Sailing to Venice その2 ロヴィニ、ウマグを経て海路国境超え

チャーターしたヨットの持ち主登録および航行範囲ライセンス問題に関しては、プーナット
で「イタリアへ行っても大丈夫なように書類は揃ってますよね」と再確認し、「ヴェネツィ
アでもどこでも大丈夫」と太鼓判を押されたので、大船に乗った気分でいた。

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火曜日朝にプーラを出発し、イストリア半島を北上。
アドリア海を横断してヴェネツイアへ渡るのに距離的に最短の港ウマグを目指す。ここの
マリーナも水曜日の停泊を予約確保した。木曜日にはヴェネツィアに着かないといけない
からだ。(なぜかというと、同乗の甥と姪は金曜日のフライトでヴェネツィアからオラン
ダに戻る必要があった。土曜日からシドニーに飛ぶ予定なので.。)

そこまでのイストリア半島では、ロヴィニ、ボレチ、フンタナ、ブルサルなど、ヴェネ
ツィアの影響の濃いイタリア風の綺麗な町がいくつかある。その区間は特に予定を立てず、
泊まる港はその日の風次第という気軽さがあった。
プーラを出て、チトー元大統領の島々を横目に見ながら進む。ロヴィニ手前の小さな島に
錨を下してランチと海水浴を楽しんだ。さて、午後はどこまで行こうか、と思いつつ、
この海域は初めてのゲストに、美しいロヴィニの姿を海上からでも見てもらおうとアプ
ローチ。

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ロヴィニの美しさに思わずウワオと歓声が漏れ、通り過ぎるのがもったいなくなった。
手前のマリーナに急遽無線で「今晩1晩停泊したいのですが、スペースはありますか」
と尋ねると、「有り余るほどですよ」との返事。さぞや混んでるだろうから、きっとここ
には泊まれないだろうと思っていたので、肩透かしというか嬉しさに、即ここに決定。
プーラからはたったの20海里である。

クロアチアが国を挙げてヨット・マリーナ開発に力を入れているのは、地中海沿岸の他
の国と比べて顕著である。立派な設備の整ったマリーナがそこかしこにあり、サーヴィ
スも至れり尽くせり。しかも、大概、美しい港町を眺めるのに最適の立地である。
4年ぶりにクロアチアでセイリングして日々感じたのは、EU加盟後の驚くべき物価上昇で、
外食もお安くないし、マリーナの停泊料金も1泊65~75ユーロになっていて、EU以前を
知る私たちは驚いた。(ヴェネツィアが安く感じられたほど。)

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マリーナからのロヴィニ、夕景

上陸してロヴィニ観光と、お洒落なレストランでの夕食で観光客気分を味わった。

クロアチアのマリーナには係留サポートをしてくれるクルーが常勤していて、ゴムボート
や自転車で桟橋まで誘導して、ムーリング・ラインを引き上げてくれたり、大変結構な
サーヴィスぶりである。
しかるに、ここのマリーナ・クルーにヨットの書類一式の入ったファイルを渡すと、中を
見ながら、「ライセンスは?」と訊く。「ライセンスは全部その中に入ってます」と言う
と、「このヨットはクロアチア籍なのか、ドイツ籍なのか?このライセンスではクロア
チア航行はできない。」と言い出すではないか。
「出発港でも確認したし、昨日プーラに泊まった時にもそんなこと言われなかったし、
書類には不備はないはず。」と反論しても、なぜか頑なな彼である。
ヨットを舫い終えると、彼が書類を持って行ったマリーナ事務所まで自分で赴き、ライセ
ンス等について確認すると「はあ?全く問題ありませんけど。」とのこと。
何ゆえに、サーヴィス・クルーは変な言いがかりをつけたのだろうか?

この疑問は、翌日解けた。
スロヴェニアとの国境に近く、出入国管理事務所のあるウマグ港に舫った際、桟橋の隣の
バースにドイツ人グループのセイリング訓練らしきヨットが入港。教官スキッパーが手慣
れた様子で、係留を手伝ってくれたマリーナ・クルーに冷えた缶ビールを手渡したのだ。
ああ、チップの要らない国に住んでいると、こういうことに気が回らない。
次男曰く「世界中で多分サーヴィス業の人たちへチップを渡す習慣がないのは、日本と
オランダだけだよ」。
これを教訓として、ヴェネツィアではマリーナ・クルーに、さっと冷えたクロアチア
ビールを渡した。そして、それは後で大層な効果をもたらすのであった。

