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米元響子と地元LSO Meet & Greet

LSOというのは、非常に誤解を招きそうな名称であるが、地元の交響楽団Limburgs
Symphonie Orkestの略称がそうなので、いたしかたない。ロンドンのと区別するため地元LSOと呼んでいる。

米元響子さんは、2006年モスクワの国際パガニーニ・コンクールで優勝しているほか、各地のコンクールに入賞している若手ヴァイオリニストである。現在ベルギーにお住まいで、マーストリヒト音大のボリス・ベルキンに師事している。彼女の演奏は、2008年にやはり LSOとのコンサートでプロコフィエフのヴァイオリン・コンチェルト第一番その他を聴いた。昨年、ロシア人実業家が手に入れた3.5億円のグアリネッリを演奏したとかで、日本のメディアを騒がせたらしい。

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2010年 1月 30日 @Theater Kerkrade  LSO o.l.v.Dmitry Yablonsky
Sjostakovitsj Feestelijke Ouverture
Glazoenov Vioolconcert
Sjostakovitsj Symfonie nr.8

ショスタコーヴィッチの「祝典序曲」は、金管楽器が大活躍する、伸びやかで聞きやすいメロディーの短い序曲である。軽い疾走感が心地よく、明るい幕開けだ。
今回のプログラムは、ロシア人作曲家による「祝典と悲劇」がテーマだから、この後は、どんなに暗くなるかわからない。まずは、軽く景気付け。

グラズノフのヴァイオリン・コンチェルトは、初めて聴く曲だ。
プロコフィエフみたいな、難解なものではないかと、戦々恐々として待ち受けていたが、肩透かしというか、意外にも叙情的で聴きやすいものであった。シロフォンとのユニゾンの部分など、心が軽やかになる。
米元さんは、このマイナーなロシアもので、とにかく、聴衆の耳をそば立たせ、目を見開かせてくれた。
まだ若い女性ヴァイオリニストであるから、一人でオケをリードするわけにもいかず、オケとの絡みに少々歯がゆいものを感じていたかもしれない。自我を抑えつつ、クールでありながら叙情性を表現する演奏であった。外見にも音にも、めくるめくような華やかさはないが、深い滋味を感じさせる演奏スタイルが彼女の持ち味であろう。派手でポピュラーな曲とは正反対のこの曲に、あえて挑戦する姿勢にも好感が持てた。技術的には、余裕すら感じさせた。

休憩の後は、いわゆる「タコ8」。戦争がテーマの曲だから、重量級デスマッチともいうべき迫力が予想される。その重い曲の指揮には、やはり重量級のロシア人指揮者が適任というわけだろう。客員指揮者は、この人。

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              自称「相撲レスラー」のデミトリ・ヤブロンスキー。
              ヒールらしい面構えで、百貫目級。

しかし、見かけよりも指揮ぶりは繊細であった。
爆音で押せ押せになるかと思ったら、そうでもなかった。咆哮炸裂する音を期待していた人には、肩透かしであったかもしれない。
しかし、それは、指揮者のせいではない。LSOというのが、もともとそういうオケなのだ。普段から、管楽器にも弦のアンサンブルにも、あまり個性が感じられない楽団である。中庸主義とでもいおうか。全員一丸になって燃えたりすることは、めったにないのだ。
だから、普段より増強した団員で、これでもかと攻めてくるが、パフォーマンスに迫力が乏しい。これが、LSOの実力の限界である。オランダで一流とされるあの楽団とか、かの楽団が、あの指揮者とかで演奏したなら、こうなったかも、などという幻想を抱く方が間違いなのだ。
戦争のヴァイオレンスを激昂して訴えるよりも、その影にある静謐な悲劇性を強調するアプローチだったので、それなりに満足した。爆音だけの下品な演奏にはならなかったのだから、よしとしなければ。

今回のコンサートは、Meet & Greetといって、音楽学校の受講生は、アーチストにお目にかかり、解説やインタビューなど聴くことができる、というのが売り物だった。
米元さんに会って、お話を聞けたり、感想を述べたりできるのかと思って、楽しみにしていた。
ところが、ソリストは早々とお帰りになったのか、終演後の特別イヴェント・ゲストは、指揮者とクラリネット奏者であった。
指揮者の名前などノーマークだった。後半の始まる直前に、「おお、ロシア人か」と思った程度である。全く知らない人に、質問などできるわけがない。

