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デュモーの『スタバ』@コンセルトヘボウ

『スターバト・マーテル』が好きだ。ロッシーニでもヴェルディでもドヴォルザークでも
アレッサンドロ・スカルラッティでもヴィヴァルディでも誰の作曲によるものでもよろしい。
作曲家によって様々なアプローチを採っているが、生きる者(残された者)にのしかかる
悲しみという究極かつ普遍的テーマを音楽にしたものだ。
息子(キリスト)の死に接して慟哭の母(マリア)という、これ以上に身につまされる不条理な
状況はなかなか思い浮かべられない。受難曲よりももっとストレートに誰の胸にも迫る普遍的な
悲しみである。

声高には悲しみを表現しないが、思わず聴く者の頭を垂れさせ、そくそくたる思いを胸に溢れさす
という点で、ペルゴレージ作曲の『スタバ』に及ぶものはない。人類皆のための永劫の遺産と
言ってもいい。

今シーズン最後を飾るコンサートは、クリストフ・デュモーが歌うペルゴレージの『スターバト・
マーテル』だ。アムステルダムのコンセルトヘボウまで聴きに行った。

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2011年6月26日@concertgebouw
Vivaldi - De vier jaargetijden, op. 8
Pergolesi - Stabat mater

Musica Amphion
Amaryllis Dieltiens - sopraan
Christophe Dumaux - countertenor
Rosita Steenbeek - Spreker

前半プログラムは、ヴィヴァルディの『四季』。今シーズンなんと3度目の『四季』である。
この曲をプログラムに入れると、バロック・コンサートの敷居が低くなり集客が図れるかもしれないが、
あまりにベタであり、しかも感動的演奏に遭遇することはほとんどないから、かえってリスキーだ。

ムジカ・アンフィオンは、オランダ・バッハ協会や18世紀オケなどのバロック楽団の演奏家が
集まったアンサンブルで、メンツは揃っているのに、どうも演奏はさほど刺激的ではなかった。
『四季』は、聴衆皆の頭の中に理想の音もしくは聴きなれた音がそれぞれインプットされている
から、実演で唸らすのは、かなり難しいのだ。

バロック専門の呼び屋さんフレッド・ライテンは、いらぬサーヴィスに腐心する傾向がある。
まず、チケットをとにかくさばきたいからか、コンサートが近づくといろいろな口実を設けては
プロモーション価格で安売りする。それはまあいい。それでホールが満員の盛況になるのだから。
困るのは、例えば、前回のサラ様コンサートの場合のように、当初のプログラムを急に全く
変えてしまって、それをグレード・アップのサーヴィスだと思い込むことだ。
今回のいらぬサーヴィスは、『四季』の各楽章ごとに、ローマ在住の女流作家ロジータ・
ステーンベークによるオランダ語の説明と18世紀ヴェネツィア方言(イタリア語)のソネット朗読を
入れたことだ。

ローマ在住女流作家というと、日本人なら塩野七生を思い浮かべるが、オランダではロジータ・
ステーンベークだ。ただし、書いている作品の傾向は全く異なり、後者は大衆路線小説である。
その彼女が、まるでケルメス姐ばりのシルクのロング・ドレスを着て、髪には赤い薔薇の飾りをつけ
カルメンみたいに品のないスタイルで舞台に登場すると、唖然となった会場からは拍手が起きな
かった。それで彼女は舞台中央に立ち、拍手を強要するかのように両手を広げたのだった。

『四季』の音楽について、演奏前に言葉で解説するというのは、無駄な徒労だ。ブログラム・
ブックに書いておけばよろしい。
そして、「スタッカートが古風に響く18世紀のヴェネツィア方言のイタリア語」でオランダ人による
ソネット朗読には、ほとんど価値が見出せない。
それよりも、冒頭に語った彼女が住むローマの住居(8世紀の教会に隣接し、教会でよく催される
バロック・コンサートの音楽や練習の音が漏れ聞こえ、テラスからはバロックのローマの建物が見え
て、臨場感抜群とか)での日常的音楽の話がよっぽど面白かった。

『四季』演奏の方は、可もなく不可もなく、印象に残るものではなかった。
ヴァイオリン・ソリストが、エキセントリックだったり、個性的オーラを発したり、ケレンミがあるとか
でないと現代人は納得できない。だからこの曲はリスキーで難しいのだ。

しかし、メインは後半の『スターバト・マーテル』だから、いいのだ。

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       プログラム・ブックに載っているこのプロフィール写真は、
       スケボー少年だった彼の背景はわかっても、歌手である彼の
       イメージとは異なるから、事務所も招聘元も、マーケティングを
       もう少し真剣に考えるべし。

クリストフ・デュモーがタイトル・ロールの『ジュリオ・チェザーレ』を見逃したので、リヴェンジの意味
でこのコンサートに臨んだ。
そして、それは期待以上に素晴らしいものだったのだ。

コンセルトヘボウでは、指揮者やソリストは、大概向かって右のコーラス席上方から階段を下りて
舞台に登場する。
ソプラノの女性をレディー・ファーストで先に進ませると、男性は後になるから、ステージでの立ち
位置は向かって右になるのでは、という予想が当たり、デュモー選手はわたしのほぼ正面に来た。
ステージ衣装は、グレーのスーツにブルー・グレーの開襟シャツで、ちょっとその組み合わせが
伊達とか粋を通り越して、ヤバ筋っぽい感じの着こなしになっていた。
脚が細いから、ズボンがだぼっとして見えるためもある。しかし、小顔で9頭身くらいはあり、
背も高く、立ち姿はモデルのようだ。しかし、神経質そうな顔はこわばって、かなり緊張している
ように見うけられた。

