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Cosabogliodipiu  アルバのためだけに

今をときめくイタリア人女優アルバちゃんが出ている映画、というだけで、見に行った。

c0188818_4411779.jpg2010年:
監督 Silvio Soldini
アンナ Alba Rohrwacher,
ドメニコ Pierfrancesco Favino,
その妻 Teresa Saponangelo,
アンナの夫 Giuseppe Battiston,
Fabio Troiano, Monica Nappo, Tatiana Lepore







アルバちゃんは、その名のごとく、ボーン・チャイナのように白く滑らかな肌を持つ、イタリアと
ドイツのハーフで、今まで見た映画ではいつでも、デリケートで独特の存在感を示していた。
イタリア人らしからぬ風貌と繊細さが印象に残り、後を引く、というか、彼女が出ているという
だけでその映画を見たくなる、気になる女優である。

日曜の午後、主人と長男もいっしょに見に行った。どんな映画なのか知らずに。

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           アンナと、まるで聖人のようなその夫。

ストーリーは、言ってしまうと身も蓋もないような下世話な、浮気・不倫のお話である。
アンナは、夫と共働きのごく普通の女性だが、パーティーでケータリングの給仕をしていたある
男に惹かれて、関係を持つようになる。その男は、マグレブ出身のアラブ人で、外見は夫とは
正反対で、まあ、セクシーなんだろう。

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        アンナとその恋人のデート。

男には、妻と二人の子供があり、生活は苦しい。
浮気の逢瀬と、それぞれの裏切られた夫と妻との葛藤が、非常にTVドラマ的にしつこく
描かれて、思いがけない展開にはならない。不倫関係に将来の展望はなく、希望の光も
全く見えない。家族や友人とのしがらみもあり、腐れ縁みたいな関係が続くだけだが、どうしても
離れられないのだ。

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       週末には、二人でチュニスにまで行ってしまった。

どうも、全く感情移入できない映画であった。アンナの夫もそれほどでもないが、聖人のような
夫をないがしろにするほどの魅力を恋人が持つとは感じられないのだ。なんで、こんな男に惚れ
てるの、と思うだけだ。しかも、不倫の当事者双方とも家族は捨てられないから、全く煮え切ら
なくて、わけがわからない。

映画に関しては、皆で、う~ん、というくらいの感想しか持てなかったが、アルバちゃんの魅力は
絶大であった。美しいし、上手いから、目が離せない。主人も彼女が出てる映画をもっと見たく
なったという。後を引く女優なのである。


今回の映画館は、ヘーレンのデ・スピーヘルというアート・ハウス系ミニ・シアターだった。
音楽学校、図書館、展覧会場等がいっしょになった複合施設グラスパレス・シュンクにある。
建物自体、オランダの20世紀建築としては記念碑的価値のあるものだ。

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       グラスパレス・シュンクは、ガラスと鉄骨の
       1930年代の典型的モダニズム建築。

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       最上階にあるミニ・シアターのカフェ。

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       カフェからの眺めは、ヘーレンの町並みの屋根や
       遠くの丘や村まで見渡せ、とても気持ちがいい。

グラスパレスでは、ヘーレン出身の建築家・デザイナーのウィル・アレッツの展覧会を
やっているので、それを見るのが目的だった。6台のヴィデオ・スクリーンで、それぞれ異なる
アレッツのインタビューが見られ、それがなかなか面白かった。日本びいきの彼の東京および
日本文化に対する視点は鋭く、なかなか含蓄を含んでいた。
建築家およびデザイナーとして売れっ子になるには演技力が重要だ、とご本人が言うのももっともだ、
とうなずける。一筋縄ではいかない役者であった。
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by didoregina | 2011-01-30 21:50 | 映画 | Comments(2)

Rembrandt en ik

オランダのプロテスタント系放送局EOによる、TV映画シリーズ『レンブラントとわたし』が
昨晩スタートした。全4回で毎週月曜夜に放映される。

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        レンブラント一家。誰が誰かわかったら、レンブラント・オタクだ。
        ヴィジュアル的には、肖像画に残る人物そっくりのキャストだから、
        解いてみるのも一興。

画家レンブラントの一生を描くミニ大河ドラマの趣だが、各回ごとに語り手を変えて、レンブラントの
身近にいた人の目を通して描くという手法をとって、単なる連続ドラマにさせない工夫をした。
映画『アントーニア』を撮ったマルレーン・ホリスが監督で、シナリオ・ライターも毎回変わる。

第一回めは、同時代の画家ヤン・リーフェンスの目を通して見たレンブラントだった。
ヤン・リーフェンスといっても、現在ではほとんど知る人もない、歴史に埋もれたような画家だが、
若き日のレンブラントとは、いっしょのアトリエで切磋琢磨した間柄。

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         ヤン・リーフェンスとレンブラント(右)

ヤンとレンブラントは幼い頃からの友達で、互いの画才も弱点も知っていた。
長じてからのヤンは、画家としての上昇志向が高く、売込みにも熱心である。17世紀オランダの
ジェネラリスト文人だったコンスタンテイン・ホイゲンスに認められて、イギリス進出への足がかりを
得ようとする。イギリス王室お抱えの画家になるのが夢なのだ。
しかし、レンブラントのほうは、当世流行の肖像画描きで終わりたくはなかった。新しいテクニックを
盛り込むだけでなく、モデルの内面まで描きたかったので、情け容赦ない目と筆で描き出された絵の
モデルとしては納得がいかない、という場合も往々にしてあった。
二人が同時に描いたレンブラントの父親の肖像に、そのアプローチの違いが如実に現れている。
父親が気に入ったのは、ヤンが描いた絵のほうだった。


