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La Folia, Extreme Makeover

ごくごくフツーのオバサンやおやぢやティーンネイジャーなどを、プロのスタイリストやヘア・メークの人がよってたかって変身させるという特集は、TV番組や雑誌記事の定番である。
そんな世間のベタな風潮に倣って、古い帽子をメイクオーヴァーしてみた。
元もとは、17年前、義妹の結婚式に着用した帽子で、それ以来一度も使用しなかったもの。
物持ちが驚異的にいい、と言われるわたしは、そんなものも捨てるに捨てられず、ずっと飾ってあった。それが、かえってよかった。同様にして一度のみ着用したが、しまいこんでおいたためカビが生えて使えなくなった、という例を別の義妹から聞いたのだから。

昼間は帽子着用のこと、という結婚式のドレスコードを遵守して、ピンクの麻のツーピースに合わせるため、町に1、2軒くらいしかなかった帽子屋で同じような色の既製品を買ったのだ。色さえ合えば万々歳、デザインに文句を付けたら罰が当る、という感じで、仕方なくそれに決めた。だから、その結婚式以来、一度も被ったことがなかった。
サーモンがかったピンクのストローで、クラウンは浅め、アシンメトリーなブリム、黒の合皮の細いベルトと、帽子と同色・同素材の記事で葉っぱのようなものと黒の合皮のお箸のような飾りが付いていた。(あまりにダサくて、写真を撮る気にもなれなかったシロモノ)

帽子つくりを習って3年以上、既に腕前は中級以上になったので、このどうしようもないように見える帽子を再生させよう!と思い立った。
土台はできているから、ダサい飾りを全て取り外し、テラコッタ色のデコレーションを付けたら、信じられないほど可愛い帽子に変身した。
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テラコッタ色の同素材をバイアスにしてブリムを囲み、幅広ベルトを付け、コサージュを作った。

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ピンクに黒というコントラストの強い色の組み合わせから、トーンを濃くしたテラコッタに替えることで、スモーキーでファジーなイメージに。

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赤や黒の夏のドレスに思いのほかマッチするのである。

手作りの帽子には、名前をつけるのが楽しみの一つでもある。
ラ・フォリアと名付けた。



ラ・フォリアは、元はポルトガルともスペインの土俗ともいわれる、古い舞踏音楽である。
ヴィヴァルディやコレッリによる変奏曲が有名だが、誰が変奏したものでも、和声進行とリズムが同じで、似たような曲調になるのが不思議。コンティのオペラ「モレナ山中のドン・キホーテ」でも、サンチョ・パンサとその恋人の丁々発止の掛け合い場面で使われていた。
いずれにしろ、イベリア半島の熱い土のイメージだ。

上の動画は、映画Tous les Matins du Mondeのワンシーン。
サウンド・トラックはサヴァールが担当しているから、ギョーム・ドパルデューの弾くヴィオラ・ダ・ガンバもサヴァールによる演奏。
ドパルデューの着ている服のスモーキーな赤が、わたしの考えるラ・フォリアのイメージに近い。
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by didoregina | 2010-06-30 22:33 | 帽子 | Comments(6)

コンティの「モレナ山中のドン・キホーテ」

今回も、アムステルダムは遠かった。
オランダ鉄道(NS)は、毎週末ほとんど欠かさずに、線路の補修・メンテに余念がない。安全第一・仕事熱心で有難いことである。
マーストリヒト~アムステルダム間は通常なら2時間半の距離であるが、週末は、必ず一部区間が閉鎖される。その区間が首都圏に近い場合(迂回できる)なら、とんでもない迂回路を作る。デン・ハーグ経由アムステルダムというのを二度経験した。片道4時間かかった。
南部の盲腸線部分だったら、西に逃げればベルギーだし、東はドイツに入ってしまうので、迂回のしようがない。線路は通行止めであるから、その区間は高速バスを臨時に飛ばすのである。
昨日は、そのダブルパンチであった。一部区間はバスに乗り換え、その後ユトレヒトからは迂回路。
往きは、3時間半くらいでなんと着いたが、帰りは4時間かかった。
そこへ持ってきて、バロック・オペラだから長い。上演に4時間15分かかる。こうなると、オペラを観るのも一日仕事である。

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絶対に見逃せないオペラだから、朝9時の電車に乗り、時間には余裕をみた。
アメリカン・ホテル前の噴水のある広場の木陰でサンドイッチの昼食。
HEMAのランチ・ディールで、チキンと卵入りの茶色いバゲットサンド+
オレンジ・ライチー・ジュースが3ユーロ50セント。
向かいのカフェ・アメリカンのテラスに座って、同じようなものを頼めば、
10ユーロでは上がらない。噴水の涼しさは同じ。

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DNOのプロダクションでも、バロック・オペラなど小規模舞台のものは、
市立劇場で行われることが多い。アムステルダム随一の繁華なライツェ広場に
面していて、まるでコヴェント・ガーデンみたいな雰囲気だ。

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こじんまりした劇場なのに、フォアイエやカフェなどのパブリック・スペースが
沢山あり、広々しているから、客もがっつかないのが気分いい。
特に、各階にあるトイレは、バルニー付きだったりして、インテリアは新しく
個室も広く機能的デザイン。しかも数多いから、混み合わないのがうれしい。
二回目の休憩に飲んだ白ワインは、4ユーロちょっとで、本日の食費の中では
一番高かった。(帰りの電車の中でとった夕食は、胡桃パンに山羊のクリーム
チーズ・サンドとリプトン・アイスティーで3ユーロ20セント)