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         このスーツに、ワイシャツはブルー・グレー。
         丁度1年前はスキンヘッドだったが、今は
         これよりちょっとだけ短いくらいの髪。

はっきり言って、ソプラノ歌手の衣装は全く覚えていない。デュモー選手に目が釘付けになって
いたからだ。そして、後ろに控える器楽演奏家達も全く視界に入らなくなった。目の焦点が
デュモーに一点集中していた。
音楽もしかりである。伴奏はあってなきが如し。耳に入ってこない。デュモーの声にだけ耳を
そばだてていたからである。
そうやって聴いてみると、この曲はアルトが活躍するアルトのための曲であることがよくわかる。

デュモーは、ソロの部分では自由自在に強弱をつけ、感情移入させる。そして、デュエットでは
でしゃばらずにソプラノに華を持たせる。そのアンサンブルのバランス感覚が素晴らしく、かえって
奥ゆかしさが光るのだった。
きっちりとした発声とヴォイス・トレーニンブを積んだことがよく判るような、音程的に安定した堂々
たる歌唱に声量のコントロールもびしっと決まっている。CTにありがちな不安定さがない。
体力・筋力維持にも力を注いでいる結果だろう、声が筋肉質で、全く弛緩していない。しかも、
パワーを表に出すのではなく、美に変換しているのだった。

こういう歌声に接する無上の幸福感に浸りつつ、同時にえも言われぬ無常を味わう。ああ、時よ
過ぎ去るな、終わって欲しくない、もっともっと聴いていたい、と願うばかりだ。
『四季』なしで、スカルラッティの『スタバ』を組み合わせたらよかったのに。それだと集客が
難しいのだろうか。
わたしにとって、この日の『スタバ』は、ペルゴレージではなく、デュモーの『スタバ』であった。
 
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        コンヘボでは写真撮影厳禁なので、雰囲気からして怖くて
        カーテンコール写真も撮れない。写真は、だから、全て
        よそからのかき集め。

来シーズンもデュモー選手は、コンヘボに来て歌ってくれる。ヴィヴァルディとヘンデルの聖歌で
ある。オペラでの予定は、秋からの『リナルド』(グラインドボーン・オン・トゥアー)と2012年に
ザルツブルク・フェスティヴァルに出演決定とのこと。行けないだろうが、演目と役が気になる。
  
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by didoregina | 2011-06-29 11:04 | コンサート | Comments(12)

アントン・コービン(コルバイン)の写真展@foam

アムステルダムの写真ギャラリーfoam(Keizersgracht 609)で6月24日から9月1日まで
アントン・コービン(Anton Corbijn オランダ人なのでオランダ語読みだとコルバイン)の
写真展が開催中だ。

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Inwards and Onwardsと題した展覧会は、ミュージシャン、アーティストなど著名人の
2000年以降の比較的新作のポートレイトを集めたものだ。
26日(日)にコンセルトヘボウでのコンサートを組み合わせて見に行った。かなり盛況だった。

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        foamはアンネの家ほどの小さな建物


全て白黒の、サイズも同じ正方形(約60センチ四方)の写真が幅8センチほどの黒縁の額に
入れられて、整然と展示されているのだが、その集め方と順番や位置の構成に唸ってしまう。

まず、最初の部屋で目に飛び込んできたのは、ネルソン・マンデーラだ。彼の顔は逆光で
しかも皺だらけだし、焦点が当てられていない。背後からの光と白髪が白っぽくぼやけた
感じなのに、着ているシャツの賑やかなアフリカン・バティックの模様は、コントラストも
はっきりくっきりと、そちらに焦点を合わせているのだ。まずアフリカ、そしてそれがあって
のマンデーラという順位がここでははっきりしている。

同じ部屋に、パティ・スミス。何十年も年を取らないようなおなじみのオーラを放つ彼女の
表情は、手と髪の躍動の瞬間を捉えているのに対して、時を越えて静止している。
背景には何もなく、白い空間に黒髪が踊る。反り返って横向きの顔に髪が邪魔して目は見え
ないが、一目見てすぐにパティ・スミスとわかる、圧倒的な存在感。

そのほぼ正面が、ブルース・スプリングスティーン。額から鼻先まで白い筋の入った黒毛の
馬とその横に立つスプリングスティーンの顔にも光が縦に当たって同じような筋に見える。
じっくり見ないとスプリングスティーンなのか誰なのかわからない。

ニューヨークのセントラル・パークなのか、森の中に、四足のケモノのような人物が小さく
写っている。
イギー・ポップという説明板がないと誰なのか不明だが、それを読めば誰でも納得する写真だ。

マンデーラの反対側の壁には、トム・ウェイツ。これも皺の深い顔にタバコの煙がかかり、
渋さ満点。かっこよさも満点。

(そのほかにもポートレイト写真は沢山壁に掛かっているのだが、印象に残ったものだけを
紹介している。)

次の部屋では、アレクサンダー・マックィーンが印象的だ。

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        展覧会のポスターにもなっている。
        目の下まで黒いトックリ・セーターの襟を伸ばして、覆面のよう。
        背後には、コレクション用のイメージ資料ピンナップが沢山あり、
        アーティストの仕事場の雰囲気がポートレイトらしい。


