カテゴリ:オペラ実演( 108 )

ホランド・フェスティヴァルの気になる演目

毎年6月にアムステルダムで開かれるホランド・フェスティヴァルでは、音楽、演劇、オペラ、映画その他の特別公演が1ヶ月の間、繰り広げられる。今年は財政緊縮を強いられたためか、どうも、これ!という面白そうな演目に欠ける様な気がするが、それでも2,3行きたい!と思わせるものを見つけた。

まず、DNOの「カルメン」
「カルメン」は、普段なら特に観たいと思うオペラではないが、カーセン演出なので怖いもの観たさで興味津々。大々的に募集した(現在も募集中)エキストラ400人が、闘牛場面やカルメンの死に歓声を上げるらしい。6月25日は歌劇場ではなく、オースターパークでの公演である。しかも、その日は入場料がタダ!特に名指しはしないがアムステルダム近郊にお住まいの方、必見である。
19時開演で4時間15分の長丁場であるので、折りたたみ椅子、敷物、毛布はもちろんのこと、夕食もピクニックにして持っていくのが賢いだろう。野外でのオペラ公演は、見るほうも大変である。夏でも夜は冷えるので厚めのコートも必携。

次に日本からは「文楽」
日本に住んでいたって大阪に行かない限り、ナマの文楽に接する機会はまずない。たまに国立劇場でやったりすることはあるが。だから、海外公演こそ実はチャンスである。
アイ川に面したミュージック・シアター・アーン・ヘット・アイは、こじんまりとして音響も悪くない。6月28日にはマチネもあるので、行こうかな。

そして、サシャ・ワルツ&ゲスツの「メデイア」
26、27日の夜しか公演がないのが痛い。現代音楽らしいが、演奏はベルリン古楽アカデミー。
実は、昨年1月のモネでの「ダイドー」は、サラ・コノリーのタイトルロールでサシャ・ワルツのダンス・振り付けの(多分)豪華なものだったのだ。チケットが取れずに行けなかったが、ベルリン公演の映像を貼ってみる。(2006年のホランド・フェスティヴァルでも上演された)。これで歌がサラ様なのを想像してもらいたい。


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by didoregina | 2009-03-13 08:48 | オペラ実演 | Comments(4)

カリスト@モネ       謝肉祭の浮かれ騒ぎ

カーニヴァルの真っ最中である。カーニヴァルというのは阿波踊りみたいなもので「踊る阿呆に観る阿呆、同じアホなら踊らにゃソンソン」のノリで、自身も仮装して参加しないと面白くもなんともない。大学祭みたいな仮装パレードにもビールにも全く興味がないので、街中の馬鹿騒ぎから逃げ出すようして、ブリュッセルのモネ劇場に行ってきた。
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カヴァッリのオペラ「カリスト」の再演である。DVDにもなっているルネ・ヤーコブス指揮、ヘルベルト・ヴェルニケ演出のものだ。
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muzikale leiding |  René Jacobs
regie, decors en kostuums |  Herbert Wernicke
herinstudering regie |  Dagmar Pischel
belichting |  Robert Brasseur

Calisto
Eternità |  Sophie Karthäuser
Giove |  Johannes Weisser
Mercurio |  Georg Nigl
Endimione |  Lawrence Zazzo
Diana
Destino |  Caitlin Hulcup
Linfea |  Thomas Walker
Satirino |  Max Emanuel Cencic
Furie |  Angélique Noldus
                    Pane |  Magnus Staveland
2009年2月22日 De munt        Natura |  Magnus Staveland
Francesco Cavalli La Calisto         Silvano |  Konstantin Wolff
演奏 Concerto Vocale         Giunone |  Inga Kalna        

映像を見てもらうと分かるように、登場人物はヴェネツィアのカーニヴァルのような仮面と服装で、ローマ神話を道楽者の貴族とその召使の世界に移し変えている。その服装と仮面は、イタリアの仮面即興劇コメディア・デラルテの伝統を踏襲し、暗示的・象徴的である。例えばジュピターは、貴族の道楽旦那がカピターノの扮装をし、羊飼いエンディミオーネは、メランコリックで夢見がちなピエロの服装と仮面で、その他プルチネッラ、アルレッキーノ、スカラムーシュなど典型的なコメディア・デラルテの伝統的人物に扮装して、謝肉祭の馬鹿騒ぎを演じている、2重の仮面劇なのである。カリストはさしずめ、コロンビーナという役どころか。



