ベルギー鉄道のスト、傾向と対策

ベルギーでは、11月下旬から毎週月曜日のゼネストが恒例化している。
旅行および遠征の時一番困るのは、ヨーロッパの交通機関のストである。とにもかくにも
できる限り正確な情報を収集し、先へ先へと回って対処するしか方法はない。
それでわたしが経験した11月24日のベルギー鉄道ストの実地ルポを公開し、皆様の今後の
お役に少しでもたてたら幸いである。

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11月24日出発2泊3日のロンドン遠征を決めたのは、10月の日本旅行の日程が煮詰まった後
だから、夏頃だった。丁度その頃、上手い具合にユーロスターのバーゲンがあり、往復69
ユーロという破格値の切符を確保した。
遠征目的は、フランコ・ファジョーリのロイヤル・オペラハウス・コヴェントガーデンでの
『イドメネオ』のイダマンテ役デビュー舞台と、クリスティン・スコット=トマス主演の
芝居『エレクトラ』鑑賞である。

ベルギーのストのことは他山の石というか、把握していなくて、知ったのは遠征の3日前。
遅まきながらネットで情報を集め始めたのだが、詳しいことはよくわからないままだった。
ストを実施する張本人ベルギー鉄道のサイトによると、ユーロスターは通常運行、タリスと
アムステルダム~ブリュッセル間の特急は動かない、そして、アントワープ、リンブルフ、
ルクセンブルク、エノーの各州とワロン・ブラバントがゼネストに参加するということだ。
告知通りであれば、わたしの利用する列車の線路は、上手い具合にそれらから外れている。
しかし、国境を超える電車は動かさないとも言っているから、非常に微妙である。

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ベルギー鉄道はスト情報というか、列車運行状況を刻々とツイートするということなので、
前日夜からフォローを始めた。
遠征前夜、マーストリヒトからブリュッセルまでのオンライン切符予約ページを開いてみた。
すると、この路線のチケットは翌日無効と出た。非常にわかりにくいロジックであるが、
運行しない、ということを別の言葉で表現しているのではないかという結論を得た。
マーストリヒトはオランダのリンブルフ州に位置しているし、国境を超える電車は動かない
と告知しているのだから、驚くには当たらない。しかし、国境を越えたらそこはリエージュ
州である。ストには参加しないはずである。我が家から国境はすぐで、最寄りのベルギーの
駅ヴィセまで行けば何とかなりそうだ。

しかし、そのうちに、なんだかヴィセ~リエージュ間も危なくなっているようだった。
というのはその路線の始発駅は国境のこちら側マーストリヒトであるからだ。いや、どうも
リエージュからブリュッセルまでの電車もやばい雰囲気が漂いだした。
それで、リエージュ経由でブリュッセルまで電車で行こうとするのは危険かもと判断し、別の
方法でブリュッセルに向かう方法を考えた。
一番簡単なのは、車で行くことだ。家からなら1時間ちょっとである。しかし、なんたること、
わたしの車を売ってしまったばかりなのだった。
送り迎えの必要だった子供たちも成長して家を出たし、夫婦二人だけなのに車2台というのは
不経済だし、近年は旅行もほとんど飛行機を使っているから、車は一台だけで十分、と思った
のである。それで、主人に通勤前にブリュッセルまで送ってくれないかと頼んでみたが、
仕事で必要なのなら別だが、遊びの遠征のために早朝の往復送迎はいやだと断られた。
こうなったら、タクシーで行くべきか。。。。

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ここからブリュッセルへのバスはない。あるのは、アムステルダム、ロッテルダムなどから
の長距離バスのユーロラインである。破格の安値であるが、翌日は電車の代わりにユーロ
ラインでベルギーに入ろうとする人は相当多くなっているようで、刻々と席が埋まっていく。
特にローゼンダールやブレダ、エイントホーフェンなどの国境近くからのバスで時間的にも
ぴったりなのは全て予約でいっぱいだ。
背に腹は代えられない、仕方がないとアムスを9時発のユーロラインを予約した。バスだから
ブリュッセルまで6時間の長旅である。しかも、家からアムスまでは電車で二時間半かかる。
ほとんど始発の電車に乗らないと間に合わない。
車なら1時間ちょっと、電車でも通常1時間半のブリュッセルまで、アムス経由で8時間かけて
行くという、正気の沙汰とは思えないが一番安全な路線を確保した。バス代金は20ユーロで
ある。

その案だと翌日6時の電車に乗らないといけないから、5時に起きてストの様子を窺ってから、
どういう方法で行くか決めることにした。5時からアクチュアルなスト情報をツイートすると
いうことでもあったからだ。
5時半の時点で、どうやらリエージュ~ブリュッセル間、そして、ヴィセ~リエージュ間も
通常運行予定の模様である。それで、バスでアムス経由ブリュッセル入りという馬鹿げた
プランは捨てた。
スト実施の赤い路線と駅からなる地図の中で、わたしの利用する路線だけ安全な緑の色の
廊下のような具合だったからだ。

