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来シーズンのバロック・マチネー

このところ、連日のように、コンサートホールや歌劇場から、来シーズンのプログラム・ブロシャーが届く。
しかし、首都圏のコンサート・ホールおよび歌劇場には、土日のマチネーしか行けない。
そうすると、選択の範囲が恐ろしく狭まるのだ。

例えば、ロッテルダムのコンサートホール、デ・ドゥルン。
バロック・シリーズとしては以下のラインナップ。

11月4日(木) モルテンセン指揮コンチェルト・コペンハーゲン+アンネ・ソフィー・フォン・オッターのバッハ・カンタータ、ヘンデルのアリア、ヴィヴァルディの序曲とシンフォニア。

12月15日(水) サヴァールとコンセール・デ・ナションによる、ラモー「優雅なインドの国々」「ダルダヌス」「ゾロアストル」組曲。

1月6日(木) オランダ・バッハ協会+ドロテー・ミールズ、ヨハネット・ゾマー他による、バッハの「ロ短調ミサ曲」

3月2日(水) クリスティー指揮レ・ザール・フロリサンによる、ラモーの「アナクレオン」と「ピグマリオン」

以上全て、平日の夜8時15分からだから、絶対に行けない。
しかし、このプログラムは、実に示唆に富む。というのは、彼らがロッテルダムだけで演奏会を行うとは思われないからだ。オランダもしくはヨーロッパ・ツアーの一環であろうと思われる。
つまり、エイントホーフェンに来てくれそうな予感と期待が大なのだ。フィリップス・ミュージック・センターの来季プログラム発表が待たれる。


アムステルダムのコンセルトヘボウでの土曜マチネ・シリーズのブロシャーも届いた。
めぼしい好みのものだけ揚げると、

10月23日(土) コープマン指揮ABO+3人のバロック・ヴァイオリニストによる、ラモー、ヘンデルのオルガン・コン、テレマンの3つのVのためのコン、バッハの管弦組曲3番。

12月18日(土) ブリュッヘン指揮放送室内フィル+カルミニョーラによる、テレマン、バッハのVコン、C.Ph.E.バッハのニ長調交響曲、モーツアルトの交響曲40番。

1月8日(土) オランダ・バッハ協会+ドロテー・ミールズ、ヨハネット・ゾマー他による、バッハ「ロ短調ミサ曲」

2月19日(土) マルコン指揮ヴェニス・バロック・オーケストラによる、ヴィヴァルディ「セーヌ川の祝典」

ほら、予想通り、すでにオランダ・バッハ協会による「ロ短調ミサ」が重なっている。これなら、マチネだから行ける!


そして、NRC新聞とバロック専門呼び屋さんFred Luitenの共同企画「コンセルトヘボウでのバロック声楽シリーズ」は、今年も凄い!
このコンビの企画で、去年はサラ様のコンサートが実現したのだが、「前コンサートの盛況とお客様のご要望に応えて」サラ様再登場!なのだ。
このシリーズは、日曜マチネなので、願ったり叶ったりである。

11月14日(日) ヘレベッヘ指揮コレギウム・ヴォカーレ・ゲントの創立40周年記念コンサート。
ドロテー・ミールズ、ペーター・コーイ、ダミアン・ギヨン(CT)ほかによる、バッハ「マニフィカット」ほか。

2月6日(日) サラ・コノリーとローズマリー・ジョシュア+ムジカ・アムフィオンによる、ヘンデルのアリアとデュエット!
「多大なる要望に応えて、メゾ・ソプラノのサラ・コノリーがこのシリーズに再登場。今回は、コノリーの希望で素晴らしいソプラノのローズマリー・ジョシュアが共演」とのこと。来年の楽しみが増えた!

4月5日(日) クイケン指揮ラ・プティット・バンドによるバッハ「ヨハネ受難曲」

6月15日までに申し込むと、16%割引で、「ヨハネ」を除いた2プログラムで、99ユーロ(開演前と休憩中の飲み物込み)。+「ヨハネ」で149ユーロ。


3月に入ったら、また次々と来季プログラムが発表になるだろうから、楽しみ、楽しみ。
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by didoregina | 2010-02-28 22:22 | コンサート | Comments(14)

速報:DNOの来シーズン・プログラム発表

待ちに待った、アムステルダムのDNOの来シーズン・プログラムが発表された。

マレーナ様のサイトで、彼女出演のオペラがないことは知っていたから、去年ほどドキドキして待っていたわけではないが、蓋を開けてみると、全体的にいまひとつ魅力に欠ける。
新プロダクションが少なくて、再演やどこかのプロダクションを持ってきたものが多い。
また、イタリアものが少ないのは例年通りだが、来シーズンはさらに減って、ヴェルディが一つだけ。
ワーグナーもない。
かなり渋いというか、通好みというのか、いかにもアムステルダムらしい。つまり、一国の文化を担う首都の歌劇場という気負いがあるからか、大衆・初心者はターゲットからは外されている。高踏的というか衒学的というべきか。
ここ20年この路線で推し進めて成功している芸術監督オーディの好みと、オランダおよびアムステルダムの文化政策がよく反映されている。(だから、オーディがメトロポリタン・オペラに演出家として初登場して、先日初日を迎えたヴェルディの「アッティラ」が、NYでの受けが悪かったのもよくわかる)

それでは、演目の順を追って、一口コメント。

ヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り」 新プロダクション。来シーズン唯一のイタリアものがこれ。

