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黒地の着物に同系色焦げ茶の帯とケープ

ロシア舞踊ショーに招待された。民族舞踊とバレエとアクロバットがミックスしたマス・ゲームっぽい
振付のショーは、クルーズなんかでのエンタメだったら上等だろうが、お金を払ってまで見たいとは
思わない。
この劇場ではスポンサーとして招待されると別室で、開演前のコーヒー、幕間の飲み物、終演後の
ビュッフェと、とことんいろいろ供されるので、着ていくものに悩むことになる。招待もこれが最後だ
ろうから、少し渋派手でいこう、ロシアのイメージなら赤と黒、というわけで、自分サイズで着易く
気に入っている泥染めの縞大島にした。

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       黒地に幅と間隔の異なる赤の縞模様が
       織り出された大島。

いつもついつい白っぽい帯を合わせがちだが、今回は、straycatさんの泥藍大島と同系色の
帯という大人っぽいコーデに触発されて、帯を暗色の同系色にしてみた。

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       今の季節限定の蔦葡萄の柄の洒落袋帯
       象牙色の冠組の帯締め
       帯の葡萄と同じ少し茶がかった鴇色の帯揚
       草履は、黒地に金襴の切り嵌め

この葡萄柄の帯はとても長く、表地の反対側が雪輪に源氏香になっていて、一本で2通りに
使える。(裏表の柄違いではなくて、表の模様が二種類)
着ると、手の部分がとても長くなるし、その部分は別の模様なのだが、同系色なのでほとんど
気にならない。ふんわりとした織地で復元力が高いので、あまりしわにならないから、手の部分を
別の時にはお太鼓にできるのである。
葡萄柄の方を出して着るのは、初めてだ。


帽子の先生Pは、変わった道具フェチである。
ミシンそっくりで、しかし糸を通す部分がなくて、針は表面がぎざぎざになったものが5本という
パンンチング・マシンもそのひとつ。
それを使って、ウールの大判ショールにフエルト加工用の綿羊毛を打ち込んでみた。
着物用に、膝くらいまでの丈の防寒ショールが欲しかったのだ。

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       秋らしい乱菊模様をフリーハンドで描いた。

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       着方によって模様の出方が異なる。
       (着物の上に羽織る場合は打ち合わせも異なるので)

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       マントのような大判ショールは、黒に近い濃いグレー。
       それに白に光沢のあるシルクの入ったものと薄いグレーの
       ウールの綿で絵を描いた。(こちらは表側)

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       五本のぎざぎざ針で、糸なしで打ち込むので、
       裏にもしっかり模様が出るが、光沢はない。
       生地に模様が一体化するのだ。(こちらは裏側)

ウールのパンチングは、楽しい手芸だった。
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by didoregina | 2010-10-31 20:39 | 着物 | Comments(2)

ヘンデル『アドメート』@ゲッティンゲン・ドイツ劇場 

オペラ鑑賞は一期一会、というのがわたしの場合、基本である。
いかな、おっかけしている歌手の出演するオペラであろうとも、舞台は一回しか観ない。
それは金銭的な理由に尽きる。
そして、TV放映またはDVDでオペラ鑑賞の場合も、一期一会を大事にする。つまり、テンションを
高く保って見るには、一回こっきりだと思うのが最善なのだ、わたしの場合。

だから、DVDはマレーナ様出演作以外、ほとんど持っていない。それでも、繰り返し見ることはまず
ない。

『アドメート』は、Bravaではなく、日本でTV放映されたもののDVDコピーをようやく観た。
期待は大きい。なにしろ、主演はあの可愛いCTのティム・ミードだし、演出はドリス・デリエ女史である。

c0188818_3244020.jpgTim Mead (Admeto), Marie Arnet (Alceste), William Berger (Ercole), Andrew Radley (Orindo), David Bates (Trasimede), Kirsten Blaise (Antigona), Wolf Matthias Friedrich (Meraspe)
Gottingen Festival Orchestra, Nicholas McGegan

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      ティム・ミードのオフィシャル・サイトにあまたある顔写真から拝借。
      キュートなジンジャーで、ルックスに自信あり、が明白な眼差し。

演出のデリエ女史は、映画監督作品Cherry Blossoms (Hanami)でも、ブトーに傾倒する
人物を登場させたり、ブトーの舞台を見せたりしていたが、このオペラでも、ダンサーも振付も
本格的なブトーだ。(エンドウ・タダシとマム・ダンス・シアター)

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      病床のアドメートと、病魔を表現するブトー・ダンサー

ご存知のとおり、この舞台・衣装は日本的テーストになっていて、騎士たちは裃を着た武士風で、
相撲力士風のヘラクレスが活躍したり、お引きずりで花魁風の奥方やおかっぱ頭で着物姿の侍女
たちが登場する。

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      夫アドメートの病気回復のために自らの命を引き換えに捧げる
      アルチェステの自刎シーンは、蝶々夫人みたいだ。

舞台は、薄い幕を張った背景に、各々のシーンを象徴する色だけを投影したシンプルさ。
その色は、きれいなパステルである。

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      自害の後、舞台は床も赤になり、血の海。

その後、ヘラクレスが冥界に出向いてアルチェステを救いに行く。首尾よく救出するのだが、
地上では、病気が治癒して元気になったアドメートに思慕を寄せるアンティゴナが近づくから、
事態は複雑な展開になる。それまでがだらだらと長く感じられるのは、やたらとのんびりした
アリアばかりなのと、ストーリーも悠長でメリハリが少ないからだ。
後半になってから、愛憎関係が入り組んで来て、劇的になる。

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      アルチェステの死から最後までずっと、影のように彼女についてまわる
      なぞのブトー・ダンサーは貞子のパロディーか?
      途中でようやく、アルチェステの嫉妬を体現する怨霊なんだとわかる。
      六条御息所みたいなものだと思えばよい。

