真夏日のデルフトでランデブー
ブログ友のgalahadさんと、ヨーロッパ遠征中のとある一日デルフトでお会いした。

新教会脇にある、『牛乳を注ぐ女』の彫刻
駅前が大工事の最中で、迂回路がわかりづらく、なかなか駅から出られなくてあせる。
町の中心にある市庁舎と新教会が向かい合って建つマルクト広場に向かう。
丁度、市の立つ日で広場は大賑わいである。

新教会前に建つ国際法の父グロチウスの像。頭に鴎、足元に鳩。
そこから、まずは、フェルメール・センターへ。
デルフトといえば、日本人にはフェルメールの町であろう。しかし、彼の作品はこの町
には、全く残っていない。でも、センター内にはかなり安っぽいが全作品のコピーが
並べられている。これらを観ると、世界の美術館に散らばる全作品を観て回る行脚をして
いつか制覇したいものだという意欲が湧いてくるのが不思議だ。

光の加減も絵(ダブリンにある手紙を書く女と召使)そっくりの
写真が撮れるコーナーで。
ヨーロッパの主要美術館にあるものは、実物を何点かすでに見ているが、今回、特に観て
みたいと思ったのは、NYにある『眠る女』とワシントンDCにある『赤い帽子の女』だ。
どちらも、妙にモダンな印象派風の作品である。
デン・ハーグにあるマウリッツハイスは現在、修築のため閉館中で、主だった作品は
ハーグ市立美術館に移されているのだが、『真珠の耳飾の少女』は日本へ出張中。
『デルフトの眺望』は、かろうじてデン・ハーグに居残っている。

センターの窓からスクリーン越しにマルクト広場を望む。
カメラ・オブスクラ風のイメージ。
センターのあとは、フェルメールの記念墓石のある旧教会へ。教会に足を一歩踏み入れると
涼しくてほっとする。ほとんど真夏日である。
この教会には、フェルメール以外にもオランダ黄金時代の国士・名士たちのきらびやかな記念墓
がある。

海軍提督マールテン・トロンプ(1598-1653)
スペインとの80年戦争や英蘭戦争で活躍。大砲の上に横たわる像。

海軍提督およびオランダ西インド会社長官ピート・ハイン(1577-1629)
彼もまた80年戦争で活躍。像はマットのようなものの上に横たわっている。

デルフト出身の微生物学者アントニー・ファン・レーウェンフック(1632-1723)
顕微鏡による観察で微生物を発見。フェルメールの『地理学者』および
『天体学者』のモデルの男性らしい。
外に出ると兎に角暑い。
水の上ならば、堀のような運河でもまずまず涼しいので、ランチは水上で。

浮き橋のような船のような水上テラスがデルフトには何軒かある。
暑い日には、まるでオアシスだ。

デルフトの地ビール2種。右は白ビール。左のスタウトはコーヒーで
味付けされており、盛時の東インド会社・西インド会社の残り香を偲ぶ。

新教会脇にある、『牛乳を注ぐ女』の彫刻
駅前が大工事の最中で、迂回路がわかりづらく、なかなか駅から出られなくてあせる。
町の中心にある市庁舎と新教会が向かい合って建つマルクト広場に向かう。
丁度、市の立つ日で広場は大賑わいである。

新教会前に建つ国際法の父グロチウスの像。頭に鴎、足元に鳩。
そこから、まずは、フェルメール・センターへ。
デルフトといえば、日本人にはフェルメールの町であろう。しかし、彼の作品はこの町
には、全く残っていない。でも、センター内にはかなり安っぽいが全作品のコピーが
並べられている。これらを観ると、世界の美術館に散らばる全作品を観て回る行脚をして
いつか制覇したいものだという意欲が湧いてくるのが不思議だ。

光の加減も絵(ダブリンにある手紙を書く女と召使)そっくりの
写真が撮れるコーナーで。
ヨーロッパの主要美術館にあるものは、実物を何点かすでに見ているが、今回、特に観て
みたいと思ったのは、NYにある『眠る女』とワシントンDCにある『赤い帽子の女』だ。
どちらも、妙にモダンな印象派風の作品である。
デン・ハーグにあるマウリッツハイスは現在、修築のため閉館中で、主だった作品は
ハーグ市立美術館に移されているのだが、『真珠の耳飾の少女』は日本へ出張中。
『デルフトの眺望』は、かろうじてデン・ハーグに居残っている。

センターの窓からスクリーン越しにマルクト広場を望む。
カメラ・オブスクラ風のイメージ。
センターのあとは、フェルメールの記念墓石のある旧教会へ。教会に足を一歩踏み入れると
涼しくてほっとする。ほとんど真夏日である。
この教会には、フェルメール以外にもオランダ黄金時代の国士・名士たちのきらびやかな記念墓
がある。

海軍提督マールテン・トロンプ(1598-1653)
スペインとの80年戦争や英蘭戦争で活躍。大砲の上に横たわる像。

海軍提督およびオランダ西インド会社長官ピート・ハイン(1577-1629)
彼もまた80年戦争で活躍。像はマットのようなものの上に横たわっている。

デルフト出身の微生物学者アントニー・ファン・レーウェンフック(1632-1723)
顕微鏡による観察で微生物を発見。フェルメールの『地理学者』および
『天体学者』のモデルの男性らしい。
外に出ると兎に角暑い。
水の上ならば、堀のような運河でもまずまず涼しいので、ランチは水上で。

浮き橋のような船のような水上テラスがデルフトには何軒かある。
暑い日には、まるでオアシスだ。

デルフトの地ビール2種。右は白ビール。左のスタウトはコーヒーで
味付けされており、盛時の東インド会社・西インド会社の残り香を偲ぶ。
今年のヴェルサイユ・フェスティヴァルはヘンデル祭り!
6月8日から7月13日まで連日、ヴェルサイユ宮殿で繰り広げられる音楽祭の今年の
テーマは『ヘンデルの勝利』で、素晴らしい充実のプログラムだ。
ヘンデルのオペラやオラトリオのほか、『王宮の花火』や『水上の音楽』などの演奏会が、
宮殿内の王室礼拝堂や歌劇場、鏡の回廊および庭を会場として行われる。バロックの精華を
これ以上は望めないほど雰囲気がマッチした会場で鑑賞できるのだ。
プログラムのみならず、出演者のラインナップもすごい。
気になるものだけ挙げても以下のとおり。
6月11日 『オルランド』@王立歌劇場 カーティス指揮 主役がイェスティン・デイビスで、
ロベルタ・マメリ、クリスティーナ・ハンマーシュトロム他の出演!
6月12日 『アルチーナ』@王立歌劇場 ルセ指揮レ・タラン・リリク、カリーナ・ゴーヴァン、
アン・ハレンベリ、デルフィーヌ・ガルー他
6月13日 チェチリア・バルトリのリサイタル@鏡の回廊、題して『ヘンデルのヒロイン達』
6月14日 『ジュリオ・チェーザレ』@王立歌劇場 ダントーネ指揮アカデミア・ビザンチーナ
ソニア・プリーナが主役で、パオロ・ロペスがセスト。
6月19日 4人のカウンター・テナー・ガラ チェンチッチ、サバタにTerry Wey とVince Yi
6月22,28,29日 『王宮の花火』もちろん外で。
6月24日 『サウル』@王室礼拝堂
6月25日 『エジプトのイスラエル人』@王室礼拝堂 クリストファーズ指揮ザ・シックスティーン
6月26日 『ソロモン』@王室礼拝堂 マクリーシュ指揮ガブリエリ・コンソート、イェスティン
君がまたもや主役!
6月27日 チェチリア・バルトリのリサイタル@王立歌劇場、Sacrificium!
6月28日 アレクサンドル・タローのピアノ・リサイタル@王立歌劇場 『ラモー賛歌』
7月1日 『セルセ』 スピノジ指揮、マレーナ・エルンマン主役!アドリアーナ・クチェロヴァ、
デヴィッド・DQ・リーにヴェロニカ・カンヘミ!
7月5,6,7日 サヴァール指揮による『水上の音楽』@大運河
7月6日 アイム女史指揮ル・コンソール・ダストレーによる『水上の音楽』他@王立歌劇場、
ソニア・ヨンケヴァ出演
7月6日 マックス・エマヌエル・チェンチッチのリサイタル@鏡の回廊 『ヘンデルのヒーロー達』
7月10,11日 『メサイア』@王室礼拝堂 ザ・キングズ・コンソート
7月11日 『タメルラーノ』@王立歌劇場 ミンコフスキー指揮MLG、 クリストフ・デュモー!
ユリア・レジネーヴァ、ティム・ミード他の出演

