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洞窟で聴くCanto Ostinato

8月に入ってから暑気は去り、9月も近くなると秋の気配が忍び寄る今日この頃である。
日本から入るニュースで連日見かける、熱帯夜とか熱中症という言葉の意味を体感することは
不可能だ。

夏の間は日が暮れるのが遅い北ヨーロッパでは、野外コンサートが盛んに開かれる。
雲と雨に閉ざされる長い秋冬の到来がそう遠くないことを肌で感じながら、夏の陽光の名残を
惜しむ。

8月最後の日曜日、ファルケンブルクの野外劇場で開かれたピアノ・リサイタルに出かけた。
オランダ人ピアニスト、イーヴォ・ヤンセンによる「カント・オスティナート」の独奏会である。

シメオン・テン・ホルトというオランダ人によるこの鍵盤楽器のためのミニマル・ミュージックは
70年代に数年かけて作曲されたもので、通常2台または4台のピアノで演奏される。

ミニマル・ミュージックは嫌いではないので、このコンサートのことを知り喜んだが、一緒に
行ってくれる物好きはあまりいそうにない。
ところが意外にも、誘った相手Tは大乗り気で、「行く、行く!」と二つ返事ではないか。
この曲は、彼女の夫ともども好きな曲であり、以前コンサートに行こうとしたがキャンセルに
なったので、一度生で聴いてみたいと思っていたと言う。

天気ははなはだすぐれない。
しかし、意地でも着物で行きたい。浴衣なら雨に濡れても大丈夫だ。
気温は昼間でも15度以上には上がらない。雨コートにウールのショールを重ねた。
Tは、私の分のクッションと毛布も持参し万全の構えだ。

雨天決行、しかし、ピアノが濡れたら困るので、その場合は屋内で演奏ということだった。
野外劇場は、斜面を利用したひな壇の観客席とくぼ地のステージでできている。
その奥が、この地方に多いマール石の洞窟になっていて、雨天にはそこが会場になる。

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       竺仙の綿紬、裏表異なる模様の籠染め
       表は石畳のような模様で、裏はもっと細かい幾何学模様。
       長く箪笥の中にあった反物を、去年仕立てに出し、
       この日が初おろし。
       なんと、最後の籠染め職人さんが去年廃業したので、
       現在この技術は途絶えてしまったという。
       綿紬は、竺仙HPによると、5月から初秋まで着用可。


「カント・オスティナート」は、瞑想的というよりは機械的に聞こえる、シンプルなメロディーに
反復が異常に多用された音楽で、その反復の長さやタイミングは奏者が決定する。
だから、長い場合には演奏時間は4時間にも及ぶという。
今回は、ピアノ1台のソロ演奏なので、複雑に絡み合うメロディーをいったいどうやって
表現するのかと思ったら、鋼のように強靭な集中力で、きっかり1時間15分、休憩なしで
2台のピアノによる演奏に近いものを聞かせてくれた。


2台のピアノ・ヴァージョンの出だし部分。

歯を食いしばり、時にはカウントしているのか、自らを励ましているのか、口を動かしながら、
モティーフとなるメロディーの微妙なヴァリエーションを辛抱強く演奏し続ける。
聴くほうも、だから、その集中力に圧倒され、ミニマル・ミュージックといえども気が抜けず、
リラックスするどころではなかった。どちらも真剣勝負なのである。
コンピューターやシンセサイザーなどの機器を使って、テンポに揺らぎも見せずに反復しつつ
音を重ねていく音楽の録音ならいくらでもあるが、生身の人間が演奏するのは大変だ。

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          楽譜の最後のページ。

ピアニストのイーヴォ・ヤンセンは、オランダ人らしい長身と体格のよさで、音楽家というより、
まるで柔道家かなにかアスリートのように見える。演奏し終わると、いかにも消耗し尽くしたという
感じで、しかし満足な表情を見せた。
演奏に対峙した聴衆も同様に、1時間15分にわたり強いられた緊張を解かれ、思わず安堵の
吐息が漏れた。

演奏会後、CDは飛ぶように売れていた。
でも、この音楽、CDを聴いても、今日のような緊張感に浸れるのだろうか。
耳に心地よい、仕事の邪魔をしない単なるバック・グラウンド・ミュージックになるのではないか。
しかし、Tの意見は異なる。生演奏でなくともこの音楽は、集中して聴かざるを得ないはずだと。

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       CD販売兼サイン会でのイーヴォ・ヤンセン(左)
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by didoregina | 2010-08-31 22:22 | コンサート | Comments(4)

ユトレヒト古楽祭のバロック・ジェスチャー・シンポジウム

8月27日から10日間にわたって開催中のユトレヒト古楽祭にでかけた。
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        今年で29回目の古楽祭はその世界では老舗。

弱冠38歳のベルギー人グザヴィエ・ファンダムがフェスティヴァル監督に就任して最初の
古楽祭は、通のための地味な音楽という従来のイメージを変えるのに成功したようだ。

まず、フェスティヴァル本会場として、町の中心に聳える、ユトレヒトのシンボルともいえる
ドム教会が使用されたことで、普通の観光客や一般市民にもPRが行き届いた。
教会の回廊には、インフォメーション・センターやケータリングが設置され、お祭りらしさを
盛り上げる。
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教会の回廊に囲まれた中庭には、ミニ・ステージが設置され、無料のフリンジ・コンサートも
開かれる。
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       多分日本人によるバロック・リコーダー演奏

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       皆、思い思いの場所で音楽を楽しむ。
       中庭や回廊には色とりどりのクッションが用意されていて、
       リラックスして音楽を聴くことができる。

私が聴きに行ったのは、28日午前のバロック・ジェスチャー・シンポジウムと、ラ・リゾナン
ツァとロベルタ・インヴェルニッツィのコンサートだ。

今年のテーマはずばり「ルイ14世」。フェスティヴァルのテーマをここまで限定したのは初め
ての試みという。だから、古楽祭だが、中世およびルネッサンス音楽は抜きである。しかも、
ルイ14世の時代の音楽にほぼ限ったプログラミングだから、おフランスものが中心となる。

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シンポジウムのテーマも「フランスのバロック・ジェスチャー」を掲げ、3日間その道の専門家
が相当濃い内容のレクチャー、討論会、ワークショップを繰り広げる。
初日午前の部は、一般の音楽愛好家向けの(といってもテーマがテーマだから濃い人が集まる)
イントロダクションだったが、やはりどうして、なかなかのものだった。

