ゴッホ美術館のムンクとファン・ゴッホ展 Munch: Van Gogh

アムステルダムのファン・ゴッホ美術館で9月25日から来年の1月17日まで開催中の展覧会
Munch:Van Goghは、期待を大幅に上回る素晴らしいものだ。
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何が凄いかというと、両者による同じテーマおよびモチーフでしかも年代的にかなり近く
美術史的価値もほぼ同等の作品を並べて見せるという理想的展示方法を実現できたこと。
頭の中・想像の世界で美術愛好家がヴァーチャルに楽しんでいる方法だが、実際の美術展を
その方式で行うのは大変なことだ。世界中から観光客が訪れ、オランダ観光のメッカである
ファン・ゴッホ美術館でしか企画・実現は不可能であろうと思われる、質の高い作品が目白
押しで充実した内容だ。
美術愛好家の夢がここでひとつ叶えられた。

ファン・ゴッホよりムンクは10歳年下だが、早熟かつ早くから画家として認められていた
ムンクなので、ゴッホとほぼ同じ時期にパリに滞在していたり、19世紀末のフランス人画家
や印象派の影響を受けていたりして、作品に共通点は驚くほど多い。
そういう観点で集めたものばかりなのだから当然ではあるが、それでも実際に並べられ展示
されているのを見ると、思わず感嘆のため息がもれる。
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The Yellow House, Vincent van Gogh, 1888 (Van Gogh Museum)
Red Virginia Creeper, Edvard Munch, 1898 - 1900 (Munch Museum, Oslo)

ゴッホ美術館は普段でも写真撮影には厳しいが、特別展だから写真撮影厳禁なので、図版は
購入したカタログから。ショップで販売している特別展カタログは、英語版とフランス語版
二種から選べる。オランダ語版がないことから、世界各国からの観光客をいかにターゲット
としているかがうかがえる。

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Starry Night over the Rhone, Vincet van Gogh, 1888 (Musee d'Orsay, Paris)
Starry Night, Edvard Munch, 1922 - 24 (Munch Museum, Oslo)

クレラー・ミュラー美術館を始めオランダ国内はもちろん、パリのオルレー、オスロのムンク
美術館、ベルゲンの国立美術館などから厳選された作品が並び、質のみならず量的にも充実。
ムンクと言えば、誰もが思い浮かべる『叫び』や『マドンナ』『吸血鬼』『嫉妬』『接吻』
『病気の子』なども、今回の展示には欠けていないのである。

ゴッホの絵は、何度も見ていてお馴染なので、特にムンクの絵をじっくりと鑑賞した。
才気走った若きムンクの自画像。(もう少し年を取ってからの自画像は、ファン・ゴッホのと
並べられている。)
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19才の自画像 Edvard Munch, 1882 (Munch Museum, Oslo)
23才の自画像 Edvard Munch, 1886 (National Museum of Art, Archtecture and Design, Oslo)

また、パリで当時の先端を行くフランス人画家、ゴーギャン、スーラ、ピサロ、モネ、マネ、
カイユボット、ロートレックなどの作品と、彼らの作品及び画家との交流から影響を受けた
だろうと思われるゴッホとムンクの作品が、似たテーマを選んで並べられているのも圧巻だ。

ムンクの風景の切り取り方、室内の構図や窓の外の風景などに見られる、文字通り斜に構えた
感じが、私にはとても印象に残った。
正面からでなく部屋の角からの画家の視線で、対角線上の隅に立つ人物を鑑賞者も見ることに
なり、その先にあるカーテンの隙間から覗く窓の外の風景に目が吸い込まれる。都会のメラン
コリーの味わいがほのかに見え隠れし、効果的である。

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Night in Saint-Cloud, Edvard Munch, 1890 (National Museum of Art, Architecture
and Design, Oslo)

とにかく、量的・質的に、今年年頭にアムステルダム国立美術館で開催された『後期レン
ブラント展』に匹敵するほどの内容だと思う。
ようやく、新しいエントランス・ホールが、3つの美術館とコンセルトヘボウが面するミュー
ジアム広場側に完成し、今までのように歩道に長い列が並ぶようなカオスは緩和されたが、
ゴッホ美術館は普段でもアムス有数のアトラクションであるだけに列は長い。事前に時間枠の
Eチケットをオンラインでゲットすることを勧める。追加料金なしで日時指定でき、それに
通常の入場前売り券もしくはミュージアム・カードを持っていれば、待ち時間なしで直接
入れる。

