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Tous les Soleils バロック音楽ファン必見の佳作

主人公がバロック専門家で大学で音楽学を教えている、という設定に惹かれて観に行った。

5月から変則的にリュミエールで公開されていたのだが、今週月曜日が最終日だ。絶対に見
逃せない。しかし、予約なしで出かけた。なんだかオタクっぽい映画だからあまり人気がない
のではないかと思ったのだ。家族を誘ったのだが、誰も付いて来なかった。
夜7時30分開始の15分前に着くと、案に反して売り切れ。「待ってみます」と宣言して
ウェイティング・リストに載せてもらった。5人目である。入場できる可能性は低い。
開始5分前に、リスト最上位の人が呼ばれた。2分前くらいになって、私の名前が呼ばれた。
私の前に4人いるはずなのだが。。。中に入って納得。最前列端の入り口に一番近い席が
一つだけ空いていた。つまり、皆2人分の席をウェイティングしていたのでスルーされたのだ。
一人でよかったと、思わぬ僥倖に喜び、安堵し席に着いた。

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監督: Philippe Claudel
キャスト: Stefano Accorsi (Alessandro),
Lisa Cipriani (Irina),
Neri Marcorè (Crampone)
Clotilde Courau (Florence)
Anouk Aimée (Agathe)
2011年 フランス







ストラスブールの町並み(プティ・フランス)や観光名所(聖堂)が画面に現れる。
主人公の音楽学教授は50歳くらいで、電動自転車に乗って大学に通っているのだ。
授業のシーンでは、いきなりイタリア古謡の『タランテッラ』を聴かせて、学生に感想を聞く。
気取りのない語り口と素朴な風貌が、いかにもバロック音楽専門の学者の雰囲気だ。たとえる
なら、トン・コープマンみたいな感じ。ダンディーでペダンチックな皆川達夫先生とは正反対だ。

イタリア北部出身のアレッサンドロは、15年前に妻を亡くし、生後半年だった一人娘イリーナ
を男手一つで育ててきた。このところ、思春期の娘との関係が微妙になってきている。
ベルルスコーニ政権に耐えられず「政治亡命」してきたアナーキストの弟ルイージが同居して
いる。
アレッサンドロは若くして逝った美しい妻のことが忘れられず、女性関係に発展が見られない。
音楽を語るときや、音楽や文学で人を癒そうという熱意が大層魅力的なのだが、シャイで
ナイーブだから、愛情発露の仕方がわからないのだ。

トレーラーで流れるのは、ラルペッジャータによるLuna Lunedda。これが、この映画のテー
マのひとつ、アレッサンドロの人生の陽の部分を表している。彼が踊るタランテッラに注目の
こと。




クローデル監督は、Il y a longtemps que je t'aime(邦題『ずっとあなたを愛してる』)が
映画処女作で、これが2作目だ。この人、ナンシー大学の文化人類学教授かつ作家だそう。
文学では表現できないものを映画にしたかったのだな、ということがよくわかる。つまり、
本作ではタランテッラの音楽が、動機かつ主題になっている。いくつかのインタビューを読むと、2002年にラルペッジャータのCD『ラ・タランテッラ』をプレゼントにもらって、それ以来
病みつきになり、その音楽をテーマにして映画を作ろうと思ったそうだ。実際、毎日聴いている
うちにストーリーがどんどん浮かんできたと言う。なんと、素晴らしい才能だろう。

コミカルな調子の人とのふれあいが中心で台詞が多いので、一見、前作とは正反対の作品の
ように思えるが、シリアスで重いテーマを扱った前作でも、軽いユーモアは随所に見られた。
そして、ジュテーム「愛してる」という歌詞や台詞が、中心を貫いているのも同様だ。どちらの
映画の場合も、さらりと使われるのにその言葉に重みがある。親子や兄弟の様々な愛の形が
見え隠れする映像では透明さと軽やかさが支配しているのに対して、哲学的な台詞がところ
どころに現れて胸に残る。


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          年取って、森英恵そっくりになったアヌーク・エーメ

アレッサンドロ役ステファーノ・アッコルジの眼鏡をかけた顔がちょっとジョニー・デップに
似ていてチャーミングだ。
アヌーク・エーメが、相変わらず美しい。そして、年齢を感じさせない可憐な声。

アレッサンドロは、末期患者のために病室で本を朗読するボランティアもしている。また、
アマチュア・バロック・アンサンブルで歌も歌う。自分の持つ陽の部分で人を癒したり幸福に
するためなのだが、自分自身は死んだ妻に捕らわれたままで、心は陰の世界に籠もっている。
彼の切ない心情を吐露する歌が、Silenzio D'Amuriだ。イタリアのバロック古謡だ。



この歌の歌詞である詩を、アレッサンドロは末期患者に朗読する。愛を伝える一つの形として。
そして、ラストではアマチュア・コンサートで実際に歌う。この映画のテーマといえる歌なので、
これをタイトルにしてもよかったはずだ。

アマチュア・バロック・アンサンブルの練習風景や、この歌をアレッサンドロが歌うコンサー
ト場面は結構本格的だ。
ラルッペッジャータの音楽とマルコ・ビーズリーの歌が使われていて、下の動画の雰囲気その
もの。