2010年6月27日@アムステルダム市立劇場
c0188818_23242851.jpgDon Chisciotte in Sierra Morena

Francesco Bartolomeo Conti 1681 1732

muzikale leiding René Jacobs
orkest Akademie für Alte Musik Berlin
regie Stephen Lawless
decor Benoit Dugardyn
kostuums Lionel Lesire
licht Pia Virolainen
choreografie Lynne Hockney

Don Chisciotte Stéphane Degout
Dorotea Inga Kalna
Lucinda Gillian Keith
Fernando Christophe Dumaux
Cardenio Bejun Mehta
Lope Mark Tucker
Ordogno Johannette Zomer
Sancio Pansa Marcos Fink
Maritorne Judith van Wanroij
Rigo Dominique Visse
Mendo Geoffrey Dolton

ずばり、結論を言ってしまおう。トータルのエンタメとして、今まで見た中で最高のバロック・オペラ・プロダクションであった。
まず、演出・舞台装置・衣装など舞台の視覚部分が、シンプルで統一がとれて、ミニマルなのにここまで効果的な舞台は、比類がないほど。
舞台全体が本棚のようになっていて、世界の名著や古典作品の巨大な本が並んでいる。

てっとり早く、DNOのトレーラーを見てもらうとよくわかる。


オペラの登場人物は、それぞれ、キャラクターにぴったりの文学作品の有名登場人物に扮している。

例えば、カルデーニオ(ベジュン・メータ)は冒頭にロビンソン・クルーソーの格好で登場する。無精ひげにずたずたに裂けた服。彼が失恋の痛手から遁世している境遇を、視覚的にわからせる仕掛けである。(アルチーナさん、これはデュモーではなくメータでした)

カルデーニオの親友でありながら、裏切って恋敵になるフェルナンド(クリストフ・デュモー)は、「危険な関係」に出てくる女たらしのヴァルモン子爵だ。映画で有名になった作品だから、デュモーは、マルコヴィッチそっくりのかつらと衣装で好色で狡猾な貴族を演じる。ご丁寧にも、パーソナリティー紹介のため、フェルナンドが最初に登場するときには、「危険な関係」の巨大な本が引っ張り出され、作者と作品紹介のページも開かれた。
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    映画でのミシェル・ファイファーとジョン・マルコヴィッチ。

そして、彼が誘惑するルチンダ(ジリアン・キース)は、当初は無垢な不思議の国のアリスみたいな格好をしているのが、だんだん自分の魅力を自覚するようになると、ナボコフのロリータに変身する。こちらも映画同様、ハートの形のサングラスをかけている。この歌手、ビキニ姿で歌うのだが、プロポーション抜群だった。

狂言回しのローペ(マーク・タッカー)とオルデーニョ(ヨハネット・ゾマー)は、シャーロック・ホームズの格好で登場。例の鹿撃ち帽とタータン・チェックのインヴァネス・コート姿にパイプをくわえて。コナン・ドイルの紹介ページも忘れずに。

それらの登場人物が、開いた本のページ上で歌ったり踊ったり、挿絵の中に入り込んだり、本の山に登ったりして、ファンタジー溢れるドラマを展開するのだ。また、ラッキー・ルークやインディアン、恐竜や熊のプーさんに扮した役者が、本の間を歩き回ったりする。笑い満載である。
器楽演奏の部分では、フラメンコ・ダンサーの男女3組が、妖艶な「カルメン」の世界を踊ってみせてくれるから、観客を飽きさせない。
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しかし、ドン・キホーテとサンチョ・パンサのみ、ずっとドン・キホーテとサンチョ・パンサの格好のままで、別のフィクション・キャラクターにはならない。というのも、この舞台全体が、騎士ものの本の読みすぎで空想の世界に入り込んで正気を失ったドン・キホーテの夢、みたいなものだからだ。この見方に基づく舞台造形は秀悦で、展開も劇として最後まで破綻を見せない。

ドン・キホーテの空想世界としての2組の男女の恋愛劇も同時に進行していく。
カルデーニオを裏切って、その恋人を誘惑したフェルナンドだが、カルデーニオから最後通牒を言い渡される。「ルチンダを渡すか、親友のお前を殺すか、二つに一つだ」と言う前に、なぜか、カルデーニオはフェルナンドに長いキスをするのであった。
「それならば、オレを殺せ」と言うフェルナンドのセリフは、例のデュモーの狡賢い表情のせいで、本心とは思えない。カルデーニオは、親友に剣を向けるが、彼には人を殺めることはできない。これも実はお見通しの世間知に長けたフェルナンドなのだ、デュモーが演じると。
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そこへ、フェルナンドに捨てられた元恋人ドロテアが、「わたしが全ての犠牲になります」と救いの手を差し伸べる。皆の心を傷つけたことを悟った、小悪人のフェルナンドが改心して、全て元の鞘に戻り、目出度し目出度し、となるわけだが、フェルナンドとルチンダ役の二人の演技が上手いから、そこへ行き着くまでが一筋縄では行かず痛快だった。つまり、無垢そのものに見えるルチンダが、本当は恋と冒険に憧れるファム・ファタール志望だったために、周りをきりきり舞いさせて、フェルナンドも結局はオム・ファタールになりきれなかった、というわけだ。女たらしの悪役をやらせたら、デュモーに並ぶ者なしだ。次に彼に演ってもらいたとわたしが思う役は、グルックの「パリーデとエレナ」のパリス役だ。パリスこそ、トロイ戦争の引き金となった元祖オム・ファタールである。デュモーの声はほろ苦い騎士役とかプリンス役にぴったりだと思う。

歌手は、演技も上手くなければならないが、もちろん重要なのは歌唱のほうだ。
主役をはじめ、誰一人として不満の残らない、とても満足のいく歌唱を全員が披露してくれた。

メータは、最初のアリアで高音になると不安定だったが、全体に骨太な声で青年らしい力強さに溢れる。彼の声は、「ポッペア」でオットーネを歌った時には、なんだか妙に暗くて好きになれなかった。しかし、今回の役どころにはぴったりで、声に華やかさも増したようだ。

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     カーテン・コールでのデュモーは、鬘を取るとスキンヘッド!

