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教会でのコンサートと芸術のお値段

聖セルファース教会で、なかなかに気骨のありそうなチャリティ・コンサートがあることを知り、興味を持ち、出かけた。
ローマにある、オランダ・ベルギーおよび北部ドイツからの巡礼のために400年ほど前に建てられた、通称フリース教会の修築費用供出のために、有志が結成した合唱団によるカトリック教会音楽のコンサートだ。
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            ローマのフリース教会内部

この教会は、サン・ピエトロの筋向いの建物の奥、階段を登った場所にひっそりとあり、知っている人しか訪れそうもないが、オランダからの巡礼には親しまれてきているそうだ。

寄付金集めのために全国5箇所でコンサートを行い、その最後のがマーストリヒトだった。
プログラムは、グレゴリア聖歌から始まり、ジョスカン・デ・プレから現代に至るオランダ人作曲家によるカトリック音楽の流れを辿るものとなっている。

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          会場となった聖セルファース教会の主祭壇

復活祭・昇天祭・精霊降臨祭のグレゴリア聖歌に続いて、ジョスカンとまた別の作曲家による16世紀のポリフォニーのあとは、ぐっと時代が現代に近づき、いきなり20世紀である。20世紀のオランダ人カトリック作曲家の名前なんて、誰も知らないだろうし興味もないだろうから、ここには書かない。それが10人も続いた。
それらは、主に合唱曲で、メゾとバスによる独唱曲も少しあった。そして、合間にオルガン独奏曲も入った。20世紀オランダのカトリック音楽は、いずれもラテン語の歌詞でくどくどとキリストやマリアを讃える内容で、音楽にもあきれ返るほどオリジナリティーが乏しく、16世紀からほとんど進歩していないように聞こえた。

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その中で異質だったのは、なぜか真ん中と最後に歌われたポーランドの現代作曲家グレツキのTutus tuusと O Domina nostraで、これはわたしの好きなミニマルな聖歌であるが、その独創性には、他の曲と比べると天と地ほどの差がある。さすがに、世界的に活躍しているのも故なしではない。
歌詞はたった一行で、音楽もミニマルなのに、そのインパクトの強さと美しさは秀でている。言わずもがなの賛美は無用、とばかり、「おお我らの神よ」と「マリア様、わたしは全てあなたのものです」というタイトルがほぼそのまま歌詞になっているだけだ。それが、劇的に高揚する音楽とぴったりとあって聞き手の胸に迫る。

最後から二番目に、1962年生まれのオランダ人作曲家Aart de Kort によるLaudate Dominumが、作曲家自身によるオルガン演奏で歌われた。この曲だけは、面白かった。わたしと同年代の作曲家によるこの曲は、エマーソン・レイク・アンド・パーマーの「タルカス」そっくりで、かっこいいのだった。現代オルガン曲は、不協和音やとんでもない効果音ばかりでがんがんと頭を殴られるような気分になるものも多いが、この曲はなかなか感じがよかった。

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         聖セルファース教会のパイプオルガン

さて、寄付金としては、いくらが妥当であろうか。
払う額は、個人の思惑に委ねられる。わたしは、コンサート内容に妥当な額と踏んで3ユーロ払った。お札で払っている人も結構いた。

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     教会の外に出たら、絶妙のタイミングでカリヨンが鳴り出した。
     バッハのマーチだった。

芸術作品やコンサートなどに払う金額には、相場と思えるものがある。しかし、安ければ安いに越したことはない。
その相場が、一般の常識と非常に隔たっているのが現代アートの世界だ。デミアン・ハーストなんて、今年も現代アート長者番付トップだろう。また、ゴッホやセザンヌ、モネなど印象派の絵も競売に出されるとあいも変わらず高値を呼ぶ。

おかしいのは、気に入って目をつけていたアーチストの作品が、その後ぐんと高値になった場合、買える訳もないが、「やはり、わたしの目は確かだった」などと思い、なんとなく満足・納得してしまう自分だ。
ピーター・ドイグの展覧会をボネファンテン美術館で観たのは7,8年前だと思う。冷たくしんとした空気が感じられて気持ちがよく、ブライアン・イーノの音楽が聞こえてきそうな素敵な絵の数々に引き込まれた。それが、2年前から、押しも押されぬ高値の付く画家になってしまった。先日も、彼の絵はまたまた予想以上の値で売れた。うれしいような、悲しいような気分である。
ナイジェラ・ローソンの旦那さんのチャールズ・サーチのギャラリーに、彼の絵がいくつか所蔵されている。

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       オランダ最初の司教、聖セルファース。
       4世紀に亡くなった彼の墓の上に建てられた
       聖セルファース教会は、オランダ最古。
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by didoregina | 2009-10-29 22:39 | コンサート | Comments(8)

ヘンデルの「スザンナ」@コンセルトヘボウ

c0188818_2032136.jpgHändel - Susanna, 2009年10月24日
Les Arts Florissants
William Christie, dirigent
Susanna: Sophie Karthauser, sopraan
Joacim: Max Emanuel Cencic, countertenor
Chelsias: Maarten Koningsberger, bas
1st Elder: William Burden, tenor
2nd Elder: Alan Ewing, bas
Daniel: David D.Q. Lee, countertenor
Attendant: Emmanuelle de Negri, sopraan
Judge: Ludovic Provost, bas