イタリアのバロック古謡を洒落た形で現代映画に取り込んだこの作品は、はっと目を覚まさせる
ような、新鮮な美に満ち溢れた佳作だ。わかる人にはわかる、という映画かもしれないが。
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by didoregina | 2011-08-31 10:40 | 映画 | Comments(13)

ジョン・ブローの『ヴィーナスとアドニス』 トランスパラントのダンス・オペラ

アントワープのデ・シンヘルというコンサート・ホールに初めて行った。

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       建築会館も兼ねている複合文化施設

日曜日に丸一日遊ぶため、家族揃ってアントワープまで出かけた。
一番のメインは今年5月に完成した新しい博物館MAS見学なのだが、丁度マチネのオペラ公演が
あったので組み合わせた。チケットは一人6ユーロとめちゃ安だったが、それには理由があった。

『ヴィーナスとアドニス』はジョン・ブロー(1649-1708)作曲の唯一のオペラ(当時はマスク)
だが、上演機会が少ないレア・バロックものだ。今回は、生舞台に接するまたとないチャンスである。
もともとはチャールズ2世のために作られた作品で、初演では王の愛妾(ヴィーナス役)とその子
(キューピッド役)が出演したというから、内輪で演じて、楽しむ娯楽だったのだ。

マスクとかセミ・オペラというのは、まだまだ、後のオペラのように歌と音楽と演技とが融合した総合
芸術とは異なるものだと、パーセルの『妖精の女王』を観賞したときしみじみ感じた。
すなわち、主な台詞は朗読でまるで芝居のよう、独唱や重唱、合唱などの歌も入るが、器楽演奏
はどちらかというと重点の置かれたダンスのための伴奏の感を呈する、という具合で、各々の独立
した構成要素をむりやり一つの舞台に乗せた、という印象で有機的に結合していないのだった。

ブローのマスクでは、台詞は全て歌われる。これだけでも、いわゆるオペラのイメージに近い。
ダンス場面が多いのは、マスクには必要不可欠だから許そう。また、3幕で1時間と短いのは、パー
セルの『ダイドーとイニーアス』でも同様だから、別に文句はない。

さて、ホールに入場すると、舞台上、左端に楽器が並べてある。
オケ・ピットのないホールでは、舞台にオケが上がっていても不思議はない。しかし、かなり広い
ステージの左端、というのが微妙だ。私達は1列目かぶりつき席だったが、まっすぐステージを見ると
オケが視界に入ってこないのが残念だ。というのは、面白そうな楽器編成だったからだ。

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         ステージの左側に置かれた器楽演奏台。
         オルガン、チェンバロ、ハープ、テオルボが通奏低音。
         それにバロック・ヴァイオリン2から4、リコーダー、チェロ2台と
         バロック・ギターが加わる。

すごいのは、リーダーのニコラ・アクテンの八面六臂の演奏だ。なにしろ、バロック・ギターを抱えて
指揮をとりつつ、ハープも弾く。(2年前の『エウリディーチェ』では、テオルボを抱えて立ったまま、
主役オルフェオの歌も歌った。そのときは、オルフェオなんだからハープを弾きつつ歌ったらいいのに、
という感想だったが、彼はやっぱりハープも弾けるのだ。)

VENUS AND ADONIS John Blow  2011年8月28日@deSingel

GEZELSCHAP Muziektheater Transparant
MUZIKALE LEIDING Nicolas Achten
COACHING Marcin Lasia
SCENOGRAFIE Itamar Serussi
CHOREOGRAFIE Itamar Serussi
COPRODUCTIE deSingel , Danshuis Station Zuid (Tilburg)


↓ リハーサル風景および鍵盤奏者とリーダーのニコラ・アクテンのインタビュー



実演では、器楽奏者もダンサーも歌手も皆、白またはベージュまたはグレーの私服に近いような
衣装でさわやか。全員、裸足であったのとシンプルなコスチュームで若さが強調されていた。
実際、アクテンとバロック・ヴァイオリンのコンマス以外は、全員学生っぽい非常に若い子達だった。

リーダーのアクテンが、今回は歌わなかったのが非常に残念だ。というのは、歌ったのはプロの
レヴェルには達していない歌手ばかりだったからだ。皆、学生だから仕方がないが、誰一人として
感心させる歌唱の人はいなかったから、退屈して、もう、眠くて眠くて困ってしまった。(器楽演奏
に関しては文句はないのだが)

歌手はダンサーも兼ねていて、一つの役を何人かで交代しながら全員が踊り歌う、という構成だった。
かなり難しい振りがついているから、踊りつつ歌うというのは、やはり若い子でないとこなせない。
登場人物はヴィーナス、キューピッド、アドニスに牧人だから、全員が公平にソロを歌うためには、
一役に複数の歌手を充てる必要がある。どうしてその必要があるかと言うと、小学校の学芸会を想像
してもらえばよろしい。今回は、アクテンとトランスパラントが主催する学生のためのワークショップの
学芸会的な出し物だったのだ。

いかにもベルギーのコンテンポラリー・ダンス、という感じの振り付けで、次男曰く「ADHDみたいな
動きで、見ていて疲れた」とのこと。手を伸ばせばステージに届くような距離の席だったから、見てる
だけで疲れるというのはありえるかもしれない。