イェスティン君主演の『オルランド』は、なかなか期待できそうだし、脇を固める女性陣も手堅い。
『アルチーナ』と『ジュリオ・チェーザレ』には、バロック・オペラに欠かせない女性歌手たちが
勢ぞろいする。
『セルセ』は、昨年のウィーン公演での面子から、キャストは少々替わったが、興味津々だ。
会場が発表されてないが、どこだろうか。コンサート形式だろうが、マレーナ様の演技にも期待。
そして、〆の『タメルラーノ』がスゴイ。デュモー選手もとうとうミンコさん好みの仲間入り?
今後もご贔屓にしてもらいたいものである。デュモーとユリアちゃんとの若手パワフル・コンビが
早々に実現するのが聴きものだ。
テーマは『ヘンデルの勝利』で、素晴らしい充実のプログラムだ。
ヘンデルのオペラやオラトリオのほか、『王宮の花火』や『水上の音楽』などの演奏会が、
宮殿内の王室礼拝堂や歌劇場、鏡の回廊および庭を会場として行われる。バロックの精華を
これ以上は望めないほど雰囲気がマッチした会場で鑑賞できるのだ。
プログラムのみならず、出演者のラインナップもすごい。
気になるものだけ挙げても以下のとおり。
6月11日 『オルランド』@王立歌劇場 カーティス指揮 主役がイェスティン・デイビスで、
ロベルタ・マメリ、クリスティーナ・ハンマーシュトロム他の出演!
6月12日 『アルチーナ』@王立歌劇場 ルセ指揮レ・タラン・リリク、カリーナ・ゴーヴァン、
アン・ハレンベリ、デルフィーヌ・ガルー他
6月13日 チェチリア・バルトリのリサイタル@鏡の回廊、題して『ヘンデルのヒロイン達』
6月14日 『ジュリオ・チェーザレ』@王立歌劇場 ダントーネ指揮アカデミア・ビザンチーナ
ソニア・プリーナが主役で、パオロ・ロペスがセスト。
6月19日 4人のカウンター・テナー・ガラ チェンチッチ、サバタにTerry Wey とVince Yi
6月22,28,29日 『王宮の花火』もちろん外で。
6月24日 『サウル』@王室礼拝堂
6月25日 『エジプトのイスラエル人』@王室礼拝堂 クリストファーズ指揮ザ・シックスティーン
6月26日 『ソロモン』@王室礼拝堂 マクリーシュ指揮ガブリエリ・コンソート、イェスティン
君がまたもや主役!
6月27日 チェチリア・バルトリのリサイタル@王立歌劇場、Sacrificium!
6月28日 アレクサンドル・タローのピアノ・リサイタル@王立歌劇場 『ラモー賛歌』
7月1日 『セルセ』 スピノジ指揮、マレーナ・エルンマン主役!アドリアーナ・クチェロヴァ、
デヴィッド・DQ・リーにヴェロニカ・カンヘミ!
7月5,6,7日 サヴァール指揮による『水上の音楽』@大運河
7月6日 アイム女史指揮ル・コンソール・ダストレーによる『水上の音楽』他@王立歌劇場、
ソニア・ヨンケヴァ出演
7月6日 マックス・エマヌエル・チェンチッチのリサイタル@鏡の回廊 『ヘンデルのヒーロー達』
7月10,11日 『メサイア』@王室礼拝堂 ザ・キングズ・コンソート
7月11日 『タメルラーノ』@王立歌劇場 ミンコフスキー指揮MLG、 クリストフ・デュモー!
ユリア・レジネーヴァ、ティム・ミード他の出演

イェスティン君主演の『オルランド』は、なかなか期待できそうだし、脇を固める女性陣も手堅い。
『アルチーナ』と『ジュリオ・チェーザレ』には、バロック・オペラに欠かせない女性歌手たちが
勢ぞろいする。
『セルセ』は、昨年のウィーン公演での面子から、キャストは少々替わったが、興味津々だ。
会場が発表されてないが、どこだろうか。コンサート形式だろうが、マレーナ様の演技にも期待。
そして、〆の『タメルラーノ』がスゴイ。デュモー選手もとうとうミンコさん好みの仲間入り?
今後もご贔屓にしてもらいたいものである。デュモーとユリアちゃんとの若手パワフル・コンビが
早々に実現するのが聴きものだ。
日曜日には、川辺でビール
デン・ハーグから帰って、日曜日には恒例のマース川沿いの散歩。

先週の日曜日には、マース川沿いの自転車道でベルギーのヴィゼとマーストリヒトを往復する
フル・マラソンが開催されていた。

対岸の山の上の聖ピーター教会とアンドレ・リューのお城。
その手前には小さなヨット・ハーバー。
気温も湿度も高いから、行く先は涼しい噴水や水辺に面したカフェに決まり。
マース川沿いには、川風が気持ちよく吹き抜けるカフェはいくつかあるが、一番は何と
言っても、ステイオーケー(旧ユースホステルだが、オランダでは十年ちょっと前から
こんな名称に変わって、お手軽価格だが、場所によってはヒップな宿泊施設になった)
の川に張り出したカフェである。

オランダのトラピスト、ラ・トラッペの白ビール!
ここのテラスに座っていると、水上のヨットのデッキやコックピットにいるのと変わらない
くらい水が近いので、涼風もさわやかなことこの上ない。大変お勧めである。

ステイオーケーの対岸には、アルド・ロッシ設計のボネファンテン美術館。
お天気がいいから、遊覧船の上部デッキも大賑わいだ。

クロアチアでのヨット・チャーターを仲介しているエリックが4月から
マース川と運河でのスルップという小型ボートのチャーターも開始した。
そのスルップが2隻、マース川を走っているのを発見。
スヘベニンゲンでは、北海でのセイリングに必須のしっかりしたオーシャン仕様のジャケットと
海でのヨット・レースにも対応できるサスペンダー式ズボンを買った。
とにかく、防水と防風が完璧で縫い目にもテーピングが施されていること、外からの水分は
シャットアウトするが蒸れないように汗は外に逃がすことと、顔半分を覆うほど首回りがびっしり
詰まっていることが肝心である。
女性用のレース対応のズボンだと、サスペンダーの位置とファスナーに工夫が凝らされていて
両脇のファスナーを下ろすと、上着やサスペンダーを外さなくてもトイレに行けるのだ。
内陸部のヨット用品店では、そこまで専門的なウエアはなかなか扱っていない。Henri Lloydの
製品だ。動悸が速まるほどのお値段だったが、一生ものだと思ってクレジット・カードで支払った。
北海ではウェアがどれほど重要であるか、身をもって体験している。波をかぶって濡れると、乾く
暇はないのだ。それが10時間も続くと体力の消耗が甚だしく、危険である。

先週も今週も日曜日に同じ場所で日向ぼっこしていた白鳥の親子。
父鳥はちょっと離れたところで睨みをきかせていて、近寄りがたい雰囲気。
あとまだ、ヨット用のブーツも要る。持っているのはMurphy & Nyeというイタリアのヨット・ウエア
のデザイン・ラインで、地中海とは異なる北海では実用的でない。可愛いデザインだが、紐通しの
穴から水が中に漏れるし、ゴムなので足が冷える。
主人もTも持っていて皆が勧めるDubarryのブーツを買おうとすると、もう一度清水の舞台から
飛び降りなければならない。。。
もう、2週間後には北海でのセイリングが迫っているから、ぐずぐずしている暇はないのだが。
湖や地中海でのセイリングなら、これほどの重装備は必要ない。


先週の日曜日には、マース川沿いの自転車道でベルギーのヴィゼとマーストリヒトを往復する
フル・マラソンが開催されていた。

対岸の山の上の聖ピーター教会とアンドレ・リューのお城。
その手前には小さなヨット・ハーバー。
気温も湿度も高いから、行く先は涼しい噴水や水辺に面したカフェに決まり。
マース川沿いには、川風が気持ちよく吹き抜けるカフェはいくつかあるが、一番は何と
言っても、ステイオーケー(旧ユースホステルだが、オランダでは十年ちょっと前から
こんな名称に変わって、お手軽価格だが、場所によってはヒップな宿泊施設になった)
の川に張り出したカフェである。

オランダのトラピスト、ラ・トラッペの白ビール!
ここのテラスに座っていると、水上のヨットのデッキやコックピットにいるのと変わらない
くらい水が近いので、涼風もさわやかなことこの上ない。大変お勧めである。

ステイオーケーの対岸には、アルド・ロッシ設計のボネファンテン美術館。
お天気がいいから、遊覧船の上部デッキも大賑わいだ。

クロアチアでのヨット・チャーターを仲介しているエリックが4月から
マース川と運河でのスルップという小型ボートのチャーターも開始した。
そのスルップが2隻、マース川を走っているのを発見。
スヘベニンゲンでは、北海でのセイリングに必須のしっかりしたオーシャン仕様のジャケットと
海でのヨット・レースにも対応できるサスペンダー式ズボンを買った。
とにかく、防水と防風が完璧で縫い目にもテーピングが施されていること、外からの水分は
シャットアウトするが蒸れないように汗は外に逃がすことと、顔半分を覆うほど首回りがびっしり
詰まっていることが肝心である。
女性用のレース対応のズボンだと、サスペンダーの位置とファスナーに工夫が凝らされていて
両脇のファスナーを下ろすと、上着やサスペンダーを外さなくてもトイレに行けるのだ。
内陸部のヨット用品店では、そこまで専門的なウエアはなかなか扱っていない。Henri Lloydの
製品だ。動悸が速まるほどのお値段だったが、一生ものだと思ってクレジット・カードで支払った。
北海ではウェアがどれほど重要であるか、身をもって体験している。波をかぶって濡れると、乾く
暇はないのだ。それが10時間も続くと体力の消耗が甚だしく、危険である。

先週も今週も日曜日に同じ場所で日向ぼっこしていた白鳥の親子。
父鳥はちょっと離れたところで睨みをきかせていて、近寄りがたい雰囲気。
あとまだ、ヨット用のブーツも要る。持っているのはMurphy & Nyeというイタリアのヨット・ウエア
のデザイン・ラインで、地中海とは異なる北海では実用的でない。可愛いデザインだが、紐通しの
穴から水が中に漏れるし、ゴムなので足が冷える。
主人もTも持っていて皆が勧めるDubarryのブーツを買おうとすると、もう一度清水の舞台から
飛び降りなければならない。。。
もう、2週間後には北海でのセイリングが迫っているから、ぐずぐずしている暇はないのだが。
湖や地中海でのセイリングなら、これほどの重装備は必要ない。

住人感覚のデン・ハーグとスヘベニンゲン
昇天祭の休日には、Rのヨットでゼーランドの東スヘルデをセイリングの予定だった。
しかし、天候が優れない。最高気温12度くらいの予報だったので、暖房設備のないRの
ヨット(クルーザー・タイプではあるが)での寝泊りはあまりに寒そうだ。
それでセイリングの代わりに、Rの住むデン・ハーグに遊びに泊りがけで行くことになった。
独身貴族である彼の住居は、日本大使館と市立美術館のほぼ中間にあり、中央駅とスヘベニ
ンゲン海岸を結ぶトラムの停留所がドアの前という素晴らしい立地だ。1896年建造のアパルト
マンの一階(庭付き)と二階を繋げて1人で住んでいるので、便利な上、スペースは有り余るほど。
中央駅横の大きな公園マリーフェルドは、インドネシアのお祭りで賑わっていた。
そこから、観光客がほとんど来ないデン・ハーグの静かな小道を散歩した。
住人による案内で町を歩くと、観光とは視点が異なるから、ガイド・ブックには載っていない別の
面を発見できて楽しい。