コスチュームもの撮影にはお金がかかるものだが、このミニ大河ドラマは破格のロー・バジェットで
190万ユーロで済んだという。オランダならではである。多分、古い建物やロケーションや大道具など
ほとんどに実際のものを使うことができたためだろう。
レンブラントの父親の粉挽き風車、教会、ライデンやアムステルダムの町並み、そして船など、
いずれも現存のものを使っている。

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         航海シーンでよく登場した船。
         ヤンはこれでイギリスに渡った。
         海といってもほとんど波がなかった。 
         実際の北海はそんなものじゃない。
         多分アイセル湖での撮影だろう。

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         船オタ一家としては、とても気になる船だ。
         船尾の装飾は、17世紀以降のVOC船と   
         して使われたフロイト型に似てるが、両舷に
         見える鯨のヒレみたいなものに注目のこと。
         水深の浅いオランダの沿岸や湖で使用された
         船底の浅い船に独特の形で、船の下に
         キールなどを付けられないから、こうなった。

調べると、この船は、18世紀のユトレヒト号のレプリカのようだ。
青少年の(失業対策)チャレンジ・プロジェクトの一環として、オランダ黄金時代の17,18世紀
の東インド会社の船を復元、というのがよく行われている。レリーシュタッドにあるドックを見学したが、
木材その他の材質もほぼ当時と同様のものを使用し、図面はもちろん工程も同じだから、時間が
かかるが、完成した船は本当に芸術品のように美しい。

ユトレヒト号は、現在、60人までのパーティ船としてチャーターできるようだ。
ユトレヒト郊外のムイデン城近くが拠点だから、この船丸ごと借り切って結婚式および披露宴する
なんて洒落てる。5年後の真珠婚は、この趣向で祝おうか?


その前に、この夏のヴァカンスだ。7月に2週間サルディニア島北部をセイリングする。
エメラルド海岸と呼ばれるその辺りは、海の美しさも群を抜いていてダイビングのメッカでもあり、
イタリアおよびフランス大統領の別荘をはじめ、ジェットセッターたちが集まるという。
パリス・ヒルトンはじめ有名人お金持ちがうじゃうじゃらしく、そのせいで物価が高いのは困ったものだ。
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by didoregina | 2011-01-25 09:24 | 映画 | Comments(2)

ストリオーニ・フェスティヴァルのオープニング・コンサート

OPENINGSCONCERT STORIONI FESTIVAL@Muziekgebouw Eindhoven
2011年1月21日

Mozart - Vioolsonate in e, KV304
(Pekka Kuusisto viool, Paavali Jumppanen piano)

Schulhoff - Concertino voor fluit, altviool en contrabas
(Chiara Tonelli fluit, Niek de Groot contrabas, Mate Szucs altviool)

Muhly - Pianotrio ‘Common Ground’ (Nederlandse première)
(Strioni Trio)

- Pauze -

Chopin/Bottesini - Aria voor sopraan, contrabas en piano
Paavali Jumppanen piano, Evelina Dobraceva sopraan, Niek de Groot contrabas)

Dohnányi - Sextet in C
(Vladimir Mendelssohn altviool, Romain Guyot klarinet, Hervé Joulain hoorn,
Storioni Trio)

ストリオーニ・トリオを中心として開催される室内楽フェスティヴァルのオープニング・コンサートに
招待された。
2日前にいきなりメールで当選の通知が来たので、緊急同行者を探さなければならない。
おととし、コンセルトヘボウのサラ様コンサートに一緒に行ってくれたNにお誘いをかけた。
金曜の夜、エイントホーフェンの街中では駐車が難しいので、時間に余裕を持って出発した。
高速もスイスイで、セール終了間際のショッピング・モールは閑散としていて、開演40分前に
着いてしまった。(ミュージックヘボウは街中のショッピング・モールにある)

新装成ったミュージックヘボウに初めて足を踏み入れる人は、皆、スタイリッシュでトレンディな
インテリアに感嘆する。

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    2度目なので、勝手知ったるもの、とタカをくくっていたが、
    今回、新しいものを発見した。

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    ビジネス席みたいな、しかしキュービックなデザインのこの椅子には、
    タッチスクリーン画面とスピーカーが埋め込まれていて、新譜CDの
    試聴ができるようになっているのだ。さすが、フィリップス(?)

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    そしてCDショップでの試聴も、タッチスクリーンのメニューで
    豊富なデータベースから選べ、CD挿入しないで聴ける。
    ベジュン・メータの新譜(DVD付き)が15ユーロと安いので、
    Nに勧めたら、試聴してから買った。

さて、コンサートの前から、フォアイエは招待客で盛り上がっている。
フェスティヴァル監督による、オープニング挨拶もあり、なんとストリオーニ・トリオの面々も
ワインのグラスを手にしているではないか。演奏前に飲んでいいの?