それでも、着物を着ていたので、こちらより先に指揮者のほうから、「こんにちは」と日本語で挨拶してきた。
見よ、着物の威力の絶大さ。そして、わたし達の着物姿を褒めてから、自分は「相撲レスラーみたいでしょう」と言ったのである。
それで、いっしょにお写真など撮らせていただいた。ロシア人にしては、人当たりがフランクで英語が非常に上手い。その後の、経歴説明で、ロシア生まれではあるが、ジュリアード音楽院とエール大学と教育はアメリカで受け、その後西ヨーロッパで活動しているということで、なるほどと思った。
知らない人だから、お話を拝聴するだけで、曲目にも詳しくないから、コメントもできない。残念であった。

クラリネットや、トランペットや、フルートが活躍する場面の多い曲であったから、クラリネット奏者も呼ばれた。
彼は、普段は第二奏者なのだが、本番直前に第一奏者が病気になり、ソロ・パートを1日で勉強して演奏したそうだ。(まあ、1年くらい前からプログラムは分かっていたのだから、クラリネット・パートが重要だとは認識して張り切って練習してはいたはずだ)
ロシア人指揮者とは、月曜日に顔合わせして、3日間のリハーサルの後、木・金・土とコンサート。その日は土曜日で最終だったから、5回のリハーサルを終えて、やはり一番いいできばえで満足したそうだ。

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          泥藍大島に、スカーフのようなモダン柄の塩瀬帯。

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          泥大島に、橙色の羽織のバービーさん。
          羽織のポイント柄が、九谷焼の花瓶の写しで華やか。
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by didoregina | 2010-01-31 20:23 | コンサート | Comments(6)

手編みのバッグ今昔

小さいバッグや袋ものに弱い。
ロゴばっかり目立つブランド物バッグは、没個性なので興味が持てないが、素材やデザインが面白くて、手ごろなお値段のバッグを見つけると、欲しくなる。
バッグを作るのも好きだ。

着物を着たときのバッグは、これまたカテゴリーとして独立できるくらい集まってしまう。正真正銘のフェティシズムといえよう。

先週、着物でお出かけした時に持った、手編みの巾着は、35年以上前に、母が作ってくれたものだ。
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        ピンクと若草色の市松模様は極細毛糸の長編み。
        不思議と、籠も痛んでいない。


そして、今週末の着物でお出かけ用に作った最新作。
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        グレーの極太毛糸のメリヤス編み。和洋兼用できる。
        アーガイル模様は、プリングルのデザイン。

こんな風に手作りキットとして売られていて、毛糸と木の持ち手と編み棒ととじ針とブランドのタグがセットで、編み方も付いていた。思わず手に取り、自分用のクリスマス・プレゼントとして買った。
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裏打ちしないと、毛糸だから伸びてしまう。丁度、合う色の着物裏地のハギレがあったので、中に縫い付けた。
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キットに入っていた毛糸の半分しか使わなかったから、デザインを変えて、もう一つ作ろうかと思っている。
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by didoregina | 2010-01-27 17:17 | バッグ | Comments(4)

ひとりで着物あそび

コンティの「ダビデ」は、マイナーなオラトリオでもあり、平日の夜のコンサートでもあるので、人を誘いにくい。それで、一人で出かけた。車で行ける範囲なら、一人で着物で出かけるのも苦ではなくなった。
会場は、地元ながら、ほとんど1年ぶりくらいのフレイトホフ劇場である。ここに来れば、必ず知り合いの一人か二人には出会えるはずだ。

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週末まで積もっていた雪もすっかり溶け、寒くもなく、雨も降らない、着物日和である。
オランダ・バッハ協会という地味なアンサンブルの演奏であるから、やはりカタモノ。しかも気取りがない琉球絣柄の信州紬にしよう。しかし、真綿の手紡ぎ・草木染・手織りなので、生地は厚くても光沢があり、織り出された絣模様は平板ではないから、夜の劇場の照明には意外と映えるのである。