バロック・オペラをコメディア・デラルテの世界にしてしまうという手法は、結果として驚くほどの洗練を生み出すことになる。豪華な衣装と仮面によって原作の下品さ卑猥さが薄められるだけでなく、登場人物がどんなに下卑た動作を行っても、単に河原者による道化なんだからと、観客は鷹揚に見ることができるからだ。宮廷で王に仕える道化は人間として認められていなかったゆえに、何をしてもどんなことを言っても許されたのと同様の効果である。

舞台デコールは星座になっている神話の登場人物を描いたパネルが4面に箱のようになっているが、平面なのにいろいろな仕掛けが隠されている。特にナポレオン時代からの古い劇場のよさ(舞台の高さが五階分あり奈落も深い)を生かし、神々は天井(天上)から降臨するし、下下の召使たちは床下から自在に登場する。奥行きは平板にして上下の動きで変化をつけるという構築形態がいい。
また、宙乗りなど、いかにもバロックらしいケレンミがある仕掛けも、楽しい。

歌手では、カウンター・テナーのローレンス・ザゾが目当てであった。気品のある声で他の歌手とは一線を画していた。歌わなくても座っているだけだったりして最初から最後まで出ずっぱりである。全てはこの羊飼いが見た夢の世界、という解釈もできる。
カリスト役は声にもルックスにも魅力に乏しかった。ほかのキャラクターが強烈過ぎるためだ。
ジュノー役のソプラノ歌手は声量豊かで、神々しいまでに迫力満点の歌声だった。

古楽アンサンブルによる演奏も、チェンバロ2台、オルガン1台、ハープ1台、リュート2つ、コントラバス2つに、その他の弦楽器と管楽器という厚みのある構成で、レチタティーボの伴奏にしても軽くなりすぎない。
器楽演奏だけの部分が少ないため、音楽を聴いた、と言う印象はあまり残らないが、トータル芸術としてのオペラの真髄が表れた、満腹感のあるオペラだった。
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by didoregina | 2009-02-24 11:21 | オペラ実演 | Comments(8)

急告!ネーデルランド・オペラの来シーズン演目決定

本日、待ちに待ったネーデルランド・オペラの来シーズン演目が発表された。
数日前から、どきどきしていたのだが、昨日からほぼ確信に変わった。何が?

マレーナ・エルンマン様主演の「ダイドーとイーニアス」のことだ、もちろん。

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昨年12月、パリのオペラ・コミックでの同公演を見逃してしまった。しかし、クレジットをよく読むと「ネーデルランド・オペラとの合同プロ」とある。たしかに、ベリンダ役はオランダ人である。そのオランダ人歌手のサイトをたどると、ウィーンで5月のWiener Festwochに同公演があることがわかった。そちらに行く気に半分はなっていたが、よくよく考えると、アムステルダムで「ダイドー」を演ったことがないのに、合同プロになっているというのは、今年のパーセル・イヤーに的を絞っているに違いないと思えてきた。
それで、来シーズンの演目発表を今か今かと待っていたのだ。予想は的中!9月終わりから10月始めにかけての公演である。

これで、わたしにとってのディド・イヤーは完璧なものになる!
これを記念して、マレーナ様ファンクラブを正式発足させたい。
会員登録希望者は、先着順に受け付けるので、コメント欄にその旨明記のこと。
会費無料、様々な情報ゲットの特典有り。

ついでだが(!)、ネーデルランド・オペラの来シーズンのその他の演目も充実しているので紹介したい。

「ユダヤ人の女」

「アフター・ライフ」 オランダ人新進作曲家ミシェル・ファン・デル・アーによるもので、是枝さんの映画「アフター・ライフ」のオペラ化。2年前のホランド・フェスティバルで初演された。

「愛の妙薬」

「サロメ」 コンヴィチュニーの演出。1年前の「ダフネ」はがっかりだったので捲土重来を期待したい。

「西部の娘」 ノリに乗っているエヴァ・マリア・ウェストブルック主演で見逃せない。

「フィガロの結婚」

「さまよえるオランダ人」

「イル・プリジョニエロ」と「青髭公の城」

「エミリー」 オペラ・リヨン・オケ演奏で大野和士さん指揮!

「トロイの人々」 ウェストブルックがカッサンドラ!