室内楽コンサートなので、小ホールが会場だ。(翌日のコンサートにはレーピン様も出演
するので大ホール使用)
急傾斜の客席で、天井が高い。内装は全て木材だが、小ホールだとアットホームな雰囲気で
音響も大ホールよりもよいように感じられた。

各曲目ごとに奏者が変わり、楽器編成も異なるので、ローディーみたいな人たちが、椅子や
譜面台やピアノを動かしたりするが、きびきびときちんとした設営。

最初のモーツアルトのVソナタでは、特にピアノの流麗さに耳を奪われた。地味な曲だが、
ロマン派的解釈だったためか。

2曲目は、1925年に作曲された20世紀の曲。東洋的なメロディーでそこはかと懐かしさを
感じせる第一楽章、小気味よいポリ・リズムでダンサブルな第二楽章、そして、ユーモアの
効いた第三楽章もスリリングで、耳に心地よい音楽だった。フルートとコントラバスが向かい
合わせという配置だったのは、各楽器のリズムが異なるので、そうしないと合わせにくいから
かもしれない。

3曲目は、1981年生まれのアメリカ人マーリーの曲。フィリップ・グラスの弟子で、映画
『愛を読む人』のサウンドトラックも手がけたとか、ビョークともコラボしてるらしい。
この日がオランダ初演だった。さほどミニマルな作風ではなく、ヤナーチェクの弦楽四重奏曲
を髣髴とさせるようなスリリングな曲で、聞きやすい。

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       琉球絣柄の信州紬に、母がオレンジ系の短い絹糸を
       繋いで織ってもらった帯。
       帯揚げは紺にベージュの菊模様。帯締めは伯母が組んで
       くれたミントグリーンのもの。

休憩後は、ショパンの曲をボッテシーニがアレンジした(?)アリア。
ソプラノとコントラバスとピアノのトリオだ。
全くショパンらしくない曲だった。

最後の管弦六重奏曲は、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ホルン、クラリネットという
組み合わせで、管楽器が目立ちすぎない程度で活躍するのが好ましかった。
この小ホールにはこの編成がぴったりで、管楽器が二人とは信じられないほど重厚に響いて
感心。

初めて聴く曲ばかりだったし、なかなかにメリハリの利いた選曲で飽きさせない、フェスティヴァルの
オープニングにふさわしいプログラムだった。
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by didoregina | 2011-01-22 13:28 | コンサート | Comments(2)

チケット・ゲット済みのコンサートおよび備忘録

2011年の第一のメインイヴェントのはずだった、2月6日のサラ様コンサート@コンセルト
ヘボウが、いつの間にかプログラム変更になって、ファンクラブ会長のsarahoctavianさん
ともどもがっくりきたのだった。
当初は、ローズマリー・ジョシュアとのヘンデル・デュエット・アリアのプログラムで、サラ様
には男役をたっぷり歌っていただくはずだった。だから、視覚的にも音響的にもベストの席を
二人でゲットしたのだ。
それが、ジョシュアがキャンセルしたので、代わりに別の女性歌手を持ってくればいいものを、
演目そのものを変更してパーセルのオペラ『ダイドー』コンサート形式に変わってしまった。
イーニアスはマルトマンでサラ様ダイドーというのは、悪くはないが、会長もわたしもロンドンで
オペラ実演を見て聴いているのである。もう一度コンサート形式で聴いてどうする、という気に
なってしまった。チケットは別の人に譲った。

そして、会長に殉じて、2月8日のケルメス姐のコンサートに乗り換えたのだった。
オンラインではなぜかチケットがとれなかったので、さきほど、電話予約した。6列目中央の席だ。
ところが、会長曰く、ケルメス姐のオフィシャル・サイトには、その日コンサートの予定はない、と。
ハッセルト市民会館サイトをよく見ると、曲目が変わってしまっている。しかし、アーチストは同じだ。

G.F. Händel: Ouverture tot Lotario (HWV 26) & aria Scherza in mar la navicella
uit Lotario (HWV 26) _ Antonio Vivaldi: Lente & Zomer uit de Vier seizoenen,
motet In furore iustissimae irae (RV 626) & Herfst en Winter uit de Vier seizoenen

sopraan Simone Kermes / viool Rodolfo Richter /

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         ケルメス姐とヴィヴァルディの
         赤毛の競演

先週まで記載してあった曲目は、ヘンデルのカンタータ『エロとレアンドロ』とヴィヴァルディの
『四季』という組み合わせだった。
それが、ヘンデルの『ロタリオ』序曲とアリア、ヴィヴァルディ『四季』とモテットになってる。
ヴィヴァルディのモテットRV626は、ケルメス姐のCD Amor Sacroにも入ってる曲で、『四季』
そっくりだし、まあヘンデルとヴィヴァルディの両方をケルメス姐が歌ってくれるからいいんだけど。
う~む、これからも予断を許さないような気がする。


2月20日のクリスチャン・ビズイデンホウトによるフォルテピアノ・リサイタルもチケット・ゲットした。
オール・モーツアルト・プログラムで、こちらはかぶりつき真正面の席だ。14ユーロとめちゃ安なのに、
チケット売れ行きはさほど芳しくない様子。


そして、昨日、またまたBravaからメールで「おめでとうございます。チケット2枚が当選!」
とのこと。今週末からエイントホーフェンのミュージックへボウで10日間開催される、室内音楽祭
ストリオーニ・フェスティヴァルのオープニング・コンサートのチケットだ。モーツアルト、ショパンから、
世界初演の現代音楽まで幅広い様々な室内楽のプログラムになっている。
毎年、レーピン様が登場し、公開レッスンも行う。オープニング・コンサートにはレーピン様は出演
しないのが残念。

しかし、エイントホーフェンでのコンサートには、3度目の当選。Bravaだけでも先月と今月と
2回続けての当選、というのは、我ながらすごい、と思う。


すっかり発売日を忘れていたが、なんとかセーフでチケット・ゲットできたのは、DNOの5月公演
『ばらの騎士』だ。ラトル指揮、ブリギット・ファスベンダー演出、コジェナーのオクタヴィアンという
期待の組み合わせ。

あと、『プラテー』も、発売日過ぎてるのにチケット・ゲットするの忘れてた!
ヤーコブス指揮、ローリーとホセインプールのコンビによる演出、ヨハネット・ゾマーも出演だから、
行かねば!

