Iestyn Davies Recital: Evensong - English Cathedral Organists in Song

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2014年6月15日@ウィグモア・ホール
Evensong - English Cathedral Organists in song

Iestyn Davies (countertenot)
Malcolm Martineau (piano)

Michael Howard: The painted rose
Purcell: Full Fathom Five (realised by Thomas Adès)
William Croft: A Hymn on Divine Musick (realised by Britten)
William Byrd: Ye sacred muses
Jeremiah Clarke: A Divine Hymn (realised by Britten)
Herbert Howells: Goddess of night; The little boy lost; When the dew is falling;
King David

Intervval

Charles Villers Stanford: La Belle Dame sans merci
Cyril Bradley Rootham: Everyone sang; Idyll; A supplication
Francis Jackson: From a railway carriage
Philip Moore: Summer night; Cradle song
Francis Jackson: Tree at my window
Thomas Dunhill: The Cloths of Heaven
Henry Walford Davies: I love the jocund dance
Ivor Gurney: The Apple Orchard
Ivor Novello: Fly home little heart

Encore
Henry Purcell: An Evening Hymn; Music for a while

イエステイン・デイヴィスがロンドンで行うコンサートではフランチャイズ化している
というか定番会場であるウィグモア・ホールには、今回初めて入った。
ホールのサイズ、ステージの造り、イスの並べ方その他内装など、コンセルトヘボウの
小ホールにとても似ている、という印象だ。(コンヘボの小ホールの方がもう少し寸詰
まりで横に広いが)室内楽コンサートや声楽リサイタルにはぴったりの規模である。
音響の感じも似ていて、小さなホールなのでちょっと響きすぎるきらいがある。
ともあれ、インティームな雰囲気は悪くなく、いかにもクラシック好きそうな客層
(イケてない服装や高齢の年齢層)もコンヘボと激似。

すべてを聴かせます!という先月のケルンでのリサイタル曲目とはまた打って変わって、
今回はイギリスの聖堂付属オルガニストによって作曲された16世紀から21世紀までの聖歌・
讃美歌などが中心のオリジナリティあふれる選曲の意欲的なプログラムである。(終演後、
ピアニストに訊いたところ、曲目選定はイエステイン君)

バードやパーセルそしてハウウェルを除くと、今まで名前を聞いたことがない作曲家ばか
りである。

パーセル作曲(アデス編曲)のFull fathom fiveを、イエスティン君のコンサートで聴く
のは4回目である。土臭い男性的なイメージの曲であり、しかも音域があまりCT向けでは
ないように思えて最初のうちはこの曲を聴くのが苦手であった。
しかし、何度も生で聴くうちに、英国的かつ控えめなこの曲のよさが少しわかるように
なったのか、それともパワーを抑えてリラックした優しさの感じられる歌唱と、それに
寄り添うピアノの親密さに感服したこともあり、そんなに悪い曲じゃないんじゃないか、
と思えるようになった。

教会付属オルガニスト作曲であっても、聖書を題材にした抹香臭い曲ばかりというわけ
ではないのがこのプログラムのミソで、シェイクスピアやブレイク、キーツ、テニソン、
イェイツそしてフロストなどの詩に付けられた曲は、テーマも様々である。

後半は非常にロマンチックな詩に作曲されたものが多い。休憩後最初の曲は、キーツの
「つれなき美女」なので、身を乗り出して聴いた。ところが、意外にもかなりあっさりと
いかにも20世紀的初頭の作風で、19世紀的ロマンチシズムの情感はほとんど感じられない
曲なのであった。う~む、この詩はやっぱり朗読を聴く方が好きだ。




それに対して、21世紀になってムーアが19世紀のテニソンの詩と17世紀のワッツの詩に
曲を付けたSummer NightとCradle Songは優しさにあふれるメロディーで気に入った。
特に、子守唄はイエスティン君の慈愛に満ちた歌唱とも相まって、じんわりと心の琴線に
触れるのであった。

わたしにとっては、ジャクソンがフロストの詩に付けた曲Tree at my windowが今回の
リサイタルの白眉であった。イエスティン君によって歌われる英語の歌詞は、毎度ながら
明瞭かつ丁寧な発音で美しく、ホールの隅々にまで届く歌唱には余裕もうかがえる。
前回も感じたのだが、イギリスで歌うときにはいい意味でリラックスしたものが感じられ、
こちらも緊張を強いられることなく楽しめるのだ。

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アンコール1曲目は、まさに今回のプログラムにはこれ以上ふさわしい曲はありえないと
思われるパーセルの「夕べの賛歌」。
イエスティン君によってしみじみと歌われると、涙がこぼれそうになるほど美しい。

そして、アンコール2曲目は、まさかの Music for a while. 
この曲は、コンサートの〆、アンコールにやっぱりふさわしい。
これで希望がまた一つ叶った。あとは、イエスティン君の歌うChe faroが聴けたら、もう
思い残すことはないだろう。


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by didoregina | 2014-06-23 15:34 | イエスティン・デイヴィス | Comments(2)
Commented by Vermeer at 2014-06-24 17:55 x
渋い選曲ですね。バード、パーセル、スタンフォード、アイヴァー・ガーニー、ハウエルス…あとは初めて聴く名前ばかりですが、聖堂付属オルガニストが共通項とは(嘆)。それぞれ所属した教会を辿るとイングランド聖堂巡礼になりそう。

IDならではの高尚な選曲眼。彼自身chorister出身なのでしょうか?ホールのレーベルかhyperionから音源発売されると嬉しいナ。
Commented by レイネ at 2014-06-24 18:53 x
Vermeerさま、お久しぶりです。渋いでしょ。彼自身、幼少時からケンブリッジ卒業まで聖歌隊に属してましたからね。
素晴らしいリサイタル、レアな曲目だったので録音してくれたらいいのに、当日は録音してなかった。。。。。でも、ピアニストにそのこと言ったら、いつかまたチャンスはあるんじゃない、とのこと。
本日もこれからロンドン遠征して、同じくウィグモアでIDの歌うバッハ・カンタータ聴きに行きます!


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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