まず、バーゼルのスコラ・カントルム教授のシャロン・ウェラー女史による講義では、キケロ
から19世紀にいたるまでの様々な文献からの引用を元に、舞台でのジェスチャーの基本(意味や
様々な約束事やタブー)を教わった。
その引用文献の量には、素人をたじたじとさせるほどすさまじいものがあったが、レクチャーは
ユーモアを交え堂に入ったもの。パワーポイントで文献の挿絵も見せてくれるが、壇上に今年の
シンポジウムの元締めジェド・ウェンツを招き、口授で実際に彼に動きをさせてみせる。
しかし、内容が広範囲に及ぶので、少々単純化・凝縮されすぎ、という感じだった。

その次のレクチャーのほうが、よっぽど面白かった。
デン・ハーグ王立音大でも教鞭をとるバロック・ダンス研究家でもある演出家、シグリッド・
トホーフト女史による実地レポである。
何のレポかというと、なんと昨年ヘンデル・イヤーのためにカールスルーエのバーデン州立
歌劇場で上演された、ヘンデル「ラダミスト」の演出覚書および裏話なのであった。

この「ラダミスト」で、トホーフト女史は果敢にも、レギー・テアターが王道であるドイツの
オペラ界にその対極である歴史的上演形式(HIP)で乗り込み、その演出を世に問うたのだった。



ヒップと連呼するから、最初は何のことかと思ったが、このHIP形式での演出は、別の意味でも
実にヒップ(流行先端)だと言える。
以下、女史の講演内容から、重要なポイントを抜き書きする。

●衣装は、ヘンデルの時代に活躍したベルトッリのものを元に新たに創作。当時の銅版画を元に
デザインを起こした。登場人物の衣装の白黒で善悪を象徴させた。これはバロック時代にはシン
ボル化されていなかった近代的アイデアだが適用した。
●出来上がった衣装の色は奇抜な原色で、電灯の下では派手すぎるように感じ歌手も引けたが、
実際に舞台にかけると(ろうそくによる照明のため)実に落ち着きを見せた。
●舞台背景画は、屏風のような可動式パネルで、シートをはずして早変わりも可能。
●舞台照明は、405個のろうそくのみ。シャンデリアは普通のろうそくで、床には液体パラフィ
ンを充填した容器を置きそのガスによる光で、電気照明は使用しないこととする。(実際には、
カールスルーエ歌劇場の舞台幅が広すぎて、中央に影ができるので、そこだけ電気の照明を補った)
●HIPで重要な所作は、バロック・ジェスチャーの伝統にのっとったが、最終的には歌手の自然な
動きを重視した。歌手のほうも、所作の特訓を受けるうちに、意識しないでも歌の内容に即した
動きが自然に出てくるようになったという。
●通常、歌手が歌いながら行う所作がバロック・ジェスチャーだが、その後ろに控えるダンサーや
脇役にも音楽や歌の内容にあわせた所作を集団でさせることで、感情表現を増幅させた。

演出上、ラッキーだと思えたことは、

●カールスルーエ歌劇場は、コンクリート建築で木材はほとんど使用されていないモダンな建物
なので、ろうそくを大量に使用しても防火上の問題がほとんどない。
●フェスティヴァル用に一時的に別の建物を使用したわけではないので、歌劇場のインフラ(設備、
アトリエ、オケ、練習場)が最大限に有効活用できた。
●歌手のキャスティング以外は、すべて任せられたので、自分が思い描くトータルなHIP上演が
可能になった。
●練習場は、実際の劇場舞台と面積が同じで、練習中の小道具も本番と同じものが使用できた。
●HIP上演でろうそくの明かりだけだと、なにごとかと観客も息を詰めるように真剣に鑑賞する
ようで、客席から伝わる熱気が異なる。
●ヘンデルがロイヤル・シアターで上演した当時の「ロダミスト」プロンプトが残るので、
それを資料としてHIPが再現できた。

逆に困った点としては、

●やはりレギー・テアター全盛のドイツでは、HIPに対する一般の関心が少ないため、全編の
ヴィデオ撮影がされなかった。記念的上演なのだから、映像として残してDVD販売すべき。
(しかし、つい先だって、このプロダクションの2012年再再演が決定。次回は録画が期待される)
●チケットは、年間通しの一部として売り出されたので年間会員が優先になったため、ばら売り
チケットは少なく、ヘンデルおよびHIPに興味のあるフェスティヴァル観客には、チケット調達
が難しかった。
●組織上芸術監督の権限が大きく、指揮者と演出家の上に立つという図式のため、キャスト決定
権が指揮者と演出家にはまったくなかった。そのためバロック・オペラ専門の歌手が外部からの
2人のみと少なく、練習に骨が折れた。
●通常のオペラ上演の合間を縫って歌劇場で舞台装置を製作したため、時間上および空間上の制約
が出て、当初のプランどおりには出来上がらなかった。

結論として、

●HIPが予想外の好意をもって出演者および観客側から受け入れられたので、劇場も再再演を決定
したのは非常に喜ばしい。


四国の金丸座で、歌舞伎の金毘羅芝居を観たことがある。歌舞伎にはもともとHIPな要素が多いが、
谷崎潤一郎も「陰翳礼賛」で言うように、近代の歌舞伎座においては人工的な光を多用している
ため影の部分が少なくなり、舞台がのっぺりして見え、奥行きに欠ける印象だ。
それが、金丸座では、奉書を通したろうそくのような光を使っているので、情緒のあることこの
上ない。出し物はどうせドサ周りだし田舎の観客相手だからと馬鹿にしたような内容だったが、
劇場の雰囲気には酔えた。

ああ、2012年のカールスルーエが待ち遠しいではないか。HIPによるバロック専門歌手を取り
揃えた上演が待たれる。
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by didoregina | 2010-08-29 20:34 | バロック | Comments(12)

DNOのプロコフィエフ「3つのオレンジへの恋」

もう、ほぼ毎日のようにTVでオペラを観ている。ほとんどは、DVDになっているものを放映している
だけであるが、DVDを買わずともそれらが見られるのは有難い。

今回は、プロコフィエフの「3つのオレンジへの恋」@アムステルダム・ミュージックテアター(2005年)だ。
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musical direction Stéphane Denève
direction Laurent Pelly
sets Chantal Thomas
costumes Laurent Pelly
lighting Joël Adam
choreography Laura Scozzi