ストーリーは非常に単純で、キューピッドのいたずらでヴィーナスは美少年アドニスを愛するようになる
が、狩の最中にアドニスはイノシシに襲われて負傷し死んでしまう、というだけの話だ。
キューピッドがソプラノもしくはメゾ、ヴィーナスがソプラノというのはわかるが、アドニスがバリトンという
のは納得できない。美少年なんだからCTかメゾか、せめてテノールにしてほしかった。
当時のイギリス王室では、CTが好まれなかったのだろうか。バリトンが歌うと、どうも中年っぽくなって
しまい、自分のことをアドニスと呼んだりして可愛らしく拗ねたりする台詞↓とのギャップが辛い。

Adonis:
Adonis will not hunt today:
I have already caught the noblest prey.
(アドニスは今日、狩には行かない。最も高貴な獲物をもう捕らえたのだから。)

Venus:
No, my shepherd haste away:
Absence kindles new desire,
I would not have my lover tire.
(だめよ、わたしの羊飼い、急いでお出かけなさい。離れていれば新しい欲望に火がつくわ。
愛人に飽きられてしまうのはいやよ。)

ヴィーナスとアドニスの後朝の音楽はバロックながら官能的で、『ばらの騎士』を思い出させる。
アドニスの台詞はオクダヴィアンそのものだし、その後のヴィーナスによる愛想尽かしの台詞も、
元帥夫人かダイドーか、という感じである。

歌は難しくなさそうだし、長いアリアもないから、学芸会向けのオペラである。しかし、官能的な部分を
表現できる大人の歌手がヴィーナスを歌う舞台を見てみたい。ブローの音楽はイギリスのバロックらしい
典雅さと牧歌的な要素もあるのだから、『ダイドー』とのダブル・ビルならぴったりだと思うのだ。
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by didoregina | 2011-08-29 17:46 | オペラ実演 | Comments(0)

MonteverdISH ヒップホップ・ブレークダンス・バロック

今週末は、アムステルダムでアウト・マルクトといって、新シーズン開幕前プロモーションのため
様々な催し物がミュージアム広場やレイツェ広場で繰り広げられる。
コンサート・ホール(全てのジャンル)や劇場(全てのジャンル、映画も含む)などのエンタメが
一斉に生情報を発信するのである。

それに先駆けて、新聞にも様々なジャンルのエキスパートによるイチオシ演目が載っていた。
その中に気になるものがあった。

バロック・オペラとヒップホップとブレークダンスの融合、と銘打ったISHという団体によるシアター・
パフォーマンスで、モンテヴェルディの『ポッペアの戴冠』をベースにしたものらしい。
タイトルも Monteverdish

手っ取り早く、動画をご覧いただきたい。



上掲のトレイラーは、なかなかスタイリッシュな映像で美しく出来ている。
特に、廃屋の工場というロケーションが抜群だ。控えめなブレークダンスとバロックの器楽演奏の
組み合わせがマッチしている。この程度のダンスなら、実際に普通のオペラのステージ上で近年
よく見られる。バロックとコンテンポラリーもしくはモダン・ダンスの組み合わせはごく当たり前だ。
ただし、デュエットはハモリが下手だし音程が不安定で、全然耽美的でない。


下の動画は、ステージでの実演。



バロック音楽がヒップホップとミックスされて、なかなかに過激というか、トレイラーの印象とは大分
異なる。

このように全く異なるジャンルの音楽をミックスさせたオペラ舞台というと、昨年観賞したフラメンコ・
オペラの『トレドのエル・グレコ』を思い出す。古楽系クラシック歌手と、フラメンコ歌手にギタリスト、
フラメンコ・ダンサーの組み合わせが渾然一体となり、しかし、互いに均一に混じりあうことがなく、
咀嚼しきれない異物感が残る舞台だった。はっきり言って期待はずれだった。

だから、この『モンテヴェルディッシュ』も、興味津々なのだが、行こうかどうしようか悩むところだ。
9月から各地で公演がある。近いところではエイントホーフェンかベルギーのベーリンゲンだ。後者
だと、ベルギー価格で10ユーロ!なので、やっぱり行こうか。。。14歳以上にお勧め、という
ことなので、若い子達に的を絞ったパフォーマンスになるのだろうが。

いずれにせよ、モンテヴェルディの『ポッペア』は、時代を超越したテーマの面白さと音楽とで、
様々な解釈が可能でいつでも新鮮な作品(素材)なのだなあ、と改めて感心した。
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by didoregina | 2011-08-27 10:12 | オペラ実演 | Comments(0)

DNOの『イフィゲニア二部作』を舞台上のコーラス席から

昨シーズンのオペラ実演観賞回数は7回と、非常に少なかった。
今(来)シーズンは、最低でも12回は行きたいと思っている。
日帰り圏内の各歌劇場のシーズン開始演目を始め、下記チケットをゲット済み。

8月28日 アントワープのデ・シンヘルでジョン・ブロー『ヴィーナスとアドニス』
ブロー作曲のマイナー・バロック・オペラ。ニコラス・アクテンとミュジックテアター・トランスパラント
のコラボ。

9月11日 ブリュッセルのモネ劇場で ケルビーニ『メデア』
ルセ指揮、ナディア・ミヒャエル主演。

9月18日 アムステルダムの歌劇場で グルック『アウリスのイフィゲニア』『タウリスの
イフィゲニア』2部作一挙上演。

ミンコフスキー指揮、ピエール・オーディ演出、ヴェロニク・ジャンス、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、
ミレイユ・ドランシュ出演。