絞りの短い丈の道中着を合わせた。絞りの色と模様が可愛くて気に入っているが、丈が半端でなく短いから、どうしても普段着っぽくなる。しかし、同系色の着物に合わせると、短い丈がかえってキュートにも見える。
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      例によって母の箪笥で見つけた。裄だししても短いので、
      合わせられる着物が限られる。

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      道中着を脱ぐと、客を迎える女将風。
      こうやって、ひとりで着物遊び。

着物姿なので、一人でいても、知らない人から声をかけらたり、褒められたりする。
休憩中、思ったとおり、知人2名を発見。泥縄式レクチャーを拝聴したため、飲み物を半分以上残してしまった。休憩が短すぎるのである。席に戻ると、気がつかなかったけど、同じ列で二人おいて隣の座席だった。
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by didoregina | 2010-01-22 14:46 | 着物 | Comments(2)

カーティス指揮オランダ・バッハ協会のコンティ「ダビデ」

このところ着物関連記事ばかりなので、ブログ名は偽りか、との疑念を抱かれても仕方がない。
しかし、ようやく、今年初めてのコンサートに昨晩行ってきた。
コンティのオラトリオ「ダビデ」という出し物は、新春にふさわしいのかどうか分からないが、期待は大きかった。
なにしろ、今シーズンは極める!とマークしたヨハネット・ゾマーが出て歌ってくれるのだ。
コンティの音楽も、実演にめぐり会える機会は少ない。それが、今シーズン終わりごろには、DNOもコンティのオペラを取り上げる。ちょっとしたリバイバルというより、このように日の目を見るのは初めてかもしれない。

c0188818_19231447.jpgFrancesco Bartolomeo Conti
(1682-1732)
- David
Azione sacra per musica
De Nederlandse Bach-
vereniging koor en orkest
Alan Curtis  dirigent
Yuri Minenko  countertenor
(David)
Matthew Brook  bariton (Saul)
Anna Maria Panzarella  
sopraan (Micol)
Johannette Zomer  sopraan
(Gionata)
Cécile van de Sant  alt (Abner)
Marc Pantus  bas (Falti)

初めて聴くコンティのオラトリオだというのに、全く予習をせずに出かけてしまった。
これは、大失敗。舞台上に字幕が出ていないのだ。何を歌っているのか内容意味不明である。
また、コンサート形式だから、各自私物の衣装を着ているため、役柄がどうもよく分からない。
しかし、プログラム・ブックには歌詞対訳が出ているから、それを読みながら聴いている人が多い。彼らは、オランダ・バッハ協会のやり方に慣れている通に違いない。
近くに座っていた知り合いもこれにはあせって、休憩中に急遽プログラムを買い、必死になってあらすじを読み、わたしたちに内容を説明してくれた。そのせいで、彼女はせっかくの飲み物を飲む暇がなく、大半を残したまま、後半開始のベルに急き立てられ座席に戻る羽目になった。

休憩中の泥縄式学習で知った驚異の事実は、こうだった。なんと、ヨハネット・ゾマーはソプラノなのに男役なのだった。道理で、黒のパンタロンに黒白太縞のブラウスという、きりっとボーイッシュな衣装だったのだ。このストライプは、ヴァチカンのスイス衛兵が着ている制服を連想させたので、イメージ的には当らずともいえども、遠からず。

男性歌手は、特に、バスの二人が上手い。特に、サウル王役の人は、顔だけでも感情表現が出来るほど表情豊かで、嫉妬心から疑心暗鬼のサウルとしての説得力がある。
しかし、主役のダビデは、特に前半は弱かった。可愛いとか、女っぽい感じの声質ではなく、かといって男性的でもないから、少年イメージのつきまとうダビデ役には向いていそうなのだが、際立つものがなく、聴衆を唸らせるにはいたらなかった。声も歌唱も個性に乏しく、印象に残らないのだ。
女性歌手では、ソプラノ二人が上手かった。金髪ショートカットで歌い方にも少年ぽさを出しているヨハネット・ゾマーと、赤毛でおばさんっぽい声とルックスのアンナ・マリア・パンザネッラとは、好対照でキャラクター的にいい組み合わせである。
アルトは、全く低音の魅力を感じさせず、この人一人のレベルが低く、足を引っ張る感じだった。