Le Roi de Trèfles Alain Vernhes
le Prince Martial Defontaine
La Princesse Clarice Natascha Petrinsky
Léandre François le Roux
Trouffaldino/Le Maître de Cérémonies Serghei Khomov
Pantalon Marcel Boone
Le Magicien Tchélio Willard White
Fata Morgana Anna Shafajinskaja
Linette Sylvia Khevorkian
Nicolette Magali de Prelle
Ninette Sandrine Piau
La Cuisinière Richard Angas
Farfarello/Le Héraut Alexandre Vassiliev
Sméraldine Marianna Kulikova

orchestra Rotterdams Philharmonisch Orkest
chorus Koor van De Nederlandse Opera
preparation Martin Wright

20世紀の音楽が好きなので、プロコフィエフはかなりお気に入りの作曲家である。
プロコの交響曲や協奏曲、バレエ音楽やピアノ曲は、19世紀ロマン派の深刻で自己陶酔的な
音楽からは一線を画す独特のクールさがあり、鋭利なナイフで切り取ったようなくっきりした輪郭が
感じられ、とにかくカッコイイのが特徴だ。今は死語になってるかもしれないが、トッポいのである。

しかし、このオペラは御伽噺のような喜劇なので、クールさには少々欠けるが、プロコの別の持ち味と
いうか彼が隠し味として使う鈍重さがあって、それもまたいいのだ。(普通の作曲家だったら、ピリッとした
シャープな隠し味を使うところだが、プロコの音楽自体がピリッとしているので、彼は逆に泥臭さを
隠し味に利かせる)

このオペラを見たことがなくても、「行進曲」テーマは、きっと耳にしたことがあるはずだ。
この「行進曲」は、とても愉快で痛快な音楽で、映画「インディ・ジョーンズ」のテーマと並ぶ傑作だと思う。

「トゥーランドット」の原作者でもあるカルロ・ゴッツィの原作を元にした、コメディア・デッラルト風の軽くて
洒落た喜劇オペラなので、ストーリー展開のテンポも小気味よい。

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メランコリーに悩み引き篭もりの王子を慰めるために催された宴会で、魔女ファタ・モルガーナを笑った
ために、王子は魔女の怒りを買い、オレンジに恋をするという呪いを掛けられる。

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オレンジを求めて砂漠を彷徨った末、やっと見つけたオレンジのうち、2つの中に入っていた王女たちは
喉の渇きで死んでしまう。

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3つ目のオレンジの中の王女は助かり、王子と恋に落ちる。しかし、目を離した隙に王女は魔女の毒針に
刺されて、鼠に姿を変えられてしまう。

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姦計と邪心に満ちた従姉妹の王女が王子と結婚しようとするが、別の魔法使いの力で悪事はばれて、
鼠になった王女も元の姿に戻り、めでたしめでたし、というストーリーだ。

ディズニーがアニメ化してもよさそうなお話で、古典的御伽噺に必要な全要素が盛り込まれている。
それを、舞台上でビジュアル化するとどうなるか。
ローラン・ペリーは、プロコの台本に実に忠実に、大真面目なファンタジーの世界を造形した。
すなわち、舞台はトランプの国で、悪い魔法使いといい魔法使いの争い、悪事の犠牲になる王女、
呪いによる王子の試練などの場面が繰り広げられるのは大きなトランプ・カードの大道具の間だ。

さほど長くないオペラで、ストーリー展開も速いし音楽も楽しく飽きさせないのだが、それだけに
演出には工夫が必要だ。アムステルダムのミュージックテアターのバカでかい舞台上を駆け巡る
登場人物とシンプルなセットは上手く調和していて、夢の世界に遊んでいるようだった。

しかし、15年以上前に観た別のプロダクションでは、もっと楽しい工夫が凝らされていた。
入り口で観客は3枚のカードを手渡された。狂言回し・進行役の役者がサッカーの審判よろしく舞台で
カードを掲げると、観客は手に持ったその色のカードを擦る。そうすると、場面にふさわしい匂いが
カードから漂うという仕掛けであった。
最初の2枚は、台所の魔女の煮る不味そうなスープの匂いと、おならの臭いだったと記憶する。
そして、最後3枚目のカードを擦ると、オレンジの中から出てきた王女にふさわしいオレンジの香りが
漂うのだった。
楽しいオペラを観てご機嫌の客の多くは、例の行進曲を口ずさみながらホールを出て行った。
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by didoregina | 2010-08-27 15:00 | オペラ映像 | Comments(6)

タン・ドゥンの「マルコ・ポーロ」

Brava局はわが道を突き進む。またまたレアもの、今度は現代オペラの放映だ。

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Marco Polo by Tan Dun (1957 - ) @DNO (2008)
musical director Tan Dun
director Pierre Audi
set and light design Jean Kalman
costumes Angelo Figus
orchestra   Nederlands Kamerorkest
chorus   Cappella Amsterdam

MEMORY/Polo Charles Workman
BEINGS/Marco Sarah Castle
Kublai Khan Stephen Richardson
NATURE/Water Nancy Allen Lundy
SHADOWS/Rustichello/Li Po Zhang Jun
Sheherazade/Mahler/Queen Tania Kross
Dante/Shakespeare Stephen Bryant

世界初演は1996年@ミュンヘン。
副題に An opera within an opera とあり、リブレットはPaul Griffithsによる。

予備知識なしに、このオペラのTV放映を鑑賞した。これは、ある意味でよかったかもしれない。
全くの白紙状態だったので、まるで身構えていなかったから、わりとおもしろいと思えた。
あとであらすじを読んでみて、ほお、こういうことだったのか、こういう意味があったのか、と始めて
知ることばかりであった。しかし、知ったからといって、理解できたわけでは全くない。
DNOの英語あらすじページにリンクを貼るので、興味がある人には、読んでみてもらいたい。
あまりに抽象的・観念的・哲学的なので、これを読んだだけで頭が痛くなるかもしれないが。
実際に歌われた歌詞は非常に簡潔なので、オペラを鑑賞しただけでは、ここまで濃いというか
難解な内容を含んでいるとは想像できなかった。