グノーの「ロメオとジュリエット」 ミンコフスキー指揮。コーラちゃんがステファーノ役でようやく登場。

ツィーマーマンの「兵士達」 ヴィリー・デッカー演出。日本でも上演された。

ベートーベンの「フィデリオ」 カーセン演出。ナジャ・ミヒャエルがレオノーレ。

ヤナーチェクの「賢い女狐」 リチャード・ジョーンズ演出。ローズマリー・ジョシュアがタイトルロール。

ワーヘマンスの「伝説」 新プロダクション。オランダの現代作曲家の作品。

ブリテンの「ビリー・バッド」 ジョーンズ演出。

ラモーの「プラテー」 新プロダクション。ヤーコブス指揮。ヨハネット・ゾマーも出演。

モーツアルトの「ドン・ジョヴァンニ」 ヴィーラー&モラビト演出の再演。コーラちゃんがツェルリーナ役。

シュトラウスの「ばらの騎士」 ブリギッテ・ファズベンダー演出。ラトル指揮でコジェナーがオクタヴィアン!

リーンの「ディオニッソス」 オーディ演出。今年6月にザルツブルグで世界初演。

チャイコフスキーの「オネーギン」 ヤンソンス指揮コンセルトヘボウ。


ラインナップを見て一目で分かるのは、厳しい予算である。新プロが少なく、どこかから借りてきたものや再演が多いのは、苦肉の策に違いない。

個人的ハイライトとしては、「ばらの騎士」に止めを刺す。
実は、コジェナーは、声や歌い方でいったら、マレーナ様の次に好きなメゾなのである。(サラ様は僅差で3位)
歌手別手持ちCDの数ではコジェナーのが一番多い、隠れコジェナー・ファンなのだ。しかし、キャラクター的にはどうか、ナマを見たり聴いたことがないから、わからない。だから、これにはかなり期待している。

それから、コーラちゃんが2つも出演するというのは、喜ばしい。若手オランダ人歌手なんだから、国策としても本国で活躍の場を与えなくてはいけないのだ。

先日、エクサンプロヴァンス音楽祭の今年のプログラムを見て、マリヤーナ・ミヤノヴィッチも出演する、ストラヴィンスキーの「ナイチンゲール」が、DNOとの共同制作になっているのを発見した。だから、来シーズンは、ミヤさま久々に登場か、と期待していたが、再来年になるのか、それとも、今年のホランド・フェスティヴァルに持ってくるのか。ホランド・フェスティヴァルのプログラムは、3月早々に発表されるから、望みは捨てない。

ついでに、コンセルトヘボウの夏のロベコ・シリーズのプログラムも発表になった。
マチネがほとんどないから行けないが、7月5日にPJ様のコンサートがある。終演後に、サイン会その他もあるから、アムステルダム近郊の人が羨ましい。
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by didoregina | 2010-02-26 00:12 | オペラ実演 | Comments(8)

Leif Ove Andsnes @ Muziekcentrum

エイントホーフェンのフリッツ・フィリップス・ミュージック・センターでのレイフ・オヴェ・アンスネスのコンサートに行ってきた。
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Schumann: 3 Romances Op. 28
Schumann: Novellette, Op. 21 No. 5
Kurtag: Selection from Jatetok
Schumann: Kinderszenen Op. 15
Chopin: Ballade No. 3 in Ab Major Op. 47
Chopin: Waltz in Db Major, Op. 70, No.3
Chopin: Waltz in cb Minor, Op. 64, No.2
Chopin: Walts in Gb Major, Op.70, No.1
Chopin: Waltz Op. 42
Chopin: Nocturne Op. 62 No. 2
Chopin: Ballade No. 1 in G Minor Op. 23

平日の夜にエイントホーフェンまで行くのは、やはりちょっと無理があった。
なんだかんだで開演までに入場できず、最初のシューマン2曲は聴けなかった。(「ノヴェレッテ」はドアから漏れる音だけ聴いた)

クルタークの曲は、1973年作曲の現代曲のため、アンスネスも暗譜できないらしく、楽譜がセッティングされた。その合間に入場させてもらったのだ。
なんだかとても短い曲が8曲くらい続く。ヘンな不協和音だとか妙なテクニックを強いることがない、割と聴きやすい現代曲である。高踏的でもなく、諧謔的でもなく、風刺的なところもない。
興味を覚え、ちょっと弾いてみたくなった。

楽譜をまた片付けてから、シューマンの「子供の情景」が、その後に続く。
アンスネスの弾き方、指使いを見ていると、なによりも目に付くのはその流麗さだ。余裕のある丁寧さで、アグレッシブだったり派手なハッタリとは正反対なのが、好印象を与える。
大きくて厚みのある手だから、何とも言われぬ温かみがある音が出せる。ビロードのタッチである。
また、重量のかけかたが安定して均整がとれているから、音は粒ぞろいで、聴くほうはゆったりと安心感に包まれる。
そして、グリッサンドのピアニッシモの嫋嫋たる余韻には、心がとろけそうになる。

彼の弾く「子供の情景」は、思い出を慈しみつつ辿るような内省的アプローチで、鮮やかな色彩感覚には欠けるが、こういう静謐な世界もいいなあ、と思った。
思いを内にこもらせて完結しているかのようで、モノトーンのグラデーションがかかった大人の目から見た子供の世界だが、枯淡ではなく、突き放してもいない。なんとも不思議な彼独特の解釈で、聴くほうも内省的にならざるを得ない。

