ヴァラー・サバドゥス (Valer Sabadus)の Le Belle Immagini コンサート

若手カウンターテナーの中でも、声質が特に好みなので贔屓にしているヴァラー・サバ
ドゥスのコンサートに行った。@Opernhaus Düsseldorf, 09. November 2014

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Carlo Giuseppe Toeschi (1731–1788)
SINFONIE D-DUR
1. Satz: Allegro maestoso

Christoph Willibald Gluck (1714–1787)
ORFEO ED EURIDICE (Parma-Version)
Arie des Orfeo „Che farò senza Euridice“

PARIDE ED ELENA
Rezitativ und Arie des Paride „Le belle immagini“

SCHAUSPIELMUSIK ZU „ DON JUAN“ (Fassung Wien 1761)
Chaconne Espagnole
Andante
Allegro ma non troppo

SEMIRAMIDE RICONOSCIUTA
Arien des Scitalce „Non saprei qual doppia voce“ & „Voi che le mie vicende“

PAUSE

Wolfgang Amadeus Mozart (1756–1791)
CASSATION IN G-DUR KV 63
Auszüge

Christoph Willibald Gluck (1714–1787)
DEMETRIO
Arie des Demetrio „Non so frenar Il pianto“

Josef Mysliveček (1737–1781)
FARNACE
Arie des Farnace „Ti parli in seno amore“

OVERTURE IN B-DUR (F 30)
Allegro con Spirito
Andante

Antonio Sacchini (1730–1786)
IL CID
Rezitativ und Arie des Rodrigo „Se pieta tu senti al core“
Arie des Rodrigo „Placa lo sdegno o cara“


会場であるデュッセルドルフの歌劇場で、サバドゥス君はヘンデルのオペラ『セルセ』に
2年前主演しているし、10月にはケルンの歌劇場でも『ルイキッポ』に主演し、20代と
若いにもかかわらずドイツやフランスでは(比較的レアな)バロック・オペラには欠かせない
実力派カウンターテナーとして活躍している。

このコンサートは、新譜Le Belle Immaginiのプロモートの意味合いもあり、器楽演奏は、
CDと同じくHofkapelle Münchenが担当し、選曲もCDから採られている。
前半プログラムは、グルックのオペラ・アリア が中心で、前奏曲代わりの器楽演奏による
トゥスキの『シンフォニア41番』の後は、いきなり『オルフェオとエウリディーチェ』
から「エウリディーチェを失って」を歌うのだった。
こういう選曲と構成にしたのは、端正な古典派らしい衒いのないストレートな美しさで勝負
の曲から始めて少しずつ喉の調子を上げながら、次第にテクニック的に複雑な技巧を要する
ブラヴーラ・アリアでクライマックスに持っていくというわけなのだろうが、一曲目の
「エウリディーチェを失って」は、聴いているほうもなんだか苦しくなってくるほど、
サバドゥス君の表情は硬くほとんど蒼白で、眉間に皺を寄せたままか細い歌声で最愛の妻が
戻ってこないことを嘆くのだった。



上記動画の音源はわたしが行ったコンサートの一週間後にラジオ放送されたオペラの録音で
あるが、どちらもソプラノ・カストラートのためのパルマ版の演奏で、ダカーポの装飾の
付け方も伴奏も同じであった。
3列目の席で歌手の真正面で聴いたのでよかったが、後ろのほうの席までしっかり届いたんだ
ろうか、と少々心配になってしまったほど潤いと声量に欠けていたのが残念だった。緊張も
あろうし、喉がまだウォーミングアップ不足だったのだろうか。こういう超有名曲で始めると
いう構成は、ヘンデルの『セルセ』における「オンブラ・マイ・フ」と同様であるが、歌手に
とってはちょっと難しいものがあるのではなかろうか。
それほど、一曲目に持ってきて聴衆に印象付けるのは困難な曲なのだ。

2曲目の『パリーデとエレナ』の歌唱も同様で、こちらも高音部分が大変そうだなあ、と
いらぬ心配をしてしまうのだった。このオペラは、以前に実演鑑賞したことがあるのだが、
いかにもソプラニスタのために作られたようなアリアが満載で、その時歌ったCTの歌唱の
伸びやかな高音の美しさにノックアウトされたのだ。
しかし、休憩前の『セミラミーデ』からの2曲になると、喉の調子も上がったようで、ブラ
ヴーラも輝かしくテクニック全開でエネルギッシュに聴かせてくれた。ここに持っていくために
最初の2曲は喉を抑えめにしていたのだろう。

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合間に入る器楽演奏と伴奏はホフカペレ・ミュンヘンが担当。高音弦楽器の多い編成の
ため、相対的に通奏低音があまり聞こえなかったが、全体的に華やかかつ手堅い演奏である。
特に管楽器の上手さにドイツの古楽団体の演奏ではいつも唸らされるのだが、バロック・
オーボエ、ホルン、トランペットは音色の美しさも、音の決まり具合もしっかりしていた。

後半はグルックとミシュリヴェチェクとサッキーニ作曲アリアの数々で、いずれ劣らぬ
華やかな技巧を要するのだが、もう喉は十分に温まったと見え、表情も晴れ晴れとし曲間に
余裕でジョークを言いつつ、目くるめくようなコロラチューラで歌い上げてくれた。
彼の生の歌声にも歌い方も、マレーナ様に似ているなあ、と感じさせる部分があるのだが、
特に中音部と高音部のメゾらしいファルセット部分がそっくりなのが、彼贔屓の理由の一つ
かもしれない。ほかのカウンターテナーと比べた場合の彼の個性としてはメゾそのものと言える
声質が際立つのだが、逆に低音部に男性らしい力強さがあるのが、メゾと比較した場合いかに
もカウンターテナーらしくて、それもまた好きな理由である。

アンコールは、モーツアルト風であるがモーツアルトではないのがミソ、と言うサッキーニの
Vieni, o caro amato bene。CDにも入っているというのだが、わたしはすっかりモーツアルト
作曲なのかと思って騙されてしまった。サバドゥス君がモーツアルトのオペラに出演したら
ぜひ聴きたいものだ。

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ドイツの聴衆にいかに愛されているかがよくわかるのは、熱烈にブラーボ、ブラーヴィが飛び
交い、スタンディングオヴェーションになったことだ。(オランダでは、スタンディング
オヴェーションは儀礼的というかいつでもどこでもデフォルト化しているのが残念)
一曲一曲歌いあげるたびに、嬉しそうな笑顔を見せ、お辞儀も深々として好青年そのものの
すがすがしさ。
サイン会の列もとても長かった。

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by didoregina | 2014-11-19 18:45 | カウンターテナー | Comments(0)


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