デュモーは、メータに比べると線が細く声量にもやや欠ける。しかし、土臭さのない彼の声質は、都会的な印象で役柄に合っている。第一幕では、明らかに声量を抑えてパワー温存を図っていた。そして、後半の聞かせどころのアリアのクライマックスに向けて、きちんと迫力を増して盛り上げていき、ブラボーの嵐を受けた。作戦はうまく当ったのである。
今回のオペラでは、全ての歌手の各アリアごとに拍手が沸いた。そういう作りになっているオペラなのだ。拍手でストーリーが途切れるということもなく、昔ながらの楽しい大衆芸能らしくてよかった。

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     二幕目から平土間かぶりつき席に移動したから、至近距離。

めっけものは、サンチョ・パンサの恋人マリトルネ役のユディット・ファン・ワンローイ。去年の「ダイドー」では、彼女のベリンダは、非常に影が薄くて全く印象に残らなかったが、今回は別人かと思えるほど、見事だった。役柄は勝気で華やかなカルメン風のかわいい悪女。意外だったが、イメチェンは大成功だった。

ヨハネット・ゾマーは最初はコミカルなズボン役で、シャーロック・ホームズ風。それが、後半、ホームズの衣装を脱ぐと看護婦になるのだった。その瞬間から、舞台はドン・キホーテの空想の世界から現実に移行する。ドン・キホーテの秘密(誇大妄想狂)が明らかにされるのだ。サディスティックな看護婦は、ドン・キホーテに対して情け容赦ない。

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      デュモーとゾマーが並んで登場。

結局、ドン・キホーテは巨人(ヨハネット・ゾマー扮するタンタン)との戦いに負け、罰として1年間本を読むことを禁じられる。
認知症の老人介護施設に入れられ、誰からも省みられないドン・キホーテの最後の歌は哀切に満ちている。そういう境遇の最後になっても、騎士としての誇りと矜持を保とうとするドン・キホーテの姿には、思わずほろりとさせられた。味わいあるエンディングである。
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   老いた孤高の騎士、老人介護施設のドン・キホーテ。

ルネ・ヤーコブスは、レチタティーボをオペラの中のドラマ要素として重要視しているから、チェンバロ3台にリュートやギターなど通奏低音の音の層を厚くする。そうすると、レチタティーボ部分も軽くならずに、アリア部分との軽重の差が少ないから音楽と劇進行がスムーズに融合する。今回も、ベルリン古楽アカデミーは、まとまりのいい演奏だった。
右寄りのかぶりつき席に移ってからは、バスーンが目の前なので、特に低音が耳に直接届くから、デュモーのデリケートな声が掻き消される傾向になったのだけが残念だった。
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by didoregina | 2010-06-28 21:54 | オペラ実演 | Comments(10)

ドルドレヒトのバッハ・フェスティヴァル

ロッテルダムの隣の町ドルドレヒトで、バッハ・フェスティヴァルが、今年から二年に一度開催されるようになる。
9月17日から26日まで10日間にわたり、市内数箇所で毎日いくつか、バッハにちなんだコンサートがあるのだ。

ほとんど国を挙げて、バッハの受難曲を聴いたり歌ったりするのが、復活祭前の恒例年中行事化しているオランダでは、受難曲は皆から親しまれ、「我らの」と冠詞がつけられているほどである。(日本で、年末になると「第九」がやたらと演奏されるのにどこか似た現象だ。)
それ以外の季節でも、バッハの演奏会には事欠かず、不滅の人気を誇っている。

しかし、バッハの名を冠したフェスティヴァルは、意外なことに今年初めて、ドルドレヒトで開催されることになる。
フェスティヴァル・サイト(オランダ語のみ)にリンクを貼る(プログラムをダウンロードできる)から、詳細はそちらで確かめてもらいたい。

わたしが気に入ったのは、以下のプログラムである。

9月17日のオープニング・コンサートでは、ヴァイオリン、サキソフォーン、パーカッション、パン・フルートにフラメンコまで登場する。

9月18日には、「バッハ実験室」と称して、マリーケ・フローテンハウスのアコーディオンとナオミ・サトーさんの笙のコンサートが。

また、ホランド・バッハ・ソサエティ(HBS。注:オランダ・バッハ協会とは別もの)+ステファニー・トゥルー(ブリリアントから出ているヘンデルのイタリアン・カンタータ全曲集で歌ってるソプラノ)+ジェド・ウェンツ(バロック・フルート)+パウニ・トリオ(女声トリオ)のジョイント・コンサートも面白そうだ。

そして、また別の「バッハ実験室」では、ニッケルハルパ(!)のマグヌス・ホルムストレムとアントワネット・ローマン(V)のコンサートがある。ニッケルハルパといえば、アルチーナさんが先日紹介していたが、ヴァイオリンとハープの合いの子みたいな不思議なスウェーデンの楽器である。なかなか生演奏に接する機会はないから、聴いてみたいが、丁度この週末はウィーンに遠征予定である。(マレーナ様も出演する、バルトリ主演「セメレ」のチケット争奪戦になんとか生き残ったのだ!)

