カテゴリ:ダンス( 4 )

ICK Amsterdam のRocco

ICK (Internationaal Choreografisch Kunstencentrum) Amsterdam という
コンテンポラリー・ダンス集団による最新作Roccoを観賞した。学生時代にモダン・ダンス・
カンパニーを主宰しダンス教師資格も持っているHとTに誘われるまま、チケットを買ったのだった。

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Rocco @ AINCI 2011年11月19日

CHOREOGRAFIE Emio Greco en Pieter C. Scholten

DANS
Victor Callens, Dereck Cayla, Vincent Colomes en
Christian Guerematchi

MUZIEK Soundtrack

KOSTUUMS
Clifford Portier

LICHTONTWERP Paul Beumer en Pieter C. Scholten

photo Anna van Kooij

会場のAINCIは元セメント工場のオフィスビルで、数年前に小劇場に改装され、演劇やダンス・
パフォーマンスが行われている。インダストリアルな要素がそこかしこに残った建物で、いかにも
アングラの雰囲気が漂う。コンテンポラリー・ダンスの公演会場としては非常に適している。

例によって全く事前に何も知らずに公演に臨んだ。

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        photo Anna van Kooij

ステージは、ボクシングのリングそのものの設えで、観客は四方を取り囲んで座る。
開場時点で、ダンサー2人がすでにリング上の椅子に座って、タバコをふかしている。

日本語(!)の『ドレミの歌』に乗って、黒尽くめの装束で頭にミッキー・マウスのマスクをつけた
ダンサー2人がリングの周りでシャドー・ボクシングをする。ゴングが鳴るとリングに上がって準備運動
のように見える動作をしたり、ボクシングの動きを取り入れた振りのダンスを踊る。

リング上に座っていたボクサーそのものの格好の二人に交代すると、格闘技の要素もある振付だが、
肉体美と筋肉の動きを主に見せるようなゆっくりした動作のダンスが始まる。二人の体型はまるで
正反対なのだが、ほぼシンメトリカルな動きをする。ここでも、なぜか『ドレミの歌』が流れ、
「ファはファイトのファー」を合図にゴングが鳴ったりするのだった。

どうやら、「ファイト」=格闘というのが、キーワードのようである。(しかし、こう理解したのは
会場で私一人ではなかろうか。。。)

途中で何度か、黒装束の二人に交代し、彼らはそのたびに衣装を脱いでいく。タイツの上に普通の
ズボン、セーター、マスク、靴や靴下その他を最初は着けて踊っていたのだから、さぞや暑くて
踊りにくかったろう。

しかし、これらの踊りは、単なる「ファイト」だけで成り立っているのではない。二人の動きには、
ごく少量だがある種のエロティシズムが感じられ、「愛憎」を表現しているらしいことがわかる。

途中、ダンサーは「休憩」という札を持って、売り子の格好(首からチョコなどの入った箱を提げ)
をしてリングの周りを歩きながら笑いも取った。笑いというより、緊張をほぐすためで、実際「休憩」
なしでは続けられない激しい動きが続いたのだ。
その間流れる音楽は、アラン・ドロンとダリダによる『甘いささやき』(パローレ・パローレ)で、
「キャラメル、ボンボン・エ・ショコラ~」という歌詞に合わせて、チョコレートなどを客に投げる。



パフォーマンスのタイトルが『ロッコ』だということを終演後に知り、もしかしてヴィスコンティの
Rocco e i suoi frateli (=ロッコとその兄弟たち 邦題『若者のすべて』)のロッコなのか、
とようやく思い当たり、リングが舞台でボクシングが動きの基本になっていて、「休憩」中にアラン
・ドロンの歌が流れたのにも納得がいったのだった。

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by didoregina | 2011-11-23 11:54 | ダンス | Comments(4)

フィリップ・ジャンティのVoyageurs Immobiles

スポンサーとして招待され、全く予備知識なしに観に行ったフィリップ・ジャンティ・カンパニー
の出し物は、パントマイムとコンテンポラリー・ダンスと人形劇がフランス的に合体したもので、
しかもどのカテゴリーにも収まり切らないような、ファンタジー溢れるパフォーマンスだった。

