人気ブログランキング | 話題のタグを見る

2014年オペラ鑑賞まとめ

2014年を総括する時期になった。
今年を一言でまとめるならば、イエスティン・デイヴィス応援・遠征の一年だった。
しかしそれ以外にも、いやイエスティン君のための遠征と組み合わせて、守備範囲から
少し逸脱するオペラ鑑賞もできたのだから、バラエティに富み実りは多かったと言える。
それらはほとんどブログ記事にしていないので、今回まとめて振り返ってみたい。

2014年オペラ鑑賞まとめ_c0188818_17311964.jpg

まず、3月2日のENO公演『ロデリンダ』のついでに、翌日ROHで『連帯の娘』を鑑賞。
ローラン・ペリ演出の名プロダクションをフアン・ディエゴ・フローレスのトニオ、パト
リシア・チョーフィのマリー、そしてキリ・テ・カナワが公爵夫役という豪華キャストで。
フローレスの十八番ともいえるトニオ役は若々しさ溢れ、見ているだけでも楽しくなって
くるし、あの輝かしい明るさに満ちた美声を舞台近くの席からダイレクトに聴くことができ、
チョーフィの喉の具合は少々不調なのが残念だったが演技は元気はつらつとしていたし、
公爵夫人役のデイム・キリがほんの少しだが歌も披露してくれたし、全体的に満足の舞台
だった。(終演後に、レストランでフローレスやチョーフィと会えるというおまけ付け)

6月には2回ロンドン遠征を敢行した。そのうち最初のはなんと、エーゲ海の2週間ヨット・
クルーズから帰った翌日からで、イエスティン君のウィグモア・ホールでのコンサート、
オルドバラ・フェスティヴァルでブリテンの『オーウェン・ウィングレーブ』、ロイヤル・
アスコット・オープニング・デイに行ったその晩にはROHで『マノン・レスコー』鑑賞と
いう超盛りだくさんの内容だった。
クリスティーン・オポライス主演でヨナス・カウフマンとクリストファー・マルトマンが
共演した『マノン・レスコー』鑑賞記はブログ記事にしたが、ブリテンのオペラ鑑賞記は
書けなかった。遠征続きで忙しかったのとほかの印象が強すぎて『オーウェン・ウィング
レーブ』の印象が薄くなってしまったからだ。

2014年オペラ鑑賞まとめ_c0188818_18214542.jpg

オルドバラの海岸

その日の午前中はロンドンで某オークション・ハウスの内覧会見学後、午後からブリテン・
フェスティヴァルの開催されているサフォークの海岸沿いの小さな町オルドバラまで出かけ、
海岸を散策したりブリテンのお墓参りをして、その夜、元ウィスキー醸造所を改造した素敵な
ホールでオペラを鑑賞した。カメラの電池が途中で切れてしまって写真があまり撮れなかった
のも、記憶がおぼろになってしまった理由である。

Britten Owen Wingrave at Snape Maltings Concert Hall,
16 June 2014
Mark Wigglesworth conductor • Neil Bartlett director
Ross Ramgobin, Owen Wingrave
Susan Bullock, Miss Wingrave, Owen's Aunt
Samantha Crawford, Mrs Coyle
Janis Kelly, Mrs Julian
Catherine Blackhouse, Kate Julian
Isaiah Bell, Lechmere
Jonathan Summers, Spencer Coyle
Britten-Pears Orchestra

とにかく暗い話を暗い演出と暗い音楽で表現したオペラで華やかさが全くないから、疲れて
いる夜に聴くのはきつい。兵役招集を拒否する若者を巡る家族の物語で、音楽には耳に
残る印象的なアリア等は全くない。
一度生で聴いてみたかったのでその願いが達せられたことと、こんなに辺鄙なところまで車で
連れて行っていただけたことに大変感謝している。

6月の2度目の遠征には、24日のイエスティン君のバッハ・コンサートのついでに、ROHで
25日に『ナクソス島のアリアドネ』と26日に『トスカ』も鑑賞した。
『ナクソス島のアリアドネ』と私とはどうも相性が悪いようで、カリタ・マッティラのアリア
ドネをはじめとして、ジェーン・アーチボルドのツェルビネッタ、ルクソンドラ・ドノーゼの
作曲家など女声陣がなかなか充実して健闘、しかもクリストフ・ロイ演出で期待の舞台だった
にも関わらず、今回もうつらうつらとしてしまって、ほとんど印象に残っていないのだった。
2014年オペラ鑑賞まとめ_c0188818_1954685.jpg

『トスカ』の方は、映像で一度見ていて気に入っているジョナサン・ケント演出のプロダク
ションなのだが、特に好みの歌手が出演するわけではないので、プラシド・ドミンゴ指揮、
ブリン・ターフェルのスカルピアにちょっぴり期待して臨んだ。
美しいデコールと衣装、そして全く無理のない演出なので安心してわくわくしながら舞台を
楽しめることができた。メインの歌手の歌唱もそれぞれバランスよく、華やかさには欠ける
ものの手堅く満足いくものだった。

8月には今年のメインイヴェントであるグラインドボーンでの『リナルド』鑑賞と組み合わせ
られるオペラはなかった。
2014年オペラ鑑賞まとめ_c0188818_202254.jpg