彼の左には、女装したミック・ジャガー。
右には、キャット・ウーマンのようなマスクをしたケイト・モス。
この3点の並べ方にストーリーが感じられ、秀逸。

その次の部屋は、現代美術アーティストが多い。

オランダのカレル・アップルの隣にはドアを挟んでアンセルモ・キーファー。
全く異なるタイプのポートレイトだが、どちらも仕事場もしくはアーティストの作品の雰囲
気を漂わせるセッティング。
年齢的に近い現代美術アーティストを同じ壁面に集めたようで、その中でも巨匠の貫禄十分
なのはルシアン・フロイドである。画面で横顔と同じくらいの面積を占めているのは、手に
した3本の絵筆が、多作の作家にふさわしいアクセサリーというかアイコンだ。

その向かいには、やはりイギリス人のデミアン・ハースト。白い顔に目と鼻は真っ黒で、
髑髏のよう。説明版なしでは誰だか絶対にわからないポートレイトの典型だ。

一番びっくりしたのは、ピーター・ドイグとマルレーネ・デュマスが並んでいたことだ。

ナイーブでセンシティブな感じのドイグは、トリニダードのアトリエで製作途中の絵の前に
立っている。等身大の横たわった女性の絵が目を引く。
ドイグはうつむき加減で考え込んでいるような表情だが、絵の具で汚れたジーンズや靴が、
芸術家というよりまるでペンキ職人みたいな印象だ。


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       迫力とかっこよさでダントツなのは、2000年のマルレーネ・デュマス。
       まるで女優。
       まだ(比較的)若かったデュマスはこの写真をあまりお気に
       召さなかったそうだが、年とともに好きになっていったそうだ。


8月一杯までやっているので、アムステルダムにこの夏行かれる方は、必見の展覧会だ。
入場料金は8ユーロだが、ミュージアム・カード所有者はタダ。お持ちの方はぜひとも。

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       美術館ではカフェに寄るのがお約束。ティーバッグだがお茶は美味。
       Mr.Jonesのオーガニック・ティー、種類様々。
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by didoregina | 2011-06-27 16:24 | 美術 | Comments(6)

夏至の宵の動物園

主人の勤続25年の祝いとチーム・ビルディングおよび慰労会を兼ね、大人35人ほどで夏至の
午後と宵を動物園で過ごした。
ケルクラーデにあるガイア・パークという、きれいに整備された動物園で、昼間は様々な猿類が
歩き回っている。ここに来るのは、4年振りである。
夕方からはパーティーなどの団体貸切専用になり、空いた園内を見学。日が高いから夜遅くまで
ゆったりと見て回れる。

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          牛の仲間ではなく、羊の仲間

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          優雅に寝そべるオオヤマネコ

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          子供は恥ずかしがりや

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          きりんの親子たち


一番のハイライトは、鷲・鷹のショーだ。
鷹匠二人が、観客席の左右に立ち説明を交えながら、数種類の鷹や鷲を何度も往復させる。
目の前、頭のすぐ上を、大きな翼を広げた鳥が行き来するのは大迫力だ。

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          目の前を横切る。

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          観客の頭上すれすれに飛ぶので、思わず首を縮める。


野外レストランでは、タムタムみたいなアフリカの太鼓をたたくミュージシャンが演奏してムードを
盛り上げる。
オランダにいながらにして、気分はサファリである。
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by didoregina | 2011-06-25 21:24 | 旅行 | Comments(4)

究極の小海老のクロケットを求めて

ベルギーのカフェで軽い昼食というとき、メニューに「小海老のクロケット」があれば注文してみる。
ベルギー名物のひとつである。

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         付け合せは、揚げたパセリとレモンがお約束。

ベルギーの短い海岸線は、オランダ国境からフランス国境まで砂浜にブールヴァールが南北を
縦断し、リゾート用アパルトマンが林立しているので、海上から眺める風景は殺風景でほとんど
変化がない。
北海のベルギー沿岸をヨットでセイリングする時に注意すべきは、そのあたりの水深の浅さだ。
2メートルくらいしかないような浅瀬がずっと続くので、キールがつっかえないように海図をよく読んで、
満干潮の時刻にも注意を払い、水深のあるところを選んで航行する。そうすると決まった水路を通る
しかないし、相当沖まで出ないと安心して航行できない。ドーヴァー海峡の一番深いところでも16
メートルくらいしかないのだ。

そういう砂地の浅い海底を地引網のようにして小海老漁が行われる。コックサイデの海岸では
クラシックな地引網を馬に引かせている。船で沖に出る必要はないのだ。潮干狩りに近い。

海岸のブールヴァールに面したカフェやレストランでは、どこでも小海老がメニューに載っている。
北海の小海老は本当に小さくて剥く手間が大変なので、クロケット2つでもカフェでは10ユーロを
下ることはない。
魚屋やデリカテッセンで揚げるだけになっているのを買っても、1個4ユーロ近くする。
そして、大概、期待したほど海老の味はしないのだ。入っている海老の量が少ないのが原因だろう。
それでも懲りずに注文する。いつか、満足のいく究極のクロケットに出会えることを祈りながら。

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ブリュッセル中央駅からモネ劇場に行く途中に通る、クラシックなアーケード(フランス語でパッサー
ジュ)に、ジャック・ブレルが贔屓にしていたらしいカフェ・レストランがあって、ベルギーの若きTV
シェフ、イェルン・ムウスが究極の歯ざわりと食感!と絶賛している小海老のクロケットがあるらしい
ので昼食に寄ってみた。

