『真珠採り』レイス・オペラ公演

オランダの巡回歌劇団Nederlandse Reis Opera(旧称Nationale Reis Opara)による
ビゼーの『真珠採り』をマーストリヒトのフレイトホフ劇場で鑑賞した。
レイス・オペラ公演も、このオペラを鑑賞するのも久しぶりである。
見に行こうという気になったのは、所属する合唱団のコンサートでこのオペラの白眉とも
言えるテノールとバリトンによるデュエット「神殿の奥深く」をつい最近歌ったのが
きっかけである。
Les pêcheurs de perles @ Theater aan het Vrijthof 2015年2月3日
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Benjamin Levy: Muzikale leiding
Timothy Nelson: Regie
Wikke van Houwelingen: Decorontwerp
Elena Werner: Kostuumontwerp
Gé Wegman: Lichtontwerp
Jitti Chompee: Choreografie
Florentijn Boddendijk & Remco de Jong: Sound design

Kishani Jayasinghe: Leïla
Yaroslav Abaimov: Nadir
Robert Davies: Zurga
Yavuz Arman İşleker (TalentenEnsemble): Nourabad

Krittin Kiatmetha: Danser
Juan Carlos Toledo: Danser
Rocco Vermijs: Danser

Noord Nederlands Orkest
Nationaal Opera en Concert Koor
Koordirigent: Stephen Harris

連日異なる劇場を巡回する歌劇団の宿命で、舞台装置は移動も設置しやすいものでないと
いけないという制約があるので、舞台背後に白い大幕、その後ろに月、巨大な光源、そして
モルディブ辺りで海釣りをする人が座る杭のようなものが大道具の全てであるが、そのシン
プルさがなかなか効果的でもあった。

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小道具としては、頭からすっぽり被る白い仮面と大きな魚網の使い方が抜群だった。
仮面は着けた者の感情をその内に秘めてしまいながらも、逆説的だが露わにもするという
効果があることは、能面においても見いだせる。
主役3人は、使命・因習と愛情・友情との二局対立の葛藤と一方通行の三角関係に苦しむの
だが、個人の感情よりも共同体での使命や因習の比重が高いことを前提としていることから
起こる悲劇の深さを、仮面は無言ながら雄弁に語るのだった。
また、漁網は処女の純潔を象徴するベールとして使われたり、秘めた愛情関係の存在を世間
から天狗の隠れ蓑のように隠してくれるものになったり、がんじがらめになった苦悩を象徴
したりと千変万化の活躍である。

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舞台演出効果として特に感心させられたのは、三人のダンサーの存在であった。
開演前、すでに舞台上では無言でコンテンポラリー・ダンスが繰り広げられていたのだが、
しなやかな肉体の美しさを最大限に出す振り付けで、古典バレエの素養のあるダンサーが
見せるアクロバティックな動きはうっとりするほど美しい。オペラの幕が上がってからも
歌手の周りで踊ったりするのが、まったく邪魔になるどころか、ほとんど道具立てのない
シンプルな舞台では一種のデコールも兼ねている具合で、全体との調和がいいのだ。
振付のJitti Chompeeという人は、ピナ・バウシュの影響を大きく受けているらしい。
エレガントな動きが目に心地よく、せかせかしたような振付けで観る者をイライラさせる
ことも、歌手の邪魔をすることもない。

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主役級の三人の歌手

歌手では、ナディール役のテノールの発音がいかにもフランス語らしい鼻音を強調する
ディクションで、ちょっとトピ君を思わせる若々しく伸びやかな美声である。
高音になると下からずりあげるのが癖のようにも思えたが、気になるほどではない。
バリトンの声はあまり印象に残らなかった。
レイラ役はスリ・ランカ系の美女で、ポスターも彼女の写真を基に加工デザインされている。
身長が低いのに体つきが予想外にがっしりしているので、顔とのギャップが大きかったが。
声は、この役にはどうなんだろう。ヴェルディ向けのしっかりしたつやと芯がある声質と
声量で、わたしの描くレイラのイメージとは異なったが、客観的には悪くはない。

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三人のダンサー



いつもこの歌劇団でがっかりさせられるのはコーラスだ。全体にのっそりして緊張感が
感じられずヴォリュームにも欠ける。前半は特にリズム感がひどいのにあっけにとられた。
最後の方のコーラスでなんとか盛り上げていけたのが救いだった。

オケも特に印象には残らなかったが、ソロ楽器を客席バルコンや平土間後方に配置したりと
工夫は凝らしていた。
繰り返し登場するテーマ・メロディーが抒情的かつ甘美で美しいのがビゼーの曲の真骨頂
なので、管楽器のソロが上手く決まっていたから及第点はつけよう。
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by didoregina | 2015-02-05 19:33 | オペラ実演 | Comments(4)
Commented by Vermeer at 2015-02-08 19:58 x
ヴェルディ向きのしっかりした芯のある声→
確かにCDやBDのディスコグラフィでは、アラリー、ミショー、コトルバス(一体どんだけ旧いんだか)、チオフィ……皆リリコ・レジェーロ系ですネ。

合唱→
レイネさんの所属するコーラスは、オペラの本格的な公演に載っかることはないのですか?
Commented by レイネ at 2015-02-09 06:37 x
Vermeerさま、レイラ役を歌った歌手の声はレッジェーロよりもっと強さがあって骨太って感じでした。

私の所属するコーラスがオペラ舞台に立つことはないと思いますが、7月にプラハ遠征公演(?)の計画で今盛り上がってます。
Commented by Vermeer at 2015-02-09 12:11 x
ひょっとしたらルドルフィヌム内にあるドヴォルザーク・ホール?! 実現したら凄いですね。
Commented by レイネ at 2015-02-09 17:56 x
Vermeerさま、コーラスの世界大会みたいな感じで、プラハ市内各地で歌うようです。(特に街角や広場で。) 詳細協議は水曜日の晩に。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

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別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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