリング | Comments(2)

ドゥブロブニクのマリーナでリゾート気分   ヨットでスプリットからドゥブロブニクまで その6

日曜日にスプリットとトロギールの中間にあるカステラ・マリーナを出発して、毎日のセイリングで
少しずつ島々を南下して、木曜日にはドゥブロブニクに到着した。
ACIマリーナは、旧市街からはバスで20分くらい離れたところにある。

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      高層アパートが林立する新市街にある港に着いていたクルーズ船。


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      新しい橋の架かるフィヨルドのような細長く狭い入り江のずっと奥まで進む。


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      最初のうちは、がっかりするほど高層・新築のアパートばかりだったのに
      入り江のどん詰まりには、教会や修道院が建つ丘が見えてきた。


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      我らがフロティッラの係留するマリーナはこの修道院の向かい。


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      山懐に抱かれたマリーナの中は緑豊かで落ち着いた雰囲気だ。

クロアチアには、ACIというマリーナが各地にあり、いずれも設備面で非常に充実している。
そして、立地も素晴らしいところが多い。
例えば、プーラのACIは、ローマ時代の円形劇場を正面に見る市内の一等地にある。
ヨットのコックピットに座ったまま、暮れなずむ名所を肴にワインを飲むと、何とも言えず心
豊かな気分になったものだ。

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       マリーナの敷地は元荘園だったのか、庭の手入れも行き届いたヴィラが建つ。


ここドゥブロブニクのマリーナは、リッチ度・立地度でいうと、今までで最高である。
プールからの眺めも溜息が出るほどだし、隣接のスーパーは鮮魚やデリカ類の品揃えも
充実している。さすが、世界中から観光客のみならずヨットも集まるドゥブロブニクだ。
その代わり、係留料金もお高い。一泊170ユーロくらいだったと思う。


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       マリーナのプールからの眺め。ここでも皆で水球した。
       かなりハードなスポーツで、素人のわたしには5分が限度。


日中は観光するには暑すぎるので、プールで泳いで、ゆっくりシャワーを浴びて、夕方から
少しオシャレして、ドゥブロブニクの旧市街に繰り出した。
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by didoregina | 2012-08-23 09:40 | セイリング | Comments(4)

Holy Motors  説明不要、とにかく見るべし!

c0188818_15544294.jpgLeos CARAX - Director
Leos CARAX - Screenplay
Caroline CHAMPETIER - Cinematography
Florian SANSON - Set Designer
Neil HANNON - Music
Nelly QUETTIER - Film Editor
Erwan KERZANET - Sound

Denis LAVANT - Mr Oscar
Edith SCOB - Céline
Eva MENDES - Kay M
Kylie MINOGUE - Eva Grace
Cordelia PICCOLI - L'homme à la tache de vin
Elise LHOMMEAU - Léa
フランス・ドイツ (2012)

映画祭およびアートハウスでは、現時点で、今年最大の話題作であろう。
レオス・カラックスが監督で主演がドゥニ・ラヴァンである。このコンビで、しかもカラッ
クスの13年ぶりの監督作品であるという。

事前に読んだ新聞評では、ストーリーにはほとんど触れずに、ラヴァンのインタビューを大きく
扱っているだけなのが期待を湧かせた。(核心に触れないように)筋を文章で説明したところで、
普通の人の想像力の範囲を超えた内容の映画であるから、あらすじ紹介やネタバレは不要である。

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       このスチール写真を見て、『ポンヌフの恋人』や『汚れた血』を
       思い出し、この映画は絶対に観に行かなくちゃ!と決心した。


ドゥニ・ラヴァンという俳優の名前はすっかり忘れていたが、この顔は一度見たら絶対に忘れ
られない。怪優と呼ぶにふさわしいルックスである。
ラヴァンは80年代後半から90年代初めにカラックスが撮った映画『ポンヌフの恋人』と
『汚れた血』でアレックス役だった。非常に印象に残る俳優だし、彼にしか演じられない、
彼のための役だった。
そして、今回のHoly Motorsもまた、俳優としての彼がいなければ成立しなかったろう。

しかし、わたしは最初、タイトルをHoly Monsterだと勘違いしていた。

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            これも同一人物が演じるモンスター。

