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オランダ初の3D映画『ノヴァ・ゼンブラ』

ハイキングの最中、Hが「ノヴァ・ゼンブラに行こう!」と言い出した。
Hの奥さんTは「また、そんなに遠いところに。。。」と思ったそうだ。Hは8月から仕事で
オーストラリア、タンザニア、クレタ島などに出かけていたので、Tは実際の場所のことかと
思って、話が噛みあわない。
わたしは間髪いれず「映画のことでしょ。行く行く~!」と叫んだ。
それで、夫婦2組で日曜夜にベルギーの映画館に観に行くことになった。
ベルギーのラナーケン村は、国境が住宅街を通っているマーストリヒトからならすぐで、
映画館にはタダで停められる大きな駐車場も完備されてるから、駐車料金が馬鹿高い
マーストリヒト市内の映画館よりも行きやすい。

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        ドウツェンは写真で見て綺麗なだけでなく、演技もなかなか。
        なによりクラシックな美しい顔立ちなのでスクリーン映りが非常にいい。
        これからもどんどん映画で活躍してもらいたい。

映画『ノヴァ・ゼンブラ』は先週の木曜日からロードショーになっていて、ついさっきのニュースに
よると、オランダでは公開後4日間で観客動員数10万人を超えたという。さもありなん。
とにかく話題には事欠かない映画だ。まず、オランダ初の3Dのスペクタクル映画である。
そして、主人公の相手役にスーパーモデルのドウツェン・クルースが抜擢され、映画に初出演。
しかも、海洋国家オランダの黄金時代の幕開けを象徴する、オランダ人なら誰でも知っている史実に
基づいた、血沸き肉踊る闘魂の物語である。


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監督 Reinout Oerlemans
Willem Barentsz  (Derek de Lint)
Gerrit de Veer  (Robert de Hoog)
Petrus Plancius  (Jan Decleir)
Catharina  (Doutzen Kroes)
Heemskerck  (Victor Reinier)
2011年 オランダ









スペインとポルトガルに独占・支配されていた喜望峰経由のアジア航路を避け、北極海を通って
日本・中国・インドへ至る新航路を開拓すべく、3度目の正直になってほしいと願いをかけて
1596年アムステルダムから商船が出航した。ほぼ未知の航路であり、海図もあてにならず、
探検隊というほうが似つかわしい冒険の旅だ。
偉業を後世に伝えるべく雇われたヘリット・デ・フェーアが詳細な航海記を残したので、史実を
逐一現代人も知ることができる。

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        船長バーレンツ、へームスケルクと航海記作者ヘリット・デ・フェーア。


白紙に近い海域を星を頼りに航海を進めるのだが、ロシアの北にあるノヴァ・ゼンブラ島を北上
したところで船は氷に閉ざされてしまう。そして、そこで越冬を余儀なくされるのだった。
こうなると、南極物語ならぬ北極物語である。しかも、それは今から400年以上も昔の出来事だ。
凄惨さは想像を超えて余りある。

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        赤い線がノヴァ・ゼンブラまで実際に辿った航路。
        こんな地図だけを頼りに北極海に乗り出すなんて、
        考えただけで身が凍りつきそうだ。

ノヴァ・ゼンブラの北東部に上陸し、流木で越冬用の小屋を建てる。極寒と暗闇(冬は太陽が出ない)
そして白熊という脅威に襲われるが、基本的には単調な日々だったろう。とにかく耐えるしかない。

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          小屋の中だって異常な寒さだ。

結局、新航路開拓の夢破れ、夏になって氷が融けたのを機に、オールと小さな帆のみの船を
建造して(船大工や家を建てられる大工が探検隊に参加していてよかった、、、)オランダに
戻るのだった。(途中の島で停泊中の大きな船に助けられて)

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          こんな感じの小さな船で北極海を手漕ぎして
          戻るのだって、相当怖い。。。

映画だから史実とは異なる場面も相当あり、難癖つける批評家が多いが、そんなのは些細なことだ。
海洋歴史ロマンを楽しめない心の狭い輩の批評こそ的外れである。
私たちのように海洋フェチで歴史コスチュームもの大好きには堪らない映画だ。こういう映画を観ると
血が沸き立ち、未知に向かって旅を進め自然の脅威に立ち向かう偉大な先人には、ただただ畏敬の
念を抱く。初めて北極海航路でアジアに到着可能になったのは砕氷船が出来た20世紀になってから、
という事実の重さを知ると特に。

ただし、この映画を3Dにした意図は、全く理解できない。冒険スペクタクル映画にしては異例の
低予算だったため、3Dもなんだかちゃちで迫力不足だ。話題性を高めたかっただけかもしれない。
それと、3Dという付加価値で映画館の入場料を高くするためなんだろう。ベルギーだからオランダ
の映画館よりは安いが、通常料金より2ユーロ増しの9ユーロだった。

       
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by didoregina | 2011-11-28 15:58 | 映画 | Comments(6)

ベルギーの国境地帯でクノープ・プント・ワンデル

11月26日、風は冷たいがこの季節にしては奇跡的にいい天気だった。
HとTが企画したハイキングに参加した。総勢11人プラス犬2匹だ。
車3台に分乗して、国境を越えてすぐのベルギーVoeren地方にあるVeursという集落へ。
そこを基点に、クノープ・プントというシステム(要所要所にある杭の番号を辿る)を使って
13キロのハイキング・ルートを選んだ。

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         国境地帯に広がる丘陵はハイキングに最適

HとTのご近所さん・お友達は、50代後半以上の人が多いようだったが、皆ハイキングや
アウト・ドアが好き。次々と違う人たちと並んではおしゃべりしながら、かなり早いテンポで歩く。
かわるがわる色々な人と肩を並べて歩くので、初参加の私たちも自然にグループに溶け込めた。

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         別荘が多いこの地方の家には欠かせない暖炉用に
         切り倒され丸太になったばかりの木が転がっていた。