コンセルトヘボウでの土曜日のマチネには、オペラ・シリーズがあり、当然コンサート形式になるが、毎度盛況の様子だ。今回は、ヘンデルのマイナーなオペラだったので、割と簡単にチケットが取れたが、普通は結構大変な争奪戦になる。
クリスティーは、先月の「ダイドーとイニーアス」がDNOデビューだったそうだが、コンセルトヘボウのマチネには、以前はよく登場していたようだ。

このマイナー・オペラに惹かれたのは、ヘンデル、クリスティー、チェンチッチという組み合わせのためだ。特に、チェンチッチは誰もが一度はナマで声を聴いてみたい、お顔を拝んでみたいと思う、気になるカウンターテナーのはずである。期待は大きい。

今回の座席は、5列目右寄りで、前回の「ダイドー」の時ほどオケのすぐ前ではない。しかも、コンサート形式だから、オケは舞台上で、編成は、低音弦楽器の数を見ても、「ダイドー」よりもずっと増強している。そして、クリスティーは、指揮台に立ち、指揮に専念している。チェンバロ、リュート、オルガン、チェロがそれぞれ1台づつで通奏低音を担当。
舞台後方に合唱団が立ち、オケが前方に座るともうそれで舞台がいっぱいという感じになる。ソリストはかなり狭いスペースで歌うことになる。

なんで、こんなことを細々と書くのかというと、オケの音が最初、あれっと思うほど頼りなく聞こえたからだ。拡散して飛んでいってしまうというのか。「スザンナ」は、CDでも聴いたことがない、ぶっつけ本番であるが、前奏曲は、なんだかラモーを思わせるような優美ではかなげな感じであった。オラトリオだから踊りなんか入るはずないが、ちょっと憂いを含んだ旋律には、バロック・ダンスなんかが合いそうだ。

ヨアキム(チェンチッチ)とスザンナ(ソフィー・カルトホイザー)は、夫婦であるから、最初から、二人で交互に歌ったり、デュエットもある。期待のチェンチッチの声もまた、あれっと思うほど、か細くはかなげである。なんだか、病み上がりのような感じで疲れたような顔つきも意外であった。髪型も自前のステージ衣装も、オペラ歌手らしからぬスタイリッシュな雰囲気なのだが、どうも声に精彩を欠く。表現は、繊細でいいのだが、声量がまことに小さい。CD「ファラモンド」での印象とかなり異なる。

ソフィー・カルトホイザーも、CD「ファラモンド」に参加している。また、3月にモネ劇場で観た「カリスト」のタイトル・ロールもこの人だった。しかし、印象が薄かった。バロック系のソプラノにしては、声が暗めで、耳に残らないタイプなのだ。小柄で外見も地味だ。
無実の罪に陥れながらも、操を守る、という清純派の役柄にはぴったりだが、それ以外のキャラクターは歌えないんじゃないかとも思える。タイプとしては、ヌリア・リアルに近いが、声に華やかさが欠如しているところが、決定的に異なる。

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             元祖清純派のカルトホイザー。

チェンチッチとカルトホイザーは、カウンターテナーとソプラノながら、声質がとても似通っていると思う。喉に紗の幕がかかったような感じで、彩りがモノクロームである。音に目くるめくような色がついていない。
だから、二人のデュエットは、似た者同士でそれなりにまとまっていてよかった。また、二人とも小柄で少年少女のような体型なので、ビジュアル的にもぴったりのカップルである。

チェンチッチは、最初の方しかあまり出番がない。そこで、印象を強烈に残さなくていけないのに、どうもキャラクター造形が弱かったとおもう。これが、彼の実力ではないはずだ。期待が大きかっただけに、とっても残念だ。

主役2人と比べて、テノールのウィリアム・バーデンは、明るい質の声で朗々と歌い、演技もちょっと過剰気味だが見せて聴かせる役者であった。
同じく、バスの歌手も、もう一人のカウンターテナーのリー(ダニエル)も声量があり、主役二人とは、対照的だった。
ダニエル役は、ストーリーのクライマックスにいたるカギを握る重要な人物で、美味い役どころかもしれない。ブライアン・アサワのように澄んだ高音が出る人で、しかも体格がいいから響きもいい。残念なのは、カウンターテナーにしては体型がちょっと立派過ぎるから、似合う役柄があまりないかもしれない。

公演は、わりと熱狂的な拍手とブラヴォーが出たが、これも土曜マチネでは毎度おなじみの儀式かもしれない。その拍手を制するように、クリスティーが話し出した。
「ご覧の通り、今日の公演はCDのためのライブ録音をしておりました。しかし、不満な部分がいくつかあるので、録り直しをしたいと思います。お帰りになりたい方は、どうぞ、今すぐ退場なさってください。お付き合いくださる方は、5分後に始めますから、そのままお残り下さい」とのことで、会場は「残る、残る!」という人たちが大部分だった。

