ハーグの隠れた宝石箱 Galerij Prins Willem V

デン・ハーグのマウリッツハイス美術館は日本人にもお馴染だが、そこからほど遠からぬ
場所にひっそりと隠れた宝石箱のような小さな美術館があることは、あまり知られていない。
わたしも、実は今回ここでの展覧会に招待されるまではその存在を寡聞にして知らなかった。
マウリッツハイスの弟分というか分館のような美術館でウィレム5世のギャラリーという。

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Galerij Prins Willem V (ウィレム5世のギャラリー)の外観

マウリッツハイス美術館から、オランダの国会Het Binnenhofを通り抜け道路を渡った向かい
にあり、1774年にオラニエ公ウィレム5世が収集した美術品展示のために造ったギャラリーで、
美術品の公開目的という意味合いにおいてオランダで最初の美術館と言える。

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Binnenhof にあるオランダ国会議事堂 Ridderzaal (騎士の館)

この美術館の存在を知ったきっかけは、ここで10月1日から11月29日まで展示されている
ベラスケス作『ドン・ディエゴ・デ・アセードの肖像』のプレス・オープニング内覧会に
美術ブロガーとして招待されたからだ。
日本では展覧会開催前にブロガーを招待しての内覧会というのがしばしば行われるようだが、
マウリッツハイス美術館がSNSでブロガーを公募したのは初めての試みだそう。推薦制で
あったが自薦応募した。国内外のプレスや在オランダ・スペイン大使などの招待客に混じり、
3人のブロガーが招待された。私が選ばれたのは、多分に日本人ブロガーであるという理由が
大きいと思う。なにしろ、日本人のフェルメール好きという事実はマウリッツハイス美術館
関係者にはよく知られており、国別来館者数では日本人がダントツだし、日本でのフェルメ
メール関連展覧会の集客数は他を引き離す圧倒的なレベルである。

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ベラスケス作『ドン・ディエゴ・デ・アセードの肖像』(1638/40)とマウリッツハイス
美術館長エミリー・ゴーデンカー女史。

美術館としては非常に小さな建物の2階広間、いわゆるギャラリーがまさにギャラリーに
なっていて、その奥に特別展示されているのが、プラド美術館所蔵のベラスケス作『ドン・
ディエゴ・デ・アセードの肖像』だ。

この絵の前に立っての第一印象は、描かれた人物の頭に比して体のプロポーションの不可思
議さで、よくよく覗き込むと彼は小人であることがようやくわかる。
スペインの宮廷には当時、小人が沢山雇われていたことは、有名な『ラス・メニーナス』で
見てもわかるが、小人たちの職種といえば、道化というのがほとんどお約束だった。しかし、
このディエゴ・デ・アセードは分厚い本を開き、足元にはスタンプが置かれていることから
明らかなように、フェリポ4世の宮廷で公的文書に印を押すという重要な事務職を担っていた。
顔つきには小人らしさが見られないが、服装は小人のお約束である黒の織り出し格子。頭には
帽子を斜めに被り、事務職らしさが表されている。髭を蓄えた威厳のある顔つきには自信が
満ち、存在感も強い。
しっかりと自己を主張する顔つきを丁寧に描いているに対して、背景の山やテーブルの筆使い
はちょっとかすれたような雑さや、ささっとしたスピードが感じられ、静と動、黒と白、光と
影の対比がくっきりとして、躍動感すらある。
肩の周りを強調するような線や、背景の筆の汚れをぬぐった跡などが世紀を経て顕わになり、
見れば見るほど発見のある絵で飽きない。
じっくりと一枚の絵に付き合うという体験がここではできる。

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しかし、この美術館の神髄は何といってもギャラリー1室にぎっしりと展示された絵の数で
あろう。ネーデルランドの画家を中心に150点の作品が縦長の部屋の四方の壁にぎっしりと
ほとんど隙間なく天井まで展示されているのだ。

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窓の外、向いはオランダ国会。

この部屋に案内されてまず、口をあんぐりと開けて「うわあ」と思わず声を発したことを
美術館広報担当者や学芸員の方たち(少数の招待客と同じくらいの人数が配置されていて、
ほとんどマンツーマンのサービスで絵や美術館の説明をしてくれ、どんな質問にも応えて
くれるのが素晴らしい)に言うと、わが意を得たりと「その反応を期待してるんです」との
こと。いかにもバロックそのものという過剰さが売りとでもいうべき展示は、その当時の
ギャラリーを描いた絵などから見知ってはいたが、実際に150枚もの絵に取り囲まれた空
間に身を置いてみると、迫力は圧倒的だ。
その中にはルーベンスの絵もあり、やはり目を惹く。

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イケズそうな表情のこのお二方。

マウリッツハイス訪問したら、ぜひともこの小さな隠れた宝石箱のようなこの美術館も
続けて訪問して、新たな発見・体験をしてもらいたい。
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by didoregina | 2015-10-02 22:16 | 美術 | Comments(2)
Commented by Vermeer at 2015-10-03 22:14 x
マウリッツハイスの分館とも言うべき⇒
初めて知りました。いつか(っていつなんだろう?)オランダ・アートの旅に出る機会があったら是非訪ねてみたい美術館リストに入れました。ご紹介のお陰です。

じっくりと一枚の絵に付き合うという体験⇒
これに似た思いを抱いたのが、「道化師セバスティアン・デ・モーラ」を見た時でした。プラド美術館展は何度も来日しているので調べてみたら2002年西洋美術館、そんなに前なのにブログを拝見していて感動が甦りました。王侯貴族の華麗な肖像群よりも、知的で思慮深いモデルによせる画家の共感がずっと深く、ハンディキャップすら神々しく見えました。前に立つとモデル自身と会話している気になりますよね。まさに邂逅の一枚でした。
Commented by レイネ at 2015-10-04 00:15 x
Vermeerさま、お名前もそのものズバリですから、フェルメールの足跡を辿るためにぜひ一度オランダ・アートの旅にお越しください。

まさに肖像画を見る楽しみは、描かれた人物との対話という楽しみもあるんですよね。数世紀という時間を経て、空間を飛び越えての対面。そして、そこに介在する画家の存在を否応なく通すことになるので複数の人物との会話になりますが。自画像にとても魅かれるのもそういう点からなのだと思います。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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