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休憩後は、ショパン・プログラムだ。
まず、選曲からして、いかにも彼らしい。派手なポロネーズやソナタは入っていない。センチメンタルな曲も外されている。派手なテクニックの披露など児戯、名人芸を見せ付けるのも野暮、との確固たるセンスが感じられる。
演奏も、とにかく理知的で、感傷に溺れない。
しかし、それが、冷たく突き放した印象にはならないのは、真摯な態度と技術に裏付けされた余裕が上手くミックスされているからだ。
彼の演奏するショパンは、感情を溢れるままに流出させたり、またはいかにも高揚感を与えようという魂胆のかけらも見えない。
「思索の源泉としての音楽」という言葉が、頭に浮かんだ。

フィリップス・ミュージック・センターの音響には、今まであまり満足したことがない。木をふんだんに使った内装のせいなのか、ピアノのせいなのか、ピアニストのせいなのか、判然とはしないが、硬くて無機質かヒステリックに響く音に、不満が残ることが多かった。ピアノの音色にいちいちイラつかずに聴けたのは、今回が初めてだ。今までの不満の種は、どうやら、ピアニストのせいだったようだ。

拍手はかなり熱狂的に長く続いた。
アンコールは、結構長いバッハとショパンの2曲で、サービス心も旺盛のアンスネスだった。
終演後のCD販売とサイン会も盛況。

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          きっとサイン会があるだろうと思い、雨模様であったが、
          15分くらいで必死になって着物を着た。
          しかし、写真を撮る時間はなかった。
          泥藍大島には、いつも同じ帯を合わせがちなので、今回は
          薄い抹茶色の塩瀬の地に、埴輪のような不思議な絵が
          描かれた帯にしてみた。グリーン好きの母のもので、初おろし。

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          思ったとおり、サイン会があった。
          しかし、カメラを車の中に置いてきてしまった!残念。
          せっかく無理して着物を着て行ったのに、ツーショットが
          撮れなかった。。。
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by didoregina | 2010-02-24 11:29 | コンサート | Comments(6)

Trio Mediaeval の Folk Songs

アルチーナさんが、以前ブログで紹介していたノルウェーの女性3人組Trio Mediaevalの動画が、なぜかとっても印象に残り、名前が頭の片隅に引っかかった。彼女達のオランダ・ツアーのことを知ったのは、数ヶ月前である。しかも大都市の有名ホールだけでなく、なぜかヘーレンの市民劇場にも来るとわかり、心待ちにしていた。丁度日曜午後なので、お誂え向けである。また、ヘーレンだから学割が利くのもうれしい。(基本的に、コンサートだったら30ユーロ、オペラだったら80ユーロを上限としてチケットを買っているが、学割が利いたり、招待券を頂いたり、または補助金のおかげでもともと値段設定が低い場合が多いので、コンサートは平均20ユーロ未満で聴いている。オペラもマレーナ様が出演しないものだったら、50ユーロくらいまでしか出さない。)

コンサートには、音楽学校の仲間3人で出かけた。トースは、わたしが着物姿で来るだろうと踏んで、黒地に赤で印伝風の硬貨のような模様をプリントした小紋の羽織を裏返しにして着てきた。羽裏は黒地にオレンジと白で大きく花模様を絞ってあって、こちらのほうが派手だからである。洋服の上に羽織っていたが、似合っていた。写真を撮り忘れたのが悔やまれる。

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          この冬、着倒した感のある蝋たたきの紬に
          茶色に芥子色の細かい霰の羽織。

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          前帯は茶色、お太鼓部分で鉄(にび)がかった青磁色に
          分かれる染め帯。バッグと色をちょっと合わせてみた。

コンサートのプログラムは、フォーク・ソングというタイトル通り、ノルウェーやイギリスの古歌(13世紀や14世紀)がメインで、合間にここ10年のトリオのためのオリジナル曲が入る。いずれもタイトルを見ると、マリアを讃える内容の宗教的な古謡である。しかし、このくらい古くなると、抹香臭さよりも雅趣の方が強く感じられる。3人の澄んだ声で、現代的アレンジによる抜群のハーモニーで聞かせるから、瞑想的というより神秘的である。不協和音も美しく、あくまで印象は清清しい。
トースとマリアンに「女性版キングズ・シンガーズだから聴きに行こう」と銘打って誘ったのは、あながち見当ハズレではなかった。しかし、名人芸っぽくしないで、さらっとキレイに聞かせるのが女の心意気!という感じで、さりげない粋さでは、キングズ・シンガーズよりもずっと上で好感度抜群。

基本的にア・カペラの3声重唱だが、前半最後の2曲は、メロディック・ハンド・チャイムという楽器を手に伴奏(?)しながらだった。ミステリアスな雰囲気をより深めるため、舞台から降りて、客席の3方に分かれて演奏した。サラウンディング効果は抜群で、野鳥や動物の声を真似たような発声も入るので、まるでノルウェーの森の中にいるような気分になった。
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     一人2本ずつ手に持って振りながら歌う。高音のゴングみたいな音。
     残響が長く神秘的。(終演後、気になる楽器の名前をメンバーに訊いた)