農地や林や集落を抜けたり、歩く場所と風景はどんどん変化する。犬は喜んで先等を走るが、
人間は番号のついた杭を見落とさないように気をつけて進まないといけない。

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         枯葉が積もった林の中には、色鮮やかなキノコが。

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         お城のような素敵なお屋敷

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         道端では、瑞々しい宿り木の枝を無人販売していた。
         クリスマスの飾りに欠かせないが、今はちょっと早すぎかも。

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         ブラックベリーをさくらんぼ大にしたようなブラックソーンの実。
         ラテン語の学名はprunus spinosaで、枝に棘がある。
         (和名リンボク?) お酒にするためにバケツに集めていた。

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          すっかり葉の落ちたリンボクの木

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         後ろを振り返ると、夕日に映えた木々が燃え立つよう。

13キロは結構な距離で、午後2時過ぎに始めたハイキングだが、距離が思ったほど稼げない
うちに夕闇が迫ってきた。途中、カフェで休憩のはずだったが、そんなことをしている時間はない。
4時半頃には暗くなり始めたが、まだ3キロ以上残っていた。
暗い山道を歩くのはなかなかスリルがある。人間の目は結構暗闇に慣れるもので、最後の急な
坂道をなんとか下り終えた。
基点の集落に置いた車に戻ったのは丁度5時半だった。

HとTの家で、まずは暖かいグリューワインで乾杯。チョリゾ入りかぼちゃのスープや野菜たっぷりの
ミネストローネその他、皆が持ち寄った食べ物で体とお腹を暖めた。

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         主人には、手作りフォッカッチャのご指名があった。
         12人用だから、大型で違う味のを2個作った。

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         こちらにはマッシュド・ポテトを練りこんだので、
         出来上がりはふっくら、噛み応えもいい。
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by didoregina | 2011-11-27 10:39 | ハイキング | Comments(0)

Opera Zuidによるヤナーチェクの『カーチャ・カバノヴァー』

マーストリヒトに拠点を置くオペラ・ザウドが、今シーズンは『カーチャ・カバノヴァー』を
クプファー演出で上演すると知って以来、実演を心待ちにしてきた。
ヤナーチェクは好きな作曲家だし、地方のドサ周りオペラ団がクプファーに演出を依頼する
という意気込みに、これは見逃せないと思ったのだ。

実際、クプファー自身がオペラ・ザウドの歌手たちに演技指導をしている映像など見たり、
今回は意地悪な姑役で自ら出演する芸術監督でもあるミランダ・ファン・クラーリンゲンが
ブロシャーに書いた解説を読んだりすると、期待はいや増しになった。
開演前には、レン・ファン・シャイク女史による解説(元オペラ歌手の女史と音響技師の夫君の
コンビによるオペラ解説は、筋・演出・歴史背景などの説明のほか、登場人部を象徴するモチ
ーフ旋律や楽器、聴きどころなどの録音を交えた偏らない内容で素晴らしい)を聞いたりして、
泥縄式予習も行った。

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katja kabanova   L. Janáček  2011年11月20日@フレイトホフ劇場
regisseur  Harry Kupfer
dirigent  Stefan Veselka
decorontwerper  Hans Schavernoch
kostuumontwerper  Yan Tax
lichtontwerper  Jürgen Hoffman
assistent dirigent  Tjitte de Vries

orkest Limburgs Symfonie Orkest
koor  Het Zuidelijk Theaterkoor

Johanni van Oostrum  Katerina (Katja), vrouw van Tichon
Mark Duffin  Boris, Dikojs neef
Miranda van Kralingen  Kabanicha Kabanová
Michael Baba  Tichon, zoon van Kabanicha
Henk van Heijnsbergen  Dikoj, koopman
Elmar Gilbertsson  Kudrjás
Karin Strobos  Varvara, pleegdochter Kabanicha
Jacques de Faber  Kuligin, vriend van Kudrjás
Marjolein Bonnema  Glása, dienstbode
Saskia Voorbach  Feklusa, dienstbode


幕が開くと、舞台一面に泥のようなものが敷き詰められ、不気味なシルエットの幹と枝だけの
木立と電柱、梯子、そして傾いたチェストやテーブルや椅子などが全て黒で、存在を浮き立た
せている。
登場人物は皆、息詰まるような因習に束縛されたかのように、首まできっちりと詰まった上着で
その上に女性はコルセットで固く締め付けられている。そして、裾模様のように見えるが、実は
衣装の下の方には泥の汚れが固く付着しているのだった。

視覚的にかなり単純化された舞台デコールとコスチュームだ。逃げ場のない暗さが澱んでいる。

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      ヴァルヴァラ役のカリン・ストローボス(左)と
      カーチャ役のヨハンニ・ファン・オーストルム(右)は、
      昨シーズンの『ばらの騎士』コンビだ。


純な人妻カーチャは、専制的家長である姑カバニハに自由を束縛され、息が詰まるような毎日を
送っている。マザコンの夫は全く無気力で母の言いなり。出張で留守をする前には「実の母同様に
姑を愛すること」などと妻に誓わせたりする。
奔放で情熱的な青年ボリスは、教会で見初めたカーチャに夢中になり、所在無げなで欲求不満
気味のカーチャは夫の留守中に義妹ヴァルヴァラに焚きつけられて、ボリスと密会することになる。
ロシア文学によく見られるパターンであり、悲劇的結末はお約束のようなものだ。
カーチャはあまりに一途な性格であり、ボリスとの情事を浮気として軽く楽しむことができず、
罪悪感のみを抱く。自分(そして神)を偽ることができない生真面目な性格が命取りになる。


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         居丈高で意地悪な姑の最愛の息子は情けない駄目夫