9月19日には、コープマン指揮ABOによるカンタータ。ヨハネット・ゾマーも出演する。

9月20日は、リウヴェ・タミンガのオルガンとカメラータ・トラジェクティナによるフレスコバルディ、コレッリ、ヴィヴァルディのコンサート。

9月21日は、出た!レオンハルト翁のオルガンで、バッハ、パッハベル、ベーム。

9月26日は、イーヴォ・ヤンセン(Pf)が、「平均律」とショスタコヴィッチの「プレリュード」を弾く。

そして、ラスト・コンサートの、フェルトホーフェン指揮オランダ・バッハ協会がカンタータとシンフォニアで、バッハ・フェスティヴァルの幕が閉じられる。

バッハと彼にゆかりのある作曲家もしくは彼にちなんだプログラムは、なかなかヴァラエティに富んで、意欲のほどがうかがえる。
バッハとは地縁が全くなさそうな地方都市で行われるフェスティヴァルにしては、凄いメンツを揃えたものだ。さすが、オランダの底力。ことバッハに関するかぎり、一般の関心という裾野が広いし、演奏家も雲居に聳える頂上の高い山のような人もいるのだ。


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by didoregina | 2010-06-25 00:01 | コンサート | Comments(6)

Midsummer Eve's Hats

とうとう、わたしもサラになった。
そして、サラ・パーティー兼銀婚式兼長男の大学入学資格試験合格という、ハット・トリック・パーティーのための帽子が、2つ完成した。
パーティーの招待状に「ドレスコード:帽子が望ましい」と書いたため、自分だけ着物だからといって、帽子を被らないというわけにはいかない。主催者こそ、率先してルールを遵守すべきである。

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簪代わりだと思えば大丈夫。夜会巻きに刺すつもり。
蘭の花をイメージした。名付けて「夜来香(イエライシャン)」
実は、もう一つの帽子の残り布から作ったので、材料費はタダみたいなもの。


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作りかけのこの帽子を見て、義母が「パーティーに被りたい!」と言い出した。
じゃあ、貸してあげましょうというわけで、出来上がったのがこれ。
クラウンは、黒のチェックを織り出した透けるゴーズの下に白を重ねた。
ブリムは、平織りの黒と白の二枚重ね。

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義母用に付けたベルトは、取り外し可能。

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クラウンの形は、かなりアシンメトリー。
ベルトを白の細い皮に替えると、カジュアルなイメージになるから、普段でも被れる。
名前は、「生絹(すずし)」。

パーティーの招待客は、皆、帽子の装いを凝らして来てくれるだろう。楽しみだ。
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by didoregina | 2010-06-22 21:45 | 帽子 | Comments(18)

エディソン賞クラシック部門

おおぼけであった。エディソン賞は、5月20日に既に決定して発表されていた。
視聴者からの投票で決まる視聴者賞のみ、明日発表になるのだ。

今年のエディソン賞クラシック部門の受賞作品とアーチストは、このサイトに。
やはり、「愛の劇場」は受賞していたのだ。でも、このCD、一年以上前に出ていなかったろうか?そして、明日TV出演するのはラルペッジャータだけ?どうも、不可解である。

見落としていたが、ショル兄もソリストとして参加している、ベルリン古楽アカデミーによるヘンデル「アン女王の誕生日のための頌歌」がバロック部門賞を受賞。

一応、オランダ在住でPJ様が出演するかどうか気になる方は、21時からのオランダ第二放送をチェックされるのがよろしいかと。
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by didoregina | 2010-06-18 00:09 | Comments(0)

速報:エディソン・ガラのお知らせ

去年はあんなに騒いだのに、今年はころっと忘れていた。
「エディソン賞」が明日6月18日に発表になる。そして、表彰式およびガラ・コンサートの模様が、スヘベニンヘンのクアハウスからTV中継される。21:00からオランダのAVRO局が放送するから、このお知らせはオランダの方限定になってしまうかもしれないが、耳寄り情報をゲットした。
先ほど届いたAVROからのメーリングによると、ネゼ=セガンやアレクサンドル・タローのほか、ラッペルジャータが出演とのこと。う~む、去年はPJ様が受賞したにも関わらず、出演しなかったというのに。

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       2008年の授賞式でのヨハネット・ゾマー

これとエディソンのサイトのショートリストを見比べるのはなかなか面白く、受賞作品およびアーチストの予想ができる。
ノミネートされた各部門の中から、面白い、うれしい、と思ったものは以下のとおり。

<オペラ・バレエDVD>
アイム指揮OAE、ダニエルちゃんとクート嬢出演のモンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」!
ミドリ・ザイラーとベルリン古楽アカデミーのヴィヴァルディ「四季」とルベル「4大元素」
ニケ指揮コンセール・スピリチュエルによる、パーセル「アーサー王」

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   マレーナ様がドレッド・ヘアのネローネだった「ポッペア」
   (2006年@モネ劇場)マクヴィカー演出。今季マドリッドでの
   PJ様ネローネと同じく怪しい雰囲気。
   注:これはDVDになっていないから、ノミネートもされてい
   ない。

<現代音楽>
アンスネスのピアノ!

<器楽独奏>
アレクサンドル・タローが弾くサティー
アンスネスによるムソルグスキー「展覧会の絵」とシューマン「子供の情景」(リサイタルで聴いた)
ムロヴァによるバッハ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」と「パルティータ」

<中世・ルネッサンス>
ラルペッジャータ+ヌリアちゃんとPJ様のモンテヴェルディ「愛の劇場」!