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      アドメートに恋するトロイの王女アンティゴナは、羊飼いに身をやつして
      近づく。羊役のダンサーたちがかわいい。

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      その中でもお気に入りの羊は、忠実な番犬のように、いつも
      彼女のそばに控える。このブトー・ダンサーもはいつくばって
      ばかりで大変だ。

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      夫の気持ちを確かめるため、冥界から帰ったことを知らせず、
      若武者風に男装して宮殿に入るアルチェステと侍女たち。

アルチェステの死を信じるアドメートがアンティゴナと結婚するというあわやの最後の段になって
アルチェステは身を明かし、アンティゴナも身を引く。これが、最後の数分に集中するから、
あっけない幕切れである。

アドメートは、自分の病気と引き換えに死んだアルチェステをあっさりあきらめて、若い異国の姫と
結婚しようとする、心身ともに弱い、どうしようもない王様である。
初演でのこの役は、人気沸騰のカストラート、セネジーノ。

夫のために自分を犠牲にして死んだのに、すぐに嫉妬に心を焼かれるアルチェステは、後半、
男装の若武者になってからの姿が凛々しくていい。そして最後には、嫉妬の化身を自ら追いやる
芯の強さを見せる。最初と後半に見せ場は多い。
この役は、ファウスティーナ・ボルドーニのため。

そして、途中からはアンティゴナが、ストーリーを展開させる大事な役割を担う。彼女が甘い声で
アドメートの肖像画(能面を大きく描いた薄い幕)に憧れるて身を焦がす歌も可愛くていい。
こちらは、ファウスティーナのライバル、フランチェスカ・クッツォーニのためのもの。

これら3人の花形歌手のために作られたようなオペラであるから、自慢の喉を披露するためのアリアの
配分がほぼ同等だ。だから、いったい愛の勝利を手に入れるのは誰なんだと、最後まで展開には
予断を許さないものがある。
しかし、やはり、ハッピーエンドになるのであった。

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       元の鞘に納まり、めでたしめでたし。
       白無垢の内掛けのようなガウンを羽織るアルチェステ。


このプロダクションでの主要歌手3人も、それぞれ個性的でなかなかよかった。
それ以外では、力士のヘラクレス役も上手かった。
あと2人CTが出てくるが、ちょっとイマイチなのと、音程が非常に不安定で声も出なくて酷いのがいた。
オケは可もなく不可もなくという程度で、印象に残らない。

すり足で進んだり、軽やかに裃風マントを翻して見得を切るようなアドメートの動作は優雅だ。
そして、力士風のヘラクレスが四股を踏んだりするのが、日本人には笑いを誘うというか、異様に
見えるのは否めない。ドリエ女史は大真面目だったろうに。
それ以外は、コスチュームもパステル・カラーの照明も、能面を肖像画に使うというアイデアも
スタイリッシュで気に入った。





      
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by didoregina | 2010-10-28 22:19 | オペラ映像 | Comments(14)

Le temps qui reste ぼくを葬る

c0188818_4214948.jpg2005年
監督・シナリオ: François Ozon
Romain:  Melvil Poupaud
祖母Laura: Jeanne Moreau
Jany: Valeria Bruni Tedeschi
父:Daniel Duval
母:Marie Rivière
Sasha: Christian Sengewald

邦題は、「葬る」と書いて「おくる」と読ませる。
ちょっとひねりすぎの感もあるが、ストーリー上
案外適したタイトルかもしれない。
自分らしい死に方を実践する30歳の男の話だから。





ゲイでファッション・カメラマンのロマンは、癌のため余命3ヶ月以下と告げられ、化学療法を拒む。
治癒可能性は4%以下だから、尊厳を重視して自分らしく生きて死にたいと望むからだ。
そして、そのことは祖母(ジャンヌ・モロー!)以外の家族の誰にも告げず、パートナーである
サシャにも、病魔に冒され苦悩する姿を見せたくないため、別れを一方的に切り出す。
この二人の男優の美しさ!

両親も妹も、普通の生活を営む普通の幸福を追求する人々だから、価値観が異なりすぎ、相互理解
不可能だと思っているので、たまに会ってもぎくしゃくとした関係だ。そりが合わないのだから仕方ない。
ロマンは、奔放で自分に近い生き方をしている祖母にのみ、本音を吐露する。
淡々とした言葉と態度で、孫に対する慈しみに満ちた眼差しを向け、しかし、何も手助けできない
歯がゆさを表現する、年老いたジャンヌ・モローの演技がいい。びっくりするほどのおばあちゃんに
なっていて、昔日の美貌は見る影もないが、コケットでおしゃれなフランス女の色香は失わないので
ため息がもれる。

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そうして、身の回りの整理をしつつ死の準備を進めるロマンに、予想外の出会いが。
カフェを経営するある夫婦が、ロマンの美貌に眼をつけ、唐突にある願いを申し出るのだった。
中年女に扮するヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(カルラ・ブルーニの姉!)もいい味のある女優だ。
その夫婦の願いを叶え、遺言もしたため、サシャにも仕事を見つける手助けをして、なすべきことは全て
し終える。

まるで日本映画にありそうな恬淡さと、オゾンらしい洒落味と美意識が不思議にミックスして、テーマが
重くなりすぎない。この軽みの秘訣は、監督のアルター・エゴであるロマンを演じるメルヴィル・プポーの
天性のキャラクターに負うところが多いと思う。世間のしがらみにとらわれず、自分自身の生き方を
押し通す、すなわち理想の死を追求するという姿勢を壊さないロマン役にプポーはぴったりだ。

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この人、50作くらい映画に出ているが、名前を覚えたのは初めてだ。出演作を見ると、そういえば、と
思い当たるものがあった。キアラ・マストロヤンニと共演したLe journal du seducteur (1996)に
変わった大学生役で出ていたと。
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キルケゴールかぶれの、何考えてるのかわからないようなちょっと不気味で美しい誘惑者役だった。