フランス語でmonstre sucre(聖なる怪物)というと褒め言葉で、天賦の才能と、加齢とともに
誰にも真似できないエキセントリックな味を持つにいたった俳優、という意味で、オペラ界では
エディタ・グルベローヴァにその称号を捧げたいと思っている。
だから、そういう聖なる怪物を主人公とした映画だと思っていた。そして、勘違いにしてはなか
なか鋭い勘で、それはある意味当たっていたのだった。

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             墓場で出会った美女と野獣。

ところが、実際のタイトルはモンスターではなく、モータースである。
オスカー氏と呼ばれる男が、一日中、白いストレッチ・リムジンに乗ってパリ中を移動する。
女性アシスタント兼ドライバーの運転するリムジンの中は楽屋になっていて、ラヴァン演じる
オスカー氏は、特殊メークと衣装をほどこしては、次々に別の人物になる。それぞれの人物
としてのアポイントメントをこなすが、一日での変身は11の姿に及ぶのだ。

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             SFXやCGの手法も取り入れている。

オスカー氏という名前もそうだし、全編が映画へのぎこちないオマージュになっている。
それは、昨年オスカーを総なめした「アーティスト」のような正攻法かつノスタルジックかつ
フィールグッドなほとんどナイーブといっていいオマージュとは、まるで正反対の手法による。
すなわち、奇想天外、アバンギャルドかつエロ・グロのパロディーの趣で、鍛えた肉体と圧倒的
な演技力を持つラヴァンが様々な姿に変化しつつ、見るものをエキサイトさせてくれるのだ。


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            長い一日が終わって、リムジンが次々と入る
            ガレージがホリー・モータース。


この映画はシネフィルならば絶対に見逃せない、鬼才による聖なる怪物を描いた映画である。
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by didoregina | 2012-08-22 09:55 | 映画 | Comments(2)

女一人旅でも楽しいウィーンの食事

ウィーンに行くのは、オペラ鑑賞が目的であるから、オペラ2公演なら二泊、1公演なら一泊だ。
町自体がコンパクトで見所が近くにかたまっているから、ホテルからどこにでも徒歩でいけるし、
ぎゅっと濃縮された感じで満腹感を得ることができるのだ。
今回、一日目は、フライト遅延で半日潰れてしまったので、カルルス・プラッツにあるウィーン・
ミューゼウムに行く予定は叶わなかったが、さほど残念にも感じない。

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     クリムト・イヤーのため、天井付近のフリーズが至近距離から見られる
     ウィーンの美術史美術館。8月は月曜も開館。空いてるしラッキー。


一日目は日曜だし、ホテルにチェック・インしたのが午後5時だったから、7時半開演のオペラに
間に合わせるため早目の夕食を取る以外は何も出来なかった。


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         ナッシュ・マルクトを挟んでアン・デア・ウィーン劇場の
         ほぼ向かい側にあるカフェ・レストラン「アマコルド」は
         ウィーン風イタリアン。ポーク頬肉の煮込みとハーブ入りニョッキ。


翌日は、半日たっぷりと美術史美術館で過ごしてから、遅めのランチ兼ディナー。

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         シュテファン寺院の修復も大分進んだ。


グラーベンも街角や広場に面したカフェ内外はどこも暑そうだ。外は日差しが強くて、店内も
温度が高いからメランジュを飲む気もケーキを注文する気も起こらない。

前回のウィーン遠征で気に入ったレストラン「プラフッタ」が、外に大きなテラスを出していた。
風通しのいい通りで日陰が涼しそうだ。


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         国立歌劇場からほど近い「プラフッタ」の内装はトレンディー。


ここは、給仕の目配りが行き届いていてサーヴィスも速いし、テラスもゆったりとして
リッチな気分になれる。
「夏なのにターフェルシュピーツを注文してもいいものでしょうか。なんだか寒いときの
食べ物のような気がして」と訊いたら、夏でも全くかまいませんよ、とのことだった。
ターフェルシュピーツとは、子牛肉と野菜を煮込んだポトフみたいなものだ。

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         鍋や付け合せ一式が大きなお盆に盛られて運ばれてくる。
         まず、薄焼き卵の千切りみたいなのが入ったカップに
         スープを注いでくれる。


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         スープのあとは、自分でお皿に肉や野菜や付けあわせを盛る。
         肉の塊は大きく、こんなのが2つ入ってる。付け合せは左から
         卵サラダみたいなタルタルソースみたいなもの、パンをミルクで
         ふやかしたようなもの、野菜煮込み、煮たりんごにホース・
         ラディッシュをまぜたもの。