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VOYAGEURS IMMOBILES
Création 2010 de la Compagnie Philippe Genty
Mise en scène de Philippe Genty et Mary Underwood

2011年11月12日@Stadsschouwbrug SittardGeleen







とにかく、下の動画をご覧あれ。



失われた子供時代、もしくは誰でもが生涯捨てられない子供心といったものがテーマのようで、
無邪気と残酷が同居し、その構成は予断を許さず、想像力の素晴らしさと卓越した演技力に
観客は目を瞠る。

判りやすくするために例えると、パントマイムは、『天井桟敷の人びと』で見られるような
古典的なものではなく現代的だが、ジャン・ルイ・バロー風な優美な動きで洒脱さがある。
そして、全体的にブラックユーモアというか『デリカテッセン』を思わせる軽妙な不気味さに満ちて
いるのだ。

ダンスはピナ・バウシュ風で、シンプルな動きの美しさが独創的な小物使いと舞台装置に映える。

舞台装置は、プラスチックの海(しかし、フェリーニ風キッチュにはならない!)や紙でできた
砂漠のようなシンプルなものだが、その使い方がクリエイティブで感心する。
ダンボール箱やボール紙やハトロン紙や模造紙などの無機質なものが、まるで生き物のように
千変万化し、様々な形をとり自由自在な動きをするのだ。思わず目を疑うほど。
creative with cardboard とサブタイトルを付けたくなった。

そして、人形使い。文楽にヒントを得ているようなリアリスティックで手の込んだ動きだ。それが、
紙と組み合わされて動くのが独創的。

とにかく、あれよあれよと、思っているうちに、軽々とパフォーマンスは進行し、肉体美と演技と
物使いの想像力とが絶妙のコントロールで出来上がったトータルな舞台を楽しむことができた。
ファンタジーが飛翔し様々な要素が詰まっているので既成の範疇に収まらない。名付けるなら、
トータル・シアターというしかない。これに音楽も素晴らしいものが付いていたらいいのに。または
オペラの演出に組み込んだり、コラボにしてもいい。
(もしかしたら、ロベール・ルパージュ演出のDNO1月公演、ストラヴィンスキーの『夜鳴き鳥
その他の物語』では、歌手が人形を使ったりするらしいから、こんな雰囲気の舞台かも。観に
行くべきだろうか。)
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by didoregina | 2011-11-18 09:28 | ダンス | Comments(0)

お寒いEvolution

Corpus Acrobatic というダンス集団による新作Evolutionを観た。
春に観たニューヨークのダンス集団ピロボロスの公演同様、主人の仕事関係で招待されたからだ。

アムステルダムのこのアクロバット・ダンス集団の公演は、ダーウィン・イヤーにちなんだタイトルを冠したものだ。
宇宙の生成から、地球での生命誕生、生物の進化という過程を、かなり写実的な舞台映像とアクロバティックなダンスで表現していく、という構成だった。
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例えば、映画「地球に落ちてきた男」の宇宙人みたいな格好のダンサーが、ダ・ヴィンチの人体像のようにワッカの中で回転する。その背景には、ディスカヴァリー・チャンネルかなにかのような、宇宙の誕生から銀河系、太陽系の生成がコンピューター・グラフィックが映し出される。
地球が大写しになると、舞台では布を波状に動かすことで海を表現。生物が誕生してからは「ミクロの決死隊」みたいな雰囲気になる。それ以後、生物の形態が様々な動物に進化・変化していくのを、写実的動物ダンスで見せる。

しかし、トータルな思考の根底が浅いため、「進化」の表現方法が、まるで、中学生か高校生が考えそうなステレオタイプのイメージのレベルだった。実際、高校時代にダンス・エクスプレッションの授業で創作したものを思い出してしまった。もちろん、プロのアクロバット・ダンス自体は見ものであったが、振り付けや演出・構成が、唖然とするほど稚拙である。テーマの掘り下げがまるで感じられないから、見世物としては楽しいが、それだけだった。
コンセプト作りが弱いから、いつ破綻するのかとはらはらしつつ、どういう風に結末に持っていくんだろうと、最後には同情を伴う好奇心を持って臨んだ。
巨大な空気人形の人間の胎児の像が膨らんで天に昇っていったのがラストだった。これが進化の終点だという意味なんだろう。