9月20日 リエージュの王立ワロン劇場 ヴェルディ『イル・トルヴァトーレ』
ダニエル・デッシーとファビオ・アルミリアート夫妻が主演。丁度、オンライン・ライブ配信される日。
Dailymotionで当日の夜8時からタダで観られるので、皆様、お忘れなく。

10月22日 ウィーンのアン・デア・ウィーンで ヴィヴァルディ『狂えるオルランド』
スピノジ指揮のコンサート形式。デルフィーヌ・ガルー、イェスティン・デイヴィス、ヴェロニカ・
カンジェミ他出演。

10月23日 アン・デア・ウィーンで ヘンデル『セルセ』
スピノジ指揮、エイドリアン・ノーブル演出。マレーナ・エルンマン、ベジュン・メータ、ダニエル・ド・
ニース出演。

6月2日 アムステルダムのコンセルトヘボウで ヴィヴァルディ『ファルナーチェ』
ファゾリス指揮のコンサート形式。マックス・エマニュエル・チェンチッチ、サラ・ミンガルド、ヴィヴィカ・
ジュノー、メアリー・エレン・ネジ出演。


DNOの『イフィゲニア二部作』は、おととし観賞したモネ劇場のとはキャストが異なり、ミンコさん
指揮、フォン・オッターの母親役やドランシュのイフィゲニアなどなので興味があったが、長丁場だし
値段も張るから、もう一度観に行こうとは思っていなかった。
ところが、昨日、アムス歌劇場から、魅力的なオファーが来たので、即チケットをゲットした。
舞台上に設えたコーラス席に観客の一部も座らせて、ギリシャの野外劇場風に見せる演出なので
コーラス席が25ユーロと安く売りに出されたのだ。

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       モネでは、ナディア・ミヒャエルが第二部のイフィゲニア、
       トピ君がピラデだった。

モネとの共同プロだが、モネとアムス歌劇場とでは舞台の規模がまるで異なる。いったいどうするの
だろうと思っていた。モネでは、オケ・ピットに舞台を張り出し、ロイヤル・ボックスが宮殿になっていた。
その時は平土間のかぶりつき席も安く設定された。舞台が近すぎるのと、字幕が見えないからという
理由だったが、字幕はちゃんと読めた。工事現場の足組みのようなパイプが横や頭の上にあったが、
邪魔には感じなかったし、かえって歌手が至近で見られたので満足できた。

そして、オケは舞台の後方に乗るので、指揮者は異例にも歌手に背を向けることになり、歌手は
モニター映像の指揮を見ながら歌っていた。
コーラス席は、オケの後ろにひな壇のように設えられて、合唱団と観客が入り混じって座る。

たまたま、モネ劇場隣のレストランで、コーラス席に座るという夫婦連れと開演前の食事を同席した。
字幕が見えない席ということだったので、リブレットと対訳をプリントアウトして持参し、予習として食事
前に読んでいたら、隣の席から声をかけられた。彼らも分厚いリブレットを持参していたが、期待に
胸を膨らませていた。3人でおしゃべりが弾んだので、リブレットを全部読むことはできなかった。
正味4時間分のオペラの対訳だから、A4で50枚以上もあったのだ。

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DNOからのオファー。「新しい視点からオペラを楽しもう」
         「ユニークな舞台上の席を売り出し中」

今回は、舞台上から後ろ向きの歌手の歌を聴くことになる。指揮者とは対峙する位置だが、オケの
音でかけ消されて、声がよく聴こえてこないかもしれない。しかし、もうすでに観賞済みプロダクション
なので問題はない。普段は10ユーロ位で売っているリブレットもタダでくれるという。
それより、別の入り口から入場して合唱団に混じって舞台に座る、というのは面白い体験になりそうだ。
歌手も真近だし、別の視点から観ることができる。
文字通り、オペラの舞台裏が覗けそうで、わくわくしている。
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by didoregina | 2011-08-25 13:31 | オペラ実演 | Comments(4)

ベルギーのお城でのハイ・ティーは、かなりビミョー

月に一度は優雅にハイ・ティーを楽しみたい。そんな気になったのは、6月に行ったシャトー・シント・
ヘルハッハのハイ・ティーが、満点に近かったからだ。
そのシャトー・シント・ヘルラッハだが、サイトではいつのまにか、ハイ・ティーはアフタヌーン・ティー
と改称され、しかも19ユーロ50セントから30ユーロに値上げしているではないか。まるで、私の
ブログ記事を読んだかのような対応である。

今回選んだのは、国境を越えてすぐのベルギー、ラナーケンにあるピータースハイム城である。

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          テーブルにセットされた銀のアンダー・プレートには
          お城の名前が刻印されている。

まず、天候が微妙であった。
外のテラスに、私達用とおぼしいテーブルがセッティングされていたが、到着したときは
小雨がぽつりぽつり。

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          ヴィクトリアン風のアフタヌーン・ティーを
          きどって、帽子を被ってきた。

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          このような庭でのティーをイメージしていた。