大きなウィーナー・シュニッツェルは、一人前2枚(!)なので、暑い中食べる気が起こらな
かった。それに対して、このターフェルシュピーツはあっさりとして、夏でも美味しく食べられた。


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         〆にウィンナ・コーヒー。カプチーノならぬフランツィスカーナ。


一人旅で嫌なのは、食事のとき間が持たない、というのがあるが、ウィーンの場合、不都合は
感じなかった。女一人旅に優しい町だ。
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by didoregina | 2012-08-21 09:16 | 旅行 | Comments(0)

『湖上の美人』@アン・デア・ウィーン劇場

c0188818_18274328.jpg2012年8月12日@Theater an der Wien
La donna del lago
Melodramma in zwei Akten (1819)
Musik von Gioachino Rossini
Libretto von Leone Andrea Tottola nach Sir Walter Scott

Musikalische Leitung Leo Hussain
Inszenierung Christof Loy
Szenische Einstudierung Axel Weidauer
Ausstattung Herbert Murauer
Choreographie Thomas Wilhelm
Licht Reinhard Traub
Dramaturgie Yvonne Gebauer

Elena Malena Ernman
Giacomo Luciano Botelho
Rodrigo di Dhu Gregory Kunde
Malcom Groeme Varduhi Abrahamyan
Douglas d’Angus Maurizio Muraro
Albina Bénédicte Tauran
Serano Erik Årman
Orchester ORF Radio-Symphonieorchester Wien
Chor Arnold Schoenberg Chor (Ltg. Erwin Ortner)


ロッシーニ作曲のこのオペラは、スコットランド王ジャコモ、反乱軍首領ロドリーゴ、反乱軍騎士
マルコムがそれぞれ皆、国王の元忠臣だが追放後は反乱軍側に付いたダグラス卿の娘エレナを
愛することから起こるロマンチックな四角関係の物語である。
しかし、演出家クリストフ・ロイは、その図式を改変して、スリリングで現代的な心理劇に作り
変えた。

まずエレナの設定が、少女から大人へ脱皮する過程の最中にいる神経症を病むお嬢様という
ことになっている。
それは、まるでグレン・グールドがそうだったように、帽子を被って手袋やマフラーで不安な身を
外界および外敵から守る姿勢をとるエレナの神経質な態度や顔の表情からわかる。
そして、彼女は、ごちゃごちゃとしてキナ臭い現実からは目をそむけて空想の世界に生きている。
夢見る夢子ちゃんである。
おどおどと引きつったような顔つきで歌ったり子供っぽさを誇張したマレーナ様の演技に、最初は
違和感を覚えたが、だんだんと上記の設定だということがわかって納得。
シリアスでロマンチックなお話というより、コミカルな味もかなり濃厚だ。それは三つ編みの赤毛
の髪型からもうかがえる『長靴下のピッピ』的な破天荒なヒロインの心象が、全体を支配して
いるからだった。

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         エレナは突然現れた王子様に夢中になる。
         photo by Monika Rittershaus


わからずやで強権をかざす父親が決めた結婚相手である、マッチョで自信満々でかなり年上の
ロドリーゴには少女らしい嫌悪感を感じるだけだ。
その彼女の心の悩みをわかってくれるのは、もう1人の自分であるマルコムのみ。

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            マルコムがなぜエレナと同じ格好をしてるのか
            ようやく謎が解けた。photo by Monika Rittershaus

マルコムは、エレナの鏡写しの分身である。この設定は、マルコムの歌う「わたし達はいつでも一緒。
分かちがたい」という歌詞にもしっかり対応しているから無理がない。
二人の対話には、だから互いに胸のうちが分かり合った者同士の親密さがあるのも当然である。

マルコム役のアルトのとってもまろやかな声で歌われる、いかにもベルカントの王道をいく様式美に
溢れた歌唱が素晴らしい。もともと女声で歌われるズボン役なのだが、今回はエレナと同じ格好を
しているから、エレナの心の奥底に芽生える成長した大人の女らしい毅然たる意思を表現していて
秀逸。かなり美味しい役ともいえるから、マレーナ様が食われちゃったらどうしよう、と前半は
はらはらしてしまった。

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         マルコムは、エレナの分身であり守護天使でもある。
photo by Monika Rittershaus