人物描写が、舞台デコール同様、あまりにも白黒はっきりしすぎていて、まるで30年前の昼ドラ
もしくは新派の芝居みたいにチマチマしているのにはびっくり。意地悪な人たちはひたすら性悪で、
虐げられるタイプの人たちはひたすら弱弱しく、若者は奔放、と、あきれるほど単純な図式化で、
特に悪役はほとんどクサイとしかいいようのない演技である。
今どきのオペラにこんなのありか、人物造形にもう少し含みや奥行きがあってもいいのではないだ
ろうか、クプファーさん、といちゃもんを付けたくなった。
しかも、クライマックスのカーチャが身投げするシーンなど、あまりにスケール感がない影絵のよう
なもので、もうがっかり。

音楽はといえば、ヤナーチェクなのに、リンブルフ・シンフォニー・オーケストラの演奏にはドラマ
チックな迫力が全く欠けていて、覇気もなければ高揚感もない。ひたすら暗くて、ストーリー同様
に閉塞感に満ちている。う~む。これはつまらない。
指揮者はチェコ人だから、ヤナーチェクのオペラに不可欠な要素であるチェコ語の発話旋律指導
にも問題はないはずだが、もうすこしヤナーチェクらしさを演奏に出してもらいたかった。
オケの演奏があまりに盛り上がらないため、マチネ公演なのに眠気を堪えるのに必死になってしま
ったほどだ。(途中、実際にうとうとしてしまった。)
歌手は皆上手く、難癖つけるところはないのに。。。

というわけで、期待したものの半分も満足感を得ることができない公演だった。残念である。
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by didoregina | 2011-11-25 15:08 | オペラ実演 | Comments(2)

ICK Amsterdam のRocco

ICK (Internationaal Choreografisch Kunstencentrum) Amsterdam という
コンテンポラリー・ダンス集団による最新作Roccoを観賞した。学生時代にモダン・ダンス・
カンパニーを主宰しダンス教師資格も持っているHとTに誘われるまま、チケットを買ったのだった。

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Rocco @ AINCI 2011年11月19日

CHOREOGRAFIE Emio Greco en Pieter C. Scholten

DANS
Victor Callens, Dereck Cayla, Vincent Colomes en
Christian Guerematchi

MUZIEK Soundtrack

KOSTUUMS
Clifford Portier

LICHTONTWERP Paul Beumer en Pieter C. Scholten

photo Anna van Kooij

会場のAINCIは元セメント工場のオフィスビルで、数年前に小劇場に改装され、演劇やダンス・
パフォーマンスが行われている。インダストリアルな要素がそこかしこに残った建物で、いかにも
アングラの雰囲気が漂う。コンテンポラリー・ダンスの公演会場としては非常に適している。

例によって全く事前に何も知らずに公演に臨んだ。

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        photo Anna van Kooij

ステージは、ボクシングのリングそのものの設えで、観客は四方を取り囲んで座る。
開場時点で、ダンサー2人がすでにリング上の椅子に座って、タバコをふかしている。

日本語(!)の『ドレミの歌』に乗って、黒尽くめの装束で頭にミッキー・マウスのマスクをつけた
ダンサー2人がリングの周りでシャドー・ボクシングをする。ゴングが鳴るとリングに上がって準備運動
のように見える動作をしたり、ボクシングの動きを取り入れた振りのダンスを踊る。

リング上に座っていたボクサーそのものの格好の二人に交代すると、格闘技の要素もある振付だが、
肉体美と筋肉の動きを主に見せるようなゆっくりした動作のダンスが始まる。二人の体型はまるで
正反対なのだが、ほぼシンメトリカルな動きをする。ここでも、なぜか『ドレミの歌』が流れ、
「ファはファイトのファー」を合図にゴングが鳴ったりするのだった。

どうやら、「ファイト」=格闘というのが、キーワードのようである。(しかし、こう理解したのは
会場で私一人ではなかろうか。。。)

途中で何度か、黒装束の二人に交代し、彼らはそのたびに衣装を脱いでいく。タイツの上に普通の
ズボン、セーター、マスク、靴や靴下その他を最初は着けて踊っていたのだから、さぞや暑くて
踊りにくかったろう。

しかし、これらの踊りは、単なる「ファイト」だけで成り立っているのではない。二人の動きには、
ごく少量だがある種のエロティシズムが感じられ、「愛憎」を表現しているらしいことがわかる。

途中、ダンサーは「休憩」という札を持って、売り子の格好(首からチョコなどの入った箱を提げ)
をしてリングの周りを歩きながら笑いも取った。笑いというより、緊張をほぐすためで、実際「休憩」
なしでは続けられない激しい動きが続いたのだ。
その間流れる音楽は、アラン・ドロンとダリダによる『甘いささやき』(パローレ・パローレ)で、
「キャラメル、ボンボン・エ・ショコラ~」という歌詞に合わせて、チョコレートなどを客に投げる。



パフォーマンスのタイトルが『ロッコ』だということを終演後に知り、もしかしてヴィスコンティの
Rocco e i suoi frateli (=ロッコとその兄弟たち 邦題『若者のすべて』)のロッコなのか、
とようやく思い当たり、リングが舞台でボクシングが動きの基本になっていて、「休憩」中にアラン
・ドロンの歌が流れたのにも納得がいったのだった。

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by didoregina | 2011-11-23 11:54 | ダンス | Comments(4)

エネスコの『オイディプス王』@モネ劇場

当初観に行こうかどうか迷ったが、千秋楽に行ってきた。もう2週間以上も前になる。
なぜ迷ったかというと、モネでは今シーズン、どうやら全てのプロダクションの公演終了後
3週間、タダでオンライン・ストリーミング公開するらしいからだ。
でも、やっぱりエネスコのオペラ実演観賞機会は、これを逃したらもう2度と巡ってこないかも
しれない、という思いの方が勝った。
そして、それはいい選択だったのだ。しかし、なかなか記事にできないまま日が経ってしまった。
記憶はどんどん曖昧になっていく。そういう時、ストリーミングは便利である。もう一度オンライン
で全編見直すことができる。(12月2日までモネのサイトから。ただし、字幕はオランダ語と
フランス語のみ。フランス語で歌われるからフランス語字幕を読むとわかりやすいかも)