10月には、今季の期待演目の一つである『ポッペアの戴冠』のセミ・ステージ形式をバービ
カンで鑑賞するのに合わせて、前日の4日にROHで『リゴレット』を。
とにかくサイモン・キーンリーサイドのリゴレットに注目していたのだが、当日夕方にロン
ドン着という無理のあるスケジュールだったため開演時間に間に合わず、前半はアンフィの
外廊下にあるスクリーンでの鑑賞となってしまったのは残念。
後半からは、舞台を上から見下ろすようなアンフィのアッパースリップの席に座ったのだが、
びっくりしたのはその音響のよさ。オケも甘美に響くし、歌手の声は舞台を横から見る定番
位置よりもいっそうはっきりと聴こえるのだった。
マクヴィカーによる演出はストレートかつスマートで、目を覆うような残酷さや醜悪さを排
しているのが好ましく、人間の欲望、親子の愛情、そして若さゆえの向こう見ずというか
ほとばしるパッションなどが見る者に迫る。
特にキーンリーサイドの、複雑な人格のリゴレットになりきりの役作りには目を瞠るほどの
凄味が感じられ、歌唱にも苦悩の様が表れていて感動を呼ぶのだった。

2014年オペラ鑑賞まとめ_c0188818_2031136.jpg

11月の遠征は、イエスティン君絡みではなく、フランコ・ファジョーリがイダマンテ役で
ROHデビューの『イドメネオ』を鑑賞するのが主目的だった。
千秋楽に行ったので、すでに実演鑑賞した友人や各紙・誌やネットの情報から、演出やCTに
よるモーツアルト・オペラ出演是非など、いろいろな意見を見聞きしていて、相当な覚悟が
できていて臨んだと言える。だから、あんなに騒がれていた演出がさほどのものでもない
のに肩透かしを食わされ、またこの程度の演出でブーイングが(しかも千秋楽に及んでも)
出ることにかえって驚いてしまった。
もともとイダマンテ役は損な役だからと割り引いていたせいもあるし、若手CTの中でも
イギリス人CTとは正反対の歌唱スタイルのため、ロンドンの観客にはかなり異質かつ耳馴染み
のあまりよくない印象をファジョーリは与えるだろうなあ、と予想がついていたせいもあるが、
全体的にはとても素晴らしいプロダクションだし舞台である。これは、ROHとリヨン歌劇場と
フランダース・オペラとのコープロであるので、来季以降、リヨンやアントワープ(および、
もしくはヘント)での上演が予定されている。誰が指揮を担当するのか、どんなキャストになる
のか、今からとても楽しみにしている。イダマンテ役にCTを選んだのは、演出を担当した
クシェイのたっての要望だったということなので、次回もCTが歌うんだろうか。その場合は、
誰に白羽の矢が立つのだろうか。

12月5日のロンドン弾丸遠征(ご存じイエスティン君のリュート・ソング・リサイタル)翌日
の聖ニコラスの日には、ドイツのドイスブルク歌劇場に『ウェルテル』の初日を見に行った。
なぜかというと、VIPペア・チケットがまたしても当選したからだ。今年は、くじ運のよさを
実感することが多く、その件に関しては別にまとめ記事にしたいと思っている。
2014年オペラ鑑賞まとめ_c0188818_2048863.jpg

Musikalische Leitung Lukas Beikircher
Inszenierung Joan Anton Rechi
Bühne Alfons Flores
Kostüme Sebastian Ellrich
Licht Volker Weinhart
Orchester Duisburger Philharmoniker
Andrej Dunaev (Werther)
Sarah Ferede (Charlotte)
Elena Sancho Pereg (Sophie)

ドイツの地方歌劇場の数は半端ではなく、ほとんどの都市にあるのではないかと思われる。
ルール地方だけでも、エッセン、ドルトムント、デュッセルドルフ、ドイスブルク、
はたまたケルンやボン、アーヘンなど近距離にひしめきあっている。競争は厳しいものが
ありそうだが、地方自治体からの補助金は他の国とは比べられないほど潤沢なようでもある。
ドイツブルクの歌劇場は初めて行ったのだが、初日でもあり、いかにも戦後風のインテリア
ではあるが、おしゃれした客が多く、なかなか華やかな雰囲気が漂う。地元の富裕層が集まっ
ている感じである。
地方の歌劇場だから、歌手に名の知れた人はいないが、歌唱は馬鹿にしたものでは全くなく、
子供の合唱もぴたりと決まっているし、舞台装置や演出に至っては、スタイリッシュの極みで
ある。全くこの程度が普通なのだから、ドイツの地方歌劇場の実力や侮るべからずである。
こういう風に時代にマッチした演出が無理なく受け入れられる環境、近場でほどほどの料金で
オペラに親しむことができることから、観客の感性は自然と磨かれていくので、ドイツの
オペラ界の将来は非常に頼もしいと思われる。(もちろんいずこも同様に補助金カットなど
の辛苦はあるが)

というわけで、自分の好みの範囲外のオペラに色々と触れる機会が多かった今年(2月には、
アムステルダムで今年が最後となったオーディのリング・チクルスなんかも鑑賞してしまった)
なかなか充実していたのではないか、と振り返って思うのである。
by didoregina | 2014-12-22 21:09 | オペラ実演


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


以前の記事

2020年 09月
2018年 04月
2018年 03月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 08月
2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月

タグ

最新のトラックバック

カテゴリ

全体
バロック
映画
オペラ実演
オペラ映像
オペラ コンサート形式
着物
セイリング
コンサート
美術
帽子
マレーナ・エルンマン
イエスティン・デイヴィス
クイーン
CD
20世紀の音楽
旅行
料理
彫金
ビール醸造所
ベルギー・ビール
ハイ・ティー
サイクリング
ダンス
ハイキング
バッグ
教会建築
カウンターテナー
演劇
未分類

検索

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