モネ劇場での『偽の女庭師』は、あさってがチケット発売日だから、忘れないようにしないと。
ヘルマン夫妻演出というのと、ピオー出演で二重丸。
そして、『ユグノー教徒』も。ミンコフスキー指揮、ピィ演出で、ミレイユ・ドルンシュ主演!

ほぼ地元、リエージュの『オテロ』と『セヴィリアの理髪師』も、前者はデッシーとアルミニアート
夫妻の共演、後者はスミ・ジョーのロジーナだから、見逃せない。
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by didoregina | 2011-01-20 13:08 | コンサート | Comments(10)

Norwegian Wood

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Tran Anh Hung,  Japan 2010, 133 min.
Naoko   Rinko Kikuchi,
Watanabe   Ken’ichi Matsuyama,
Midori   Kiko Mizuhara,
Nagasawa   Tetsuji Tamayama,
Kizuki   Kengo Kôra













ほとんどの場合、映画が原作をしのぐことはない、と決めてかかってもまちがいはない。
本を読んでから映画を見て失望したなどというのは、だから、確信犯のマゾヒスト的行動である。

小説『ノルウェイの森』には、全く感動しなかったどころか、あまりの稚拙さにしらけてしまって
なんの思い入れもないから、この映画化にはある意味で期待があった。
全世界中でベストセラーになり、これをもってノーベル文学賞を村上に取らせろ、という声が上
がるほど大衆に認められた傑作なのだからして、わたしの期待を下回る映画は作りようがない
だろう、と。

その意味で、わたしの期待には大いに応えてくれた映画であった。
愛読紙NRCでの、この映画の評は芳しくない。また、この新聞紙上では村上春樹の文学的才能
にも大きな疑問符が付されていているから、一般的世評とは異なる評価をNRC読者もある程度
持っていると思う。来週土曜日には、デン・ハーグにおいてNRC主催の「村上春樹文学ライブ
討論会」がある。彼の文学は本物なのか、単に大衆操作の上手いペテン師か、というディスカッ
ションが行われるようである。最新作『1Q84』のオランダ語版発売は、まるで『ハリー・ポッ
ター』最新刊発売のような鳴り物入りだった。国境を越えて売れる作家である。
そして、アンチ村上派もまた多い(だろう)ということは、彼が現代文学界で無視できない大きな
存在であることを如実に物語っている。アンチ・ファンもファンのうちなのだ。

小説『ノルウェイの森』に思い入れのある人にとっては、これは駄作の映画だろう。
わたしには、逆に、全く小説そっくりに作ってあって上手い、と思えた。
読むと、うそっぽすぎて足の裏がむずがゆくなるような会話や独白が、映画だとなかなかに画面の
作り物っぽい60年代の雰囲気とマッチしていて、気にならないどころか笑える。

渡辺役の俳優の目元が村上春樹を髣髴とさせて、私小説の味わいがそこはかとなく視覚的にも
漂う。
女優が皆、小説の登場人物よりもずっと存在感があって、好感すら持てる。
日本の四季を、ベトナム人監督とカメラマンがエキゾチックに美しく撮っているのも、マル。
れいこさん役の女優がギターを爪弾いて歌う『ノルウェイの森』が、しみじみと上手く、聞かせる。
糸井重里、細野晴臣、高橋幸宏が、カメオ出演しているのが、あとでわかって楽しい。
終わったあと、映画館になぜか笑いが広がったというのが、珍しい。

と、この映画にはけなす点がなくて、ほめることばっかりだ。
しかし、それは小説と比べた相対比であって、絶対的な長所ではない。
映画単独としてみたら、突っ込みどころもなくて、つまらないものだ。
だから、原作よりも劣るかといったらそうともいえない。


もうすぐ、ロッテルダム国際映画祭の開幕だ。
カズオ・イシグロ原作のNever let me go(邦題『わたしを離さないで』)も参加する。
キーラちゃん出演だし期待できる作品であるが、評によると、「奇想天外のストーリー展開を
知っていると面白さは半減だから、まっさらなままで観るがよろしい」とのこと。
『わたしを離さないで』と『素数たちの孤独』と『ノルウェイの森』が、いずれも国際的ベストセラー
小説の映画化ということで、比較する記事もあった。小説の映画化は、なんであれ、ありがたいこと
だと感謝する。

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さて、それとは別に、ロッテルダム映画祭にルトガー・ハウアー主演の作品も出品される。
The Mill and the Crossというタイトルで、ブリューゲル作のウィーンの美術史博物館にある
『十字架への道』をデジタル映画化した(!)という、想像の埒外のエキサイティングなものだ。
薬中・アル中のオヤジ姿をTVトークショーにさらすことの多いルト様であるが、役者および最近は
監督および映画普及活動家としては、まだまだ腐ってはいないのだ、と安心した。
しかも、共演はシャーロット・ランプリングとマイケル・ヨークである。期待に心躍る。
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by didoregina | 2011-01-14 22:07 | 映画 | Comments(12)

新年会は初釜か

今年の着物初めは、昨日の新年会だった。
お正月にふさわしく白っぽい着物にしようかと、最初思った。
カタモノはふさわしくないから、タレモノだ。しかし、日中のパーティーである。
天候との兼ね合いもある。
先週は気温が10度以上に上り、雪が全部融けてしまった。だから、着物には
ありがたいが、太陽がまぶしい昼間に白っぽい着物は映えないような気がする。

