The Castrato is dead, long live the Countertenor
本日9月16日は、18世紀の伝説のカストラート、ファリネッリの命日である。
そして、なぜか、カウンターテナーには乙女座(8月、9月)生まれが多い。
そして、はたまた、今年8月9月にはカウンターテナー出演のコンサートやオペラの
実演に接する機会が多く、数えてみると、延べ6演目延べ7人のカウンターテナーの
生の歌声を聴くことができた。
その僥倖を噛みしめ、往時のカストラートを偲びながらそれらを振り返ってみたい。
9月16日は、イエスティン・デイヴィスの誕生日でもある。昨年のこの日、その事実を
知って驚愕。その時、イエスティン君はニューヨークのブロードウェイで出演する芝居
Farinelli and the Kingのリハーサル最中だったと思う。なんという偶然。
The Castrato is dead, long live the Countertenorと叫びたくなる気持ちもわかって
いただけよう。
そのイエスティン君が出演の新作オペラThe Extereminating Angel (皆殺しの天使)
を鑑賞するためにザルツブルクまで遠征し、初めてザルツブルク音楽祭というものを
体験した。モーツアルト劇場での8月8日千秋楽である。
作曲家トマス・アデスは遅筆で有名で、このオペラも果たして今年本当に上演されるの
だろうか、間に合うのだろうかと割と最後まで気を揉ませた。合宿のような長いリハー
サル期間と3回の実演を経ていよいよ楽日。
ルイス・ブニュエルの映画を翻案オペラ化したものなので、文字通り息詰まるような
室内劇のような具合である。
主要登場人物(歌手)がとても多く、それぞれに特異なキャラクターが設定されていて
特に主役と言える歌手はいない。そのため、各歌手に同じくらいの量の聴かせ所を設け
ている。皆が皆、極限のパニック状態に陥るその様を、ヒステリックな高音や不協和音
で表現しているのだが、イエスティン君の役柄は強迫観念に囚われて精神的にどこか
障害があり、かつ姉との近親相姦を暗示するような設定なので、キャラクターとしては
面白い。スプーンにこだわる彼のアリアには、バッハのマニフィカトからの引用が明白
とは本人の弁である。
かように、現代作品ながらバロックから古典派ロマン派と連綿と繋がる様々な音楽要素
が盛り込まれ、音楽自体は耳に心地よくさらさらと流れて行く。
独白と対話、そして重唱・合唱部分もあり、60年代ブルジョワの屋敷の密室中で起こる
芝居仕立ての総合オペラ・アンサンブルと言える作品になっている。
ザルツブルク音楽祭の後は、来年のロンドン、ニューヨーク、そしてコペンハーゲンでの
上演が予定されている。(コペンハーゲン以外はほとんどオリジナルキャストが出演。)
イエスティン君を追っかけているうちに興味を覚えたのは、現代作曲家のオペラ作品に
カウンターテナーが主要な役で登場するものがコンスタントに作られているということで
ある。
それらは大概、登場人物が極端に少なく、1人から3人、多くても5人程度である。
現代ものを歌える(練習時間が取れる)歌手の数が限られているという理由もあるかも
しれない。
しかし、現代の作曲家に、その声のために曲を作りたいと思わせる実力ある若手カウン
ターテナーが現在揃っているという事実も重要だと思う。イメージを膨らませ、作品の
制作意欲を掻き立てるミューズのような存在としてのカウンターテナーという声種は、
現代の作曲家にとってインスピレーションの恵の泉のような存在なのかもしれない。
そういう意味で、バロック物以外にも活躍できるカウンターテナーの雄としてのイエス
ティン君に心から拍手を送りたい。
そして、なぜか、カウンターテナーには乙女座(8月、9月)生まれが多い。
そして、はたまた、今年8月9月にはカウンターテナー出演のコンサートやオペラの
実演に接する機会が多く、数えてみると、延べ6演目延べ7人のカウンターテナーの
生の歌声を聴くことができた。
その僥倖を噛みしめ、往時のカストラートを偲びながらそれらを振り返ってみたい。
9月16日は、イエスティン・デイヴィスの誕生日でもある。昨年のこの日、その事実を
知って驚愕。その時、イエスティン君はニューヨークのブロードウェイで出演する芝居
Farinelli and the Kingのリハーサル最中だったと思う。なんという偶然。
The Castrato is dead, long live the Countertenorと叫びたくなる気持ちもわかって
いただけよう。
そのイエスティン君が出演の新作オペラThe Extereminating Angel (皆殺しの天使)
を鑑賞するためにザルツブルクまで遠征し、初めてザルツブルク音楽祭というものを
体験した。モーツアルト劇場での8月8日千秋楽である。
作曲家トマス・アデスは遅筆で有名で、このオペラも果たして今年本当に上演されるの
だろうか、間に合うのだろうかと割と最後まで気を揉ませた。合宿のような長いリハー
サル期間と3回の実演を経ていよいよ楽日。
ルイス・ブニュエルの映画を翻案オペラ化したものなので、文字通り息詰まるような
室内劇のような具合である。
主要登場人物(歌手)がとても多く、それぞれに特異なキャラクターが設定されていて
特に主役と言える歌手はいない。そのため、各歌手に同じくらいの量の聴かせ所を設け
ている。皆が皆、極限のパニック状態に陥るその様を、ヒステリックな高音や不協和音
で表現しているのだが、イエスティン君の役柄は強迫観念に囚われて精神的にどこか
障害があり、かつ姉との近親相姦を暗示するような設定なので、キャラクターとしては
面白い。スプーンにこだわる彼のアリアには、バッハのマニフィカトからの引用が明白
とは本人の弁である。
かように、現代作品ながらバロックから古典派ロマン派と連綿と繋がる様々な音楽要素
が盛り込まれ、音楽自体は耳に心地よくさらさらと流れて行く。
独白と対話、そして重唱・合唱部分もあり、60年代ブルジョワの屋敷の密室中で起こる
芝居仕立ての総合オペラ・アンサンブルと言える作品になっている。
ザルツブルク音楽祭の後は、来年のロンドン、ニューヨーク、そしてコペンハーゲンでの
上演が予定されている。(コペンハーゲン以外はほとんどオリジナルキャストが出演。)
イエスティン君を追っかけているうちに興味を覚えたのは、現代作曲家のオペラ作品に
カウンターテナーが主要な役で登場するものがコンスタントに作られているということで
ある。
それらは大概、登場人物が極端に少なく、1人から3人、多くても5人程度である。
現代ものを歌える(練習時間が取れる)歌手の数が限られているという理由もあるかも
しれない。
しかし、現代の作曲家に、その声のために曲を作りたいと思わせる実力ある若手カウン
ターテナーが現在揃っているという事実も重要だと思う。イメージを膨らませ、作品の
制作意欲を掻き立てるミューズのような存在としてのカウンターテナーという声種は、
現代の作曲家にとってインスピレーションの恵の泉のような存在なのかもしれない。
そういう意味で、バロック物以外にも活躍できるカウンターテナーの雄としてのイエス
ティン君に心から拍手を送りたい。
by didoregina
| 2016-09-16 17:59
| カウンターテナー
コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。
by didoregina
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プロフィール
名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem
オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem
オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。
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