Oedipe by George Enescu   2011年11月6日@モネ劇場

Music direction¦Leo Hussain
Concept¦Alex Ollé (La Fura dels Baus)
Director¦Alex Ollé (La Fura dels Baus) Valentina Carrasco
Set design¦Alfons Flores
Costumes¦Lluc Castells
Lighting¦Peter Van Praet
Chorus direction¦Martino Faggiani
Youth chorus direction¦Benoît Giaux

Oedipe¦Dietrich Henschel
Tirésias¦Jan-Hendrik Rootering
Créon¦Robert Bork
Le Berger¦John Graham-Hall
Le Grand-Prêtre¦Jean Teitgen
Phorbas¦Henk Neven
Le Veilleur¦Frédéric Caton
Thésée¦Nabil Suliman
Laios¦Yves Saelens
Jocaste¦Natascha Petrinsky
La Sphinge¦Marie-Nicole Lemieux
Antigone¦Ilse Eerens
Mérope¦Catherine Keen
Une femme thébaine¦Kinga Borowska
Orchestra¦La Monnaie Symphony Orchestra & Chorus

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舞台にかかった幕の模様が凝ったデザインを投影したものになっていて、オイディプスの縁起を
物語っているようだ、まるで『風の谷のナウシカ』の冒頭に似てる、と思って見ていたら、なんと、
薄い紗のような布が引かれると、模様と思ったのは実際の舞台上のデコールだった。
舞台は4層の壁(穿眼のような)になっていて、テラコッタで出来た彫刻のように静止した人物が
大勢立ち様々な姿勢で並んでいる。序曲の間中、人物はじっとしたまま動かない。様式美に溢れ、
ドラマチックな緊張感のある素晴らしい幕開けだ。

実際、ドラマチックという言葉が、このプロダクションを貫いていると思える。そして、わたしは
この作品を「音楽劇」として見た。音楽はドラマのドラマチックさを増幅するための添え物的なもの
であると。
スペインの劇団La Fura dels BausのAlex Ollé とValentina Carrascoによる演出は、いい
意味で非常に演劇的で、造形やモブの動作も緻密で美的な統一感がある。

オイディプスの出生から始まる数奇な人生を語るオペラである。
ギリシア悲劇に源泉を汲むオペラ作品は万とあるが、これは非常に正攻法で出来事をクロノロジカル
に淡々と語って見せる形式だ。しかし、単に事件や出来事の羅列にはなっていないのは、演出の
巧みさのおかげだろう。演技や動作でその後の展開の暗示がされたり、人物の性格表現がされて
いる。
例えば、スフィンクスを倒したオイディプスが、それと知らずに母と結婚する場面では、血の
着いた手で母の白い腕を汚す。母は、はっとしたような目で汚れた腕を見る、という具合である。

また、オイディプスというえばフロイト、という連想そのもののシーンに、白衣にカルテを手にした
精神科医のような養母が、カウチに横たわるオイディプスの夢診断をする、という場面があった。

三叉路で父王とオイディプスが出会うシーンも後々のドラマの伏線になっている。
道路工事中の道に仁王立ちのオイディプスが、車で通りかかった王たちを酒に酔った勢いで殺す、
という残酷な展開なのだが、羊飼いならぬ道路工事人夫にしっかり目撃されている。


古代ギリシア語のドラーン(行動する)がドラマの語源だとすると、このオペラがドラマチックに
展開するのは、主人公オイディプスの行動に負うところが大きい。
夢と神託という、いかにも古代ギリシア的な要素が劇の進行を支配しているのだが、それに抗する
行動に出て「宿命」を打ち砕こうとする人間がオイディプスである。

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        スフィンクスは小型飛行機に乗っている。飛行機の造形は
        なるほど、スフィンクスそのものだなあ、と思わせる。
        スフィンクス役のルミューの歌唱は迫力と説得力に満ちている。

スフィンクスの投げかける問いは、「宿命に打ち克つものは何だ?」という近代的なものだが、
自信満々のオイディプスは「それは人間」と答えてスフィンクスを負かす。よく言われるように、
「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足の動物は?」という問いではないのがミソである。

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        平和と幸福の後には災いが。ペストに苦しむテーベを救えるのは、
        罪を犯したオイディプス王だけ。償いのために自ら目を潰す。

自らの行動こそが、宿命に打ち克つ方法だと信じるオイディプスは、しかし、暗い宿命に翻弄される。
償いとしての行動は、テーベ市民には理解されず、追放され、娘アンティゴネと放浪の旅に出るという
前途に全く救いの見えない状況だったのだが、最後には天から注ぐ泉の水オイディプスは浄化される。

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音楽もドラマチックではある。しかし、歌は無調なので、メロディーとして印象に残らない。観賞して
いる時には圧倒されても、すぐに忘れてしまうのだ。だから、音楽は添え物として聴いて、美しく
統一の取れた舞台のドラマを観た気分になるのだった。それで満足はできる素晴らしいプロダクション
だった。

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歌手は、低音の男性の登場人物がやたらと多い。だから、華やかさには欠ける。
女性では、母イオカステ役が美しくしかも迫力ある歌唱で舞台を〆ていた。それから、スフィンクス役
のルミューは期待通りの素晴らしさだった。
指揮者のフセインは、若いのにどうも神経質すぎるようで、正確さを出したいのはわかるが溌剌さに
欠ける。冒頭、客席の雑音がなくなるまで、何度も指揮をし始めるのだが止めたりしていた。
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by didoregina | 2011-11-22 11:13 | オペラ実演 | Comments(10)

アーヘン名物とクリスマスマーケット

熟女4人でアーヘンに遊びに出かけた。マーストリヒトから車で30分の距離であるが、
国境を超えるので一応旅行カテゴリーに入れてみた。
数年前は週に2度、仕事に通っていた町であるが、最近はほとんど行っていないので、
新鮮味すら感じられ、しかも、アーヘンは初めて、という人がいっしょだったので、ちょっと
観光気分だ。