<オペラ>
サーリアホの「彼方からの愛」 来シーズンフラームス・オペラが取り上げる。
ゲルギー指揮マリインスキー劇場、ショスタコヴィッチ「鼻」
ヤーコブス指揮フライブルク・バロック・オケの「イドメネオ」

<オーケストラ>
ブリュッヘン指揮18世紀オケによる、ハイドン「十字架上の7つの最後の言葉」
ネゼ=セガン指揮ロッテルダム・フィルによるラヴェル

<視聴者賞>
バルトリ姐の「神への捧げもの」
ヨハネット・ゾマーとシュニーマンによるヘンデル「愛と狂乱」
PJ様の「甘き炎」

<独唱>
バルトリ姐「神への捧げもの」

各部門に3つのショートリストが上がっているが、わたしの興味をひくもの、自分が持ってるCDなどを拾っただけだから、残りが気になる方は、エディソン賞のサイトにリンクを張ったのでご覧あれ。
明日のガラ中継も楽しみ。
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by didoregina | 2010-06-17 23:39 | コンサート | Comments(4)

来シーズンもサヴァール確定!

エイントホーフェンのフィリップス・ミュージック・センターが、フィリップス・ミュージックヘボウと改名した。
コンセルトヘボーとアイ川ミュージックへボーという名前のコンサートホールは、既にアムステルダムに存在する。この両者となんだか間違えそうだが、それが実は狙いかもしれない。
フィリップス・ミュージックヘボウのあるエイントホーフェンへは、自宅から車で1時間なので、平日夜でも行って帰ってこれるのが有難い。

さて、そのフィリップス・ミュージックヘボウからのメールで、「おめでとうございます。一番行きたいコンサート招待券が当選!」との通知が来た。
メーリングの懸賞には大体応募しているが、たいがい空振りなのに、なんとフィリップスでは二度目の当選である。今回は、「来シーズンのプログラムの中から、一番行きたいと思うコンサートとその理由を明記して応募」というもので、色々考えた末選んだのは、サヴァール指揮コンセール・デ・ナションのオール・ラモー・コンサートだった。
実は、もっと行きたいのは別にあったのだが、それは自分でお金を出してチケット買うだろうから、ちょっと考えるちゃうような2番手、しかも超メジャーではないものを選んだという、姑息な作戦勝ちである。
サヴァールのコンサートには先日行ったばかりだが、12月のコンサートがまた楽しみ。

有難いご招待を頂いたから、フィリップス・ミュージックヘボウの来シーズン・プログラムから、わたし好みのものを抜粋して紹介したい。

10月24日  アンサンブル・テンポ・ルバート(2009年ファン・ワスナール・
       コンクール優勝)イタリア人と日本人のフォルテ・ピアノ・
       デュオ。マチネでワインとチーズ・ビュッフェ付き16ユーロ50
       セントはお得かと。

11月10日  ブリュッヘン指揮18世紀オケ+ファウシュト(v)+ケラス(c)
       +ビズイデンホウト(pf) のオール・ベートーベン・
       プログラム。本当は、これが一番行きたいコンサート。

12月10日  ダントーネ指揮アカデミア・ビザンティーナによるヘンデル
       「メサイア」。ソリストにティム・ミード(ct)が参加!

12月17日  サヴァール指揮ル・コンセール・デ・ナションによるラモー
      「優雅なインドの国々」「ダルダヌス」「ゾロアストル」の管弦
       組曲。チケットが当選したから行く。

12月18日  ブラバント・オケによるベルリオーズの「キリストの幼時」。
       ソリストにコーラちゃん(ms)とヘンク・ネーフェン(br)と
       いうオランダ人の期待の若手が参加!

1月22日   レーピンが参加するストリオーニ・フェスの室内楽。ラヴェル、
       モーツアルト、デ・ファリャ、ハイドン、メンデルスゾーン等、
       恐ろしくヴァラエティに富むプログラム。翌日は、レーピンの
       マスター・クラスも。

2月23日   マルティン・シメック&ジャン=エフマン・バブゼ。ドビュッ
       シーのピアノ曲。

3月2日   トレインチャ(トレインチュ・オースターハイス) 一度は彼女の
       ライブ体験したい。

3月8日   イワン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管+ぺトラ・ラング(s)
       ワーグナー・プログラム

3月24日  ラインベルト・デ・レーウ指揮コンセルトヘボウ管他によるシェーン
      ベルク「グレの歌」!これも一度はライブ体験したい。

4月8日   マリア・ジョアン・ピレシュのピアノ・リサイタル(曲目未定)

4月28日  ストテイン(ms)+イザベル・ファン・クーレン(v)+ドレイク(pf)
      ブラームス、チャイコフスキー他。

5月10日  内田光子のオール・シューベルト・プログラム。いつもコンサート
      日程のタイミング悪し。5月休みの頃に来るから、ビミョー。


 
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by didoregina | 2010-06-14 19:35 | コンサート | Comments(6)

6月は学年末

6月は学年末なので試験シーズン、そして年末と同じくパーティ・シーズンでもある。

主人が通うイタリア料理教室の、学年末試験を兼ねた食事会があった。
合否を賭けるという真剣なものではないので、生徒達の料理の腕前は、まあ、去年とほぼ同じで、特筆すべきものはない。というより、料理のセンスのない人は、何年習おうと進歩しないんだ、ということを改めて知らされた、というべきか。
毎レッスン後の週末に、主人が復習を兼ねて作ってくれる料理のほうが、ずっと美味い。
料理に期待するより、着物を着るチャンスだ!と思って出かけた。

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     カジュアルな食事会に高価な着物は場違い。
     いいお天気でもあったので、浴衣で。
     半襟なし。しかし、名古屋帯と足袋。