本作では、役作りのためかなり体重を落としていったようで、その痛々しいまでに美しい姿に目が釘付け。
少し優男的で美しい顔と贅肉のない体は、まるでデュモー選手を思わせる。
また、そのエキセントリックな味が、英国人俳優のベン・ウィショーにも通じる。
この二人のどちらかを起用して、オゾンに作ってもらいたい映画がある。
それは、イアン・マキューアンの『アムステルダム』だ。
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by didoregina | 2010-10-26 22:23 | 映画 | Comments(6)

秋の国境の森をハイキング

少しでもお天気がよさそうだったら、すかさずハイキングに出かけよう、と思っていた。
日曜日、日本の秋晴れのようにはいかずとも、北ヨーロッパにしては上々の天気だ。
ベルギーの高原湿地帯オート・ファーニュ(車で45分くらい)がいいかな、と思ったが、
もっと近場のエーペンにある国境付近の森になった。

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         マーストリヒトから南東に連なる国境の丘陵地帯は
         オランダのスイスとも呼ばれる。
         ちょっとしたハイキング・ルートが縦横無尽にある。

当地流ハイキングは、丘陵地帯に点在する村の中から適当な場所を選び、駐車場つきの適当な
カフェに向かう。そこが出発点である。
エーペンの丘の上に立つカフェ・ヘラルドゥスフブの駐車場は、他のカフェより郡を抜いて大きいが、
好天の日曜日だから、ほぼ満杯。眺めのいいテラスも大賑わいだ。

そこからすぐの森オンダーステ・ボス(一番下の森)に向かう。
そこは、春夏秋冬、いつ来ても静かで、カフェの駐車場にあんなに沢山(100台以上はゆうにあった
ろう)停まっていた車の人たちは、いったいどこにいるんだろうと不思議に思われるほど、人に出会わ
ない。

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            枯れた羊歯が秋の気配

この森は、子供たちが小さい頃からよくハイキングに来ていたので、地図なしでそのつど適当な道を
辿っても迷いこんでしまうことはない。

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            「ここに共に永久に」と銘の入ったプレート付きの
            ベンチ。故人の名前と生年および没年が刻まれている。
            この森を愛した故人の思い出のために遺族が寄贈した
            ものと思われる。
            木が一本、ベンチの中を通っている洒落たデザイン。

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            森の中も国境が入り組んでいるので、オランダとベルギーを
            出たり入ったり。これが国境の印。
            ベルギーに入ると、森の名前がボーベンステ・ボス
            (一番上の森)と変わる。

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            小さい秋見つけた!
            小人の住処のようなキノコと
            名残の実をつけたキイチゴ。
            秋の日差しにつやつやとして美味しそう。

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            既視感のある風景。
            木洩れ日と積もった枯葉は、まるで
            『ファラモンド』のCDジャケット。

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            比較のためのCDジャケット写真。

1時間半のハイキング。針葉樹の落ち葉がふかふかの小道や、湿地や草地を横切ったり、緑の
清々しい牧草地の傍らなど、変化のあるルートである。
そのあと、カフェで地ビールかベルギー・ビールなどをいただくのが〆になる。

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            左から、オーヴァルのトラピスト、
            マレツーの修道院ビール、
            特徴あるグラスのクワック。
            上記カフェではないが、いずれも
            ベルギー・ビールの逸品。

   
         

            
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by didoregina | 2010-10-25 09:34 | ハイキング | Comments(8)

フラメンコ・オペラ El Greco de Toledo

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2010年10月21日@Park Theater Eindhoven
El Greco de Toledo door Eric Vaarzon Morel
regie: Javier Lopez Piñon,
Eric Vaarzon Morel (flamencogitaar),
Eric Vloeimans (trompet)
Geronima Xenia Meijer (mezzosopraan),
El Greco Maarten Engeltjes (countertenor),
Carmelita Ginesa Ortega (flamencozangeres),
Juan/Filipo II Carlos Denia (flamencozanger),
Alma Eli la Truco (flamencodanseres)
strijkkwartet o.l.v. Oene van Geel

フラメンコ・オペラと銘打っていることと、割とひいきのオペラ歌手のクセニア・メイヤー(MS)と
マールテン・エンゲルチュス(CT)が出演するというので、興味を持った。
8月からオランダ国内の市立劇場を巡業しているが、TVでも紹介されたので、結構客の入りは
よかった。
客層は、普段のオペラとは全然別のようだ。また、わたしが行くような、地味なコンサートに
来る渋い客層とも異なる。おしゃれな若い人が多くて、カジュアルな華やかさが会場には漂う。
いかに、普段のコンサートに来る客にはおしゃれな人が少ないかが、よくわかった。

舞台中央に、フラメンコ・ギタリストでこの作品の作者(コンセプト、歌詞、音楽)エリック・
ファールゾン・モレルが座り、彼の左側にコントラ・バス、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリン、
トランペットの順に弧を描いて楽隊が控える。
反対側に4人の歌手のための椅子代わりの立方体の台が置いてある。

フラメンコ・ギターが鳴り出したとたん、「あちゃ~」と思った。「しまった、これは、、、」とも。
マイクロフォンを通してびんびんにPAを利かせたサウンドは、不自然に大きく響き、耳をつんざく。
なんで、こんなに趣味の悪い音響にしなければならないのか、皆目わからない。自然なアコース
ティックだけでは、この会場には無理なのか。
フラメンコ・ギターだけならまだ我慢できたかもしれないが、PAを通した弦楽の音ともなると、もう
理解不能だし、クラシックの歌手の声もマイクを通すとまるでミュージカルのようにしか聴こえない。

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      10年くらい前までは、モーツアルトを歌ってたのに、最近は
      スペイン・バロックCDによく参加してるクセニア・メイヤー。
      エル・アイレ・エスパノールとかアドリアン・ファン・デル・スプールの
      ラテン・バロックに活動の場を見出したようだ。
      今回は、気位の高い貴族で、エル・グレコの愛人役。