オケと歌手に英語で指示を与えて、本当にすぐに録り直しが始まった。
チェンチッチとカルトホイザーとバーデンが、それぞれアリアを1曲づつ歌い直した。聴衆にとっては、思いがけないアンコールの曲を聴けたようなもので、得した気分になった。
隣の人は、「録音プロデューサーでもないのに、指揮者が録り直ししなくちゃいけない部分をよく分かるもんだ」と言っていた。


レ・ザール・フロリサンのサイトで来年の予定を見ると、6月のホランド・フェスティヴァルに、ラモーの「ピグマリオン」を上演する予定とある。キャストは未定だが、演出・振り付け・デコールはトリシャ・ブラウンになっている。モネ劇場版モンテヴェルディの「オルフェオ」では、サイモン・キーンリーサイドに複雑な振り付けのダンスをしながら歌わせたが、その演出・振り付けがブラウン女史であった。それならば、コンサート形式というのが考えにくい。しかし、今のところアムステルダムでの公演場所はコンセルトヘボウになっている。だが、コンセルトヘボウのサイトには載っていない。多分、市民劇場になるんじゃないかと思う。たった3回の公演で、人気の高いホランド・フェスティヴァルに参加するのだから、定期的チェックを怠らないようにしなければ。
「ピグマリオン」は、レ・ザール・フロリサン創立30周年記念として、エクサンプロヴァンスやアテネでのフェスティヴァルでも上演される、大事な演目だから、力の入れようが違うと思う。一体、キャストはどうなるのか、興味津々だ。
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by didoregina | 2009-10-28 13:51 | オペラ実演 | Comments(12)

秋の帽子2点

風が冷たくなってくると、帽子の季節到来だ。
頭をフェルトで覆うのだから、暖かさは抜群だ。帽子と色を合わせた皮手袋をはめ、大判ショールを羽織れば、まだまだコートはいらない。

布地屋さんの閉店セールでみつけたヘリンボーンのウール生地で、ハンチングを作ってみた。
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布地は、ほんの少ししかいらないので、残り布でおそろいのバッグも作った。
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        使い勝手がよいスエードのバッグから型紙を起こして、
        同型のバッグを作った。
        持ち手と留め具は、ジャケットの付属ベルトで、
        使わないものを利用した。

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        両方とも、内側の布は赤白のギンガムチェックにして、表地
        とのコントラストを強調。


布地で作る帽子というと、日本でオバサンたちが被っている、わけの分からない形の日よけ帽のイメージがあり、それだけは絶対に避けたかった。あの手の帽子を被ると誰でも簡単にダサいオバサンになれる。ヨーロッパの観光地でも、そういう日本のオバサンを見かけるが、とても異質でよく目立つ。日よけのためなら、日焼け止めでばっちりガードして、日傘などさした方が、数100倍、美的・効果的だと思う。


本当は冬向けの、フェルトのベレー。黒の真綿の様な羊毛を石鹸でごしごしとこすり、フェルトから作った。
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       ベレーなので一体成型で継ぎ目がない。

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       顔に近いほうには、赤の絹糸をフェルトに入れ込んだ。

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       上部は、白の絹糸をアトランダムな格子に。


フェルトを作る作業は楽しいので、やはり閉店セールでゲットした黒の透ける紗のような布地に羊毛真綿をこすり付けて、フェルトの模様を飛ばした大判ショールを作成するつもりだ。
いずれも1メートル3ユーロの生地である。
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by didoregina | 2009-10-28 08:49 | 帽子 | Comments(8)

帯を主役に

義妹の50歳バースデー・パーティに出掛けた。
かなり広い彼女の家のサロンと食堂と玄関ホールから家具を取っ払い、テラスにパーティー用テントも立てて空間を繋げた。自宅に大人数を招いてのパーティーの場合、こういう風に広いスペースを確保し、レンタルした立食用のテーブルをいくつか設置するというのがよくあるパターンだ。

50歳という節目は非常に大切なもので、盛大に祝うのが通例である。ここ1、2年この手のパーティに招かれる機会が多い。友人も皆大体そういう年齢になっているからだ。
義妹は、仕事関係、大学時代からの友人、ご近所、兄弟など総勢80人ほどを招き、飲食は全てケータリング会社に任せた。入り口でコートなどを預かったり、シャンペンその他の飲み物サーヴィスから、つまみや食事など、雇った給仕3人くらいがどんどん捌いていく。ケータリングのコックもキッチンに待機しているから、お誕生日の本人は気兼ねなく招待客と歓談、飲食し踊りまくれる。

何を着ていくかに悩むのが、毎度ながら楽しい。
あまり派手な着物で浮いてしまうのは困るから、葡萄の蔦葉とほんのり色がついた葡萄の房を細かく織り出した、秋らしく渋い泥大島にした。

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この着物は、日本で秋に着たら、とっても映えると思う。控えめなよさが分かってもらえるからだ。
しかしヨーロッパでは、この色の大島は地味すぎる。これは、帯で華美を補わなければならない。
そこで、光る素材の洒落袋帯にすることにした。塩瀬や縮緬やざっくりした織の帯では、普段着っぽく見えて、きらびやかな場には不釣合いである。
泥茶色の地の着物柄に、ほんの少しグリーンと淡い柿の色が入っているから、鮮やかな鶯色とミント・グリーンの中間のような光る帯にした。帯揚げも薄い柿色で、抹茶色の帯締めにも一部パステルカラーが入っているものにした。