指揮のアラン・カーティスは、マリヤーナ・ミヤノヴィッチ(!)とシモーネ・ケルメス(!!)を歌手に迎えて、「ダビデ」CDを出している。
「この作品を選んだのは、傑作であることに疑いの余地がないからだ。」と豪語しているカーティスだから、作品への惚れ込みようには念が入っているはずだ。もう、コンティの「ダビデ」といったら、彼以外取り上げる人もいないから、一人勝ちのエキスパートだ。
しかし、その指揮ぶりは、淡々としたものだった。白髪のかなりの長身で、堂々とした姿勢も立派で、崩れない。淡々としたシンプルな指揮ぶりでオーバー・アクションとは無縁である。
全体的になぜか(似非)貴族的な雰囲気が漂う。昨晩はその理由がわからなかったが、今、それがなぜかに思い当たった。ヴィスコンティの映画「山猫」のバート・ランカスターそっくりなのだ。口ひげの感じが似てるし、どちらも、貴族っぽさを演じてる様子がどうも胡散臭さを感じさせる。

オランダ・バッハ協会のオケの面々は、きりっと引き締まった音を出す。それが、カーティスの指揮によって引き出されているとは感じられず、彼ら本来のやり方で、いつもどおりに演奏している感じだ。好感が持てた。
アンサンブルはしっかりしているし、全体的に気負いがなく、それでいて、びしっと決まるところは決まっている。先鋭的ではないが、そうかといって濃厚でもなく、だれてもいない。

コンティの「ダビデ」では、トロンボーンとテオルボが効果的に使われる。コンティ自身がテオルボ奏者出身だから、竪琴の代わりに、テオルボを爪弾くのが、ダビデのかきくどくアリアの伴奏になる。サウル王の心を和ませるというクライマックスにこれを持ってくるところが、コンティの作曲家としての面目躍如である。
全体的に曲調がさわやかで、飽きない内容のオラトリオだったし、ヘンデルの「サウル」と対になる名曲と言えるかも知れないと思った。予習しなかった代わりに復習として、CDを買おうと思う。

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by didoregina | 2010-01-21 12:33 | バロック | Comments(14)

草履の嫁入り

友人Cがサラになったパーティで、着物姿のわたしは、熱い視線を感じていた。
その視線の源を辿ると、Cの姪のアンネちゃんから発せられていることがわかった。
彼女の父親(オランダ人)によると、中学生のアンネちゃんは、ファッション・モード全般に一方ならぬ興味を示していて、クリスマス・プレゼントに母親(オランダ人)から着物を貰った。お正月には、その着物姿を披露したそうである。
どのような着物姿だったのか、また、彼らの言うところの着物とは一体どんなものだったのか、知るのが怖いような気もする。一般に、オランダでキモノといえば、バスローブのことを指す。それか、せいぜい日本土産のガイジン向け浴衣である。

アンネちゃんのその日の服装を見れば、彼女の趣味はなかなかのものであると知れた。ロンドンやアントワープでファッションを勉強している学生みたいな感じ、といったら分かってもらえるかもしれない。手作りっぽいスカートもボレロも個性的で、一筋縄ではいかないこだわりが感じられるのだった。

シャイな彼女に代わって母親が、「ほら、レイネさんの足元を見て。キモノにはこういうものを履くのね!」と感嘆している。その間、アンネちゃんはわたしの着物姿を食い入るように眺めている。
それで、わたしは思わず「足のサイズはいくつ?わたしの若い頃の草履で、履けなくなったものを上げるわ」と言ってしまった。熱い視線にほだされたのである。
彼女はオランダ人にしてはかなり華奢で、足も小さく、サイズ36だと言う。

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      10代の頃の草履。わたしには小さすぎ、派手でもう履けないが、
      アンネちゃんにはぴったりのサイズだ。