「トゥランドット」

「アルトル・ステル」 アントナッチによるモノローグ・オペラ

「犬の心臓」

「シエラ・モレナのドン・キーショット」 ルネ・ヤーコブス指揮ベルリン古楽アカデミー演奏。クリストフ・ドゥモー、ベジュン・メータ、ヨハネット・ゾーマーは見逃せない。

見たい演目が見つかったら、ご連絡を。同好の皆様、ツアーを組みましょ!
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by didoregina | 2009-02-16 13:48 | オペラ実演 | Comments(17)

オペラ出演者募集中

オランダのクオリティ・ペーパー、NRC経済新聞をずっと購読している。記事内容の面白さ、視点、切り込み方全てが好みにはまることも理由だが、記事および写真のソースを明記しているので信頼度が高いから読んでいて安心感がある。ナイメヘン大学のジャーナリズム比較研究者によると、この新聞でのソース明記率および独自取材率は他の新聞に比べずば抜けて高く、やはり高級紙であるイギリスのタイムズ紙が通信社記事に頼る率が増える傾向にあるのに比べても、その態度は評価されてしかるべきである。

さて、本日土曜日のNRC経済新聞は、メイン紙12ページ、経済紙12ページの計24ページのほか、タブロイド版で科学紙16ページ、オピニオン紙14ページ、土曜特別紙40ページが付くので、読み応え十分である。そのほか月に1度は特集雑誌が付く。

これだけページ数が多いと、広告の数ももちろんかなりだ。
その中で、ヤープ・ファン・ズエーデン率いるオランダ放送フィルRadio Filharmonisch Orkestがバス・クラリネットおよび第2クラリネット奏者と第一ホルン奏者募集、というものが、黒抜きの広告のため目を引いた。

そして、その下にあった、
ナショナル・レイス・オペララモー「イポリートとアリシー」公演でのダンサー募集というもの。

ナショナル・レイス・オペラは、オランダ北東部エンスヘデーに本拠地を置くが、フランチャイズ・ホールがないため、国中を巡業するオペラ団である。オランダには歌劇場はアムステルダムにしかないので、地方のオペラ・ファン向けのこういうドサ回りのオペラ団は絶対必要なのだ。
(ちなみにオランダ南部マーストリヒトに拠点を置くオペラ・ザウドも、同様の巡業オペラ団である。)

そのナショナル・レイス・オペラは、今シーズン最後6月にラモーのバロック・オペラを持って全国巡業するのだ。ポール・アグニューも出演するし、珍しいオペラでもあり、見逃せない。
そこに出演するバレエおよびモダンテクニックのダンサーを募集中である。

アメリカのダンス・オーディション番組 So you think you can dance のオランダ版が好きで、よく見ていたが、ファイナルに残ったジュリアという日本人(!)の女の子を応援していた。東京生まれでドイツで教育を受け、4年前オランダに来てダンスを勉強したという彼女は、25歳なのでほかのダンサーに比べて年はかなりいってるが、小柄で可愛く、ずば抜けたテクニックと信じられないほどの体の柔軟性が特徴で、彼女に優勝してほしかったが残念。でもベスト・フォーに入った彼女の健闘を称えたい。
ジュリアちゃん、オペラのダンサー・オーディションも受けたらいいのに。

それから、もうひとつ別のオペラ出演者募集というのが、ネーデルランド・オペラの5月6月公演「カルメン」。こちらはエキストラを多数募集中である。ロバート・カーセン演出のオペラ出演なんて一般人にはめったにないチャンスだ。アムステルダムに住んでいたら応募したかもしれない。




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by didoregina | 2009-02-14 15:51 | オペラ実演 | Comments(4)

「人間の声」と「子供と魔法」

地元のLSO渾身のコンサート形式オペラである。
どのくらい力が入っているかは、カラー写真多用のプログラム・ブックの厚さから推し量られる。(いつもタダ。今回はフルカラー20ページのグロッシー、全歌詞が原語のフランス語とオランダ語の対訳付きで、これもタダ!)