結局、今まで袖を通す機会のなかったブルーの色無地にした。
松皮菱の地紋の生地をちょっと洋風なブルーに染めたものだ。
同じ生地を紫に染めた道行を合わせると、完璧なアンサンブルというか
まるでお茶席にぴったりの組み合わせだ。
新年会を、初釜だと思うことにしよう。

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         全て母のもので、裄直ししていない。
         道行の余った生地でショールも作ってある。
         ショールにしないで、その分丈を長く作って
         もらいたかったが、母サイズなのでいたしかたない。

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         帯は、ラメの入った紫の綴れ織で、
         お正月らしい華やかさを。
         帯締めと帯揚げを同色の薄紫にして
         洋装的なモダン・コーディネート。

会場は、去年と同じで、白い町トルンの庄屋の館。
大雪で集まりが悪かった昨年とうってかわり、暖かい好天だったが、そのためか、
かえって、あまり集まりがよくなかった。ハイキング日和なのだ。
ほとんど一年ぶりに会う人ばかり。それでも、わたしの去年の着物姿を憶えている
人が何人かいた。
給仕の人が、「また今年もお着物ですね。素晴らしい」と言うのにびっくり。

今年は、ハープとヴァイオリンと歌のトリオ演奏が入った。
乾杯の前30分ほどは、知り合いに挨拶して回る時間なのだが、その間中、バックで
バロック曲などを演奏していた。
会長による新年の挨拶のあと、20分ほどのミニ・コンサートのはずだったのだが、皆、
あいさつ回りとおしゃべりを続けるので、会場はざわついたまま、演奏は単なるバック・
グラウンド・ミュージックみたいになって、奏者にはかわいそうだった。
わたしは、最前列の椅子に座って、しっかり演奏を聴いていたが。
思い余ったのか、ヴァイオリン奏者が「次はモーツアルトのミサ曲から、ソプラノ歌手
にはとても集中力を要する難しい曲なので、皆様、少々お静かに願います」と
言い出す始末。
あまり上手い歌手ではなかったが、皆静まって拝聴した。
最後は、プッチーニの『わたしのお父さん』だったが、何を歌ってもべったりとした
声で、感情も込められていないし、単調でつまらない歌唱だ。
ヴァイオリンも酷かった。唯一の救いは、ハープだ。ペダルが3つある大型ハープを
持ち込んで、リキが入っている。ピアノでなく、ハープ伴奏というのがいい。しかし、
ハープは音が小さいので、トリオだと通奏低音くらいの役割しか得られない。
次回は、ヴァイオリンと歌抜きで、ハープだけの演奏を聴きたいと思った。

新年会は、学会シンポジウムも兼ねている。だから、パートナー用のおカタくないプログラムも
用意してあり、今年は、「修道院とビール」というテーマの講演と試飲だった。
まるでわたしのために用意してくれたようなものだ、と勇んで参加した。
しかし、メイン・シンポジウムのパネル・ディスカッションが、一般人にも興味深そうなテーマ
だったので、そちらに人が集中して、「修道院とビール」講演に集まったのは、3人のみ!
講演内容は、ごくごく一般向けで、掘り下げが全く足りないため、ベルギー・ビール好きに
とっては既知の情報ばかりであった。試飲は、いろいろできるのではなく、一人1,2本。
ウェストマルのトラピスト・ビール1本飲んだら、おなかが一杯になってしまった。

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        正真正銘のトラピスト・ビールのウェストマル。
        初釜にふさわしく(?)今年飲む初ビールだ。

ビールを飲みながら、他の参加者である2人の年配のご婦人たちとお話しすると、皆さん、
お子さんは皆デルフト工科大学出というので、お互いにびっくり。こういう偶然は珍しい。

       
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by didoregina | 2011-01-10 04:31 | 着物 | Comments(10)

グラインドボーンの『こうもり』

新春を飾るにふさわしい演目といえば、シュトラウスjrの『こうもり』だ。
Bravaでは年中放映しているが、マレーナ様がオルロフスキー役で出演しているこの
グラインドボーン版を全編鑑賞するのは、実は初めて。
イギリスやオランダのオペラ評では、妙に暗い舞台だと言われているのと、マレーナ様の髭面も
今回の役作りもあまり好みではないので、それほど積極的に見る気はしなかったのだ。
ともあれ、ようやく鑑賞した。

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Alfred: Pär Lindskog
Adele: Lyubov Petrova
Rosalinde: Pamela Armstrong
Gabriel von Eisenstein: Thomas Allen
Dr Blind: Ragnar Ulfung
Dr Falke: Håkan Hagegård
Frank: Artur Korn
Prince Orlofsky: Malena Ernman
Frosch: Udo Samel
Ida: Renée Schüttengruber


London Philharmonic Orchestra (Leader Pieter Schoeman)
The Glyndebourne Chorus (Chorus Master Bernard McDonald)
Conductor: Vladimir Jurowski
Director: Stephen Lawless
Set Designer Benoit Dugardyn

キーワードは「シャンペン」。
まず、緞帳の柄がシャンペンのラベルを模したもの。そして、後半は終始シャンペンを飲みながらの
馬鹿騒ぎ。シャボン玉の飛ぶバックもまるでシャンペンの泡立ちのようで、酔いとともに登場人物が
瓶の中に閉じ込められてるイメージだ。

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       アイゼンシュタイン家の館のロザリンデとガブリエル夫婦。
       インテリアもクリムト風模様の衣装も世紀末の薫り高い。