エル・グレコとヘロミナ役のクラシック歌手の歌う部分の歌詞はオランダ語である。
それがまた、安手のミュージカルみたいな印象で、耳障りがよくない。
歌詞は、当時の神秘思想家アヴィラのテレサやフアン・デ・ラ・クルス、エル・グレコ自身の手記など
から取られたものだが、オランダ語と音楽の響きが美しくかみあっていない。というより、旋律の付け
方がクラシックっぽくないから、どうしてもミュージカル調で安っぽいのだ。オペラの作曲としては、
非常に稚拙である。

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      フェリペ2世役とジプシー娘で絵のモデルのカルメリータ役は、
      フラメンコ歌手がスペイン語で歌う。発声法がクラシックとは
      まるで違うし、独特のアラブっぽいヴィヴラートの響きが迫力ある。

舞台に字幕は付かないが、プログラム・ブックに歌詞対訳が付いている。しかし、歌の部分は
非常に少ないのである。断片を繋ぎ合わせている構成なので、場面が変わったことを示すため、
そのつどバックグラウンドと状況説明が、縦長のスクリーンに映し出される。かなり長い文章で
読むのに疲れるくらいだ。例えば、カトリックの宗教裁判や異端尋問の厳しさとか、カルメリータと
ヘロミナとのエル・グレコをめぐるジェラシーとか、歴史的背景とか。。。。

全部で8場になっていて、トランペットやギターの独奏に、歌、そしてフラメンコ・ダンスが各々
ほとんど相互関連なく登場する。フラメンコ・ダンス付き歌謡ショーみたいなものである。

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        場面展開だけは多いが、その8場の構成がいずれも同じで
        退屈。後半は眠くなってしまった。
        フラメンコ・ダンスはエネルギッシュだし、フラメンコの歌も
        味わいがあるが、どれも同じように見えたり聴こえたりする。

これをオペラと呼ぶのは、相当無理があるような気がする。
フラメンコ・オペラというコンセプトとしては、どっち付かずで、寄せ集めとしか思えない。
作曲も構成も詰めが甘すぎる。
クラシック・オペラ歌手とフラメンコ歌手の両方を出す、その必然性も効果もあまり感じられない。
個々の歌手やダンサー、器楽奏者は皆素晴らしい熱演で上手いのに、非常に残念だ。

トランペットが、まるで、笙やフルートやサキソフォーンやクラリネットに似た様々な音色を出せる
というのにはびっくり、感心した。

しかし、ショーは盛り上がりを見せ、わたし以外の観客は興奮しまくり、最後はブラボーの嵐だった。


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         秋らしい葡萄蔦葉の泥大島。
         地色が地味なので、小物を明るめに。
         クリーム色の半襟、帯、
         オレンジ色の帯揚げ、
         ミント・グリーンの帯締めは伯母が組んだもの。
         桜皮の草履型下駄。鼻緒は印伝。

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         洒落袋帯は、ちょっとメルヘン調の山模様を
         織り出したもの。
         錦秋と花木がいろいろなので春と秋に使える。
         地味過ぎるコーディネイトかなと思ったが、
         終演後、コートを着ていると、見知らぬ人が
         わざわざ寄ってきて「素晴らしい。褒めずには
         いられません。どうもありがとう」と言うので
         気分をよくした。
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by didoregina | 2010-10-24 12:06 | オペラ実演 | Comments(4)

Birtwistle The Minotaur

c0188818_15425135.jpgBirtwistle - The Minotaur  (2008年)

The Minotaur: John Tomlinson,
Theseus: Johan Reuter,
Ariadne: Christine Rice,
Snake Priestess: Andrew Watts,
Hiereus: Philip Langridge,
Ker: Amanda Echalaz

Antonio Pappano The Royal Opera Chorus,
The Orchestra of the Royal Opera House

こういう現代もの・新作オペラのTV放映は、もちろんBravaである。


新作オペラには、興味津々だし、同時代人として立ち会うのが義務、とも感じるので、なるべく
見るようにしている。この作品は、初演当時BBCでも放映されたが、里帰り直後で時差ぼけのため
見れなかったのだ。

ギリシャ神話から題材をとり、登場人物も神話そのまま、という現代・新作オペラでは、5,6年くらい
前にモネ劇場とオランダのナショナル・レイス・オペラの共同プロだったThyesteというのを思い出す。

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        作曲家のヤン・ファン・フライメンは、オペラ上演の半年前に
        亡くなり、舞台を見ることがかなわなかった。

『ティエスト』は、教育的見地から、古典ギリシャ語を中学で習い始めた子供を連れて見に行った。
そして、オペラ実演初体験の子供たちを、少々びっくりさせてしまったのだった。
それは、不協和音ととんでもなく飛ぶ旋律とでできたヒステリックな音楽に、カニバリズムというタブーを
中心にした物語という、ギリシャ神話を現代に蘇らせるのに不可欠な要素で成り立っていたのだ。
子供たちは、結構面白がってはいたが。
オペラとしては、登場人物が多くて、その係累が複雑怪奇なので、主要人物の描写に深みがなく、
音楽の印象もヘンだったという以外はあとに残らない。はっきり言って、出来はイマイチだった。
新作を鑑賞して義務感を果たした、という程度の満足感しか得られなかった。


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          ミノタウロスの異父姉アリアドネは、サロメみたいに
          自己中心的で、それが魅力。

しかし、この『ミノタウルス』(と勝手に日本語題名を付ける)のほうは、『ティエスト』とは、かなり
異なるアプローチのオペラだった。
人間の哀しみ、欲望、絶望、希望などを大真面目に見せ聴かせる。スケールの大きなものだった。
そして、けっこう深い感動が得られたのだった。