自分でお金を出しては絶対にチケットを買わないタイプの公演に招待され、ビュッフェ形式の食事も出たから、ありがたいことだと感謝はした。しかし、見世物的でほとんど何も心に残らないものを見せられると、こういうことに企業その他がスポンサーとしてお金を使うことの意味を考えざるを得ない。というのも、劇場の階上のパーティ会場に集まった人数をざっとみても、観客の半数以上で、この招待客がいなければ公演は成立しなかっただろうと思われるからだ。それらの招待客は、様々な職場ごとに決められたテーブルに陣取り、仲間内で談笑するだけで、多分本来の目的であるネットワーク作りにはほとんど関心を示さなかった。民がスポンサーとなる芸術振興活動のお寒い実態を見せつけられた思いがする。

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   立食形式なので、汚れても洗えるポリエステルの着物にした。
   ポリ着物はこれ一着のみ。ネットで5000円弱だった。
   形は着物だが、ふわふわと頼りなく、絹の着物を纏った時のような
   気分の高揚が感じられない。
   帯は、アンチックで短かったから、2部式に作り変えた。
   着物の模様は、蔦紅葉。帯にも紅葉などが織り込まれているから、
   季節的にはあっている。
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by didoregina | 2009-11-18 22:34 | ダンス | Comments(10)

Pilobolus Dance Theater in Sittard

招待券をいただいたので、ニューヨークのダンス集団ピロボラスの公演を観にいった。モダン・ダンスだということ以外、全く予備知識のないまま、である。

2008年の新しい2作品と、70年代初めおよび80年代初めの作品3つを、年代ごちゃ混ぜで見せてくれたのだが、作られた時代が歴然とわかる。
振り付けが格段古臭いわけではない。使われている音楽と動きのせいだ。

全体的な印象は、ピラティスの動きが基本になっているようだ。筋肉を緊張させて体の隅々まで神経を張りめぐらせ、完璧に肉体をコントロールした動きのことだ。跳躍は少なく、すこし機械的に床上を数人で回転する動きが多い。ゆっくりでありながらアクロバティックなダンスは、どこか瞑想的でもある。

新作の映像が見つからなかったので、数年前のオスカー授賞式で披露した影絵ダンスを紹介したい。


オスカー像はすぐにわかると思う。ペンギンも。ピストルは「デパーティッド」、ハイヒールは「プラダを着た悪魔」、(ここには映っていないがバベルの塔を模って「バベル」)、等々の映画を肉体の影絵で表現している。直接的で分かりやすい。

2008年作の影絵ダンスDarkness and Lightは、それよりずっと進化し、抽象的だ。そのため、オスカーでのパフォーマンスより、芸術としての完成度の高いダンスになっている。
鳥が空を飛んだり、魚が水の中を遊泳したりの自然描写や、ライティング効果を上手く使ってデフォルメした形で火星人が地球に降り立ったようなイメージを作り上げているのだが、全体としては、極く初期のヴィデオ・アートそっくりなのだ。ナム・ジュン・パイクやヨーゼフ・ボイツが活躍した80年代前半を髣髴とさせるものだ。そして、使われている音楽がブライアン・イーノのアンビアント・ミュージックだったのが、わたしにはうれしいのだが、ローリー・アンダーソンでもぴったりだったと思う。

トリは、1981年作のDay Twoというダンスだった。男女5人がヌードに近い格好で、当時のブライアン・イーノとトーキング・ヘッズの音楽にあわせて、全くエロティックにならずアクロバティックだが、足を地につけたダンスを踊るもので、ああ、これぞ、80年代のニューヨークだなあと、懐かしさにふけってしまった。(80年代はオペラに目覚める前だったので、いまよりずっとダンスを見ていたからだ。)

招待客には、公演の後、貸切ホールでビュッフェの食事が振舞われた。その数を見ると、お客の大半がスポンサーみたいだった。
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by didoregina | 2009-03-19 23:49 | ダンス | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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別名: didoregina
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モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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