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         アーヘンといえば鉱泉。硫黄のにおいが漂う。

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            街中いたるところに、ブロンズ製の噴水がある。

そして、予想外にも、今日からクリスマスマーケットが始まっていた。
朝10時半頃に着いたら、丁度、店を開き始めているところだった。

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       大聖堂脇の広場のクリスマスマーケットではアーヘン名物プリンテン
       (硬くて噛み応えがねっちりしたクッキー)そっくりの大型デコレーションに
       度肝を抜かれた。


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       アーヘンといえば、シャルルマーニュの宮廷が置かれた町である。
       敷石の間に埋め込まれたシャルルマーニュのサインを模ったメダル。
       デザイン的にも優れたサインなので、このロゴをモチーフに使った
       エスプレッソ・カップやマグ・カップは、お勧めのお土産だ。

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         アーヘンの大聖堂は、シャルルマーニュの元宮廷礼拝堂。

久しぶりに(一体何年ぶりだろう?十年ぶりかもしれない)大聖堂の中にも入ってみた。
入場料はいまだに無料だが、内部写真撮影には1ユーロとられる。(自己申告ではなく徴収制)

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       クーポラの周りは八角形の外壁で、内側は多層で様々な要素が
       ミックスされた複雑な造り。3層の天井は全てまばゆいモザイクで
       飾られている。

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         金ぴかの説教壇には(半)貴石が埋め込まれている。


聖堂から市庁舎に向かう途中、新しい紅茶屋さんを見つけた。varieThéという名の店で、
クスミやダマンのほかLovやオリジナルの紅茶が揃っていて、ゆったりしたインテリアや店構えが
とてもおしゃれである。
色々と香りをテスターで嗅いでから、オーガニックのオリーブの葉っぱにレモングラスとジンジャーの
入ったさわやかなお茶(オリーブなのにお茶と呼べるのか疑問だが)に決めた。
オーナーは若くて美しいベトナム人女性で、接客も非常にフレンドリーだ。かわいいオリジナルの缶は、
2週間後に入荷とのこと。エルメス・オレンジその他6色揃うという。

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           100度のお湯で3分淹れてから葉っぱは
           取り出すこと、とパッケージに書いてくれた。


また、アーヘンにもノイハウスのお店があるのを発見。実は、2週間ほど前にブリュッセルのノイ
ハウスでお茶2種を売っているのを見つけ、フラワー入りのフルーツ・フレーヴァー・グリーン・ティー
East of Edenが欲しくなった。缶のかわいさとネーミングとフレーバーの組み合わせに惹かれた
のである。しかし、ブリュッセルの店ではショーウィンドーに飾ってあるのみで在庫が切れていた。
そして、ショーウィンドーのは、頼んでも売ってくれなかった。

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         ブリュッセルに行く予定の人に頼もうかと思っていたほど未練があったので、
         アーヘンでそのお茶を見つけたのはうれしかった。100グラム缶入りで
         8ユーロという値段が信じられないほどグー。


お昼ごはんは、市庁舎裏のクリスマスマーケットで。ドイツのクリスマスマーケット名物である
フラムクーヘン(それともラインラント限定?)の屋台で、作りたて・焼きたて(注文を聞いてから
延ばした薄いピザのような台にクレム・フレシュとトッピングを乗せて焼いてくれる)アツアツを食べた。

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           サーモンとディルのフラムクーヘン。5ユーロ50セント。


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             市庁舎裏にも巨大なプリンテン像が。。。

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             ケーキ屋さんの前の街角にもプリンテンを抱いた
             女の子の銅像。実際のプリンテンは、もちろん
             こんなに大きくない、ジンジャーマン大である。

プリンテンには、名物に旨い物なし、ということわざが通用すると思う。少なくとも、日本への
お土産に買わないほうが無難であろう。アーヘン市内には、いたるところにプリンテンを売る
店があり、見た目は美味しそうだからつられて買ってしまうかもしれないが。

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         観光とショッピングを楽しんでいると、いつの間にか、夕闇が迫ってきた。
         平日の昼間だったので、クリスマスマーケットも混んでいず、いろいろ
         冷やかしながら観て回れたし、フラムクーヘンも並ばずに食べられた。
         なにより、女同士だとショッピングもウィンドーショッピングも楽しい。
           



       
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by didoregina | 2011-11-18 23:08 | 旅行 | Comments(6)

フィリップ・ジャンティのVoyageurs Immobiles

スポンサーとして招待され、全く予備知識なしに観に行ったフィリップ・ジャンティ・カンパニー
の出し物は、パントマイムとコンテンポラリー・ダンスと人形劇がフランス的に合体したもので、
しかもどのカテゴリーにも収まり切らないような、ファンタジー溢れるパフォーマンスだった。

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VOYAGEURS IMMOBILES
Création 2010 de la Compagnie Philippe Genty
Mise en scène de Philippe Genty et Mary Underwood

2011年11月12日@Stadsschouwbrug SittardGeleen







とにかく、下の動画をご覧あれ。



失われた子供時代、もしくは誰でもが生涯捨てられない子供心といったものがテーマのようで、
無邪気と残酷が同居し、その構成は予断を許さず、想像力の素晴らしさと卓越した演技力に
観客は目を瞠る。

判りやすくするために例えると、パントマイムは、『天井桟敷の人びと』で見られるような
古典的なものではなく現代的だが、ジャン・ルイ・バロー風な優美な動きで洒脱さがある。
そして、全体的にブラックユーモアというか『デリカテッセン』を思わせる軽妙な不気味さに満ちて
いるのだ。