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早朝のロヴィニ。昨日とは反対側だが、どこから見ても美しい。

ロヴィニからウマグまでも25海里ほどである。
ここのマリーナも、心配だったので事前に予約を入れておいた。しかし、それは全く必要
なかったと後で知るのだが、そのくらいこの時期のイストリア半島の港は空いていた。
マリーナに入る直前に無線で入港許可を取る。するとクルーが埠頭に来てくれるのだが、
まず「イタリアから来たのか」と訊かれた。「クロアチアからです」と答えると、「じゃ
あ、入管は必要ない」と言われて、それだけである。
もしも、スロヴェニアもしくはイタリアからこの港に入ったとして、「クロアチアから
来ました」と嘘をついてもわからないのではないか。この辺りから、国境での出入国管理
のルーズさ加減がなんとなくちらつき始めた。
しかし、私たちは正式に国境超えをしたい。だから、マリーナ事務所とは別の出入国管理
事務所および国境警察(港の埠頭にある)までパスポートを持って行って、翌日ヴェネ
ツィアに渡航する旨を伝え、書類に記入、スタンプなど押してもらった。
国境警察は朝5時から開いているとのマリーナ・クルーの話だが、実際事務所に行ってみる
と8時頃から開くとのこと。早く出発するから今日中に書類を提出したいと言うと、それは
OK。だから、出国スタンプの日付は実際とは異なるわけだが、それもOKらしい。
提出したクルーリストは戻ってこなかった。(その時のクルーは、ヴェネツィアで下船
する甥と姪も含む6名である。)

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さよなら、ロヴィニ。名残惜しそうなドリ号クルーたち。

さて、海上での国境越えの話をまとめてしまおう。
着いたヴェネツィアで、入国管理局(もしくは国境警察)に届け出ようと、マリーナ事務
所で所在地を尋ねると、警察は駅の裏辺りにありマリーナとは正反対側。水上バスで45分
かかるという。
マリーナに入管を委託する場合は約100ユーロの手数料をいただきます、とのことなので
自分たちで観光ついでに行ってみた。ちなみに、ヴェネツィアに着いたのは夕刻で、
警察はもう閉まっているから、行ったのは翌日。しかも翌日には甥と姪はオランダに発つ。
空港と方向が同じなので彼らと途中まで一緒に水上バスで警察に向かった。しかし、
今からイタリアを出る彼らの名前もクルーリストに載せて
提出するのはどうだろうか、と思い、かえってややこしくなりそうなので、4人にしてお
いた。イタリアはシェンゲン圏内なので、そこからオランダに行く飛行機に乗る彼らの
パスポート検査はないはずである。
警察に行って、クルーリストとパスポートを提出すると、商業船でないからクルーリスト
は必要ないという。
私のパスポートには、ヴェネツィアへの船による入国スタンプを押してくれた。翌々日
出国予定であるが、やはり早朝出発だし日曜日だから警察は開いていないから、翌日来て
もいい、とのことで、やっぱり日付が実際とは合っていない出国スタンプを翌日押して
もらいに再度でかけた。

片道45分もかけて行ったのだが、どうも誰も全く重要視していないというか、他に申請に
来る人も見かけなかった。
実際には6人でクロアチアから入国したわけだが、自己申告だから、実際のところは誰に
も判定しようがない。警察の開いている時間にしか申請できないので、入国・出国日時も
実際とはそれぞれ1日ずれている。
なんとも、ざるのような状況で水漏れ著しく、海上での国境管理とは難しいものだなあ、
と思ったことである。
それもこれもクロアチアがまだシェンゲンに入れてもらえないからで、それが通った暁に
はこういうばかばかしいビューロクラティックな書類業務もなくなる。
(その後、クロアチアへはノビグラド港から再入国したのだが、そこでも仰々しく書類だ
けは記入させられたが、実際にどうやって管理してるのかは全くなぞである。自己申告制
だからチェックのしようがないと思う。リエカ空港でパスポートチェックされているので、
別のところで再入国申請しなくても全く問題なくクロアチアにいられたはず。)

まあ、これもすべて経験のため、と思って、楽しんでやってみた。(そうでもなければ、
バカバカしい。)シェンゲン圏の早急な拡大を望むものである。
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by didoregina | 2016-08-21 20:01 | セイリング | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

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別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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