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しかし、お城の中に入ると、室内にセッティングされたテーブルに案内された。
8人用の大きなテーブルだ。その部屋の客は私達だけで貸切状態。ここでは、6人以上でないと
ハイ・ティーの予約を受け付けない。
テーブルには銀のプレートにカトラリーやグラス、カップが並び、ゆったりと優雅なセッティングだ。

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          しかし、お茶はリプトンのティーバッグ。
          マーストリヒトのコーヒー紅茶の老舗の
          名前入りのカップ。

8人に対しては、ポットが小さいしお湯の量も少ない。お茶の種類も5種類位しかない。
大分待たされてから、オレンジ・ジュースと、サンドイッチが乗った大きなトレイが来た。

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          ミニ・ロール各種に、ツナ・サラダ、ハムときゅうり、
          分厚い白カビ・チーズ、なぜかジャムやマーマレードも
          挟まれている。

パンでおなかが一杯になってはいけないので、中身はしっかり食べたが、パンは残した。
甘いものが挟まれているパンは、後のお菓子に差し支えるので、避けた。

しかし、これが間違いだった。その後、スコーンが現れなかったのだ。つまり、パンにジャムを
挟んだのがスコーンの代わりだった。。。。もちろん、クロテッド・クリームなどない。

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          お皿とナイフとフォークが片付けられ、
          次にキッシュが来た。

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          プチ・フールが乗った大きなトレイ。
          イチゴ・ショートとエクレアとミニ・マフィン
          以外は、コーティングの色だけ違うがどれも
          同じ味のスポンジ・ケーキ。

味と歯ざわりに変化がなくて、つまらない。果物のタルトとか、チョコレートとか、クッキーとかも
盛り合わせたらいいのに。。。。

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          最後は、パン・ケーキに果物のサラダと生クリーム。

果物は生なのだが、どれもあまり熟していなくて美味しくない。生クリームは、缶入りスプレー状の
をシューっと出しただけのようで頼りなく、暑さですぐに融けてしまう。

〆にコーヒーを頼んだ。これは、まあまあの味だった。

上記の内容で21ユーロ50セントというのは、微妙に高い。しかも、高級なお水を2種類出してくれた
のはいいが、それは別料金で取られた。。。。

内容的にもプレゼンテーションにも減点対象となるものが多い。
すなわち、ティーバッグの紅茶、スコーンもクロテッド・クリームもなし、甘いものにヴァリエーションが
乏しい、三段トレイではない、という点で、ハイ・ティーもしくはアフタヌーン・ティーに不可欠な要素が
かなり欠けているのだ。

予約の段階でも、客商売としてはありえないようないい加減な態度の対応だった。その時点ですっぱりと
別のところにすべきであった。ベルギーのレストランでは、客を下にも置かないような、慇懃無礼に近い
接客態度のところが多いのだが、ここは例外である。失敗失敗。
次回は、我が家で持ち寄りのティーにしよう。
       
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by didoregina | 2011-08-24 23:35 | ハイ・ティー | Comments(0)

ヴェジタリアン・グルメの食卓

ピアノの師匠ペーターは一家揃って(両親とペーター)、ヴェジタリアンである。
ヴェジタリアンの定義は、人によってまちまちなのだが、ペーター達は肉や魚介類を食べないが、
乳製品はOKである。厳密には、一般的なチーズ凝固用には子牛の胃液に含まれるレンネットが
使用されているので、化学物質の凝固剤を用いたヴェジタリアン用チーズ以外は不可なのだが。
キノコを原料に作られた代替肉がいろいろ出回っている。ある人は、キノコは生き物ではないか、
と疑っていた。そこまで考えると、食べるものが限られてしまう。

ヴェジタリアンのゲストが3人、それぞれ異なる時期に2ヶ月半、我が家に滞在したことがあったので、
工夫して菜食料理を作るのは苦ではなくなり、今でも週に1,2度は菜食だ。
ペーター達や、他のヴェジタリアンを食事に招くこともある。
今回、私達は招待された側で、ペーターのママ、Eが腕を振るってくれた。凝り性の彼女の料理は
オランダらしからぬ繊細さとヴァリエーションに富み、見た目も美しい。

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          テーブル・セッティングは、クラシカル。
          Eのインテリアの好みは、エトロやマルベリーのテキスタイルを
          多く用いたトラディショナル・シック。


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        前菜は、6種の根菜をそれぞれ別に煮炊きして味付け。
        ピーチやグレープフルーツのように見えるが、野菜。
        ルッコラ、イチジク、胡桃、チーズを添えて。
        非常に手が込んだ一品。ゆったりと味わいたい滋味だ。


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          トマトと桃と生姜の冷たいスープ。
          ガスパチョのような色と舌触りだが、
          甘みとさわやかな酸味と辛味が混じっている。


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        ズッキーニとリコッタのタルトにトリュフ・ソースのせ。
        パルミジャーノをすりおろしてリング状にぱりぱりに焼いた。
        トリュフの香りが鼻孔に心地よい。


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        バジリコ入りフェトチーネのアーモンド・スライスとパルミジャーノ和え、
        ネクタリンのカラメリゼ添え。
        薄くて羽根のように軽いパスタ。オイル使用していないので
        口当たりが重くない。素晴らしいパスタ料理だ。


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        オーストリア、フランス、ベルギー、イタリアのチーズ盛り合わせ。
        ありがちなチョイスではなく、見事。りんごのシロップを煮詰めた
        甘酸っぱい水飴状のものが箸(?)休め。