ダンスはピナ・バウシュ風で、シンプルな動きの美しさが独創的な小物使いと舞台装置に映える。

舞台装置は、プラスチックの海(しかし、フェリーニ風キッチュにはならない!)や紙でできた
砂漠のようなシンプルなものだが、その使い方がクリエイティブで感心する。
ダンボール箱やボール紙やハトロン紙や模造紙などの無機質なものが、まるで生き物のように
千変万化し、様々な形をとり自由自在な動きをするのだ。思わず目を疑うほど。
creative with cardboard とサブタイトルを付けたくなった。

そして、人形使い。文楽にヒントを得ているようなリアリスティックで手の込んだ動きだ。それが、
紙と組み合わされて動くのが独創的。

とにかく、あれよあれよと、思っているうちに、軽々とパフォーマンスは進行し、肉体美と演技と
物使いの想像力とが絶妙のコントロールで出来上がったトータルな舞台を楽しむことができた。
ファンタジーが飛翔し様々な要素が詰まっているので既成の範疇に収まらない。名付けるなら、
トータル・シアターというしかない。これに音楽も素晴らしいものが付いていたらいいのに。または
オペラの演出に組み込んだり、コラボにしてもいい。
(もしかしたら、ロベール・ルパージュ演出のDNO1月公演、ストラヴィンスキーの『夜鳴き鳥
その他の物語』では、歌手が人形を使ったりするらしいから、こんな雰囲気の舞台かも。観に
行くべきだろうか。)
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by didoregina | 2011-11-18 09:28 | ダンス | Comments(0)

リニューアルしたアムステルダムの海事博物館

家族全員、海洋とか海事とか船舶には目がない。各地にある海事博物館や歴史的船舶の
レプリカなどを訪問・見学するのを楽しみとしている。
アムステルダムの海事博物館Het Scheepvaartmuseumは、2007年から改修工事を行って
いたのが、ようやく2011年10月に完成。リニューアル・オープンした。というより、ほぼ全く新しい
博物館になったというほうが正しいだろう。

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      外観は兵器倉庫そのまま。1655年にDaniel Stalpaertが設計。
      古典様式の威容とエレガンスが同居し、水辺に映える。

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      外からは全く見えないが、四辺を取り囲まれた中庭が
      新たな付加価値。34x34メートルの天井にはガラスと
      鉄鋼のクーポラが取り付けられた。
      石を敷いた床には特殊防音が施され、レンガとガラスで閉鎖
      された空間なのに音がこもらない。残響は3,3秒。

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      ガラスと鉄鋼で出来た天井は、ブリュッセルのNey + Partnersによる
      技術設計・施工。1000個以上の三角、四角、五角、六角形の各々異なる
      ガラス(60トン)と全長2200メートルの鉄鋼(150トン)から構成され、
      86箇所の交点にはLEDが内臓され、下から見上げると天空のイメージ。
      ガラスには遮光・断熱・強化加工が施されている。


博物館全体の再開発設計は、Liesbeth van der Pol女史率いる Dok Architectenが
2005年に請け負うことになった。ファン・デル・ポル女史は、2008年から2011年までオランダの
建築家の最高峰ともいえる地位のRijksbouwmeester(Government's architect)という
役職についている。

そして、天井のイメージとデザインの元になったのは、海図のコンパスローズ(羅針図)だという。

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      上の写真と比べると一目瞭然。いかにも海事博物館にふさわしい。


ファン・デル・ポル女史の描いた博物館のイメージ画を見て、実物の博物館と比べると、ほぼ実際に
イメージが具現化されているので、びっくりする。

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       過去の栄光が博物館という小宇宙の中を飛遊する。
       時空の概念と実在の建物および展示物が、絶妙に
       空間に配置され、軽やかに浮遊している。


例えば、16世紀、17世紀、18世紀のキャビン・コンパスの展示室では、暗い空間に星空のような
照明で、王冠の形をした羅針盤が宙から吊るされ、下から羅針盤が覗けるようになっている。
ロマン溢れる展示方法だ。

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       王冠型の羅針盤が四方からと下からもよく見える。

博物館の白眉は、様々な地球儀と天体義のコレクションで、一つ一つの全体像が見えるように展示
されている。(一部、見えにくいものもあるが)
その展示室にいると、まるで、自分が大航海時代の世界発見の旅の渦中にいるような気分になる。

そして、各種船舶の模型の展示も素晴らしい。
船の模型は、大概どこの海事博物館にも沢山あるのだが、様々な時代の様々な型の船が
ごちゃごちゃと並べてあるのが普通で、印象が散漫になるような展示方法なので感心したことがない。
しかし、ここでは、ガラスの大きなケースの中に入った様々な船の位置に、上下左右に移動できる
モニターの照準を合わせると、インターアクティブで説明が現れるのだ。楽しく長居が出来る。

それから、素晴らしい海戦図などの海洋画のコレクションも堪能できた。
東インド会社、西インド会社などの商人の家族の生活を、フェルメール風の凝ったカメラワークの
実物大の動画で説明するのもわかりやすくてよかった。

しかし、結局、海事博物館というのは、海運国家および世界帝国としてその昔君臨した国の
過去の栄光を誇示するものなので、その国の黄金時代の歴史に興味のない人には、全く面白みが
感じられないどころか、帝国主義的発想とその成果を集めた展示物に呆れてしまうかもしれない。

古い建物の構造をなるべく生かした内部は、階段が異常に狭いため上下昇降の人がすれ違うのが
ほぼ不可能なのが難である。
トイレの数が沢山あり、最新デザインの機器も内装も美しいのは、非常によろしい。
美術館や博物館では入るのがお約束のカフェ・レストランだが、ここはオープンして間もないため
異常な込みようだったので入るのは諦めたが、中庭で軽食が買える。

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        アムステルダムの町の中心まで歩いて、ダム広場の王宮裏手に
        あるショッピング・モールMagna Plaza(当時のRijksbouwmeester
        C.H. Peters設計で1895~1899年に建造の擬古ゴシック・ルネッサンス)
        の中に入っているカフェOvidiusでくつろいだ。ここは、なぜかウィーン的な
        味わいのある落ちつけるカフェで、カプチーノが美味しかった。
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by didoregina | 2011-11-15 11:37 | セイリング | Comments(2)