もう1曲Fallingは、出来立てホヤホヤ、歌うのは今日が2回目というものだった。
ローリー・アンダーソン(!)の詩にアントニー・フィウマラという人が曲をつけたという。
歌詞は、I was looking for you, all day long. But I couldn't find youの繰り返しで、ゆっくりと即興的に歌われる。ゴングのようなチャイムに彩られたミニマルなメロディーは、心が締めつけられそうに美しい哀しみに満ちている。余韻と間が絶妙な秀曲で、思い出しただけで涙が出そうになる。
ローリー・アンダーソン作詞との説明を聞いて、びっくりした。というのは、このトリオの一人、赤毛の人がローリー・アンダーソンに似てるなあと思っていたからだ。
なにかローリー・アンダーソンと縁でもあるのかと気になり、終演後に訊いたら、何もないとのこと。作曲家が、アンダーソンと知り合いかもしれないとは言っていた。
「この曲が、とっても気に入りました」と感想を言ったら、メンバー全員、我が意を得たりとばかり「そうでしょう」と肯いていた。

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     終演後にサイン会。CDは買わずに、記念写真。ピンボケだが、
     気になることは質問でき、疑問も解けたので満足。


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ロビーには、オペラ・ザウドの昨年9月公演「ディドとアエネアス」の衣装が。ジャッキー・オナシス風のディドだったらしい。
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by didoregina | 2010-02-21 22:25 | コンサート | Comments(4)

帽子中毒

3年も帽子作りをホビーとして続けているのは、飽きっぽいわたしとしては画期的なことである。
それは、帽子作りという作業が、中毒を帯びる性質のものであるからだ。しかし、別に、危ない薬品を使用するわけではない。
すぐにカタチができる、というのがまず第一のポイントだろう。苦節10年、などという下積み時代を経ずとも、初心者でも最初のレッスンでいきなり、成型できちゃうのだ。
そして、世界に一つしかない帽子が作れて、しかも実用的なのだ。使えないものがどんどん増えちゃう、というホビーは結構多いものだ。

今回から、友人・知人3人をレッスンに引き釣り込んだ。
P先生のアトリエは、生徒4人で超満員になる。木型やフエルト、ガーゼ、ストローなどの材料が山積みのほか、先生が作った作品も展示してある。

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              フェミニンなP先生の作品。

まずは、素材を選んでデザインを決定しなければいけない。
自分に似合う形は、帽子を被りなれていないとわからないから、とにかく片っ端から頭に載せてみる。
そうすると、意外なカタチが似合ったり、気に入ったデザインでも、自分の顔とはちぐはぐだったりすることを発見する。

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             様々なデザインと色と素材の帽子。全てP先生の作品。

近所に住む、洋裁の得意なAは、最近買った素敵な茄子紫色のマックスマーラのコートに合わせる帽子を作りたい。冬は、コート、ジャケットを必ず外出の際着るから、それに合う色と素材の帽子を作るというのは、とっかかりとして、順当である。
彼女は、フエルトの帽体からではなく、ウールの綿からフエルトを作って、帽子を作ることに決めた。だから、第一回目は、フエルト作りの練習になった。しかし、どの色にしようか、レッスンの3時間中ずっと考えていた。妥協は禁物だから、このような真摯な態度はよろしい。

もう二人の新人は、すぐにお気に入りの素材を見つけた。クローシュ型(つばの広くない釣鐘型)のフエルトで、模様が入っているものだ。かなりクセがある素材であるが、つばが広くない帽子は、初心者向けである。

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             ビーバーの毛のフエルトにサイケなプリント。
             第一回のレッスンで、ここまで成型できた。


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             こちらは、ヘリングボーン模様のウールのフエルト。  
             ジョッキー風のキャップに成型。

帽体に特殊成型ノリを塗って、蒸気に当てて柔らかくしてから、木型に被せぎゅうぎゅうと押し伸ばす。
隙間がないように、当て布をしたアイロンで伸ばして、木型に密着させる。このまま一週間置いて成型。

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              わたしは、3年前に作った麦わら帽の形が雨に濡れて
              崩れたので別の型に作り変える。
              クラウンは、ソフト帽タイプにして、つばも狭くする。
              つばが広いと、海岸リゾートかカントリー・サイドでしか
              被れないから、町でも違和感のないようなデザインに。
              クラウンとブリムを切り離して別々に成型、しかも  
              扱いにくい素材なので、中級者向けだ。


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              成型ノリを塗って、蒸気にあててから、型にあわせて伸ばす。
              木型に鋲で留めていくのだが、硬い木のため鋲が入りにくく、
              指が肉離れ。気がついたら人差し指の爪がゆがんで血が出
              ていた。

素材とカタチが決まれば、第一回目のレッスンで成型まで一気にいける。
しかし、そのあと、切ったり縫ったりの始末、リボンや縁飾りなど、最終的デザイン決定と仕上げに、もっと時間がかかる。硬くなった立体のカタチを壊さないように、ミシンや手で縫うのは、なかなか骨が折れるのだ。
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by didoregina | 2010-02-18 18:00 | 帽子 | Comments(2)

不本意ながらカーニヴァル考

カーニヴァル期間中、マーストリヒトの人間は、人口統計上3つの区分に分類でき、その比率はほぼ同等で3分割できる。(地元の某旅行代理店の見解に基づく)