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        フォルム・ド・ソーテルヌという青カビチーズのタルト。
        イチジクのソース添え。


今回も例外ではなく、こちらのヴェジタリアン料理には、タンパク質としてチーズがよく使用される。
それ以外は卵とナッツというのが定番だ。アジア系ヴェジタリアン料理に豆がよく用いられるのとは
対照的。
だから、ヴェジタリアン料理でも、あっさりした精進料理のような味わいとは異なり、腹持ちはいい。
カロリーも高い。


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         ペーターが淹れてくれた、ベリーのジュース入りコーヒー。
         生クリーム、シナモンとチョコのトッピング。


これらの材料調達や下ごしらえ・調理に3日間かかったと言う。美味しいヴェジタリアン料理を作り、
人に食べさせるのを至上の悦びとするEである。
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by didoregina | 2011-08-22 17:27 | 料理 | Comments(6)

庭で実った作物の物々交換

天候が不順で、雨がやたらと多い夏(夏とは言いがたいほど)だったのに、なぜか、庭の
イチジクの実がよく熟して豊作だった。毎日毎日、大きなのが実って食べきれないほど。

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        人間が食べきれない分は、鳥や蟻やその他の
        昆虫が食べてくれる。

モッツァレッラと一緒にサラダにしたり、ケーキに入れたり、またはそのままおすそ分けしたり。

近所に住むAが、自律神経失調症で自転車に乗れなくなった。バランス感覚がおかしくなり、
倒れてしまうのだという。わたしも3週間前に自転車ごと横転(歩道に乗り上げるのに失敗して
滑った)して負傷したので、同病相哀れむ者同士、一緒にお茶をした。
Aの庭で取れる香りの高いチョコレート・ミントを煮出したお茶の合いの手に、我が家の裏庭で
採れたイチジクのケーキを持参した。
今年の始めに、Aのご主人Pが庭を大改造していた。裏庭は、原型を留めないほど様変わりして
菜園風になっていた。特に、インゲン豆の蔓を這わせた棚が見事だ。豆の花は可憐でキレイだし、
その後は実がなるので、見て楽しんだあとは実用になる。実利を重んじるオランダ人らしい庭である。

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        昨日、Aが持ってきてくれたインゲン豆。
        ぷっくりと柔らかくおいしそう。

2週間前は小さかった豆が、もう毎日毎日食べきれないほど取れるので、おすそ分けに与った。
オランダのスーパーで見かける豆は、近年はケニア産が多い。地元の豆は珍しい。

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        インゲンのサラダにしたら、タンパク質が豊富で
        ほくほくと肉肉しい食感だった。豆腐サラダを思わせる
        味わいである。ヴェジタリアンの食事にはこの上ない。


丁度、長男がブラックベリーのマフィンがを焼き上げたところだったので、インゲン豆のお礼に
Aに渡した。

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ブラックベリーは、初夏に実るラズベリーに形が似ているが、ほろほろと柔らかいラズベリーよりも
色がずっと濃いし、芯がある質感の果実だ。
ブラックベリーが庭に実ると、夏も終わりだ。過ぎ行く夏の名残を感じさせるベリーである。
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by didoregina | 2011-08-21 18:27 | 料理 | Comments(0)

野外での映画は開放感抜群 『マムート』と『神々と男たち』

公園や広場などに大スクリーンを設置した野外での映画上映は、マーストリヒトの夏の風物詩と
なっている。しかし、天候に左右されるので、特に今年の夏のように天候不順だと実現が難しい。

6月30日から7月10日まで、マーストリヒトでは7年に一度のオメガングが開催された。
4世紀に当地にキリスト教を伝道した聖セルファースの聖遺物を先頭に、聖職者や巡礼の人びと、
合唱団、音楽隊などがセルファースに縁のある聖域(?)から町の中心まで町中を練り歩く。
オメガングの行列その他宗教的催事は、20年以上ここに住んでいながら、7年に一度のお祭りなの
に、ヴァカンスにかち合ったりして今まで実際に見物したことがない。

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       聖セルファースの顔の旗が町中に翻った。
  
様々なフリンジの催し物もある。シント・ピーターの教会前広場で、ある晩、映画の野外上映が
あったので行ってみた。『神々と男たち』という、宗教的題材を扱った映画で、オメガング期間に
ふさわしい出し物だ。
教会前広場には200席設えられたらしいが、開演15分前に到着すると、すでにほぼ満席。
町の中心部からかなり外れているし、地味な映画なのでこれほど沢山の人が集まるとは思って
いなかったから、あせった。もちろん、タダである。

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DES HOMMES ET DES DIEUX
監督/脚本:グザヴィエ・ボーヴォワ  2010年 フランス

アルジェリアの僻村で修道院兼診療所兼よろず相談所を運営して、村の人びとと共に静かに
暮らしていた修道僧たちが、イスラム過激派の脅威にさらされるようになる。彼らの誘拐事件
という90年代に実際に起きた事件を映画化したものだ。