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         左からダンテ、ポーロ、マルコ
         単純なカッティングなのに舞台衣装としては機能的で優れたデザイン。
         文字通り直線断ちまたは丸いだけだが、さまざまに着こなしの変化が出せ、
         舞台効果抜群。(その昔、黒くて丸い穴の開いたフエルト帽を小道具にして
         ナポレオンなど色々な人物に早代わりする漫才師みたいな人がいた。
         それと同じ形状の丸いフエルトのマントが使われていたし、ダンテの帽子は
         まさにその漫才師の物と同じだ。)

まず、主要登場人物で重要なのは、マルコとポーロ(この二人は対照的な別人格を持つ男女)と
狂言回し役・ナレーターの中国人だ。この人物は、たぶん京劇の俳優(歌手)が演じているが、
役どころの意味するところがナンなのか見終わってからもちっともわからなかった。
この人、終始京劇独特の甲高い声で歌い、アクロバティックな所作で動き回る。声はよく通るし、
役者としても上手い。最後に一番拍手をもらっていた。

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         フビライ・ハンと孫悟空のような謎の狂言回し

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         衣装とメイクの主要モチーフは、マルコ(赤)が円で
         ポーロ(青)は直線、と対照的。

なんだかよくわからないストーリー進行だが、ダンテの道案内でマルコとポーロが、西遊記の玄奘
三蔵法師のような苦難の末、シルクロードを通って中国の皇帝の所に到着する。しかし万里の長城の
入り口は閉ざされている。そこを突破して究極の目的を達成しなければならない。
オリエントへの旅は、また同時に内面への旅だった、ということらしい。思索と行動との調和、東洋と
西洋との拮抗。未知の世界への憧憬は実は自分自身を発見する旅であった。
と、書いていて恥ずかしくなるような単純な陰陽(イン・ヤン)みたいな世界観・人生観で出来ている。

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        孫悟空みたいな京劇俳優兼歌手が最後に扉を打ち破る。

しかし、音楽は楽しめる。舞台がシルクロードで、作曲家が中国人だから、胡弓やシターやタブラや
バラライカや、名前は知らないが面白いオリエントの楽器が大活躍するし、京劇風の発声で中国語
のように抑揚のあるアクセントの英語で歌われるから、非常にエキゾチックである。
しかし、歌手は大変だったろう。無調どころではない、西洋音楽でもない実験的な旋律を歌わなければ
ならないのだから。
ただし、全体の調子はミニマルであるから、現代音楽でも聞きやすいのである。

歌手で知ってる人は、ポーロ役のチャールズ・ワークマンとシェヘラザードおよび皇后役のタニア・
クロスのみ。
ワークマンは、最初わからなかったが、どうも見覚えがある、と思ったら、去年「エイシスとガラテア」
@ROHでエイシス(ダニエルちゃんの相手役)だった。けっこうハンサム。
タニア・クロスは、オランダで売り出し中というよりすでに中堅になったアンティレン出身のメゾだ。
昨年グラインドボーンで「カルメン」主役を歌ったらしい。そのあと、オランダのナショナル・レイス・
オペラでも「チェネレントラ」主役の予定だったのに、なぜかキャンセル。その他、ヤーコブス指揮で
モネとDNO共同プロの「ジュリオ・チェーザレ」でブライアン・アサワとのダブル・キャストでトロメオを
歌ったり、数年前DNOで「カヴァレリア・ルスティカーナ」のローラを歌うのを聴いたから、けっこう
役どころは広い。

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舞台造形や演出は、全体的にいかにもオーディのトレードマークみたいな雰囲気がただようので、
毎度おなじみの懐かしさに安心感を覚える。幻想的かつ、ハッタリや無理のない調和の世界であった。
京劇と西洋のオペラを融合させた、しかも現代物だが、視覚的にも聴覚的にもけっこう楽しめた。
もしかしたら、このオペラが発するえもいわれぬ懐かしさと安心感は、シルクロードという背景のせい
かもしれない。西遊記(とNHKのシルクロード・シリーズ)に親しんだ日本人は、既視感を覚え、
シルクロードにはなぜか郷愁をかきたてられるのだ。
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by didoregina | 2010-08-26 22:22 | オペラ映像 | Comments(4)

テレマンの「ピンピノーネ」   超レア・バロック・オペラ

コンサートやオペラのシーズン・オフ(夏枯れの期間)は、有名なフェスティヴァルの高額チケットを
買うという気力も財力も持ち合わせない者には、TV放映されるオペラ鑑賞がチープで楽しい娯楽だ。
ブラーヴァという音楽(特にオペラ)専門のデジタルTV局が、契約しているプロヴァイダーのレギュラー
パッケージに再び入ったのは、喜ばしいことである。
この局は、週7日24時間ぶっ通しで、様々なオペラを見せてくれるのだ。(再放送も多い)
それで先週は、ヘンデルの「タメルラーノ」の素晴らしいプロダクション以外にも、プロコフィエフの
「修道院の結婚」(ゲルギー指揮マリインスキー・オペラ、ネトレプコ出演)その他を鑑賞できた。
その中でも特記すべきは、テレマンのオペラ・ブッファ「ピンピノーネ」の放映だ。

Pimpinone by Georg Philipp Telemann @ Fifteen Amsterdam

Combattimento Consort Amsterdam
conductor:Jan Willem de Vriend
stage director:Eva Buchmann
Vespetta: Julia Neumann
Pimpinone: Marcel Boone
chamber maid: Claudia Patacca

テレマンのオペラなんて、めったに上演される機会はないだろう。
そして、この短い喜劇オペラは、もともとヘンデルの時代ハンブルク歌劇場で「タメルラーノ」が上演された
時、インテルメッツォとして幕間に上演された作品なのである。その2作品を2日続けて放映したところに
ブラーヴァというTV局のこだわりが感じられる。
インテルメッツォというのは、丁度、能に対する狂言みたいなもので、登場人物は最小限の短くて滑稽な
喜劇オペラである。

あらすじは、聡明で美しい若い女ヴェスペッタが、年寄りで金持ちのピンピノーネに近づいて、最初は
女中として雇われるが、その魅力を発揮して奥方の座を勝ち取り、金と自由を手に入れて遊び放題、
わがまま女房の尻に敷かれるダメ亭主に成り下がったピンピノーネはため息をつきつつ家事を担当、
というもの。まるでペルゴレーシの「奥方女中」そのままのストーリーだ。当時流行った喜劇テーマらしい。