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          カフェ・レストランの名もパッサージュ。
          店内奥を右に進むとなんと肉屋横丁に繋がっていた。

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          クロケットの食感で重要なのは、カラッと揚がった外側に
          中身はあくまでもとろりと、ナイフを入れたらとろけ出ること。
          ここのクロケットは、ベシャメルにチーズを練りこんだような
          味と色だった。海老の量は少ないが、パセリは大量。
          13ユーロ。ビールは、ブルージュの白。

北海沿岸でも満足いくクロケットに出会ったことがないのだから、やっぱり、自分で作るのが一番、
というのはわかっていても、つい期待してしまった。小海老の味には乏しかったが、隠し味(多分)
のチーズと全体の食感はよい。
そして、注文してから出来上がるまでの時間が凄く短くてスピーディにサーヴィスしてくれたので、
観劇前にはぴったりだ。

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          パッサージュの名前は、ギャルリー・ド・ラ・レイヌ
          (王妃のアーケード)。わたしのハンドル名レイネは
          『王妃マルゴー』(レイヌ・マルゴー)からとって、
          日本風の発音にしたもの。(フルネームは丸郷レイネ)
          その日鑑賞したオペラ『ユグノー教徒』にも登場した
          マルグリット・ド・ヴァロワの愛称である。

          
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by didoregina | 2011-06-23 21:10 | 料理 | Comments(4)

マイヤベーアの『ユグノー教徒』@モネは映像化すべし

グランド・オペラというだけあって、とにかくスケールの大きな盛りだくさんのプロダクションで、
いったいどこから書き始めたらいいのか悩んでしまう。
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Les Huguenots 2011年6月19日@モネ劇場

Muzikale leiding¦Marc Minkowski
Regie¦Olivier Py
Decors¦Pierre-André Weitz
Kostuums¦Pierre-André Weitz
Belichting¦Bertrand Killy
Koorleiding¦Martino Faggiani
Marguerite de Valois¦Marlis Petersen
Valentine¦Mireille Delunsch
Urbain¦Yulia Lezhneva
Raoul de Nangis¦Eric Cutler
Comte de Saint-Bris¦Philippe Rouillon
Comte de Nevers¦Jean-François Lapointe
De Retz¦Arnaud Rouillon
Marcel¦Jérôme Varnier
Cossé¦Xavier Rouillon
Tavannes¦Avi Klemberg
Thoré¦Marc Labonnette
Méru¦Frédéric Caton
Dame d honneur¦Camille Merckx
Une coryphée¦Tineke Van Ingelgem
Deux bohémiennes¦Camille Merckx
Tineke Van Ingelgem
Maurevert¦Ronan Collett
Bois-Rosé¦Olivier Dumait
Un Valet¦Marc Coulon
Un archer du guet¦Jacques Does
Etudiant catholique¦Alain-Pierre Wingelinckx
Un moine¦Olivier Dumait
Ronan Collett
Charles Dekeyser
Deux jeunes filles catholiques (couple 1)¦Marta Beretta
Françoise Renson
Deux jeunes filles catholiques (couple 2)¦Adrienne Visser
Birgitte Bønding
Trois Coryphées¦Bernard Giovani
Alain-Pierre Wingelinckx
Pascal Macou
Orkest¦Symfonieorkest en koor van de Munt

登場人物が上記のように非常に多い。グランド・オペラには欠かせない要素のバレエ(ダンス)
も外されていないし、スペクタクルが売りだから、エキストラやコーラス団員も大量に出演する。
何よりもまず、度肝を抜かれるのが、ゴージャスな舞台セットだ。

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       舞台装置・セットも超豪華。モネのサイトのリハーサル映像を
       見てもらうとわかるように、建物のセットには金箔を貼っているし、
       銅も大量に使っていそうだ。
       モネではあまり見たことないようなハイテク・メカニックな舞台構築で、
       スムーズに移動する装置で舞台がきっちりと次々と変わる。
       水浴びシーンなんて、石張りにしか見えない床に本当に水が流れる
       池を作っていた。それが一瞬の操作で別の場面に展開する。

ストーリー的に複雑に込み入っていて、通常のオペラ2作品をひとつにしてしまったようなものだ。
主役といえる人物は3人。マルグリット・ド・ヴァロワ、騎士ラウール、侍女ヴァランティーヌだ。
キリスト教の新旧派の宗教戦争が題材だから、実在の人物と歴史的事件が入り込んだ歴史フィク
ションなのだが、まるでNHKの大河ドラマ1年分を圧縮したような感じだ。休憩2回込みで上演
に5時間かかる。

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         小道具で重要な役目を果たすのは、十字架。
         2つの十字架を持つヴァランティーヌが
         冒頭に登場して、カトリックとプロテスタントの
         せめぎ合いとそれに翻弄される彼女の行く末を
         暗示する。


前半のヒロインはマルグリット・ド・ヴァロワだ。ユグノー戦争というと、セント・バーソロミューの
虐殺を思い浮かべるように、彼女はこの歴史上の大事件には不可欠の重要人物だが、映画
『王妃マルゴー』に描かれているように、このオペラでも性的に奔放な王女である。
だから、彼女の城館と庭はヴィーナス的快楽の園だ。

