Orpheus Britannicus ドロテー・ミールズとシュテファン・テミングのコンサート@ユトレヒト古楽祭

今シーズンのコンサート始めは、ユトレヒト古楽祭のOrpheus Britannicusと銘打った
コンサートで、ソプラノのドロテー・ミールズとバロック・リコーダーのシュテファン・
テミングの共演であった。

c0188818_1845462.jpgDorothee Mields, Stefen Temmingh
@Geertekerk,
2015年9月3日

Anoniem
A tune in je mad lover (instrumental)

Henry Purcell (1659 - 1695)
'Tis women makes us love. A catch

Johan Christoph Pepush (1667 - 1752)
Corydon, Recittivo, Aria Vivace, Recitativo, Aria Allegro

Henry Purcell
A slow air by je late Mr. Purcell (instrumental)
The plaint: O let me weep (from The Fairy Queen)
Ye gentle spirits of the air (from The Fairy Queen)

Arcangelo Corelli (1653 - 1713)
Sonate no.10 in F "as played by Mr. Babell" (instrumental)
Preludio:Adagio, Allemanda:Allegro, Sarabanda:Largo, Giga:Allegro,
Gavotta:Allegro

Henry Purcell
Celia hath a Thousand charmes (from The Rival Sister)
Celia hath a Thousand chames by he late Mr. Purcell (instrumental)

Tradidional
John come kiss me now


ユトレヒト古楽祭のコンサート・チケットの人気演目は、一般発売時にはもういい席は
ほとんど残っていないというのが毎年通例である。おととしも去年も今年も、オープニ
ング・コンサートやラルッペッジャータのコンサートはそれで諦めた。
England, my Englandと題した今年は、大御所ヘンデル以外のイギリス古楽を縦横に
集めたちょっと捻りの効いたプログラミングで、中でもかなりレアで今回を逃したら今後
おそらく生で聴く機会はあるまいと思われるジョン・エクルズ作曲『セメレ』に絞ることに
した。平土間5列目というまあまあの席がなんとか取れた。
『セメレ』と同じ日のこのOrpheus Britannicusコンサートも、行こうかという気になっ
た時にはもう悲しくなるような席しか残っていなかったのだが、当日何気なくサイトを眺
めたら、5列目ほぼ中央の席が3つ並んで出てきている。天の啓示かと喜び、即ゲット。

c0188818_18215541.jpg


















会場である教会のGeertekerkには、6月27日にユトレヒト室内音楽祭でのジャニーヌ・
ヤンセン他によるハイドン『十字架上の七つの言葉』コンサートを聴き行ったのだが、
2か月後に来てみると、夏休みに突貫工事を行ったと思しく、地下に新しいトイレが出来
ている。まだ漆喰は乾いていないし、階段も仮設だし、ペンキもこれから、という段階
だが、新しいトイレ個室が4つも完成しているのには驚いた。その機能性と清潔度も
ギリシャから戻ったばかりの私に感涙をもたらすに十分のすばらしさ。(冗談ではなく。
ギリシャのトイレの悲しさは、経験のある人にはわかってもらえるだろう)

今回のコンサートは、ドロテー・ミールズが目当てであったが、サイトやブロシャーを
見ると、バロック・リコーダーのテミングの写真が大きく、しかも「フランス・ブリュッ
ヘンの再来」とかの賞賛文字が躍る。
ふ~ん、という態度で、会場の多くの人たちも臨んだと思う。ブリュッヘンのお膝元の
オランダであるから眉唾にしくはないし、何しろ彼は今回がオランダデビューなのだから、
知名度は低い。

しかしである、チェンバロ、テオルボ、ソプラノ・リコーダーによる最初の器楽曲の
一小節を聴くや聴衆は膝を乗り出し、どちらかというとパパゲーノ的イメージ風貌の
テミングの派手なアクションの一挙一動に目を注ぎ、まるでハーメルンの笛吹男に踊らされ
そのあとに続く子供たちのようなたわいなさで、一曲目から彼の吹くリコーダーの音色の
マジックに乗せられてしまったのである。
千変万化の音色は、まるで魔笛。その魔力や凄まじく、唖然となったあと、こりゃすごい、
と我に返った。

c0188818_18435367.jpg

テミングがコンサートで使用した各種リコーダー。

それからミールズの歌との掛け合いになると、これがまた驚き。彼がリードする形で歌の
伴奏ではなく、助奏には違いないのだが、今まで私が抱いていたオブリガートの概念を全く
覆すような演奏なのだった。
歌に適した音域・音色のリコーダーをとっかえひっかえ選び使用しているため、非常に
人間の声に近いものとなり、まるで二人の歌手のデュエットを聴いているような感じを
覚えさせる。人間の歌声には多彩な色が付けられるのだが、それと対等の音色を彼は
リコーダーから引き出すのだった。
歌手の歌声と伍すリコーダーの競演とはなんとも楽しいものである。

そして、リコーダーが活躍のコレッリのソナタとなるともう超絶テクニックの連続技で
聴衆の度肝を抜き、またそれがいかにも軽々と演奏されているため、会場は拍手万雷。

ミールズ目当てで来た聴衆が多そうだが、皆なんとも愉快なリコーダーの魔術に罹って
大満足である。
そして、ミールズももちろん、清楚で可憐な歌声でイギリスの古楽歌曲らしい雰囲気を
盛り上げた。

丁度一か月前、ロンドンのグローブ座サム・ワナメイカー・プライハウスで、アナ・
プロハスカとアルカンジェロによるラクリマと題したイギリスとイタリアの古楽歌曲を
中心としたコンサート(パーセル、ダウランド、カヴァッリ、ストロッツィ、メルーラ)に
行ったのだが、今回のと聴き比べると、ソプラノ両者それぞれの個性が選曲にも歌唱
スタイルにも発揮されていたことがよくわかる。
プロハスカちゃんのは、メランコリックなイギリスものもイタリア・バロックの場合特に
その野趣性というか荒々しさを強調した、ちょっといがらっぽさをのあるような喉での
歌唱がよかったが、ミールズはそこまで汚れ役をしないタイプであろう、ふくよかで自制
心のある歌唱という印象。

c0188818_19145134.jpg


アンコールは『グリーン・スリーブス』で、ここでもリコーダーが大活躍。
(ちなにみ先月のプロハスカちゃんのアンコールは『スカボロ・フェア』で、蓮っ葉な感じ
の歌唱が彼女らしかった。)
『グリーン・スリーブス』は、ミールズの大人の女性らしい誠意を込めた丁寧な歌唱で、
リコーダーがそれに呼応しつれなき相手への思いをかき口説く。
この曲に合わせてミールズはグリーンのドレスを着ていたんだ、と今にして思う。
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by didoregina | 2015-09-06 19:23 | コンサート | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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