足袋といっしょに、ついでに歌麿の美人画の印刷された日本土産の団扇も付けてあげよう。
思い出もあり、気に入っていて捨てられなかった草履の嫁入り先に、またとないいい人を見つけて、親としてはうれしい限りである。
今までは頂くばかりだった着物まわりの小物だが、自分が身に付けたものを人に差し上げるというのも、心躍るものだ。そんな縁が広がるのも着物ならではの世界だ。
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by didoregina | 2010-01-20 13:50 | 着物 | Comments(2)

牛に魅かれて

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        「牛に引かれて善光寺参り」 東都錦朝楼芳虎

牛の描かれている絵に魅かれる。牛フェチである。
ありがたいことに、オランダは酪農が盛んなためか、牛の絵にお目にかかる機会は多い。
美術館で見ているだけでは飽き足らない。欲しいものは、所有したくなるのが人情である。
グラフィック・アートだったら、わたしでも手が届く値段で買える。オークションで3枚ほど、牛をテーマにした版画を手に入れた。気に入ったものに出会うことは、結構少ないのだ。
しかし、普段から好みをアピールしておくと、思わぬプレゼントをいただけることもある。

バービーさんのご近所のお知り合いに、日本画家、橋本関雪のご子孫がいらっしゃる。
毎年、干支にちなんだ関雪の絵が色紙になり、記念館で販売されるという。
昨年の干支は、牛だった。バービーさん宅に飾られた関雪の牛の絵の色紙を見ては、「素敵、素敵」と連発していた。
そうしたら、お正月に帰られた折り、最後に1枚だけ残っていたという牛の絵の色紙を買ってきてくださったのだ。

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      「牡丹花肖柏図」(1919年) 橋本関雪

中に入っていた説明書には、
「室町時代の連歌師である肖柏は、太政大臣源具通の子孫で准大臣中院通淳の子。牡丹花は彼の号であり、その由来は牡丹を愛していたからだとも牡丹を詠んで有名になったからだとも言われているが判然としない。 
               (中略)
そしてこの画に描かれているのは京の町を角に金箔を張り、牡丹で飾った牛に乗って闊歩する肖柏の逸話の場面。
               (中略)
本色紙は右に描かれた、肖柏の乗る牛をトリミングしている」
とあり、元は縦長双幅の絵2葉のうち、右側の絵の下方に描かれている、牛の頭の部分をピックアップして色紙にしたものだとわかった。

子牛のように愛らしく潤んだ瞳の牛と、頭に花簪のように付けている牡丹という突飛な組み合わせだが、なんとも似合っていて、ほんのりはんなりした色合いが、見るものをとろりと夢見心地にさせる。
牡丹は、チューリップと並んで、わたしが一番好きな花である。着物や帯の柄に牡丹が描かれているものなど、見ただけでよだれが垂れそうになる。
一番好きな牛と一番好きな牡丹が描かれているという、究極の組み合わせの絵に出会うことはめったにない。善光寺の牛にまつわる説話によれば、牛は観音菩薩の化身であるという。その功徳か、わたしも牛に魅かれたおかげで、素敵な絵にめぐり会えたのだ。

この色紙は、額に入れようか、掛け軸に掛けようかと迷っている。
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by didoregina | 2010-01-18 15:10 | 美術 | Comments(4)

サラを見た

昔は、50歳を超えたら長生きの部類に入ったので、オランダでは、今でも50歳の誕生日は盛大に祝う。日本で還暦を祝うというのと、少々似ているかもしれない。

そして、50歳の誕生日を迎える人は、男性ならアブラハム、女性ならサラ、と呼ばれる。
神の恩寵を受け非常に長生きした、聖書に登場する夫婦である。
20年位前まで、わたしは(そして多分大部分のオランダ人も)、50歳=長生き、の象徴としてアブラハムとサラの名前を使い、長寿のお目出度さにあやかるのだと思っていた。しかし、この命名には、聖書に基づいた故事成語成り立ちの背景があるのだ。

ヨハネによる福音書8. 56に、ユダヤ人たちとイエス・キリストとの論争が書かれている。
様々なことを見てきたように堂々と話すイエスに対して、ユダヤ人たちは「あなたは、まだ50歳にもならないのにアブラハムを見たのか」とつっこんだ。