その成功の要因を探して出してみよう。

ギリシャ神話や悲劇を題材にすると、ともすると背後関係・人間関係がややこしいので、説明的に
なりがちである。でも、説明的な部分(出生の秘密や事件の由来)を簡潔な英語の歌で語らせて、
神々のおもちゃにされる人間の存在の哀れをストレートにぶつけてくる、という作りのリブレットがとても
上手く出来ている。
そして、それに合わせた音楽も、めちゃくちゃ聴きにくいというものではなく、おどろおどろしさの程度も
R.シュトラウスに通じるくらいに抑えてある。ライト・モティーフというほどでもないが、底に流れる旋律に
『サロメ』を思わせるものがあった。

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         クレタ島に着いた、アテネからの生贄の男女。
         その中に王子テーセウスも加わっている。
         舞台装置は簡潔で、海や水平線、浜辺など単純な
         造形なのに、効果抜群。

人物造形も力強く、性格描写がはっきりしている。歌手も上手い。

ミノタウロスには、アステリオスという美しい響きの名前がちゃんとあることを初めて知った。
タイトルは、半牛半人の化け物であるといういわば蔑称のミノタウロスだが、オペラでは、皆、彼の
ことをちゃっと名前で呼ぶのだった。それが、まず感動に繋がる一つのラインをなす。
そう、ミノタウロスも、半人の部分で、考え、悩み、夢を見るのだ。
迷宮に閉じ込められ、生贄を嬲り殺すというケモノの部分の彼は、血に飢えた呪われた化け物だ。
しかし、夜になると、夢の中で人間としての苦悩を感じる。非人間と人間の間をさまよう姿が哀れだ。
夢には、鏡がうまく使われている。全身を映す大きな鏡の中に、テーセウスやアリアドネの幻影が
現れる。この舞台効果、物理的にすごくよく出来ている。

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         迷宮は、闘牛場もしくは闘技場みたいなアリーナで
         スペクタクルの観客=コロスが扇動し強要する殺戮。
         

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         死体に群がるカラスもしくはハゲタカのようなモンスター。

テーセウスは、生贄にさせられる子供たちを救いたいと、捨て身で義侠のかたまりみたいな男だが、
出生にまつわる秘密を、本人が想像するところによると、父親はポセイドンであるから、ミノタウロス
とは異母兄弟かもしれない。

迷宮に閉じ込められているのはミノタウロスだが、閉塞感はアリアドネの方がかなり強く持っている。
だから、血塗られたクレタ島から逃げ出したい、呪われた家系から解き放たれたい、との願いが強い。
そこに現れたテーセウスは、アリアドネにとって格好の鴨ネギだ。
テーセウスを助けてミノタウロスを殺し、迷宮から戻ったらいっしょにアテネに旅立つ、という強迫観念に
駆られる。テーセウスを誘惑するために、まるでサロメのように男の唇をしつこく求める。

c0188818_1792881.jpg

           神託で、迷宮に入っても生きて戻る方法を教えられる。      
           そして、その後も暗示される。「アリアドネはテーセウスと
           共にアテネに旅立つ」と。

この神託の場面も、緊張感があっていい。はらはらどきどきのリブレットが上手く出来ているのだ。
ギリシャ語の間投詞や感嘆詞を組み合わせてできている巫女の歌も音楽的に面白い。
神託の暗示は、いかにも暗示的だ。アリアドネはクレタ島からアテネに向かうが、ナクソス島に
置き去りにされるという、皆が知っているアリアドネのその後は提示されない。ぬか喜びさせる神託で
あるところにひねりが効いていていい。

c0188818_17203045.jpg

           武器を持ったテーセウスに殺されるミノタウロス。

死ぬ間際になって初めて、人間の理性や言葉を得たミノタウロスが、トムリンソンの迫真の演技と
しみじみとした歌で感動を呼ぶ。
肉体の死に瀕して人間の魂が出現する。死は、だからある意味で呪われた身の救済であったのかも
しれない。
しかし、そのミノタウロスの死体にも、舞い降りたカラスが情け容赦なく肉ををついばむ。
ブラッドという、叫びを上げながら。死のしんみりした抒情性は、叫びで消されるのだ。これが、
またしても、サロメの死を宣告するヘロデの最後の言葉を思い起こさせる。


c0188818_17315457.jpg

          オペラでミノタウロスがかぶってたマスクは、
          スティールのメッシュみたいで、軽そうで声が通るようになっている。
          この写真のマスクは、長男が中2の時、学校のギリシャ劇で
          ミノタウロス役を演じたとき、作ったもの。
          風船を膨らませた上に新聞紙を張って形作った張りぼて。   
          オペラを先に見ていたら、アイデアが拝借できたのに。
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by didoregina | 2010-10-22 10:37 | オペラ映像 | Comments(4)

モーツアルト『牧人の王』 ザルツブルク2006年

ザルツブルクでは2006年に、モーツアルト生誕250年を祝って、オペラ全22作が上演された。
22作ともなると、ごくごく若い頃(11才とか)の作品や、あまりにマイナーで今後50年間は
上演されることがまずないだろうと思えるような作品も含まれる。
それらが、全部DVDになってセット発売された。バーゲン価格で160ユーロほどだ。それなのに
わたしは買う気がなかった。TVでほとんど見ることができるからだ。
Bravaでは毎日のようにモーツアルトのオペラが放映されるので、ダ・ポンテ3部作ともなると、
DNOやROHやグラインドボーンやマドリッドなど世界各地で上演された話題作が登場する。
そして、マイナーものは、この2006年ザルツブルクの22作品から選ばれる。(多分全部
放映するんだろうと思うが)

というわけで、『牧人の王』(もしくは『羊飼いの王様』)を見た。
c0188818_3595374.jpgWolfgang Amadeus Mozart
Il re pastore
Serenata in zwei Akten KV 208
Text von Pietro Metastasio
Regie, Leitung Thomas Hengelbrock
Ausstattung Mirella Weingarten