第一のグループは、カーニヴァルを毛嫌いして、オーストリアやスイスなどにスキー、もしくはカリブ海やカナリア諸島などに避寒に出かける。これらの人々は、金銭的に余裕があり、社会的地位および知的見地からも比較的上層部に属する。
第二のグループは、根っからのお祭好きの庶民階級である。年に一度の楽しみだと割り切り、この3日間のため貯めた金を衣装とお酒に湯水のようにつぎ込む。
第三のグループは、消極的にパレードなどを見物する側に回る。
第二、第三のグループには、観光客が大量に入り込み、空席になっている第一のグループの座を埋める形になるため、カーニヴァル期間中、マーストリヒトの総人口は普段と変わらない。

カーニヴァルというのは、日本人には基本的に理解できないものだと確信している。
パレードを見物しただけでは、阿波踊りを見物しただけみたいで、片手落ちもはなはだしいものだ。
参加したと豪語するには、仮装しただけでは弱すぎる。3日間、こちらのカフェからあちらのカフェに河岸を変えつつ、騒ぎ続ける気力がないといけない。カフェでは、ビールを飲み、カーニヴァルの歌にあわせて、知らない人とでも踊らなければいけない。この馬鹿騒ぎを3日間続け生き残った者のみ、カーニヴァルの正規参加者と認められるのである。

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            義弟の奥さんが作ったカーニヴァルのポスター。

人生の半分をオランダ南部、カーニヴァルの本拠地で過ごしてきたが、カーニヴァルに浮かれる人々の心理は未だ理解したとは言えない。
それで、本当ならカーニヴァルから逃げ出したかったのだが、不本意ながら、ドイツのラインランド地方の小さな町ケンペンのカーニヴァルに出かけた。義弟の奥さんの誕生パーティだったからだ。

ケンペンのカーニヴァルは、なんと3年に1度しか行われない。ドイツでは、ケルンなどライン川沿いの地方がカーニヴァルの本場だが、こういう小さな町では、毎年は祝われない、というのも不可思議である。
TVで見るラインランドのカーニヴァルは、山車も派手だが、度肝を抜かれるのは、ばら撒かれるお菓子の量だ。それを、今回、この小さな町でも実体験した。パレードに参加したグループは119で、それらが雨あられのごとく、駄菓子をばら撒くから、ダンボール一箱やショッピングバッグ一杯分は軽く集まる。ざっと見ても、消費するのに1年かかるんじゃないか、と思われるほどだ。

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         小さな町だから、パレード団体も規模がかなり小さい。
         見物人もパレード参加者も、体を内側から温めるため、
         外では、ジンやウィスキーなどの強い酒を飲みながらの我慢大会。
   
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         パレードのトリは、カーニヴァル・プリンス。
         この町には「プリンス・クッキー」で有名なLUの
         工場があるので、クッキーもどーんと一巻づつばら撒く。

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         マーストリヒトのように観光地でないのでカフェも少ないから、
         合間には、義弟の奥さん(アーチスト)のアトリエで飲み食い。

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         もちろん、着物で出かけた。
         雪がまた降って、零下2,3度だったが、
         重ね着したら、結構平気だった。
         ウールの紅型風着物に、黒地に漆で唐獅子牡丹の
         派手な絵の羽織。

着物の威力はまたしても絶大で、見物していたら、ギフト箱入りチョコレートをパレードの人から手渡された。これで、当分の間おやつには事欠かないだろう。

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         お約束のダンス。この人、かなりリードが上手だった。

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         ご当地のカーニヴァル菓子は、ベルリナーみたいな
         ジャム入り揚げパン。

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         オランダ南部のカーニヴァル菓子は、ノネフォッテン(尼さんのお尻)
         お土産代わりに手作りを持っていったら好評だった。
         
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         ノネフォッテンは、イースト入りの生地をリボン結びにした形が特徴。

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         二次発酵させてから、ラード入りの油で揚げるのがコツ。
         カラリとまわりはしっかり歯ごたえがあり、中はふんわり。
         狐色より濃い目にしっかり焼き色を付け、砂糖をまぶす。
      
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by didoregina | 2010-02-15 22:05 | 着物 | Comments(14)

Enduring Love

タグにダニエル・クレイグというカテゴリーも設定してあることだし、2度見たこの映画について書いてみよう。
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2004年 ロジャー・ミッシェル監督作品、
出演: ダニエル・クレイグ、 サマンサ・モートン、 
ライス・エヴァンズ他









イアン・マキューアン原作で、本の邦題は「愛の続き」、映画の邦題は「Jの悲劇」。うーん、、、、
タイトルをうまく訳すのは、本当に難しいものだ。まさに「不実な美女か、貞淑な醜女か」の選択に悩む。
内容を過不足なく伝え、スタイル(文体)の統一感もあり、語感がよく、語呂あわせなどもよく考えた上で、しかもキャッチーでなくてはならない。
「愛の続き」は、まず、第一の点で、失格。原題の単語を訳してバラバラにした上でなんとかくっつけただけみたいで、内容と隔離している。
「Jの悲劇」は、よくよく練ったのか、割と軽いノリで決まったのかわからないが、まあまあか。主人公とストーカー二人のイニシャルである。しかし、タイトルから連想するのは、エラリー・クィーンの未完の遺作発見!みたいな感じだ。

数年前にDVDを借りて観た。今回は、TV放映されたもの。2度目で、ストーリー展開はもう知っているから、ディテールに目が行く。
そうすると、一回目は気がつかなかった意外な配役に、びっくりで、2度楽しめた。