ここから、50歳になったら、アブラハムを見たと堂々と言ってもいい、というこじつけ解釈につながり、さらに、50歳の誕生日の人はアブラハム本人になっちゃうというふうに、変遷していったのだ。
サラは、アブラハムの妻だったので、女性で50歳になった人はサラと呼ばれる。このこじつけもまた凄い。

とにかく、友人Cがめでたくサラになった。
お誕生パーティ会場は、偶然ながら、主人が月に一度料理を習っているイタリア料理店であった。

総勢60~70人くらい集まったと思う。
夜8時からなので、テーブルに着席して食事が供されるわけではない。
しかし、飲み物はふんだんに振舞われ、立ったまま一口で食べられるイタリアンのつまみがいろいろ出てくる。例えば、リコッタを茄子の薄切りグリルで巻いたものとか、ガンバの串焼きとか、イタリア風フィッシュ・ボールとか、大判トルテリーニの揚げたのとか、チーズと葡萄ストロープの乗っかったトーストとか、、、、
自分で好きなものを取るビュッフェ形式でなく、こういう風に、一口で食べられるものや、小皿に乗せてフォークだけで食べられるものを給仕が配っていく、というのが最近のパーティの傾向である。

友人8人で200ユーロ分のプレゼントを贈ることにした。
親しい仲なので、お金は水臭い。劇場や映画やレストランや本屋の金券は、もらってうれしいものである。しかし、今回のサラは病気が重いため、外に出るのが難しいから、金券を贈っても使う時を逃しそうである。それで、全権を任せられたわたしがCDとDVDのセットものをどーんと選んだ。
モンテヴェルディのオペラ全集CD8枚組み、モーツアルトのダ・ポンテ3部作DVD4枚組み、音楽史講義CD11枚組み、名画解説DVD9枚組みで、いったい合計何時間分になるんだろうという代物である。

サラからのじきじきのお願いでもあったから、ひどい降りの雨で、積もった雪がびしょびしょに溶けているという最悪の天候にもかかわらず、着物で出かけた。例のごとく、皆さんに好評だった。

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    黒の泥染め縞大島に、弁慶格子柄(ギンガムチェック)の大島の長羽織。
    帯はK子さんのお母様から譲られた臙脂の紬地。
    半襟と帯締めの色をクリーム色で合わせてみた。

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    先日、お土産にいただいたあめ色の簪を挿した。
    大島に大島の組み合わせだと、長羽織の艶っぽさが出ないが、
    唯一持っている長羽織であるから、致し方ない。
    未使用の新古品、ジャストサイズをネットで購入したもの。
    格安だったが、着物雑誌によく出ているメーカーのタグ付き。
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by didoregina | 2010-01-17 11:59 | 着物 | Comments(10)

流水に渦巻き文様の道行

昨日、写真アップができなかったのは、エキサイトブログ側の不具合によるものだった。
復旧したようなので、再再度トライ。

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もとは、わたしが10代の時に作ってもらった、お茶席用の真紅の色無地。
いくらなんでも、今では派手すぎて着れないだろうから、道行きに仕立て直したらどうだろうか、と思いつきの電話をかけたのは、丁度2年前の今頃だった。
母は、わたしが急に罹った着物熱に驚きつつも喜び、即、仕立て直しに出した。
そして、その年の3月に日本に帰ったら、この道行が出来上がっていた。詳しい相談に関して、わたしは全くの蚊帳の外だった。
母は懇意にしている呉服屋さんに頼んで、呉服屋さんは京都の悉皆屋さんに依頼し、着物の色を染め替え、それに合った裏地も選んで、わたしサイズの道行に仕立て直してくれた。

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羽裏は、祇園祭の山鉾の絵が描かれている愛らしいもの。呉服屋さんの女将さんは京都出身だから、彼女の好みが反映している。
色に関しても、わたしにはまったく相談がなかったが、わたしや母の箪笥の中身はよく知っている女将さんが、着物にあわせやすい色を選んでくれた。サイズはゆったりめで、その下に長めの羽織を着ても隠れるくらいの丈に。