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         大きな月を背景にしたマルグリットの庭。
         小姓が目隠しして引っ張って来たのはラウール。
         その下は池で、美女達が水遊びしている。

マルグリットは、カトリックとプロテスタントの和解調停役を自認しているらしいが、彼女が
主役の前半では、エロティックな場面や歌が非常に多い。プロテスタントの騎士ラウールを
目隠しして城館まで連行させ、女の魅力で協力を頼む。というより、ラウールの魅力に囚われて
しまい、役割を忘れたかのように陶酔の時を過ごす。ニンフォマニアの面目躍如である。
完全ヌードの若い男女のダンサーがパ・ド・トゥーを踊ったり、ポール・デルヴォーの絵から抜け
出て来たようなキレイですんなりとした美しい女の子達が優雅に水浴びしたり、エログロとは全く
無縁の耽美的なエロスの世界を見せてくれる。

マルグリットは、まるで『エマニエル夫人』のように奔放な、性の求道者だ。
政治的動機というより、快楽のためにラウールを篭絡したように思える。
そのマルグリットに、マーリス・ペーターゼンは適役だった。すんなりと美しい肢体、愛らしさも
感じられる甘目の声、優美で迫真の演技、どれをとってもどんぴしゃ。
最初だけ、高音が伸びずに弱音でごまかしていたが、すぐに調子を出していって、堂々たる
歌唱で印象付けた。

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甘い官能の世界を中心舞台とした第一幕だが、次の幕から状況はだんだん暗くなる。
上半身裸のダンサー達も、ここでは髑髏のマスクをつけている。

バレエ・シーンが多いのもグランド・オペラの特徴だが、このプロダクションの振付は正統的な
クラシック・バレエだ。それが全裸であるというのだけアヴァンギャルドで、演出家の好みを反映
してるのだろう。

舞台は、金色と黒で統一されている。登場人物の衣装も黒が基調だ。

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      カトリックは黒のジャケットの下に金色の鎧を付けている。
      カトリックの印として十字架模様の腕章を巻き、プロテスタント
      虐殺のため蜂起。大司教とカトリーヌ・ド・メディチが頭目。

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      プロテスタントは黒づくめ。男性は黒の帽子を被っているので、
      なんだかユダヤ人みたいに見える。16世紀のプロテスタント抑圧を
      20世紀のユダヤ人大量虐殺に重ね合わせているのだろう。

新旧のキリスト教徒対立は、同じ神を信じる二派の対立だから、信じる根本は同じで、それを
両者とも十字架で表現している。全く同じ型と素材の十字架を皆手に持ち、それを実際に武器と
して使う、というアイデアは秀逸だ。刀代わりに手にした十字架でチャンバラしたり、銃の音を
十字架を撥代わりに叩いて出したり。

歴史(というより王女や王妃の思惑)に翻弄され、カトリックの許婚との婚約を破棄しプロテスタント
のラウールとの結婚を命じられたり、カトリックからプロテスタントに改宗したあげく、最後には
殉教(というよりカトリックによる虐殺)の目に合うヴァランティーヌが、後半のヒロインである。
マルグリットとは正反対の生真面目・お堅い女性である。彼女が悲劇を背負わされた形でストー
リーは進む。
そのヴァランティーヌ役は、ミレイユ・ドランシュ。金髪の鬘が似合う北欧的なクール・ビューティで、
ちょっと重目の声がドラマチックな役柄にぴったり。声量豊かで説得力十分。ただ、侍女という
設定からして、主体性より主君への忠誠や惚れた男への献身など、どうしても受身で地味な人物
像にならざるをえず、ちょっと損なのは否めない。まるで歌舞伎の世話物に出てくる、浮世の義理
と人情のために苦界に身を沈めた女房みたいな感じだ。

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主役および準主役の男性も沢山登場し、歌唱には文句ないのだが、二人のヒロインとユリアちゃん
扮する小姓のインパクトが強すぎて、印象に残らない。ラウール役のテノール歌手が、ヴィジュアル
的にもう少しよかったら、説得力があったのに。。。。

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         まるでルチアみたいに血まみれのマルグリット。

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         ボケボケのカーテンコール写真。中央は指揮のミンコフスキー。

ミンコさん指揮とピイの演出コンビのオペラを観るのは、昨年のDNO『ロメオとジュリエット』に
続いてこれが2度目。完全主義的な舞台造形や時空を超越したテーマの追求という点でDNOの
『ロメ・ジュリ』に似たところがあった。
今回の『ユグノー教徒』は、16世紀と20世紀を混ぜ合わせたようなセットに小道具と衣装で、
それが特定の時間や場所を超越しているので、宗教対立という重いテーマを真正面から取り上げる
のに適した普遍性があった。
ミンコさんが長年上演を希望していたというマイヤベーアのこのオペラは、これ以上は望めないだろう
と思われるプロダクションとして実現した。これはぜひ映像化して総合芸術としての素晴らしさを広く
世間に知らしめるべきだと思う。
       
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by didoregina | 2011-06-22 00:37 | オペラ実演 | Comments(9)

ユリア、恐ろしい子、、、

モネ劇場の『ユグノー教徒』は、今シーズン最後の演目ということで、舞台セットへのお金の
かけ方が半端でなく、力の入った絢爛豪華・長大な歴史劇のグランド・オペラだ。
作品自体が盛りだくさんの内容だし、サーヴィスもてんこ盛りのプロダクションなので、一回では
書き尽くせない。