ダニエル・クレイグ演じる主人公ジョーイは、大学で「愛」などについて講義をしている。でかいメガネ姿は、インテリ業界らしいダサさ満点。しかし、どの映画でもすぐに脱がされる宿命を背負った役者だから、水着姿も見せてくれる。
そのガールフレンドのクレア役が、サマンサ・モートン。彼女は、先日観た「コントロール」でも、主人公の妻役だった。役柄は彫刻家なのに、いつもどおりのイモ姉ちゃんぶりで、話し方もモサモサとくどくて、頭の回転がゆっくりそうで、この人が出てくると、わたしはイライラする。サム・ライリーやダニエル・クレイグなどのいい男の相手役に、どうして、こういう冴えない人が選ばれるのか、納得できない。

ジョーイとクレアは、たたなづく緑の丘陵地帯の草原で二人だけのピクニック。シャンパンの栓を抜いて婚約しようという直前、付近に赤い気球が不時着。と思いきや、子供を籠の中に残したまま気球は飛び立ちそうになる。数人の男がそれを止めるべく、気球にしがみつくが、無常な風にあおられて気球は舞い上がる。
この映画では、ダニエル・クレイグもジェイムズ・ボンドではないから、あわやの高さで手を離す。みんなも次々と。しかし、一人だけ責任感の強い医師は、最後までこらえるが、結局空の高みから墜落して死ぬ。
この第一の悲劇のトラウマ、罪の意識が、通奏低音のように映画全体に流れるのだ。

同じく気球にしがみついていた男ジェッドが、共体験感や罪悪感は薄いが、妄想を抱いたストーカーになるのだ。このジェッド役は、「ノッティング・ヒル」でもかなり変な男のスパイク役だった人。誰でも、一目見て、ヘンだ、と思うタイプで、これに付きまとわれたらかなわない。
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             勝手に愛されていると思ってるストーカーと被害者。

ジョーイとクレアの友人役に、「ラブ・アクチュアリー」で変な歌手役だった、ビル・ナイも出ている。この人、脇役として出演している映画の数は相当なものだと思う。クセはあるけど軽い味で渋さのない人だから、便利なんだろう。
それから、大学の教え子役に、ベン・ウィショー(「パフューム」での主役や「ブライト・スター」のジョン・キーツ)が、ヘンな大学生として、ちらりと姿を見せる。無精ひげでぼーっとした目つきだが、教室の中でひときわ光を放って目立つのは、さすがだ。落ち着きなく貧乏ゆすりしたり、訥弁で的はずれの質問したりして、ちょっと自閉症気味の大学生を演じるのだが、素晴らしく上手い。キース・リチャーズなんて、きっとハマリ役になるだろう、期待できる役者である。

また、ディテールで気に入ったのは、背景になっているロンドンやカントリー風景である。
ミレニアム・ブリッジを渡ってテート・モダンに行く道筋などは、「おお」と感慨深く、美術館最上階のレストランも重要な舞台で、懐かしさ満点だった。
イギリスらしさ満点の緑の丘陵でのシーンは、ああ、寝転がってピクニックしたい!と思わせる。

サイコ・ドラマとしての緊迫感が、やはりダニエル・クレイグ主演の「ラブ・イズ・ザ・デヴィル」に似ている。
妄想心理を病理的に追求し、究極の不条理を描いた映画だ。ダニエル・クレイグが「カジノ・ロワイヤル」以前に出演した映画は、粒ぞろいで駄作・凡作はないから、これらと並んで「レイヤー・ケーキ」「ミュンヘン」などもぜひ。
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               ビル・ゲイツみたいなメガネは減点対象。
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by didoregina | 2010-02-14 12:15 | 映画 | Comments(4)

Hygiene de l'Assassin

c0188818_1733193.jpg 演出 : Pierre Santini
作 : Amélie Nothomb
翻案 : Philippe Jeusette &
Alexandre Trocki
監督 : Coralie Pastor
出演 : Daniel Hanssens,
Vincent Lecuyer & Valérie
Marchant
収録劇場: théâtre Le Public à Bruxelles & au Théâtre de
Namur(2008年)


フランス語放送局のTV5Mondeが、最近新聞のTV欄枠を獲得し、おすすめ番組紹介もされることが多いので、つい観てしまう。日本でも、昨年12月から、日本語字幕つきで放送されているようだ。
ミニ・シリーズの歴史ロマン・コスチューム時代劇、ルイ14世の母后と宰相マザランの関係を描いた「王妃と枢機卿」なども、面白かった。

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                                    マザランといえば、この髪型と衣装でおなじみ。











今回は、アメリー・ノートン原作の「殺人者の健康法」という芝居が放映された。
ノートンが25歳の時の処女作である。期待は大きい。

一番上の写真、暴食のため肥大して歩行困難になった作家タックが主人公。
ノーベル文学賞も受賞し多作で人間嫌いの作家にインタビューしに来た男性ジャーナリストは、作家の機関銃のような毒舌についていけず、生半可な知識では討論でも到底太刀打ちできず、また作家本人のグロテクスクさに辟易して退散する。
そのあと、今度は女性がやってくる。彼女は、全作品を仔細に調べた結果、ある確信を持って、未完の作品と作家の秘密の関連性を知る。このジャーナリストは明晰で舌鋒も鋭く、作家を追い詰めて、その作品に描かれている内容が自伝的事実であることを突き止める。
二人の丁々発止の言葉のやり取りは、サド・マゾ的関係に近くなり、スリリングだ。