貼り付けた動画は、2008年8月に音楽ホール Muziekgebouw aan het IJでの上演。

わたしが見たTV放映版は、2009年5月のもので、ヴェスペッタ役だけ違う歌手だが、同プロダクション。
しかし、この「ピンピノーネ」は上演ロケーションが意表を突いていた。
ジェイミー・オリヴァーのレストラン「フィフティーン」@アムステルダムの中、壁際でオケ(コンバティメント・
コンソート・アムステルダム)が演奏し、客席はレストランのテーブル配置そのままで、その隙間で3人の
登場人物が家事をしたり料理したりしながらオペラを歌い演じるのであった。

客席のテーブルには、グラスやカトラリーのセッティングが整ってる。
あれ、と思うと、はたして喜劇のそのまた短い幕間に、レストラン厨房からどんどん料理が運ばれて
くる。その間、オケが優雅な器楽演奏をする。
ヴェスペッタが奥様になってから雇われた別の女中は、客席でパスタやサラダなんか作ったりして
給仕もしてしまう、という具合である。
詳しくは、リンク先の写真を参照されたい。

テレマンといえば、誰もが思い浮かべるのは「ターフェル・ミュージック」だろうから、テレマンのオペラと
レストラン空間、食事しながらの上演、というのは理に適っている。
オペラのストーリー上、台所や食卓が重要な小道具なので、違和感もない。

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              ジュリエット・ビノシュ似のユリア・ノイマン

登場人物は、ヴェスペッタ(s)とピンピノーネ(b)と女中(s)の3人だけ。
ヴェスペッタ役のユリア・ノイマンは、ちょっと女優のジュリエット・ビノシュに似たキュートな味のある
ルックスで、コケットな表情の演技も上手い。声も軽くてすっきり、こういう軽いオペラにぴったりで
好感度が高い。モーツアルトのオペラに向いていそう感じだ。
バリトンのマルセル・ボーネもコミカルな演技で見せるし、歌もいい。

歌といえば、このオペラではイタリア語とドイツ語がちゃんぽんになっている。最初はイタリア語で
歌っていたのに、レチタティーボはドイツ語。そのうち、歌もドイツ語になったり、またイタリア語に
なったり、レチタティーボの掛け合いもちゃんぽんになったりで聞いてるほうは混乱するが、これが
当時の流行だったので観客は当然のように思って聞いていたようだ。

こういう洒落たプロダクションでテレマンのレアなオペラを鑑賞できたのはうれしかったし、その
意外な楽しさに驚かされた。
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by didoregina | 2010-08-23 13:07 | オペラ映像 | Comments(4)

Sail Amsterdam 2010

船ヲタも帆船ファンもヨット好きも一般観光客もフツーの行楽客も、とにかく、昨日始まったイヴェント
セイル・アムステルダム2010に集合だ。
5年に1度開かれる、世界最大の帆船祭りである。
目玉は帆船だが、大小さまざまの一般船も合わせて総勢600隻が、アムステルダム中央駅北側にある
アイ川(もしくは運河もしくは湾)に集結するのだ。
朝10時に北海沿いのアイムイデンを出発した帆船群は、午後1時ごろアムステルダム到着予定だ。
その入港の様子をナマで見ようとする行楽客が、電車に集中した(主催者および国鉄が車で来るのは
自粛するよう呼びかけた)から、朝9時少し前のマーストリヒト発電車は、すでに始発駅から満員。
エイントホーフェンで臨時車両を増結した。
定刻11時半に、電車はアムステルダム中央駅に到着。駅構内にセイル会場までの順路が表示されて
いるが、入港観覧のために集まった人の波に押されて歩けば、迷いようがない。

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           アムステルダムのプロモーション・ロゴ兼アート・オブジェ
           I amsterdamの、いわずもがなの日本語訳

駅の北口は、アイ川に面している。そこから右手に少し歩いて、格好の見物場所を確保した。
何年経っても進まない駅の改築工事現場の囲いコンクリートブロックの上である。こういう時だけは、
工事にも感謝しなければならない。というより、いつもの不便の貸しに落とし前を付けて返してもらおう。

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           入港予定の1時を1時間以上すぎてから、北海運河がアイ川になる
           あたりに、アムステルダム市号が、帆に風を受けて堂々と登場。

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           2時間半も待った。しかし、ヨット・ハーバーのシックスハーフェン
           正面といういい場所を確保したので、礼砲と共に現れる船の全景が
           よく見える。クリッパーのアムステルダム市号は、ダーウィンの
           ビーグル号と同じ航路で地球の生態変化の科学研究のための
           世界一周航海を終えて、アムステルダムに戻ってきた。
           それを誇るかのように、パレード先頭で雄姿を飾る。

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           お供の船を従えて、湾内を回る。このページェントの混雑具合は、
           まるでナポレオン時代の海戦さながらの趣。海洋フェチの血が騒ぐ。

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           こちらは、トラファルガー海戦を描いたパノラマ。
           ポーツマスの海事博物館で見られる。海洋フェチ必見である。

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           スウェーデンの東インド貿易船イエテボリのレプリカ。
           17,18世紀、航海と貿易の黄金時代の船は、オランダでも
           いくつかレプリカが建造されているが、芸術品のような美しさ。

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           ロシアのセードフ。現役では世界最大の帆船だそうだが、
           帆を張っていないと全然迫力がない。この後に続く船は、皆
           帆を降ろして入港したのでがっかり。
           しかし、きらびやかに信号旗を張り巡らせていたから許す。

旗による信号というものがある。無線などない時代は、離れた船同士のコミュニケーションはこれで
行った。一つの旗の色と模様がアルファベットを表すようになっているのだ。
旗を使った通信で有名な文句は、トラファルガー海戦で、ヴィクトリー号のネルソン提督が飛ばした
檄だ。 
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          England expects that every man will do his dutyと読める。

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          インドネシアのデヴァルシ号。
          船員が高い帆柱の帆の上に立って、観客に手を振ったりする。
          帆を降ろした船は、このくらいのサーヴィスをすべきである。   
          さすが、アジアの船はホスピタリティの精神に満ち溢れている。
          船員が小柄ですばしっこいという利点もあるのかもしれない。

