カテゴリ:ビール醸造所( 2 )

アルデンヌ高原ハイキングとベルヴォー・ビール醸造所

秋の週末、4家族でアルデンヌ高原の別荘を借りるというのが、毎年恒例の行事化している。
4家族といっても、昨年から子供たちは一人も参加しなくなったので、夫婦4組の8人だ。

9月終わりから10月始めまでは、北ヨーロッパは夏の暑さだった。それが、急激に冷え込んで
秋らしい天候になった。北ヨーロッパの秋といえば雨である。日本の秋のように空気が澄んで、
高い青空がさわやか、という具合にはいかない。暗くてどんよりして、しとしと降る雨で寒い。


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      ベルギーのアルデンヌ高原東部は、ドイツ語地域だ。
      緑の丘の牧草地と森と川と湖が綾なす風景は、目にも
      心にも心地よく、ひんやり清涼な空気に胸もすっきり。


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      小雨の中ハイキングする私たちを、牛達が整列して出迎えてくれた。


土曜日は、ベルヴォーという村を拠点に10キロ弱のハイキングをした。
「麗しの谷」という名前も美しいこの村を選んだのには、訳がある。

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      ハイキングの最終地点(および始点)は、ここ。
      農家を改造した、手作りのベルヴォー・ビール醸造所だ。

ハイキングとビール醸造所見学を組み合わせることを思いついたのは去年だ。
山歩きが好きな人には楽しみが2倍になるし、さほど歩くのは得意ではない人にも励みになる
だろう、という深謀遠慮である。

それが的外れでなかった、という証拠には、暗くて寒くて(日中の気温5度)雨降りという、
ハイキング日和とは程遠い日だったにもかかわらず、辺鄙な山村にある醸造所の駐車場は満杯。
ビールを飲んだり食事も出来る、醸造所付属のブラッスリーは満員の盛況だし、一度に20人
ほどしか入れない小さな醸造所にその日だけでも120人以上の見学者が詰めかけたという。

6年ほど前、この村に醸造所を建てたのはオランダ人夫婦で、元薬剤師で大学勤めだったのに
脱サラして物作りの仕事をしたいという夢を実現させたのだった。
奥さんが、私たちのグループの見学ガイド担当だった。ビール作りへの情熱がひしひしと伝わる
彼女の説明に耳を傾けた。以下は、彼女の説明より一部抜粋したもの。


子供たちをオランダ語とフランス語のバイリンガルに育てようと思って、17年前にベルギーのフランス
語地域にある村ベルヴォーに住み着いた。
ふとしたきっかけで、村の中に廃墟のようになった古い農家を見つけた。広い敷地と馬小屋、牛小屋、
豚小屋、納屋があった。手作りへの情熱が絶ちがたく、納屋を改装して醸造所を作ろうと決意。また、
飲食および試飲のできるブラッスリーと売店も家畜小屋を改装して造ろうと思った。

元薬剤師だから、慎重で細かい仕事が得意だ。ルーヴァン大学やルーヴァンのビール工場で
ビール醸造の講習・実習を受けながら、無添加・無濾過・無殺菌の手作りビールを作る準備を重ねた。

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        外側が銅で内側がステンレス製の2重になった
        モルト汁攪拌装置。

新規参入の手作りビール醸造所がビール王国ベルギーで成功を収めるため、知恵を絞った。
大手と張り合わないよう、手作りの製法を守って、オリジナルの味を追求しようと思った。

見学者を受け入れることを考慮に入れて、設備デザインは美しいものに限定し資材にもこだわった。
しかし、資金は潤沢とはいえないから、設備は全て中古を購入しようと思って探した。
小樽のある醸造所が、地元での需要が少なく経営が振るわなかったため、設備一式を売りに
出したのをネットで見つけた。日本の機械メーカー製の精巧な作りの美しい外観で、技術面でも
信頼できる。

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          熟成タンクの表示に注目。日本語だ。

きっちりと丁寧に梱包された機械設備がアントワープ港まで届いた。しかし、全て日本製の
機械だから、説明書およびパネルや目盛り表示は全て日本語だった。だから、設備の組み立て
からして骨が折れた。

最初に仕込んだビールの味は、素材も吟味したのに美味しいものではなかった。なぜだろう、と
試行錯誤を繰り返した。原料と仕込みの過程にどこか問題があるのだろう、何とか解決して、これ
ならと満足のいく味が出来たのは、3年後だった。

今から3ヶ月前までは、ボトリングも手作業だった。生の樽詰めでは味と品質が保障できないので、
外に出すのはビン入りのビールなのだが、需要が増加して手作業では追いつかなくなったので、
3ヶ月前にボトリング設備も導入した。
イタリア製なので気難しく、機械をだましだまし作業しないと上手くいかない。
なぜかというと、もともとワインのボトリング用の機械なので、気泡のあるビールを詰めるのはあまり
得意でないからだ。

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          イタリア製のボトリング機は新品


まだまだ、色々な面白い話を聞くことができたのだが、長くなるので割愛。
こんな風に、通常のビール工場見学とは異なり、単に製法の説明だけでなく、様々の裏話も教えて
くれるのが楽しかった。見学時間は約30分だが、いい質問をしたりして話し手の興が乗れば伸びる。
その後は、付属ブラッスリーで試飲。見学料金は6ユーロで、ビール2杯分の試飲も含まれる。