エッシャー美術館の裏辺りはとても静かで、まるでデルフトのよう。

小さな運河にかかる橋の上がテラスになっているカフェで昼食。

デュヴァルから出たエキストラ・ホワイト・ビール Vedett。
しかし、ほとんど濁っていず酸味もなく、ドイツのヴァイツェンと
ピルスの中間のような感じ。
町を散策した後は、自転車でスヘベニンゲンまでサイクリング。
Rの家の前の道を真っ直ぐ自転車で行くと、5分くらいで港に着く。

昔は漁港や荷揚げの港として賑わったが、現在は、ヨットのほうが優勢だ。
4月に北海でヨット・トレーニングを行った主人も、イギリスに渡る前このハーバーに係留した。

丁度、46フィートはありそうな大きなヨットが入港してきた。
(そのヨットの後ろにある建物のレストランで夕食。)

港や海岸や堤防の突端までサイクリング。
Rがヨット用に買った折りたたみ式自転車は、頑丈な作りでしっかりした乗り心地の優れもの。
重いが折りたたむとコンパクトになるので輪行にピッタリで、電車への持ち込みもタダ。

堤防の突端は港の入り口で灯台が。その向こうに霞むのは北海を行く船。

ヨット・ハーバーまで戻って、ヨットを眺めながらテラスで夕食。
夕方、一日の航海を終えヨットを入港し終えてほっとした表情の人たちが、日に焼けた顔で
桟橋を歩いているのがテラスからよく見える。
今回、わたし達はヨットではなく自転車でヨット・ハーバーまで来たのだが、ヨットから陸に
上がってうきうきと歩く人々の充実感の漂う顔を眺めるのは楽しく、彼らの満足感がこちらにも
伝わってくる。

このレストランは、デン・ハーグ市内にあるベルギー・ビール専門カフェ
Rootzの経営で、こちらにもベルギー・ビールが70種も揃っている。
Rootz at the Harbour 別名Belg van Scheveningen(スヘベニン
ゲンのベルギー人)というからには、料理も満足できる。

ブリュッセルの「小便小僧」に対抗するアントワープの「いけない子」
Deugnietという名前のビールのラベルは怪しげ。。。

3コース・メニューは、各コース数種類から選べて25ユーロとリーズナブル。
前菜は別々のを選んだ。向こうはカルパッチョ、手前はグリル野菜のサラダ。

主菜は、3人ともスヘベニンゲン風魚鍋にした。

寒くなったので、デザートはレストランの中で。クレム・ブリュレ。
ビール・ニューで確認したら、先々週ブリュッセルでは6ユーロもしたシメイは、ここでは4ユーロ
60セント。納得いく値段である。
各料理に合うビールとワインが品書きには書いてあるので、メインの魚料理にに合うビールを頼むと、
「魚料理には、ビールは合いません。」とビール専門のレストランなのに白ワインを勧められた。
グラスなら、ビールより安いくらいである。
実は、メインを食べ終えて会計を頼んだら、レシートには3コース・メニューとあった。
「デザートは注文してないのに」と文句を言うと、「2コースだけでも同じ値段です。デザートは
サービス料金なんです。それでは、コーヒーでもいかが?」と訊かれたので、「中でデザートを
食べる!」と断固たる調子で宣言し、クレム・ブリュレとレモン・タルトを持ってこさせた。「お客様は
典型的なオランダ人ですね」(つまりお金には細かい)と言われてしまった。
ベルギー人らしい給仕は1人もいなかったが、皆とてもフレンドリーで、客も給仕もお互いずけずけ
言い合えるのがオランダらしくていい。
ブリュッセルのグラン・プラス周辺だと、なんだかどこでも給仕は慇懃無礼で、そのくせ観光客と
見ると誤魔化してふんだくろうとする輩が多いような気がする。
しかし、天候が優れない。最高気温12度くらいの予報だったので、暖房設備のないRの
ヨット(クルーザー・タイプではあるが)での寝泊りはあまりに寒そうだ。
それでセイリングの代わりに、Rの住むデン・ハーグに遊びに泊りがけで行くことになった。
独身貴族である彼の住居は、日本大使館と市立美術館のほぼ中間にあり、中央駅とスヘベニ
ンゲン海岸を結ぶトラムの停留所がドアの前という素晴らしい立地だ。1896年建造のアパルト
マンの一階(庭付き)と二階を繋げて1人で住んでいるので、便利な上、スペースは有り余るほど。
中央駅横の大きな公園マリーフェルドは、インドネシアのお祭りで賑わっていた。
そこから、観光客がほとんど来ないデン・ハーグの静かな小道を散歩した。
住人による案内で町を歩くと、観光とは視点が異なるから、ガイド・ブックには載っていない別の
面を発見できて楽しい。

エッシャー美術館の裏辺りはとても静かで、まるでデルフトのよう。

小さな運河にかかる橋の上がテラスになっているカフェで昼食。

デュヴァルから出たエキストラ・ホワイト・ビール Vedett。
しかし、ほとんど濁っていず酸味もなく、ドイツのヴァイツェンと
ピルスの中間のような感じ。
町を散策した後は、自転車でスヘベニンゲンまでサイクリング。
Rの家の前の道を真っ直ぐ自転車で行くと、5分くらいで港に着く。

昔は漁港や荷揚げの港として賑わったが、現在は、ヨットのほうが優勢だ。
4月に北海でヨット・トレーニングを行った主人も、イギリスに渡る前このハーバーに係留した。

丁度、46フィートはありそうな大きなヨットが入港してきた。
(そのヨットの後ろにある建物のレストランで夕食。)

港や海岸や堤防の突端までサイクリング。
Rがヨット用に買った折りたたみ式自転車は、頑丈な作りでしっかりした乗り心地の優れもの。
重いが折りたたむとコンパクトになるので輪行にピッタリで、電車への持ち込みもタダ。

堤防の突端は港の入り口で灯台が。その向こうに霞むのは北海を行く船。

ヨット・ハーバーまで戻って、ヨットを眺めながらテラスで夕食。
夕方、一日の航海を終えヨットを入港し終えてほっとした表情の人たちが、日に焼けた顔で
桟橋を歩いているのがテラスからよく見える。
今回、わたし達はヨットではなく自転車でヨット・ハーバーまで来たのだが、ヨットから陸に
上がってうきうきと歩く人々の充実感の漂う顔を眺めるのは楽しく、彼らの満足感がこちらにも
伝わってくる。

このレストランは、デン・ハーグ市内にあるベルギー・ビール専門カフェ
Rootzの経営で、こちらにもベルギー・ビールが70種も揃っている。
Rootz at the Harbour 別名Belg van Scheveningen(スヘベニン
ゲンのベルギー人)というからには、料理も満足できる。

ブリュッセルの「小便小僧」に対抗するアントワープの「いけない子」
Deugnietという名前のビールのラベルは怪しげ。。。

3コース・メニューは、各コース数種類から選べて25ユーロとリーズナブル。
前菜は別々のを選んだ。向こうはカルパッチョ、手前はグリル野菜のサラダ。

主菜は、3人ともスヘベニンゲン風魚鍋にした。

寒くなったので、デザートはレストランの中で。クレム・ブリュレ。
ビール・ニューで確認したら、先々週ブリュッセルでは6ユーロもしたシメイは、ここでは4ユーロ
60セント。納得いく値段である。
各料理に合うビールとワインが品書きには書いてあるので、メインの魚料理にに合うビールを頼むと、
「魚料理には、ビールは合いません。」とビール専門のレストランなのに白ワインを勧められた。
グラスなら、ビールより安いくらいである。
実は、メインを食べ終えて会計を頼んだら、レシートには3コース・メニューとあった。
「デザートは注文してないのに」と文句を言うと、「2コースだけでも同じ値段です。デザートは
サービス料金なんです。それでは、コーヒーでもいかが?」と訊かれたので、「中でデザートを
食べる!」と断固たる調子で宣言し、クレム・ブリュレとレモン・タルトを持ってこさせた。「お客様は
典型的なオランダ人ですね」(つまりお金には細かい)と言われてしまった。
ベルギー人らしい給仕は1人もいなかったが、皆とてもフレンドリーで、客も給仕もお互いずけずけ
言い合えるのがオランダらしくていい。
ブリュッセルのグラン・プラス周辺だと、なんだかどこでも給仕は慇懃無礼で、そのくせ観光客と
見ると誤魔化してふんだくろうとする輩が多いような気がする。
The Mill and the Cross 『ブリューゲルの動く絵』
日本公開よりも少し遅れて、リュミエールで先週からようやくThe Mill and the Crossが
上映されている。2ヶ月ほど前、リュミエールの館長さんに直訴(?)したら、その翌々週
くらいに、駐輪場にこの映画のポスターが沢山貼られていて、おお~っと欣喜雀躍。
オランダ人画家が主人公でオランダ人俳優が主役の映画なんだから、オランダ映画では
ないが、オランダのアートハウス系映画館で上映されて当然なのだが。

監督 Lech Majewski
脚本 Michael Francis Gibson, Lech Majewski
ピーター・ブリューゲル Rutger Hauer
ニコラース・ヨンゲリンク Michael York
マリア Charlotte Rampling
若い妻 Joanna Litwin
ポーランド、スウェーデン 2011年
ロッテルダム映画祭で話題になったので、一年以上前からいつ観ることができるのかと、
待ちに待っていた。そして、その期待は裏切られなかった。

広壮な構図の絵の広い地域に散らばるモブを実際の人と動物とで映像化。
まず、ウィーンの美術史博物館にあるブリューゲルの『十字架への道』や『子供遊び』や
『農民の踊り』などの絵を、そのまま文字通り活写し、絵そっくりの背景の中、時代考証も
完璧で絵そのものの扮装で配置された夥しい数の人物を動かすという手法が画期的だ。
ここまで徹底して「動く絵」を創ったという前例はないだろう。
中世のコスチュームでパレードしたりする時代祭りなんかよりも、もっともっとディテールまで
細かい。人間なら絵そっくりのシーンのためのストップモーションも可能だが、馬なんかは
微妙に動いてしまっている点で、監督の偏執狂的な細部へのこだわりが強調されていた。