というのも、マレーナ様のいつもの癖であるが、前半の歌唱はかなり押さえ気味であったからだ。
声量はそれほどセーブしてはいないのだが、アジリタの転がり具合が滑らかに感じられない。
低音には艶があるが、高音になると妙に弱かったりする。
子供から大人への過渡期で、成長の不安を隠しきれないという難しい役柄だ。もっと子供子供して
いたり、少女らしい表情でもよかったのではないか、と思えたのは、どうも所々でセルセみたいに
見えてしまう狂を孕んだ表情のせいである。後半になると声にも脂が乗ってきて役作りや設定が
よく見えてきたので、それほど不満には感じなかったが。


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           デリカシーのかけらも無いオジンと結婚するのなんて嫌!
photo by Monika Rittershaus

ロドリーゴ役のグレゴリー・クンデは、以前モネ劇場で『イドメネオ』のタイトル・ロールで、
イダマンテ役のマレーナ様とは親子の役だった。そのときは、クリントン元大統領に似てるなあ、
という印象しかなかったのだが、今回は、まるでヘンリー8世そっくりの、嫌~な感じのオヤジ。
見かけだけでなく声のパワーも凄まじく、まるでライオンが咆哮するかのような歌声である。
彼が歌うと、聞いている耳にかかる圧力がきつい。こんなにパワーで押し捲る人だったのか。
でも、彼との絡みやデュエットになると、マレーナ様の歌声はパワーアップして負けてはいないの
だった。


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         甘く鼻にかかったテノールの声は、王子様役にぴったり。
photo by Monika Rittershaus

ジャコモ役は、若いメキシコ人テノールのルチアーノ・ボテロ。伸びのある嫌味のない声の持ち主だが、
緊張してたのか「おお、甘美な炎」では、一部高音が上手く出なかったのが残念。

後半は、ロマンチックなバレエ・シーンもある。スコットランドが舞台で、ロドリーゴなどはキルトを
着ているくらいだから、バレリーナの着ているチュチュの背中には小さな羽根が生えていて、振付も
大真面目な『レ・シルフィード』風。
振付は、DNOの『シチリア島の晩課』でもロイとコンビを組んで、30分にも及ぶバレエ・シーンで
飽きさせなかったトマス・ウィルヘルムだから期待していた。
しかし、今回のバレエ・シーンは短くてロマンチック・バレエのパロディー風味付けだ。

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         決闘シーンに相対して、バレリーナも血まみれになる。
         photo by Monika Rittershaus

ロドリーゴとジャコモの決闘シーンは、バンダも時々乗っかる舞台上の舞台で行われ、残酷な
場面は見せないのだが、その回りで踊っていたバレリーナたちは、次々に血まみれになって
倒れていくのだった。
血まみれの乙女達というのは、ロイが『シチリア島の晩課』でも用いたものだ。多分このイメージが
彼の美学に合うんだろう。いかにも彼らしさが現れているので、あ、またやってる、と喜んでしまった。

結局、葵の御紋の印籠ならぬ王の指輪の力で、全ては丸く収まるというハッピーエンドだ。
ただし、エレナはマルコムではなくジャコモと結婚し、シンデレラ的なエンディングになるのが元の
筋とは異なる。花嫁のブーケを後ろ向きになって客席に投げて幕。

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         後半のクライマックスに向かって、マレーナ様の歌声は
         パワーアップ。アクロバティックなアジリタや幅広い音域を
         行ったり来たりのウルトラC級のワザもバッチリ決まった。
photo by Monika Rittershaus

男性歌手陣は、合唱も含めてパワー全開、迫力満点だった。
女声のマレーナ様とアブラハムヤンは、特に低音の声質が似ているから、マルコムはエレナの
分身という設定にもピッタリ。
後半になると、マレーナ様も温存していたパワーを惜しみなく出し、アジリタもスムーズで切れ味抜群。
コロコロと転がす喉自慢・歌合戦の趣になるロッシーニのオペラでも観客からやんやの声援と拍手で
主役の面目躍如だった。

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           ブラーヴァの波をかぶる、カーテンコールでのマレーナ様

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          左から クンデ、マレーナ様、ボテロ
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by didoregina | 2012-08-17 13:33 | オペラ実演 | Comments(22)

マレーナ様との偶然の出会い

フライトがキャンセルになり、半日潰れましたが、なんとかウィーンのホテルまで辿りつく
ことが出来ました。
ホテルは、アン・デア・ウィーン劇場の隣です。最寄り駅は、地下鉄のカルルス・プラッツで、
ゼセッション出口から地上に出れば、すぐ。