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     お太鼓に、北斎の富嶽三十六景から「駿州江尻」を写した刺繍。

この帯は、はっきり言って、パーティの雰囲気にしっくりキマッタ。控えめな刺繍だが、描き出される柄がグラフィックな浮世絵の写しである。アーティであり、ジャパネスクでもある。

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            刺繍の元絵の版画

この帯は、先月日本から持ち帰ったものだ。例によって母の箪笥の中から。渋派手(死語か?)で、趣味性が高く、ヨーロッパでは絶対に見栄えがいい、と思った通りだった。
しかし、帯には一度も締めた形跡がないので、着付けるのが大変だった。しかも、関西巻きで、普段とは逆向きに回さなければならないので、四苦八苦。

以前、やはり母の箪笥の中から、昭和初期のものと思しいアンティークの黒い繻子の帯を見つけた。黒地に原色の色鮮やかな刺繍で、御所車や蔦葉が縫い出されている。
まだ着物を着始めたばかりで、目が肥えていなかったので、これは面白いと思い、即貰った。母は、インテリアに利用するつもりだったのだが、わたしが着るなら譲ってくれると言う。
アンティーク風の色柄のポリエステル着物(わたしが初めて自分で買った着物。見る目がなかったと今では後悔している)に合わせた。昔の帯なので巾も長さも短く、普通には着られないので、着付けの先生に教わった器具とテクニックで何とか着てみた。しかし、地厚で重く、着ていてくたびれた。
それ以後、一度も着ていない。
その帯は、インテリア向けで、今時着るものではないのだと悟った。それなら、バッグに作り変えよう。
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       まずは、タレ先部分を利用して、クラッチバッグを作った。

そのままだと、純和風でダサい。和装バッグは本当に垢抜けないものが多くて、持つ気がしないので、普段は着物を着てもカクテル・バッグを持つ。
ちょっとポップな雰囲気を強調するために、組紐状のシルク・コードで回りを囲みそのまま持ち手にした。これで、カクテル・バッグらしくなった。
お太鼓部分は、そっくり残っているので、また別の大きめバッグに作り変えようと思う。
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by didoregina | 2009-10-19 12:26 | 着物 | Comments(16)

聖母教会でのコンサート顛末記

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ヨハネット・ゾマーが、秘密の無料コンサートをわが町の聖母教会で行う、という情報を独自にキャッチして以来、本当に誰でも無料で聴けるのかとかいう不安が、ずっと付きまとった。

だから、前日に教会まで下見に出かけた。すると、入り口正面、他の業務連絡・お知らせの張り紙に埋もれていたポスターが、立て看板に張り出されている。そして、手書きで20:00と書き加えられている。教会関係者が、わたしのブログを読んだとした思えないような、見事な対応である。
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会場となる聖母教会は、オランダで2番目に古いもので(1番古いのは、やはりマーストリヒトにある聖セルファァース教会)、ちょっと変わったロマネスク建築である。
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   後陣脇の塔上部に、菱形が組み合わさって乗っかってるのが、ラインランド風。
         近くから見上げると、アシンメトリーで不安定に見える。

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         正面は城砦のようで、厳つく、取り付く島がない印象。

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          正面左脇の、海の星チャペルが教会入り口。

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          赤子のキリストを抱いた可憐なマリア像の前には、
          お祈りの人とろうそくの炎が絶えない。
          お祈りの人の邪魔にならないように、外からそっと撮影。
          マリアとキリスト像は、小便小僧なみに衣装持ち。

マリアに捧げられたこの教会が、ローマ教皇によって以下の特権を付与されたバシリカになったのが75年前で、それを記念してのコンサートのために、ヨハネット・ゾマーが呼ばれたのだ。

ここでいうバシリカとは、建築様式のことではない。格上げされた教会のことである。
「一般の教会堂より上位の教会堂として扱われる権利」
「オンブレリーノ(主祭壇に向かって右手に通常置かれる教皇専用の傘)を備える権利」
「ティンタナバラム(教皇を象徴する鈴)を備える権利」 
「政務日課において、聖堂参事会が、特に格式の高いものとされている儀式用の衣装である大カッパを着用する権利」 
                   以上ウィキペデシアのバシリカの項より抜粋。 

そういう特別コンサートならば、なぜ大々的に宣伝しないのか、疑問は残ったままである。
町なかにポスターは見かけず、教会入り口に張り出されているのが1枚だけだし、コンサート詳細は、教会HPを見ない限りわからないのだ。

ともあれ、叔父叔母や日本人の方にも声をかけた。念を入れて、コンサート開始30分前に入り口で待ち合わせた。入場してみると、まだ中には数人しかいない。開始時間になってようやく100人くらい集まっただろうか、という程度である。
前から3列目、正面通路脇に陣取った。祭壇の下に敷かれた1畳くらいの絨毯がステージ代わりで、向かって右側に伴奏のテオルボ奏者のための椅子と譜面台が置かれている。