背景は、書割みたいなDGと実際のロケ地とがミックスして交錯。
こんな風に人海戦術の映画は、ロケ地も含めて実際にオランダやベルギーでは作ることは今や
不可能なのだろう。監督も登場人物も(主要有名俳優を除いて)ポーランド人になってしまった
のはいたし方ない。それどころか、監督のこの情熱には恐れ入り、映画化への感謝の気持ちで
いっぱいである。
しかし、ブリューゲルやそのパトロンで資産家のヨンゲリンクや老いたマリアなどの主要俳優が
英語の台詞をしゃべるのに対して、その他大勢はポーランド語をしゃべっていたのだが、それには
少々違和感を感じ、やはり残念であった。いうなれば、関が原の合戦を壮大な時代絵巻の映像
化したのに、ハリウッド資本の映画になったため、主要人物は中国人俳優で英語をしゃべり、
その他大勢は中国語をしゃべり、ロケ地はモンゴルの草原みたいな感じに近い。

原題にもあるし重要な風車は、現実離れした迫力の存在感。
奇岩の上に屹立する風車は、そこへいたる長い階段の内部構造も、まるでバベルの塔を
裏返しにしたようなデザインで、人間の意志や想像力とはかけ離れたような不思議な建物だ。
まるで天の高みから地上の出来事を眺め、風も自由の操れるかのような風車守の親方の存在も
不思議である。

神の寓意のように高みから地上を見守る風車守の親方
その風車で挽かれる粉から作られたパンも、人びとにとっては生きるための有り難い糧であり、
尊敬の対象になる。生の基盤である。
若者や子供達は、踊りや遊びの中で自然と共に生を謳歌している。
そして、それと対象をなす突発的で残酷かつ日常的な死。
死は、たいてい赤マントのスペイン(傭)兵によって、突然有無を言わさず宣告され執行される。
オランダ・フランドルが被った横暴なスペインの圧制が、時代背景に濃密に漂っているのだ。
ブリューゲルのパトロンだったアントワープの金満家ヨンゲリンクの存在が何とも不思議で、しかも
意味ありげである。単なる善人には見えないのだ。スペインによる異端尋問や圧制に対する不満
を口にするのだが、実は裏でスペイン側に通じて自分ひとりで甘い汁を吸ってるんじゃないかと
疑ってしまうようなうさんくささを感じさせる顔つきのマイケル・ヨークなのであった。
ブリューゲルは、それらの出来事を克明に絵に記録する。天から命じられた使命のごとく。
ルトガー・ハウアー演じるブリューゲルは、ルト様の実際の年齢や普段TVで見る顔よりは若く
見えるが、ブリューゲルは40台で亡くなったのだから、心労のためかかなり老けている。
自分の絵のプランをヨンゲリンクに見せながら、図像の解説をしてしまうところが現代的である。
ブリューゲル自身によるブリューゲル作品の絵解きというわけだ。
『ブリューゲルの動く絵』という邦題は、たしかにそのとおりであるが、ちょっと含みが足りない。
なんだか、教育映画みたいな響きになってしまう。しかし、ブリューゲルの絵愛好者にとっては、
とても満足のいく眼福をもたらす映画なのだった。
上映されている。2ヶ月ほど前、リュミエールの館長さんに直訴(?)したら、その翌々週
くらいに、駐輪場にこの映画のポスターが沢山貼られていて、おお~っと欣喜雀躍。
オランダ人画家が主人公でオランダ人俳優が主役の映画なんだから、オランダ映画では
ないが、オランダのアートハウス系映画館で上映されて当然なのだが。

監督 Lech Majewski
脚本 Michael Francis Gibson, Lech Majewski
ピーター・ブリューゲル Rutger Hauer
ニコラース・ヨンゲリンク Michael York
マリア Charlotte Rampling
若い妻 Joanna Litwin
ポーランド、スウェーデン 2011年
ロッテルダム映画祭で話題になったので、一年以上前からいつ観ることができるのかと、
待ちに待っていた。そして、その期待は裏切られなかった。

広壮な構図の絵の広い地域に散らばるモブを実際の人と動物とで映像化。
まず、ウィーンの美術史博物館にあるブリューゲルの『十字架への道』や『子供遊び』や
『農民の踊り』などの絵を、そのまま文字通り活写し、絵そっくりの背景の中、時代考証も
完璧で絵そのものの扮装で配置された夥しい数の人物を動かすという手法が画期的だ。
ここまで徹底して「動く絵」を創ったという前例はないだろう。
中世のコスチュームでパレードしたりする時代祭りなんかよりも、もっともっとディテールまで
細かい。人間なら絵そっくりのシーンのためのストップモーションも可能だが、馬なんかは
微妙に動いてしまっている点で、監督の偏執狂的な細部へのこだわりが強調されていた。

背景は、書割みたいなDGと実際のロケ地とがミックスして交錯。
こんな風に人海戦術の映画は、ロケ地も含めて実際にオランダやベルギーでは作ることは今や
不可能なのだろう。監督も登場人物も(主要有名俳優を除いて)ポーランド人になってしまった
のはいたし方ない。それどころか、監督のこの情熱には恐れ入り、映画化への感謝の気持ちで
いっぱいである。
しかし、ブリューゲルやそのパトロンで資産家のヨンゲリンクや老いたマリアなどの主要俳優が
英語の台詞をしゃべるのに対して、その他大勢はポーランド語をしゃべっていたのだが、それには
少々違和感を感じ、やはり残念であった。いうなれば、関が原の合戦を壮大な時代絵巻の映像
化したのに、ハリウッド資本の映画になったため、主要人物は中国人俳優で英語をしゃべり、
その他大勢は中国語をしゃべり、ロケ地はモンゴルの草原みたいな感じに近い。

原題にもあるし重要な風車は、現実離れした迫力の存在感。
奇岩の上に屹立する風車は、そこへいたる長い階段の内部構造も、まるでバベルの塔を
裏返しにしたようなデザインで、人間の意志や想像力とはかけ離れたような不思議な建物だ。
まるで天の高みから地上の出来事を眺め、風も自由の操れるかのような風車守の親方の存在も
不思議である。

神の寓意のように高みから地上を見守る風車守の親方
その風車で挽かれる粉から作られたパンも、人びとにとっては生きるための有り難い糧であり、
尊敬の対象になる。生の基盤である。
若者や子供達は、踊りや遊びの中で自然と共に生を謳歌している。
そして、それと対象をなす突発的で残酷かつ日常的な死。
死は、たいてい赤マントのスペイン(傭)兵によって、突然有無を言わさず宣告され執行される。
オランダ・フランドルが被った横暴なスペインの圧制が、時代背景に濃密に漂っているのだ。
ブリューゲルのパトロンだったアントワープの金満家ヨンゲリンクの存在が何とも不思議で、しかも
意味ありげである。単なる善人には見えないのだ。スペインによる異端尋問や圧制に対する不満
を口にするのだが、実は裏でスペイン側に通じて自分ひとりで甘い汁を吸ってるんじゃないかと
疑ってしまうようなうさんくささを感じさせる顔つきのマイケル・ヨークなのであった。
ブリューゲルは、それらの出来事を克明に絵に記録する。天から命じられた使命のごとく。
ルトガー・ハウアー演じるブリューゲルは、ルト様の実際の年齢や普段TVで見る顔よりは若く
見えるが、ブリューゲルは40台で亡くなったのだから、心労のためかかなり老けている。
自分の絵のプランをヨンゲリンクに見せながら、図像の解説をしてしまうところが現代的である。
ブリューゲル自身によるブリューゲル作品の絵解きというわけだ。
『ブリューゲルの動く絵』という邦題は、たしかにそのとおりであるが、ちょっと含みが足りない。
なんだか、教育映画みたいな響きになってしまう。しかし、ブリューゲルの絵愛好者にとっては、
とても満足のいく眼福をもたらす映画なのだった。
フロリアード2012のアート印象点描
帽子の師匠Pとともに、彼女の住む村の婦人会が主宰するバスツアーに参加して
十年に一度開催される園芸博覧会フロリアードに行ってきた。
開催地はオランダ南東部のフェンローで、マーストリヒトからなら1時間15分くらいだ。

トルコの原種に近いような形と色の美しいチューリップ。
4月に行かれた方の感想で、「オランダ3大がっかりのひとつ」というのを聞いていたので、
あまり期待しないで出かけた。
花の祭典というキャッチフレーズがもし使われているとしたら、それは全く妥当でない。
溢れんばかりに咲き誇る花や植物を見たかったら、キューケンホフ公園に行くべきだ。

グリーンの芝生の上に、開かれた絵本の形で様々な
オランダ風景のイメージが描かれているオブジェ群。
今年のフロリアードは、グリーン・エンジン、環境、教育・革新、リラックス&ヒールという
テーマに分けられた広大な敷地(森や湖もある)に、各国の様々なパビリオンが点在し
いわば期間限定のテーマ・パークの様相を呈している。

各国のパビリオンでは観光案内やお土産でアピール。
スリ・ランカ館では、トパーズの原石を研磨していたり、
(半)貴石の裸石やアクセサリー類に目が吸い寄せられた。
園内にはショーが行われる野外劇場やロープウェイ、各エリアごとにレストランやトイレ、そして
土産物販売に特化したようなパビリオンも多く、全体的なイメージは何とかランド的である。
いわゆるコンヴェンショナルな花博を想像して出かけていったら、がっかりするかもしれない。
アート的観点から見たら面白いものもあるのだ。

昆虫の格好で園内を歩く大道芸人(?)
園内で一番気に入ったのは、敷地の外れに近い森の中にひっそりと隠れていた展示だ。
その名も、ウィローマンの森。ここはぜひとも探し出して見てもらいたい。

しなやかな柳の枝を組んで作られた家や部屋や檻や巣。

大きな建物は中にも入れる。

それぞれが、寝室やトイレになっている。

手前はエコ・ガーデン。鳥の糞が吊るした蘭の肥料に。

こちらはキッチン。

古着で造ったハーブ園と野菜畑。
コンセプトと造形が周りの環境に絶妙にマッチしていいて、フロリアードの展示の中で
白眉である。

ウィローマンの森はランド・アート・アーティスト、ウィル・ベッカースの作品。
十年に一度開催される園芸博覧会フロリアードに行ってきた。
開催地はオランダ南東部のフェンローで、マーストリヒトからなら1時間15分くらいだ。