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       ブランシュ(白)、ブロンド、ブリュン(茶)、ブラックの4種類の
       ビールが造られているのだが、ブラッスリー・ベルヴォーという名前も、
       ビールの種類も全てBで始まるこだわりの命名だ。
       一人6ユーロ払うと、8人分16個の王冠が入った籠を手渡される。
       見学後、その王冠でビール試飲の支払いをする。普通の丸いグラス33cl
       だと王冠2つ、小さいグラスだと王冠1つの料金。ブリュンはちょっと酸味が
       きつく、ブラックは焦げたコーヒーみたいな味で、結局、コクのあるブロンドが
       一番美味しかった。無濾過なので、どれもにごっている。


小さなビール醸造所見学をハイキングと組み合わせたのは、案の定、大正解で、絶賛された。
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by didoregina | 2011-10-10 00:45 | ビール醸造所 | Comments(7)

バッコスの信女たち @ Gulpener

このところオランダはやけに蒸し暑くて、毎日のように夕立が降る。かと思うと、今日はやたらと肌寒くて暗い日であった。
このように夏だからといって暑いとは限らず、天候はめまぐるしく変わるから、ビールは特に夏の飲み物というわけではないが、夏休みだからビール醸造所を見学しよう、ということになった。熟女3人組(名づけてバッコスの信女たち)+丁度日本から来ているK子さんのご子息とで、グルペンにあるグルペナー・ビール醸造所に出かけた。家から車で20分ほどの立地である。
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家の近辺(オランダ・ベルギー)には、実に沢山のビール醸造所が点在しているので、もっとこじんまりしたところか修道院の醸造所に行きたかったのだが、予約を申し込むと、案に反してどこも見学ツアーは満員御礼ソールドアウトであった。やはり夏休みなのだ。

13時半のツアーは、40人ほどがまず工場向かいにあるビアハウスに集合すると、コーヒー・紅茶とこの地方名物のフラーイという果物のパイを振舞われた。パン生地が土台で季節の果物が焼きこんである、素朴な平らなパイである。会社や家庭・学校などどこを訪問してもまずはこれがないと何も始まらない、粗茶とは大きな違いの美食を重んじる南部の伝統である。
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出されたのは、りんごのフラーイとベリー類のフラーイだった。パンのようにイーストが入った生地で、スペルト小麦を使用してある。

まずはお決まりの会社および、結構詳しいビール醸造の説明(原料、製造課程)などがあり、今の時代だから、エコ・自然共存・地元地域振興を全面に打ち出しているのがよくわかった。例えば、原料にはなるべく農薬の使われていないものを厳選し、敷地内の地下水を使用し、廃棄物は飼料や肥料にリサイクル。家族経営のため、ホップは自家製で社長以下従業員一同が9月の第二日曜には摘み取り作業をする。また、カフェにかかっているグルペナー・ビールのネオン看板はソーラーパネルによる発電であるそうだ。
そして、全国的なTVコマーシャルは行わず、その代わり飲食店へのダイレクト卸販売でコストを削減し、地元の様々なクラブにスポンサーとして利益還元していることも強調していた。
映画も見せられ、その後実際に工場見学である。
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ここの製造で特徴的なのは、工場製ではあっても伝統的手作りの製法技術を生かし、時間をかけることらしい。高温加熱殺菌を避け、防腐剤も入れないが、じっくり熟成させることで賞味期限を長持ちさせているが、それでもここのビールは、他の工場製の速成ビールに比べて賞味期限は短いという。

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6万リットルのタンクが吊り下がり壮観。工場や会社には珍しく、写真・ヴォデオ撮影OKだった。

工場内でタンクから出来立てで濾過されていない上面発酵ドルトを飲ませてくれた。
しかし、ビール工場見学のフィナーレは、なんと言っても試飲だ。9種類のビールから好きなものを2杯飲んでよい。それ以外は実費である。
ピルシュが3種、スペシャル・ビールが6種。4人が、まずは各々これは、と思うものを注文した。それがみんな違うものだったので、少しずつ飲み比べて、2杯目はその中から気に入ったものや別のものを選んだ。9種類のビールはそれぞれにあった形のグラスに注がれる。
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ドラフト・ビールと瓶入りビールの違いは何か、というと、原料および製造過程はほぼ同じだが、炭酸が瓶および缶には充填してあるが、カフェ用の樽には入っていない。タップから注ぐとき、樽から送るのに炭酸を混ぜる、その違いだというが、味はやはりドラフトのほうがいい。

また、お祭仕様ビールというのがある。これは、サッカーの試合時やポップ・コンサート会場で売られているドラフト・ビールで、原材料は同じだが発酵時間を短縮してアルコール度数を低くしてあるのだという。お祭の後の暴動を防ぐためである。

なかなか、新たな知識が得られる楽しい見学ツアーであった。ビール試飲で粘ったので所要時間は全部で約3時間。コーヒー・紅茶、フラーイ、ビール2杯、粗品(トランプ)込みで一人13ユーロ50セントだった。
これに味を占め、また、他にも行きたいという方多数なので、これから毎月恒例の醸造所めぐりをしよう、ということになった。
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by didoregina | 2009-07-11 01:33 | ビール醸造所 | Comments(6)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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