まず、祭壇上で主催者の教会参事が、コンサートの趣旨を説明した。以下、その概略。
バシリカ75周年記念と塔の修復費集めのため、地元の詩人でありマーストリヒト大学文学教授が詩を作り、朗読するから、コンサートの後で、彼のサイン入りの詩のポスターを寄付として買って欲しい。
コンサートで歌われるのは、マリアを讃える歌で、初期・中期・後期バロックの音楽の珠玉を集めた。ソプラノ歌手ゾマーとテオルボのフレッド・ヤーコブスは、コンビを組んで久しく、世俗曲のCDは数枚出しているが、この二人で宗教曲を演奏するのは実に始めてであるそうだ。

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Johann Hieronymus Kapsberger (ca.1580 - 1651)
Ave Sanctissima Maria
Sancti Angeli
Passacaglia

Claudio Monteverdi (1567 - 1643)
Salve, Regina
Pianto della Madonna
Laudate Dominum

Heinrich Schutz (1585 - 1672)
O susse, o freundlicher
Ich wil den Herren loben allezeit

Nicolas Hotman (voor 1604 - 1663)
Passacaille

Marc-Antoine Charpentier (1643 - 1708)
Alma Dei Creatoris
Salve, Regina
Stabat Mater Dolorosa

Robert de Visee (ca. 1660 - na 1732)
Chaconne

Henry Purcell (ca. 1659 - 1695)
Evening Hymn

2,3曲モテットやカンタータを歌った後で、テオルボ独奏のパッサカリアやシャコンヌなどが入り、詩人自身による詩の朗読、という繰り返しだが、確かにバロックの長期・広範囲にわたる、マリアを讃える歌を集めた構成だ。
ゾマーは、黒と白の太縞ストライプのショート・ブラウスに引きずる長さの黒のロングスカートといういでたちで、教会でのコンサートにふさわしいシックでエレガントな姿。いつも変わらぬ、甘い味わいの耳に優しい歌声を聴かせてくれる。
テオルボのヤーコブスの独奏も聴かせる、というのは、非常によろしい。そうでないと単に伴奏者みたいになってしまって影が薄くなる。

かなり変化に富む曲目と内容で、普通のコンサートよりは短いが、これがタダでいいんだろうか、といぶかった。寄付金を集めるのが目的なら、もっと大々的に宣伝したらいいし、ライブ録音してCDとして売り出したらもっとよかろう。このコンビによる宗教曲演奏は初めてだというし、合間に詩の朗読も入り、特別色は濃いのだから。

ゾマーのサイトを見ると、カッチーニ他の曲目と書いてあるが、当日カッチーニの曲は歌われなかった。
カッチーニの「新しい音楽」は、彼女もCDを出しているからナマで聴きたかったが、コンサートのテーマはマリアだから、歌うとしたら「アヴェ・マリア」になっただろう。この、カッチーニ作と言われる「アヴェ・マリア」は、恐ろしくゲテモノ的で趣味が悪く、苦手である。彼女がこの歌を歌ってくれなかったことに感謝する。

最後の締めは、パーセルだ。世俗曲のリサイタルだったら「しばし楽の音に」を歌ったに違いないが、マリアがテーマとあって、やはり夕べの賛美歌が妥当だ。彼女の甘い声で歌われる英語の歌は、ぞくぞくする。

皆口々に「心が洗われたわね」と満足して教会を後にしたが、集まった面子に元祖バッコスの信女達3人がいたから、「精進落とし」と称して、夜の街に繰り出し、タパス・バーで夜更けまで盛り上がった。

       
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by didoregina | 2009-10-18 13:11 | バロック | Comments(4)

シモーネ・ケルメスのヴィヴァルディ・モテット集 Amor Sacro

先日sarahoctavianさんがブログ記事にされた、シモーネ・ケルメスの動画の印象があまりに強烈だったので、つい、デパートのCD売り場のバーゲン宝の山からみつけて、手にとってしまった。

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         バロック界のニナ・ハーゲン、シモーネ・ケルメスが
         歌う、ヴィヴァルディのモテット集

パンクおばさん的な表情も歌い方も声も、あまり好みのタイプではないなあと、動画を見て思ったのだが、安さには負けた。しかも、オペラ・アリアではなく、ヴィヴァルディの宗教曲を歌うというので、怖いもの聴きたさもあった。清らかな天使のようなソプラノで歌われることが多いバロックの宗教曲ジャンルにおいて、彼女の魔女的キャラクターは強烈で個性的である。ぬるま湯のようなコンフォート音楽に浸るわたしにカツを入れてくれるだろう。

最初の出だしを聴いたとたん、唐突に思い出したのはナイジェル・ケネディ演奏のヴィヴァルディ「四季」である。彼もパンク的風貌と演奏でクラシック界に殴り込みをかけたのだ。パンクつながりである。ここでの演奏は、アンドレア・マルコン率いるヴェニス・バロック・オーケストラであるが、攻撃的な音でガツンとかますという姿勢は、ケネディに近いものだ。