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新たに増築されたエントランス・ホールは広々。特別展は別棟。ショップも充実。
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by didoregina | 2015-10-21 19:58 | 美術 | Comments(6)
Commented by Vermeer at 2015-10-27 23:16 x
ムンクは10歳年下だが、ゴッホとほぼ同じ時期にパリに滞在、共通点は驚くほど多い

絵画史的に同じ文脈で語られることの少ない二人、並べて観るとすごく新鮮ですね。“Starry Night”なんてキャンバス並べて描いたかのように通奏するものがあります。

カイユボットなどの作品⇒
一昨年ブリジストン美術館でかなりの規模の回顧展がありました。彼の作品も都市生活の憂鬱や哀感に縁取られて心惹かれるものがありました。
Commented by レイネ at 2015-10-28 03:18 x
Vermeerさま、この展覧会はアタリ!こんなに両者の絵に共通点がたくさんあろうとは目から鱗。どなたにも胸を張ってお勧めできます。

ゴッホ美術館所蔵のカイユボットの絵(パリの大通りをバルコニーの鉄の飾りのある柵越しに描いたもの)の構図が革新的で、並べて展示されるとムンクの絵にもそれに近い感覚があることがわかったのが今回の一番の収穫でした。

芸術の秋から冬にかけて、気になる展覧会が目白押しです。(日本では春画展に行こうと思ってます)
Commented by Mev at 2015-10-28 06:32 x
本当にこの展示は素晴らしいものですね。私もひとりで行ってあまりにも感動したのでいやがる次男を無理やり連れて行きました。面倒がっていた次男ですが、やはり見応えのある展示にはいささか心を動かされたようでした。この企画のキュレーターのセンスも感嘆ものですが、ムンクがかくも美しい印象的な絵画を残していることにあらためて驚いた次第です。
Commented by レイネ at 2015-10-28 17:05 x
Mevさま、ムンクと言うと美術に疎い人や子供でも自動的に『叫び』を思い浮かべるという、芸術家としてはある意味で足枷をはめられてしまっているのが残念です。彼の絵には世紀末の毒もあるけど、北欧らしい淡い光が充満して涼やかな美が特徴なのにね。

この展覧会のキュレーターの選択眼は卓越してましたね。そして、それを実現できたということにも驚嘆。ゴッホ美術館とオスロのムンク美術館のそれぞれの実力とコラボのよさを実感。
Commented by Vermeer at 2015-10-28 18:32 x
ゴッホ美術館所蔵のカイユボット“View from a balcony”⇒
飾りのある鉄柵は、“バルコニーの男、オスマン大通り”の柵が同一と思われますし、有名な“床削りの人々”の部屋の奥にも多少デザインは違いますが登場します。“ヨーロッパ橋”に出て来る鉄橋も含めて都市生活の象徴なんでしょうか。

北欧らしい淡い光が充満して涼やかな美⇒
と読むとハンマースホイ(2007年に西洋美術館で大規模な回顧展がありました)や、ノルウェーの女流、ヘレン・シャルフべック(今夏残念ながら東京芸大美術館展を見逃し、今週末から年明けまで広島県に巡回中;ちょっと遠いな)を連想します。
Commented by レイネ at 2015-10-28 21:03 x
Vermeerさま、バルコニーの飾り鉄柵に、わたしは19世紀の都市生活をモロに感じます。印象派以降の絵画を見るときには、今後その点に注目しようと思います。『床を削る人々』は、何年か前、ハーグ市立美術館にも来ました。

ハンマースホイは、フェルメールとの共通点もあるから日本人好みの画家ですね。昨年、ロッテルダムのボイマンス美術館がオランダの美術館では初めてハンマースホイの絵を購入しました。その絵『バルコニー・ルーム』(!)が今年春から公開されています。現在NYで大規模な展覧会開催中なので、ヨーロッパにも来ないかなあ、と念じてます。
シャルフベックは、ハーグ市立美術館で2007年に回顧展があったのですが、見逃してます。
北欧という枠でくくると、淡い光と透明な空気感に彼らの共通点が見いだせるように思えます。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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