この地下鉄駅はウィーン国立歌劇場の最寄り駅でもあり、他にも出口がたくさんあるので、
出間違えると悲惨。前回は別方向の出口から出てしまい地上での方向がわからなくなったので、
今回はとにかく「ゼセッション」を目指しました。

オペラ座およびアン・デア・ウィーン劇場周辺には、地上にも地下道にもハリウッドのウォーク・
オブ・フェイムもどきの、古今の作曲たちの星型プレートが埋め込まれています。
カミーユ・サン=サーンス、クロード・ドビュッシー、クルト・ワイル、ヤン・シベリウスと辿り、
ゼセッション出口の手前にあるプレートは、「もしかしたら。。。」と密かに念じたとおり、
ジョアッキーノ・ロッシーニでした。

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        ロッシーニの『湖上の美人』鑑賞のためにやってきたウィーンの
        ホテル近くの地下道でロッシーニの星型プレートを見つけた。

これは、厄払いにもなるし幸先よさそう、と思いました。
地下道から地上に出ると、ゼセッションの金色のキューポラが陽光に眩しく輝いています。
まるで、「ようこそ」と出迎えてくれているかのように。

そこから次のブロックを曲がるとホテルです。かれこれ、午後五時になっています。
「そろそろ、マレーナ様の楽屋入りの時間だわ」と思いつつ、前方左手の劇場楽屋方向を見ると、
長身に金髪の女性がさっそうと歩いているのが見えました。
「マレーナ様に違いない」とピンと来たので、走って追いかけます。彼女が楽屋口に向かう角を
曲がったので、「マレーナ!」と叫びました。
息を切らしてその角を曲がると、そこにはマレーナ様が立っていたのです。わたしの声に振り返り
待っていてくれたのです。

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            楽屋入り前のマレーナ様。
            ファッション誌の街角スナップみたいだ。

R「たった今、ウィーンに着いたところなんですよ」
M「息を切らしてるわね。走ってきたの?」
R「劇場横で貴女が前方を歩いているのを見つけたので、追いかけて来たんです」
M「わたしは、いつでも早足だからね」
R「それに、そのスニーカーですからね」
マレーナ様は、カジュアルで素敵なサマー・ドレスにナイキのブルーの靴紐のスニーカーを履いて
います。わたしが履いていたのもナイキの夏用スニーカーです。

R「空港で荷物が出てこなかったので、いつもは着物なんですが、たぶん今晩はこの格好です」
M「それだって十分素敵よ!」
R「いやいや、オペラには不向きですよ」
わたしの格好は、黒のタンクトップに白のジーンズに白のスニーカー。シルクシフォンの白地に黒の
スカーフ模様のブラウスを羽織っていました。マレーナ様がほめてくださったそのブラウスは、
ふわふらしていてちょっとドレッシーで、軽くてかさばらず夏の旅行には重宝なのです。ポール・スミス
のバーゲンで25ユーロでゲットしたもの。

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         劇場裏手から程近いカフェ・シュペール前には
         可憐でたおやかな花と『湖上の美人』のポスター円柱が。

R「ここでお目にかかれるとは、偶然に感謝です。今晩のオペラ公演には興味津々なんですよ。
新聞での評などを読むと、かなり複雑な心理劇風の演出で、普通とは異なるエンディングだというので、
興奮しちゃいます」
M「そうなのよ。一筋縄ではいかないストーリーになってるから、期待に副えると思うわ。楽しんで
ちょうだいね」

楽屋入り前ですから、あまり引きとめてもいけない、と思い、
R「ご準備もおありでしょうから、どうぞ楽屋に入ってください。終演後にまたお会いできますから」
と言うと、
M「いいのよ、気にしないで。まだ時間はあるんだから。それより、わざわざウィーンまで来てくれて
本当にうれしいわ」
と、あくまでもファンには優しいマレーナ様です。
写真も撮らせてもらいましたが、回りには誰もいなかったので、ツーショットは無理でした。

R「今回は、1人で来たんです。来月にはストックホルムにも参ります」
M「終演後にまたここで待っていてくれるわね?」
R「はい、もちろんです。ぜひまたお会いしましょう。ああ、もうドキドキです」
そう言って、一旦別れました。

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           ホテルの中二階の向かいは劇場の衣裳部屋や楽屋。

朝から長く待たされましたが、運のツキには恵まれていたようです。
マレーナ様に会いたい一心で、ガッツでフライト・トラブルをクリアしてきた甲斐がありました。

ホテルには解くべき荷物も無いので、フロント嬢お勧めのレストランに食事に出かけました。
日曜日で閉まっているナッシュマルクトの道を渡った反対側にあるイタリアンでした。
開演間際まで待ちましたが、やはり荷物は届かなかったのでした。
諦めて、着の身着のまま、ジーンズにスニーカー、ノーメークでオペラ鑑賞に臨みました。
 
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by didoregina | 2012-08-15 10:35 | マレーナ・エルンマン | Comments(12)

フライト・トラブルにはどう対処する?