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     生成りの生紬の帯は、しゃっきりと
     夏らしい締め心地。素描で筍の絵。
     濃い色の浴衣に白っぽい帯で爽快感を。

5月には、とうとう一度も着物を着てお出かけの機会が作れなかった。反省している。
6月は、パーティーが多いので、とにかく着物を着ようと思う。

本日は、ピアノの発表会だった。毎年6月にライクホルト城で行うのだ。
今年は、奏者の人数は少ないが、一人当たりの曲は多かったり長い曲だったりして、時間的には例年と同じくらい。超初心者はもう生徒にいないので、幼稚園に入ったか入らないかの子が練習曲を弾いて聴衆の微笑を誘う、というシーンが見られなかったのが残念。

Angelica
Duvernoy Edude nr.1 en 3
W. Carroll The wood fairies

Jill
Y. Tiersen Comptine d'un sutre ete

Rosalie
Beethoven Fur Elise

Shayan
J. Strauss Persische Mars

Caio
J. S. Bach Prelude
C. Ph. E. Bach Solfegietto
C. Debussy Le petit negre

Tim
J. Brahms 3 Walsen op. 39
F. Chopin Mazurka op. 67 nr. 2
Mazurka op. 7 nr. 2
Mazurka op. 7 nr. 1

F. Heller Etude op. 46 nr.1

David
J. Haydn Deel 1 uit Pianoconcert in D hob. XVIII.11
F. Liszt Liebestraum nr. 1
G. Gershwin Prelude nr. 1

Pauze

Reine
C. Debussy Prelude uit 'Suite Bergamasque'
La plus que lente

Carine
F. Chopin Polonaise in cis op. 26 nr. 1

Chris
J. S. Bach/Busoni Chaconne in d

前半が子供の部で、後半が大人の部である。
多い年には30人くらい参加するのだが、今年は異常に少ない。初心者が淘汰されたのと、大人は別の用事で都合が付かない人が多かったからだ。
初心者は発表会用の曲の準備などできないから、弾く曲から教則本の傾向がわかる。Duvernoyというのが、今回唯一聴けた初心者向け教則本の作曲家だ。
Hellerも練習曲としては、こちらでは有名。ハノンとチェルニーを合わせたような感じだが、ずっとロマン派的な音楽になっているので、弾くのも聴くのもさほど苦痛ではない。

ティルセンの曲は、映画「アメリ」のサウンドトラックで有名だ。ミニマル音楽に属するのだが、センチメンタルでキャッチーなメロディなので、中学生に人気。技術的には易しい曲だが、聴く人の心に迫る度合いが高く、効果的だと思う。

それに対して、今時の発表会で「エリーゼのために」を弾くというセンスがわからない。わたしの子供時代、60年代なら許せる。まだまだ、発表会向けの曲が開拓できていない時代だったからだ。「エリーゼのために」は、ピアノ練習者ならバイエルが終わった頃必ず弾くから、手垢・耳垢にまみれ、誰でも知ってる曲だから皆聞き耳を立てていて、間違えたらすぐにわかるし、上手く弾いてあっと言わせるという成功率はごくごく低いのだ。案の定、ひどい演奏だった。

以前、次男の音楽学校の発表会で、高校生の女の子が「渚のアデリーヌ」(!)を弾いて、わたしをうんざりさせた。今ではその名を覚えている人も少ないだろうリチャード・クレーダーマンが、80年代初めに弾いて有名になった曲である。こんな懐メロでしかも当時からダサかった曲を21世紀になっても弾く人がいる、というのに耳を疑い、こういう曲を生徒が自分で選ぶわけがないから、教師または親の良識を疑った。

シュトラウスの「ペルシャ風マーチ」を弾いたシャイアンという男の子は、フル・ネームがえらく長いので、貴族かなんかの由緒ある家柄なんだろうなと思ったら、師匠のペーターが面白い裏話をしてくれた。
シュトラウスJr.が当時のペルシャのシャーのために作った曲で、シャイアンはそのシャーの末裔だというのだ。だから、この曲は彼のためのものでもある、と。

カイオもティムも小学生なのに、上手く弾く。上がらないというのも羨ましい。

前半のトリは、ダーフィッド。ハイドンの「ピアノ協奏曲」は、ペーターがデジタル・ピアノでオーケストラ・パートを演奏した。デジタルだといろいろな音が出せるから、こういうときは便利だ。
リストもガーシュウィンも、パーフェクトだった。ピアノを習い始めて3年ぐらいしか経っていないというのに、恐るべき子供(中1)である。しかも、この選曲の妙には感心した。古典派のピアノ協奏曲、ロマン派のリスト、そしてジャズの要素の入ったガーシュウィンである。選曲のセンスも才能のうちだと、わたしは確信している。

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後半は、わたしのドビュッシーから。2週間後に控えたコンサート(!)のためのリハーサルにしようと、着物で演奏した。草履だと、ペダルの感覚が違う。袖は全然邪魔にならなかった。
前日のレッスンでは、2回弾いて2回とも問題なしだったのに、当日はアガってしまって、ひどい出来だった。しかし、あまり有名な曲でないのが幸いした。この曲を聴きつくしている家族とペーターには「あがりまくって、酷いね」といわれたのに、何人かの人は、「いい演奏でしたね」と言ってくれた。聴いたことがない曲だと、間違えてもわからない。だから、選曲は重要なのだ。

カリンとクリスは、音大出てるし、コンクールや人前で演奏するのにも慣れてるし、安心して聴くことが出来る。この二人には、わたしのコンサートでもゲスト演奏してもらうつもりだ。特にカリンは、あがるということが全くないと、ペーターが太鼓判を押す生徒だ。クリスは、超難曲を選んだから、いくらミスタッチがあっても、一般聴衆にはわからないだろう。