丁度1年ほど前、LSOのプログラムを決める仕事に関わっているインサイダーから「来年は創立125周年だからいろいろ特別プログラムを企画しているけど、ネリー・ミリチョウの歌う『人間の声』がその中でも白眉になるはず」と聞いていたので、わたしもこのコンサートだけは逃せないと、師弟関係を危うくしそうになりながらもしがらみを無視、万障繰り合わせて、着ていく着物にもリキを入れて臨んだ。

まず、座席は6列目ど真ん中とこれ以上は望めないスポット。
舞台上にオケのメンバーが座ると、本日の一人芝居オペラの主役、ネリー・ミリチョウも椅子に座って待機。始まる前から役柄になりきろうというわけだろうか、それにしてはりラックしているように見受けられた。
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               ピンボケで失礼

指揮のエド・スパニヤードが登場し、指揮棒を下ろすとシロフォンのチロリンチロリンという効果音のような電話の音で、期待のモノローグ・オペラが始まった。
最初、別れた恋人からかかってきた電話が混線し、待ち焦がれた相手になかなか通じない。前世紀前半のお話である。電話をかけるには交換手を通すし混線もある。
そのあとは、女の側からの一方的な駆け引きである。明日別の女性と結婚する男の心を引き止めるためにあらゆる手段を使って、通話を長引かせようとする。その合間にも、混線や切れた電話をかけなおしたり二人の破局の経緯を暗示するような混乱が断続的に現われる。
落胆、気休め、空元気、同情を引くための嘘、女の気分はころころ変わり、それが悲劇に繋がることを予測させる。

ミリチョウの文字通り独壇場だった。いや、ドラマチックな声で一人芝居の世界に聴衆を引き込む力という点でだ。普段着のような衣装のため、実際の年齢にふさわしく老けて見える彼女だが、声はまだまだ若々しいつやがあり、力もある。メリハリも利き、演劇性という観点からも、彼女の歌い方にはダントツの説得力がある。もう、「ノルマ」以外のオペラは出なくていいから、この作品をライフワークにしていったらどうだろう、と思えるほど、彼女のものになっているのだ。
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通常思い浮かぶプーランクの音楽には、なんともいえないユーモアがあって、いかにもフランスの古きよき時代の洒落た雰囲気が漂い、とにかく軽い、という印象なのだが、このオペラは暗くて重い。
テーマが重いから、音楽も堅くて、いつものプーランクからは考えられないくらい重い。といっても、プーランクの音楽としては、という程度の重さではあるが。

コクトーによる歌詞というより脚本は、電話が混線して男女のシリアスな会話を盗聴してしまった彼自身の経験に基づいて作られたという。
現代なら、電車の中でケータイ電話をかけているのが、(オランダでは公共の交通機関での通話マナーというものは存在しないので)声が大きいため他人の身の上話など聞きたくもないのによく聞こえてしまう、という状況から、想像力のある人なら作品が作れるかもしれない。

実際、先週のロッテルダム映画祭にこのコクトーの「人間の声」パクリみたいな映画が出品され、クレジットを入れないのは盗作ではないのか、と物議をかもしたのだ。

2009年1月31日  Theater aan het Vrijthof
Francis Poulenc  La voix humaine (tragedie lyrique)
Ed Spanjaard  dirigent
Nelly Miricioiu  sopraan
Neil Wallace  regie
Tessa Joosse  film


Maurice Ravel   l'Enfant et les sortileges
Barbara Kozelj  mezzosopraan
Helen Lepalaan  mezzosopraan
Selma Harkink  sopraan
Laila Sbaiti  sopraan
Erik Slik  tenor
Zhenhua Chang  bariton
Niels van Doesum  bas
Uri Rapaport  beeld en licht
Siem van Leeuwen  poppenspeler
Jacqueline van Eeden  poppenspeler
Rieks Swarte  concept
Henriet Huisman  techniek
Ina Veen  eindregie
Het Zuidelijk Theaterkoor van Opera Zuid koor

休憩のあとは、ラヴェルの子供オペラ「子供と魔法」である。
これが、子供向け教育番組みたいでとっても楽しい演出だった。
舞台上、オーケストラの前にはソリスト6人が並ぶ。
その前、つまりオケピットにふたをしてできた舞台と客席の間に仕掛けがあるのだった。

客席の床から舞台の高さ分、上手から下手まで全部を、紙芝居の背景のような書割を貼り付け、各場面ごとに紙でできた人形芝居をライブで行い、それをヴィデオで撮りながら舞台上部後方のスクリーンに映し出すという仕掛けだった。
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若いソリストたちは表情豊かに歌声を披露し、わたしの席からは、舞台下で行われる紙人形芝居の様子もよく見え、二重に楽しめた。
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by didoregina | 2009-02-01 20:12 | オペラ実演 | Comments(0)