ウィーンへの一泊遠征から無事戻りました。
往きの飛行機がトラブり、ひやひやさせられましたが、ネバーギブアップ、前進あるのみ!の
不屈の精神でなんとか乗り切りました。
しかし、乗客の運・不運は紙一重に近かったのです。今後の皆様のご参考になればと思い、
一部始終顛末を書いてみます。

まず、日曜朝9時40分デュッセルドルフ発のエア・ベルリン便(ウィーン着11時20分)が
機体のテクニカル・プロブレムのため遅延、修理にどれだけ時間がかかるかわからないため、
出発時間無期延期というアナウンスが9時20分ごろありました。搭乗間際のアナウンスです。
その飛行機自体、ウィーンからの折り返し便だったのですが、デュッセルドルフ到着は15分ほど
遅れていました。
乗客はドイツ人がほとんどのようで、皆、落ち着いたものでした。

出発時間無期延期というからにはかなりのダメージのようだし、嫌な予感がしました。
しかし、まだ朝だし時間には余裕があります。動向をひとまず見極めようと思いました。
新たな情報は30分後にということでしたが、その30分は出発予定掲示板を見るたびに毎回
更新されていき、詳しい情報はまるで入ってきません。11時になると、暫定出発予定時間は
13時という表示に変わりました。一応、出発の見通しが立ったらしい、というわけです。

丁度そのアナウンスのあった瞬間に、最悪の場合に備えてウィーンに行く別便を探すため、
トランスファーおよびチケット・サービス・カウンターに行ったのですが、一応出発のめどが立った
ようなのでカウンターの人も冷静だったし、フライト変更の必要性はさほど感じませんでした。

6時半にヨーグルトとミューズリの朝ごはんを食べただけなので、ちょっと早めのお昼ご飯を
11時半にレストランでとり終わったら「エア・ベルリンのAB8240便乗客は皆様搭乗口
カウンターに来てください」というアナウンスです。何だろう、と思って行ってみると、ミネラル・
ウォーターとスナック菓子入りの紙袋が配られています。

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         格安フライト会社にしてはまあまあよく出来たサーヴィス

デュッセルドルフ空港は、ケルン・ボン空港に比べると格段に大きな空港です。先月も、ここから
ウィーン経由でクロアチアのスプリットに飛んだばかりです。その際は、オーストリア航空を利用
しました。今までのウィーン遠征にもオーストリア航空を使っていたのですが、今回はもう少し
安いエア・ベルリンにしてみました。だって、往復88ユーロなんですもの。昨年、やはりエア・
ベルリンでサルディーニャまで飛びましたが、アルコール飲料以外の飲み物はタダだし、サンド
イッチも出たしサーヴィスは悪くなかったからです。ウィーンまでは1時間30分のフライトですし。

さて、乗り換えの心配のない乗客がほとんどなのと沈静なドイツ人が大部分なので、待たされても
文句は出ないし、テクニカル・トラブルでは仕方ない、と諦めてるようでした。
アナウンスのたびに、皆息を詰めて聴こうという態度になり空気が張り詰めるのが感じられます。
しかし、だんだんとアナウンスはドイツ語のみになっていきます。それで、オランダ人の老年女性
二人組はアナウンスを聴き損ない、紙袋が配られているのを知らなかったりしていたので、
搭乗口カウンターでもらえることを教えてあげました。
この二人のおかげで、こういう場合の情報確保の重要性をわたしは逆に教わったのです。

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           ウィーン空港の新ターミナルビルが6月に完成。
           黒と白が基調で擦りガラスが多用された素敵なデザイン。
           壁の表示は、ソル・ルヴィットの壁アート風の意匠!