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     有松絞りの浴衣は、黒に近い濃紺地に
     白の七宝つなぎ。その中に藤色がところどころに。
     帽子絞りの蝶のような大きな花がアクセント。
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by didoregina | 2010-06-13 22:13 | 着物 | Comments(8)

デュモーが歌う「オルランド」

日本では発売が延期になってしまったらしい、マルゴワール指揮でデュモーがタイトルロールを歌う「オルランド」が、ドイツアマゾンから速攻で届いたのは、もはや2週間近く前である。
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なかなかレビューが書けなかったのは、この盤にはイタリア語の歌詞も英語その他言語の対訳も全く付いていないからだ。レーベルのサイトからダウンロードできるとジャケットには書いてあるが、ダウンロードできるのは今のところ写真のみ。ためしに他のCDをクリックすると、歌詞がダウンロードできるものがあるから、もしかしたら「オルランド」は対訳が出来上がっていないのではないか。それで、日本発売が遅れているとか?ううむ、着々と進みつつあるらしいヘンデル対訳プロジェクトに、「オルランド」もぜひ入れてもらいたいものだ。

いずれにせよ、わたしにとってこのCDは、デュモーがタイトルロールを歌うという点が最重要ポイントである。
なぜかというと、彼がトロメオ・イメージ脱却を図るには、この「オルランド」は、まことに的を得た役柄とアプローチであるからだ。
それでは、まず、トロメオとオルランドのキャラクターを比較してみよう。

トロメオといえば、権力志向、ずる賢く卑怯で、奸智に長けるが、どこか間が抜けていて、結局のところ甘やかされて育ったボンボンなのだ。皇太子の弟、みたいな感じで、帝王としての教育がイマイチ徹底されていないから、のんびりおおらかなところもあり、基本的に楽天的である。物事の見極め方が甘い。だから、その両極端の性格が内面でせめぎあい、一種独特のキャラクターを形成している。
そういうヒステリックでエキセントリックなトロメオを演じ歌ったデュモーは、嫌なヤツとしてのトロメオを印象付けるのに成功した。

一方、オルランドのほうは、エキセントリックという点では、トロメオに負けてはいないかもしれない。しかし、それは彼の育ちや本性からくる性格ではなく、彼にとってあまりに厳しく不利な状況の産物なのである。
辺境の地での異教徒との戦いという使命によって、見も心も疲れ果てていたであろう。もともとロマンチストでメランコリックな性格だったとも思える。愛か騎士としての使命かの板ばさみに悩んでいた。しかし、決定打は、何と言っても愛する人の裏切りである。自分は悪いことをしていないのに、愛するアンジェリカは、別に男を作って駆け落ちをしようとしている。それがきっかけで、欝が狂気に変貌した。

その場面は、ミヤ様「オルランド」の動画がわかりやすい。


ミヤノヴィッチ演じるオルランドは、舞台が精神病棟というせいで、最初から狂という病状が明らかにされている。騎士としての使命か愛を取るかというロマンチックな悩みというより、欝と躁との間を行ったり来たりしている。
ただ、このアリアを歌うミヤ様の声には、なぜか精彩さが欠ける。特にコロラッチューラに滑らかさがなくブツ切れの音の連続だ。リズム感が悪い。細すぎて体力のない彼女には、この役は重すぎたのか。

上記を踏まえたうえで、デュモーによる同じアリアを聴いていただきたい。


どうだろう、この力強い躍動感と歯切れのよさは。騎士としての本領は失わずに、嫉妬に狂う男を見事に表現している。さすがアスレート系のデュモー選手である。息切れもせずに、見事なコロラッチューラを披露している。ミヤ様同様ライブ録音なので演技もしながら歌っているのに、この違いは、男女の体力の差から来るのかもしれない。
伴奏も、風雲急を告げるかのようで、事態の深刻さが明瞭である。
このCD中でもクライマックスで、出色の出来だと思う。

ああ、だからこそ、動いているデュモーを見たい!DVDになっていないのが残念。

デュモーの肉体美は、フラームス・オペラの写真を見て我慢してもらおう。
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    「ジャゾーネ」最後のシーン。
     考古学の遺跡発掘現場が舞台という
     始まり方だったので、登場人物は
     発掘物として箱に入れられる、という
     きちんとしたエンディング。
     しなやかなデュモーの体に注目のこと。


「オルランド」の躁状態を表すアリアFammi combattere を聴くには、ミヤ様の動画がいい。第一幕での、ミヤ様の本領発揮。コロラッチューラも素晴らしい。


愛と戦いの使命を両立させるぞと、意気軒昂のオルランド。なのに、どこか病的でもある。

デュモーも、元気いっぱい。ただし、ヴィヴラート利かせすぎかも。


全体を通して、デュモーのオルランドは、ミヤ様よりは病気の度合いが軽い印象である。
何と言っても、気品を失わないで力強く歌えるというのがデュモーの長所だ。
それは男女の体力差から来るのだけではない。筋力鍛錬を怠らないデュモーの勝利なのだ。
彼の歌声のノーブルさは、そのパワーとあいまって、ここに理想のオルランド像を築き上げたと言えよう。だから、どんでん返しのハッピーエンドも生きるのだ。愛情面では負けてきっぱりと身を引き、騎士としての本懐に戻る、という男らしさが充満するオルランドは、デュモーでなければ表現できないだろう。
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by didoregina | 2010-06-11 10:44 | バロック | Comments(4)