個々の修道僧が逃げるべきか留まるべきかと苦悩する様子や、村人や過激派とも人間として
分け隔てなく接する態度などが、淡々と描かれる。ショッキングな内容なのにエグい映像は
ほとんどなくて、修道院の生活そのままに静謐な画面である。結局、彼らは使命と理想を押し
通すのだが、その決断は正しかったのか。。。事件の真相はなぞのままだ。
宗教観の違いによる対立という難しいテーマを、単に善悪の対立にせず、声高に主義を主張する
こともなく、かなり冷静に表現した映画だと思う。


さて、昨晩は、城壁の外の公園で『マムート』が上演された。

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Mammuth
監督:ブノワ・ドゥレピーヌ、ギュスタヴ・ケルヴェン
出演:ジェラール・ドパルデュー、ヨランド・モロー、イザベル・アジャー二、ブノワ・ポールブールド
2009年/フランス/

この映画でのジェラール・ドパルデューは、その前日ニュースになったような「酔って飛行機の通路で
放尿」事件をいかにも起こしそうな人物だ。
ドパルデュー演じるセルジュは、人生の表街道や日のあたる場所には縁がないまま定年を迎えた。
年金受理に必要な過去の就業証明書を探し求め、フランス各地をオートバイ「マムート」で回る。
その道中も彼の人生と同様、高速道路とは縁のない薄暗い裏街道だ。過去を辿りつつ、各地で
様々な人物と出会うのだが、そこから伺える彼の性格や歩んだ人生には、明るい要素も少ない。
そして、クサいギャグというよりは、エグく誇張された汚辱の現実の描写が多い。飛行機の通路で
の放尿に近い路線である。

同じくロード・ムービーである、北野武の『菊次郎の夏』に少し似たところもある。しかし、意識的に
叙情的な部分を排して、エレガントなイメージのフランスのもう一つの面を強調している。ブランド物や
おしゃれや美味や美しい風景や歴史的建物や文化に代表されるフランスとは全く別の、粗野なゴール
気質である。

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         エキセントリックな姪ソランジュ、またの名ミス・ミングと。

このミス・ミング(芸名と役名)を筆頭に、各地で出会う登場人物は、かなりぶっ飛んでいる。
だから、セルジュの妻カトリーヌ役のヨランド・モロー(映画『セラフィーヌの庭』主役)なんて
フツーの人に見えるくらいだ。樹木希林みたいなモローは心優しい妻役で、似合いの夫婦だ。
そして、期待のイザベル・アジャーニの役は、昔の恋人の幽霊!相変わらず美しい。

過去を辿る旅の中での姪との触れ合いによって、最後には、過去から解放され、優しい気持ちと
ささやかな人生の自由を満喫しようという気を取り戻すセルジュだった。

公園での野外映画上映だから、椅子はないだろうと思って、キャンピング用の折りたたみ椅子を
持っていったのだが、椅子席も後方に設置してあった。スクリーン前の芝生は、毛布を敷いての
ピクニック用。
皆、何かしら飲み物を持参している。ビールくらいなら屋台も出ているのだが、今回はなんと、
タダのつまみを供する屋台があった。ピーナツにチーズにサラミを、夏の間、毎週土曜日に
別の広場で野外映画を上映する団体が、PRのために提供しているのだった。映画もタダ、
つまみもタダで、野外の開放感ともあいまって、素晴らしい夏の宵だった。
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by didoregina | 2011-08-20 12:00 | 映画 | Comments(0)

Profession: Heartbreaker

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L'Arnacoeur

監督:パスカル・ショメイユ
出演:ヴァネッサ・パラディ、
ロマン・デュリス
2010年/フランス











ヴァネッサ・パラディとロマン・デュリスの主役コンビによるラブ・コメディー、ということしか知らず
先入観なしに観に行った。お目当てはヴァネッサちゃんである。
水曜日昼のリュミエール。久しぶりの好天で、太陽に飢えていた人々でカフェ・テラスは大繁盛、
街中もごった返している。
だから、映画館の中は最初2人だけ。その後3人ほど増えたが、ほとんど貸し切り状態である。
のびのび気兼ねせず思いっきり声を出して笑えた。

この映画は、全編笑いを巻き起こす、婦女子向けのお洒落なユーモアに満ちている。
デュリス演じるアレックスは、”男女関係清算請負”チームの”誘惑係”だ。
女性をたぶらかすために、その女性好みの人物になりきって、様々なアプローチ方法で近づく。
女性の心を盗んだという決定的証拠写真が撮れれば、その女性との関係を清算したい依頼主から
謝礼が貰えるというわけである。

ポスターを見て、「アメリカン・ジゴロ」みたいなものか?と思ったのだが、まあ、似たような職業だ。
しかし、こちらはおフランス映画でロマンチックなコメディーになっている。

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ヴァネッサちゃん演じるジュリエットは、金持ちの娘でキャリア・ウーマンでもある。10日後にジェット
セットのイギリス人フィアンセとの結婚を控えているが、彼女の父親から、なぜか”誘惑”の依頼が
アレックスに来る。父親に雇われたボディーガードとしてアレックスはジュリエットに近づき、彼女の
心を奪おうとする。ジュリエットの好みは、ウァム!のジョージ・マイケル、ショパンのピアノ曲、映画
『ダーティ・ダンシング』という、しょうもないベタで笑える趣味であるが、なかなかに手ごわく簡単には
心を開かないから、アレックスとの恋にもなかなか落ちない。