主要登場人物はダブル・キャストなので、ミレイユ・ドランシュがヴァランティーヌ役の日を選んだ。
そうするとマルグリット・ド・ヴァロワがマーリス・ペーターゼンになり、Aキャストのはずだ。
初日公演のNRC新聞評は5つ星の最高点で、総合的にも素晴らしい舞台でブリュッセルに行く
価値あり、と絶賛だった。特にユリア・レージネヴァの小姓ウルバン役での鮮烈なデビュー、と
いうのが気になった。というのは、1ヶ月前からこの歌手のことが妙に頭に引っかかっていたからだ。

ユリア・レージネヴァは、1989年ロシアのサハリン島生まれの若い歌手だ。年齢に似合わぬ成熟
した声と圧倒的な歌唱テクニックの持ち主で、指揮者のミンコフスキーが強力にプッシュしている。
新譜トレーラーを見て、おおっ、と思ったが、『ユグノー教徒』にも出演していることはNRC新聞
記事を読むまでうかつにも気が付かなかった。わたしの行く日のキャストである、ラッキー!と喜んだ。
ロンドンのブログ仲間たちにも好評で、次代のスーパースター候補なのだ。

何はともあれ、トレーラー動画をご覧あれ。↓




ルックスは、いかにもロシア人の子供という感じの丸顔で、マトルーシュカ人形みたいだ。
サハリン(樺太)出身というと、昭和40年以前に生まれた人なら、大鵬を思い出すだろう。
モネ劇場でのユリアちゃんは、ちっちゃくて、子供子供していて、ショートヘアにベル・ボーイ
みたいな制服姿で、まるで男の子。舞台ではかなり東洋的に見える(平面的な)顔立ちである。

c0188818_15524796.jpg

            カーテンコールでのユリアちゃん


こんな子供が、とびっくりするほど堂々たる歌唱と伸びのいい声、テクニックも完璧で、アンファン・
テリブルとして観客にインパクトを残した。スター誕生を印象付け、モネ・デビューは大成功だ。

ミンコさんも言っているように、彼女の声域は驚くべきほど広いので、今後の役柄も幅広いものに
なるだろう。今のところ年齢とルックス相応の小姓役や小間使いや若い女の子役がぴったりだが、
彼女に歌ってもらいたい役を思い浮かべてはわくわくしてしまう。
テクニックが売りだから、ロッシーニ・レパートリーはどんぴしゃだが、今後どのように成長していく
のか、追っていくのが楽しみな歌手だ。
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by didoregina | 2011-06-20 09:07 | オペラ実演 | Comments(20)

『セルセ』@アン・デア・ウィーンのチケット・ゲット!

本日からアン・デア・ウィーン劇場の来シーズン・チケットのオンライン発売が開始されました。
はずせない演目は、もちろんマレーナ様主演の『セルセ』です。

昨年の『セメレ』チケット争奪戦の厳しさは、バルトリ姐主演ということで一人2枚まで限定の
売出しでしたが、壮絶という一言に尽きました。
今年は、どういうことになるかと気を揉んでおりましたが、なんということはなく楽勝で10月23日
の希望通りの座席が取れました。

10時の発売開始の5分前に(!)楽々とオンライン・チケット・ショップのサイトに入ることができ、
するすると問題なくチケット購入。5分後にはプリント・アウト完了という簡単さ!

去年のあの時間は、フィーヴァーが頂点に達して、アクセス集中のためかサイトも機能せず、
ほとんどパニックに近い状態でした。チケットが取れたのは奇跡に近いというか、幸運だったと
しか思えません。バルトリ姐、恐るべし。

アン・デア・ウィーン劇場の『セルセ』は、マレーナ様主演というだけでなく、演出に大きく期待
できるプロダクションです。というのは、昨年のウィーン国立歌劇場での賞賛の嵐・洪水を呼んだ
あのファンタジー溢れる『アルチーナ』を演出したエイドリアン・ノーブルが担当するからです。
彼は『セルセ』の舞台をどのように作り上げてくれるのでしょうか。期待に胸が膨らみます。

スピノジ指揮でアンサンブル・マテウスの演奏もエキサイティングなものになるでしょう。

10月22日には、同じくアン・デア・ウィーン劇場でスピノジ指揮によるコンサート形式のオペラ
『怒れるオルランド』があるので、こちらのチケットも首尾よくゲットしました。
ヴィヴァルディのオペラだし、ルッジェーロにイェスティン・デイヴィース、アンゲリカにヴェロニカ・
カンジェミというキャストに惹かれたからです。

その時期ウィーンでは、国立歌劇場でもフォルクス・オーパーでも魅力的な演目が目白押しです。
何を選ぶか迷うところですが、お金や時間に限りがありますので、アン・デア・ウィーンのバロックに
的を絞ることにしました。
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by didoregina | 2011-06-17 10:53 | マレーナ・エルンマン | Comments(18)

モーツァルトの『アポロとヒュアキント』@ザルツブルク2006

M22シリーズ(2006年にザルツブルクでモーツァルトの全オペラを収録したもの)中、
ずっと観たいと思っていた『アポロとヒュアキント』をBravaがTV放映した。(何度か既に
放映しているが、日程的にようやく都合がついて観ることができた)

c0188818_4424566.jpgApollo et Hyacinthus

King Oebalus Maximilian Kiener (tenor)
Melia (his daughter) Christiane Karg (soprano)
Hyacinthus (his son) Jekaterina Tretjakova (soprano)
Apollo Anja Schlosser (mezzo-soprano)
Zephyrus Astrid Monika Hofer (mezzo-soprano)
Priest Norbert Steidl (tenor)