ネタバレになるが、暴かれた作家の秘密はこうだった。
今は、醜い宦官のような外観の作家だが、その昔は拒食症気味の美しい少年だった。年下の従姉妹との恋を少年らしい美的感覚で成就するため、大人になって醜くなる前に従姉妹を殺したのだった。
いとこ同士である少年少女の関係と殺害にいたる過程は、その耽美的設定が、香山滋の「海鰻荘奇談」を思い起こさせ、わくわくした。
作家は、女性ジャーナリストによって首を絞められ、恍惚状態で死んで、幕。

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アメリー・ノートンは、日本生まれのベルギー人。かなりユニークな帽子がトレードマークで、奇矯な行動でも有名なエキセントリックな人だが、文学の才能は相当のものだと、現在住んでいるフランスでは認められている。
日本の会社社会をおちょくった作品「恐れ慄いて」で顰蹙を買い、日本での受けはよくないようだ。
しかし、以前彼女のインタビューをTVで見た限り、彼女の日本への惚れこみようは、かなり本格的なものがある。
幼児期を過ごした日本は、彼女の中で崇高なまでに美化されている。その後に行った国々は日本と正反対で、彼女はとても不幸だったそうだ。20代になって、商社で働くため日本に舞い戻った。その体験に基づき2冊の本も書いている。そのうちの2冊目は、日本の言霊信仰に対する洞察に基づきながら、吉本ばななにも通じそうな軽さがあり、日本語に翻訳されてしかるべきだと思う。

インタビューで彼女が語った言葉が印象に残っている。
「日本人の美的感性は、世界中のどの民族にも見られない独特のものだ。日本人にしかわからない美が存在する。恐るべし」と。
これは彼女の、日本への実らない片思いを表白したものだと、わたしは思う。
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by didoregina | 2010-02-09 10:12 | Comments(5)

シュトラウスのオペレッタ 「ジプシー男爵」

c0188818_1824111.jpg2010年2月5日
@Stadsschouwburg Sittard

Muzikale leiding: Pieter Cox
Regie: Marc Krone
Choreografie: Thao Nguyen
Decor: Karel Spanhak
Kostuums: Marrit van der Burgt


Solisten:
Barinkay - Andreas Schagerl
Saffi - Christina Khosrowi / Maartje Rammeloo
Homonay - Dieter Goffing
Zsupan - Bert Simhoffer
Arsena - Svea Johnsen
Cszipra - Rita Lucia Schneider
Mirabella - Daniella Buijck
Ottokar - Rik van de Rijdt
Conte Canero – Stan Lambregts

招待券を頂いたので、オペレッタを観にいった。
カーニヴァル前の能天気な賑やかさにふさわしい演目である。
NRC新聞に載ったカスパー・ヤンセンの評も、非常に好意的だから期待が持てた。
会場の駐車場に入るのが、まず大変だった。車の列が尋常になく長い。
招待客が多いだろうし、チャーター・バスで来ているオペレッタ愛好家と思しき団体もいるせいか、会場は満員御礼の盛況だ。

東欧、ドイツ、オランダ、オーストリアからの歌手やダンサーを寄せ集めた団体、国際オペラ制作基金というのが数年前設立され、地方都市にオペラ巡業を行っている。演目は大概誰にでもウケがいい超有名オペラで、演出はヒネリがなくストレートで、舞台装置は冴えない、というのが、お決まりパターンであるから、見に行こうという気にはまずなれない。しかし、招待となれば話は別である。話の種にもなるかもしれないから、シュトラウスのオペレッタに出かけてみた。

ドサまわり団体の宿命であるから、舞台装置には大掛かりなものは持ってこれない。しかし、バルコニーのある塔のような建物を左右に配置し、背後に数段高くした台だけを置くという、これは、まあ、思った以上にチープでシンプルである。
コスチュームは、ジプシーはそれらしい普段着で、金持ちはまたそれらしく、軍隊はまたそのものの制服で、ファンタジーは微塵もみられない。とにかく、コストを極限まで抑えた結果だろうからグチっても仕方がない。

オケは、ウクライナから連れてきたようである。なかなかに、ウィーン風のワルツなど、地方の老人ウケのいいムードで演奏している。しょっぱなから、おなじみのメロディーが次々と流れるから、周りから鼻歌が聞こえてくる。立ち上がってワルツを踊りだす人が出るんじゃないかと期待したが、アンドレ・リューのコンサートのようなノリにはならなかったのが残念。

歌手は、予想通り、けっこう上手い。若手がこれだけ揃っているというのが、いかにも東欧系らしい。
自国ではチャンスがなく、なかなか芽の出ない人たちがいっぱいいそうだから、そういう人をかき集めたら安くいい人材が得られる。
特に、コーラスとダンサーに若手を揃えたところがいい。舞台が華やぐし、演技や踊りもバシッと決まり、舞台装置の安っぽさを帳消しにしてくれる。
振り付けも、難解なモダン・ダンスではなく、ブレーク・ダンスみたいなのが主体で、ヒップホップ風コサックの踊りなど、観ていて楽しい。

主役級も文句なく、自慢の喉を聞かせてくれた。
ストーリーは単純でたわいもないもので、ハッピーエンドはお約束だから、演出もストレートに行くしかないだろう。時事問題など、小難しいものを読み取るのは不可能である。それでいいのだ。
c0188818_18541672.jpg


しかし、何も考えさせるものがないから、レビューを書く材料が見つからない。
後に何も残らない、余韻も何もない、もちろん、また見たいという気にもならない。
一晩限りの楽しみに、ぱっといい気分になってお仕舞いである。