トルコの原種に近いような形と色の美しいチューリップ。
4月に行かれた方の感想で、「オランダ3大がっかりのひとつ」というのを聞いていたので、
あまり期待しないで出かけた。
花の祭典というキャッチフレーズがもし使われているとしたら、それは全く妥当でない。
溢れんばかりに咲き誇る花や植物を見たかったら、キューケンホフ公園に行くべきだ。

グリーンの芝生の上に、開かれた絵本の形で様々な
オランダ風景のイメージが描かれているオブジェ群。
今年のフロリアードは、グリーン・エンジン、環境、教育・革新、リラックス&ヒールという
テーマに分けられた広大な敷地(森や湖もある)に、各国の様々なパビリオンが点在し
いわば期間限定のテーマ・パークの様相を呈している。

各国のパビリオンでは観光案内やお土産でアピール。
スリ・ランカ館では、トパーズの原石を研磨していたり、
(半)貴石の裸石やアクセサリー類に目が吸い寄せられた。
園内にはショーが行われる野外劇場やロープウェイ、各エリアごとにレストランやトイレ、そして
土産物販売に特化したようなパビリオンも多く、全体的なイメージは何とかランド的である。
いわゆるコンヴェンショナルな花博を想像して出かけていったら、がっかりするかもしれない。
アート的観点から見たら面白いものもあるのだ。

昆虫の格好で園内を歩く大道芸人(?)
園内で一番気に入ったのは、敷地の外れに近い森の中にひっそりと隠れていた展示だ。
その名も、ウィローマンの森。ここはぜひとも探し出して見てもらいたい。

しなやかな柳の枝を組んで作られた家や部屋や檻や巣。

大きな建物は中にも入れる。

それぞれが、寝室やトイレになっている。

手前はエコ・ガーデン。鳥の糞が吊るした蘭の肥料に。

こちらはキッチン。

古着で造ったハーブ園と野菜畑。
コンセプトと造形が周りの環境に絶妙にマッチしていいて、フロリアードの展示の中で
白眉である。

ウィローマンの森はランド・アート・アーティスト、ウィル・ベッカースの作品。
Wuthering Heights 『嵐が丘』2011年版は今年のベスト3入り確定
監督 Andrea Arnold脚本 Andrea Arnold, Olivia Hetreed,
based on the novel by Emily Brontë
キャシー(大人) Kaya Scodelario
ヒースクリフ(大人) James Howson
イザベル Nichola Burley
エドガー Oliver Milburn
キャシー(少女)Shannon Beer
ヒースクリフ(少年) Solomon Glave
Camera Robbie Ryan
Editor Nicolas Chaudeurge
Production design Helen Scott
Sound Design Nicholas Becker
Muziek Mumford & Sons
2011年 イギリス
アンドレア・アーノルド監督による最新映画版『嵐が丘』は、クリシェを排したストレートな展開と
まことに斬新な映像とで、今までの映画およびTV版とは一味も二味も異なり、この古典作品
の何度目になるんだろうと思う映画化だが、この作品では存在価値が大いに光っている。

自然の中で育った野生の少女キャシー
ポスターにある美しい大人の女になって洗練されたキャシーよりも、少女時代の丸ぽちゃで
飾り気などまったくない自然児そのもののキャシーのイメージが前面に押し出されている前半が
特に印象的だ。
ヨークシャーの荒野の茫漠たる風景や、風の谷間に立つ嵐が丘の過酷で寂しい佇まいは
叙情的という言葉の範疇には入りにくい。鳥の羽や動物の死骸や麦わらや干草、ぬかるみの
泥道が、子供達のおもちゃであり宝物であり遊び場である。
アーノルド監督は、それらの要素を驚くほど自然に見せつつ巧みに映像化して、見る者の心に
失われた子供時代への郷愁を誘うのだ。

ヒースクリフとキャシー
まるで是枝監督作品に登場する子役達のように、演技以前の自然な表情と振る舞いで大自然の
中を駆け抜ける少年少女のヒースクリフとキャシーの関係は、姉と弟のようなおおらかなものだ。
だが、思春期のエロスの萌芽は、21世紀の映画化らしく、大自然のなかの営みの一部のような
形で表現されている。
そして、二人は分かちがたいソウル・メイトであることが納得でき、後半に繋がるようになっている。

今回の映画化で話題になったのは、ヒースクリフが黒人であることと、少年時代の彼を演じる
のが無名の素人ということだった。突飛ではあるが説得力もある。
また、キャシーの兄ヒンズリーなど、現代のスキンヘッドのフーリガン風である。
そのせいもあるし、あまりに原始土着的な嵐が丘の生活描写が生々しく、時代を超越している
ので、前半は特にコスチュームものという感じがしない。太古から永劫変わらぬような
大地に根ざした生活の中では時代判別が難しくなっているのだが、その超時代・普遍的
感覚が、とても新しい。
いわゆるコスチュームもの映画で繰り返し使われる、使い古した手法から脱皮しているのだ。

大人になって嵐が丘に戻ってきたヒースクリフ
後半は、大人になったキャシーとヒースクリフにエドガーとイザベル兄妹が絡む。
情熱と復讐がキーワードになっているが、その発散および表現があまりに純粋というか直載なため、
何か隠された秘密を匂わせるようなゴシック的な要素は少ない。ロマンチックな要素となるとほとんど
皆無である。その辺りの感覚もとても新しく、現在また映画化した意味がそこにも見出せる。

冷酷なキャシー
キャシーが「自分より自分らしい」と思うヒースクリフだが、兄や裕福なエドガーから邪険に
扱われたため、自分が貶められたかのように感じただろう。それが、愛情と裏腹の嫌悪感に
繋がってサディスティックに振る舞い、果てには狂気に陥ってしまう。
ヒースクリフは、愛するキャシーから裏切られたゆえの憎しみからの復讐心に燃える。
自分に似た人間に対する愛情と裏表に存在する嫌悪感・憎悪のエネルギーの凄まじさ。
全体の大きな部分を占める大自然の描写と、主人公二人の心の複雑な確執とがフラッシュ・バック
やフラッシュ・フォワードで交差するので、普通の『嵐が丘』もしくは昔ながらのコスチュームものを
期待して見る人には、ストーリーも映画の革新性もなかなかわかりにくいようだった。
全く正反対のアプローチだが、時代を映し出す鏡として思い出したのは、1999年の公開時は
電気ショックのようなインパクトのあったリュック・ベッソン監督の『ジャンヌ・ダルク』を思い出した。
叫んだり流血シーンの多いヒステリックなあの作品も、作られた時代の申し子だったのだ。
この『嵐が丘』は、今年の映画ベスト・スリーに入ること間違いなしだ。
トラピスト・ビールは究極の修道院ビール
ベルギー・ビールというカテゴリが設置してあるのに、なかなか記事が増えない。
家ではビールは飲まないが、カフェなどでは週に一度くらいはベルギー・ビールを
飲む機会があるにも関わらず。いつもカメラを持っているわけではないからだ。
ブログ友のaliceさんとベルギーのリエージュでランデブーしたのは、その晩ケルンに
『ポッペアの戴冠』を観に行った日なので、かれこれ1週間半も前になる。
ヨーロッパ遠征の際には、各地のロマネスクの教会を巡礼のように訪ねているalice
さんが、ベルギーの国宝である12世紀の洗礼盤を観るためにリエージュまで足を
伸ばされることを知って、見学をご一緒させていただいたのだ。家からは車で25分の
距離である。

ロマネスクの稚拙さがなくて、精緻な職人技が光る真鍮の洗礼盤。

牛フェチにはたまらない10頭の様々なポーズの牛達。元々は12頭だった。
跪いて洗礼を受けている二人の人物の背中の表現にも、まるでルネッサンスに
近いような艶かしさが感じられる。

教会自体は、後に新しく修復されすぎて味気ない聖バーテルミー教会。
見学の後は、市内で昼食。チョコレート屋さんの女の子推薦のリエージュ郷土料理の
店の向かいにイタリアンがあり、その日のお勧め料理が美味しそうだったのでこちらに。
干タラのポレンタというのが珍しいので気になったのだ。トリッパ(臓物の煮込み)も。

タラのポレンタ(左)とサービスで出てきたパプリカの煮物。
タラはちょっとしょっぱすぎたが香ばしいし、ポレンタはいかにも田舎料理風。

トリッパは、アンモニア臭も癖もなくて美味しかった。
後ろは、オルヴァルのトラピスト・ビール。
ベルギーだからワインじゃなくてビールにしましょ、というわけでビールのメニューを見ると、
かなりレアなオルヴァルのトラピストがあったので選んだ。
複雑で馥郁たる味わいの修道院ビールの王者である。
さて本日は、ブリュッセルに『オルランド』のマチネを観に行ってきた。
バロック・オペラで長いから、開演前にお昼を軽く食べたい。そうしないと、夜9時まで
食べそびれてしまうのだ。究極の味を探し求めている小エビのクロケットを食したい。
選んだのは、この店↓

ブラッスリ・ラ・ル・ドール

グラン・プラスのこの角を入った通りにある。
その名も、帽子職人通り!