Alessandro Kresimir Spicer
Aminta Annette Dasch
Elisa Marlis Petersen
Tamiri Arpiné Rahdjian
Agenore Andreas Karasiak
Geiger Sebastian Hamann

Michael Behringer, Hammerflügel
Balthasar-Neumann-Ensemble
Koproduktion der Salzburger Festspiele
mit dem Beethovenfest Bonn und dem Bremer Musikfest
Premiere: Salzburger Festspiele
Juli 2006, Alte Aula der Universität

このオペラは、ヨハネット・ゾマーが主役で、ジェド・ウェンツ指揮のCDを持っている。

モーツアルトらしい音楽は美しさに溢れているが、劇展開にはらはらどきどき要素がちょっと
足りなくて、エンディングは全く盛り上がりに欠けるので、完成度としては初期の作品にまま
見られる弱さが露呈しているような気がする。
そして、どうも全体にソプラノ・パートの音域を高く作曲してあるようで、CDでもDVDでも高音部が
やたらきんきんと響く。だから、タイトルほど牧歌的でのどかな感じはしない。
アミンタ役のアネッテ・ダッシュ(DVD)もゾマー(CD)も、どうもいつものようなまろやかな喉を
聴かせてくれないのが残念だ。
その代わり、エリーザ役にはコロラッチューラを聴かせるアリアもあり、DVDでもCDでも歌手が
なかなかいい味を出している。


エリーザのアリア Alla selva, al prato, al fonte

ザルツブルクの舞台は大学の講堂で、奥行きがないから、人形芝居のような平面的なハコの舞台を
設置した劇中劇仕立てである。
これが、なかなかシンプルでしゃれている。
アリアを歌う人物の動きも、単純化・様式化され、まるで『サウンド・オブ・ミュージック』の人形劇の
羊飼い人形のような動きになっているのが、キュート。
演出は、指揮者のヘンゲルブロックが担当。この人、相当にいいセンスの持ち主だ。モーツアルトの
音楽劇をどうトータルに上演すべきかのビジョンがしっかりしている。

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        女性は白と黒の衣装。衣装についた風車をまわしたりする。

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        アレッサンドロの乗る戦車は、ヘレニズムの時代考証を上手く
        換骨奪胎、シンプルにアレンジしていると思う。
        そして、きっと能の作り物の乗り物をヒントにした動かし方だ。

しかし、アレッサンドロ役の歌手の歌唱が、どうも、あんまり、、、なのである。アジリタなんて、
聴くに堪えないほど。

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        ヴァイオリン・オブリガードは、薄いカーテンの奥からシルエットのみ。
        カーテンだけというシンプルな装置が利いている。

どうやら、ヘンゲルブロックの美意識はLess is more にあり、それが洗練されているので、
成功している。今後にも期待したい。


さて、2週間前の日曜日、マーストリヒトの街中に羊の群れが出現した。

c0188818_4512560.jpg

        アーバン・シェパードと牧羊犬

教会でのコンサートのあと、川沿いを歩いていると、ちょうど羊の移動にぶつかったのだ。

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        観光客も街の住人も皆、驚いて、喜び、カメラを構えた。

羊の群れは、川沿いにずっと我が家の近くまで行くから、わたしは、かなり速度の速い
羊の後をいやでも追いかけることになった。糞が沢山あって、歩くのに難儀した。

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        花壇の花なんか食べたりしてるヤツもいる。

いい空気、美しい自然の中が仕事場の羊飼いの境遇は最高だ、とアミンタがアリアで歌うが、
こんなにいい天気だったら、本当に最高。
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by didoregina | 2010-10-20 22:00 | オペラ映像 | Comments(8)

Plat Prefere 3シーズン目に突入

ベルギーのTVシェフ、イェルン・メウスの番組Plat Prefereの待ちに待った新シリーズが
昨晩からベルギー・オランダ語放送局Canvasで始まった。

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        料理番組には、抱き合わせの料理本がつき物。
        これは第一および第二シリーズの放送分をまとめたもの。
        レシピーは漏れなく、レイアウトやデザインも普通の料理本とは
        一線を画し、番組収録のこぼれ話、裏話も満載で、
        本として純粋に楽しめる優れもの。
        第三シリーズ放映分の本もPlat Prefere 2として発売される。

文学、スポーツ、音楽、映画、政治など各界の有名人で故人になった人のお気に入り料理を
故人にゆかりの場所で、故人と個人的なつながりの深い人のために作る、というコンセプトだ。
あまたあるTVの料理番組の中でも、非常にユニークであり、食材もこだわりを持って探し求める
という姿勢も、ジェイミー・オリヴァーやヴァレンタイン・ワーナーともまた異なるキュートな魅力も
ポイントが高い。見逃すと絶対後悔するという、TV番組としてはエキサイトできる貴重な番組だ。

イェルンは9月から毎夕、ベルギー・オランダ語放送第一チャンネルで、普通の料理番組も持つ
ようになったらしい。

今までのPlat Prefereシリーズは10回で、今期シリーズも、マレーネ・ディートリッヒ、ルド・クック、
マーロン・ブロンド、ジミ・ヘンドリックス、エヴァ・ペロン、ルイ・ネーフス、マーヴィン・ゲイ、ボードワン
前国王、アルフレッド・ヒッチコック、ルチアーノ・パヴァロッティをテーマとする。
(ちなみに、第二シリーズは、アルトリッド・リンドグレン、アルマン・ピン、ボブ・マーレー、シャルル・
ド・ゴール、ブルース・リー、グレタ・ガルボ、トーン・ヘルマンス、エルジェ、フランク・シナトラだった)

テーマの人選には、第一シリーズからずっとはっきりしたラインが感じられるが、今回も同じ路線で
進む。なかなかにい人選だと思う。知らない名前が出てきたら、それはベルギーでは著名だが外国
ではそうでもない人だと思ったらよろしい。


           英語版トレイラーを発見!
           今後は英語圏にも進出か?