マレーナ様のサイン会@ケルンでおしゃべり

マーラー室内管のコンサート終了後に、マレーナ様と指揮者のサイン会があるとの告知が
コンサート会場にありました。

舞台に近い席だったので、客席上方にある出口まで長い階段を登り、フォアイエに出てから
さらにホール出口に行く階段を登ると、マレーナ様の金髪が光っているのが遠くからも見えます。
ソロ歌手としての出演は前半だけだったのですでに私服に着替えて、客よりも先にサイン会場で
待機しているのでした。
わたしは、2番乗りでした。

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        ウィーンでも履いていたジーンズは濃いブルーのスリム・フィット。
        白の毛糸のジャケットとの組み合わせがキマッている。

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        メイクも残していて、自然な美しさが光るマレーナ様。

今回は着物でなく洋装なのですが、マレーナさまは憶えていて気づいてくださるでしょうか。。。

R「一週間前にウィーンでお会いしました。『セルセ』が大変素晴らしく印象に残り、8月の
  ウィーン公演まで待てずに、今日のコンサートに来たんです。」
M「あなたのそのネックレス、とても素敵だわ。」
  と、またしても、フツーの女の子っぽいノリのマレーナ様です。きさくなマレーナ様とは
  ファンとスターというより普通の女同士の会話になるのが楽しいのです。

R「小さなプレゼントですが、どうぞ。日本製のハンカチなんです。」
  と、菖蒲の絵の華やかなボタニカル・ペインティング風のハンカチをプレゼントしました。
M「まあ、どうもありがとう。」
R「いっしょに写真を撮らせていただけますか?」
  と伺いながらカメラを出そうとすると、車のキーがバッグから落ちてしまいました。
M「それもプレゼント?それなら、とてもうれしいけど」
R「いえ、ごめんなさい。これは私の車のキーですから。。。」
  カメラを取り出すと、マネージャー女史が、「慣れてるから、まかせて」と言ってくれました。
  しかし、サイン会用テーブルの周りにはロープが張ってあり、あまり近づけません。
M「わたしがそちらに行くから大丈夫。」
  と言って、立ち上がり近寄ってくれたマレーナ様と、ロープを挟んでのツーショットに成功しました。

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     慣れてるという割には、マネージャー女史の撮影技術はイマイチで、
     わたしは目をつぶってしまいましたが、マレーナ様は美しく撮れてます。

R「今回のドイツ・ツアーには、お子さん達も同行されてるとか。丁度、秋休みですものね。」
M「でも、会場には来てないのよ。もう今はぐっすり眠ってるわ。」
R「でも、安心でしょうし、お子さん達も家族揃ってのホリデー気分が味わえられるのは、
  とてもいいことですよ。」
  
他のドイツ人ファンたちは、しゃちこばって生真面目にサインを頼むだけなので、わたしは、邪魔に
ならないようにつかず離れず写真をとりながら、マレーナ様に声をかけます。

R「今晩はメイクも残っているし、輝くように美しいわ。」
M「でも、朝までは持たないからね。」

マレーナ様を独占してはいけないので、その後はマレーナ様同様若くてきさくなマネージャーのエレン
さんとおしゃべりしました。
E「ウィーンの『セルセ』は凄くよかったでしょ。賞賛の嵐だったのに、木曜日の千秋楽には、
  他の仕事もあって、行けなかったのが残念。」
R「『セルセ』、最高でしたね。わたしも1回しか行けなくて、2回分のチケット買わなかったのを
  後悔しました。」
E「今晩のコンサートも、マーラー室内管との息がバッチリね。」
R「本当に若々しくて生き生きした演奏で、マレーナ様ととても合ってます。」
E「サラウンド効果のあるいいホールだし。」
R「会場の音響が素晴らしいですね。まるで自分が音の中心にいるみたいな、くっきりした音に
  取り囲まれたような気がする空間。天井が高いのがいいのかしら。」
E「そうそう!何とも言いがたい音響で、はっきりした音が目に見えるみたいで、音のシャワーが降り
  注ぐような。」
R「マレーナ様の追っかけしたいので、今後のスケジュールがわかったら教えていただけますか」
  と訊くと、名刺を取り出して、スケジュールを知りたかったらメールしてくださいとのこと。
  もしかしたら、日本のプロモーターもしくはメセナと間違われたのかもしれません。
  
今回も、終演後にマレーナ様とお会いできて、ツーショットやおしゃべりができたので大満足です。

さて、マレーナ様のツイッターにスエーデンのTV番組のリンクがありました。
主婦向けのヴァラエティ番組に出演したマレーナ様のドレスが、ケルンでの公演と同じものです!
12月12日まで見られますので、ぜひご覧下さい。

セレブや王室の方のファッション・チェックやおすすめパーティー・バッグ、料理など番組全般に
マレーナ様は参加していますが、スタジオで歌わないのが残念。
でも、子供の頃の写真を見せてくれたり、ケルビーノのアリアの動画が映ったりしますので、
スエーデン語のわけのわからないしゃべりですが観ているだけでも楽しい番組です。
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by didoregina | 2011-11-13 12:46 | マレーナ・エルンマン | Comments(6)

マレーナ・エルンマンとマーラー室内管弦楽団@ケルン その2

はっきり言って、このコンサートに出かけたのは、マレーナ様を拝みたい、あの豊かな低音に
しびれたい、そしてあわよくばまたおしゃべりしたい、という点に尽きる。
マーラー室内管には悪いが、わたしにとってオケは添え物であった。

Malena Ernman + Mahler Chamber Orchestra
2011年11月2日@ Kölner Philharmonie

BENJAMIN BRITTEN Sinfonietta op. 1
DMITRI SCHOSTAKOVICH Chamber Symphony op. 110a
BENJAMIN BRITTEN Phaedra op. 93
SERGEI PROKOFIEV Quintet op. 39 / Symphony no. 1 in D major op. 25 "Classical"