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       室内着のクリムト風衣装に注目のこと。

確かに、舞台は薄暗いが、これは世紀末の雰囲気を高めるためのものであり、こういう薄暗い
室内でこそ、クリムト風金襴の衣装と装飾の妖しい美しさが映えるのだ。
世紀末を表現するのにこの陰影のニュアンスはまさに最適。当時、ブルジョワの家に掛けられていた
装飾性の強いクリムトの絵画が光芒を放ったのは暗い室内だったからこそと同様だ。

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       オルロフスキーの館は、間口が狭くても高さはある
       グラインドボーンの舞台を最大限に利用するように、   
       階段とアールデコ風の回り舞台。ダンスや歌の
       最中でも舞台はしょっちゅう回る。

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       ロシア貴族オルロフスキーは、メランコリーな病に冒されてる
       という設定の割には、歌も台詞も躁っぽい。
       エキセントリックな役柄は、マレーナ様の得意とするもの
       だが、この役はちょっと合わないような気がする。

マレーナ様の、低い声でしゃべるロシア訛りのドイツ語の台詞回しは上手い。
しかし、歌になると、高音の多いこの役の音域のためか、女性っぽく聞こえるのだ。
演技は抜群なのに、バロック的な歌い方のせいか、どうも世紀末的なアンニュイが感じられない。
声だけ少年みたいで清々しくなってしまうのだ。
この役は、CTが歌うほうがいい。

c0188818_12762.jpg

       アデーレ役は、聞かせどころアリアが多くて得だ。
       歌手も期待に応えている。


この演出では、こうもりの復讐に重きがかかっているので、無口で無骨・無粋なのに、
こうもり博士は、影で全てを操ってるような役柄だ。
丁度、ポール・デルボーの絵によく描かれているジュール・ヴェルヌのリーデンブロック教授
みたいな雰囲気で、独特の存在感を出している。陰湿さが匂ってくるかのような。

全体的に笑いを取ることに重点が置かれていないのも、このプロダクションは妙に暗い、と
いわれる所以でもある。見ながら、わっはは、と笑える要素が非常に少ない。

しかし、まるでオスカー・ワイルドの母親がそうだったように、やっと目を凝らすと見えるような
暗い室内で装飾華美な服装と濃い化粧を凝らしてじっと座っていて、そこだけ不気味にぼっと
灯った薄明りのような味わいの、陰影礼賛的なこのプロダクションは結構気に入った。
世紀末やベルエポックの陰影に沈んだ中の微妙なかび臭い空気を味わわせてくれたからだ。

       
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by didoregina | 2011-01-07 17:54 | オペラ映像 | Comments(9)

ベルギーのコンサートに行って、合法的に税金逃れ

オランダでは2011年1月から、コンサート・チケットに課される消費税が、今までの6%から
付加価値税と同じ額の19%に上がった。そのため、2010年12月末日までにチケットを買う
ようにと、各ホールから矢のような催促が来ていた。
それを尻目に、わたしは隣国ベルギーのコンサート情報を集めてみた。
姑息だが、合法的な税金逃れの一つの方法である。

するとどうだろう、家からそれほど離れていないベルギーのハッセルトで行われるコンサートに
結構面白そうなものを発見した。
しかも、値段はめちゃくちゃ安い。ガソリン代を足しても、絶対にこちらのほうが得だ。

2月8日(火) €18
B'ROCK & SOLISTEN SIMONE KERMES (SOPRAAN) & RODOLFO RICHTER (VIOOL)
Antonio Vivaldi: De vier jaargetijden
Georg Friedrich Händel: Cantata Ero e Leandro, HVW 150


2月18日(金) €16
VOX LUMINUS O.L.V. LIONEL MEUNIER
Giacomo Carissimo: Historia di Jephte  
Domenico Scarlatti: Te Deum a 8 Salve; Regina & Stabat mater


2月20日(日) €14
KRISTIAN BEZUIDENHOUT  Pianorecital
Wolfgang Amadeus Mozart: Neun Variationen über ein Menuett von Duport in D,
KV 573; Sonata in F, KV 332; Sonata in Bes Linzer, KV 333 & Fantasie in d, KV 397

3月3日(木) €16
IL GARDELLINO  
Johann Sebastian Bach: Das musikalisches Opfer, BWV 1079

3月8日(火) €16
TRIO HANTAÏ  Virtuoze barokmuziek
Jean-Marie Leclair   Marin Marais  Georg Philipp Telemann e.a.

3月23日(水) €19
ANIMA ETERNA O.L.V. JOS VAN IMMERSEEL  
Ludwig van Beethoven: Ouverture Die Geschöpfe des Prometheus, opus 43;
Symfonie nr. 2 in D, opus 36 & Symfonie nr. 5 in c, opus 67

3月26日(日) €18
HUELGAS ENSEMBLE O.L.V. PAUL VAN NEVEL Passieconcert
Robert White: Lamentations for five voices  Jacobus De Kerle: Media vita in
morte sumus à 6  Jacob Clemens: Qui consolabatur à 5   Nicolas Gombert:
Media vita in morte sumus à 6  João Lourenço Rebelo: Lamentationes Hieremiae prophetae

4月29日(金) €19
ORKEST VAN DE 18DE EEUW O.L.V. FRANS BRÜGGEN & SOLISTEN WILKE TE BRUMMELSTROETE (MEZZOSOPRAAN) & THOMAS ZEHETMAIR (VIOOL)
Johann Sebastian Bach: Orkestsuite nr. 3 in D, BWV 1068 & Vioolconcerto in E,
BWV 1042  Franz Joseph Haydn: Drie aria’s; Symfonie nr. 101 in D, Hob. I:101