昨晩は、マーヴィン・ゲイがテーマだった。

まず、故郷のワシントンDCにモータウンの女性歌手マーサを訪ねて、いっしょに地元名物で好物
だったカニのフィッシュ・ケーキ・バーガーを食べる。特産の小ぶりのブルー・クラブというカニの身を
バーガー状にしたものだ。タルタルソースを付けて食べるファースト・フードである。

続けて、ワッフルにフライド・チキンを乗せたソウル・フードを食べる。ワッフルは、ベルギー・ワッフル
そのもので、メープル・シロップをワッフルにだけかけるのが美味しいという。

かの地でも、ベルギー・レストランは増えているらしく、そこの厨房を借りて、ベルギー料理を作る。
ワーテル・ゾーイという名物の魚シチューである。ムール貝をビールで軽くゆで、実だけ抜き出し、
地元産のキャット・フィッシュとジュリエンヌに切った長ねぎとにんじんと一緒にクリーム煮にしたものだ。
それを、マーヴィンが通った教会の日曜礼拝後のもちよりランチに持っていった。
皆に勧めて、食べてもらうと、信徒の方には好評の味だった。

マーヴィンは、ベルギーのオステンドにも住んだ。
だから、イェルンはオステンド沖の北海のタラ漁船に乗り込み、タラ漁を体験する。北海の荒波に
音響技師やカメラマンが次々と船酔いするという場面もあった。
捕れたタラは、即、皮を引き4枚に下ろして、腹側の身、背でも尻尾に近いほうなどを切り身にして
バターミルクでジャガイモと共に煮込む。それを全てマッシュしてパセリのみじん切りを加える。
このブランダード風の食べ物に、北海の小エビを散らし、その上からナマのカリフラワーを下ろした
もの(!)をかけるとイェルン風になる。
これは、ぜひ試してみたい。

最後は、マーヴィンがオステンドで住んだホテルのオーナーに、マーヴィンが週に一度は食べたという
チキン・カレーを作ってもらう。
とり一羽を裁いてバターで焼く。取り出したなべにたまねぎを入れて炒めて、鶏がらのストックで再び
鳥を煮込むが、普通のカレー粉を一瓶半分以上加える。みじん切りのトマトとりんごを加えるのが
ソウル・フード風で、マーヴィンお気に入りのチキン・カレーになる。

故人ゆかりの人たちとお気に入りだった料理を通じて故人を偲ぶ、そして、その土地の名物料理や
食材を組み合わせる、というセンチメンタル・ジャーニー的形式の料理番組だが、イェルンの
フラームス弁丸出しの憎めないキャラが、見ていて一番心和むのだ。
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by didoregina | 2010-10-20 09:08 | 料理 | Comments(2)

La Gazzetta   2010年秋の帽子

秋晴れの裏庭。ブドウ棚の葡萄がぷっくりと実り、触るとぱちんと弾けそう。

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自家製葡萄酒を作ったこともある。10リットルほど出来たが、全て手作業だから大変だった。
メルロー風の甘みのある味。ワインというより、葡萄酒と呼びたい。

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空気はもう冷たいから、帽子の季節到来だ。
この秋の新作帽子は、白地に各国の新聞記事がプリントされた帽体を使って、変形の
ベレーにしてみた。

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名づけて、La Gazzetta、イタリア語で新聞。ロッシーニのオペラ・タイトルにもある。

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ドイツ語、日本語、フランス語の文字や写真のコラージュ風プリントだ。

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右側に大きなくぼみのあるアシンメトリーな形。アクセントに黒の皮を二本付けた。
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by didoregina | 2010-10-18 20:17 | 帽子 | Comments(2)

『カストールとポリュックス』『ゾロアストル』 ラモー二本立て

ラモーの『ゾロアストル』@ドロットニングホルム歌劇場をようやく観ることができた。(Bravaで)

c0188818_21243531.jpgKoor en orkest van The Drottningholm Theatre
en Les Talens Lyriques
指揮:Christophe Rousset.
演出:Pierre Audi
衣装・装置:Patrick Kinmonth
振付:Amir Hosseinpour

ゾロアストル:Anders J Dahlin,
アブラマーヌ:Evgueniy Alexiev,
アメリート:Sine Bundgaard,
エリニース:Anna Maria Panzarella,
ゾビール:Lars Arvidson,
ナンバノール:Marcus Schwartz,
オロマゼス:Gerard Théruel,
セフィー:Ditte Andersen

2006年にスウェーデンのドロットニングホルム宮廷劇場(世界最古の王室劇場とか。名称が長い
から略記できると便利なんだが)で上演されたもの。
このプロダクションは、作曲家、指揮者および楽団(の一部)、演出家、衣装・装置担当、
振付師が同じだったネーデルランド・オペラ(DNO)による『カストールとポリュックス』(2008年)
とどうしても比べたくなる。

c0188818_2212143.jpgCastor et Pollux
Jean-Philippe Rameau 1683 1764
orkest:Les Talens Lyriques
Koor van De Nederlandse Opera
指揮:Christophe Rousset
演出:Pierre Audi
衣装・装置:Patrick Kinmonth
照明:Jean Kalman
振付:Amir Hosseinpour

テライール:Anna Maria Panzarella
フェベ:Veronique Gens
クレオーネおよびフェベの侍女:Judith van Wanroij
カストール:Finnur Bjarnason
ポリュックス:Henk Neven
ジュピター:Nicolas Testé
大神官:Thomas Oliemans
メルキュール:Anders J. Dahlin


似てるところが多いこの二つのオペラ・プロダクションの違いを見ていこう。

まず、上演会場の箱の大きさと舞台インフラは、対照的と言ってもいいくらい違う。

ドロットニングホルム宮殿劇場は、バロック時代の劇場だから、舞台間口が狭く、高さもあまり
ない。ハイテク設備などは望みようもないだろう。襖のようなパネル式背景装置に、もしかしたら
ろうそく照明か、と思ったくらい古色蒼然とした雰囲気で、シャンデリアの光も温かみがあってよい。