Conductor Teodor Currentzis / Mezzo-Soprano Malena Ernman

プログラムをご覧いただくと判るとおり、マレーナ様はブリテンの『フェードラ』のソロ歌唱担当で、
舞台にいる時間は15分から20分程度だ。
それはもちろん知っていた。それでも、わざわざケルンまで万難を排して出かけた。(当日の
朝まで、ケルンからはずっと離れたアムステルダムにいた)
そして、当日昼過ぎからようやく、文字通り泥縄式に『フェードラ』の予習を始めたのだった。
今年になって、サラ・コノリーが『フェードラ』が入ったCDを出している。買おうかと思ったが、まだ
手に入れていない。サイトに彼女の歌う動画は見つからない。

この曲は、ブリテンがジャネット・ベイカーのために作曲し、作曲家の死の半年前にベイカーの歌で
初演された。
しかし、ネット上で音源を探すと、ジャネット・ベイカーのよりもずっと怨念の籠もった迫力のある
歌唱を見つけ、断然こちらが気に入った。
ロレイン・ハント・リーバーマンの歌う『フェードラ』だ。(彼女は2006年に亡くなっている)



フェードラは、ギリシア神話のパイドラーのことで、テーセウスの妻となるも、愛の神アフロディテー
の姦計によって義理の息子ヒュポリュトスに恋してしまうが拒絶されてしまう哀れな年増美女である。
この話はラシーヌが書いた戯曲で有名で、ラモーがオペラ化している。
フランス語のフェードラという名前には、誇り高く艶かしい響きがあるので好きだ。(自分の子供に
名付けたいとは思わないが)

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          お気に入りのエスプレッソ・カップは
          2005年のIlly Collection のFedra

ブリテンの『フェードラ』は、なかなかに激しい内容で、ことの成り行きを語るフェードラの台詞は
愛や呪詛の言葉に満ち満ちて、クラシック音楽の歌詞というよりほとんど演歌である。


ケルンでのマーラー室内管のコンサート・プログラムは、20世紀の音楽だったが、メリハリが利いた
変化のある内容である。

ブリテンの室内楽シンフォニエッタで始まった。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン
と弦楽五重奏からなる。初めて聴く曲である。1932年作曲だが、現代的な響きがする。

次のショスタコーヴィッチの室内交響曲になってから、指揮者が登場した。ギリシア人のテオドール・
クレンツィスという若手で、ギリシア人にしてはかなりの長身だ。オケの男性メンバーは皆、クラシック
な燕尾服姿なのに、指揮者だけカジュアルなブラウスにピタ・パンツというのがいただけない。
指揮ぶりは大分オーヴァー・アクション気味で、それもわたしの好みと相容れない。

このオケの特性なのか、指揮者によって引き出されたのか、はたまたホールの音響のせいなのか
いまひとつはっきりしないが、きびきびとしてクリアーな音で好感が持てる演奏だ。

3曲目で、ようやくマレーナ様の登場。
しかし、なんと、ソロ歌手なのにオケの前ではなく、後方の打楽器の横辺りに立っている。前から
5列目中央といういい席なのに、ヴァイオリン奏者達がじゃまになって、マレーナ様がよく見えない。
なんで、後ろに立つのよ!

マレーナ様のいでたちは、長い金髪を腰まで垂らして、シンプルなラインだが胸元がくっきり開いて
体の線がはっきり出るブルー系のロングドレスに、底が厚いピンヒールを履いているので、彼女の
筋肉質で長身の美しさが究極まで発揮されている。
女性らしさが強調されて、フェードラの熟女のイメージというより、ジュノーのような神々しを感じさせ、
堂々たるもの。
恨みつらみの歌の、特に低音部分のソフトな優しさがいい。アルトに近いメゾの声域が一番美しく
聴こえるのだ。

1週間前には、ズボン役でコミカルかつスポーティーな動きを見せながら、高音で意表を突いて
くれた彼女であったが、今回は本来の女性らしさをヴィジュアルでは顕にして歌声は低音の魅力を
聴かせる。そのギャップがたまらない。
ああ、やっぱりケルンまで来た甲斐があったというものだ。

体力的には青年のズボン役で主役はかなりきつかっだろうと思う。今後は、女性役のほうが喉には
いいのかもしれない。しかし、女っぽい役にも青年役にも違和感のないアンドロギュノス的魅力と
説得力のある演技力がマレーナ様の武器であり、それは他のメゾの追随を許さない専売特許である。
やはり、毎年最低2作品のオペラに出演してもらい、男性役と女性役の両方を観たいものだ。


休憩後はプロコフィエフで、最初はオーボエ、クラリネット、ヴァオイリン、ヴィオラ、コントラバスの
5重奏で、ソロとして演奏するときはオケのメンバーも自由闊達で粋な雰囲気になる。この曲は特に
ジャジーな味があるので、気ままなジャム・セッションというイメージが楽しい。

最後の『古典的』は、実にハイドン的な曲で楷書のような美しさをなぞったようなところがパロディー
っぽいのだが、オケの若々しい演奏によるのかこのホールの音響のよさのためか、実に生き生きと
して楽しい音楽になった。

音が塊としてぼ~んと響いて来るのではなく、一つ一つの楽器の音がクリアーな粒子として見える
ような感じで、それでいて全体が纏り個々に乖離していない。他のホールではなかなか感じたことの
ない不思議なサラウンド感だ。音の世界の中心に立った自分が、四方八方から優しく包まれて音楽と
一体となったとでもいうような絶妙の音響である。
この感想は、同行者およびマレーナ様のマネージャー女史とも一致した。
ケルン・フィルハーモニー・ホールは、ベルリンのフィルハーモニーのような作りで、インテリアは
モダンで内装には木が使われている。客席の斜面の傾斜が非常に急で天井が高い。
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by didoregina | 2011-11-11 21:37 | コンサート | Comments(2)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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