小エビのクロケットは、隠し味のチーズと小エビの味がしっかりして美味しい。
付け合わせが揚げパセリでなく、トマト、バルサミコ・ソース、オランデーズ・
ソースというのが珍しい。味に変化が出る。レモンはお約束。
かなり観光客慣れした店で、入るとすぐに英語のメニューを持ってきた。おのぼりさんと
しては店の期待通り英語で「どんなビールがありますか」と訊くと、「白?赤?」と
問われたので、「ビールなんですけど」と言うと「だから、普通のビール?それとも
ホワイト?」「それでは、ダーク・ビールを」という応対になって、ビールのメニューを
見せてもらえなかった。
持ってきたのは、シメイのトラピスト。ダークなのでアルコール度数9%である。やれやれ、
これからオペラ鑑賞するというのに、眠くなったら困る。

バーの上の壁に描かれた画
観光客と見て、大方一番高いビールを持ってきたのだろう。一本6ユーロもした。
普通のビールなら大体2~3ユーロ。スペシャル・ビールや修道院ビールでも4ユーロくらいが
相場である。英語なんて使うんじゃなかった。食べ物のお味も店の雰囲気もよかったので、また
来たい。次回は、しっかりオランダ語でビール・メニューを持ってくるようにと言うつもりである。
ビールの瓶には、このビールの売上の大部分は慈善事業に使われます、と書いてあったので、
寄付金代わりだと思うことにしよう。

窓の向こうが厨房。インテリアはなかなかいい。
家ではビールは飲まないが、カフェなどでは週に一度くらいはベルギー・ビールを
飲む機会があるにも関わらず。いつもカメラを持っているわけではないからだ。
ブログ友のaliceさんとベルギーのリエージュでランデブーしたのは、その晩ケルンに
『ポッペアの戴冠』を観に行った日なので、かれこれ1週間半も前になる。
ヨーロッパ遠征の際には、各地のロマネスクの教会を巡礼のように訪ねているalice
さんが、ベルギーの国宝である12世紀の洗礼盤を観るためにリエージュまで足を
伸ばされることを知って、見学をご一緒させていただいたのだ。家からは車で25分の
距離である。

ロマネスクの稚拙さがなくて、精緻な職人技が光る真鍮の洗礼盤。

牛フェチにはたまらない10頭の様々なポーズの牛達。元々は12頭だった。
跪いて洗礼を受けている二人の人物の背中の表現にも、まるでルネッサンスに
近いような艶かしさが感じられる。

教会自体は、後に新しく修復されすぎて味気ない聖バーテルミー教会。
見学の後は、市内で昼食。チョコレート屋さんの女の子推薦のリエージュ郷土料理の
店の向かいにイタリアンがあり、その日のお勧め料理が美味しそうだったのでこちらに。
干タラのポレンタというのが珍しいので気になったのだ。トリッパ(臓物の煮込み)も。

タラのポレンタ(左)とサービスで出てきたパプリカの煮物。
タラはちょっとしょっぱすぎたが香ばしいし、ポレンタはいかにも田舎料理風。

トリッパは、アンモニア臭も癖もなくて美味しかった。
後ろは、オルヴァルのトラピスト・ビール。
ベルギーだからワインじゃなくてビールにしましょ、というわけでビールのメニューを見ると、
かなりレアなオルヴァルのトラピストがあったので選んだ。
複雑で馥郁たる味わいの修道院ビールの王者である。
さて本日は、ブリュッセルに『オルランド』のマチネを観に行ってきた。
バロック・オペラで長いから、開演前にお昼を軽く食べたい。そうしないと、夜9時まで
食べそびれてしまうのだ。究極の味を探し求めている小エビのクロケットを食したい。
選んだのは、この店↓

ブラッスリ・ラ・ル・ドール

グラン・プラスのこの角を入った通りにある。
その名も、帽子職人通り!

小エビのクロケットは、隠し味のチーズと小エビの味がしっかりして美味しい。
付け合わせが揚げパセリでなく、トマト、バルサミコ・ソース、オランデーズ・
ソースというのが珍しい。味に変化が出る。レモンはお約束。
かなり観光客慣れした店で、入るとすぐに英語のメニューを持ってきた。おのぼりさんと
しては店の期待通り英語で「どんなビールがありますか」と訊くと、「白?赤?」と
問われたので、「ビールなんですけど」と言うと「だから、普通のビール?それとも
ホワイト?」「それでは、ダーク・ビールを」という応対になって、ビールのメニューを
見せてもらえなかった。
持ってきたのは、シメイのトラピスト。ダークなのでアルコール度数9%である。やれやれ、
これからオペラ鑑賞するというのに、眠くなったら困る。

バーの上の壁に描かれた画
観光客と見て、大方一番高いビールを持ってきたのだろう。一本6ユーロもした。
普通のビールなら大体2~3ユーロ。スペシャル・ビールや修道院ビールでも4ユーロくらいが
相場である。英語なんて使うんじゃなかった。食べ物のお味も店の雰囲気もよかったので、また
来たい。次回は、しっかりオランダ語でビール・メニューを持ってくるようにと言うつもりである。
ビールの瓶には、このビールの売上の大部分は慈善事業に使われます、と書いてあったので、
寄付金代わりだと思うことにしよう。

窓の向こうが厨房。インテリアはなかなかいい。
Les Adieux à la Reine
監督: Benoît Jacquot Léa Seydoux (Sidonie Laborde)
Diane Kruger (Marie Antoinette)
Virginie Ledoyen (Gabrielle de Polignac)
Xavier Beauvois (Louis XVI)
2011年 フランス・スペイン
マリー・アントワネットが登場するコスチューム映画ならば、元祖『ベル・ばら』(池田理代子
作の漫画)ファンとしては見逃すわけにはいかない。
ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』も結構好きで楽しめた。
また、フランスのコスチューム映画といえば、わたしのハンドル名の元になっている『王妃マ
ルゴー』が一番の傑作であるが、ヴェルサイユが舞台の『王は踊る』や『めぐり遭う朝』にも
わくわくした。
ヴェルサイユ宮殿がロケに使われているのは、オーセンティックな舞台背景のためのお約束だ。
この映画では、主人公が平民のシドニー(出自は不明でミステリアス)という名の王妃の読書
係兼小間使いという、ちょっとベル・ばらのロザリーを連想させる人物設定なので、華やかな宮殿
生活の表と裏の両方が見られるのが楽しい。主人公は、両方の世界を自由に行ったり来たり
できるという、作者および映画監督にとっても観客にとってもまことに都合のよい立場にいるのだ。
小説が原作になっていて、主人公である若い女中や小間使いという、言わばインサイダーからの
視点によって有名人を描くという手法は、『真珠の耳飾の少女』と似ている。
まず、冒頭シーンからしてリアル。1789年7月14日の早朝、簡素でまるで修道院のように
ストイックに必要最低限の家具しかない召使い部屋で目覚めたシドニーが、蚊に刺された腕を
ぼりぼりと掻いたり、別の女中部屋では大きなネズミの死骸がみつかったり。
そして当然ながら、まだ誰も、その日の重要さを認識していないのだった。(フランス革命の
起きた年月日および場所はまことに覚えやすく、現代人にはおなじみであるが)
シドニーは、王妃の元に出向くためにバタバタと宮殿敷地内を走り、水溜りでコケてドレスを
汚したりする。
ちょっと田舎臭いふくよかな顔立ちのシドニー役の女優は、なかなかに個性的でチャーミング。
(昨年公開されたウッディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』に出演して、端役だが可愛いい
古本屋の女の子を演じていた子だと、あとでわかった。)

中央がシドニー(レア・セドゥー)
シドニーの視点から見た、フランス革命の最初の4日間を描いた映画である。
宮殿図書館の老司書(?)が情報通なので、パリで起きた暴動の様子やそれに対処する国政
情勢が、断片的にシドニーの耳に入ってくる仕掛けだ。
情緒不安定気味のマリー・アントワネットと、彼女を慰めようと躍起になる女官たちや、暴動に
乗じて王妃の私物を掠め取ろうとする別の女官などが登場して、のんびりとした宮殿の生活にも
次第に事態の深刻さを反映するような影が生じる。
ヒステリックだが美しき王妃を演じるのは、『トロイ』でヘレン役の元祖美女ダイアン・クルーガー。
なかなか、わたしのイメージするマリー・アントワネット像に近い。

まだまだ、のんびりと構えている国王と王妃。
王妃には最後まで愛情と忠誠の限りを尽くすのがシドニーだ。
それに対して、悪名高きポリニャック公爵夫人は、王妃の寵愛をいいことに自分勝手で横暴に
振る舞う鉄面皮ぶり。ポリニャックを演じるヴィルジニー・ルドワイヤンの存在感が光る。
その3人の女性による三つ巴の愛情関係がこの映画の核になっている。
王妃がポリニャックに対して、少女っぽいエロスの同性愛感情を顕にするのに対して、教養ある
シドニーの王妃に対する愛情は彼女の心の内だけに秘められていて、王妃にすらわかってもらえ
ないくらい奥ゆかしく、その発露方法にはほとんど日本的な美を感じさせるほど。
まるで、風姿花伝の「秘すれば花なり」の精神そのもの。
そのシドニーの内面の葛藤をレア・セドゥーは絶妙に表情で表現している。
王妃やポリニャック夫人の最期は誰もが知っているのだが、シドニーの存在は最後までミステリ
アスなままで、映画も唐突に終わる。不思議な後味と印象が残る。
(また、『ベル・ばら』では、小間使いのロザリーの母は、実はポリニャック夫人という設定)

エリザベト・ルイーズ・ヴィジェ・ルブランが描いたポリニャック公爵夫人(1782年)
女性の宮廷画家によるスタイリッシュでクールな人物像。
帽子や衣装やポーズの雰囲気が下のルーベンスの絵を思い起こさせる。

ルーベンスが描いたシュザンヌ・フールマン(1622年頃)
『ポッペアの戴冠』@ケルン、後半のみ鑑賞
何かと話題のケルンの歌劇場だが、昨年大好評だったため今年再演されている『ポッペアの
戴冠』の会場は、移民の多そうな町外れの寂れた工場地帯にある倉庫を改装したと思しい
ディスコ・クラブである。

ロビーに置かれたゴンドラのような大道具。左手のカーテンの向こうが舞台。
ケルンの東に位置する会場へ行く手前の高速道路で、大変な渋滞に巻き込まれてしまった。
目的地まであと7キロという地点から延々4キロが1時間半近くかかった。ゆっくり歩く速度とほぼ
同じだが、高速道路だから歩くわけには行かない。そして、このくらいのろのろ運転だと、クラッチと
アクセルとブレーキのペダルをずっと交互に踏むことになり、車に乗りながら4キロ歩いたような具合
である。足がつりそうだ。
夜7時開演というのは、渋滞に巻き込まれやすい時間帯なので嫌な予感がした。通常なら1時間
20分で着くはずのところ、余裕をもって5時15分前には出発したのに。。。
多分休憩時間だろうと思って8時15分頃に会場に入ると、「あと15分ほどで一幕目が終わるので
ロビーでお待ちください」と言われた。同様に待つ人が10人ほどいた。皆、渋滞の被害者だと思う。
ドアから外に漏れ聴こえてくる音が慰めてくれた。