しかし、刻々と色の変わるスト路線地図は、だんだんと予断を許さない状況になっていく。
ブラバント州のフラマン地域もだんだんと危なくなっているようで、ルーヴァン行きは
ほとんど運行中止だ。リエージュからブリュッセルまではルーヴァンも通過するから剣飲だ。
とにかく動いているうちに電車に乗ってブリュッセルまで行ってしまおうと決め、7時30分
ヴィセ発の電車に乗ってリエージュまで。そこから、ストしている州を通らない路線でブリュ
ッセルを目指した。10分ほど遅れたが、ルーヴァンを通過する電車でなんとかブリュッセル南
駅までたどり着いたのは午前9時すぎだった。
それから3時発のユーロスターまでは6時間も時間があるが、駅の外に出たり駅構内のカフェ
や待合室をはしごして、本を読んで過ごした。

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その間、電光掲示板を見ていると、どんどん電車は運休、間引きまたは遅延となっていって
いる。リエージュからの電車も1時間遅れになったり、間引きされているのもあるから、
朝早い電車に乗ったのは正解であった。
ユーロスターだけは正常運行しているから、ストと知らずにブリュッセルにロンドンから到着
した客達は非常に困惑しているようだった。何しろそこから先に行く手段がごく限られている
のだ。
駅の案内カウンターや切符売り場、タクシー乗り場も長蛇の列だ。

危機を脱して、ほとんど遅延もなくロンドンに到着したのは午後4時過ぎだった。
遠征必勝法としては、正確な情報収集と冷静な判断とネヴァーギブアップ精神しかない、と
の思いを新たにし、また、強運を神に感謝した。
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by didoregina | 2014-12-16 05:15 | 旅行 | Comments(4)
Commented by Vermeer at 2014-12-16 12:01 x
なんとも迷惑なスト包囲網を突き破ってロンドンに(ギリギリ?)到着、なによりでした。

かわらけ投げの写真は高雄・神護寺?

金堂の本尊・薬師如来立像は御覧になりました?貞観(平安時代初期)仏として最高峰とされる像。

神主(禰宜?)さんが掃いているのはどちらの神社でしょうか。
Commented by レイネ at 2014-12-16 15:26 x
Vermeerさま、ベルギー鉄道ストでも、とにかく前進あるのみ!ネヴァーギブアップ!を念仏のように唱えて苦境を脱しました。先週は全国ストだったから、
わたしはまだ運がよかったのでした。

神護寺には今年30年ぶりで訪れました。山の上なので市中よりは紅葉が早いのではないかと狙って。まだほんの2、3部ほどの紅葉だったので参拝人や観光客が
少ないのもよかったです。丁度、薬師如来が御開帳されていました。素人見ですが、密教的なあでやかさな美しさだと思いました。

神主さんの写っているのは、九州・高千穂の天岩戸神社です。各地で祈願しておいた功徳か、神様にはいろいろ助けていただいてます。
Commented by サンジ at 2014-12-16 20:33 x
ストに巻き込まれた我が同志のレイネさん!(笑)
状況が刻々と変化する・・っていうのがイヤですねえ。正しい情報を正確に得るというのも、簡単なようで海外ではやっぱり難しいです。現地在住のレイネさんでさえ手を焼くのなら、私なんか無理~。
ネバーギブアップ精神というのは教訓ですね。こういう辛い目にあったらすぐ諦めたくなっちゃうから(笑)。

ただ、今回の私もそうでしたが、経験を積み、いつも用意周到に計画し、万が一のことも想定して気を付けるように心がけていると、自然と運がこちらに来てくれるような気がします。

厄除と神社の写真が絶妙に合っていて面白い!

Commented by レイネ at 2014-12-17 15:32 x
サンジさま、お互い、今回はなんとか目的地に辿り着いて予定していた演目も鑑賞できたということで、ご同慶。遠征でストに巻き込まれるという率は、遠征回数が多ければ多いほど高くなりますから、いかに対処するかは常に心しておかないとだめですよね。

>ただ、今回の私もそうでしたが、経験を積み、いつも用意周到に計画し、万が一のことも想定して気を付けるように心がけていると、自然と運がこちらに来てくれるような気がします。

まさに運を呼ぶ術の核心を突いてます!一言で言うと、意志の強靭さが強運につながるいうことでしょうか。
歴戦の烈士である皆様は、よく心得ていらっしゃいますよね。

日本観光というとやはり神社仏閣などの訪問がメインになるので、で願掛けも忘れずに。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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