Savall meets Koopman

サヴァールとコープマンが共演するコンサートなんて、空前絶後。古楽コンサート今シーズンのトリを飾るにふさわしい。というわけで、会場の聖ヤン教会には、早くから聴衆が詰めかけ予想以上の盛況だった。

c0188818_2212361.jpg2010年6月5日@Sint Janskerk in Maastricht

Diego Ortiz (ca.1510 - 1570)
Folia IV
Passamezzo antico I
Passamezzo moderno III
Ruggiero IX
Romanesca VII
Passamezzo II

Tobias Hume (ca.1579 - 1645)
A Souldiers March
Captaine Hume's Pavin & Calliard
Harke, harke

Johann Jacob Froberger (1616 - 1667)
Toccata nr. 2 in d-klein
Tombeau de Mr. Blancrocher in c-klein

Johann Sebastian Bach (1685 - 1750)
Sonata II BWV 1028 in D-groot
Adagio - Allegro
Andante - Allegro

pauze

Marin Marais (1656 - 1728)
Prelude
Muzettes I & II
Menuets I & II
La Sautillante

Louis Couperin (ca.1626 - 1661)
Chaconne in G-groot

Sieur De Machy (actief 2de helft 17de eeuw)
Prelude in D-groot

Marin Marais
Les Voix Humaines
Folies d'espagne

マーストリヒトでの(古楽)コンサート会場には、この聖ヤン教会のほか、聖母教会や聖セルヴァース教会、セレブルダース・チャペル、福音ルーテル教会などが使われるが、音響面では、この聖ヤン教会が一番好みである。マーストリヒトでは珍しいプロテスタントの教会で、ゴシックの赤く塗られた塔が独特。
プロテスタントらしくあっさりとしたインテリアでほとんど装飾らしいものもなく、広さと天井の高さがちょうどよく、コンサートにおあつらえ向きである。残響が少なく、わんわんと響きすぎず、かといって音が壁面や天井に吸収されすぎないのだ。安心して聴くことが出来る。

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         中央の説教檀前にしつらえたステージ。
         客席は、コの字型に取り囲む格好。

プログラム前半では、オルティスとバッハをチェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバの二人が合奏し、ヒュームはサヴァール、フローベルガーをコープマンが独奏し、後半でも同じく、最初と最後のマレを合奏し、クープランをコープマンが、ド・マシーをサヴァールが弾いた。

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         チェンバロの蓋の上には
      If music be the food of loveの文字が。
         シェークスピアの「十二夜」の中の台詞。
         パーセルの歌曲にも同タイトルのものがある。
         チェンバロの制作年代と国は不明。

70年代にはこのコンビでよく活動していたようだが、最近はお互い別々の仕事に忙しく、スケジュール的に折り合わないから、ジョイント・コンサートの機会もめったにない、とのことである。
まあ、スケジュールうんぬんというより、二人の音楽的な方向が異なって行ったと考えるべきなんだろうが、何年かに一度は、この二つの彗星の軌道が交差する時期がある。お互いはるか彼方に遠ざかったかに見えても、軌道は楕円を描いているので、出会うときにはがっぷりと四つに組むのである。
そして、そのコンビネーションは抜群であった。しょっちゅういっしょに会ってるわけでもないのに、何十年か経っても昔の親友同士、すぐに話が弾み、離れていた年月を感じさせない。そんな印象である。
特に、前半最後のバッハでのアンサンブルは絶妙。この二人で2回も、バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタを録音しているようだから、手馴れたものかもしれないが。チェンバロもヴィオラ・ダ・ガンバも同じくらいの比重での演奏が丁々発止と進むのだが、まるで緻密で複雑な織物を鮮やかな手わざで縦糸と横糸を織り上げていく名人の仕事のような爽快さだ。二つの楽器の織りなす綾、その色と模様が目に浮かぶような気がする。(プログラム・ブックには、ソナタ2番BWV1027ニ長調と記載されていたが、BWV1028の間違いだと思う)

二人とも、特にこのバッハの演奏には満足したらしく、結んだ手を高々と上げ、聴衆の拍手に応えた。
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         満足げな二人。

休憩のとき、サヴァールは一旦舞台に戻ってヴィオラ・ダ・ガンバを置いていった。1697年ロンドンのバラク・ノーマン製作。美しい楽器。それをこんなに無造作に置いたままでいいのだろうか。触ろうと思えば触れられる位置。
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そして、サヴァールは通路を通って楽屋に行ったのだが、わたしは彼の前を歩いていた。びっくりしたのは、彼が小柄なこと。スペイン人だからそんなに珍しいことでもないが、コープマンも彼と同じくらいだから、コープマンはオランダ人にしては、異常なくらい小さい。多分二人とも160センチそこそこ。

独奏では、ヴィオラ・ダ・ガンバの方が聴いていて楽しめるから、チェンバロより分がいい。
特に、ヒュームの曲が面白かった。このイギリス人作曲家は船乗りで大佐を名乗り、なかなか興味深い人物だ。西洋音楽では初めてコル・レーニョ奏法指示の曲を作ったそうだ。



アンコールでは、フランスの(多分プロヴァンス地方の)トラッドのインプロヴィゼーションをトンとジョルディが。インプロヴィゼーションというとジャズのアドリブ・セッションを想像してしまうが、この二人の演奏した曲は対位法的な音楽で、これでもインプロヴィゼーションと呼ぶのか?と思うほど緻密なアンサンブルだった。音楽的には二人は仲良しなんだなあ、とこちらは思わず同窓会に招かれた教師のように目を細めてしまうのだった。
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by didoregina | 2010-06-08 16:41 | コンサート | Comments(12)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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