ロビー奥には、チェンバロと器楽奏者用の椅子が。黒いドアは客席に通じる。
一幕目が終わる頃になると、ゴンドラの回りに通行止めの線が張られ、アッシャー達がドアの前に
立つ。すると、舞台に通じるカーテンを通り抜けて、オットーネ役のデヴィッド・D・Q・リーが
飛び出してきた。
あれあれ、と思っているうちに、拍手が鳴りドアが開け放たれた。観客がロビーに出てくる。
器楽奏者もロビーの席に着く。休憩中に音楽を流すのか?
ゴンドラの回りに観客が集まるが、その反対側にあるカウンターで飲み物を頼む列も出来て、ロビー
は混雑している。トイレに行く人も多い。
休憩が始まる前にトイレに行こうと思っていたが、機会を逃したのでトイレに行って、ロビーに戻って
来ると、なんと、ゴンドラの回りで、フランコ・ファジョーリのネローネが血にまみれた手をすり合わせ
ながら歌っているではないか。ネローネとルカーノが「アンディアーモ」と歌うデュエットにはなんとか
間に合った。

ロビーのゴンドラの周りで歌うファジョーリ。photo by Paul Leclaire
大失敗!混雑していた地下のトイレには音楽は全く聴こえてこなかった。アッシャーたちも、もっと
はっきりと、休憩になる前にロビーで幕の続きがあることを伝えるべきである。
昨年の公演でははBMWのオフィスビルが使われ、社員食堂や玄関ホールや廊下、オフィスなどを
観客も移動しながらの上演という演出だったのだが、今年も一部そのようになるとは思わなかった。
通常3幕のオペラだが、今回は2幕にして上演しているので、セネカの死までが前半だったのだ。
かなり重要な部分を沢山見逃したことになる。
ヨーロッパの歌劇場中、自治体からの補助金が一番多いというケルン歌劇場の場合、チケット代金が
異常に安い(最高カテゴリーでも60ユーロちょっと)ので、さほど悔しい気分にはならず諦めもつく。
L'incoronazione di Poppea (Claudio Monteverdi)
2012年4月25日@Palladium
Musikalische Leitung Konrad Junghänel
Inszenierung Dietrich W. Hilsdorf
Bühne Dieter Richter
Kostüme Renate Schmitzer
Licht Nicol Hungsberg
Video Jasper Lenz & Eric Poß
Poppea Maria Bengtsson
Nerone Franco Fagioli
Ottone David DQ Lee
Ottavia Katrin Wundsam
Seneca Wolf Matthias Friedrich
Drusilla Claudia Rohrbach
Nutrice Andrea Andonian
Arnalta 1. Schüler Senecas Daniel Lager Littore
Tribuno 3. Schüler Senecas Sévag Tachdjian
Fortuna 2. Amorino Ji-Hyun An
Virtù Damigella 3. Amorino Adriana Bastidas Gamboa
Amore Valletto 1. Amorino Maike Raschke
Liberto 2. Soldato Console John Heuzenroeder
Lucano 1. Soldato 2. Schüler Senecas Gustavo Quaresma
4. Amorino Martina Sigl
Orchester Gürzenich-Orchester Köln und Gäste
後半を鑑賞するため席に着く前に、会場や舞台を見てみよう。
舞台は、細長い体育館のようなディスコ・クラブの中央に置かれ、その左右にオケピット。
観客席は中央の舞台を挟んで対称的に設置されている。つまり、円形の舞台は正面からのみ見る
ような作りではなく、前後両方の観客席から対等に見られる。
歌手達は舞台の真ん中に置かれたテーブルの上や回りで、両面の観客に向かって演技しつつ
歌うのだった。

舞台中央のテーブルのみが大道具。photo by Paul Leclaire
舞台とオケ・ピットの回りには金網のように見える幕が張られ、後半はピンクの色の照明が下から
当てられていた。(写真で見ると前半は水色だったようだ)
中央舞台はプラクシ・ガラス張りで、その下から蛍光灯の無機質な光が当たり、モダンなデザインの
ドイツのオフィスの雰囲気だ。左右の舞台裏からラン・ウェイみたいなものが伸びていて、それを
通って歌手は舞台に登場する。
指揮者は、わたしの座った側からは上手に当たる位置に立ち、上手側のオケは一般管弦奏者および
リュートとチェンバロとバロック・ギター。下手側には、チェンバロ、オルガン、ハープ、ヴィオラ・ダ・
ガンバ、テオルボのコンティヌオという布陣である。
右側一列目席のわたしの目の前が管楽器で、演奏の難しそうな古楽器コロネットなども手堅い演奏
で、なかなかのものだった。去年の『リナルド』でも、金管以外の古楽器演奏が予想以上に上手い
のでびっくりしたものだった。
通奏低音はオケの人数割合からすると多い。左右に分かれた配置を生かして、対話形式のレチタ
ティーボの伴奏はそれぞれ別のピットからの通奏低音楽器が担当するので、人物の個性にくっきりと
コントラストが付く。レチタティーボの伴奏が左右ではっきり分離しているので、夫々の人物の台詞に
同化するという効果も大きかった。

photo by Paul Leclaire
さて、後半のみの鑑賞なので全体的なストーリーや演出にはコメントできない。個々の歌手の歌唱の
印象のみに留める。
ケルンまで来たのは、話題のCT、フランコ・ファジョーリの生の歌声を聴くことが最大の目的だ。
ファリネッリの再来と言われるテクニックとパワフルかつ男性的な声のCTというイメージの彼だが、
実際に聴く声は、芯がはっきりと通って強くかつ澄んで美しい高音に感嘆した。
モンテヴェルディのネローネのパートは、男性にしてはかなりな高音域で作曲されている。ソプラノ・
パートであるポッペアとほぼ同じような音域が要求される歌もある。だから、通常メゾ・ソプラノによって
歌われてきたが、このところ、高音が無理なく美しく出せる新世代CTによる上演が多くなっている。
以前なら、フォン・オッター、マレーナ様、サラ様というのがネローネの定番だったが、近年は、
PJ、チェンチッチ、そしてファジョーリによる新境地ネローネが現れる時代になっている。
生の『ポッペア』鑑賞は、マレーナ様ネローネに次いでこれが2度目である。
ファジョーリの生の声の印象は期待以上で、マレーナ様に負けるどころか、特に高音部での歌唱の
安定度と力強い表現の素晴らしさは特筆に価する。低音のドスの利き具合ではマレーナ様の方が
男性的だが、ファジョーリの方は高音に女性には出せない男性的な強さがあり唸らされた。
演技では、鞭を叩いて鳴らしたり、爪や指を詰めたりするサディスティックなネローネになりきっていて、
小柄な彼なのに舞台では堂々と大きく見える。(かなりのハイヒール履いてた)
眼力というか、目による表現も上手く、権力と愛欲に執着するネローネなのに一回り器の大きいチェー
ザレに見えたりすることもあったほどだ。(衣装と髪型のせいもある)
予習のために鑑賞したチェンチッチのネローネ@リールが、ゲイっぽさの漂うエキセントリックさを出し、
それはそれでなかなか面白かったが、ファジョーリのはそれとは対照的にファシスト的マッチョな
ネローネ像で大分異なる。夫々のキャラに合っているのが面白い。

photo by Paul Leclaire
もう1人のCT、オットーネ役のリーとの一騎打ちが楽しみでもあった。
生の声を聴いたことのあるリーは、ふくよかな胸声のように聴こえるファルセットがユニークで、声量も
あり押し出しが強いため、主役だが調子のイマイチだったチェンチッチを食っていた。その時は印象に
残るタイプの声の持ち主で得だな、と思った。
ところが、今回は地味なオットーネ役でちょっと損している。どうやらこの役を演じるのはCTにとって
不利なのではないかという気がする。暗い性格を反映した歌やレチばかりで、華やかなテクニックを
披露できないのだ。朗々とした明るい声質なので、役に合わないのだ。
メータのオットーネにも以前失望したのだが、後になって、これは、メータの声や歌がどうこうという
より、オットーネに与えられた歌や性格がアピールしないのだと思った。
女性歌手にはあまり期待していなかった。
主役のポッペアは、まあ、こんなもんだろうという感じ。可憐さもしくはイノセントな悪女ぶりを発揮でき
たらいいのだが、役者不足。声にあまり魅力がなく、演技もどちらでもない中途半端なポッペアだった。
それに対して、オッターヴィアは、なかなかしたたかなタイプだった。皇后だったのにネローネの愛情が
冷めて最後にはローマから追放されるとというのに、憐れな女ではなく悪女っぽいのである。そういう
キャラには、今回の歌手はぴったりだ。
一番よかったのは、ドルシーラ役だ。複雑な境遇なのに秘めた野心がめらめらと燃える小悪女で、
耳に心地よい声の持ち主だ。
セネカ役の歌手が、カーテンコールで大きな拍手を貰っていたのだが、セネカは前半で死んだので、
彼の声が聴けなかったのがとても残念だ。
演出としては、舞台の左右のスクリーンにヴィデオ映像が投影され、舞台上の歌や台詞や出来事と
呼応する別の場面が映し出されていたのが面白かった。
例えば、ポッペアがテーブルで眠りこけ、愛の神が天井近くのバルコニーから歌っている間、
スクリーンでは、去年の会場だったオフィス・ビル内の廊下を女装したオットーネが駆け抜け、
ドアを一つ一つ開けては、ポッペアを必死に探す映像が映されたり、ネローネがポッペアを暗殺しよう
としたオットーネを責めて拷問する場面では、牢屋での拷問を思わせる映像だったり、ポッペアの
戴冠の前には、後に起きるネロによるローマ炎上を想像させるようなオフィス・ビルの火災の映像が
流れたり。
舞台装置はテーブルというシンプルさなので、そういう映像も演奏や歌の邪魔にはならなかった。
戴冠』の会場は、移民の多そうな町外れの寂れた工場地帯にある倉庫を改装したと思しい
ディスコ・クラブである。

ロビーに置かれたゴンドラのような大道具。左手のカーテンの向こうが舞台。
ケルンの東に位置する会場へ行く手前の高速道路で、大変な渋滞に巻き込まれてしまった。
目的地まであと7キロという地点から延々4キロが1時間半近くかかった。ゆっくり歩く速度とほぼ
同じだが、高速道路だから歩くわけには行かない。そして、このくらいのろのろ運転だと、クラッチと
アクセルとブレーキのペダルをずっと交互に踏むことになり、車に乗りながら4キロ歩いたような具合
である。足がつりそうだ。
夜7時開演というのは、渋滞に巻き込まれやすい時間帯なので嫌な予感がした。通常なら1時間
20分で着くはずのところ、余裕をもって5時15分前には出発したのに。。。
多分休憩時間だろうと思って8時15分頃に会場に入ると、「あと15分ほどで一幕目が終わるので
ロビーでお待ちください」と言われた。同様に待つ人が10人ほどいた。皆、渋滞の被害者だと思う。
ドアから外に漏れ聴こえてくる音が慰めてくれた。

