クリスティアン・ベザイデンホウトとアンネ・ソフィー・フォン・オッターのコンサート

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Ludwig van Beethoven Meilied opus 52 nr 4 (1805)
Sehnsucht WoO 146 (Die stille Nacht) (1816)
In questa tomba oscura (1807)
Aus Goethe’s Faust op. 75 nr. 3: Es war einmal ein König (1792/1809)

Wolfgang Amadeus Mozart Rondo in a KV511 (piano solo)(1787)

Franz Schubert Adagio in G D178 (piano solo)(1815)

Joseph Haydn Cantate Arianna a Naxos (1789)

Pauze

Adolf Fredrik Lindblad Der schlummernde Amor
Svanvits sång
En sommardag

Franz Schubert Der Winterabend D938 (1828)

Wofgang Amadeus Mozart Allemande from Suite in C KV 399 (piano solo)

Ludwig van Beethoven Rondo in C op. 51 nr. 1 (piano solo)(1796/97)

Franz Schubert Die junge Nonne D828 (1825)
Dass sie hier gewesen D775 (1823), An Silvia D891 (1826),
Der Musensohn D764 (1822)


先月は、我が町の我が合唱団の本拠地であるチャペルでクリスのコンサートがあった
というのに、その晩はロッテルダムのムジカ・エテルナのコンサートに行ってしまった。
今回は、クリスのフォルテピアノ伴奏でフォン・オッターが様々な歌曲やカンタータを歌うと
いう、なかなかめったに聴けないプログラムである。当然ながら、チケットは早くから
売り切れであった。

コンサート前にクリスによるフォルテピアノに関するプレ・トークがあるというお知らせが来た
ので、開演1時間前に会場に入るつもりだった。エイントホーフェンなら車でも電車でも1時間。
ホールは駅から徒歩5分なので電車で行くほうが安上がりと、早めに家を出たのだが。。。
駅に着いたらOVカード(スイカみたいなプリペイ・カードでオランダ全国の公共交通機関
共通)を忘れて来たことに気付いた。私のは平日朝9時以降と週末は一日中40%オフ
になる記名式アボネ・カードなので、これがないと痛い。主人に電話し持ってきてもらうが、
電車を一つ逃してしまった。
当初の予定より20分ほど遅れてホールに到着、トークはすでに始まっていたが、2階バル
コンにそっと入れてもらえた。

クリスは、なかなか素敵な私服にトレンディな横長の大き目のプラスチック・フレームの眼鏡、
カットしたばかりの新しい髪形で、舞台に立ってモーツアルトやロマン派の鍵盤曲をフォルテ
ピアノで演奏する意義(多分)というテーマで話している最中であった。
しかしながら、私が入ってから1,2分経つとトークは終わり、質疑応答になってしまった。
つまりトークのほとんどの部分を聴き逃したことになる。トークと質疑応答で印象に残っている
のは、「古楽の盛んなこの辺りではフォルテピアノ演奏というものが当たり前のように普及して
いるので聴衆にシリアスに受け止められ演奏会もしやすい。まだまだフォルテピアノ未開発の
ところに行くと、まるで見世物みたいなノリで聴きに来られる。」と、「シリアスに」という
単語を2回使って、普及活動に奮闘する彼の別の姿を垣間見せてくれたこと。
なるほど、そういえば、3年前の名古屋でのクリスのフォルテピアノ演奏会終演後、聴衆は
舞台に上がらせてもらえ、フォルテピアノを間近に(多分初めて)見る機会を与えられ、
調律師だったか楽器の持ち主だったかに色々説明を受け、楽器を取り囲んだ皆さんは興奮
気味だった。
まるで、種子島への鉄砲伝来、みたいなノリ。聴衆の大部分はフォルテピアノという珍しい
楽器に遭遇できたことで浮きたち、そのため、フォアイエでのご本人のサイン会は閑古鳥という、
ちょっと哀しい状況が展開したことを思い出した。まさしくあの時、フォルテピアノの存在自体が
見世物であった。。。。

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さて、コンサートが始まるとクリスのフォルテピアノ伴奏とフォン・オッターの歌唱との相性は
いかに、というのがまず一番の関心事だった。
私の座席は、小ホール右側バルコンの最前列で舞台に近く、舞台を斜め上から見る位置で、
フォルテピアノ演奏を聴くにも、歌手や演奏者の顔の表情を見るにもよい席だった。
このホールはこじんまりとして、余分な残響が全くなくドライに近いがニュートラルな音響で、
今回のようなコンサート(歌曲リサイタル)にはぴったり。
使用されたフォルテピアノに関する説明もプレトークではあったのだろうが、遅れたため
聞き逃した。
プログラムおよび楽器デザインから察するに、1800年から1830年代のウィーン製ではない
かと思われる。多分オランダのコレクターの持ち物で、今までにもこの楽器による演奏を何度か
聴いたことがあるはずだ。

この晩のフォルテピアノの音色は、歌手に寄り添う伴奏としての絶妙なニュアンスと色合いが
いつもより明白であった。ペダルを使って強弱の幅が広く出せるようで、特に力をふっと抜いた
弱音でのさりげなく美しい音がため息のように聴こえるのだった。それは、クリスの表現力の
またしても進化と呼ぶべきものか、伴奏者として歌手に息を合わせるためのテクニックゆえ
なのか。
フォン・オッターの歌唱も、肩の力を抜いたような、いささかも力を込めすぎず、自然な美しい
発音と発声で聴く者の心をほっこりさせる。ベートーベンの歌曲は今まであまり聴く機会が
なかったが、いかにもドイツ語らしい脚韻がリズミカルなのだが大仰でなく典雅。
前半最後の曲、ハイドンのカンタータ『ナクソス島のアリアンナ』が白眉で、イタリア語でかき
口説くように歌われる嘆きの歌が耳に懐かしい。オペラチックかつドラマチックな盛り上げ方も
大人の余裕と言うか、抑制が効いていて上品なのだった。また、彼女が出演するオペラを
生で聴きたい。(多分、この夏実現するはず。)

歌の合間に4曲ピアノソロが入るのだが、いずれも珠玉というべき小品で、クリスのフォルテ
ピアノ演奏では、こういう曲を聴くのがバリバリと弾くソナタよりもずっと楽しみなのだ。
自分もピアノで習ったことがある、難易度的にはそれほど高くない曲ばかりだが、彼によって
弾かれると、子供っぽさがまるでなく、流麗でいて可憐、しかも仰々しいロマンシズムに走り
すぎず、なるほど、これこそ究極の中庸の美だ、と目から鱗がポロポロ落ちるのだった。
そして、彼のように弾いてみたいという思いに駆られるのだ。
(今回、歌の伴奏の時だけでなく、ソロでも全部楽譜を見ながら弾いていた。クリスが暗譜で
なく演奏するのを見るのは初めてではなかろうか。また、顔芸も以前ほど大仰ではなくなって
いるように思えた。)

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この二人の相性は抜群、しかもフォン・オッターの声とフォルテピアノとの相性も抜群ということが
しみじみと感じられるコンサートだった。
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by didoregina | 2016-02-14 19:04 | コンサート | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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