Conducted by: Josef Wallnig
Sinfonieorchester der Universität Mozarteum
Stage Director: John Dew

photo by Barbara Aumüller









どうしてそんなに観たかったのかというと、写真で窺い知れるHIPなステージに興味津々だった
からだ。
モーツァルトが11歳の時にラテン語の歌詞に作曲した作品で、1767年5月13日の初演と同じく、
ザルツブルク大学(モーツアルテウム)講堂での上演だから、当時のロココ風の雰囲気をたっぷりと
見せてくれる舞台と演出というのは理にかなっている。
出演の歌手および器楽演奏は、大学生もしくは卒業生およびモーツァルト・コンクール入賞者という
若い人・新人ばかり。いかにもモーツァルト・イヤーにふさわしいプロダクションだ。

間口の狭く奥行きもさほどなさそうな講堂の舞台上部には、ろうそくのシャンデリアが2個下がり、
デコールおよび舞台装置も平面的で、屏風のようなパネルを移動させ背景を変えるバロック式。
そしてコスチュームとバロック・ジェスチャーの所作も素晴らしいHIPだ。

c0188818_5105768.jpg

           ゼフィロとヒュアキントは友人同士。
           ゼフィロはヒュアキントの妹メリアと結婚するのが望み。
                     photo by Barbara Aumüller
         
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           ゼウスから追放されて羊飼いに身を窶したアポロは、
           ゼフィロとメリアの結婚話を聞いてご機嫌斜め。
photo by Barbara Aumüller

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           アポロはメリアに結婚を申し込む。
photo by Barbara Aumüller

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           アポロはメリアの弟ヒュアキントもご贔屓。
           心安らかでないのはゼフィロ。嫉妬心むらむら。
photo by Barbara Aumüller

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           男三人で円盤投げ遊びの最中、ヒュアキント落命の知らせ。
           ゼフィロは国王とメリアに、犯人はアポロと嘘をつく。
           弟の死を悲しむメリアは、アポロの求愛を拒絶する。
photo by Barbara Aumüller


最後に、瀕死のヒュアキントから真犯人(ゼフィロ)の名を聞かされ、冤罪の晴れたアポロは
メリアと結ばれる。友人殺しで神に罪を着せた罰として、ゼフィロは風で体を八つ裂きの刑に。
ヒュアキントは、ヒアシンスの花になって蘇る。


ジョン・デューの演出は、完璧なバロック・ジェスチャーを歌手にさせつつ歌わせる。それは、まるで
能の仕舞や動作を思わせる静的な所作で様式美に溢れた耽美の世界だ。
そして、ろうそくの光に上から照らされた歌手の表情の妙!
怒り、心配、嫉妬、悲しみ、希望、喜びなどをキマリごとのジェスチャーと表情で表現するのだが、
歌の内容に即していて無理がないし、無駄な動きがないから観客も音楽を聴くのに集中できる。
音楽と歌手の動作が一体化しているので、観ていて聴いていて退屈になるどころか、その世界
に入り込める。(ただし、長いバロック・オペラ全編に渡ってバロック・ジェスチャーのみだと飽きる
かもしれない。このオペラくらいの長さだとジェスチャーのシンプルさも新鮮なままで見終える。)




歌手は、皆若々しくはつらつとしている。難しい演技ではなく、決まった型の身振りだけなので
歌に集中できるのだろう、新人には向いている演出だと思う。
国王と家来以外の役は、全て女性が歌って演じている。ゼフィロ役は、特に嫉妬の表情が上手く、
態度もキマッテいてまるでCTが演じているとしか思えない。その他の女性歌手は、男性役には
ちょっとかわいらしすぎるかも。

この素晴らしい舞台を演出したジョン・デューは、他にどんなオペラを担当したのだろう、と気になった。
すると、マドリッド王立歌劇場でアルベニスの『マーリン』や、ベルリンのDOBでマイヤベーアの
『ユグノー教徒』の演出を担当していることがわかった。いずれも映像で観たことがあるが、あまり
感心しなかった。特に『マーリン』のSF映画の寄せ集めみたいな舞台はいただけない。
この『アポロとヒュアキント』は、これらとは全く異なるHIPアプローチで、同一人物の演出とは
とても思えない。。。




 
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by didoregina | 2011-06-15 22:57 | オペラ映像 | Comments(0)

ローザンヌ歌劇場の『アンゴ夫人の娘』

LA FILLE DE MADAME ANGOT(アンゴ夫人の娘)

作曲:Charles Lecocq
台本:Clairville, Paul Siraudin, Victor Koning
演出:Anémone
出演:Bénédicte Tauran (Clairette Angot),
Emiliano Gonzalez Toro (Pomponnet),
Jean-Sébastien Bou (Ange Pitou),
Maryline Fallot (mademoiselle Lange),
Alain Vernhes (Larivaudière)
指揮:Nicolas Chalvin
収録場所:Salle Métropole de Lausanne

フランス語放送局のTV5が、昨年のローザンヌ歌劇場でのプロダクションを放映した。
ルコック作曲のこのオペレッタのことは全く知らなかったのだが、リエージュの王立ワロン歌劇場の
来シーズンの演目に入っているので、タイトルだけは脳裏に引っかかっていた。
実演を見ることはないだろうし、こういうレアな演目をTV放映してくれるというので、喜んで観賞した。

