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ヴィヴァルディ『ウティカのカトーネ』@ケルン

『ウティカのカトーネ』といえば、昨年夏ヴェルサイユ他の劇場でのCTが多数出演し、
男声のみで上演されたヴィンチ作曲版が話題になった。
半年後の今年2月にはヴィヴァルディ作曲版がコンセルトヘボウでもコンサート形式で
演奏され、こちらは女声がメインであった。
どちらも、残念ながらよんどころない用事と重なり見逃したのだった。(ラジオでは
聴いた。)
ヴィヴァルディ『ウティカのカトーネ』@ケルン_c0188818_20422097.jpg


ケルンでもヴィヴァルディ版コンサートがあることを知ったのは、8月である。
9月初めの遠征がやたらと続いた時期であるが、前日になって行くことに決め、行くのを
諦めざるをえなくなった友人からまたもや最前列中央の席を譲ってもらえた。
直前に決めたのは、金曜日と日曜日にあるケルン公演のチケット売れ行きが見るも
無残な有様で、これはバロック・オペラ・ファンとしては行かないと女が廃る!と発奮
したからだ。客席に穴をあけてはいけない、アーチストを応援しなければ、と。

Catone in Utica  2016年9月9日@Oper Köln Im Staatenhaus

MUSIKALISCHE LEITUNG: GIANLUCA CAPUANO

CESARE: KANGMIN JUSTIN KIM
CATONE: RICHARD CROFT
EMILIA: VIVICA GENAUX
ARBACE: CLAUDIA ROHRBACH
FULVIO: MARGARITA GRITSKOVA
MARZIA: ADRIANA BASTIDAS GAMBOA

ORCHESTER: CONCERTO KÖLN

目あては、ジュノー、キム、そしてコンチェルト・ケルンという順番だった。

ケルン歌劇場は、数年かかっている改修工事完了の見通しがまだ立たないままで、
今回の会場は、ライン川を挟んで大聖堂の反対側、見本市会場の近く(見本市会場の
一部かもしれない)Staatenhausという建物だった。駅裏のテントよりはまだ少しまし
と言う程度のいかにも仮設という感じで、ここはとにかく前々日の冷房の効きすぎた
ケルン・フィルハーモニーとは正反対で、冷房設備などないから暑いことこの上ない。
(その日も30度近くあったのだ。)

ステージらしきステージはなくて、雛壇上に幅の広い客席が造られているだけである。

コンチェルト・ケルンの演奏はいつも手堅くどのパートも万遍なく上手い。そして弦に
エッジが利いてきびきびして、いかにもヴィヴァルディらしい情熱がほとばしる感じが
好みである。だれるということがない。所謂濃い演奏なのだが、びしりとしまりがある。

ヴィヴァルディ『ウティカのカトーネ』@ケルン_c0188818_2112057.jpg


歌手では期待通りのジュノーが、とにかく機関銃のようなアジリタをビシバシと決めて、
小気味よいことこの上ない。彼女の少しだけ暗めの個性的な声がヴィヴァルディ独特の
ケレンミにぴったり合う。彼女の声と歌唱ほど、録音と生では印象が異なるのも珍しい。
余裕で自慢の喉を披露するという按配で、コンサート形式のバロックオペラ実演の醍醐
味と楽しさが溢れるのであった。

ヴィヴァルディ『ウティカのカトーネ』@ケルン_c0188818_21102575.jpg


もう一人のカンミン・ジャスティン・キム君には、期待以上の何かを持って臨んだ。
すなわち、キムチリアというあだ名の通り、バルトリの物まねで有名な彼だから
ちょっとキワモノ的なイメージがどうしてもあるから、偏見なしで聴くことが難しい。
ところが、最前列正面に座った私に自信たっぷりな視線を合わせて、反応を楽しみな
がら歌う彼には最初から度肝を抜かれた。
高音が無理なく美しく発声できるのはもちろん、低音にもなかなか魅力があり、声区の
移動も跳躍もスムーズである。派手なテクニックの披露も楽々とこなし、彼の歌唱を
例えるなら、男子新体操の筋肉質でかつ美しい動きを見るような快感があった。
キワモノ的イメージを自ら作り上げて名前を売る作戦も悪くない。実演を聴いて、その
実力に気持ちよくノックアウトされるという楽しみを作ってくれた彼に感謝している。

その他の歌手も皆実力あるソリストで、このヴィヴァルディ公演は大成功。堪能できた。
by didoregina | 2016-09-25 21:15 | カウンターテナー


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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