そして最初のモテットでの、ヒステリックな高音のケルメスによるアリア。これを聴いて、「ああ、もうだめだ」と思った。買ったことを後悔した。耳をふさぎたくなった。
しかし、我慢して聴いていくと、ダ・カーポ・アリアにはさまれたレチタティーヴォの優しい歌声に心の平安を取り戻した。
全4曲のモテット全てが、アリア、レチタティーヴォ、アリア、そしてアレルヤで締めるという構成になっていて、攻撃的なアレグロのアリアの後はラルゴで心を和ませたり、またはその逆だったりして、決してヒステリックな雄たけびだけに終始しない。ヴィヴァルディの作曲技法に感謝する。

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自身も聖職者であったヴィヴァルディが、カトリックのミサのために作曲したモテットの歌詞は、ラテン語で書かれている。英独仏語の対訳つきなので、語学のお勉強には最適だ。その歌詞を読むと、当然ながらいずれもがキリストを讃える内容である。叙情的な雅趣さえ感じられる歌詞に、よくもこれほど激しい音楽を付けたものだと感心する。

4曲のモテットの中には、嵐が吹き荒れるような箇所が必ず入っている。しかし、何度も繰り返し聴いているうちに、ケルメスの声に慣れたのか、最初の一声を聴いたときのような不快感は感じなくなった。歌いぶりには、彼女の身振り手振り、唾の飛ぶところまで目に浮かぶ。
まったりとは正反対の、ビシバシという感じのこういう刺激も時には快感になってくる。危ない、危ない。

でも、やはり心が落ち着くのは、ゆったり静かに歌われるラルゴやラルゲットのアリアを聞いた時だ。そういった箇所の歌い方は、かなりフツーっぽい。器楽演奏もそれに合わせて、弦楽器の荒々しさは退けてオルガンやリュートなどを軽やかに響かせる。しかし、それに安心して心を任せていると、必ず平手打ちのようなしっぺ返しを食らうのである。急と緩の対比があまりにはっきりしていて、それが必ず交互に現れるので、聴いていて眩暈さえ覚える。ヴィヴァルディは躁鬱タイプだったのか?

CDよりどり2枚で15ユーロ!という宝の山は、実りの秋の森のようなものだった。食えそうなものも原色の毒キノコもごちゃ混ぜであった。最初は舌が痺れるほどだったケルメスの毒も、耳が慣れればそれも風雅と、1日経ったらまるで、食通のように振舞えそうな域に達した。

解毒剤として、マグダレーナ・コジェナが歌う「ラメント」というCD、大バッハおよびヨハン・クリストフ・バッハ、カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ、ヨハン・クリストフ・フリードリッヒ・バッハのバッハ・ファミリーとコンティ作曲のカンタータやアリアなどを集めたものを抱き合わせで買った。
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by didoregina | 2009-10-16 14:57 | CD | Comments(10)

野葡萄とバーン=ジョーンズ

女声3部合唱曲に「野葡萄」というのがある。大木惇夫作詞で、「サファイア色の野葡萄の、あまり明るいこの秋は、」という出だししか、覚えていない。

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野葡萄というよりは、マスカットくらいの大きさのアクアマリンで指輪を作った。
彫金を始めて最初に作った指輪だ。
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彫金の先生から、「次の課題は、ブリリアント・カットとカボションの石を使った指輪だから、石を探すこと」と言われたが、どうやってカボション(切り面とせず、頂部を丸く磨く宝石のカット方法)の石を見つけたらいいのか、皆目わからなかった。
たまたま彫金教室の先輩で、文字通り、石に目の利く人と知り合った。彼は、オーストリアやドイツの山で原石を見つけてきては、自分で磨いたりカットしたりして宝石や半貴石を作り出してしまうという特技の持ち主である。
コレクションを見せてもらうと、長さ2センチ巾1センチのカボションで、乳白の入ったとろりとした感じのごく淡いグリーンのアクアマリンが気に入ったので、お願いして譲ってもらった。しかし、拾ってきた石を自分で磨いたものだから、値段のつけようがないと言う。協議の結果、6ユーロでどうだろうか、と折り合いがついた。ありえない値段である。
石を生かしたデザインにしようと思い、かなり大振りな指輪ができた。

それからは、天然石を売っている所を探して、色々なカットの様々な石を買うようになった。
グリーン系の石に弱いので、手ごろな値段の裸石(ルース)を見つけるとつい買ってしまう。

c0188818_21214623.jpg

アヴェンチュリン3個とトルコ石1個を組み合わせて、ちょっとアールヌーヴォー風デザインのブローチを作った。ハイネックのセーターの首元に飾ると大きなチョーカーかペンダントみたいに見える。
最初、銀の板を切り出して曲線部分を作ろうとしたが、先生のご意見で、太い針金状の銀を叩き出して形作ることにした。当然、巾の広いところと狭い部分では厚みが異なるから平板でなく、アールヌーヴォーの植物のような有機的な味わいが表現できる。さすが、専門家は目の付け所が違う。
しかし、叩いているうちに形が変わるし、中に入れる石の大きさは決まっているので、実際に作るのは非常に難しかった。けれども、安易に板を切り出さなかったので、出来上がりは満足いくものになった。