12時15分頃には客室乗務員たちが乗り込んで行ったので、これで一安心と思ったのも束の間。
13時に果てしなく近くなっても、搭乗案内アナウンスはありません。皆じりじりと待っているのに。
そして、13時になると一旦乗り込んだ客室乗務員達が戻ってくるではありませんか。
結局、13時10分ごろに、その便の欠航がアナウンスされました。そして、別便に乗るために、
チケット・サービスおよびトランスファー・カウンターに行くようにとのこと。しかし、それら全てはなぜか
ドイツ語のみのアナウンスなのです。
聴き終わるや否や、わたしはサービス・カウンターに向かいました。誰よりも早く行って並ぶのが大切
だと本能的に悟ったからです。

サービス・カウンターにはまだ詳しい連絡が入っていないようで少し混乱していましたが、10数人
集まったところで聞かされたのは、上階の搭乗口に行って別のウィーン行きに乗るようにとのこと。
やはり、ドイツ語のみの説明なので、隣に立っていた人に英語で確認しました。
そして、例のオランダ人おばあちゃん2人組が来たので、急いで上階に行くように誘いました。

上階の搭乗カウンターでの説明は、荷物は元々の飛行機に積まれたままなので、ウィーンに
着いたら遺失物カウンターでウィーンの住所またはホテル所在地を指定し運んでもらうようにとのこと。
それはそうですが、飛行機まるまる一便の欠航なので、遺失物カウンターも長蛇の列になるでしょう。
それより、今ここでもしくは飛行機の中で書類に記入した方がスムーズにいくのに、と思っていると、
小さなお子さん連れの方から優先的に今出る別便に乗るようにとの指示です。
別のオランダ人カップルは、「子供の次はメンバーシップ・カード所有者が優先だろうな」と言いつつ
カードを出したりしています。
わたしはとにかく列の前の方に進み、「あと4人!どうぞ」という係員の声に、ドイツ人3人組に
仲間入りさせてもらい、出発直前の飛行機に向かいました。
「空いてる席に座ってください」とのことなので、最前列通路側に。するとドアが閉められました。
結局、その便に乗れたのは20人弱だったと思います。一瞬の判断で勝負が決まりました。
少しでも躊躇したり仲間と相談したりしていたら間に合わなかったはずです。メンバーシップ所有者の
オランダ人カップルも老年女性二人組も、搭乗口ではわたしのすぐ近くにいたのに結局乗れなかった
のです。
振り替え便として目を付けていた12時40分発のウィーン行きに幸運にも乗れ、安堵しました。
その便の出発も1時間遅れたことになり、ウィーン到着は15時15分頃でした。

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             後光が射すゼセッションは、幸運の象徴

ウィーンの空港に着いたら、とにかく一番乗りで遺失物カウンターに向かうのが肝心です。
幸運にも最前列通路側の席だったので、誰よりも早くバッゲージ・クレームに着きました。
カウンターで、荷物が積み残されたので別便で着くはずだからホテルに届けて欲しいと説明しましたが、
案の定、欠航で荷物積み残しという連絡はウィーンに入っていないので、「到着の飛行機から荷物は
まだ積み出されていないのでそちらでお待ちください」と言われて埒が明きません。
そうこうするうちに、20人ほど同類の仲間が集まりました。その中のおじさんがドイツ語でカウンター
嬢に噛んで含めるように説明するとようやく判ってくれました。しかし、20人は一挙に対処し切れ
ません。だから、一番乗りするのが重要だったのです。

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             ウィーンでの定宿ベートーヴェン・ホテル(右)は
             アン・デア・ウィーン劇場の楽屋(正面)の筋向い。

なんだかんだで、ウィーンのホテルに着いたのは、午後5時でした。
ホテルのカウンターでは、「お客様だけではありませんよ。荷物が出てこなかったのは。多分、夜
10時頃には届けられるでしょう」と言われました。結局、荷物が届いたのは午前3時でした。
荷物がないと部屋に行っても何もすることがありません。着替えも出来ません。
そして、せっかく準備した着物も着るチャンスを失ってしまいました。

しかし、残りの乗客は当日夜までにウィーンに着くことが出来たのでしょうか。翌日になってしまったの
ではないかと案じています。
状況判断が上手くいき、一人だったおかげで小回りが利いたのが勝因でした。
着たきりすずめですが、19時30分のオペラ開演には間に合いました。
それどころか、別の僥倖にもめぐり合うことができたのです!
その件に関しては、別の記事にしたいと思います。
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by didoregina | 2012-08-14 10:23 | 旅行 | Comments(12)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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