5月24日(火) €16
JEAN-GUIHEN QUEYRAS (CELLO)
Johann Sebastian Bach: Suites nr. 1-6 voor cello solo, BWV 1007-1012

5月26日(木) €19
DEFILHARMONIE O.L.V. PHILIPPE HERREWEGHE & SOLISTEN
ISABELLE FAUST (VIOOL) & JEAN-GUIHEN QUEYRAS (CELLO)
Franz Liszt: Hamlet, S 104  Zdenek Fibich: Symfonie nr. 2 in Es, opus 38
Johannes Brahms: Dubbbelconcerto voor viool & cello in a, opus 102

5月29日(日) €16
FRANCESCO CORTI & ERIK BOSGRAAF, EWALD DEMEYERE & CAPRIOLA DI GIOIA Muzikale happening Herkenrode
Georg Friedrich Händel: Sonates voor fluit & basso continuo; Suite voor
klavecimbel in D klein, HNV 437; Suite voor klavecimbel in G klein, HNV 432;
Neun Deutsche Arien

6月16日(日) €16
LA PETITE BANDE O.L.V. SIGISWALD KUIJKEN & SOLISTEN PATRICK BEAUGIRAUD (HOBO) & OLIVIER PICON (HOORN)
Laureaten Koningin Elisabethwedstrijd - zang 2011

ソロリサイタルおよび室内楽は14ユーロか16ユーロ、ちょっと大きめのアンサンブルやオケだと18か
19ユーロというのは、ほとんどありえない値段だ。ベルギーでは芸術関連への国および市町村自治体
からの補助金がよほど多いのだろう。ありがたいことである。
越境してコンサートに行き、オランダで払う税金を逃れることができるのは、もちろん合法であるが、
国境地帯に住む者の特権だ。

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        栗鼠を見習って、今年は吝嗇に励む。

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        しかし、栗鼠って冬眠する動物じゃなかったっけ?
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by didoregina | 2011-01-03 17:28 | コンサート | Comments(17)

DNO『トロイアの人々』TV放映

ベルリオーズのグラン・オペラ『トロイアの人々』が、2週に分けてTV放映された。
2010年4月にアムステルダムの歌劇場で上演されたものだ。

c0188818_16123959.jpgLes Troyens
Hector Berlioz 1803 1869














muzikale leiding  John Nelson
regie  Pierre Audi
decor  George Tsypin
kostuums  Andrea Schmidt-Futterer
licht  Peter van Praet
choreografie  Amir Hosseinpour Jonathan Lunn
dramaturgie  Klaus Bertisch

Énée  Bryan Hymel
Chorèbe  Jean-François Lapointe
Panthée  Nicolas Testé
Narbal  Alastair Miles
Iopas  Greg Warren
Ascagne  Valérie Gabail
Cassandre  Eva-Maria Westbroek
Didon  Yvonne Naef
Anna  Charlotte Hellekant
Hélénus/Hylas  Sébastien Droy
Priam  Christian Tréguier
Un chef grec/1ère sentinelle  Alexander Vassiliev
Un soldat  Peter Arink
2ème sentinelle  Patrick Schramm
L’ombre d’Hector/Le dieu Mercure  Philippe Fourcade
Sinon  Christopher Gillett
Polyxène  Michaëla Karadjian
Hécube  Danielle Bouthillon
Andromaque  Jennifer Hanna
Hector/Iarbas  Standish de Vries

orkest  Nederlands Philharmonisch Orkest
koor  Koor van De Nederlandse Opera
instudering  Martin Wright

トロイの陥落を描いた第一部と、アエネアスとディドの悲恋の第二部という構成の、ストーリーも
壮大な叙事詩に基づいているだけに大作オペラだ。

合間には、フランス・オペラの伝統というかお約束を守ったバレエ(ダンス)も挿入されている。
そのバレエというかダンス振付は、オーディとはよく組んでいるホセインプール。例の、せわしなく
手を動かす、対称的・幾何学的・機械的な動きなので、一目でわかる。優美なダンスとは程遠く、
せかせかした動きなので、これが嫌いな人には耐え難いかもしれない。
わたしは、歌や器楽演奏の邪魔にならない小振りの振り付けだし、ステージ上のシンプルな造形や
合唱団の動きとも連動しているから、トータルとして見たら悪くないと思う。

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      脱走して迷い込んだギリシャの兵士を
      問い詰めるトロイの王プリアムス。
      木馬をトロイの城門の中に入れるための
      ギリシャ側による罠。

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      王女カッサンドラの予言は、真実なのに誰からも
      信じてもらえないというアポロンによる呪いのせいで、
      トロイ陥落は不可避のもととなる。
      ギリシャ人の奴隷となって辱めを受けるよりも
      死を選べと、トロイの女たちを諭すカッサンドラ。

第一部では、なんといってもカッサンドラ役のエファ=マリア・ウェストブルックに注目した。
役どころでは重要なのでほぼ出ずっぱりだ。力強く響く声だが、くぐもって聞こえることも多い
のは、悲劇を予見しながらも、誰からも信じてもらえないというジレンマを表現するためか?
印象的なアリアはないが、存在感は抜群の歌手だから、堂々たるもの。

堅固な水平だった城壁が、斜めに下降する形になり、滅亡の宿命を背負ったトロイという国を象徴。
赤い照明は、戦火に焼かれ燃やされるトロイをそのまま表現している。
すでに喪の色である黒をまとっているトロイの女たちの衣装が、行く末を暗示。
陥落寸前にかろうじて逃れたアエネアス一行に、未来が託された。