地色を元の色より薄く染め替えることが出来るとは、その時まで知らなかった。
結果として、地紋の大きな流水が、はっきりとよく見えるようになった。
問題は、漆で描かれた渦巻きが、染め替えしても残るかどうかだった。
呉服屋さんの女将さんは心配していたが、引き受けてくれた悉皆屋さんが、請け負ってくれた通り、渦巻きは、しっかりと残った。

流水に渦巻きは、女性にとっておめでたい吉祥文様であるという。
思い出の残る着物を作り変えた道行は、自分サイズで、上品な色合いが着物を選ばず、とても着やすい。
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by didoregina | 2010-01-12 19:29 | 着物 | Comments(4)

鏡開き

毎年1月には、次男の通う柔道道場で鏡開きを兼ねた試合が開催される。特に試合慣れしていない初心者を対象としたものなので、黒帯を取るための練習に励む次男は出場できないが、時計・点数係として馳せ参じた。
道場の鏡開きは昨日だったが、暦では、本日11日が鏡開きの日である。

庭のテーブルに降り積もった雪のエッジが丸くて、鏡餅そっくり。
誰かがケーキのように切り取ったが、これをもって我が家の鏡開きとしたい。
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昨日アップした道行の写真では、肝心の地紋や漆の模様が見えないので、接写した。
しかし、なぜか、どうやってもその写真のアップが出来ない。「ファイルサイズがゼロです、正しいファイルが選択されているかご確認ください」という注意が出るのみである。なに、これ?
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by didoregina | 2010-01-11 09:57 | 着物 | Comments(4)

2010年着物初め

1月15日までが松の内なら、今年初めての着物は、なんとか間に合った。
毎年恒例の、主人の仕事関係の新年会である。丁度同じ日に、ヨット・クラブの新年レセプションもあったが、仕事関係を優先した。

今年は、白い町として有名なトルンの庄屋、グローテ・ヘッゲが会場。
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週末は大雪だったので、100人ほど参加表明の返事があった招待客のうち、実際来たのは約半数。こればかりは、いたしかたない。家から出たくない、その気持ちはよくわかる。
主人は主催者側なので、どうしても行かなくてはいけない。しかし、わたしが着物を着ようとするをみて、「道がぐちゃぐちゃだけど、大丈夫?」と心配気味。

これを楽しみに、数日前から、あれこれコーディネートを考えていたし、着物以外の準備もしていない。車でドア・ツー・ドアなら大丈夫だろう。

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    やはり、ちょっとフォーマルな新年会には、垂れ物の着物。
    しかし、華美になりすぎないよう、江戸小紋の万筋にした。
    バッグは、クリスマス後のバーゲンで、17ユーロ。

ちょっとだけハイソで、文化教養もある人が集まるので、着物で出かける甲斐のあるパーティである。
たしか去年もお着物でしたね、とか、お美しいとか、素晴らしいお召し物で、とか、めったに聞けない賞賛を浴びた。パーティに格と華やぎを添えてくれてありがとう、という意味で褒めてくれるのだ。

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      初めて自分で買った帯の初おろし。
      黒地に雪輪に源氏香。
      帯締めと帯揚げは浅黄~グリーンの濃淡で
      いつものワゴンセールではない、ちょっといいもの。

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      柔らかものには、道行が合う。
      お茶を習っていた10代の頃に誂えた真紅の色無地を
      2年前に染め替え、深みのある朱色の道行きに作り直した。
      色を薄くしたら、地紋の流水がよく見えるようになった。
      銀色っぽい漆で渦巻き模様が描かれていたのが、
      色抜き・染め替えを経てもしっかり残った。  
      悉皆やさんは、漆の模様は消えるかもしれませんと
      心配していたが。
      染め替えと仕立て直しを、思いつきで頼んだのだが、
      母のこと、裏地にも凝ったので、涙が出そうなほど
      高くついた。

知人はほとんど皆、キャンセルしたので、知った人はほぼゼロのパーティだったが、着物のおかげで、いろいろな人が話しかけてくるので、社交面では面目をほどこした。主人も着物の威力を見直し、喜んでくれた。

     
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by didoregina | 2010-01-10 21:15 | 着物 | Comments(12)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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