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特に海洋フェチではない義妹とその子供達といっしょに見物したので、1時間半くらい見物すると
(その前に2時間半も待ったし)、飽きたようで、アイ川沿いに歩いてみる。人の波は留まるところを
知らず、どこに行ってもよく見えない。わたし達の席は、特等といってもいい場所だったのだ。

今週末いっぱい、船はアムステルダムのアイに停泊しているので、見学(内部も)できる。
月曜日には、また北海運河を通って北海に戻るパレードがある。

    
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by didoregina | 2010-08-20 12:53 | セイリング | Comments(8)

「タメルラーノ」は、ファンタスティック・オペラ

ドミンゴ先生がバヤゼット役の「タメルラーノ」@テアトル・レアル・マドリッドのTV放映を鑑賞した。
さほど期待していなかった、というより、はっきり言って、ドミンゴ先生が朗々と艶のある、もしくは
悲劇性を強調するあまりしゃがれたような声でバロック・オペラを歌うのは、どうも似合わないような
気がして、積極的に観たいと思っていなかったのだ。
しかし、これは、とんでもない偏見であることがわかった。

Tamerlano by Handel@Teatro Real Madrid
Dirección musical:Paul McCreesh
Dirección de escena:Graham Vick
Escenografía y figurines:Richard Hudson
Coreografía:Ron Howell

Tamerlano:Monica Bacelli
Bajazet:Plácido Domingo
Asteria:Ingela Bohlin
Andronico:Sara Mingardo
Irene:Jennifer Holloway
Leone:Luigi De Donato



第一幕では、こちらもまだ色眼鏡で観ていたせいか、耳になじみが悪かったが、二幕目からは
ドミンゴのバヤゼットも、いいではないか、と思えるようになり、特に先生が登場する場面はさほど
多くないためか、彼の存在など気にならないようになって、ひたすらファンタスティックなオペラ世界に
はまり込んでしまった。やはり、彼の歌い方も声もテクニックも、ヘンデルのバロック・オペラには
不釣合いであった。先生、許して。


このオペラをファンタスティックと呼びたいのは、まず、その簡潔なステージ造形の美しさによる。
円と丸をモチーフとした舞台背景は白と黒とグレーで統一。この円と丸が衣装のターバンの
造形にも使用されていて、モノトーンなのにロマンチックな表情を作り出す。

半円形に作られたステージの天井から大きな玉が下がり、その上に大きな足。
敵方タタールのタメルラーノの圧制に喘ぐオスマンのバヤゼットとその娘アステリアは白服姿で、
重いくびきの下に置かれていることが一目でわかるような登場の仕方だ。

ストーリーはたわいないもので、捕らわれのオスマン王バヤゼット、敵方の王タメルラーノが惚れて
いじめるオスマン王女アステリア、タメルラーノに邪険にされて傷つく許婚イレーネ、アステリアが
好きだが気の弱いアンドロニコなどが、皆各々の思惑と邪心でくっついたり離れたりするが、
バヤゼットの死によって、敵対関係も愛憎関係も清算される、という話だが、オペラ展開は悠長だ。

登場人物のキャラクターは、清廉な善人Vs馬鹿で権力を振り回す悪人という単純な二極に分かれる。

しかし、衣装や振付も含めた統一感が素晴らしく、圧倒的な様式美で、とにかく視覚的に楽しめる
オペラだった。過剰も無駄もなく、美的均整がとれて素晴らしい舞台は、夢幻の世界のようだった。

以下、写真で追ってみよう。

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          存在自体がジョークのようなタメルラーノと
          そんな変態王に惚れられて困ってるアステリア

虐げられた境遇のバヤゼットが歌うアリアは、常に重苦しく悲劇の調子を帯びる。
背後に控える宦官みたいな兵士達の踊りも、だから静的でミニマルな振付で効果的だ。

それに対して、タメルラーノは、粋で洒落た格好で、権威を傘に振りかざして好き勝手の馬鹿王。
そのキャラクターを表現する歌も軽薄そのものである。
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           この衣装、特にターバンが最高。被ってみたい!        
           でも、このタメルラーノ、どうしても男性には見えない。
    
主役のバチェットは、顔が女優のエマ・トンプソンそっくりのオバサン顔で、体格も貧弱なので
全然、エキゾチックな王には見えない。どんな表情の演技をしても、ヒステリックな中年女の地が
出てくるだけ。
ここは、やはり、マレーナ様にこの役デビューをしてもらいたいものである。

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          この衣装と鬘を着けたマレーナ様を想像してもらいたい。
          失神するファン続出、必至である。

善人アンドロニコも、衣装はカッコイイ伊達姿だ。
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           サラ・ミンガルドの男役は、まだしも見られる。でも、衣装負けしてる。
           なんだか声に艶がなくてがさがさしているように聞こえた。
           声が小さいから、無理に音を補強するような録音にしたためだろうか。

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           ステージ背景がモノトーンでシンプルなので、
           原色でポップな大道具が映える。しかし過剰ではない。

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           タメルラーノの許婚イレーネは、カラフルなサリー姿。
           女性は皆、頭にストールを真知子巻きして登場する。
           そのパシュミナ風のストールが、とってもいい。

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           イレーネ役のジェニファー・ホロウェイは、割と好きな声。
           顔と体型は料理研究家のナイジェラ・ローソン似。

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            こちらは、本物のナイジェラ・ローソン。

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            派手なピンクのタメルラーノと清楚な白いインド風衣装のアステリア。
            インゲラ・ボーリンは、姿が可憐で歌も演技も上手くて、役にぴったり。
            彼女とマレーナ様だったら、お似合いカップルなのに。。。。

結局、ドミンゴ先生以外の登場人物は、ほとんど全て女性が歌っているので、ドミンゴ先生の男ぶりが
いやでも映える、という仕掛けになっている。上手く考えたものだ。
ズボン役の二人が冴えないのだけが問題だった。これは、マレーナ様がタメルラーノ、アンドロニコ役に
デュモーで、あとの歌手はそのまま残して、このプロダクションで上演したら最高だと思う。
(今季、LAでB.メータがタメルラーノを演る。マレーナ様のブログにつぶやきによると、先日彼女は
LAでオーディションを受けたらしい。もしかして、タメルラーノ役ではないのか、と予想したのだが)
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by didoregina | 2010-08-18 16:33 | オペラ映像 | Comments(13)