ロビー奥には、チェンバロと器楽奏者用の椅子が。黒いドアは客席に通じる。
一幕目が終わる頃になると、ゴンドラの回りに通行止めの線が張られ、アッシャー達がドアの前に
立つ。すると、舞台に通じるカーテンを通り抜けて、オットーネ役のデヴィッド・D・Q・リーが
飛び出してきた。
あれあれ、と思っているうちに、拍手が鳴りドアが開け放たれた。観客がロビーに出てくる。
器楽奏者もロビーの席に着く。休憩中に音楽を流すのか?
ゴンドラの回りに観客が集まるが、その反対側にあるカウンターで飲み物を頼む列も出来て、ロビー
は混雑している。トイレに行く人も多い。
休憩が始まる前にトイレに行こうと思っていたが、機会を逃したのでトイレに行って、ロビーに戻って
来ると、なんと、ゴンドラの回りで、フランコ・ファジョーリのネローネが血にまみれた手をすり合わせ
ながら歌っているではないか。ネローネとルカーノが「アンディアーモ」と歌うデュエットにはなんとか
間に合った。

ロビーのゴンドラの周りで歌うファジョーリ。photo by Paul Leclaire
大失敗!混雑していた地下のトイレには音楽は全く聴こえてこなかった。アッシャーたちも、もっと
はっきりと、休憩になる前にロビーで幕の続きがあることを伝えるべきである。
昨年の公演でははBMWのオフィスビルが使われ、社員食堂や玄関ホールや廊下、オフィスなどを
観客も移動しながらの上演という演出だったのだが、今年も一部そのようになるとは思わなかった。
通常3幕のオペラだが、今回は2幕にして上演しているので、セネカの死までが前半だったのだ。
かなり重要な部分を沢山見逃したことになる。
ヨーロッパの歌劇場中、自治体からの補助金が一番多いというケルン歌劇場の場合、チケット代金が
異常に安い(最高カテゴリーでも60ユーロちょっと)ので、さほど悔しい気分にはならず諦めもつく。
L'incoronazione di Poppea (Claudio Monteverdi)
2012年4月25日@Palladium
Musikalische Leitung Konrad Junghänel
Inszenierung Dietrich W. Hilsdorf
Bühne Dieter Richter
Kostüme Renate Schmitzer
Licht Nicol Hungsberg
Video Jasper Lenz & Eric Poß
Poppea Maria Bengtsson
Nerone Franco Fagioli
Ottone David DQ Lee
Ottavia Katrin Wundsam
Seneca Wolf Matthias Friedrich
Drusilla Claudia Rohrbach
Nutrice Andrea Andonian
Arnalta 1. Schüler Senecas Daniel Lager Littore
Tribuno 3. Schüler Senecas Sévag Tachdjian
Fortuna 2. Amorino Ji-Hyun An
Virtù Damigella 3. Amorino Adriana Bastidas Gamboa
Amore Valletto 1. Amorino Maike Raschke
Liberto 2. Soldato Console John Heuzenroeder
Lucano 1. Soldato 2. Schüler Senecas Gustavo Quaresma
4. Amorino Martina Sigl
Orchester Gürzenich-Orchester Köln und Gäste
後半を鑑賞するため席に着く前に、会場や舞台を見てみよう。
舞台は、細長い体育館のようなディスコ・クラブの中央に置かれ、その左右にオケピット。
観客席は中央の舞台を挟んで対称的に設置されている。つまり、円形の舞台は正面からのみ見る
ような作りではなく、前後両方の観客席から対等に見られる。
歌手達は舞台の真ん中に置かれたテーブルの上や回りで、両面の観客に向かって演技しつつ
歌うのだった。

舞台中央のテーブルのみが大道具。photo by Paul Leclaire
舞台とオケ・ピットの回りには金網のように見える幕が張られ、後半はピンクの色の照明が下から
当てられていた。(写真で見ると前半は水色だったようだ)
中央舞台はプラクシ・ガラス張りで、その下から蛍光灯の無機質な光が当たり、モダンなデザインの
ドイツのオフィスの雰囲気だ。左右の舞台裏からラン・ウェイみたいなものが伸びていて、それを
通って歌手は舞台に登場する。
指揮者は、わたしの座った側からは上手に当たる位置に立ち、上手側のオケは一般管弦奏者および
リュートとチェンバロとバロック・ギター。下手側には、チェンバロ、オルガン、ハープ、ヴィオラ・ダ・
ガンバ、テオルボのコンティヌオという布陣である。
右側一列目席のわたしの目の前が管楽器で、演奏の難しそうな古楽器コロネットなども手堅い演奏
で、なかなかのものだった。去年の『リナルド』でも、金管以外の古楽器演奏が予想以上に上手い
のでびっくりしたものだった。
通奏低音はオケの人数割合からすると多い。左右に分かれた配置を生かして、対話形式のレチタ
ティーボの伴奏はそれぞれ別のピットからの通奏低音楽器が担当するので、人物の個性にくっきりと
コントラストが付く。レチタティーボの伴奏が左右ではっきり分離しているので、夫々の人物の台詞に
同化するという効果も大きかった。

photo by Paul Leclaire
さて、後半のみの鑑賞なので全体的なストーリーや演出にはコメントできない。個々の歌手の歌唱の
印象のみに留める。
ケルンまで来たのは、話題のCT、フランコ・ファジョーリの生の歌声を聴くことが最大の目的だ。
ファリネッリの再来と言われるテクニックとパワフルかつ男性的な声のCTというイメージの彼だが、
実際に聴く声は、芯がはっきりと通って強くかつ澄んで美しい高音に感嘆した。
モンテヴェルディのネローネのパートは、男性にしてはかなりな高音域で作曲されている。ソプラノ・
パートであるポッペアとほぼ同じような音域が要求される歌もある。だから、通常メゾ・ソプラノによって
歌われてきたが、このところ、高音が無理なく美しく出せる新世代CTによる上演が多くなっている。
以前なら、フォン・オッター、マレーナ様、サラ様というのがネローネの定番だったが、近年は、
PJ、チェンチッチ、そしてファジョーリによる新境地ネローネが現れる時代になっている。
生の『ポッペア』鑑賞は、マレーナ様ネローネに次いでこれが2度目である。
ファジョーリの生の声の印象は期待以上で、マレーナ様に負けるどころか、特に高音部での歌唱の
安定度と力強い表現の素晴らしさは特筆に価する。低音のドスの利き具合ではマレーナ様の方が
男性的だが、ファジョーリの方は高音に女性には出せない男性的な強さがあり唸らされた。
演技では、鞭を叩いて鳴らしたり、爪や指を詰めたりするサディスティックなネローネになりきっていて、
小柄な彼なのに舞台では堂々と大きく見える。(かなりのハイヒール履いてた)
眼力というか、目による表現も上手く、権力と愛欲に執着するネローネなのに一回り器の大きいチェー
ザレに見えたりすることもあったほどだ。(衣装と髪型のせいもある)
予習のために鑑賞したチェンチッチのネローネ@リールが、ゲイっぽさの漂うエキセントリックさを出し、
それはそれでなかなか面白かったが、ファジョーリのはそれとは対照的にファシスト的マッチョな
ネローネ像で大分異なる。夫々のキャラに合っているのが面白い。

photo by Paul Leclaire
もう1人のCT、オットーネ役のリーとの一騎打ちが楽しみでもあった。
生の声を聴いたことのあるリーは、ふくよかな胸声のように聴こえるファルセットがユニークで、声量も
あり押し出しが強いため、主役だが調子のイマイチだったチェンチッチを食っていた。その時は印象に
残るタイプの声の持ち主で得だな、と思った。
ところが、今回は地味なオットーネ役でちょっと損している。どうやらこの役を演じるのはCTにとって
不利なのではないかという気がする。暗い性格を反映した歌やレチばかりで、華やかなテクニックを
披露できないのだ。朗々とした明るい声質なので、役に合わないのだ。
メータのオットーネにも以前失望したのだが、後になって、これは、メータの声や歌がどうこうという
より、オットーネに与えられた歌や性格がアピールしないのだと思った。
女性歌手にはあまり期待していなかった。
主役のポッペアは、まあ、こんなもんだろうという感じ。可憐さもしくはイノセントな悪女ぶりを発揮でき
たらいいのだが、役者不足。声にあまり魅力がなく、演技もどちらでもない中途半端なポッペアだった。
それに対して、オッターヴィアは、なかなかしたたかなタイプだった。皇后だったのにネローネの愛情が
冷めて最後にはローマから追放されるとというのに、憐れな女ではなく悪女っぽいのである。そういう
キャラには、今回の歌手はぴったりだ。
一番よかったのは、ドルシーラ役だ。複雑な境遇なのに秘めた野心がめらめらと燃える小悪女で、
耳に心地よい声の持ち主だ。
セネカ役の歌手が、カーテンコールで大きな拍手を貰っていたのだが、セネカは前半で死んだので、
彼の声が聴けなかったのがとても残念だ。
演出としては、舞台の左右のスクリーンにヴィデオ映像が投影され、舞台上の歌や台詞や出来事と
呼応する別の場面が映し出されていたのが面白かった。
例えば、ポッペアがテーブルで眠りこけ、愛の神が天井近くのバルコニーから歌っている間、
スクリーンでは、去年の会場だったオフィス・ビル内の廊下を女装したオットーネが駆け抜け、
ドアを一つ一つ開けては、ポッペアを必死に探す映像が映されたり、ネローネがポッペアを暗殺しよう
としたオットーネを責めて拷問する場面では、牢屋での拷問を思わせる映像だったり、ポッペアの
戴冠の前には、後に起きるネロによるローマ炎上を想像させるようなオフィス・ビルの火災の映像が
流れたり。
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コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。
by didoregina
プロフィール
名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem
オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem
オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
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