ナクソス島のアリアドネ@ORW

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2009年1月25日 リエージュ 王立ワロン歌劇場
Ariadne auf Naxos by Richard Strauss

Direction musicale  Patrick DAVIN  Édouard RASQUIN [03/02]
Mise en scène  Laurence DALE
Chorégraphie  Daniel ESTÈVE
Décors et costumes  Bruno SCHWENGL
Lumières  Christophe Chaupin
Nouvelle coproduction OPÉRA DE MONTE-CARLO/OPÉRA ROYAL DE WALLONIE

La Prima Donna / Ariadne  Monique MC DONALD
Zerbinetta  Daniela FALLY
Der Komponist  Giuseppina PIUNTI
Der Tenor / Bacchus  Janez LOTRIC
Ein Tanzmeister  Cristiano CREMONINI
Brighella  Enrico CASARI
Scaramuccio  Pietro PICONE
Ein Musiklehrer  Olivier ZWARG
Harlekin  Roger JOAKIM
Truffaldin  Lorenzo MUZZI
Najade  Priscille LAPLACE
Dryade  Federica CARNEVALE
Echo  Kelebogile BOIKANYO
Ein Lakai  Patrick DELCOUR
Der Haushofmeister  Martin C. TURBA
Ein Offizier  Franz GLATZHOFER
Orchestre OPÉRA ROYAL DE WALLONIE

夫婦そろって欲を出して、初日のマチネを観に行った。チケットが半額になったからだ。
しかし、結局お安い買い物にはならなかった。
まず、前日は24キロのサイクリングをしたあと、夜12時までディナー。当日の朝、再びサイクリングをして、3時からのマチネに出かけたのだ。

家からリエージュのオペラ座までは車で20-30分の距離だ。キモノを着る時間も十分ある。よし、行こう、と。

しかし、退屈な1幕目(これはいわばプロローグなんだから、状況の説明だけでいい。もっと短ければいいのに)のあと、フォアイエでワインを飲んだのがよくなかった。
ああ、ようやく歌が沢山聴ける、コミカルな場面交代を見て楽しもう、と思ったのもつかの間、睡魔に襲われいつの間にかこっくり、はっと目を覚ましても集中力が続かず眠ってしまう、という繰り返しになってしまったのだ。

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元凶は一杯のワイン










オケの演奏は、R.シュトラウスの甘く耽美的な音を出すのに全く不向きだったので、音楽に酔えない。また、アリアドネ役以外に知った歌手はいない。彼女、6月の「ドン・カルロ」では、年増みたいで役の雰囲気に合わないエリザベッタだったが、今回は役柄に結構収まって声量もたっぷりなので、彼女が歌うときだけ目が覚めるのだった。

そして、居眠りの合間には、スーザン・ソンタグがカテゴライズしたキャンプの概念にどうしてR.シュトラウスのオペラが入るのだろうかということばかり、考えていた。
たしかに、ワグナーと比べたら、音楽もテーマも荘厳ではないから、キャンプだと言えば言えるだろう。R.シュトラウスは、いわばオスカー・ワイルドに近い美学の人だと思う。下世話な内容に気取りを盛り込んでいる、その軽さがキャンプなのかもしれない。
しかし、時代とともに作品を見る目が変わり評価も変わる。今、R.シュトラウスのオペラをキャンプ趣味だといっても、なかなか肯いてくれる人はいないと思う。というより、キャンプの概念自体が変わってしまったのだろう。
そんなことを考えていたが、夢の中で考えたことゆえ支離滅裂で、結論は出なかった。

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by didoregina | 2009-01-28 00:34 | オペラ実演 | Comments(5)

ORWの「こうもり」引越し公演 (in Heerlen)

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2009年1月18日 Theater Heerlen

La Chauve-Souris (Die Fledermaus) by Johann Strauss jr.