ニュルンベルクは、くつろげる町

ミュンヘン在住のブログ友sarahoctavianさんから、ドイツ旅行の話も聞かせて、とリクエストを
受けたので、クロアチアからの帰りに一泊したニュルンベルクのことも書いておこう。
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海人間一家の我が家の夏のヴァカンスは、基本的に南欧、と決まっているので、南仏、スペイン、
イタリアかクロアチアに行くことになる。(さすがに、真夏のギリシャやトルコには、あまり
そそられない。)
イタリアかクロアチアだったら、行き帰りにドイツを縦断することになり、帰路には必ず、
南ドイツのどこかに一泊するのが慣わしだ。

その日の交通(渋滞)事情に左右されるので、帰路に泊まるところは、運転に疲れたころ
行き着いた町、ということになる。今まで泊まったのは、ローテンブルク、ディンケルスビュール、
レーゲンスブルクなどの、可愛いくてこじんまりした町で、大都市のミュンヘン、アウグスブルク
などは避けてきた。
行き当たりばったりで宿を決めるとなると、小さな町の方が探しやすいからだ。
微妙に大きい町なので、今まで避けていたニュルンベルクに、今回は泊まってみた。

町の規模は思っていた通りの大きさだが、予想以上に親しみやすさに溢れた心地よい町だった。

その日は丁度、ストリート・ミュージック・フェスティヴァルかなんかで、町中の通りや大小の広場
のあちこちで、様々な音楽が奏でられ、ソーセージとビールの屋台が立ち並び、ミニ・オクトーバー
フェストの趣である。
(本家本元のオクトーバー・フェストには行ったことないので、いい加減な表現であるが。)
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               広場では、特設ステージ上でPAを使った演奏。

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               通りや辻では、少人数のバンドがあちらこちらに。

アンプラッグドで一人または数人のアコースティック・ギターを演奏しながらのバンドが多い。
数10メートルおきにこういうアマチュア・アーチストがいるから、声量のない人はぜんぜん目立たず、
かわいそう。



もしも、こんなバンドがいたら、拍手喝さいしておひねりも奮発したいところだったが、
残念ながら見かけず。
「アイシャ」は、オリジナルもいいが、アウトランディッシュのカヴァーも好きだ。


また、7月には、グルックのオペラ・ミニ・フェスティヴァルも開かれていたようで、ヴェロニク・ジャンスや
ミレイユ・ドルンシュのポスターがあちこちに。数日違いで間に合わなかった!


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      お城の塔(一部ユースホステルとして利用されてる)では、ドイツ国旗が半旗に。
      前日ラブパレードで20数名の死者を出すという惨事があったからだ。

ニュルンベルク名物の焼きソーセージ、中指くらいの長さと太さの小ぶりなのを3本、カイザー・
ブロッチェンに挟んだもの(2ユーロ)を、あちこちの屋台で焼いて売っていた。(マックだと
1ユーロ80セント)
しかし、ビア・ガーデンに座ったので、もう少ししっかりした料理を頼んでみた。

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       牛タンをあっさりと煮たもの。ポテト・サラダとザワークラウトの付けあわせ。

人出はやたらと多かったが、とにかく気持ちのいい町で、すっかり気に入ってしまった。
残念なのは、美術館などに入る時間がなかったこと。ここは、デューラーの町なのだ。
2012年にデューラーの大掛かりな展覧会が開かれるとの告知が出ていた。次回は、それにあわせて
ぜひまた訪れたいと思っている。
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by didoregina | 2010-08-16 22:01 | 旅行 | Comments(9)

電車で自転車の引越し

またもやデルフト行きである。
ヴァカンスから帰ってからは、デルフトの長男の部屋の模様替えと引越しに追われた。
まず、壁とドアを白く塗りかえ、床にはカーペットを敷き替え、バスルームと窓も、大掃除だ。
キチネットが付いてるので助かる。
そして、大物のベッドやデスクなどは、車で運んだ。

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                 部屋から見える「デルフトの眺望」
            (実際は2階で木が邪魔なので、下の公園から)

今週末は、デルフト工科大学建築学科のイントロダクション・ウィークエンドだ。
オランダの大学では、新学期が始まる前に、新入生のためのイントロダクション・ウィークというのが、
各都市ごとに開かれる。
その間、町や、学科や、教科や、施設や、学生や、部活などを、上級生がリーダーとなって
小グループの新入生に紹介・案内してくれる。
新しい学生生活の端緒を開くことになる、需要なイヴェントだ。
それに先駆けて、学科別のウィークエンドがあるので、その前に引越しを済ます必要があった。

学生生活(およびイントロダクション期間)には、自転車が不可欠である。
中高6年間、毎日自転車で通学した、その古ぼけた自転車をデルフトまで運んだ。
新品の自転車だと、盗難の恐れがあるからだ。

オランダの電車には、自転車優先席も完備されてるから、電車で引越しだ。
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        自転車の国鉄一日乗車券は、6ユーロ。

小さな町だし、アパートは旧市街と大学の中間にあり、どちらへも徒歩10分、駅まで15分という
好立地だが、やはり自転車がないと、オランダの生活は不便である。
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自室で自炊の夕食のあと、息子を残してひとりでデルフト旧市街を歩いた。
どこもかしこも絵になる町である。
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しかし、自転車が多くて、自転車抜きの写真撮影はほぼ不可能だ。
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駅の近くで、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」をモチーフにした記念像を発見。
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        1975年に、フェルメール死後300年を記念して、
        ウィム・スキッパースが制作、市に寄贈したもの。

アムステルダムの国立博物館にある絵の方は、だれでも知ってるから説明しないが、この絵および像の
オランダ語タイトルは Het Melkmeisjeである。
そして、ヨット用語にもそれがある。
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            ジブとメイン・セイルを左右に張り出した形がメルクメイシュ