彫金では、石以外のパーツは全て手作りする。
石の枠も、微妙に形と大きさが異なる石に合わせて作る。ブローチ裏の留め具部分も手作りで、針金状の銀線をループにして反発力で開閉ができるようにし、先端を尖らせて突き刺せるようにした。

曲線の感じと色石の取り合わせが、エドワード・バーン=ジョーンズのこの絵に似ていると思う。
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      「レバノンの花嫁」 リヴァプール ウォーカー美術展蔵


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バーン=ジョーンズの絵は、昔イギリス各地で見て回ったが、今年の夏、デン・ハーグの市立美術館で、プエルトリコのポンセ美術館からの「眠り姫」他の作品を集めた「眠れる美女」と題する展覧会が開かれた。
都合がつかず、とうとう行かないうちに展覧会は終わってしまった。
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by didoregina | 2009-10-14 19:42 | 彫金 | Comments(6)

痛恨の「テオドーラ」とトマス・ア・ケンピス

今シーズンは、ヨハネット・ゾマーを極めようとテーマに据えた。
さほど難しいことではない、追っかけるまでもなく、彼女のほうから何度もやって来てくれるのだ。

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          女性歌手にありがちだが、彼女も年齢不詳。
          音楽大学入学が遅れたから、多分わたしより
          ちょっと若いくらい。

新譜が2枚続けて出たばかりだ。
ヘンデルのアリア集で、オーボエ奏者バート・シュネーマンと組んだLove and Madness
まだ買ってないが、いずれゆっくりと。
それから、テオルボのフレッド・ヤーコブスと組んだ、パーセルほかはロバート・ジョンソン、ニコラス・レイニア、ヘンリー・ローズ、ペルハム・ハンフリーという17世紀イギリスの名前を聞いたことのない作曲家による歌曲集With endless teares
これも、そのうちぼちぼちと。

だから、新譜プロモーション真っ盛りのようである。
彼女のサイトを覗くと、なんと10月16日にマーストリヒトの聖母教会で、パーセル他のコンサートをFヤーコブスと行うとある。わたしのスケジュールには書いてない。初耳である。
急いで、チケット・センターに行くと、その日マーストリヒトでそういうコンサートはない、と言われた。少なくともコンピューター・システムには載っていない。

それで、当の教会まで行ってみた。
入り口に、ルルド巡礼のお知らせポスターと並んで、確かに16日のコンサートのお知らせが張ってあるが、時間や値段など詳細が書いてない。教会の塔修築費用寄進者のための特別コンサート、マリアのための歌、とあるのみである。

教会地下にあるショップに行き、係員に尋ねた。
確かにそのポスターは張ってあるが、詳細は知らない、教会のHPを見よ、とのことである。
急いで、家に取って返して、聖母教会のサイトを見ると、詳細が載っていた。
20時開演、入場無料とある。しかし、寄進者に感謝を込めての特別コンサート、とも書いてある。
どうだろう、入り口でチェックがあるんだろうか。特別の合言葉やコードを知らないと入れてもらえないとか。。。
だめもとで、行ってみようと思う。入れるのかどうか、どきどき。

ついでにまた、本人のサイトを見た。
ヘンデルの「テオドーラ」、これは、ペーター・ノイマン指揮ケルン室内合唱団、コレギウム・カントゥシアヌムと組んで、夏ごろロンドンでもやったもので、9日にKempen、10日にケルンでも公演があったばかり。
彼女は、オランダ北東部出身なので、アムステルダム以外に、かの地でのコンサートが多い。
オランダ北部にKampenという場所がある。アイセル湖に程近いハンザ都市である。ここからは遠すぎるので、コンサートのチェックは入れていない。
しかし、9日のはよく読むと、Kempenで、これは、ドイツのケンペンのことではないのか、といやな予感がよぎった。
ケンペンなら、家からそれほど遠くない、義弟が住んでいる町である。よく、オランダのカンペンと間違われるので、「トマス・ア・ケンピスの出身地、ケンペンです」と言うのだ。
ああ、ここでの公演なら、どんなに遅くなっても義弟の家に泊めてもらえたのに!気がつくのが1日遅すぎたのだった。

ヘンデル・イヤーが終わったら、もう一生、上演にまみえることはないだろう。
まさに痛恨の極みである。

トマス・ア・ケンピスの賢言集「キリストにならいて」(「キリストのまねび」)より、以下の言葉を心に留めよう。

「失われた時は還らないことを記憶せよ」

「欲望を棄てよ。そうすれば、お前は平安を見出すであろう」
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by didoregina | 2009-10-11 17:07 | オペラ実演 | Comments(8)

Aangenaam... Klassiek 2009   秋のCDプロモーション

毎年恒例のCDプロモーション企画 Aangenaam... Klassiekの2009年版が出た。
これは、オランダ全国のCDショップ共同の売り上げ推進企画で、様々なレーベルの曲を集めたサンプルCDセットに割引券が入ったものだ。新譜24プラス旧譜10枚、10のDVD作品からの抜粋が入ったサンプルCD2枚組とDVDに、割引クーポンがついていて、価格は9ユーロ99セント。
その割引クーポンを使うと、CD一枚につき9ユーロ安くなるというもの。
また、旧譜10枚は、割引クーポンなしで、一律9ユーロ99セントで買える。