Opera Royal de Wallonie

Direction musicale Dmitri JUROWSKI
Mise en scène Jean-Louis GRINDA
Chorégraphie Laura SCOZZI
Décors Rudy SABOUNGHI
Costumes Danièle BARRAUD
Lumières Laurent CASTAINGT
Nouvelle coproduction  THÉÂTRE DU CAPITOLE DE TOULOUSE/OPÉRA NATIONAL DE BORDEAUX/OPÉRA DE MONTE CARLO
OPÉRA-THÉÂTRE DE METZ/ OPÉRA ROYAL DE WALLONIE

Cast
Caroline Sophie MARIN-DEGOR
Adèle Priscille LAPLACE
Flora Estelle DANIÈRE
Gaillardin Patrick RAFTERY
Orlovsky Nicolas ZIÉLINSLKI
Alfred Éric HUCHET
Duparquet Didier HENRY
Bidard Patrick DELCOUR
Tourillon Philippe ERMELIER
LéopoldJ ean-Philippe CORRE
Ballet  COMPAGNIE LAURA SCOZZI
Orchestre et Choeurs  OPÉRA ROYAL DE WALLONIE
Chef des Choeurs Marcel SEMINARA

今年最初のオペラだから、ブリュッセル(ヴェニスに死す)かアムステルダム(恋するエルコレ)に、本当は行きたかったが、戦い(チケット争奪戦)に負けた。敗軍の将は、不平不満はぐっと飲み込んで、敵の示してきた条件で降伏するしかないのである。
しかし、ここでぐずぐずしていても仕方がないので、新たな敵軍の陣地目指して兵を進めた。

ベルギーのリエージュにある王立ワロン歌劇場(ORW)が、オランダに越境してヘーレンで引越し公演を行うというのは、初の試みだと思う。多分、老朽化したオペラハウス建て替えのため来年度からリエージュの本拠地での公演ができなくなるので、その前に引越し公演してみて、可能性を試そうというわけだろう。
実は、リエージュとヘーレンとではハコが違いすぎるので、この引越し公演に関しては懐疑的だった。どうせちゃちなセットを持ってきて、キャストもドサ周りのB級だろうと。
それが、第3希望だったとはいえ、観に行こうという気になったのは、キャストの中に新人カウンター・テナーのニコラス・ツィエリンスキー(Nicolas Zielinski) の名前を発見したからだ。

彼は、今シーズン最初の9月公演「パリスとエレナ」で主役を演じたのが、とっても印象に残った。
まず、声がメゾ・ソプラノと同じ声域で、カウンター・テナーの中でもかなりの高音が出せる。そして、それがか細くなくて声量がとてもあるので、まるでカストラート、ファリエッリみたいな迫力なのだ。わたしは、高音の出るカウンター・テナーが好きなので、ブライアン・アサワをひいきにしているが、最近の彼は中年太り気味で役の巾が狭まっているような気がする。。。それで見つけたポスト・アサワが、この新人なのであった。

パリスの時の彼は、映画「トロイ」のパリス(オーランド・ブルーム)に張り合える優男であった。
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(エレナはなんだか椿姫みたいだったが)

しかし、今回のオルロフスキー公は、エキセントリックなキャラクターでなければならない。それで作ったイメージとして、マイケル・ジャクソンを演じていた。(白いメーク、黒い髪、例の服装としぐさ。。。)
その彼が、あの高音でヘーレン劇場をゆるがせて歌うので、始めてその声を聴いた人たち(お年寄りが多かった)は「あれ女の子でしょう?」と言い合っていた。子供たちも、始めてナマで聴いたカウンター・テナーが彼のパリスだったので、すごく驚いていたのだが、結構気に入ったみたいだった。老若男女を問わず好感度が高い、というのはスターに必然の条件なので、いまにブレークするかもしれない。名前を覚えておいて損はない。

「こうもり」引越し公演で感心したのは、セットに手を抜かずに、プチブルジョワの家からリッチな公爵の館に休憩後に早変わりしたことだ。豪華な回り舞台に作った階段や、大理石みたいな立派な柱がちゃんと立っていて、映画「メアリー・ポピンズ」のお茶の場面みたいに、人が座ったまま椅子が天井まで昇降する仕掛けまで持ってきた。

それから、ORWはバレエにも強いので、ゴージャスなパーティ場面が1幕を占めるようなオペラでは見ごたえがある。数年前に観た「椿姫」もそうだったし、バロックオペラの「パリスとエレナ」も踊りが多くて華やかだった。