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      舞台装置はほとんどない。宙乗りも奈落からのせり上がりも、いかにも
      バロック時代風のケレンミがある、という程度で小さい舞台に収まっている。


反対に、アムステルダム歌劇場は、1980年代に出来たモダンな劇場で、舞台面積は世界で2番目
に大きい(自称)という。(世界で一番舞台が広いのはいったいどこなのか知りたいと思っている)
ハイテク設備も(多分)万全なんだろう。オーディ演出の舞台では、炎や水を大量に使用することが
多い。電動装置も多用されるし、どんなモダン造形も舞台に収まる。

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      アムスの広い舞台を生かして、宇宙のような幻想的雰囲気。
      個々の装置は大きく、縦横無尽に空間が活用されている。


オーディの演出チームによる舞台は、ヴィジュアル的に全体の統一ラインがピシッと決まっていて、
逸脱することがない。
だから、一目で、ああオーディらしいなと思うことが多い。衣装デザインやヘア・メイクも全ての登場
人物は大体同じだが、色で変化をつけ、善悪を表現したりする。両作品とも、ダンサーやコーラスに
いたるまで全員のヘアスタイルが統一されている。


照明担当が両プロダクションとも同じ人かどうか、確かめられなかった。
しかし、ドロットニングホルムの方は、舞台に暗い部分が残されているのが目に付く。まるでろうそくの
ようなオレンジがかった色合いから、蛍光灯のような青白い色まで、シーンに応じての変化が絶妙。
しかも、人物の顔半分はいつも影になっているのが、HIPっぽく奥ゆかしい。この影の付け方は、とても
気に入った。

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        HIP的要素が、照明効果にも生かされている『ゾロアストル』


話の筋は、当然ながら全く異なる。しかし、オペラとしての展開には似たところもある。
善悪の対立、憎悪と嫉妬、魔法、犠牲、愛する者の死と魔界からの奪還、和解、ハッピーエンド
という流れである。

フランス・バロック・オペラは正式名トラジェディ・リリックだから、イタリア・バロック・オペラと異なり
聴かせるアリアはほとんどなくて、芝居の台詞のようにしっかりした歌詞にフランス語の抑揚に
合う音楽を付けたレチタティーボみたいなのばかりで成り立っている。歌ではなく器楽演奏で音楽を
聴かせるというのが基本姿勢だから、ヴィジュアル的に変化を持たせるためバレエが多用される。

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        地獄の魑魅魍魎たちは、モダンな虫みたいな動き。 
         (『カストールとポリュックス』)

そのバレエというかダンス振付は、両方ともアミール・ホセインプールだ。
この人の振付も一度見たら、すぐにわかる。男女2組であっても踊りのパートは同じで、振りは対称
形になっている。手の動きで感情を表すことが多く、それは手話を連想させるようなあわただしい
動作だ。
『カストールとポリュックス』のほうは、双子が主人公だから、ダンスも相似形で、星座をモチーフに
使った振りの形が見てとれる。

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        双子のカストールとポリュックスをダンサーが表現。

輪郭のはっきりした動きのダンスだから、『ゾロアストル』では、踊りのシルエットを影絵のようにした
シーンがあって、ホセインプールの振付の特長が最大限に生かせていた。
また、『ゾロアストル』は、劇場の特徴を生かすため、HIP要素がところどころ演出の味付けに
加えられているのが面白かった。たとえば、ダンスにもバロック・ジェスチャーの所作が少しだけ
入っている。

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        この写真の次のシーンでは、主役歌手がコーラスたちに各々
        異なるバロック・ジェスチャーを付けていくのが面白かった。
        (『ゾロアストル』)


歌手では、おなじみアンナ・マリア・パンツァネッラが両方に出演しているが、この人、カマトトの
役(テライール)よりも、悪女役(エリニース)のほうがずっとキャラクターに合っていて、
印象に残る。別の言い方をすると、テライールは、もっと若くて可愛い清純派歌手に歌ってもらい
たい。

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        テライールとフェベ (『カストールとポリュックス』)

悪役といえば、ヴェロニク・ジャンスの、心を嫉妬に燃えたぎらせるフェベ役が意外で、上手かった。
ポリュックス役のヘンク・ニーフェンはオランダ人若手バリトンだが、ルックスはニコラス・ケージの若い
頃みたいだが、もうちょっと可愛い。苦悩する役に声質も合っている。今後も期待できる。
カストールは正反対のキャラクターだから、これもぴったりのテノールだったが、トピ君だったら
どうだろう、と考えた。
ザラストル役歌手は、悪くはないが、やはりトピ君が歌ったら役にぴったりではないかと思った。
その他の歌手も皆よかった。


書き忘れるところだったが、両プロDVDの最大の違いはカメラワークだ。
『ゾロアストル』のほうは、撮影用カメラが多角的に使われていて、舞台後ろから前を見たところや
天井から舞台を映したりしている。冒頭の登場人物紹介クレジットにもTVディレクターの名前が大きく
出ているのと、しょっぱなから変わったカメラアングルが使われるので、「ああ、これはまるで
『ザイーデ』みたいに落ち着かなくて、こうるさいカメラアングルになるのか」と心配した。
それほど嫌味な使い方はしていなくて、舞台装置がないに等しいドロトニングホルムのプロダクションを
DVD化するのだから、このくらいの味付けを加えても許せるという程度のものだった。
『カストールとポリュックス』は、生の舞台で見たらもっと面白いだろうな、と思わせる、シノマト
グラフィー的要素のまるでない、のっぺりと平面的で芸のない映像だった。
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by didoregina | 2010-10-15 23:27 | オペラ映像 | Comments(6)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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