形からなんとなく判るような気もするが、この命名はどこから来てるんだろう、なぜそう呼ぶんだろうと、
疑問に思っていた。
これは、どうやら、建築用語がもとになっているらしい。
画像が見つからないので、言葉で説明するとわかりにくいのだが、真ん中に垂直の珊があって胸高で
左右対称に外に開く細い窓のことをそう呼ぶらしい。
そして、それは、フェルメールの絵がインスピレーションの元になっているのではなく、昔ながらの牛乳
運びの女の子の左右に下げた牛乳桶の形からの連想のようである。
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                   典型的土産品のメルクメイシュ

フロテッィラの参加ヨットが、一斉に出航することはまずないが、1度だけレースのため、
一斉スタートを切った。横後方からの風だったので、一番効果的な帆の張り方に皆なった。
メルクメイシュである。

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              スタートで出遅れ、惨憺たる結果に終わったレース。

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              ジブを、ムーリング用の引っ掛け棒で外に張り出すという
              苦心惨憺のトリミングをしてみるが、効果なし。
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by didoregina | 2010-08-13 11:29 | 旅行 | Comments(8)

メイデー、メイデー、メイデー

フロティッラ用にチャーターするヨットは、大きく2種類に分けられる。

一番多いパターンは、個人所有のヨットをチャーター会社が管理して、所有者が使用しない期間、第三者に貸す、というものだ。
その場合、フロティッラ・リーダーは、別のエージェントから雇われていて、リーダー船もチャーター・ヨットで、船のメーカーやモデルは皆ばらばらである。
チャーター会社は、ヨットの状態を点検し、所有者に代わってメンテする。しかし、様々なタイプのヨットを管理しなければいけないので、細かい点までは把握できていない場合が多い。必ずといっていいほど、トラブルがある。

第二のパターンは、フロティッラ・リーダーが10隻ほどチャーター用ヨットを所有していて、エージェントを通じてフロテッィラ参加者を集める。
この場合、全てのヨットは同じメーカーの同型で、サイズのみ異なる。フロティッラ・リーダーが、メンテや修理も行うから、同型でないとロスが多いからだ。
リーダーは、メカニックも兼ね、個々のヨットを熟知しているから、フロテッィラ参加者は、何かあったらすぐヘルプを求めることができ、安心感が大きい。メンテも万全で、実際、トラブルも少ない。

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ヨットをチャーターした回数は、15回以上になると思うが、大半は第一のパターンである。

今までで一番大きなトラブルでは、錨の電動ウィンチの設置してある木の台が腐っていて、錨を上げる途中でウィンチ台が外れてしまうという、とんでもないことが起きた。
そのクロアチアのチャーター会社は、どうもいい加減で、ヨット所有者の書類原簿が整っていなかったため、クロアチア当局からの出航許可が1日出遅れた。ウィンチ台破損の修理で、もう1日無駄になった。
これは、完全にチャーター会社側の不備であるから、こちらはビタ一文出さず、オランダのエージェントに掛け合い、無駄になった2日間の補償としてアイセル湖での週末ヨット・チャーターを勝ち取った。

また、ギリシャでは、アテネの港に帰港して最終チェック中に、舵の後ろにある取り外し可能の座席部分が海に落ちる、というトラブルがあった。止め具が甘いためチャーター中は使用していなかったが、チェックアウトで元の位置に戻したところ、チャーター会社のオヤジのお尻の重みで外れたのだ。
チェックアウトでは、潜水夫を雇って、ヨットの船底を点検する。それが終わったばかりだったので、もう一度潜ってもらうため、別途30ユーロほど払わされた。

チャーター会社にトラブルの責任を押し付けることは、ほとんどできない。
チェックインでは、細目にわたってチェックしてサインする。その後のヨットの故障・不調は、借りた側の責任部分になるから、保証金および保険は、ヨット・チャーターでは必要不可欠である。

今回のアクシデントは、セイリング2日目に起きた。
ムーリング・ライン以外何の設備もない小島の、カフェ手前の岸に接岸中の出来事であった。
ヨットは、風を動力として動く船だから、少しの風でも影響するから、接岸・離岸に一番気を使う。
一旦広い海に出たら、ぶつかる心配は無用だ。しかし、港はどこもぎゅうづめで、船に傷がつきやすい。(自分の船にも、周りの船にも)
海底のおもりに繋がるムーリング・ライン以外に、ヨットの右舷・左舷後方にロープを渡し、陸に固定する。その作業中、ぴんと張り詰めたロープが、風と波でほんの少し上に上がり、意外に高い張力のせいで、ゴムボート用の船外機のプラスチック固定部分を壊し、船外機が外れて海に落ちてしまった。潜水して引き上げてもらったが、海水に浸かった船外機はお釈迦である。
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         船外機を引き上げて、乾かしてみた。

それ以後ずっと、ゴムボートは船外機なしの、手漕ぎボートになってしまった。
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         これは、去年の春、トルコでの写真。
         ゴムボートに船外機をつけると、広い湾もスイスイ。
         ベイ・ワッチごっこできる。

私達が遭遇したトラブルはこの程度で、まあたいしたことなかったが、今回のフロティラ参加者で
大変な目に遭った人たちもいる。
文字通り、「メイデー、メイデー、メイデー」の緊急無線を発したのである。

その人は、ヨット操縦は15年ぶりとかで、第一日目から、港の浅瀬のドロにキールがつかえて身動きが取れなくなり、別のヨットに牽引してもらったりしていた。
4日目に、メイン・セイルに亀裂が入った。
借りたヨットは、メインもジブもロール式なので、操縦は楽だが、コツがいる。それを呑み込めていないと、無理にウインチで巻いたりしてセイルを傷める事になるのだ。
セイル交換のために、陸の大きな港に向かう途中、急いでいたため、岩礁の浅瀬に気がつかず、7ノットの高速で岩にキールをぶつけた。
大きな衝撃が3回あったという。そして、浸水!

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          これは沈没した船ではなく、観光用の潜水艦

無線で「メイデー」の緊急信号を発してもいい場合は、限られる。
海上では、船が転覆したり、浸水したりして沈没の可能性がある重大な危機の場合のみだ。
それ以外の緊急事態には「パン、パン、パン」でなければならない。

今回は、浸水してきたからパニックだったろうし、まあ、仕方ないだろう。
しかし、ヨットの修理にいったいどれだけとられただろう。保険で全額カヴァーできただろうか。

海に落ちた船外機は、掛け捨て保険の120ユーロでカヴァーできた。
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by didoregina | 2010-08-10 13:47 | セイリング | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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