ちょっと困ったのは、今回の「こうもり」がフランス語ヴァージョンだったことだ。(La Chauve-Sourisがフランス語でこうもりとは初めて知った)。
リエージュはベルギーのフランス語圏にあるが、普段の観客の大半はオランダ人またはオランダ語圏のベルギー人だし、ドイツ国境にも近くドイツ語圏ベルギー地方も背後に控えているので、普通は原語上演で3カ国語字幕が出る。
今回はオペレッタなのでフランス語上演でオランダ語字幕だったが、これは結構疲れる。笑いのタイミングがずれてしまうのだ。それでも、字幕のオランダ語にうまくこの地方の方言を入れたり狂言回しのレオポルドに片言のオランダ語をしゃべらせたりして、なんとかもたせた。

ちょっと遅れ気味だが浮かれた新年の雰囲気を味わえ、期待以上に楽しめた。
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by didoregina | 2009-01-18 21:28 | オペラ実演 | Comments(2)

チケット争奪戦完敗        Mission Impossible 1

オペラやコンサートのチケットをゲットするには、様々な方法があるが、わたしが主に用いるのは次の2種類だ。

その1) Abonnementという年間定期鑑賞券みたいなものを、5月から8月の間に買う。来シーズンの出し物が決定・発表されたら、1年の鑑賞計画をたてて、一般チケット開始前に全部いっぺんに買う。これで、あなたも会員だ。絶対に見逃せない、聞き逃せないものゲットは、これで万全だが、劇場によるが最低限いくつかの公演を買わせられる。行けなくなった場合、チケットを引き取ってくれるところ(B)とそうでないところ(A)がある。

その2) 間際にならないと予定が立たないなら、1ヶ月から3ヶ月前くらいに売り出される一般チケット売り出しの日にオンラインまたは電話または直接劇場に出向いて買う。これは、熾烈な争奪戦になるが、緒戦で完敗しても、B劇場なら公演間際になってリターンチケットが必ず出てくるので、くじけないことが大事。A劇場なら、当日開演1時間前から始まる、お引取りのなかったチケット争奪の敗者復活戦に参加する。どちらの場合も、1枚くらいなら何とかなる。

オペラを観始めた15年前から約10年間は、年間のAbonnementを買っていたが、このごろは、そのときの出たとこ勝負が多い。コンサート・チケットは、音楽学校やピアノの先生経由で買う、その1のケースが多い。割引になるから。

やはり、オランダに住んでいると「いかに安く物を買うか」という国民的スポーツに、参戦しないわけにはいかない。
そうすると年間定期鑑賞券が割安なのでおりこうに思えるが、昨年のわたしのように4回も日本に帰らなければならなくなった場合、ゲットはしたが急に行けなくなったチケットを知人にばら撒くことになり、かえって不経済である。

来る日曜日に行きたいと思っていたオペラが3つある。どれもマチネなので、ひとつしか選べない。優先順位は、B劇場の「ヴェニスに死す」、A劇場の「恋するエルコレ」、C劇場の「こうもり」だった。


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Bでは、マチネ分は即売り切れ、一度
結構いい席が1枚だけリターンで出たが、同行したい人がいたため、
涙を呑んだ。
結局それっきりで、惨敗。












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Aには、「王は踊る」を観てから、とっても
行きたくなったが、サイトをのぞくといつも
「まだいい席がありまっせ」と出てくるので、
「まだ買わなくてもいいか」と思っていた。


Bに負けたのがわかった昨日、Aに戦いを申し込むと、なんと日曜のマチネだけ売り切れになったという。あああ、新聞に載った批評がよかったせいなのか?
こんなにマイナーなバロックオペラなのに。普通ありえないことだ。

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筋肉むきむきのヘラクレスの写真が新聞に載ったせいで、直前になってチケット売れ行きが上がったの?


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それで、どうでもよかったCにさきほど戦いを挑むと、あっさりと、前から7列目中央の席が取れた。ここは、わたしでも学割がきくから、2重の勝利である。


意外な幸運は、敵が勝負の前に白旗をあげる場合である。
リエージュの王立ワロン歌劇場(ORW)は、どうも戦う前から戦意喪失気味の劇場である。9月の「パリスとエレナ」に続いて、今月の「ナクソス島のアリアドネ」でも、売れそうにないチケットの安売りを持ちかけてきた。「パリスとエレナ」は62ユーロの席が20ユーロになったし、今回は半額でいかがでしょうか、ともみ手になっている。

あと3つほど、戦いを挑んではいるが、まだ決着のつかないものがある。その報告はまた後ほど。
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by didoregina | 2009-01-16 15:10 | オペラ実演 | Comments(6)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


最新のコメント

Vermeerさま、多分..
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