観たいな、という気になったのは、演出がフランス人女優アネモーヌというので、どれどれ、と
興味が湧いたのだった。
そして、これはリエージュとの共同プロであることも判明した。興味は倍加された。


c0188818_2404312.jpg

           風刺歌手アンジュ・ピトーと市場の娘クラレット
           photo by Marc Vanappelghem

舞台は、フランス革命期の総裁政府時代で、作曲家と作詞家の意図通りで読み替えはない。
孤児でパリの市場育ちのクラレット(アンゴ夫人の娘)、その許婚で鬘師のポンポネット、
クラレットが憧れる風刺歌手のアンジュ・ピトー、女優ランジュと、そのパトロンで政府要人などが
繰り広げる、恋愛のもつれのドタバタ劇である。

混乱期のパリで逞しく生きる市井の人々を代表する登場人物の、たわいもない恋の鞘当てと、
背景に政治問題も少々絡ませた楽しいストーリーだ。
『軍隊の娘』や『フラ・ディアボロ』を思わせる、ちょっとノスタルジックな愛国心の発露も少し
ある。

全体を通して一番印象に残ったのは、音楽ではなくポップな衣装である。
この時代のコスチュームの特徴は、アンシャン・レジームとは正反対だ。男性は体にぴったりした
いなせなスタイル。帽子や襟の色でシンパの党派を表現する。
ブルジョワ階級の女性の服装はギリシャの古典に倣って、薄物の生地を自然なドレープですっきり
見せる。胸下のハイウエストから流れるように落ちるスリムなシルエットで、コルセットやパニエから
開放されたエレガントなデザインだが、帽子は派手な長い羽根飾りで縦の線を強調している。
庶民の女性の服装には、その流行がまだ及んでいないのでもっさりと垢抜けない。

c0188818_3104552.jpg

         色使いはポップだが、当時の正統的ブルジョワ女性の
         スタイルを踏襲し、わくわくするほどおしゃれなデザインだ。
      photo by Marc Vanappelghem


音楽は全く印象に残らないが、主要歌手の聞かせどころアリアは上手く配して、オペレッタらしく
しゃべる台詞が多い、肩の凝らない展開だった。フランス語の歌詞と台詞が洒落た軽さを出していて
フランス人女優アネモーヌの演出が泥臭さを排している。オペレッタなのに、くさい芝居とは無縁で
妙におしゃれで後味がいい。
知っている歌手は一人も登場しなかったが、皆役になりきっていて上手かったと思う。
こういう軽いフランス語のオペレッタは、リエージュの歌劇場にぴったりだ。でも、映像で一度観たら
もう一度ナマの舞台を見たいとは思わない。一期一会だと思って満足した。
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by didoregina | 2011-06-13 20:27 | オペラ映像 | Comments(0)

庭の桜桃で作るさくらんぼのタルト

前庭の桜桃の木が4月に大量の白い花をつけた。
6月になって、熟したさくらんぼがたわわに実った。

c0188818_1923560.jpg


木が高すぎて下の方の枝になった実しかとれないし、落下した実が辺り一面に散らばっている。
もったいないが仕方ない。
人間の口に入らない分は、野鳥が食べてくれる。

c0188818_1933141.jpg



脚立の上からや、木登りできる高さまででも、食べきれないほど実が採れる。
そのまま口に含むのならいいけど、さくらんぼは、加工するには種を出さないといけない。
それがタイヘンな手間である。種抜き器もあるが、ひとつひとつ手動で抜くことになる。
近年は、木登りや種抜き、タルト作りまで全て子供たちに任せている。

簡単かつ美味なさくらんぼのタルトのレシピーを紹介しよう。(直径22センチの型で6人分)

c0188818_1964259.jpg


タルト台:小麦粉200g、冷たいバター125g、上白糖140g、卵黄1個、塩少々
中身:さくらんぼ500g、無塩のピスタチオ(砕く)120g、砂糖40g、粉砂糖少々

1.小麦粉に塩少々、上白糖を混ぜる。冷たいバターをナイフ2つを使って細切れにしつつ、
  粉に切り込んでいく。
2.卵黄を加え、こねてドウにまとめる。ラップに包んで冷蔵庫で30分寝かす。
3.バター(分量外)を塗ったタルト型に、伸ばしたドウを貼りつける。タルト台をフォークで
  つついてから、再び冷蔵庫に入れる。
4.無塩のピスタチオを細かく砕いて、タルト台に3分の2を敷く。
5.種を抜いたさくらんぼをその上に並べて、砂糖と残りのピスタチオを上から振りかける。
6.210度のオーブンで20~30分焼く。冷めてから粉砂糖をかけて召し上がれ。

ピスタチオのグリーンとさくらんぼの真紅という色の組み合わせがいいのと、歯ごたえに変化が
あって美味しい。そして、さくらんぼを焼くときに出る汁をピスタチオが吸い取ってくれるので、
タルト台はさくさくに焼きあがる。ピスタチオの代用として、アーモンドもしくはヘーゼル・ナッツも可。

紅茶にも合うが、クスミ・ティーから出ているバラの花びら入りグリーン・ティーの優しくまろやかな
味わいが抜群の相性だった。
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by didoregina | 2011-06-10 12:24 | 料理 | Comments(4)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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モットー:Carpe diem

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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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