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      第二部は、トロイを逃れたアエネアスの一行が漂着した
      カルタゴが舞台。繁栄を誇るカルタゴの気高き女王
      ディドには、しかし、悩みも多い。

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      ディドとねんごろになったアエネアスの前に、父やトロイの勇士その他の
      亡霊が現れ、使命を全うするように諭す。
      この亡霊役の人は、頭に火を乗せて動かなければならず大変そう。。。

アエネアスの使命とは、イタリアの地に新たな王国を築くことだ。
イタリアという名前は、トロイにいるときからすでに出てくる。
ディドも自国を追われてカルタゴに逃れ、女ながら立派な王国を築いたという実績があり、似たもの
同士ひきつけ合うものがある。
妹アナは、ディドがアエネアスと結婚すれば、カルタゴは外敵の脅威に怯えることなく安泰だ、と
楽天的だ。

神の意思は強くて、人間にはなすすべがない。右往左往させられるだけである、というのがギリシア
悲劇の基本だ。
だから、アエネアスは、イタリアに向けて旅立たざるを得ない。それは、とりもなおさず、ディドを
捨てることになる。
ディド役は、かなり難しそうだ。誇り高く、しかも悩む女王。そして、束の間の恋のあとは捨てられ、
最後には、呪いの言葉を吐きつつ自死するのだから、その形相は、カッサンドラにも似て、狂気を
帯びる。しおらしさから一転して、邪悪な女にならなければならない。

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       直立する建物は、カルタゴの繁栄を象徴しているが、
       トロイ陥落と同じく、ディドが自死するという最後近くの
       シーンでは、炎の赤に包まれる。
       ディドとカルタゴの人々は、今後のイタリアとの確執を
       呪詛のごとく歌う。ハンニバルがイタリア(ローマ)を
       苦しめるだろう、と。

かくして、神の気まぐれによる悲劇はとどまるところを知らず、雪崩のごとくあたりを巻き込んで
崩壊だけをもたらすのだった。
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by didoregina | 2011-01-03 09:18 | オペラ映像 | Comments(4)

Elle s'applait Sarah 『サラの鍵』

c0188818_2485072.jpg 2010年
監督:Gilles Paquet-Brenner
ジュリア:Kristin Scott Thomas,
サラ(子供):Mélusine Mayance,
養父:Niels Arestrup,
義父:Frédéric Pierrot,
ジュリアの夫:Michel Duchaussoy








クリスマスが終わって大晦日になる前のほっとした水曜日(理由はご存知)に、家族揃って
映画を見に行った。平日午後だというのにリュミエールは大入りの盛況で、予約なしの5人は
なんとかもぐりこむことが出来、胸をなでおろした。

クリスティン・スコット=トマスの最近の映画での役どころは、フランス在住の英国人もしくは
アメリカ人または英仏ハーフという設定ばかりである。フランスに長く住んではいても、彼女の
フランス語には紛れもない英語訛があるから、役柄としては妥当で無理がない。
今回は、フランス人と結婚して長年パリに在住のアメリカ人ジャーナリストを演じる。そして、
あるユダヤ人女性の軌跡を追ううちに、自らも歴史の波のうねりの中に引きずりこまれるのだ。
スリリングな展開の映画なので、ネタはばらさないでおく。

一言でいうと、フランスの20世紀の歴史の汚点ともいえる、第二次世界大戦中のドイツ占領下での
ユダヤ人狩り(という日本語訳でいいのだろうか?)と強制収容に、直接・間接に関わったことで
心を引っかきまわされた人々を描いた映画だ。『愛と哀しみのボレロ』と『ソフィーの選択』に
共通点も見られる。

ナチ・ドイツ占領下という特殊事情があったとはいえ、フランス警察(つまり国家)が自国民の特定
グループに対して行ったこの行為の不当性を、後にシラク大統領が正式に発言する場面も映画に
登場した。その謝罪声明によって、ある意味で過去を浄化し、一区切りが付いたのだが、嵐のような
この事件に巻き込まれた人々にはトラウマが残り、50年、60年経って何世代かを経た後にも、思い
がけないところから痛みが噴出するのだった。その負のエネルギーのすさまじさは、超新星が自らの
死に際してブラックホールとなり、回り全てをその暗黒に取り込んでいくのにも似ている。

子供時代のサラを演じる子役は、くったくのなさと責任感とが入り混じった目と演技が抜群だ。
邦題『サラの鍵』は、なかなか上手く付けたと思う。謎解きのような展開は、まさにサラと鍵を
中心に展開するのだから。
しかし、『彼女の名はサラ』と直訳してもよかったと思う。そうすると、負った傷は深くとも、最後の
台詞と共に新たに生まれた希望が輝く。

ホロコーストものなので、暗くて衝撃的な場面もあるが、それがメインにはなっていない。
無償の手助けをするフランス人が登場するし、最終的にはフィール・グッドになる映画である。


帰り道、マルクトでロブスターを見つけた。大晦日にはちょっと早いが、一人1匹ずつと張り込んだ。

c0188818_3402977.jpg

       生クリーム入りクールブイヨンで茹でる。
       茹で汁は、翌日煮つめてスープにした。

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       ハーブ入り手作りマヨネーズを添えて。


新年明けましておめでとうございます。ことしもよろしくお願い申し上げます。
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by didoregina | 2011-01-01 19:58 | 映画 | Comments(10)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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