ロマン・デュリスの演技がクサくなくて上手い。颯爽としたダンスや真剣なアクションで笑いを取る。
ダニエル・ブーンみたいな押し付けがましさがないから、引き起こすのはさわやかな笑いである。
ヴァネッサちゃんは、クールを気取るとまるで若き日のジャンヌ・モローみたいに老けて見えるが、
細身の変わらぬプロポーションはチャーミング。そして表情はあくまでもミステリアス。
この二人の俳優の魅力と、リッチでセレブなモナコが舞台だし、女の子好みのディテール満載,
洒落た展開とで、少女漫画のような夢見る世界の映像化で、予想以上に楽しかった。



塩野七生が、映画エッセー『人びとのかたち』でいみじくも看破していたように、富や名声を自ら
手に入れたキャリア・ウーマンにはシンデレラ願望は希薄で、究極(理想)の相手はボディーガード
なのだ。
プリンセスのような恵まれた環境に生まれ育ったら、白馬の王子を夢見る必要はない。ボディー
ガードと結婚したり、また別のボディーガードの子供を産んだりしたモナコのステファニー王女が、
その見本だ。
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by didoregina | 2011-08-18 13:27 | 映画 | Comments(0)

映像美に目を瞠ったバイロイトの『ローエングリン』

バイロイトの『ローエングリン』がTVでライブ放映された。
一生バイロイト参りには縁がないであろうから、舞台だけでなく幕間や舞台裏も垣間見ることが
できたことに感謝した。プロダクションとしても映像の美しさでも秀逸だった。

特に目を瞠らされたのは、シンプルなコスチュームの美しさだ。登場人物はほぼ全て白と黒の
衣装で統一されたいでたちだった。現代的でパッキリとして、込められた意味も判じ易い。

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             白ネズミの群れとエルザとハインリッヒ王

ダッシュの着ている衣装は、いずれも着てみたい!と思わせるデザインばかり。

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          特にこの2列ボタンのコート・ドレスは素敵。

白と黒が単に正と邪もしくは善と悪もしくは清と濁の象徴ではないことは、だんだんに判っていった。
ハインリッヒはさほど腹黒いわけではなく、途中のアニメ映像で明かされるように、ネズミ軍団
(民衆)に骨まで骨まで食い荒らされるような、単純で隙の多い人物だ。王らしからぬ貧相な
黒の衣装と布で出来た王冠がそれを表している。
(しかし、王の歌う「ドイツのためにドイツの民よ剣を取れ!」というアジは、ブラバントの民に
とって、しらじらしく聴こえるだけだろう。オランダ人ベルギー人には耐えられない苦痛だと察する)

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          黒ネズミの着ぐるみを脱ぐと現れるのは、派手な衣装。
          王の伝令の髪型が、某国総書記に似ている。
          悪役2人は、黒と白が入り混じった光沢のある衣装で
          腹黒いだけではなくカリスマ性があることを強調。


今回の映像で面白かったのは、間奏曲の演奏中に舞台設営の様子を早送りで見せたり、上からの
俯瞰アングルで、工場や炭鉱などで使われる吊り上げ式ガードローブなどの整然としてインダストリ
アルな舞台装置の動きを、まるでバレエの群舞のようなメカニックな美しさに撮っていたことだ。
オーケストラ・ピットの映像は全くなかったと記憶する。そのため、現実に引き戻されることなく、
スタイリッシュに終始していた。


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聖堂でのエルザは、ウェディング・ドレスのように見える白のロング。ドレスのスカート部分は、
羽根のような質感。エルザの白と同型・同デザインの黒のドレスをオルトルードが着ていたので、
白鳥と黒鳥の戦いのように見える。ローエングリンの名前と出自の禁忌を強調するモチーフの
メロディーは、チャイコフスキーの『白鳥の湖』情景のテーマに似ている。ここでも、そのメロ
ディーが虚ろに響く。呪われた結婚の前触れのように。


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結婚式の服装は、打って変わってシンプルで、まるで病院で支給される患者用パジャマだ。
(この結婚のテーマ曲は、不幸の前触れなんだから、おめでたくない。だから、この曲を実際に
結婚式で使用する人の考えが知れない。子供達は、この曲は『ローエングリン』が原典なのだと
初めて知り、びっくりしていた。)

二人の初夜のベッドは、まさに実験室か手術室のような空間にあった。夫の禁忌に迫るエルザは
悶々として憤懣やるかたない。たしかに、素性の知れない男と結婚するのは不安だ。妻としては
知る権利や拒む権利もあろう。だが、約束を破るのはご法度だ。心はやるせない葛藤からヒス
テリーを起こす。


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第三幕では、今までの白と衣装とは打って変わり、喪服の黒。チュール付きの帽子のせいでまるで
パンクっぽく見えた。正常心を失い虚ろだが、目は大きく見開いて狂の表情。ダッシュは、もともと
美人だし舞台栄えがするが、顔は仮面のように変わらずに目だけでの演技が印象的だった。声も
清純派エルザにはぴったりだ。

フォークトのローエングリンも適役。歌唱にも演技にも全く非の打ち所がない。ただし、ルックスが
オランダ人イリュージョニストのハンス・クロックに似ているので、所作によってはマジックをやってる
ように見える時もあった。

↓ ハンス・クロックの最新マジック・ショー


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by didoregina | 2011-08-16 11:24 | オペラ映像 | Comments(10)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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