ここの市民劇場で、スポンサーのパーティに招待されたのは、これで3度目である。
一般フォアイエより、招待客用の特別室のほうが広い、というところが、まず問題だ。
幕間には、飲み物のほか、カルパッチオのつまみが出た。
終演後は、ビュッフェ式ではなく、小皿に乗せたコース料理が配られた。ティラピアのソテーの乗っかったギリシャ風リゾット(クリーミーで美味しかった)、オッソブッコにポテトと赤キャベツのピューレ添え、チーズ各種は自分で好きなだけ取れ、デザートはアイスクリームのパンケーキ包み、温かいチェリー・ソースかけであった。

この手の文化活動にスポンサーとして招待されるのは、これで最後だと主人が言うから、そうだろうな、このご時世に、と納得した。社交を兼ねた地方文化振興という名目ではあるが、お金が掛かり過ぎである。無駄遣いとは言うまいが。
職場から10人が招待された。当日17時近くになって2枚チケットが余っていることがわかったが、金曜の夜だから急にいける人が見つかるわけがない。義母を誘ったら、大喜びでついて来た。ストレートなオペレッタを堪能し、パーティでもおしゃべりに花を咲かせ、心から楽しんだようだ。

着ていく着物には迷ったが、柔らかものの訪問着にした。これが大正解。
演目のせいか、かなりドレッシーでシックな服装の人が多かった。
知らない人からも口々に賞賛を浴びた。
スタイリッシュな白の毛皮のジャケット姿で、全身ホワイトで決めた70才台のソニア・リキエルみたいなマダムが、わざわざ近づいてきて、「オランダ語話せます?素晴らしいお召し物だわ。褒めずにはいられません」などと、言うのだった。

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               白に近い薄い灰紫色に
               扇と草花の蘇州刺繍が
               レースのように刺してある。
               母のを直さずに着たので
               裄が短すぎる。
               帯はラメが煌びやかな紫の濃淡。
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by didoregina | 2010-02-07 11:22 | オペラ実演 | Comments(6)

Control

c0188818_2032441.jpg2007年 監督:アントン・コービン
サム・ライリー、サマンサ・モートン、アレクサンドラ・マリア・ララ他

70年代末頃の伝説的ニュー・ウェーブ・バンド、
ジョイ・ディヴィジョンのシンガー、イアン・カーティスの
伝記的ストーリー。


カーティスが23歳で生涯を閉じるまでの、サクセスの陰の苦渋に満ちた私生活を描いたのは、写真家およびヴィデオ・クリップ監督として有名なアントン・コービンだ。この人、70年代からイギリスで活躍してるけど、もともとオランダ人だから、名前の発音は、アントン・コルバインのはずだが、日本ではコービンで通っているらしい。
本人のサイトを見てもらうとわかるように、U2のCDジャケットをはじめ、マイルス・デイビスやクリント・イーストウッドなどのモノクロ写真ポートレートで有名だ。
いずれの写真も、被写体がいいのはもちろんだが、とにかくスタイリッシュでバシッと硬派でかっこよさ抜群である。

あまり女性のポートレートは撮っていないようだが、
マリアンヌ・ファイスフルのこの写真はイカしてる。
c0188818_20494460.jpgc0188818_20502582.jpg              ルトガー・ハウアーも!







とにかく、その写真家コービンによる映画第一作である。映画も写真同様、白黒だ。
全てのシーンのアート性は完璧である。どの場面も、切り取って引き伸ばして壁に飾りたくなる。
70年代後半のイギリス北中部の地方都市が舞台だから、もしカラーで撮っていたら、灰色とくすんだレンガ色が基調の暗い背景で、リアリスティックではあってもスタイリッシュにはならなかっただろう。

ストーリーは簡単に言うと、才能とカリスマ性で急激にスターダムを登ったが、私生活では若くして結婚した妻と愛人との板ばさみで苦悩し、しかも癲癇の発作と薬の副作用に戦々恐々として、ついに精神的に破滅し自殺したシンガーの悲劇だ。
奥さんの書いた伝記本がもとになっているという。だから、イアン・カーティス本人の精神状態や苦悩を、残された手紙や歌詞などの断片をかき集めたものから、なんとか表現しようとしている。
映画から伺い知れるのは、世間知らずの若い男の子が、現実と夢のギャップに悩み、自我が十分に成長しないまま、突入した高速回転するショービジネスの世界に順応できなかったらしいこと。
自分が求めているものや興味を把握しないまま、スターへの階段を駆け足で登ってしまって、その高みから眺めて茫然自失、ということだったようだ。

役者は皆いい。ルックスのキュートさと歌の上手さ抜群のサム・ライリーを見るだけでも満足できる。
(彼は、スティーヴン・フライやリック・スタインやトビー・スペンスなどと同じ名門パブリック・スクール出身!)
妻役も愛人役も、雰囲気抜群。その他の脇役も、70年代の陰鬱で自堕落な雰囲気を演じるのが上手い。
ストーリー展開よりも、人物の内面を抉るよりも、雰囲気、というのがこの映画で最重要なのだ。
そして、それは観る者に共感を抱かせるように作ってある。ターゲットになっているだろう若い観客だけでなく、わたしにとっても、70年代後半の雰囲気をこれだけスタイリッシュに味わわせてくれたから、うれしかった。


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by didoregina | 2010-02-04 13:31 | 映画 | Comments(4)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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