「はじめまして、クラシックです」というタイトルだが、決してクラシック初心者に的を絞ったものではないことは、ラインナップをご覧になればわかると思う。
チェチリア・バルトリの新譜Sacrificiumを筆頭に、ヨハネット・ゾマーの新譜ヘンデル・アリア集や、PJ様のLa Dolce Fiammaも、もれていない!
その他、フエルガス・アンサンブルによるロッシのマドリガーレ集、サラ・ミンガルドとコンチェルト・イタリアーノによるヴィヴァルディのGloria、マグダレーナ・コジェナのチェコ語クリスマス・ソング集なんてのもよさそうだ。
ちょっとゲテモノ的なものでは、クリスチャン・リンドバーグによるバロック・トロンボーン集、ダニエル・ホープによるAir - A Baroque Journeyなんて、面白そうだ。
これらを全部聴いたら、ブログネタには当面困らないだろう。

しかし別に、古楽・バロック・ファンだけがターゲットではないので、ステンハンマルのピアノ・コンチェルトとか、シメオン・テン・ホルトのミニマル・ミュージックなんて通好みのも入ってる。
今年の特徴は、いわゆる万人向けイージー・クラシックっぽいのがないことで、これだけは絶対はずせなかったであろうジャニーヌ・ヤンセンのベートーベンとブリテンのヴァイオリン・コンチェルトだけが、かろうじてメジャー路線である。

DVDリストの中で目を惹くのは、マレーナ様がオルロフスキーだったグラインドボーンの「こうもり」、エヴァ・マリア・ウェストブルックの体当たり「ムツェンスク郡のマクベス夫人」、ショル兄のヘンデル「パルテノーペ」。

昨日CDショップで、まずはバルトリの新譜を視聴した。やっぱりどうも、わたしの好みに合わないので、長く逡巡しつつ聴いたが「ちょっとやめときます」と言って買わずに、プロコ・オタクの店長を驚かせてしまった。
旧譜だが、聖母教会での特別コンサートのために来週マーストリヒトに来てくれるヨハネット・ゾマーのCantigas de Santa Mariaと、アレクサンドル・タローがピアノで弾くルモーの「クラブサンのための組曲」は、クーポンなしでも9ユーロ99セントだから買おうと思う。

寄せ集めサンプルCDを約10ユーロ出してまで欲しいとは思わないが、クーポンだけ欲しい。
以前、マーストリヒトにあったクラシックがとても充実したCDショップでは、クーポンなしでも割引料金で売ってくれた。そこがつぶれてしまったのが、本当に惜しまれる。
でも大抵、年が明けた頃には、売れ残りCDが割引料金でデパートで買えるから、あせる必要はない。
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by didoregina | 2009-10-11 13:10 | CD | Comments(2)

秋はマーラーの歌曲、アリス・クートの歌はさらなり

大掛かりな交響曲やロマン派の音楽は、わたしの守備範囲外だが、秋には、人並みにマーラーが聴きたくなる。しかし、歌曲に限る(含む「大地の歌」)。
それでどうしてもマーラーの歌曲CDは、いろいろ集めたくなる。
CDショップを覗いたら、アルチーナさんの愛するアリス・クートのCDが安くなっていたので、買った。

c0188818_4513599.jpg

           この写真のクートは、カサロヴァとコジェナを
           足して二で割ったような顔つき。


マーラーの「子供の不思議な角笛」、ハイドンの「ナクソスのアリアンナ」、シューマンの「女の愛と生涯」、マーラーの「リュッケルトの詩による5つの歌」という内容である。EMIのデビュー・シリーズであるが、なかなか意欲的な選曲だ。ピアノ伴奏は、ジュリアス・ドレイク。
c0188818_1852857.jpg

写真で見るクートは、二人のメゾに妙に似ているが、歌声はどうか。
聴いてみると、予想以上にいい。彼女の歌い方と声が耳に心地いいため、繰り返し聴いた。何度聴いても、途中で眠くなったり飽きたりしない、というのは久しぶりだ。とにかく、声といい、丁寧な歌い方といい、感情の込め方といい、わたしの好みにハマッタのだ。

ちょっと、フォン・オッターを思わせるようなところもあるが、クートの方が成熟した歌いぶりなのに耳にはフレッシュに響く。テクニックは完璧なのに嫌味がないのだから、これは只者ではない。
ピアノ伴奏だけなのも、クートの歌に気持ちが集中できるからいい。

クートが書いているライナー・ノーツを読むと、このCDのための選曲理由と目標が明瞭なのにも驚かされる。現代においては一見古臭い印象の「女の一生」や「センチメンタル・ジャーニー」というテーマを、しっかり見据えて自分のものにしていることがわかる。歌い手の感情と知性が完璧に一つになっているアプローチだから、聴く側は心地よく音楽に浸れる。音楽の包容力が大きいのだ。

このCDの印象は、秋が深まると袖を通したくなる真綿紬の着物の肌触りを思わせる。ほっこりと優しいから、聴いていると心と体がのびのびしてくる。
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by didoregina | 2009-10-09 22:30 | CD | Comments(8)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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